説明

緊急開口容易なスライドファスナー

【課題】緊急開口容易なスライドファスナにおいて、スライダが下方に移動する際に、スライダーの案内柱が真下の噛合エレメントに引っ掛かるのを防止する。
【解決手段】第1ストリンガーと第2ストリンガーと移行エレメントとスライダとからなる緊急開口容易なスライドファスナで、ストリンガーは、テープとテープの縁部に取り付けられた噛合エレメントとからなり、スライダは第2ストリンガーに滑動自在に取り付けられスライダがスライドファスナの下端部からスライドファスナの上端部に移動すると噛合エレメントを係合するため第1と第2ストリンガーの噛合エレメントに沿って滑動する。スライドファスナの上端に面する移行エレメントの側部は、スライダがスライドファスナに沿って下方に移動する時に、スライダがスライドファスナエレメントに接触するにつれてスライダの案内柱からスライドファスナエレメントを離れるようにそらせる面をスライダに提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急開口容易なスライドファスナーに関するものである。具体的に言うと、本発明は、救命ジャケット又は救命いかだのような膨張可能な装置に使用するための緊急開口容易なスライドファスナー及びこのような緊急開口容易なスライドファスナーを備えた膨張可能な装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
救命ジャケットは、その着用者に浮力を与えるために色々な用途で着用されている。例えば、マリンスポーツを楽しむ人や、船旅を楽しむ人は、その船旅の間、又は、緊急の場合に、救命ジャケットを着用することが出来るのである。救命ジャケットの浮揚力は、例えばエア空間とか発泡ポリスチレンブロックような低密度の材料によって提供されるのである。ライフジャケットが十分な浮力を提供することが出来るように、救命ジャケットは、浮力を与える十分な体積の材料を備える必要があり、救命ジャケットが嵩だかになるのは不可避なのである。救命ジャケットが嵩高であるので、救命ジャケット着用者の運動を邪魔することになるのである。従って、空気を抜いた時にはコンパクトになり、必要なときには膨張することが出来る膨張可能な救命ジャケットを使用することが一般的である。船のデッキ上で保管することが出来、水中に投げ出した時に膨張する事が出来る膨張可能な救命いかだを提供することも知られている。
【0003】
膨張可能な救命ジャケットの例が図1に示されている。救命ジャケット101は、外側生地103と膨張可能な内側チューブ105とからなる。外側生地103は、前側パネル107と後側パネル109を形成するために折り曲げられる。そして、前側パネル107と後側パネル109とは、面ファスナー113,115によって救命ジャケット101の外側周囲縁部111の周りで取外し自在に連結されている。これによって、コンパクトで比較的肉薄の救命ジャケットを形成することになり、このような救命ジャケットは、着用者の運動を阻害することなく着用することが出来るのである。
【0004】
救命ジャケット101を拡張する場合、救命ジャケット101の内側チューブ105を膨張させるためコード117を引っ張ることによって圧縮ガスボンベを開ける。内側チューブ105が膨張するにつれて、内側チューブ105は、前側パネル107と後側パネル109を押圧し、救命ジャケット101の周囲縁部111の周りに走る面ファスナー113,115を強制的に開口するのである。2−3秒すると、内側チューブ105が完全に膨張し、面ファスナー113,115は、その全長に亘って開口し、膨張した内側チューブ105は、救命ジャケット101の周囲縁部111を越えて突出するのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外側生地103の前側パネル107と後側パネル109を取外し自在に連結するために面ファスナーを使用することについての欠点は、内側チューブ105が膨張し、面ファスナー113,115が分離するたびに面ファスナーが磨耗することによって二つの面ファスナー113,115の間の連結力が減少するという点である。更に、このような救命ジャケット101は、概ね海上における環境下で使用されるので、面ファスナーは、しばしば水と接触し、これによって、面ファスナーが作られている材料の質が低下する虞があり、これによって、長期間の間に、面ファスナーの効果が減殺され、周期的に面ファスナーを交換する必要性がでてくるのである。
【0006】
このような用途に面ファスナーを使用することについての更なる欠点は、救命ジャケットに噴射された水が凍結するかもしれない虞があるような凍結状況においてこのような救命ジャケットを使用された時に生ずるかもしれない危険性である。もし面ファスナーの連結部で水が凍結した場合には、二つの面ファスナーの分離が阻害される。このような欠陥は、面ファスナーを、ジップファスナーのようなスライドファスナーに交換すれば克服することが出来る。しかし、面ファスナーは、従来のスライドファスナーに簡単に交換することが出来ないのである。なぜならば、従来のスライドファスナーは、面ファスナーが救命ジャケットにおいて働く方法とは異なり、その長さに沿った一点で瞬時に開口することが出来ないからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴によれば、膨張可能部材とカバーとからなる膨張可能装置が設けられている。カバーは、緊急開口容易なスライドファスナーによって抜気された膨張可能部材の周りに取り付けられている。当該スライドファスナーは、膨張部材の力によってその長さに沿って自動的に完全に開口することが好ましい。
【0008】
当該装置は、例えば、膨張可能な救命ジャケット、救命いかだ、膨張可能なベッド、腰や他の体の部分を保護するための介護用品等である。
【0009】
本発明のもう一つの特徴によれば、第1ストリンガーと、第2ストリンガーと、移行エレメントと、スライダーとからなる緊急開口容易なスライドファスナーであって、夫々のストリンガーは、テープと当該テープの縁部に取り付けられた噛合エレメントとからなっており、当該スライダーは、第2ストリンガーに滑動自在に取り付けられており、スライダーがスライドファスナーの下端部からスライドファスナーの上端部に移動するにつれて、当該噛合エレメントを係合するため第1及び第2ストリンガーの噛合エレメントに沿って滑動可能となっており、スライドファスナーの上端に面する移行エレメントの側部は、スライダーがスライドファスナーに沿って下方に移動する時に、スライダーがスライドファスナーエレメントに接触するにつれて、スライダーの案内柱からスライドファスナーエレメントを離れるようにそらせる面をスライダーに提供していることを特徴とする前記緊急開口容易なスライドファスナーを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を、以下の図面を参照に実施例に従ってより詳細に説明する。本発明の他の特徴及び好ましい特徴は、以下の発明の詳細な記載を読むことにより明確となる。
【0011】
図2は、本発明の第1実施例によるスライドファスナーを示している。このスライドファスナー1は、第1ストリンガー3、第2ストリンガー5及びスライダー19とからなっている。夫々のストリンガー3,5は、テープ4と噛合エレメント15とからなっている。噛合エレメント15は、夫々のテープ4の対向する縁部17に取り付けられている。第1ストリンガー3の下端部9の噛合エレメント15の近傍には、蝶棒7が取り付けられており、当該蝶棒7は、第2ストリンガー5の下端部13の噛合エレメント15の近傍に取り付けられた箱体11に嵌入される。スライダー19は、第2ストリンガー5の噛合エレメント15に滑動自在に取り付けられている。スライダー19は、噛合エレメント15の下端部の箱体11と噛合エレメント15の上端部の止具21との間で噛合エレメント15に沿って滑動することが可能である。スライダー19が箱体11の近傍にある時に、蝶棒7がスライダーを通って箱体11に嵌入され、スライダー19は、対向する噛合エレメント15を係合するため、両群の噛合エレメント15に沿って移動することが出来るのである。ここまで記載された構造は、スライドファスナー即ちジップファスナーの技術分野において周知である。
【0012】
スライドファスナー1の長さに沿った第1の位置において、脆弱領域23が存在し、スライドファスナー1の隣接する噛合エレメント15の間にギャップ25を残すためストリンガー3,5の夫々から二つの噛合エレメントが除去されている。
【0013】
ギャップ25は、スライドファスナー1の長さに沿って脆弱点として機能する。従来のスライドファスナーは、テープが存在する面と垂直な方向にかかる力に耐えることが出来る。このような力がかかっても、対向する噛合エレメントは、係合状態のまま残り、強い力がかからない限り、スライドファスナーは、開口しないのである。しかし、本発明のスライドファスナーについては、ファスナーの面に垂直な方向に、特に、エレメント15が存在する面に対して垂直方向においてスライドファスナー1の第1位置23に力が加わった場合には、ギャップ25の近傍の噛合エレメント15は、この力に耐えることが出来ず、これらの噛合エレメント15は外れ、スライドファスナーは、スライドファスナー1の長さに沿って分離し始めるのである。
【0014】
第1ストリンガー3において、テープ4の縁部17におけるコード31を完全に露出するため、蝶棒7から離れた噛合エレメント15の上端部から多数の噛合エレメント15が除去され、これによって、第1ストリンガー3の噛合エレメント15の全体の長さは、第2ストリンガー5の噛合エレメント15の全体の長さよりも小さくなるのである。換言すると、第2ストリンガー5の噛合エレメント15と止具21は、第1ストリンガーの噛合エレメント15を越えて延びているのである。第1ストリンガー3から除去された噛合エレメント15の数は、スライダー19が第2ストリンガー5の最上端位置に到達し、止具21に当接した時に、第1ストリンガー3の最上端の噛合エレメント27の一部がスライダー19の中に配されるように配慮されることが好ましい。スライダー19の中に最上端の噛合エレメント27が存在しているので、スライダー19が止具21に対して当接してスライドファスナー1が閉鎖されたときに、ストリンガー3、5がこの位置で分離することが防止されるのである。しかし、この構成は、スライドファスナーが瞬時に分離する際に、ストリンガー3,5の分離を防止しないのである。そして、この構成は、以下に説明するように、スライドファスナーを瞬時に分離するための脆弱領域を提供することも出来るのである。
【0015】
当該技術分野において周知であるように、通常の使用の際に、テープ4が通過するスライダー19の側にスリット(図示せず)が存在する。コード31の高さは、当該スリットの高さよりも大きいので、スライダー19が最上端位置にあるときに、コード31は、スライダー19から横方向に外して自由に移動することが出来ない。しかし、コード31は、合理的な力がかけられた場合には、スライダー19から引き抜く事が出来ない程そんなに高くはないのである。
【0016】
このスライドファスナー1の噛合エレメント15は、出願人によって販売されているVISLON(商標)タイプの成型プラスチックエレメントである。しかし、このタイプのエレメントの代わりに、例えば金属エレメント又はコイルエレメントのような他のタイプの噛合エレメントを使用することも出来るのである。
【0017】
図6に示されているように、救命ジャケットの外側周囲縁部111には、図1に示されている面ファスナーの代わりに、このスライドファスナーが取り付けられている。ストリンガー3,5の夫々は、前側パネル107及び後側パネル109の対向する縁部のの一方に縫着又は溶着されている。図6に示されたA点からB点までスライドファスナーは、周囲縁部111の殆ど全周に亘って延びている。このようにして、スライドファスナーテープ4の下端部9、13は、A点にあり、テープ4の上端部29,32は、B点に存在し、(又、この逆も真である。)スライドファスナー1は、以下に例を挙げて更に説明するように、類似の方法で他の膨張可能な装置のカバーに取り付けることも出来る。
【0018】
使用に際して、スライダー19は、第2ストリンガー5の下端部13に移動され、これによって、スライダー19は箱体11に当接する。蝶棒7は、スライダー19を通して箱体11に挿入される。スライダー19は、スライドファスナー1の上端部29までスライドファスナー1に沿って移動され、これによって、スライダーがスライドファスナー1に沿って移動するにつれて、対向する噛合エレメント15を係合するのである。スライダー19がギャップ25を越えて移動するにつれて、スライダー19は、ギャップ25を越えて対向する噛合エレメント15を係合し続ける。スライダー19がスライドファスナー1の上端部29まで一旦到達すると、全ての対向する噛合エレメント15は、係合され、スライダー19は、第2ストリンガー5の止具21の位置で最上端に到達する。この位置において、第1ストリンガー3の縁部17には噛合エレメントが無いのであり、第1ストリンガー3の縁部に取り付けられているコード31は、スライダー内に配されているのである。コード31の高さがスリットの高さよりも大きいので、コード31は、スライダー19から横方向に自由に移動せず、所定の力がかかったときに、外方向にスリップするのである。第1ストリンガー3の最上部の噛合エレメント27の一部がスライダー19内に配された場合には、この最上部の噛合エレメント27は、ストリンガー3,5の分離を防止するように働く。他の実施例においては、コード19は、スライダー19から外方向に自由に移動することが出来るように肉薄であってもよく、又は、コードは無くてもよいのである。
【0019】
図6の救命ジャケット101’が膨張した時に、膨張可能チューブが拡張するにつれて、当該チューブは、噛合エレメント15が存在する面に対して実質的に直交する方向でスライドファスナー1に力を加える。この力が噛合エレメントにおけるギャップ25が存在する第1脆弱領域23に対して加わった時に、スライドファスナー1のギャップ25の近傍のこれらの噛合エレメント15は、外方に押出され、互いに外れる。スライドファスナー1の残りの噛合エレメント15は、スライドファスナー1の端部9,13,29に至るまでずっと引き離されるのである。スライドファスナーの噛合エレメント15がスライドファスナー1の上端29において一旦開口すると、コード31は、スライダーから強制的に出される。肉薄のコードを備えた上に示された別の実施例のため、コードは、スライダー19からスリップする。上で述べたように、もし第1ストリンガー3の上端の噛合エレメント27の一部がスライダー19内に配されている場合には、この上端の噛合エレメント27は、コード31がスライダー19から強制的に出される前にスライダー19から引き出されるのである。
【0020】
このように、救命ジャケット(又は他の膨張可能な装置)の内側チューブが膨張すると、スライドファスナー1は、その長さに沿って完全に開口する。第1のストリンガー3の上端部32がスライダー19から完全に分離することは、次のような更なる効果をもたらすのである。即ち、救命ジャケットが後の使用の準備のために空気を抜いて収縮されると、スライダー19は、第2ストリンガー5の下端部13まで容易に移動し、これによって、スライドファスナーを再度使用する状態にすることができ、救命ジャケットを再使用状態にさせるための時間をスピードアップすることができるという効果をもたらすのである。
【0021】
この実施例においては、2つの噛合エレメント15がストリンガー3,5の夫々から除去即ち省略されるのである。本発明は、この数の噛合エレメントのギャップに限定されないのであり、他の実施例においては、この数よりも多くの又はこの数よりも少ない噛合エレメント15を除去即ち省略することも出来るのである。このような数であっても、力が加わった時に、スライドファスナーが急激に膨張することを容易にする効果があるのである。除去されるべき噛合エレメントの数は、ためしを行うことによって容易に決めることが出来る。又、ストリンガーの一方のみから噛合エレメントを除去即ち省略しても良いのである。
【0022】
別の実施例においては、救命ジャケットは、その長さに沿ってギャップ25の形状の2つ以上の脆弱領域23を備えていても良いのである。又、更に別の実施例においては、救命ジャケットは、その長さに沿ってギャップ25を備えていなくてもよいが、第1ストリンガー3を第2ストリンガー5とスライダー19から強制的に離すことによってスライダー19が位置している上端において引き離し運動を開始しても良いのである。
【0023】
又、2つのスライドファスナーを使用しても良い。これらのファスナーの下端部は、夫々、A点及びB点に配することが出来る。そして、これらのスライドファスナーの上端部は、救命ジャケットカバーの首領域の互いのスライドファスナーの近傍の図6のC点に配することが出来る。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施例によるスライドファスナー1’を示している。スライドファスナー1’は、図2のスライドファスナー1と同一の全体構造を有している。これらの二つのスライドファスナーの違いは、図3のスライドファスナー1’は、図2のスライドファスナー1と異なり、第1位置23にギャップ25を備えていないという点である。むしろ、ギャップ25の代わりに、テープ4が存在する面に対して直交する方向に力が加わった時に急激に膨張する一定の数の修正噛合エレメント30が備えられているのである。このような修正噛合エレメント30の構造は、本願出願人の対応する英国特許出願0414935.7号の中で更に詳細に説明されており、この英国出願は、ここに引用することによって本願の一部を構成する。又、修正噛合エレメント30の構造は、図4a及び4bで図示するとともに、以下に説明する。
【0025】
標準タイプ(非修正タイプ)の成型プラスチックエレメントは、ファスナーテープの縁部に成型される胴体と、当該胴体から延びる首部と、当該首部の外側端部に設けられた頭部とを有する。首部は、頭部と胴体との間の幅狭領域即ちくびれ領域を形成する。噛合エレメントが、エレメントの面内方向に分離することを防止するため、噛合エレメントの頭部は、相手のファスナーテープの二つの隣接する噛合エレメントの首部の間に嵌合する。エレメント首部の近傍には肩部が設けられており、肩部は、ファスナー頭部の面外方向の運動を限定するために、対向するエレメントの頭部にある溝部と協働するのである。
【0026】
図4a及び図4bは、修正された成型噛合エレメント30を示している。修正噛合エレメント30の上側胴体の頭部38は、隣接するエレメント30の肩部46に載置され、内方への力(図4aで見た場合に下方への力)に抵抗するのである。しかし、鼻部44は相手方の噛合エレメント30の肩部46の間を通過するので、外方への力(図4aで見た場合に上方への力)に対する抵抗力は小さいのである。又、鼻部44は、対向する噛合エレメント30とは係合しない。鼻部44は、肩部46の間に嵌入し、スライドファスナーチェーンが噛合エレメント15,30に対して横方向のファスナー面内の線に沿って上方に折り曲げられた場合に、スライドファスナーチェーンの折り曲げを限定するのである。
【0027】
従って、噛合されたエレメントの線は、修正噛合エレメント30の位置においては、一方向にのみより容易に折り曲げることが可能であり、これによって、ジップファスナー引き離すことが出来る脆弱点を提供することが出来るとともに、一方向から見た場合にスライドファスナー1’の均一の外観を維持することも出来るのである。又、スライドファスナー1’は、スライドを使用する通常の使用態様で開閉することも出来る。
【0028】
別の実施例におては、頭部38は、鼻部44に類似した形状である。このような噛合エレメントは、両方向に等しく容易に折曲がるのである。
【0029】
使用される修正エレメント30の数は、ファスナーを開閉するためにかかる所望の力によって決まるのである。好ましくは、一連の少なくとも3つの隣接するエレメントが設けられ、一方のテープ4に一つのエレメントそして他方のテープ4に二つのエレメントが設けられ、更に好ましくは、少なくとも4つのエレメントが設けられる。
【0030】
修正噛合エレメント30は、エレメント内のギャップ25と組合わせて設けても良い。このようにして、図2の実施例と同様に、エレメント15を省略即ち除去することによってギャップ25が形成され、そして、ギャップ25の端部の直ぐ近傍の一方のテープ又は両方のテープ4のエレメントが修正エレメントなのである。
【0031】
図16及び図18は、本発明の更なる実施例によるスライドファスナー1”,1””を示している。スライドファスナー1”,1””は、図2のスライドファスナー1と同一の全体的な構造を有している。2つのスライドファスナー1”,1””と図2のスライドファスナー1との間の違いは、図16及び18のスライドファスナー1”,1””は、テープ4の縁部17の殆どの部分に沿って走る噛合エレメント15に加えて、ガイドエレメント33,33’及び移行エレメント34を有しているという点である。
【0032】
特に、図16のスライドファスナー1”は、(図2の噛合エレメント15においてギャップ25があった位置である)テープ4の縁部18に沿って走る第1の位置23と、(図2の噛合エレメントの上端において噛合エレメントが無かった位置である)蝶棒7と離れた噛合エレメント15の上端部24においてガイドエレメント33を備えるとともに、以下に説明するように、23及び24の夫々の位置に、夫々のテープ4のガイドエレメント33のうちの最も下にあるガイドエレメントと噛合エレメントとの間に移行エレメント34を備えている。
【0033】
図3に関連して上で説明された噛合エレメント15と異なり、図16のガイドエレメント33は、首部も頭部も無いのである。即ち、ガイドエレメント33は、平面図において、矩形を呈する胴体のみからなっているのである。ガイドエレメント33が首部も頭部も無いので、ガイドエレメント33は、対向するガイドエレメント33にも噛合エレメント15にも係合することが出来ないのである。図16の実施例において、第1ストリンガー3には、12個のガイドエレメント33が設けられており、第2ストリンガー5には、13個の対向するガイドエレメント33が設けられている。
【0034】
図18のスライドファスナー1””は、三角形の頭部39を有しているガイドエレメント33’を備えているので、対向するガイドエレメント33’が互いに係合することなしに互いの間に嵌合するのである。図16のガイドエレメント33に対するこれらのガイドエレメント33’の長所は、対向するエレメント33’の間のギャップが減少し、これによって、第1位置23において傷害やスライドファスナーの早めの開口につながる虞のある対向するエレメント33’の間に指のような物体が挿入されるのを防止する点である。又、製造作業の際に、一連のエレメントの中にあるギャップを誤まって感知することを防止するのである。なお、ギャップは、例えばテープを切断するための作業に信号を付与するためスライドファスナーチェーン又はストリンガーの端部を感知するために通常用いられている。
【0035】
これらのガイドエレメント33,33’の目的は、テープ4が係合しないスライドファスナー1”,1””のこれらの部分に沿ってスライダーが移動するにつれてスライダー19をガイドする事である。スライダー19は、第1位置23の下にある噛合エレメント15から第1位置23の上にある噛合エレメント15までスライドファスナー1”,1””に沿って移動する際に、スライダー19は、第1位置23を通過して移動するにつれて、テープ4から逸脱することがなく、第1位置23の上にある噛合エレメント15と容易に再係合することが出来るのである。このことは、図16及び図18に示されているように、第1位置23が多数のガイドエレメント33,33’に亘って延びている場合に特に効果的である。もしこれらのガイドエレメント33,33’が存在しないとしたら、スライダー19は、テープ4から逸脱したり、第1位置23の直ぐ上にある対向する噛合エレメント15を一直線上に配することが困難になるのである。
【0036】
図16と図18の実施例において、止具21の領域において、一連の噛合エレメント15の上部におけるテープ4の夫々に矩形のガイドエレメント33が設けられている。第1ストリンガー3の上部には、一つのガイドエレメント28(33)が設けられており、第2ストリンガー5の上部には、2つの対向するガイドエレメント33が設けられている。第1ストリンガー3の上部にあるガイドエレメント33の位置は、スライダー19が第2ストリンガー5においてその最上位置に到達して、止具21と当接した時に、第1ストリンガー3における上部ガイドエレメント28の一部がスライダー19内に配されるような位置であることが好ましい。
【0037】
図2の第1実施例におけるように、スライダー19の中にこの上部のガイドエレメント28が存在することによって、スライダー19が止具21に当接することによってスライドファスナー1”,1””が閉鎖された時に、この位置においてストリンガー3,5が分離することが防止されるのである。この構成は、スライドファスナー1”,1””が一気に開口したときにストリンガー3、5が分離するのを妨げず、図2に関連して上で述べたように、スライドファスナー1”,1””が一気に開口するために脆弱領域を提供することが出来るのである。更に又、ストリンガー3,5の上端部24に噛合エレメントの代わりにガイドエレメント33を使用することは、第1ストリンガー3がスライダー19から離れるのをより容易にするのである。なぜならば、ストリンガー3,5に設けられた対向するガイドエレメント33が互いに係合せず、従って、噛合エレメント15が使用されている場合にはそうであるよりも、第1ストリンガー3がスライダー19から出るように移動することに対する抵抗力が小さいからである。
【0038】
図16においては、スライドファスナー1”の長さに沿って二つの位置に、即ち、噛合エレメント15の第一の位置23と噛合エレメント15の上端部24の夫々において、夫々のテープ4のガイドエレメント33の最下端のエレメントと噛合エレメント15との間において、移行エレメント34が設けられている。図18においては、噛合エレメント15の上端部24にのみ移行エレメント34が設けられている。
【0039】
伝統型のスライダー19は、(取付柱が配されている)上翼部と下翼部とからなり、上翼部と下翼部は、案内柱によって連結されている。上翼部と下翼部の縦縁部の夫々からはガイドフランジが延びており、ガイドフランジと案内柱との間にガイドチャネルが形成されている。ガイドチャネルの寸法は、噛合エレメントの寸法に合わせて定められる。ガイドチャネルの断面の面積は、当該技術分野において周知であるように、噛合エレメントがその中にぴったり合致するようになっている。
【0040】
伝統的なスライドファスナーについては、スライダーの中のストリンガーの部分は、Y字状を成す。即ち、ストリンガーは、スライダーの下で係合し、スライダーの上で係合が外れる。スライダーがストリンガーに沿って下方に移動する際には、ストリンガーがガイドチャネルに引き込まれて案内柱を越えて移動するにつれて、スライダー内に進入し、係合した噛合エレメントの係合が外れるのである。
【0041】
上に述べたように、矩形のガイドエレメント33と噛合エレメントとの違いは、噛合エレメント15が首部と頭部とを有しているのに対して、ガイドエレメント33は胴体しか持っていないという点である。これは、矩形のガイドエレメント33がテープ4の縁部17から外方に延びる方向に噛合エレメント15よりも短いということと、スライダーのガイドチャネルの中にこれらのガイドエレメント33を収容する十分なスペースがあるということを意味する。上に説明したように、ガイドエレメント33を備えたスライドファスナーについては、スライダー19がこれらのガイドエレメント33に沿って下方に移動する際に、スライダーの上にあるストリンガーの間の角度は、スライダーが噛合エレメント15に沿って移動する時におけるストリンガーの間の角度よりも小さい可能性がある。このように角度が小さいということは、下から案内柱に近づいてくる噛合エレメント15は、案内柱の近傍でガイドチャネルに噛合エレメント15が存在している場合にそうであるよりもより引き離されていないことを意味する。従って、スライダーがガイドエレメント33からその下にある噛合エレメント15まで下方に移動する際に、スライダーの案内柱は、噛合エレメント15の端部を外れず、ガイドエレメント33の直ぐ下にある噛合エレメント15の首部にひっかるかも知れないのである。そのことによって、スライダーがスライドファスナーに沿って更に下に引っ張られることが阻害されるのである。
【0042】
スライダー19が噛合エレメント15に絡まるのを防止するために図16及び図18のスライドファスナー1”,1””上には移行エレメント34が設けられている。これによって、スライダーはスライドファスナー1”,1””に沿ってスムースに下方に移動することが出来るのである。図16と図18のスライドファスナー1”,1””において下端ガイドエレメント33,33‘と上端噛合エレメント15との間におけるテープ4の上端部24の夫々のストリンガー3,5には移行エレメント34が設けられており、図16のスライドファスナー1”においては下端ガイドエレメント33と上端噛合エレメント15との間の第1位置23には夫々のストリンガー3,5に更なる移行エレメント34が設けられている。これらの移行エレメントは、スライダーの案内柱に面するカム面を提供しており、案内柱がエレメントにまとわりつくのを防止するため案内柱がこのカム面の上で滑動することが出来るようになっている。
【0043】
図17から見ることができるように、移行エレメント34は、スライドファスナー1”,1””の上端部24に面する側部35に如何なる突起部も有しておらず、案内柱の方向に概ね凸面になっているので、スライダー19がスライドファスナー1”,1””に沿って下方に移動する際に、スライダー19の案内柱はスライドファスナー1”,1””の上端部24に面する移行エレメント34の側部35と接触し、移行エレメント34を通過するために移行エレメント34を外方に押出すのである。従って、スライダー19は、移行エレメント34に引っ掛かることはなく、スライドファスナー1”,1””が係合から連続して外れるのを容易にするためスライダー19は、移行エレメント34を超えて容易に押すことが出来るのである。
【0044】
スライダー19の案内柱が移行エレメント34を越えて容易に通過し、この位置においてストリンガー3,5が分離することを促進するために、図17に示されているように、スライドファスナー1”,1””の上端部24に面する側部35を凸面にするために当該側部35の端部37は、下方に、即ち、スライドファスナー1”,1””の上端部24から離れる方向に傾斜していることが好ましい。
【0045】
移行エレメントの形状は隣接する噛合エレメントに合致するように変えることが出来、対向するテープの移行エレメントは、同一である必要は無い。
【0046】
図18のスライドファスナー1””においては、下端ガイドエレメント33’と上端噛合エレメント15との間における第1位置23において移行エレメント34が存在しない。なぜならば、最下端のガイドエレメント33’の頭部39の三角形状がスライダー19の案内柱がガイドエレメント33’に対して押圧して、これを押し離すための傾斜面を備えており、これによって、スライダー19がガイドエレメント33’を越えて容易に押すことができ、スライドファスナー1””の係合を連続して容易に外すことが出来るからである。
【0047】
他の実施例においては、テープ4の第1位置23と上端部24の内の一方にのみガイドエレメント33そして/又は移行エレメント34を設けても良い。例えば、ギャップ25の直ぐ下にある噛合エレメント15の代わりに、ストリンガー3,5の夫々に図2のスライドファスナー1に移行エレメント34を設けても良いのである。
【0048】
図16及び図18のスライドファスナー1”,1””並びにガイドエレメント33そして/又は移行エレメント34を備えた上に記載した他の実施例のいずれのスライドファスナーも図2のスライドファスナー1の代わりに救命ジャケット101’に装着することが出来る。
【0049】
図2,図3,図16及び図18のスライドファスナー1,1’,1”,1””が閉鎖された状態において、救命ジャケットが膨張する前に、スライドファスナー1,1’,1”,1””が通常の使用における手荒の取扱いによって引き離されることもある。
【0050】
図5に示されているように、更なる実施例によれば、図2のスライドファスナー1のギャップ25の上に、図3のスライドファスナー1’の修正エレメント30の上に、又は、図16及び18のスライドファスナー1”1””の第1位置23の上にフラップ51のような補強部材を配しても良い。このフラップ51は、修正されたエレメント又は除去されたエレメントの近傍におけるエレメントの係合が外れるために必要な力を増加させることによって及び一気の開口につながるかもしれない他の物品が引っ掛かることに対してこの領域を保護することによってスライドファスナーが早めに一気に開口してしまうのを阻止する働きをする。同様に、スライダー19が配されているスライドファスナーが早めに一気に開口してしまうのを防止するためスライドファスナー1の上端部にフラップ53を配してもよい。これらのフラップ51,53は、図5に示されているように、テープ4の夫々に面ファスナーを使用することによって取り付けても良い。別の実施例においては、この位置においてスライドファスナー1,1’,1”,1””が分離するのを防止するため領域23又は閉鎖位置にあるときにはスライダー19においてスライドファスナー1,1’,1”,1””を横切って延びるように救命ジャケット101’の前パネル及び後パネル107,109にテープ51,53を取り付けても良い。チューブ105が吸気したときに、チューブ105が拡大することによって、脆弱部23そして/又はスライダー19におけるスライドファスナーの一気の開口とともに面ファスナーの抵抗を克服するのである。これとは別に、EP−1468622−Aに記載されているような脆弱なリンク又は連結不能連結部材のような他のタイプの補強部材を使用しても良い。このような連結部材は、ストリンガーテープ4を連結するためにストリンガーテープ4の隣接する領域を部分的に溶融することによって形成された連結部材、ストリンガーテープ4の間のギャップを橋架するために接着、縫着又は溶着によってタフェッタテープ(tafetta tape)のような一枚のテープからなる連結部材、係合部分の係合の方向がテープが配されている面若しくはこれに対して垂直な面である例えば雄部と雌部のような係合第1部分と係合第2部分を備えたスナップファスナーからなる連結部材等を含む。又、これらの部分をカバーするために接着テープを使用しても良い。
【0051】
スライドファスナーの早め分離を阻止するための更なる構造が図19と図20に示されている。これらの図のスライドファスナー1””’は第1位置23においてガイドエレメント33’の上と下にロックエレメント41を使用した点を除いて、図18のスライドファスナー1””と同一なのである。スライドファスナー1””’の夫々のテープ3,5には二つのロックエレメント41が設けられている。ロックエレメント41の夫々は、(二つの頭部を有する)二つの連結されたエレメントの一般的な形状をしているので、ロックエレメント41を形成する二つのエレメントの間における相互の運動は制限される。
【0052】
この実施例において、エレメントの頭部の形状は、スライドファスナー1””’の夫々の側において異なっている。図20は、スライドファスナー1””’の背面図である。この図において、ロックエレメント41の頭部の後部分は、噛合エレメント15の形状と類似した頭部と首部を有しているので、対向するロックエレメント41が係合することが出来るのである。図19からわかるように、ロックエレメント41の前部分は、ガイドエレメント33’の形状と類似の三角形状をしている。ロックエレメント41の頭部の前部分は、互いに係合しない。ロックエレメント41の頭部は、ロックエレメント41が面外方向に係合が外れるのを防止するために異なった前部分と後部分を有しているのである。他の実施例において、ロックエレメント41の頭部の前部分と後部分の双方が同一の係合タイプであってもよい。このロック部分は面外方向に係合が外れるのを防止するために肩部も含んでいる。
【0053】
対向するロックエレメント41を係合するために、ロックエレメント41の頭部間に対向するエレメントの頭部を挿入することが出来るようにするためロックエレメント41を折り曲げるのに十分な力を夫々のロックエレメントに加えなければならない。同様に、対向するロックエレメント41の係合を外すために、ロックエレメント41の頭部間から対向するエレメントの頭部を除去することが出来るようにするため夫々のロックエレメントを折り曲げなければならない。
【0054】
図19及び20のスライドファスナー1””’について、ロックエレメント41を開閉するためにより大きな力が必要であるけれども、ロックエレメント41は、スライドファスナー1””’の開閉の際にテープ3,5のエレメントに沿ってスライダー19を移動させることによって通常の態様で開閉することが出来る。図19及び20のスライドファスナー1””’がこれらの図に示されているように、閉鎖された時に、ロックエレメント41の係合を外すために十分に強い力を第1位置23に加えることによって当該スライドファスナーは一気に開口することが出来るのである。このような方法で、図19及び20のスライドファスナー1””’はスライドファスナーが早めに開口されることに対して抵抗することが出来るのである。
【0055】
図7は、図2,3,5又は図15乃至図20の実施例のスライドファスナー1乃至1””’によって連結された2半分155,157から形成された蛤タイプのカバー153を有する救命いかだ151を示している。ファスナー1乃至1””’において(視界から隠されている)脆弱領域23を補強するためカバー半分155,157には補強部材51が取り付けられている。救命いかだ151が水上に投げ出されると、救命いかだは、自動的に膨張し、補強部材を開口又は破断し、脆弱領域23においてジップファスナー1乃至1””’を一気に開口する。
【0056】
図8は、図2,3,5又は16のスライドファスナー用の暫定的な止具61を示している。暫定的止具61は、スライダー19がスライドファスナー1,1’,1”の噛合エレメント15に沿って上方に移動するのを阻止するためにテープ4から外方向に延びているピン63を有している。ピン63は、テープ4の上及び下に突出している。ピン63は、スライダー19に増大する力がかかった時にスライダーがピン63を越えて移動するような状態で配されている。使用に際して、スライドファスナー1,1’,1”の下端部9、13からスライドファスナー1,1’,1”の上端部29の方向にピンの下にある最上方位置までスライダー19を移動させることによってスライドファスナー1,1’、1は通常閉鎖される。当該装置が膨張すると、スライドファスナー1,1’,1”は、ギャップ25又は修正噛合エレメント30から離され、スライドファスナー1,1’,1”の開口部がスライダー19に到達した時に、膨張したチューブの力は、ピン63を越えてスライダーを押圧し、これによって、スライダー19は、第2ストリンガー5の噛合エレメント15のチェーンの上端にある止具21まで走行し、第1ストリンガー3はスライダー19との係合を外し、これによって、スライドファスナー1,1’,1”はその長さ方向に沿って完全に開口される。当該技術分野において知られているように、例えば変形可能止具のような他の暫定的な止具が使用されてもよい。図18に示されている暫定的止具61と類似の位置に第2ストリンガーに補足的に又は代替的に暫定的な止具を取り付けてもよく、同一の効果がもたらせることになる。
【0057】
図9は、噛合エレメント15のチェーンの上端の方向に嵌合することが出来るロックエレメント67を示している。ロックエレメント67は、噛合エレメント15のチェーンの上端の下において嵌合する。即ち、ロックエレメント67の上に噛合エレメント15が存在する。
【0058】
使用に際しては、スライダー19がスライドファスナー1,1’,1”の上端29の方向に噛合エレメント15のチェーンに沿って移動すると、スライダー19は、ロックエレメント67を越えて通過し、これによって、ロックエレメント67と係合し、そして、噛合エレメント15の上端までそしてエンドストップ21によるその最上端位置まで通過する。この位置において、スライダー19は、第1ストリンガー3ともはや係合せず、ロックエレメント67はストリンガー3,5の上端部29を連結する。スライドファスナー1,1’,1”が一気に開口した時に、噛合エレメント15は、ロックエレメント67の方向に係合がはずれ、ロックエレメント67を強制的に離し、スライドファスナーは、その長さに沿って完全に開口する。
【0059】
図10及び図11は、第1ストリンガー3の下端部に挿入される修正された蝶棒7’,7”を示している。蝶棒7’,7”は、スライドファスナー1,1’,1”がその長さに沿って一気に開口し、スライドファスナー1,1’,1”の開口部がスライドファスナー1,1’,1”の下端9に到達した時に、蝶棒7’,7”が箱体11から容易に外れるよう修正されている。
【0060】
図10の蝶棒7’は、丸みをもつ下外コーナー69と切欠き内側縁部71即ち第1ストリガー3のテープ4に面している縁部を有している。スライドファスナー1,1’,1”が一気に開口するときに、蝶棒7’の上端部73は、箱体11に取り付けられた箱棒75から離れるように移動する、即ち、蝶棒7’の上端73は、左に移動し、曲線状の下外コーナー69が切欠き71と組み合わされることによって、蝶棒7’は、容易に箱体11から外れることが出来るのである。
【0061】
図11において、蝶棒7”は、図10の蝶棒7’よりも長さが短い。このように長さが短いということは、図10の蝶棒の下外コーナー69が丸みを持つことと類似の効果を有するのである。即ち、スライドファスナー1,1’,1”が一気に開口するときに、蝶棒7”は容易に箱体11から外れるのである。
【0062】
図15は、本発明の更に別の実施例による第2のタイプのスライドファスナー1”’の概略断面図である。スライドファスナー1”’はこのページから連続して延びる係合雄部に201と係合雌部203とからなる。雄部201は、鏃状頭部205を有している。雌部203の頭部207は、雄部201に対面する外側壁211の中心に開口部209を持つ矩形断面を有している。開口部209の高さhは、雄部201の鏃状頭部205の高さHよりも小さい。雄部201の頭部205そして/又は外壁211は、弾性変形可能であるので、鏃状頭部205は、開口部209を通って雌部203の頭部207の空洞部213に挿入され得る。雄部201の頭部205は、外側壁211によって空洞部213から出ることが防止される。
【0063】
スライドファスナー1”’は、雄部201と雌部203に沿って移動するスライダー(図示せず)を用いて閉鎖される。スライダーが一方向において雄部及び雌部201,203に沿って移動するときに、雄部と雌部を係合するために、スライダーは、雄部201の鏃状頭部205を開口部209を通して雌部203の頭部207に押入する。そして、スライダーが他の方向に移動するにつれて、スライダーは、鏃状頭部205を開口部209を通して外方向にゆっくりと引き抜くことによって雄部材と雌部材201,203の係合を外すのである。
【0064】
本発明のこの実施例によるスライドファスナー1”’は、鏃状頭部205が雌部203から引き出すことが出来るように第1位置において修正されている。スライドファスナー1”’は、頭部205の高さHを減少させることによってそして/又は開口部209の高さhを増大させることによって修正されている。このような修正は、スライドファスナー1”’に沿って一つよりも大きな位置において行ってもよいのである。スライドファスナー1”’は、雄部201又は雌部203のうちの一つの高さを減少させるように第2位置において修正されており、これによって、スライダーは、雄部201又は雌部203から外れるのである。連続して延びる部材を備えた他のスライドファスナーを使用してもよい。例えば、ダブルの頭部を備えた雄部と内側壁と外側壁に開口部を有する8形状の断面を有する頭部を備えた雌部とを有するスライドファスナーを使用してもよい。
【0065】
上に説明されたスライドファスナー1−11””’は、例えば図6の救命ジャケット101’とか図7の救命いかだ151のような膨張可能な装置に理想的であり適している。スライドファスナー1−1””’は膨張可能な装置に使用されるという用途に加えて、これらのスライドファスナーは、例えば、テントの開口部(図12)や、隔壁(図13)を連結する用途、寝袋(図14)時折一気に開口することのある連結具を有する他の装置等の他の装置にも使用することが出来るのである。
【0066】
修正噛合エレメント30、ギャップ25、フラップ51,53及び止具63の使用及びその構造は、用途、タイプ、サイズ、スライドファスナーの材質、スライドファスナーを一気に開口するためにかかる力等の多数のファクターによって決まるということは当業者によって容易に理解される。当業者は、必要なときはファスナーが一気に開口し、早まって開口することが無いバランスのとれた色々な用途に適した構造を決めることが出来るのである。
【0067】
当業者であれば、色々な修正を理解する事ができ、このような全ての修正は、添付のクレームの範囲に属していることを期待する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】 周知の膨張可能な救命ジャケットの一部を切り欠いた図面である。
【図2】 この発明の第1の実施例によるスライドファスナーを示している。
【図3】 この発明の第2の実施例によるスライドファスナーを示している。
【図4a】 図3のスライドファスナーの一部を構成する修正噛合エレメントの内の一対のエレメントの斜視図である。
【図4b】 図3のスライドファスナーの一部を構成する修正噛合エレメントの内の一対のエレメントの斜視図である。
【図5】 本発明の第3の実施例によるスライドファスナーを示している。
【図6】 図2のスライドファスナーを備えた膨張可能な救命ジャケットを示している。
【図7】 図2,3,5又は16のスライドファスナーを備えた膨張可能な救命いかだを示している。
【図8】 図2,3,5又は16のスライドファスナーの上端部において使用されることになる暫定的な止具を示している。
【図9】 図2,3,5又は16のスライドファスナーに使用されることになるロック部材を示している。
【図10】 図2,3,5又は16のスライドファスナーに使用するための修正された蝶棒を示している。
【図11】 図2,3,5又は16のスライドファスナーに使用するための修正された蝶棒を示している。
【図12】 本発明のスライドファスナーを備えた本発明の実施例を示している。
【図13】 本発明のスライドファスナーを備えた本発明の別の実施例を示している。
【図14】 本発明のスライドファスナーを備えた本発明の更に別の実施例を示している。
【図15】 本発明の更なる実施例による第2のタイプのスライドファスナーの断面図である。
【図16】 本発明の更なる実施例によるスライドファスナーを示している。
【図17】 図16のスライドファスナーの修正エレメントの斜視図である。
【図18】 本発明の更なる実施例によるスライドファスナーを示している。
【図19】 本発明の更なる実施例によるスライドファスナーを示している。
【図20】 図19のスライドファスナーの背面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ストリンガーと、第2ストリンガーと、移行エレメントと、スライダーとからなる緊急開口容易なスライドファスナーであって、夫々のストリンガーは、テープと当該テープの縁部に取り付けられた噛合エレメントとからなっており、当該スライダーは、第2ストリンガーに滑動自在に取り付けられており、スライダーがスライドファスナーの下端部からスライドファスナーの上端部に移動するにつれて、当該噛合エレメントを係合するため第1及び第2ストリンガーの噛合エレメントに沿って滑動可能となっており、スライドファスナーの上端に面する移行エレメントの側部は、スライダーがスライドファスナーに沿って下方に移動する時に、スライダーがスライドファスナーエレメントに接触するにつれて、スライダーの案内柱からスライドファスナーエレメントを離れるようにそらせる面をスライダーに提供していることを特徴とする前記緊急開口容易なスライドファスナー
【請求項2】
スライドファスナーの上端に面する移行エレメントの側部は、凸面状であることを特徴とする請求項に記載された緊急開口容易なスライドファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−78812(P2011−78812A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271968(P2010−271968)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2008−507145(P2008−507145)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】