説明

緑内障の診断および治療ならびに抗緑内障剤の同定のための血清アミロイドA遺伝子の使用

本発明は、緑内障を治療するための組成物および方法、緑内障を診断するための方法、ならびに緑内障の治療で有用となり得る薬剤を同定するための方法を提供する。より具体的には、本発明は、血清アミロイドAの発現を調節する薬剤の使用について記載する。1つの態様では、本発明は、血清アミロイドAタンパク質(SAA)をコードする遺伝子と、またはその遺伝子のプロモーター配列と相互作用する薬剤を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することにより、緑内障を治療するための方法を提供する。薬剤とSAAをコードする遺伝子と、またはそのプロモーター配列との相互作用は、患者の緑内障状態が治療されるようにSAAの発現を調節する。好ましい実施形態では、薬剤は、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子または核酸となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年12月22日に出願された、米国出願第11/615,454号(これは、2004年12月1日に出願された、米国出願第11/000,757号の一部継続であり、米国出願第11/000,757号は、2003年12月17日に出願された、米国仮出願第60/530,430号への優先権を主張する)への優先権を主張する。
【0002】
本発明は、緑内障の治療および診断の分野に関する。より具体的には、本発明は、緑内障を診断および治療し、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を同定するための方法および組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
視神経乳頭に対する損傷、眼組織の変性、および/または眼内圧上昇により引き起こされる、または悪化する眼症状が数多く存在する。例えば、「緑内障」は、米国および他の先進国において不可逆的な失明の主要原因である消耗性の眼疾患群である。原発性開放隅角緑内障(「POAG」)は、緑内障の最も一般的な病態である。この疾患は、小柱網の変性により特徴づけられ、虹彩および角膜間の空間(例えば、「隅角」)の閉鎖がないように眼を維持するという房水の正常な能力の障害に繋がる(Vaughan, D.ら、(1992年))。この疾患のそのような障害の特徴は、眼内圧(「IOP」)の増加であり、適切におよび適時に治療されなければ、進行性の視力喪失および失明が生じる。この疾患は、40歳を超えた全成人の0.4%および3.3%間に影響を及ぼすと推定されている(Leske, M. C.ら、(1986年);Bengtsson, B.、(1989年);Strong, N. P.、(1992年))。さらに、この疾患の有病率は、年齢と共に上昇し、75歳以上の人々では6%を超える(Strong, N. P.、(1992年))。
【0004】
緑内障は、眼の3つの別々の組織に影響を及ぼす。POAGに伴うIOP上昇は、小柱網(TM)、つまり角膜および虹彩間の隅角にある組織の形態学的および生化学的変化に起因する。ほとんどの栄養房水は、TMを介して前眼部を出ていく。緑内障性眼のTMにおけるTM細胞の進行性喪失および細胞外残屑の蓄積は、房水流出に対する抵抗性の増加に繋がり、それによりIOPを上昇させる。IOP上昇と同様に、虚血などの他の要因は、視神経乳頭(ONH)に変性的変化を引き起こし、ONHの進行性「杯形成」と、網膜神経節細胞および軸索の喪失とに繋がる。TM、ONHおよび網膜神経節細胞に対する緑内障性損傷に関与する詳細な分子機序は、知られていない。
【0005】
20年前、高眼圧症、虚血および視神経乳頭の機械的変形の相互作用は、緑内障における視野欠損の進行を引き起こす主要な要因として詳しく討議された。それ以来、興奮毒性、一酸化窒素、不可欠な神経栄養因子の欠如、異常な神経膠/ニューロン相互作用、および遺伝的特質を含む他の要因が、この変性疾患経過に結びつけられてきた。分子遺伝学の検討は、それが最終的に細胞死の機序を定義し、緑内障の種々の病態の識別を提供し得るため、幾らかの考察に値する。過去10年以内に、15を超える異なる緑内障遺伝子がマッピングされ、7つの緑内障遺伝子が同定された。これには、原発性開放隅角緑内障に関する6つのマッピングされた遺伝子(GLC1A−GLC1F)および2つの同定された遺伝子(MYOCおよびOPTN)と、先天性緑内障に関する2つのマッピングされた遺伝子(GLC3A−GLC3B)および1つの同定された遺伝子(CYP1B1)と、色素分散/色素性緑内障に関する2つのマッピングされた遺伝子と、緑内障の発症病態または症候性病態に関する多数の遺伝子(FOXC1、PITX2、LMX1B、PAX6)とが含まれる。
【0006】
したがって、緑内障の各病態は固有の病理を有する可能性があり、それ故、疾患に対処するために異なる治療的手法が必要とされ得る。例えば、視神経乳頭の細胞外マトリックスを分解する酵素の発現に作用する薬物は、興奮毒性により引き起こされるRGC死を防止しない可能性が高い。緑内障において、RGC死は、アポトーシス(プログラム細胞死)と呼ばれる過程により生じる。細胞死を引き起こし得る様々なタイプの傷害は、少数の共通経路に収束することにより細胞死を引き起こし得ると推測されている。共通経路の下流を標的にすることは、薬物の有用性を広げる可能性のある戦略であり、疾患の様々な病態に対処するのに有用性を有し得る確率を増加させ得る戦略である。しかしながら、複数の代謝経路に作用する薬物は、望ましくない副作用をもたらす可能性がより高い。緑内障の特定の病態を特定するための遺伝子に基づく診断キットが出現すれば、計画した応答に関する変動の程度を低減する目的で、選択的神経保護剤を試すことができる。
【0007】
緑内障は、現在、疾患の特定の徴候(特徴的な視神経乳頭の変化および視野欠損)に基づいて診断されている。しかしながら、緑内障を有する集団の過半数はこの失明になる疾患を有している自覚がなく、診断時までに網膜神経節細胞のおよそ30〜50%を既に不可逆的に喪失している。したがって、緑内障の早期診断のための改良された方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の緑内障治療は、緑内障の発症および進行の主要な危険因子であるIOPを低下させることを対象とする。しかしながら、現在のIOP低下療法はどれも、IOP上昇に関与する緑内障疾患経過に実際には介入せず、前眼部に対する進行性損傷は継続する。これは、大部分の患者がなぜ従来の緑内障療法に「抵抗性」になるのかについて考え得る1つの理由である。したがって、必要とされているのは、疾患経過を(阻害し、またはさらに逆行させることにより)変化させるための治療法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、緑内障を診断するための方法および緑内障を治療するための組成物を提供することにより、先行技術のこれらおよび他の欠点を克服する。1つの態様では、本発明は、血清アミロイドAタンパク質(SAA)をコードする遺伝子と、またはその遺伝子のプロモーター配列と相互作用する薬剤を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することにより、緑内障を治療するための方法を提供する。薬剤とSAAをコードする遺伝子と、またはそのプロモーター配列との相互作用は、患者の緑内障状態が治療されるようにSAAの発現を調節する。好ましい実施形態では、薬剤は、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物、低分子または核酸となる。
【0010】
別の態様では、本発明は、血清アミロイドAタンパク質(SAA)とその受容体との相互作用を阻害する薬剤を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする患者に投与することにより、緑内障を治療するための方法を提供する。好ましくは、薬剤は、ペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)アゴニスト、タキキニンペプチド、および、それらの非ペプチド類似体またはα−リポ酸となる。最も好ましくは、薬剤は、フェノフィブラート、Wy−14643、(4−クロロ−6−(2,3−キシリジノ)−2−ピリミジニルチオール)−酢酸、シプロフィブラート、2−ブロモヘキサデカン酸、ベザフィブラートおよびシグリチゾン、バフィロマイシン、コンカナマイシンまたはプソイドラリン酸Bとなる。
【0011】
本発明は、治療有効量の血清アミロイドAタンパク質(SAA)アンタゴニストおよび薬学的担体を含む、緑内障を治療するための医薬組成物をさらに提供する。組成物に含有されるアンタゴニストは、上記で特定された化合物のいずれかでよい。
【0012】
さらに別の実施形態では、本発明は、
a)患者から生体試料を取得するステップと、
b)血清アミロイドAタンパク質(SAA)をコードする遺伝子もしくはそのプロモーター領域またはその遺伝子産物の異常なレベル、異常な生物活性、または突然変異について前記試料を分析するステップであって、SAAをコードする前記遺伝子が配列番号1または配列番号3に示された配列を含み、そのプロモーター領域が配列番号12または配列番号13に示された配列を含み、SAAが配列番号2または配列番号4に示された配列を含むステップと
により緑内障を診断するための方法であって、
SAA遺伝子または遺伝子産物の異常な高レベル、異常に高い生物活性、または突然変異が緑内障の診断を示す方法を提供する。
【0013】
好ましい態様では、生体試料は、眼組織、涙、房水、脳脊髄液、鼻もしくは頬スワブまたは血清である。最も好ましくは、生体試料は小柱網細胞を含む。
【0014】
あるいは、本発明は、
a)患者から細胞を採取するステップと、
b)核酸を細胞から単離するステップと、
c)対立遺伝子のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で、配列番号1、配列番号3、配列番号12、または配列番号13の少なくとも1つの対立遺伝子と5’および3’を特異的にハイブリダイズさせる1つまたは複数のプライマーと、試料を接触させるステップと、
d)増幅産物を検出するステップと
により患者の緑内障を診断するための方法であって、
試料中の配列番号1、配列番号3、配列番号12、または配列番号13の異常なレベルまたは突然変異が緑内障の診断を示す方法を提供する。
【0015】
本発明は、
a)SAA(配列番号1または配列番号2)を発現する細胞、またはリポーター遺伝子が発現されるようにSAAプロモーター/リポーター遺伝子を含有する細胞を取得するステップと、
b)候補物質を細胞と混合するステップと
c)SAAタンパク質(配列番号2または配列番号4)のレベル、または細胞の遺伝子発現のレベルを測定するステップと
により、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を同定するための方法であって、
前記候補物質の存在下におけるSAAのタンパク質の産生または遺伝子発現の増加または減少が、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を示す方法も提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、
a)(i)SAAタンパク質、またはSAAもしくはSAAプロモーターにより推進されるリポーター遺伝子を発現する細胞と、
(ii)SAAタンパク質結合パートナーと、
(iii)試験化合物と
を含む反応混合物を形成するステップと、
b)試験化合物の存在下および試験化合物の非存在下におけるSAAタンパク質と結合パートナーとの相互作用、またはリポーター遺伝子産物のレベルを検出するステップと
により、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を同定する方法であって、
試験化合物の非存在下における相互作用と比較した、試験化合物の存在下におけるSAAタンパク質とその結合パートナーとの相互作用の減少または増加が、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を示す方法を提供する。
【0017】
別の態様では、
a)(i)SAA組換えタンパク質(配列番号2または配列番号4)を含む細胞、または配列番号1もしくは配列番号3を含む発現ベクターを含む細胞と、
(ii)試験化合物と
を含む反応混合物を形成するステップと、
b)試験化合物の存在下および試験化合物の非存在下で、下流シグナル伝達(IL−8)に対する効果を検出するステップと
により、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を同定する方法であって、
試験化合物の非存在下における相互作用と比較した、試験化合物の存在下における下流シグナル伝達の減少または増加が、緑内障の治療に潜在的に有用な薬剤を示す方法を提供する。
【0018】
好ましい態様では、SAAタンパク質または発現ベクターを含む細胞は、HL−60細胞である。
【0019】
以下の図面は本明細書の一部を形成しており、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれている。本発明は、本明細書中に提示された特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせたこれらの図面を参照することにより、より良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】12の緑内障対11の正常TM組織のSAA発現のQPCR分析を示す図である。NTMおよびGTMとは、それぞれ正常群および緑内障群の遺伝子の平均発現レベルを表す。
【図2A】TM細胞系におけるSAA発現のQPCR分析を示す図である。NTMおよびGTMとは、それぞれ正常群および緑内障群の遺伝子の平均発現レベルを表す。
【図2B】視神経乳頭組織におけるSAA発現のQPCR分析を示す図である。NTMおよびGTMとは、それぞれ正常群および緑内障群の遺伝子の平均発現レベルを表す。
【図3】正常および緑内障供与体(n=6)に由来するTM組織のSAAタンパク質を示す図である。正常組織と比較して、SAAの有意な増加(3倍)が、緑内障TM組織で認められた(p=0.05)。バーは、平均+/−s.e.mを示す。
【図4】ELISAにより決定された、正常および緑内障個体に由来するヒト房水におけるSAAタンパク質を示す図である。数値は、房水の平均SAA、+/−s.e.mとしてng/mlで表される(p=0.0001)。
【図5】rhSAAの濃度増加に応答した、HL−60細胞によるIL−8分泌を示す図である。
【図6】硝子体内注射による、マウスIOPに対するAdv.SAA2の効果を示す図である。IOPは、反跳式眼圧計TonoLab(登録商標)で測定した。
【図7】硝子体内注射の28日後のBalb/cマウスに由来するマウス眼におけるSAA発現を示す図である。SAAは、ELISAで測定された。対照:Adv.nullを注射された眼および未注射の眼(Adv.SAA2を注射した眼の対側眼;n=16);Adv.SAA:Adv.SAA2を注射した眼(n=17)。
【図8】Balb/cマウスのIOP(図8A)および虹彩充血(図8B)に対する、Ad.SAA2+抗CD40L抗体の硝子体内注射の効果を示す図である。データは、平均およびSEMとして提示する。
【図9】灌流されたヒト前眼部のIOPに対する、組換えヒト血清アミロイドA(rhSAA、1μg/mL;時点0から開始した処置)の効果を示す図である。
【図10】灌流されたヒト前眼部の灌流液中のインターロイキン−8(IL−8)レベルに対する、組換えヒト血清アミロイドA(rhSAA、1μg/mL;時点0から開始した処置)の効果を示す図である。
【図11】TM細胞におけるSAA処置(1μg/ml)による、MAPp38キナーゼ阻害剤のIL−8誘導に対する効果を示す図である。A:SB203580(4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール)の効果。B:4−アザインドールおよびBIRB−796(1−(5−tert−ブチル−2−p−トリル−2H−ピラゾール−3−イル)−3(4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)ナフ−タリン−1−イル)−尿素)の50μMでの効果。IL−8は、ELISAにより培地中で測定した。
【図12】TM細胞およびHL−60細胞における、SB203580によるSAA刺激IL−8分泌の阻害を示す図である。NTM650−03、p9またはHL−60細胞を、無血清DMEM中で1μg/mlのSAAおよび示された濃度のSB202580で4時間処置した。IL−8は、ELISAにより培地中で測定した。TM細胞では算出IC50=15μMおよびHL−60細胞では25μM。
【図13】SAAの阻害は、無血清DMEM中で1μg/mlのSAAおよび示された濃度の阻害剤で4時間処置されたHL60細胞における、p38MAPキナーゼ阻害剤、4−アザインドール、およびBIRB−796によるSAA刺激IL−8分泌の阻害を示す図である。IL−8は、ELISAにより培地中で測定した。算出IC50:4−アザインドール=0.3μM、BIRB−796=0.5μM。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態の詳細な説明
緑内障とは、特定の臨床的特徴を共有する視神経症の異質性の群である。緑内障における視力の喪失は、特徴的な視野の変化、神経線維層障害、およびONHの進行性杯形成により臨床的に診断される、神経網膜における網膜神経節細胞の選択的な細胞死に起因する。緑内障発症の主要な危険因子の1つは、高眼圧(眼内圧上昇、IOP)の存在である。IOPは、患者が正常IOPと見なされることが多い眼圧を有する正常眼圧緑内障の病因にも関与していると考えられる。緑内障に伴うIOP上昇は、前眼房の虹彩−角膜隅角に位置する特化した小組織である小柱網(TM)における房水流出の抵抗性上昇に起因する。TMに対する緑内障性変化には、TM細胞の喪失と、タンパク質性プラーク様物質を含む細胞外残屑の沈着および蓄積とが含まれる。それに加えて、緑内障の視神経乳頭(ONH)に生じる変化もある。緑内障眼では、ONHグリア細胞に形態学的変化および運動能変化がある。IOP上昇および/または一時的な虚血性障害に応答する、ONH細胞外マトリックスの組成における変化と、グリア細胞および網膜神経節細胞軸索の形態における変化とがある。
【0022】
本発明者らは、血清アミロイドA(SAA)mRNAおよびタンパク質の発現が、緑内障性TM組織および細胞で有意に上方制御されることを発見した。本発明者らは、アフィメトリクス社製遺伝子チップを使用してリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)により観察された特異的mRNA発現と、SAAのELISAによるSAAタンパク質レベルの増加とを確認した。SAAがTMで発現されることが示されたのは、これが初めてである。
【0023】
ヒトSAAは、11番染色体の短腕の上に限局する遺伝子によりコードされる、特異的に発現された多数の小型アポリポタンパク質を含む。SAAには4つのアイソフォームがある。配列番号1によりコードされるSAA1(配列番号2)、および配列番号3によりコードされるSAA2(配列番号4)は、C反応性タンパク質のような急性期反応物質として知られており、つまりそれらは炎症誘発性サイトカインにより劇的に上方制御される。SAA1およびSAA2遺伝子の5’UTRプロモーター領域も提供される(それぞれ、配列番号12および配列番号13)。SAA3(配列番号5)は偽遺伝子であり、SAA4(配列番号6)は、構成的SAA4(配列番号7)をコードする低レベルの構成的に発現された遺伝子である。SAA2は2つのアイソフォーム:配列番号8によりコードされるSAA2α(配列番号9)および配列番号10によりコードされるSAA2β(配列番号:11)を有し、それらは1つのアミノ酸だけが異なる。SAA1およびSAA2タンパク質は、アミノ酸レベルでは93.5%が同一であり(それぞれ、配列番号2および配列番号4)、これらの遺伝子は、ヌクレオチドレベルでは96.7%が同一である(それぞれ、配列番号1および配列番号3)。
【0024】
SAAとは、その血中レベルが、外傷、感染、炎症、および新形成を含む種々の傷害に対する身体応答の一部として、およそ1000倍上昇する急性期反応物質である。急性期反応物質としては、肝臓が主要な発現部位であると見なされている。しかしながら、肝外のSAA発現は、最初にマウス組織で、後にはヒトアテローム性動脈硬化病変の細胞で認められた(O’Haraら、2000年)。その後、SAAmRNAは、組織学的に正常な多数のヒト組織で広く発現するのが見出された。限局性発現は、胸部、胃、小腸および大腸、前立腺、肺、膵臓、腎臓、扁桃、甲状腺、脳下垂体、胎盤、皮膚表皮、ならびに脳ニューロンを含む種々の組織に認められた。発現は、リンパ球、プラスマ細胞、および内皮細胞でも観察された。SAAmRNA発現と共存したSAAタンパク質発現は、組織学的に正常なヒト肝外組織でも報告された。(Liangら、1997年;Urieli−Shovalら、1998年)。
【0025】
SAAアイソフォームは、哺乳類の血漿中では高密度リポタンパク質(HDL)の主要構成要素となるアポリポタンパク質であり、HDL粒子からA−I(ApoA−I)およびリン脂質を置換する(Miidaら、1999年)。SAAはコレステロールを結合し、一時的なコレステロール結合タンパク質としての役目を果たすことができる。それに加えて、SAA1またはSAA2の過剰発現は、アミロイド沈着物の線形原線維の形成に繋がり、それは病因に繋がり得る(UhlarおよびWhitehead、1999年;Liangら、1997年)。SAAは、感染、炎症、および組織修復の刺激に重要な役割を果たす。SAA濃度は、炎症、感染、壊死の後に1000倍にまで増加し、回復後は急速に低下することがある。したがって、血清SAA濃度は、炎症性疾患活性をモニターする有用なマーカーであると見なされる。SAAの肝性生合成は、炎症誘発性サイトカインにより上方制御され、急性期応答に繋がる。慢性的なSAA濃度上昇は、タンパク分解性に切断されたSAAから主に構成される不溶性プラークが主要臓器で沈着することにより特徴づけられる、進行性で時には致死的な疾患である続発性アミロイドーシスの病因の必要条件である。この同じ過程は、アテローム性動脈硬化症にも繋がることがある。恒常性を維持するには、正と負のSAA制御機序がどちらも必要である。これらの機序は、SAA発現の急速な誘導を可能にして宿主保護機能を果たすが、アミロイドーシスを防止するためには、SAA発現が迅速に基線レベルに復帰することも保証しなければならない。これらの機序には、例えば、誘導因子である核内因子kb(NF−kB)およびその阻害因子IkBに関するプロモーター活性の調節と、インターロイキン−6(NF−IL6)ファミリーに対する核内因子の転写制御因子の上方制御と、yinおよびyang1(YY1)などの転写リプレッサーとが含まれる。mRNA安定性および翻訳効率の変化に関する転写後の調節は、達成されるべきSAAタンパク質合成のさらなる上方および下方制御性調節を可能にする。AP応答の後期段階において、SAA発現は、インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)などのサイトカインアンタゴニスト、および可溶性サイトカイン受容体の産生増加を介して効果的に下方制御され、炎症誘発性サイトカインにより推進されるシグナル伝達が低下する(JensenおよびWhitehead、1998年)。
【0026】
原発性アミロイドーシスには緑内障が伴い得ることを示唆する報告が幾つかある。例えば、アミロイドは、原発性全身性アミロイドーシス患者の硝子体、網膜、脈絡膜、虹彩、水晶体、およびTMを含む種々の眼組織に沈着することが見出された(Schwartzら、1982年)。Ermilovら、(1993年)は、白内障、緑内障、および/または糖尿病を有する25歳から90歳の患者313名の478例の眼において、それらの眼のうちの66例(14%)がアミロイド−偽剥脱性アミロイド(PEA)を含有していると報告した。Krasnovら、(1996年)は、開放隅角緑内障を有する患者115名の44.4%がアミロイドの細胞外沈着を示すと報告した。アミロイドーシスは、症例の82%の強膜、および症例の70%の虹彩で明らかにされた。アルツハイマー病を含む多数の臨床症状は、疾患に伴う異常なアミロイド組織沈着物を示す。しかしながら、アミロイドは分子的に異質性であり、異なるアミロイド遺伝子によりコードされる。過去の報告では、どのアミロイド(複数可)が緑内障と関係し得るのかについては不明である。本発明者らは、SAA遺伝子発現が緑内障TM組織で有意に上昇することを初めて示した。SAA増加は、緑内障患者におけるIOP上昇の発生および視力喪失に繋がる視神経への損傷に関与し得る。本発明は、SAA発現増加の知見を使用して緑内障を診断するための方法を提供する。本発明は、潜在的な抗緑内障剤を同定するために、SAAの発現または機能を変化させる薬剤をスクリーニングするための方法をさらに提供する。別の態様では、本発明は、SAAの作用および/または他のタンパク質との相互作用を拮抗する薬剤を使用して緑内障を治療するための方法および組成物を提供する。
【0027】
緑内障の診断
緑内障を有する特定の対象でSAA発現のレベルが上昇していたという本発明者らの知見に基づいて、本発明は、緑内障を診断するための種々の方法を提供する。本発明の特定の方法は、不適切に高いレベルのSAAタンパク質が生じる核酸配列の突然変異を検出できる。これらの診断法は、ヒトSAAの既知の核酸配列またはコードされたアミノ酸配列に基づいて開発できる(Miller、2001年を参照)。他の方法は、ヒトSAAのゲノム配列、またはSAAの発現を調節する遺伝子配列に基づいて開発できる。さらに他の方法は、mRNAレベルにおけるSAA遺伝子発現レベルの変化に基づいて開発できる。
【0028】
代替の実施形態では、本発明の方法は、SAAシグナル伝達タンパク質またはSAAシグナル伝達タンパク質をコードする遺伝子の活性またはレベルを検出できる。例えば、IL−8のSAA誘導を含むSAAシグナル伝達構成要素の不適切な機能が生じる突然変異を含む、不適切に低いSAAシグナル伝達活性を検出する方法を開発できる。それに加えて、非核酸に基づく技術が、これらのSAAシグナル伝達タンパク質のいずれかの量または特異的活性の変化を検出するために使用できる。
【0029】
遺伝子および遺伝子産物の異常なレベルまたは活性を検出するために、現在種々の手段が当業者に利用可能である。これらの方法は、当業者に周知であり定常的になっている。例えば、多数の方法が、ヒト多型遺伝子座の特定の対立遺伝子を検出するために利用できる。特定の多型対立遺伝子を検出するための好ましい方法は、多型性の分子的性質に部分的に依存する。多型遺伝子座の種々の対立遺伝子の形態は、DNAの単一塩基対だけが異なることがある。そのような一塩基多型(または、SNP)は遺伝多様性の主要誘因であり、全ての既知の多型の約80%を含み、ヒトゲノムにおけるそれらの密度は、平均して1,000塩基対当たり1つであると推定される。種々の方法が、個体における特定の一塩基多型性対立遺伝子の存在を検出するために利用できる。当分野の進歩は、正確、容易、および安価な大規模SNP遺伝子型同定法を提供している。例えば、米国特許第4,656,127号明細書;仏国特許第2,650,840号明細書;PCT出願第91/02087号パンフレット;PCT出願第92/15712号パンフレット;Komherら、1989年;Sokolov、1990年;Syvanenら、1990年;Kuppuswamyら、1991年;Prezantら、1992年;Ugozzoliら、1992年;Nyrenら、1993年;Roestら、1993年;およびvan der Luijtら、1994年を参照されたい。
【0030】
あらゆる細胞タイプまたは組織を使用して、本明細書中に記載された診断法で使用するための核酸試料を取得できる。好ましい実施形態では、DNA試料は、体液、例えば既知の技術(例えば静脈穿刺)により取得された血液、または頬細胞から取得される。最も好ましくは、本発明の方法で使用するための試料は、血液または頬細胞から取得されよう。あるいは、核酸試験は、乾燥した試料(例えば毛髪または皮膚)に対して実施できる。
【0031】
診断手順は、生検または切除から取得される患者組織の組織切片(固定化および/または冷凍された)上で、in situで直接実施することもでき、その結果、核酸精製が必要でなくなる。核酸試薬は、そのようなin situ手順用のプローブおよび/またはプライマーとして使用できる(例えば、Nuovo、1992年を参照)。
【0032】
主に1つの核酸配列の検出に焦点を合わせた方法に加えて、プロフィールもそのような検出方式で評価できる。フィンガープリントプロフィールは、例えば、ディファレンシャルディスプレイ法、ノーザン分析および/またはRT−PCRを使用することにより生成できる。
【0033】
好ましい検出方法は、緑内障を示すSAAシグナル伝達構成要素の少なくとも1つの対立遺伝子の領域に重複するプローブであり、突然変異または多型領域付近に約5、10、20、25または30個の隣接ヌクレオチドを有するプローブを使用した対立遺伝子特異的なハイブリダイゼーションである。本発明の好ましい実施形態では、緑内障に関与する他の対立遺伝子変異体に対して特異的にハイブリダイズ可能な幾つかのプローブは、固相支持体、例えば、「チップ」(それは、約250,000までのオリゴヌクレオチドを保持できる)に取り付けられる。オリゴヌクレオチドは、リソグラフィーを含む種々の工程により固体支持体に結合できる。オリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを使用した突然変異検出分析は、「DNAプローブアレイ」とも呼ばれ、Croninら、(1996年)に記載されている。1つの実施形態では、チップは、遺伝子の少なくとも1つの多型領域の全対立遺伝子変異体を含む。固相支持体はその後試験核酸と接触し、特異的プローブに対するハイブリダイゼーションが検出される。したがって、1つまたは複数の遺伝子の多数の対立遺伝子変異体の同定が、単純なハイブリダイゼーション実験で同定できる。
【0034】
これらの技術は、分析前に核酸を増幅するステップをさらに含むことができる。増幅技術は当業者に既知であり、クローニング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、特異的対立遺伝子(ASA)のポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応(LCR)、入れ子型ポリメラーゼ連鎖反応、自家持続性配列複製法(Guatelliら、1990年)、転写増幅系(Kwohら、1989年)、およびQ−ベータレプリカーゼ(Lizardiら、1988年)を含むが、これらに限定されない。
【0035】
増幅産物は、サイズ分析、制限消化後のサイズ分析、反応産物中の特異的タグ付オリゴヌクレオチドプライマーの検出、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)ハイブリダイゼーション、対立遺伝子特異的5’エキソヌクレアーゼ検出、塩基配列決定、ハイブリダイゼーション、およびSSCPなどを含む種々の方法でアッセイできる。
【0036】
PCRに基づく検出手段には、複数のマーカーの多重増幅が同時に含まれ得る。例えば、サイズが重複しないPCR産物を生成し、同時に分析され得るようにPCRプライマーを選択することは、当技術分野において周知である。あるいは、特異的に標識され、したがって各々が特異的に検出できるプライマーを用いて、異なるマーカーを増幅することが可能である。もちろん、ハイブリダイゼーションに基づく検出手段は、試料中の複数のPCR産物の特異的検出を可能にする。複数のマーカーの多重分析を可能にするための他の技術が、当業者に既知である。
【0037】
単なる例示に過ぎない実施形態では、本方法は、(i)患者から細胞の試料を採取するステップと、(ii)核酸(例えばゲノム、mRNA、または両方)を試料の細胞から単離するステップと、(iii)対立遺伝子のハイブリダイゼーションおよび増幅が生じるような条件下で、緑内障を示すSAAの少なくとも1つの対立遺伝子と5’および3’を特異的にハイブリダイズさせる1つまたは複数のプライマーと核酸試料を接触させるステップと、(iv)増幅産物を検出するステップとを含む。これらの検出方式は、そのような分子が非常に低い数で存在する場合、核酸分子の検出に特に有用である。
【0038】
本アッセイの好ましい実施形態では、緑内障を示すSAAの異常なレベルまたは活性は、制限酵素切断パターンの変化により特定される。例えば、試料および対照DNAを単離し、(任意選択で)増幅し、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼで消化し、断片長サイズをゲル電気泳動により決定する。
【0039】
さらに別の実施形態では、当業者に既知である種々の塩基配列決定反応のいずれかを使用して、対立遺伝子を直接的に配列決定できる。典型的な塩基配列決定反応には、MaximおよびGilbert(1977年)またはSanger(1977年)により開発された技術に基づくものが含まれる。被検体アッセイを実施する際、質量分析法による塩基配列決定を含む種々の自動化された塩基配列決定手順のいずれかが使用できることも企図される(例えば、国際公開第94/16101号パンフレット;Cohenら、1996年;Griffinら、1993年を参照)。特定の実施形態の場合、塩基配列決定反応では、わずか1つ、2つまたは3つの核酸塩基の存在しか決定する必要がないことは、当業者であれば明らかである。例えば、1つの核酸だけが検出される例えばA−トラック(A−track)などが実施できる。
【0040】
さらなる実施形態では、切断因子(ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン、または四酸化オスミウムなど、およびピペリジンでの)からの保護を使用して、RNA/RNAまたはRNA/DNAまたはDNA/DNAヘテロ二本鎖におけるミスマッチ塩基を検出できる(Myersら、1985年b;Cottonら、1988年;Saleebaら、1992年)。好ましい実施形態では、対照DNAまたはRNAは、検出用に標識化できる。
【0041】
さらに別の実施形態では、ミスマッチ切断反応は、二本鎖DNAにおけるミスマッチ塩基対を認識する1つまたは複数のタンパク質(いわゆる「DNAミスマッチ塩基対修復」酵素)を使用する。例えば、大腸菌(E.coli)のmutY酵素は、G/AミスマッチのAを切断し、Hela細胞由来のチミジンDNAグリコシラーゼは、TおよびG/Tミスマッチを切断する(Hsuら、1994年;米国特許第5,459,039号明細書)。
【0042】
他の実施形態では、電気泳動移動度の変化は、緑内障を示すSAAの異常なレベルまたは活性を同定するのに使用される。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)は、変異体および野生型核酸間の電気泳動移動度の相異を検出するのに使用できる(Oritaら、1989年;Cotton、1993年;Hayashi、1992年;Keenら、1991年)。
【0043】
さらに別の実施形態では、変性剤の勾配を含有するポリアクリルアミドゲルにおける対立遺伝子の移動は、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)を使用してアッセイされる(Myersら、1985年a)。さらなる実施形態では、変性剤勾配の代わりに温度勾配が、対照および試料DNAの移動度の相異を特定するために使用される(RosenbaumおよびReissner、1987年)。
【0044】
対立遺伝子を検出するための他の技術の例には、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が含まれるが、これらに限定されない。例えば、既知の突然変異またはヌクレオチドの相違(例えば、対立遺伝子変異体における)が中央に配置され、その後完全な適合が見出される場合だけハイブリダイゼーションが可能になる条件下で標的DNAにハイブリダイズされるように、オリゴヌクレオチドプライマーを調製できる(Saikiら、1986年;Saikiら、1989年)。オリゴヌクレオチドがPCR増幅された標的DNAまたは多数の異なる突然変異もしくは多型領域にハイブリダイズされる場合、オリゴヌクレオチドがハイブリダイズ用の膜に付着され、標識化された標的DNAとハイブリダイズされる場合、そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、1反応当たり1つの突然変異または多型領域を検査するために使用できる。
【0045】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術が、本発明に関して使用できる。特異的増幅用のプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、分子の中央に(増幅が特異的ハイブリダイゼーションに依存するように)(Gibbsら、1989年)または1つのプライマーの最後の3’末端に、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止または低減できるように、目的とする突然変異または多型領域を保持できる(Prossner、1993年)。それに加えて、切断に基づく検出を作り出すために、新規の制限酵素認識部位を突然変異領域に導入することが望ましい場合がある(Gaspariniら、1992年)。特定の実施形態では、増幅用Taqリガーゼを使用して増幅を実施できることも予期される(Barany、1991年)。そのような場合、増幅の有無を探索することにより特定の部位での既知の突然変異の存在を検出可能にする、5’配列の3’末端における完全な適合がある場合のみライゲーションが生じる。
【0046】
別の実施形態では、対立遺伝子変異体の同定は、例えば米国特許第4,998,617号明細書およびLandegrenら、1988年に記載されているような、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して実施される。Nickersonらは、PCRおよびOLAの特性を併用する核酸検出アッセイを記載している(Nickersonら、1990年)。この方法では、PCRを使用して標的DNAの指数関数的増幅を達成し、その後標的DNAはOLAを使用して検出される。
【0047】
このOLA法に基づく技術が幾つか開発されており、緑内障を示すSAAの異常なレベルまたは活性を検出するために使用できる。例えば、米国特許第5,593,826号明細書およびTobeら(1996年)には、頻繁に使用されるそのような技術が記載されている。
【0048】
1つの実施形態では、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)アゴニストであるフェノフィブラートは、薬学的に許容される組成物中に製剤し、SAA発現を調節することにより緑内障の治療に使用できる。研究によると、フェノフィブラートおよびWY14643治療は血漿SAA濃度を低減することが示されている(Yamazakiら、2002年)。シプロフィブラート、2−ブロモヘキサデカン酸、ベザフィブラート、シプロフィブラート、およびシグリチゾンなどの他のPPARαアゴニストも、緑内障の治療に有用であり得ると考えられる。
【0049】
別の実施形態では、p38MAPキナーゼ阻害因子を使用して、SAAに誘導されるIL−8の発現および下流のシグナル伝達事象を調節することにより、緑内障または高眼圧を治療し、眼内圧上昇を患う患者の眼内圧を低下できる。本発明者らは、SAAが小柱網細胞および組織でIL−8の分泌を刺激することを示した。IL−8の上方制御の1つの経路は、MAPキナーゼの活性化を介するものである。本発明者らは、灌流培養されたヒトの眼でおよびin vivoのげっ歯類の眼で、p38MAPキナーゼの阻害剤がTM細胞におけるSAAのIL−8誘導を阻止することをさらに示した。TM細胞における様々なクラスのMAPK阻害剤を代表する化合物が、SAAにより誘導されるIL−8発現の有効な阻害剤であることが見出された(表3)。これらのうちで最も強力なものは、p38MAPK阻害剤である、SB203580、4−アザインドール、およびBIRB−796であった(図11)。SAAにより誘導されるIL−8のSB203580阻害の用量反応曲線がTM細胞とHL60細胞の両方で生成され、類似の結果を示した(TM細胞ではIC50=15μMおよびHL60細胞では25μM、図12)。HL60細胞で行われた3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン(本明細書中では4−アザインドールとも称する)およびBIRB0796の阻害曲線は、これらの化合物がどちらもSB203580よりおよそ10倍効果的であることを示した(4−アザインドールはIC50=0.3およびBIRB−796は0.5μM(図13))。
【0050】
【表3】

表3で同定された化合物の化学名は、以下の通りである。
SB203580:4−(4−フルオロフェニル)−2−(40メチルスルフィニルフェニル)−5−(4−ピリジル)−1H−イミダゾール;
SB202190:4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(4−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]フェノール;
BIRB−796:1−(5−tert−ブチル−2−p−トリル−2H−ピラゾール−3−イル)−3(4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)ナフ−タリン−1−イル)尿素;
4−アザインドール:3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ[3,2−b]ピリジン;
PD98059:2’−アミノ−3’−メトキシフラボン;
U0126:1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−bis(2−アミノフィニルチオ)ブタジエン;
CalBio506126:2−(4−クロロフェニル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−ピリジン−4−イル−1,2−ジヒドロピラゾール−3−オン
in vitroアッセイは、幾つかのp38MAPK阻害剤が、SAAによるIL−8誘導を有意に阻止したことを示した。最も強力なp38MAPK阻害剤の1つである3−(4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ−[3,2−b]ピリジンは、Ad.SAA2(2×10pfu/眼)+抗CD40Lの硝子体内注射後に1%の懸濁液を局所適用することにより、マウスのIOP低下を評価した。Adv.SAA2は、有意なIOP上昇を引き起こし、10〜12日目に基線から10〜12mmHg増加してピークに達し、その後緩やかに低下した。24日目では、IOPは基線を6〜7mmHg超えていた。高眼圧は、4−アザインドールの局所投与により阻止された(1%;1日2回)。4−アザインドール投与が7日目に中止された後、IOPは、賦形剤で治療されたAd.SAA2注射群と同一レベルに戻った。薬物投与が13日目に再開されると、IOPは、3日で基線まで再び低下した(図8)。この実験は繰り返され、類似の結果が得られた。このin vivoデータは、p38MAPK阻害剤である4−アザインドールが、Ad.SAA2により誘発される高眼圧に対抗できることを示した。
【0051】
本発明のこの実施形態のための好ましい化合物は、表3に列挙されたそれらのクラスの化合物であり、これらの実施例に記載されたようなp38MAPキナーゼの阻害特性を示し、SB202190、SB203580、SB220025、PD169316、SB239063、4−アザインドール、BIRB−796、CalBio506126、RO3201195、R1487を含む、追加的なクラスの化合物に及ぶ。
【0052】
本発明者らは、アミロイドにより誘発される細胞死を防止する薬剤が、前部ブドウ膜の、および眼の後部、特に網膜および視神経乳頭のTM細胞および他の眼細胞を保護するのに有用であり得ることをさらに想定する。
【0053】
本発明の化合物は、眼への送達用(例えば、局所的に、眼内に、または移植片を介した)の種々の種類の眼科用製剤に組み込むことができる。化合物は、好ましくは、眼への送達用の局所的眼科用製剤に組み込まれる。化合物は、眼科的に許容される防腐剤、界面活性剤、粘性増強剤、浸透増強剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、および水と組み合わせて、水溶性で無菌の眼科用懸濁剤または液剤を形成できる。眼科用液剤製剤は、生理学的に許容される等張性緩衝水溶液中に化合物を溶解することにより調製できる。さらに、眼科用液剤は、化合物の溶解を支援するために眼科的に許容される界面活性剤を含むことができる。さらに、眼科用液剤は、結膜嚢での製剤の保持を向上させるために、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなどの、粘度を増加させる薬剤を含有できる。ゲラン(gellan)およびキサンタンガムを含むがこれらに限されないゲル化剤も使用できる。無菌の眼科用軟膏製剤を調製するためには、活性成分は、鉱油、液体ラノリン、または白色ワセリンなどの適切な賦形剤中で防腐剤と組み合わせる。無菌の眼科用ゲル製剤は、化合物を、類似の眼科用調製用の公開されている製剤に従って、例えばカルボポル−974(carbopol−974)などの組み合わせから調製される親水性基質中に懸濁することにより調製でき、防腐剤および等張剤を組み込むことができる。
【0054】
化合物は、局所的眼科用懸濁剤または液剤として、好ましくは約4から8のpHで調製される。各個体についての具体的な投与計画の確立は、臨床医の裁量に任せられる。化合物は、通常は0.01重量%から5重量%の量で、しかし好ましくは0.05重量%から2重量%の量で、最も好ましくは0.1重量%から1.0重量%の量でこれらの製剤に含有される。剤形は、液剤、懸濁剤マイクロエマルジョンであり得る。したがって、局所的症状の場合、熟練した臨床医の裁量に従って、1から2滴のこれらの製剤を1日につき1回から4回眼の表面に送達する。
【0055】
化合物は、それらに限定されないが、β−遮断剤、プロスタグランジン、炭酸脱水酵素阻害剤、αアゴニスト、縮瞳剤、および神経保護剤などの、緑内障を治療するための他の薬剤と組み合わせて使用できる。
【0056】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。当業者であれば、以下の実施例で開示された技術が、本発明の実施において良好に機能することが本発明者により発見された技術を表し、したがって、本発明の実施のために好ましい様式を構成すると見なすことができることが、当事業者には理解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多数の変化を行うことができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様なまたは類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
緑内障TM細胞および組織におけるSAA1およびSAA2の発現増加。
【0058】
13の正常供与体対9つの緑内障供与体に由来するTM組織のRNA貯留を用いて、アフィメトリックス社製GeneChipセット(HG−U133)を使用して遺伝子発現を決定した。アミロイドA2発現は、正常なTM組織の発現と比較して緑内障では4倍増加したことが明らかとなった。この結果を確認するために、12の緑内障および11の正常TM組織に由来する個々のRNAを使用してQPCRを実施した。12の緑内障TM組織からの5つ(42%)は、SAA1/2発現の有意な増加を示した。12の緑内障TMにおけるSAA発現の平均は、11の正常TMにおける発現の5.4倍であった(図1)。それに加えて、SAAの特異的発現の類似傾向が、緑内障TM細胞または緑内障視神経乳頭組織で観察された。それぞれ正常と比較して、緑内障TM細胞においては5.4倍(14の緑内障対11の正常TM細胞系、図2A)、緑内障視神経乳頭組織においては118倍(14の緑内障対12の正常、図2B)の平均的増加が認められた。6つの正常供与体および6つの緑内障供与体に由来するTM組織中のSAAのELISAは、SAAタンパク質も正常と比較して緑内障TM組織で有意に増加することを示した。正常組織と比較して、緑内障組織のSAA濃度に3倍の差があった(それぞれ、11.3および3.8μg/mgタンパク質)。これらのデータを図3に示す。
【0059】
SAAの発現増加と緑内障との関連を、ヒト房水でさらに実証した。SAAタンパク質を、16人の正常個人および20人の緑内障個人に由来するヒト房水でELISAにより測定した。SAAは、正常試料より緑内障房水においてほぼ3倍高いことを見出した(それぞれ、10.0ng/ml対3.7ng/ml)。結果は図4に示す。
【0060】
(実施例2)
局所適用用のフェノフィブラートの製剤:
局所適用して眼においてSAAを減少およびIOPを低下させるための1%フェノフィブラート懸濁剤。
【0061】
【化1】

(実施例3)
SAAmRNAまたはSAAタンパク質の発現を変化させる化合物のスクリーニングおよび同定の手順
SAAの発現および機能を変化させる薬剤のスクリーニングのために使用できる1つの方法は、SAAタンパク質レベルの変化を決定することである。動物またはヒトの血清、血漿、緩衝液、細胞培養培地、および組織または細胞抽出物中の血清アミロイドA(SAA)を定量的に決定するためのin vitroアッセイキットは、市販されている。このアッセイは、固相サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)である。SAAに特異的なモノクローナル抗体をマイクロタイタープレートのウェルに被覆した。SAA含有量が既知である標準物質または未知試料を含む試料を、アルカリホスファターゼまたはペルオキシダーゼに結合された二次抗体と共に、これらのウェルに添加した。いずれの抗体も他の結合エピトープに干渉しないように構築されている。SAAは、一段階の手順で、固定された抗体によりプレート上に捕獲されると共に、結合した二次抗体で標識化される。インキュベーション期間後、プレートを洗浄して未結合物質を全て除去し、基質(PNPPまたは過酸化物)を添加した。発色した産物の強度は、未知の試料に存在するSAA濃度に比例する。
【0062】
(実施例4)
SAAmRNAまたはタンパク質の発現を変化させるスクリーニング化合物についての培養細胞系におけるSAAの誘導。
【0063】
ヒトヘパトーマ細胞系(HepG2)は、サイトカインによるSAA誘導の研究用、プラスミドでの形質移入用、およびリポーターアッセイ用に広く使用されている。SAAmRNAおよびタンパク質合成は、PCL/PRF/5、HepB、およびHepG2を含む幾つかのヒトヘパトーマ細胞系において、種々のサイトカインにより誘導できる(UhlarおよびWhitehead、1999年)。ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)によるSAA合成は、糖質コルチコイドホルモンにより誘導されるが、肝細胞によりSAAの産生を刺激する炎症誘発性サイトカインである、IL−1、IL−6、およびTNF−αによっては誘導されない。(Kumonら、2002年b;Kumonら、2001年;ThornおよびWhitehead、2002年)。SAAは、ケモタキセル(Chemotaxicell)社製培養庫を使用してアッセイした際に、用量依存的にHASMCの化学走性移動を刺激した(Kumonら、2002年a)。SAAmRNAの発現およびタンパク質の産生は、関節リウマチ滑膜細胞の初代培養で実証した(O’Haraら、2000年)。
【0064】
(実施例5)
培養細胞におけるSAAの機能分析。
【0065】
SAAのサイトカイン様特性には、好中球によるIL−8分泌の誘導が含まれる。(FurlanetoおよびCampa、(2002年);Heら、2003年)。前骨髄球細胞系であるHL−60細胞は、SAAに対して応答してIL−8分泌が増加し、SAA機能のin vitroアッセイ用に使用できることが明らかとなった。HL−60細胞を、組換えヒトSAAの濃度を増加させて4時間処置し、IL−8はELISAにより培地中で測定した。IL−8の分泌は、用量依存的に増加した(図5)。HL−60細胞は、SAAの機能および発現レベルを変化させる薬剤を同定するための機能的アッセイ用の代理細胞系として使用できる。
【0066】
(実施例6)
マウスにおいて、アデノウイルス媒介性SAA発現はIOPを増加させ、p38MAPK阻害剤は誘発されたIOPを減少させる。
【0067】
アデノウイルスを介して上方制御されたSAA発現がIOPを上昇させる能力と、誘発されたIOPの阻止に関するp38MAPK阻害剤の有効性とを、マウスにおいて研究した。
【0068】
1.上方制御されたSAA発現はマウスのIOPを上昇させる
各Balb/cマウスの片眼に、7x10pfu/眼/2μlの用量でAdv.SAA2(処置)またはAdv.null(賦形剤)を硝子体内に注射した。各動物の対側眼には、注射しなかった。各動物は、Advに加えて、Adv.SAA2.の発現期間を延長するために−1、0、1、2、5、9および14日目に、抗CD40L(0.5mg/注射)の腹腔内注射を受けた。マウスのIOPは、マスク法でTonolabにより測定した。各眼のIOPの平均は、18回から30回までの測定で取得した。マウスへのAdv.SAA2の硝子体内注射は、IOPを有意に増加させた(49%または5.8mmHg、n=6〜8、p<0.05)(図6)。SAA発現は、Adv.SAA2で処置された全ての眼において、賦形剤で処置された眼および未注射の対側眼を含む対照眼よりも有意に高かった(p<0.0001;n=16)(図7)。これらの結果は、SAA発現の上方制御がマウスのIOPを増加させ得ることを実証し、SAAを緑内障病因に結びつける証拠を提供した。
【0069】
2.p38MAPK阻害剤は、マウスにおいてAdv.SAA2により誘発されるIOPを低下させる:
4−アザインドール、即ちP38MAPK阻害剤が、SAAにより誘導されるIL−8発現をin vitroで阻害することを確証した後、本発明者らは、Ad.SAA2(2x10pfu)+抗CD40Lを、5μLの1%4−アザインドールまたは賦形剤の局所投与により、両眼に1日2回、−1日目から7日目および13日目から17日目まで硝子体内注射した後で、マウスのIOPに対する化合物の効果を試験した。再び、Adv.SAA2の硝子体内注射は、マウスのIOPを4日目から24日目まで有意に増加させた(賦形剤群)。4−アザインドールの局所投与は、処置期間中、Adv.SAA2により誘発されるIOPを有意に阻害した(−1日目〜7日目および13日目〜17日目)。4−アザインドールは、未注射の眼のIOPに影響を及ぼさなかった(図8A)。虹彩充血は、4日目後にAd.SAA2が注射された全ての眼で認められ、注射第2週目後に徐々に減少した(図8B)。4−アザインドールは、注射された眼の充血に影響を及ぼさず、4−アザインドールのIOP低下効果が虹彩充血の消散を介してではなかったことが示された。これらの結果は、高眼圧治療用のp38MAPK阻害剤の可能性を実証する。
【0070】
(実施例7)組換えSAAは、灌流培養されたヒト眼の流出能力を減少させた
5対のヒト眼を、組換えSAA(1μg/ml)(実験眼)または等容積の賦形剤(対照眼)のいずれかを含む培地で灌流した。培養期間の終了時に、各眼の4つの四分円を透過型電子顕微鏡で検査して、TM組織生存能を決定した。各眼の灌流液を回収して、IL−8レベルのELISA測定のために使用した。5つ全てが、処置24時間以内にIOP上昇を示した(図9)。5つ全てが、IL−8レベルの上昇を示した(図10)。IOPの変化は、SAAにより誘発される、灌流液中のインターロイキン−8の増加と相関した。5対の眼は全て、許容される灌流後TM生存能スコアを示した。これらの結果は、SAAレベルの増加が灌流培養されたヒト眼のIOPを上昇させ得ることを証明した。
【0071】
本明細書中で開示および請求された組成物および/または方法の全ては、本開示に照らして過度の実験を行うことなく実行できる。本発明の組成物および方法が好ましい実施形態に則して説明されたが、当業者であれば、本発明の概念、趣旨、および範囲を逸脱することなく、本明細書中に記載した組成物および/または方法ならびに本方法のステップまたはステップの順序に変化を適用できることは明白であろう。より具体的には、化学的にも構造的にも関連した特定の薬剤が、本明細書中に記載された薬剤を置換して類似の結果を達成し得ることは明白であろう。当業者にとって明白なそのような置換および改変は全て、添付の特許請求の範囲により定義された本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であると見なされる。
【0072】
参考文献
以下の参考文献は、それらが本明細書中に示されたものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書中に具体的に組み込まれる。
【0073】
他の刊行物
【0074】
【化2】

【0075】
【化3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高眼圧を治療するための方法であって、該方法は、血清アミロイドAタンパク質(SAA)をコードする遺伝子と相互作用する低分子薬剤を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする患者に局所的に眼投与(ocular administration)することを含み、該相互作用がSAA発現を調節し、それによるSAA発現の減少が緑内障を治療し、該薬剤がp38MAPキナーゼを阻害する方法。
【請求項2】
前記薬剤が、SB202190、SB203580、SB220025、PD169316、SB239063、3−(−4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ−[3,2−b]ピリジン、BIRB−796、CalBio506126、RO3201195、およびR1487からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
高眼圧を治療するための方法であって、該方法は、血清アミロイドAタンパク質(SAA)とその受容体との相互作用を阻害するか、またはSAAの下流シグナル伝達事象を調節する薬剤を含む治療有効量の組成物を、それを必要とする患者に局所的に眼投与することを含み、該薬剤がp38MAPキナーゼを阻害する方法。
【請求項4】
前記薬剤が、SB202190、SB203580、SB220025、PD169316、SB239063、3−(−4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ−[3,2−b]ピリジン、BIRB−796、CalBio506126からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量の血清アミロイドAタンパク質(SAA)アンタゴニストおよび薬学的担体を含み、該SAAアンタゴニストがp38MAPキナーゼの低分子阻害剤である局所的眼科用組成物。
【請求項6】
前記p38MAPキナーゼ阻害剤が、SB202190、SB203580、SB220025、PD169316、SB239063、3−(−4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ−[3,2−b]ピリジン、BIRB−796、およびCalBio506126からなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
上昇した眼内圧を有する患者の眼内圧を低下させるための方法であって、該方法は、6血清アミロイドAタンパク質(SAA)をコードする遺伝子と相互作用する低分子薬剤を含む治療有効量の眼科用組成物を前記患者に投与することを含み、前記相互作用がSAA発現を調節し、それによるSAA発現の減少がIOPを低下させ、前記薬剤がp38MAPキナーゼを阻害する方法。
【請求項8】
前記薬剤が、SB202190、SB203580、SB220025、PD169316、SB239063、3−(−4−フルオロフェニル)−2−(ピリジン−4−イル)−1H−ピロロ−[3,2−b]ピリジン、BIRB−796、CalBio506126、RO3201195、およびR1487からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物を局所的に投与する、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−513563(P2010−513563A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543115(P2009−543115)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/087797
【国際公開番号】WO2008/079783
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(399054697)アルコン,インコーポレイテッド (102)
【Fターム(参考)】