説明

緊急通報システム

【課題】緊急通報装置とセンター装置との間で通報をやりとりする緊急通報システムで、通報に失敗した際、原因が特定できないことにより責任分界点が不明確となるとともに、その後の対策も有効的なものを即座に見つけることが困難であった。
【解決手段】緊急通報装置に話中、あるいは無応答により通報できなかった記録だけではなく、正常に通信が成功したと緊急通報装置側が認識した情報も記録する通報装置記憶部を設けるとともに、センター装置側の通信を記録するセンター装置記憶部の情報と照合し、照合結果に不一致が発生した場合には、不一致の状態から不具合のある機器を推定して通報装置記憶部に通信記録とあわせて記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢社宅等に設置される緊急通報システムに係り、通報エラーが生じた場合の原因を速やかに特定し、安全性を向上させることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、緊急通報システムは、高齢者が体調不良になった場合や、火災センサ、ガス漏れセンサ等の各種センサが駆動したときに、予め定められた緊急通報先に緊急呼び出しを行なうものがあった。(例えば、特許文献1参照)。
このような緊急通報システムにより、高齢者は安心して生活を送ることができるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−27419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の緊急通報システムは、通報エラーが生じた場合、外部の通報先に緊急通報がおこなわれず、対応が遅れてしまうおそれがあり、この原因を確認しても、緊急通報装置の故障なのか、通信障害によるものなのか、外部の通報先の装置の故障なのか特定することができないものであった。
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、緊急通報ができなかった場合の原因を速やかに特定することができ、また、緊急通報装置の故障なのか、通信障害によるものなのか、外部の通報先の装置の故障なのかを特定することで責任分解点を明確にすることが可能な緊急通報システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の難点を解消するためになされたもので、緊急通報システムは、住戸等に設置し、緊急時に外部に緊急呼出信号を通報する緊急通報装置と、緊急通報装置と通信回線で接続され、外部の通報先として緊急通報装置からの緊急呼出信号を受信するセンター装置を備え、緊急通報装置は、火災センサ、ガス漏れセンサ、生活異変センサ等の各種センサを接続する接続端子、及び、非常時に外部の通報先に通報するための緊急ボタンのうち少なくとも1つを有し、センサが作動した場合、あるいは緊急ボタンが操作された場合、緊急呼出信号を生成し、予め定められた通報先情報を読み出して、センター装置に通報する制御を行なうCPUを備え、CPUは、緊急呼出信号を通報先情報とともに記憶する通報装置記憶部を有し、センター装置は、緊急通報装置からの緊急呼出信号を通報先情報とともに記憶するセンター装置記憶部を有し、CPU及びセンター装置の少なくとも1つは、通報装置記憶部及びセンター装置記憶部の通報先情報を照合する照合部を有する。
また、CPUは、緊急呼出信号が通信エラーにより外部通報先に通報できなかった場合に再送処理を行なうと共に、再送処理を行なうごとに、通報装置記憶部に記憶する制御を行なう。
また、照合部は、通報装置記憶部及びセンター装置記憶部の通報先情報を照合するための確認信号を送信し、照合結果に不一致が生じたときの原因を特定し、通報装置記憶部及びセンター装置記憶部の少なくとも1つに、特定された不一致情報を記憶する。
また、緊急通報装置は、通報装置記憶部に記憶された緊急呼出信号、不一致情報の少なくとも1つをUSBメモリ、SDカード等の外部記憶媒体に保存する通信記録出力端子を備える。
【発明の効果】
【0006】
請求項1によれば、緊急通報装置及びセンター装置の双方に通信記録を残すとともに、双方の通信記録の照合を行なうことができるので、緊急通報システムの動作状況を把握することができ、通報エラーが生じたときの原因を速やかに特定することができる。
請求項2によれば、通信エラー時に再送処理を行なうことで、より確実に通報することができるとともに、再送処理を毎回個別に記録することにより、少なくとも緊急通報装置の故障でないことを把握することができ、原因を速やかに特定することができる
請求項3によれば、外部通報先の緊急通報の通信記録と緊急通報装置の通信記録とが照合できるので通報エラーが生じたときの原因を速やかに特定することができる。
請求項4によれば、緊急通報装置の通信記録を外部に持ち出すことができ、通信エラー時の原因特定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る緊急通報システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る緊急通報システムのブロック図である。
図1に示すように緊急通報システムは住戸等に設置される緊急通報装置1と、緊急通報装置1と通信回線Lで接続され、緊急通報装置1からの緊急呼出信号を受信するセンター装置3から構成されている。
緊急通報装置1には火災センサ2a、ガス漏れセンサ2b、生活異変センサ2c等のセンサを接続するセンサ入力部11と、緊急時に通報を行なうための緊急通報ボタン12と、センサ2a、2b、2cあるいは緊急通報ボタン12の何れかが動作した場合に、センター装置3に対し通信回線Lを介し通報する通信回路14と、予め定められた外部通報先のセンター装置3を特定して通信回路14に対して通報するよう制御するCPU13と、後述する通信装置記憶部13aから通信記録を読み出すための通信記録出力端子15を備えている。
【0009】
CPU13には通信回路14とセンター装置3との通信記録を記憶する通報装置記憶部13aを備えている。さらに通報装置記憶部13aには、予め定められた外部通報先もあわせて記憶されている。
また、CPU13にはセンター装置3で記録された緊急呼出信号の通信記録と通報装置記憶部13aに記録された通信記録を照合する照合部13bを備える。
センター装置3には緊急通報装置1から受信した通信記録を記憶するセンター装置記憶部31を備える。
以下、緊急通報ボタン12が押された場合についてその動作を説明する。
緊急通報ボタン12が押されると、CPU13の図示しない入力ポートにボタン押下信号が入力される。CPU13はボタン押下信号に基づいて通報装置記憶部13aに記憶された外部通報先を読み出し、当該外部通報先に対して通信回線Lを介し外部のセンター装置3と通信回路14との通信を成立させ、緊急呼出信号をセンター装置3へと送る。また、CPU13はこの通信記録をCPU13内部の通報装置記憶部13aに記録するとともに、センター装置3は緊急通報装置1から受信した通信記録をセンター装置記憶部31に記憶する。
また、CPU13は緊急呼出信号が通信エラー、話中により外部通信先のセンター装置3に通報できなかった場合には再送処理を行なうが、この再送処理の記録は、再送を1回行なうごとに通報装置記憶部13aに記録する。
【0010】
次に外部のセンター装置3のセンター装置記憶部31に記憶されている通信記録と緊急通報装置1の通報装置記憶部13aに記録されている通信記録の照合について説明する。
緊急通報装置1の図示しない操作部、あるいは定期点検用のタイマ等の照合トリガがCPU13に入力されると、CPU13は通信記録の要求信号を通信回路14より通信回線Lを介し外部のセンター装置3に送出する。外部のセンター装置3は当該要求信号を受け、センター装置記憶部31に記憶された通信記録を緊急通報装置1に送信する。センター装置記憶部31からの通信記録は緊急通報装置1の通信回路14を介しCPU13に入力される。CPU13はセンター装置記憶部31からの通信記録とCPU13内部の通報装置記憶部13aに記録されている通信記録を照合部13bで照合し、照合不一致となった通信記録を通報装置記憶部13aに不一致情報とともに記録する。
例えば、通報装置記憶部13aにはセンター装置3に通報を行なったと記録されているにもかかわらず、センター装置記憶部31に記録がない場合、センター装置3に何らかの不具合が発生していると推測され、CPU13は、センター装置3の不具合として、不具合情報を通報装置記憶部13aに記録する。
また、例えば、通報装置記憶部13aにはセンター装置3に繰返し通報を行なおうとしたが、話中、あるいは無応答により通報できなかった記録が残っている場合には、CPU13は、センター装置3、通信回線Lの不具合のほか、通報装置記憶部13aに登録されている外部通報先が誤って書き換えられた可能性もあるとして、前述各機器の不具合の疑いとして、不具合情報を通報装置記憶部13aに記録する。なお、通報装置記憶部13aにもセンター装置記憶部31にも記録が残っていない場合には、緊急通報装置1の故障の可能性があるが、この場合には通報装置記憶部13aに記録するデータがそもそもないので、何も記録されない。
【0011】
次に緊急通報装置1にて通信記録の読み出し動作について説明する。
緊急通報装置1の図示しない操作部からデータの読み出し操作を行なうと、CPU13に通信記録の読み出し要求信号が送られる。CPU13は、読み出し要求信号を受信すると、通信記録出力端子15に接続されたUSBメモリ等の外部記憶媒体に対して通報装置記憶部13aに記憶されている通信記録、不具合情報、外部通報先の記録を読み出して出力する。
【産業上の利用可能性】
【0012】
なお、本発明では緊急通報装置が1台、センター装置が1台となっているが、複数の緊急通報装置、センター装置あってももちろん良い。また、話中、接続不良等の直ちに不具合が判明するものについては、緊急通報装置に何らかの報知機能を設けて、通報できないことを報知することも好適であり、さらには報知機能として緊急通報装置に接続され屋外に設置されたドアホンを用いることもできる。
また、本実施例では通信記録出力端子には外部記憶媒体を接続しているが、これに限らず、LAN等のネットワーク接続、RS−232C等の有線データ出力でも同様の効果を奏する。
さらに、本実施例では照合部を緊急通報装置に設けているが、これに代えてセンター装置に照合部を設けることも好適である。
【符号の説明】
【0013】
1 緊急通報装置
11 センサ入力部
13 CPU
13a 通報装置記憶部
13b 照合部
15 通信記録出力端子
2a、2b、2c センサ
12 緊急通報ボタン
3 センター装置
31 センター装置記憶部
L 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住戸等に設置し、緊急時に外部に緊急呼出信号を通報する緊急通報装置と、前記緊急通報装置と通信回線で接続され、外部の通報先として前記緊急通報装置からの緊急呼出信号を受信するセンター装置を備えた緊急通報システムにおいて、
前記緊急通報装置は、火災センサ、ガス漏れセンサ、生活異変センサ等の各種センサを接続する接続端子、及び、非常時に外部の通報先に通報するための緊急ボタンのうち少なくとも1つを有し、前記センサが作動した場合、あるいは緊急ボタンが操作された場合、緊急呼出信号を生成し、予め定められた通報先情報を読み出して、前記センター装置に通報する制御を行なうCPUを備え、
前記CPUは、緊急呼出信号を前記通報先情報とともに記憶する通報装置記憶部を有し、前記センター装置は、前記緊急通報装置からの緊急呼出信号を前記通報先情報とともに記憶するセンター装置記憶部を有し、
前記CPU及び前記センター装置の少なくとも1つは、前記通報装置記憶部及び前記センター装置記憶部の前記通報先情報を照合する照合部を有することを特徴とする緊急通報システム。
【請求項2】
前記CPUは、前記緊急呼出信号が通信エラーにより前記外部通報先に通報できなかった場合に再送処理を行なうと共に、前記再送処理を行なうごとに、前記通報装置記憶部に記憶する制御を行なうことを特徴とする請求項1記載の緊急通報システム。
【請求項3】
前記照合部は、前記通報装置記憶部及び前記センター装置記憶部の前記通報先情報を照合するための確認信号を送信し、照合結果に不一致が生じたときの原因を特定し、前記通報装置記憶部及び前記センター装置記憶部の少なくとも1つに、特定された不一致情報を記憶することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の緊急通報システム。
【請求項4】
前記緊急通報装置は、前記通報装置記憶部に記憶された前記緊急呼出信号、前記不一致情報の少なくとも1つをUSBメモリ、SDカード等の外部記憶媒体に保存する通信記録出力端子を備えたことを特徴とする請求項3記載の緊急通報システム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−73410(P2013−73410A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211727(P2011−211727)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】