説明

総合輸液製剤

【課 題】 アミノ酸、還元糖、脂溶性ビタミン、ビタミンB、ビタミンC等が配合されているにもかかわらず、誤投与の恐れない安定な総合輸液製剤を提供する。
【解決手段】 連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、並びに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容された脂溶性ビタミン液(C)を備え、ビタミンBが脂溶性ビタミン液(C)に、ビタミンCが還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする総合輸液製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアミノ酸、還元糖、ビタミン類を含有した総合輸液製剤に関する。本発明は前記成分以外に微量金属元素やヨウ素を含有した総合輸液製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
連通可能な隔壁により隔てられた2室(A室およびB室)と該2室のいずれか一方と連通可能な小容器(C室)を備える容器に、還元糖液とアミノ酸液とビタミン液とを分別収容したものがいくつか検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、A室にアミノ酸およびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖、ビタミンBおよびビタミンBを含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEおよびビタミンKを含有する輸液が充填されており、A室および/またはB室の輸液にさらに電解質が含有された総合輸液製剤が開示されている。
【0004】
特許文献2には、A室にアミノ酸、ビタミンBおよびビタミンCを含有する輸液、B室に還元糖およびビタミンBを含有する輸液、C室にビタミンA,ビタミンD,ビタミンE、ビタミンKおよびビタミンB12を含有する輸液が充填されており、A室および/またはB室の輸液にさらに電解質が含有された総合栄養輸液剤が開示されている。
【0005】
特許文献3には、A室にL−チロシンを除くアミノ酸、ビタミンCおよびパントテン酸を含有する輸液、B室に還元糖、L−チロシン、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンBおよびニコチン酸類を含有する輸液、C室にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB12を含有する輸液が充填されており、A室および/またはB室の輸液にさらに電解質が含有された総合栄養輸液剤が開示されている。
【0006】
特許文献4には、還元糖を含有する溶液、アミノ酸を含有する溶液および脂溶性ビタミンを含有する溶液の3液からなる輸液であって、還元糖液がビタミンBを含有し、アミノ酸液が葉酸を含有し、脂溶性ビタミン液がビタミンCを含有し、更にビタミンBがアミノ酸液または脂溶性ビタミン液に配合された中心投与用輸液が記載されている。
【0007】
さらに特許文献5には、還元糖を含有する溶液、アミノ酸を含有する溶液、ビタミンDを含有する溶液の3液からなる輸液であって、還元糖液が更にビタミンBを含有し、アミノ酸液が更にビタミンB12、葉酸を含有し、ビタミンD液が更に他の脂溶性ビタミン、ビタミンBおよびビタミンCを含有した輸液が記載されている。
【0008】
これらのうち、特許文献1〜3に記載の輸液は、ビタミンBを還元糖液またはアミノ酸液に配合するものであるが、ビタミンB自体は黄色であり、当然これを溶解すると溶液は黄色となるため、還元糖やアミノ酸が分解しても、その分解に起因する着色を認識・判別できなくなってしまうという問題がある。また、比較的容量の大きい液が黄色となるため、全ての液を混合したと誤認して未混合のまま一方の液のみを投与してしまうおそれも懸念される。
【0009】
一方、特許文献4や5に記載の輸液は、ビタミンBをアミノ酸液や還元糖液とは異なる小容器に収容したものであるため、上記の問題は起こらないと考えられる。しかしながら、この輸液はビタミンCを配合した脂溶性ビタミン液が小容器に収容されたものであり、脂溶性ビタミンは安定化されるが、逆に小容器中に収容したビタミンBがビタミンCの影響で酸素により酸化され易くなってしまうという問題がある。特に、小容器を2室に区切り、一方の室に微量金属元素製剤を収容する場合には、その安定化のために小容器自体を還元糖液側に配置する必要があるが、還元糖液には通常亜硫酸塩のような抗酸化剤が添加されていないので、溶存酸素がビタミンBに影響を与えるおそれがある。
【特許文献1】特開2000−273035号公報
【特許文献2】特開2001−55328号公報
【特許文献3】特開2001−163780号公報
【特許文献4】特開平11−158061号公報
【特許文献5】国際公開WO99/39679号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、アミノ酸、還元糖、脂溶性ビタミン、ビタミンB,ビタミンC等が配合されているにもかかわらず、誤投与の恐れがない安定な総合輸液製剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、連通可能な隔壁により隔てられた2室を分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、ならびに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容された脂溶性ビタミン液(C)を備え、ビタミンBを脂溶性ビタミン液に配合し、ビタミンCを還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合することにより、配合のし忘れによる誤認投与の恐れのない優れた総合輸液製剤が得られることを見出した。そして、この知見を基礎にしてさらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は下記[1]〜[11]の総合輸液製剤に関する。
[1] 連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、並びに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容された脂溶性ビタミン液(C)を備え、ビタミンBが脂溶性ビタミン液(C)に、ビタミンCが還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする総合輸液製剤、
[2] ビタミンCがアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする前記[1]に記載の総合輸液製剤、
[3] 容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記連通可能な隔壁が、容器本体の対向する内壁面同士を剥離可能にシールすることで構成され、前記小容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記容器の連通可能な隔壁の近傍で前記容器本体の対向する内壁面それぞれに固着されており、前記隔壁の開封に伴う内壁面の離間に伴って小容器が開封するようにされたことを特徴とする前記[1]または[2]に記載の総合輸液製剤、
[4] 前記小容器が2室に区切られ、一方の室に脂溶性ビタミン液(C)が、他方の室に微量金属元素製剤が収容され、容器の還元糖液(A)を収容する室中に配置されてなる前記[3]に記載の総合輸液製剤、
[5] ヨウ素が還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されてなる前記[4]に記載の総合輸液製剤、
[6] 還元糖液(A)中の還元糖がブドウ糖である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の総合輸液製剤、
[7] アミノ酸液(B)中のアミノ酸がL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシンおよびグリシンである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の総合輸液製剤、
[8] 脂溶性ビタミン液(C)中の脂溶性ビタミンがビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKである前期[1]〜[7]のいずれかに記載の総合輸液製剤、
[9] 微量金属元素液(D)中の微量金属元素が鉄、マンガン、亜鉛および銅である前記[4]のいずれかに記載の総合輸液製剤、
[10] 還元糖液(A)がさらにビタミンB、ビタミンB,ビタミンB12、パンテノールおよびヨウ素を含み、アミノ酸液(B)がさらにアスコルビン酸、葉酸およびニコチン酸アミドを含む前記[9]記載の総合輸液製剤、および
[11] 前記(A)〜(D)の全ての溶液を混合した時の成分組成が、次の範囲である前記[10]記載の総合輸液製剤、
【表1】

【発明の効果】
【0013】
本発明の総合輸液製剤はアミノ酸、還元糖、および各種ビタミン(脂溶性ビタミン、ビタミンB、ビタミンCを含む)を配合した安定な総合輸液製剤であり、且つビタミンビタミンBが配合されているにもかかわらず、アミノ酸や還元糖の分解に基づく着色を認識・区別することができ、そのため配合忘れによる誤投与を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の総合輸液製剤は、連通可能な隔壁により隔てられた2室(第1室および第2室ともいう)を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、並びに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容された脂溶性ビタミン液(C)を備え、ビタミンBが脂溶性ビタミン液(C)に、ビタミンCが還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする。
【0015】
還元糖液(A)中に含有される還元糖としては、ブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示され、中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースが好ましく、とりわけ血糖管理などの点でブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0016】
全ての溶液を混合した溶液中に還元糖は、約20〜800g/L、好ましくは約50〜400g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0017】
この還元糖液(A)は通常のpH調整剤、例えば、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜使用してpH約2〜6、好ましくは約2.5〜5に調整するのが好ましい。
【0018】
アミノ酸液(B)中に含有されるアミノ酸としては、従来から生体への栄養補給を目的とするアミノ酸輸液に含有されている必須アミノ酸、非必須アミノ酸、および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。具体的には例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩などの有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でも良い。
【0019】
全ての溶液を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されているのが好ましい。L−ロイシン約0.4〜20.0g/L、好ましくは約0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−バリン約0.1〜16.0g/L、好ましくは約0.3〜8.0g/L、L−リジン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−スレオニンを約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン約0.04〜3.0g/L、好ましくは約0.08〜1.5g/L、L−メチオニン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン約0.2〜12.0g/L、好ましくは約0.4〜6.0g/L、L−システイン約0.01〜2.0g/L、好ましくは約0.03〜1.0g/L、L−チロシン約0.01〜2g/L、好ましくは約0.02〜1.0g/L、L−アルギニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−アラニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−プロリン約0.1〜10.0g/L、好ましくは約0.2〜5.0g/L、L−セリン約0.1〜6.0g/L、好ましくは約0.2〜3.0g/L、グリシン約0.1〜12.0g/L、好ましくは約0.3〜6.0g/、L−アスパラギン酸約0.01〜4.0g/L、好ましくは約0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸約0〜6.0g/L、好ましくは約0〜3.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0020】
アミノ酸液(B)のpHは、通常のpH調整剤、例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリを適宜用いて約2.5〜10、好ましくは約5〜8に調製するのが好ましい。
【0021】
脂溶性ビタミン液(C)中に含まれる脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられる。ビタミンAとしては、例えばパルミチン酸エステル、酢酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンDとしては例えばビタミンD、ビタミンD、ビタミンD(コレカルシフェロール)およびそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられる。ビタミンE(トコフェロール)としては、例えば酢酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンK(フィトナジオン)としては、例えばフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオンなどの誘導体が挙げられる。
【0022】
これらの脂溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンAを約400〜6500IU/L、好ましくは約800〜6500IU/L、より好ましくは約800〜4000IU/L、ビタミンD(コレカルシフェノールとして)を約0.5〜10.0μg/L、好ましくは約1.0〜10.0μg/L、より好ましくは約1.0〜6.0μg/L、ビタミンE(酢酸トコフェノールとして)を約1.0〜20.0mg/L、好ましくは約2.5〜20.0mg/L、より好ましくは約2.5〜12.0mg/L、ビタミンK(フィトナジオンとして)を約0.2〜4.0mg/L、好ましくは約0.5〜4.0mg/L、より好ましくは約0.5〜2.5mg/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、ビタミンBが脂溶性ビタミン液(C)に配合され、ビタミンCが還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合される。ビタミンBとしては、例えばリン酸エステル、そのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチドまたはフラビンアデニンジヌクレオチドなどが挙げられる。ビタミンCとしては、例えばアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0024】
ビタミンBおよびビタミンCは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンB(リボフラビンとして)を約0.5〜6.0mg/L、好ましくは約1.0〜6.0mg/L、より好ましくは約1.0〜4.0mg/L、ビタミンC(アスコルビン酸として)を約12〜200mg/L、好ましくは約25〜200mg/L、より好ましくは約25〜120mg/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0025】
本発明においては、前記した脂溶性ビタミン(すなわち、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)、ビタミンBおよびビタミンC以外に各種の水溶性ビタミンを配合することができる。かかる水溶性ビタミンとしては、ビタミンB、パントテン酸類、ビタミンB、ニコチン酸類、ビタミンB12、葉酸、ビオチン(ビタミンH)などが挙げられる。ビタミンB1としては、例えば塩酸チアミン、プロスルチアミンまたはオクトチアミンなどが挙げられる。パントテン酸類としては、遊離体に加え、カルシウム塩や還元体であるパンテノールの形態などが挙げられる。ビタミンBとしては、例えば塩酸ピリドキシンなどの塩の形態などが挙げられる。ニコチン酸類としては、例えば、ニコチン酸またはニコチン酸アミドなどが挙げられる。ビタミンB12としては、例えばシアノコバラミンなどが挙げられる。
【0026】
これらの水溶性ビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンB(塩酸チアミンとして)を約0.4〜30.0mg/L、好ましくは約0.8〜30.0mg/L、より好ましくは約1.0〜5.0mg/L、パントテン酸類(パントテン酸として)を約1.5〜35.0mg/L、好ましくは約3.0〜30.0mg/L、ビタミンB(塩酸ピリドキシンとして)を約0.5〜8.0mg/L、好ましくは約1.0〜8.0mg/L、より好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ニコチン酸類(ニコチン酸アミドとして)を約5.0〜80.0mg/L、好ましくは約10.0〜80.0mg/L、より好ましくは約10.0〜50.0mg/L、ビタミンB12(シアノコバラミンとして)を約0.5〜50.0μg/L、好ましくは約1.0〜20.0μg/L、より好ましくは約1.0〜10.0μg/L、葉酸を約50〜800μg/L、好ましくは約100〜800μg/L、より好ましくは約100〜120μg/L、ビオチンを約5〜120μg/L、好ましくは約15〜120μg/L、好ましくは約15〜70μg/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0027】
本発明においては、前記の還元糖、アミノ酸、ビタミン類(脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン)のほか、さらに微量金属元素を配合することができる。
【0028】
微量金属元素としては、例えば、鉄、マンガン、亜鉛、銅、ヨウ素などが挙げられる。これら微量金属元素のうち、鉄の供給源としては、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄などが挙げられ、マンガンの供給源としては、例えば塩化マンガン、硫酸マンガンなどが挙げられ、亜鉛の供給源としては、例えば塩化亜鉛、硫酸亜鉛などが挙げられ、銅の供給源としては、例えば硫酸銅などが挙げられ、ヨウ素の供給源としては、例えばヨウ化カリウムなどが挙げられる。
【0029】
これら微量金属元素は、対象となる患者の状態に対応して一種類のみを使用しても良く、二種類以上を使用しても良い。微量金属の配合量は、輸液分野における各種の文献に記載された、一日当たりの各微量金属元素の投与量(一日必要量)として一般的な範囲内であれば、特に限定されない。配合量を例示するとすれば、全ての溶液を混合した溶液中に、鉄(鉄供給源として)を約2〜200μmol/L、好ましくは約5〜100μmol/L、マンガン(マンガン供給源として)を約0〜10μmol/L、好ましくは約0〜5μmol/L、亜鉛(亜鉛供給源として)を約2〜300μmol/L、好ましくは約1〜150μmol/L、銅(銅供給源として)を約0.5〜40μmol/L、好ましくは約1〜20μmol/L、ヨウ素(ヨウ素供給源として)を約0〜5μmol/L、好ましくは約0.2〜5μmol/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0030】
前記の微量金属元素のうち、鉄、マンガンおよび銅は、図2に示されるように、小容器を2室(第3室および第4室)に区切り、脂溶性ビタミン液(C)とは別に収容するのが好ましい。すなわち、脂溶性ビタミン液(C)を第3室に、そして鉄、マンガンおよび銅を含む微量金属元素液(D)を第4室に収容するのが好ましい。ヨウ素は、少なくとも銅とは分別するのが好ましく、例えば還元糖液(A)に好適に配合される。亜鉛は還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合することもできるが、微量金属元素液(D)に配合するのが好ましい。
【0031】
脂溶性ビタミン、ビタミンBおよびビタミンC以外の各種水溶性ビタミンは次のよう配合することができる。
【0032】
ビタミンBは、還元糖液(A)、脂溶性ビタミン液(C)または微量金属元素液(D)に配合することができ、特に還元糖液(A)または脂溶性ビタミン液(C)に配合することが好ましく、中でも還元糖液(A)に配合するのが好ましい。ビタミンBを配合する液は、亜硫酸塩を含まず、pHは約3.5〜5.5であるのが好ましい。
【0033】
ビタミンBは、還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、脂溶性ビタミン液(C)、微量金属元素液(D)のいずれに配合してもよいが、還元糖液(A)に配合するのが好ましい。
【0034】
ビタミンB12は、還元糖液(A)または脂溶性ビタミン液(C)に配合するのが好ましく、とくに還元糖液(A)に配合するのが好ましい。ただし、ビタミンCとの共存は避けることが望ましい。したがって、ビタミンB12を還元糖液(A)に配合した場合は、ビタミンCはアミノ酸液(B)に配合するのが好ましい。
【0035】
ビオチン(ビタミンH)は、還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、脂溶性ビタミン液(C)、微量金属元素液(D)のいずれに配合してもよいが、還元糖液(A)に配合するのが好ましい。
【0036】
パントテン酸類は、還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、脂溶性ビタミン液(C)、微量金属元素液(D)のいずれに配合してもよいが、還元糖液(A)に配合するのが好ましい。
【0037】
ニコチン酸類は、還元糖液(A)、アミノ酸液(B)、脂溶性ビタミン液(C)、微量金属元素液(D)のいずれに配合してもよいが、アミノ酸液(B)に配合するのが好ましい。
【0038】
葉酸は、アミノ酸液(B)、脂溶性ビタミン液(C)または微量金属元素液(D)に配合するのが好ましく、特にアミノ酸液(B)に配合するのが好ましい。
【0039】
本発明の総合輸液製剤において、好ましい配合例は、3室に分割して充填する場合は、還元糖液(A)にはブドウ糖のほかにビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、パントテン酸類を含有しており、アミノ酸液(B)にはL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシンからなるアミノ酸のほかにビタミンCおよびニコチン酸類を含有し、脂溶性ビタミン液(C)にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKからなる脂溶性ビタミンのほかにビタミンB、ビオチンを含有したものが挙げられる。
【0040】
また、微量金属元素液(D)を用い、4室に分割して充填する場合は、還元糖液(A)にはブドウ糖のほかにビタミン類としてビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、パントテン酸類を、微量金属元素としてヨウ素(ヨウ化カリウムとして)を含有しており、アミノ酸液(B)には、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシンからなるアミノ酸のほかにビタミン類としてビタミンCおよびニコチン酸類を含有し、脂溶性ビタミン液(C)にはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKからなる脂溶性ビタミンのほかにビタミンBを含有し、微量金属元素液(D)に鉄、マンガン、亜鉛、銅からなる微量金属元素のほかビタミン類としてビオチンを含有したものが挙げられる。
【0041】
本発明においては、還元糖、アミノ酸、ビタミン類(脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン)、微量金属元素以外に、さらに電解質を配合することができる。電解質としては、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Ma2+)などの陽イオン、クロールイオン(Cl)などの陰イオン、およびリン(P)などが挙げられる。ナトリウムイオンの供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられる。カリウムイオン源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウムなどが挙げられる。カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられる。マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられる。リン源としては、例えばリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウムなどのリン化合物が挙げられる。
【0042】
これらの電解質は、全ての溶液を混合した溶液中に、ナトリウムイオンが約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように、カリウムイオンが約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/Lとなるように、カルシウムイオンが約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように、マグネシウムイオンが約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように、リンが約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/Lとなるように、クロールイオンが約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0043】
これらの電解質のうち、カルシウム塩およびマグネシウム塩はリン化合物と分離して、異なる溶液に配合しておくのが好ましい。その他の電解質は特に制限されず、溶液(A)〜(C)のいずれに配合してもよい。
【0044】
なお、アミノ酸液(B)には、安定化剤として亜硫酸塩および/または亜硫酸水素塩を添加することもでき、その場合、アミノ酸液(B)中に50mg/L以下配合するのが好ましい。
【0045】
本発明の総合輸液製剤の好ましい具体例としては、還元糖液(A)にブドウ糖、ビタミンB、ビタミンB,ビタミンB12、パンテノールおよびヨウ素(ヨウ化カリウムとして)を含有し、アミノ酸液(B)にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン、ニコチン酸アミド、葉酸およびアスコルビン酸を含有し、脂溶性ビタミン類液(C)にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKおよびビタミンBを含有し、微量金属元素液(D)に鉄、マンガン、亜鉛、銅およびビオチンを含有する輸液剤を挙げることができる。
【0046】
本発明の総合輸液製剤の他の好ましい具体例としては、還元糖液(A)にブドウ糖、ビタミンB、ビタミンB,ビタミンB12およびパンテノールを含有し、アミノ酸液(B)にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン、ニコチン酸アミド、葉酸およびアスコルビン酸を含有し、脂溶性ビタミン類液(C)にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンBおよびビオチンを含有する輸液剤を挙げることができる。
【0047】
本発明の総合輸液製剤のさらに好ましい具体例としては、前記(A)〜(D)の全ての溶液を混合した後の輸液1L中に各成分が下記表2記載の範囲となるように配合されている輸液剤を挙げることができる。
【表2】

【0048】
また、微量金属元素液(D)を配合しない本発明の総合輸液製剤の好ましい具体例としては、前記(A)〜(C)の全ての溶液を混合した後の輸液1L中に各成分が下記表3記載の範囲となるように配合されている輸液剤を挙げることができる。
【表3】

【0049】
本発明にかかる総合輸液製剤の容器は、連通可能な隔壁により隔てられた、還元糖液(A)とアミノ酸液(B)を収容するための2室を有し、かつ該2室のいずれか一方と連通可能な、脂溶性ビタミン液(C)を収容するための小容器を有するものであれば特に限定されない。また、前記小容器はさらに、脂溶性ビタミン液(C)と微量金属元素液(D)とを別々に収容するための2室に区切られていてもよく、あるいは脂溶性ビタミン液(C)と微量金属元素液(D)とを別々に収容するために2つの小容器を設けてもよい。
【0050】
この様な容器は、特に限定されず、例えば特開平11−158061号公報や国際公開WO99/39679号パンフレットに記載されたものを採用し得るが、特に好ましい形態は、2室の隔壁の開通に伴って小容器が開通するものとして、国際公開公報WO2003/092574号パンフレットに記載されたものが挙げられる。
【0051】
本発明の総合輸液製剤を収容する輸液容器の一態様を、図を用いて具体的に説明する。図1は輸液容器の平面図であり、連通可能な隔壁(5)により隔てられた2室(第1室および第2室)を有し、かつ該2室のうちいずれか一方と連結可能な小容器(6)が設けられている。 第1室(3)または第2室(4)のいずれかに還元糖液(A)が充填され、他方の室にアミノ酸液(B)が充填されるが、上室となる第1室(3)に還元糖液(A)を、下室となる第2室(4)にアミノ酸液(B)を充填するのが好ましい。また、小容器(6)には脂溶性ビタミン液(C)が充填されるが、小容器(6)は、図2に示すように2室に区切り、一方の室(第3室(6a))に脂溶性ビタミン液(C)を充填し、他方の室(第4室(6b))に微量金属元素液(D)が充填されていてもよい。小容器(6)は、第1室(3)に還元糖液(A)が充填され、第2室(4)にアミノ酸液(B)が充填される場合は、第1室側に設けられたものが好ましい。
【0052】
なお、第1室(3)に連通する閉塞された薬液流入部(9)はシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられ、第2室(4)に連通する閉塞された薬液流出部(8)は、患者への内部薬液の注入のための輸液セットと接続するために、さらにはシリンジなどを用いて他の薬剤を注入するために用いられる。
【0053】
輸液容器の本体(2)の素材としては、従来より医療用容器等に慣用されている各種の可撓性熱可塑性プラスチックが使用でき、例えば、ポリエチレンまたはそのコポリマー、ポリプロピレンまたはそのコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール部分ケン化物、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーのようなオレフィン系樹脂もしくはポリオレフィン部分架橋物、スチレン系エラストマー、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類もしくは軟質塩化ビニル樹脂など、またはそれらの内適当な樹脂を混合した素材、あるいはナイロン、環状オレフィンコポリマーなど他の素材も含めて前記素材を多層に成形したシートなどが利用可能である。
【0054】
第1室(3)と第2室(4)との間に設けられている連通可能な隔壁(5)は、第1室(3)または第2室(4)を押圧することにより両室が連通されるものであればよく、例えば、容器本体の対抗する内壁面同士を剥離可能に弱シールすることで構成されているものが好適に挙げられる。
【0055】
小容器(6)は、上記還元糖液(A)およびアミノ酸液(B)を収容する2室の一方の室に、用時連結可能に接続されている。そのような小容器としては、特に限定されないが、例えば、可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、連通可能な隔壁(5)の近傍で容器本体(2)の対向する内壁面それぞれに固着されており、隔壁(5)の開封に伴う内壁面の離間に伴って開封するものが好ましい。この様な小容器を備えた輸液容器は、例えば、WO03/092574に記載の容器が挙げられる。図3は、図1におけるA−A線断面図である。
【0056】
小容器(6)の材質は、輸液容器本体の材質と同様なものが使用できるが、とりわけ隔壁(5)の開封に伴う内壁面の離間に伴って開封しやすいもの、例えばポリ環状オレフィンやポリプロピレンをポリエチレンで挟んだ多層構造のフィルムが好適に挙げられる。
【0057】
上記のような小容器を備えた輸液容器は、例えば、図3(a)に示すように、小容器(6)の一端部は、第1室(3)を構成するフィルム(2a)(2b)の内壁面に熱融着され、この融着部分が固着部(7)を形成している。この固着部(7)は、弱シールされている隔壁(5)の近傍に、隔壁(5)より強く、通常は剥離しない強度で融着されている。
【0058】
この様に構成された輸液容器を用いた場合の使用方法について説明する。まず第1室または第2室を手で押さえる等して押圧し、室内の圧力を高める。これによって、シール部の隔壁(5)が開封して第1室(3)と第2室(4)が連通し、還元糖液(A)とアミノ酸液(B)が混合される。このとき、隔壁(5)の開封は、容器本体(2)のフィルム(2a)、(2b)が離間することで行なわれ、これに伴って小容器(6)が開封する。すなわち、図3(b)に示すように、容器本体のフィルム(2a)、(2b)が離間すると、この離間に伴う力Fが小容器(6)に作用する。このとき、小容器(6)の2枚の多層フィルム(6a)、(6b)が固着部(7)により容器本体(2)のフィルム(2a)、(2b)に固定されているため、多層フィルム(6a)、(6b)は容器本体(2)のフィルム(2a)、(2b)とともに離間される。その結果、小容器(6)を構成する多層フィルム(6a)、(6b)が層間剥離を起こし、これに伴って多層フィルムが破断する。こうして、小容器(6)内に封入された脂溶性ビタミン液(C)が、上記のように混合された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)との混合液に混入する。続いて、薬液流出部(8)のゴム栓(図示省略)に導管が接続された刺栓針(図示省略)を刺入すると、混合された薬液が導管を介して患者に投与される。
【0059】
小容器(6)は、図2に示すように、2室に区切り、一方の室(第3室)に脂溶性ビタミン液(C)を充填し、他方の室(第4室)に微量金属元素液(D)が充填されていてもよいが、この場合は、小容器(6)は上記のような仕切り用弱シールで仕切ればよい。また、仕切りを設けた小容器を用いる代わりに、小容器を2つ設け、一つの小容器に脂溶性ビタミン液(C)を充填し、他方の小容器に微量金属元素液(D)を充填することもできる。
【0060】
上記のような容器に収容された本発明の輸液は、変質、酸化などを確実に防止するために、該容器を脱酸素剤と共にガス非透過性外袋で包装するのがよく、とりわけ容器として隔壁が易剥離製溶着により形成されたものを採用した場合は、外圧により隔壁が連通しないように該隔壁部にて折りたたまれた状態で包装するのが好ましい。また、必要に応じて不活性ガス充填包装などを行なうこともできる。
【0061】
外袋に適した材質としては、一般に汎用されているガス非透過性のフィルムもしくはシートを使用することができ、例えばエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル、ナイロンなどガス非透過性素材のうち少なくとも1種を含むフィルムもしくはシート、または多層フィルム、あるいはこれらにシリカ蒸着またはアルミナ蒸着などを施したものなどが挙げられ、適宜に選択し、使用することができる。
【0062】
さらに、上記外袋に遮光性をもたせるのが好ましい。外袋に遮光性をもたせるには、例えば上記フィルムまたはシートにアルミ蒸着を施したり、アルミラミネートフィルムやカーボンブラックなどを混入させたポリエステルフィルムなどを用いることにより実施できる。
【0063】
外袋の形状、大きさなどは総合輸液収容容器を収納できれば特に制限されるものではない。好ましくは、該容器の約1.2〜約3倍容量程度の大きさであるのがよい。
【0064】
外袋内に封入する脱酸素剤としては、例えば、(1)炭化鉄、鉄カルボニル化合物、酸化鉄、鉄粉、水酸化鉄またはケイ素鉄をハロゲン化金属で被覆したもの、(2)水酸化アルカリ土類金属もしくは炭酸アルカリ土類金属、アルカリ性物質またはアルコール類化合物と亜ニチオン酸塩との混合物、(3)第一鉄化合物、遷移金属の塩類、アルミニウムの塩類、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含むアルカリ化合物、窒素を含むアルカリ化合物またはアンモニウム塩と亜硫酸アルカリ土類金属との混合物、(4)鉄もしくは亜鉛と硫酸ナトリウム・1水和物との混合物または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(5)鉄、銅、スズ、亜鉛またはニッケル;硫酸ナトリウム・7水和物または10水和物;およびハロゲン化金属の混合物、(6)周期律表第4周期の遷移金属;スズもしくはアンチモン;または該混合物とハロゲン化金属との混合物、(7)アルカリ金属もしくはアンモニウムの亜硫酸塩、亜硫酸水素塩またはピロ亜硫酸塩;遷移金属の塩類またはアルミニウムの塩類などを用いることができる。これら公知物の中から、所望により適宜に選択することができる。上記脱酸素剤としては、粉末状のものであれば、適当な通気性の小袋にいれて用いるのが好ましく、錠剤化されているものであれば、包装せずにそのまま用いてもよい。
【0065】
また、脱酸素剤としては、市販のものを用いることができ、かかる市販の脱酸素剤としては、例えばエージレス(三菱ガス化学社製)、モデュラン(日本化薬社製)、バイタロン(東亜合成化学工業社製)、タモツ(王子化工株式会社製)、サンソカット(株式会社ファインテック製)、セキュール(日本曹達株式会社製)、オキシガード(東洋製罐株式会社製)、ハイレトフレックス−RD(東洋製罐株式会社製)などが挙げられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>
(1)還元糖液(A)の調製
注射用蒸留水にブドウ糖および電解質(塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、ヨウ化カリウム)を溶解し、更にビタミンB(塩酸チアミン)、ビタミンB(塩酸ピリドキシン)、ビタミンB12
(シアノコバラミン)およびパンテノールを溶解し、酢酸でpH4とした後、無菌濾過して、表4に示した組成の還元糖液(A)を調製した。
【0068】
(2)アミノ酸液(B)の調製
また、各結晶アミノ酸および電解質(塩化カリウム、硫酸マグネシウム、酢酸カリウム)を注射用蒸留水に溶解し、ビタミンC(アスコルビン酸)、葉酸、ニコチン酸アミドを加えて溶解した後、コハク酸でpH6.5に調整し、無菌濾過して表5に示した組成のアミノ酸液(B)を調製した。なお、溶液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
【0069】
(3)脂溶性ビタミン液(C)の調製
上記液(A)および液(B)とは別に、ビタミンA(パルミチン酸レチノール)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(酢酸トコフェロール)およびビタミンK(フィトナジオン)をポリソルベート80(液(C)中の濃度=5mg/mL)、ポリソルベート20(液(C)中の濃度=1mg/mL)およびポリエチレングリコール400(マクロゴール400)を加えて混和し、少量の注射用蒸留水を加えて可溶化した。更に、注射用蒸留水にビタミンB
(リン酸リボフラビンナトリウム)およびD−ソルビトールを溶かし、クエン酸と水酸化ナトリウムでpH6とした後、前記可溶化液と混和した。この液を無菌濾過して、表6に示した組成の脂溶性ビタミン液(C)を調製した。
【0070】
(4)微量金属元素液(D)の調製
コンドロイチン硫酸ナトリウムの注射用蒸留水溶液に、塩化第二鉄の注射用蒸留水溶液と水酸化ナトリウムの注射用蒸留水溶液を、はじめに水酸化ナトリウム溶液から順に1/10量づつ交互に添加しながら、所定量の塩化第二鉄を添加した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛およびビオチンをそれぞれ注射用水の溶液として添加した後、pHを水酸化ナトリウムで5.3に調整し、常法により濾過して表7に示した組成の溶液を調製した。なお、コンドロイチン硫酸ナトリウムは濃度2.5g/Lとなるように添加した。
【0071】
(4)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した2室小容器に、上記脂溶性ビタミン液(C)および微量金属元素液(D)それぞれ4mLを分別充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの第1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した第1室に上記還元糖液(A)692mL、第2室に上記アミノ酸液(B)300mLを充填し、それぞれヘッドスペース部が0mLとなるように密封し、図2のような容器入り総合輸液製剤を得た。
【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【0072】
<実施例2>
(1)還元糖液(A)の調製
実施例1と同様にして、表8に示した組成の還元糖液(A)を調製した。
(2)アミノ酸液(B)の調製
実施例1と同様にして、表9に示した組成のアミノ酸液(B)を調製した。なお、アミノ酸液(B)には、安定化剤として亜硫酸水素ナトリウムを濃度50mg/Lとなるように添加した。
(3)脂溶性ビタミン液(C)の調製
実施例1と同様にして、表10に示した組成の脂溶性ビタミン液(C)を調製した。
【0073】
(4)充填・包装
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した小容器に、上記液(C)4mLを充填し、溶閉した。次に、ポリエチレン製2室輸液バッグの1室に上記小容器を挿入し、バッグの両壁面に溶着した。続いて、小容器を挿入した室に上記液(B)300mLを、他方の室に上記液(A)696mLを充填し、それぞれヘッドスペース部が0mLとなるように密封し、図2のような容器入り総合輸液製剤を得た。
【表8】

【表9】

【表10】

【0074】
<比較例1>
アスコルビン酸を、アミノ酸液(B)に配合する代わりに脂溶性ビタミン液(C)に12.5mg/mLの濃度となるように配合する他は実施例1と同様にして、容器入り総合輸液製剤を得た。
【0075】
<比較例2>
アスコルビン酸を、アミノ酸液(B)に配合する代わりに脂溶性ビタミン液(C)に12.5mg/mLの濃度となるように配合する他は実施例2と同様にして、容器入り総合輸液製剤を得た。
【0076】
<試験例>
実施例1および2、並びに比較例1および2で得られた総合輸液製剤について、酸素濃度1%、3%および5%の気体40mLを、小容器を挿入した液に注入し、常法により加熱滅菌を行った後、脱酸素剤と共にガスバリア性遮光袋(アルミラミネート袋)により包装した。包装後1週間室温に放置した後、日本薬局方の一般試験法:高速液体クロマトグラフ法により、ビタミンB含量を測定した。表11に未滅菌時のビタミンB含量に対する滅菌包装後のビタミンB含量を残存率として示した。
【表11】

【0077】
<考察>
ビタミンBはビタミンCと同時配合することにより、酸素に対し不安定となる(比較例1および2)。従って、ビタミンBとビタミンCを同時配合する場合は、ヘッドスペースの酸素濃度を厳密に管理しなくてはならない。一方、本発明の実施例1および2のようにビタミンBとビタミンCを別室に配合することにより、ヘッドスペース酸素濃度を厳密に管理しなくてもよいという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の総合輸液製剤は、医薬品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る総合輸液製剤の容器の一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る総合輸液製剤の容器の一実施形態を示す平面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 総合輸液容器
2 容器本体
3 第1室
4 第2室
5 連通可能な隔壁(弱シール部)
6 小容器
7 固着部
8 薬液流出部
9 薬液流入部
10 吊掛孔
2a、2b 容器本体のフィルム
6a、6b 小容器の多層フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通可能な隔壁により隔てられた2室を有する容器の各室に分別収容された還元糖液(A)とアミノ酸液(B)、並びに前記2室のいずれか一方と連通可能な小容器に収容された脂溶性ビタミン液(C)を備え、ビタミンBが脂溶性ビタミン液(C)に、ビタミンCが還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする総合輸液製剤。
【請求項2】
ビタミンCがアミノ酸液(B)に配合されたことを特徴とする請求項1に記載の総合輸液製剤。
【請求項3】
容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記連通可能な隔壁が、容器本体の対向する内壁面同士を剥離可能にシールすることで構成され、前記小容器が可撓性熱可塑性プラスチックフィルムより形成され、前記容器の連通可能な隔壁の近傍で前記容器本体の対向する内壁面それぞれに固着されており、前記隔壁の開封に伴う内壁面の離間に伴って小容器が開封するようにされたことを特徴とする請求項1または2に記載の総合輸液製剤。
【請求項4】
前記小容器が2室に区切られ、一方の室に脂溶性ビタミン液(C)が、他方の室に微量金属元素液(D)が収容され、かつ該小容器が容器の還元糖液(A)を収容する室中に配置されてなる請求項3に記載の総合輸液製剤。
【請求項5】
ヨウ素が還元糖液(A)またはアミノ酸液(B)に配合されてなる請求項4に記載の総合輸液製剤。
【請求項6】
還元糖液(A)中の還元糖がブドウ糖である請求項1〜5のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項7】
アミノ酸液(B)中のアミノ酸がL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシンおよびグリシンである請求項1〜6のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項8】
脂溶性ビタミン液(C)中の脂溶性ビタミンがビタミンA、ビタミンD、ビタミンEおよびビタミンKである請求項1〜7のいずれかに記載の総合輸液製剤。
【請求項9】
微量金属元素液(D)中の微量金属元素が鉄、マンガン、亜鉛および銅である請求項4に記載の総合輸液製剤。
【請求項10】
還元糖液(A)がさらにビタミンB、ビタミンB,ビタミンB12、パンテノールおよびヨウ素を含み、アミノ酸液(B)がさらにアスコルビン酸、葉酸およびニコチン酸アミドを含む請求項9に記載の総合輸液製剤。
【請求項11】
前記(A)〜(D)の全ての溶液を混合した時の成分組成が、次の範囲である請求項10記載の総合輸液製剤。
【表1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−117586(P2006−117586A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307382(P2004−307382)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000149435)株式会社大塚製薬工場 (154)
【Fターム(参考)】