説明

緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤

【課題】眼圧下降作用が強力で且つその持続時間が延長された、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤を提供する。
【解決手段】(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン、(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリンから選ばれる化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水素酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上とを組み合わせてなる緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患と定義される。
【0003】
緑内障治療の目的は視覚機能を維持することであるが、最も重要な危険因子である眼圧を下降することが、エビデンスに基づいた唯一確実な治療法である。治療としてはまず薬物療法が試みられ、それでも十分な眼圧下降が得られない場合にはレーザー治療や手術療法が適用される。
【0004】
眼圧下降薬は大きく房水産生抑制薬と房水排出促進薬に分けられる。房水産生抑制薬としては、β遮断薬(チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソール、レボブノロール、メチプラノール等)、炭酸脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド等)、および交感神経刺激薬(ブリモニジン、アプラクロニジン等のα2刺激薬、エピネフリン等の非選択的刺激薬)が挙げられる。房水流出促進薬としては、プロスタグランジン類(イソプロピルウノプロストン、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト等)、α1遮断薬(ブナゾシン等)、および副交感神経作動薬(ピロカルピン等)が挙げられる。さらに新たなクラスの薬剤としてRhoキナーゼ阻害薬が開発中であるが、このクラスの薬剤は房水流出促進薬に属する。
【0005】
緑内障の薬物治療においては、眼圧下降作用を増強する目的で2剤以上が併用されることが多い。また眼圧下降作用を有する2つの有効成分を含む合剤も知られている。さらに、眼圧下降作用を有する2つの薬剤の組合せの投与(特許文献1−6)や、眼圧下降作用を有する薬剤をいくつか組み合わせて投与する方法(特許文献7)も開示されている。他方、特許文献8は、強力な眼圧下降作用を有する低分子化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2726672号公報
【特許文献2】WO2004/019951号パンフレット
【特許文献3】WO2004/045644号パンフレット
【特許文献4】特開2006−348028号公報
【特許文献5】WO2006/137368号パンフレット
【特許文献6】WO2007/007737号パンフレット
【特許文献7】WO2002/38158号パンフレット
【特許文献8】WO2010/146881号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、眼圧下降作用が強力で且つその持続時間が延長された、緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特許文献8に記載のイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体と既存の眼圧下降剤の組合せによる眼圧下降作用を検討した結果、特定のイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体と、プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種以上とを組み合わせて投与することにより、強力な眼圧下降作用が発揮され、且つその持続時間が延長されることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の発明に係るものである。
(1)(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物1)、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物2)、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン(化合物3)(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物4)、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリン(化合物5)から化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上とを組み合わせてなる緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【0010】
(2)緑内障又は高眼圧症を予防又は治療するための、(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物1)、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物2)、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン(化合物3)(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物4)、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリン(化合物5)から選ばれる化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせ。
【0011】
(3)緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤を製造するための、(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物1)、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物2)、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン(化合物3)(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物4)、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリン(化合物5)から選ばれる化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上との組み合わせの使用。
【0012】
(4)(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物1)、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物2)、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン(化合物3)(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン(化合物4)、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリン(化合物5)から選ばれる化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上とを組み合わせて投与することを特徴とする緑内障又は高眼圧症の予防又は治療方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、眼圧下降作用が強力で、且つその持続時間が延長された緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:イソプロピルウノプロストン単独投与群、□:化合物4単独投与群、△:イソプロピルウノプロストンと化合物4の合剤投与群
【図2】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:ブリンゾラミド単独投与群、□:化合物4単独投与群、△:ブリンゾラミドと化合物4の併用投与群
【図3】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:ブリモニジン単独投与群、□:化合物4単独投与群、△:ブリモニジンと化合物4の合剤投与群
【図4】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:ベタキソロール単独投与群、□:化合物4単独投与群、△:ベタキソロールと化合物4の併用投与群
【図5】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:ブナゾシン単独投与群、△:化合物4単独投与群、□:ブナゾシンと化合物4の合剤投与群
【図6】各投与群の眼圧の経時変化を示すグラフである。眼圧は対照眼からの変化値(平均値±標準誤差)で示す。○:(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン単独投与群、□:化合物4単独投与群、△:(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリンと化合物4の合剤投与群
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤は、前記成分(A)と成分(B)とを組み合わせてなるものである。以下、本明細書では、成分(A)の化合物1〜5を併せてイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体と呼ぶ。
【0016】
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体の塩としては、薬学的に許容される塩であればよく、酸付加塩が挙げられる。具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等の無機酸の塩、又は酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、カンファースルホン酸等の有機酸の塩を挙げることができ、特に塩酸塩が好ましい。
【0017】
当該イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体又はその塩は、未溶媒和型のみならず水和物又は溶媒和物としても存在することができ、本発明においては、全ての結晶型及び水和物若しくは溶媒和物を含むものである。
【0018】
本発明に用いるイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体は、公知の方法、例えば、WO2010/146881に記載の方法により製造することができる。
【0019】
成分(B)のうち、プロスタグランジン類は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有するプロスタグランジン類としては、特開昭59−1418に開示されているプロスタグランジン類(特にプロスタグランジンF2αのような天然のプロスタグランジン)、特表平3−501025に開示されているラタノプロスト等のプロスタグランジン類、特開平2−108に開示されているイソプロピルウノプロストン等のプロスタグランジン類、特表平8−501310に開示されているビマトプロスト等のプロスタグランジン類、特開平10−182465に開示されているトラボプロスト等のプロスタグランジン類、および特開平11−71344に開示されているタフルプロスト等のプロスタグランジン類等が挙げられ、特に既に緑内障治療薬として市販されているラタノプロスト、イソプロピルウノプロストン、ビマトプロスト、トラボプロスト、またはタフルプロストが好適に用いられる。これらのプロスタグランジン類は塩またはエステルの形態をとっていてもよい。
【0020】
炭酸脱水酵素阻害薬は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有する炭酸脱水酵素阻害薬としては、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾラミド、ジクロフェナミド、メタゾラミドが挙げられるが、特にドルゾラミドとブリンゾラミドが好適に用いられる。これらは塩又はエステルの形態をとっていてもよい。
【0021】
α2刺激薬は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有するα2刺激薬としては、ブリモニジンとアプラクロニジンが挙げられるが、特にブリモニジンが好適である。これらは塩又はエステルの形態をとっていてもよい。
【0022】
β遮断薬は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有するβ遮断薬としては、チモロール、ベフノロール、カルテオロール、ニプラジロール、ベタキソール、レボブノロール、メチプラノールが好適に用いられ、ベタキソロール、チモロール、又はニプラジロールが特に好ましい。これらは塩又はエステルの形態をとっていてもよい。
【0023】
α1遮断薬は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有するα1刺激薬としては、例えばブナゾシンが挙げられる。これらは塩又はエステルの形態をとっていてもよい。
【0024】
Rhoキナーゼ阻害剤は眼圧下降作用を有し緑内障治療に有用なものであればよく、特に制限されるものではない。眼圧下降作用を有するRhoキナーゼ阻害剤としては、例えば市販されているファスジル[ヘキサヒドロ−1−(5−イソキノリンスルホニル)−1H−1,4−ジアゼピン]、WO099/20620に開示されている(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン、WO98/06433に開示されている(R)−(+)−N−(1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−イル)−4−(1−アミノエチル)ベンズアミド、WO2007/02664に開示されている(S)−1−(4−クロロ−5−イソキノリンスルホニル)−3−(メチルアミノ)ピロリジンおよび(S)−1−(4−クロロ−5−イソキノリンスルホニル)−3−アミノピロリジン、およびWO2009/091898に開示されている6−アミノイソキノリン誘導体などが挙げられる。これらは塩又はエステルの形態をとっていてもよい。
【0025】
これらの成分(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
成分(A)と成分(B)を組み合わせて用いた場合、後記実施例に示すように、正常眼圧からでも強力且つまたは持続時間が延長された眼圧下降作用が認められる。従って、これらを組み合わせなる医薬は、緑内障や高眼圧症の予防又は治療剤として有用である。ここで、緑内障としては、例えば原発性開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障、房水産生過多緑内障、高眼圧症、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、plateauirissyndrome、混合型緑内障、ステロイド緑内障、水晶体の嚢性緑内障、色素緑内障、アミロイド緑内障、血管新生緑内障、悪性緑内障等が挙げられる。また、高眼圧症とは、眼性高血圧症とも呼ばれ、視神経に明確な病変が認められないにもかかわらず異常に高い眼圧を示す症状をいい、術後の高眼圧発現等、多くの高眼圧状態が包含される。
【0027】
本発明の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤は、配合剤として、成分(A)及び成分(B)それぞれの有効量を適当な配合比において一の製剤中に含有する形態でも、また、成分(A)と成分(B)とがそれぞれ別の製剤中に含有する形態でも、さらにまた、成分(A)及び成分(B)それぞれの有効量を含有する薬剤を単独に製剤化したものを同時に又は間隔を空けて別々に使用できるようにしたキットであってもよい。成分(A)と成分(B)とをそれぞれ別の製剤にした場合には、それぞれの製剤は投与ルートが相違してもよい。これらの製剤化には特別な技術は必要なく、汎用される技術を用いて製剤化することができる。特に既に緑内障治療薬として販売されている薬剤に関しては市販の製剤を使用することもできる。
【0028】
上記製剤は、眼科用製剤、特に点眼用として用いるのが好ましく、斯かる点眼剤は、水性点眼剤、非水性点眼剤、懸濁性点眼剤、乳濁性点眼剤、眼軟膏等のいずれでもよい。このような製剤は、投与形態に適した組成物として、必要に応じて薬学的に許容される担体、例えば等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、溶解補助剤、粘稠化剤等を配合し、当業者に公知の製剤方法により製造できる。
【0029】
等張化剤としては、グルコース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール等の糖類、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の無機塩類等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜5質量%が好ましい。
【0030】
キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エデト酸カルシウム二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸カルシウム等のエデト酸塩類、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、ヘキサメタリン酸ソーダ、クエン酸等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.2質量%が好ましい。
【0031】
安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜1質量%が好ましい。
【0032】
pH調節剤としては、塩酸、炭酸、酢酸、クエン酸、リン酸、ホウ酸等の酸が挙げられ、さらに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩又は炭酸水素塩、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属酢酸塩、クエン酸ナトリウムなどのアルカリ金属クエン酸塩、トロメタモール等の塩基等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜20質量%が好ましい。
【0033】
防腐剤としては、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4級アンモニウム塩、アルキルポリアミノエチルグリシン、クロロブタノール、ポリクォード、ポリヘキサメチレンビグアニド、クロルヘキシジン等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.2質量%が好ましい。
【0034】
抗酸化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、濃縮混合トコフェロール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜0.4質量%が好ましい。
【0035】
溶解補助剤としては、安息香酸ナトリウム、グリセリン、D−ソルビトール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート80、マクロゴール、D−マンニトール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜3質量%が好ましい。
【0036】
粘稠化剤としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロースナトリウム、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられ、その配合量は、組成物全量に対して0〜70質量%が望ましい。
【0037】
点眼剤を調製する場合、例えば、所望な上記成分を滅菌精製水、生理食塩水等の水性溶剤、又は綿実油、大豆油、ゴマ油、落花生油等の植物油等の非水性溶剤に溶解又は懸濁させ、所定の浸透圧に調整し、濾過滅菌等の滅菌処理を施すことにより行うことができる。尚、眼軟膏剤を調製する場合は、前記各種の成分の他に、軟膏基剤を含むことができる。前記軟膏基剤としては、特に限定されないが、ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレン等の油性基剤;油相と水相とを界面活性剤等により乳化させた乳剤性基剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等から
なる水溶性基剤等が好ましく挙げられる。
【0038】
本発明の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤をキットとする場合、以上のごとく製剤化された成分(A)を含有してなる薬剤と成分(B)を含有してなる薬剤をそれぞれ別個にパッケージして、投与時にそれぞれのパッケージから各々の医薬品製剤を取り出して使用するように設計することができる。また、それぞれの医薬品製剤を、1回毎の併用投与に適した形態でパッケージしておくこともできる。
【0039】
本発明の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤を投与する場合、その投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状、投与形態及び投与回数等によって異なるが、通常は成人に対して、イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体又はその塩として、1日通常0.0001%〜10%(w/v)、好ましくは0.01%〜5%(w/v)の濃度のものを1回又は数回、プロスタグランジン類、炭酸脱水酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬あるいはRhoキナーゼ阻害剤として、1日0.0001%〜10%(w/v)の濃度のものを1回又は数回の範囲が挙げられる。
投与回数は、特に限定されないが、1回又は数回に分けて投与するのが好ましく、液体点眼剤の場合は、1回に1〜数滴点眼すればよい。キットとする場合は、それぞれ単独の製剤を同時に投与してもよいし、5分〜24時間の間隔を空けて投与してもよい。
【0040】
以下、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0041】
[製剤例1]
本発明におけるプロスタグランジン類(ラタノプロスト)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
ラタノプロスト 0.005g
化合物1〜5 0.3g
ポリソルベート80 0.15g
エデト酸ナトリウム 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
リン酸二水素ナトリウム水和物 1.4g
リン酸水素ナトリウムナトリウム水和物 0.63g
塩化ナトリウム 0.3g
精製水 適量
【0042】
[製剤例2]
本発明におけるプロスタグランジン類(イソプロピルウノプロストン)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
イソプロピルウノプロストン 0.06g
化合物1〜5 0.3g
ポリソルベート80 0.15g
D−マンニトール 0.2g
濃グリセリン 0.2g
エデト酸ナトリウム 0.05g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0043】
[製剤例3]
本発明における炭酸脱水酵素阻害薬(ブリンゾラミド)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
ブリンゾラミド 0.6g
化合物1〜5 0.3g
カルボキシビニルポリマー 1.0g
D−マンニトール 0.2g
エデト酸ナトリウム水和物 0.5g
濃グリセリン 2.0g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0044】
[製剤例4]
本発明におけるα2刺激薬(ブリモニジン)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
ブリモニジン 0.01g
化合物1〜5 0.3g
リン酸二水素ナトリウム水和物 0.6g
リン酸水素二ナトリウム水和物 1.4g
塩化ベンザルコニウム 0.01g
塩化ナトリウム 0.3g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0045】
[製剤例5]
本発明におけるβ遮断薬(チモロール)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を配合した点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
マレイン酸チモロール 0.34g
化合物1〜5 0.3g
ホウ酸 0.2g
濃グリセリン 0.25g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0046】
[製剤例6]
本発明におけるβ遮断薬(ベタキソロール)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
塩酸ベタキソロール 0.5g
化合物1〜5 0.3g
エデト酸ナトリウム 0.05g
濃グリセリン 2.0g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0047】
[製剤例7]
本発明におけるα1遮断薬(ブナゾシン)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
ブナゾシン塩酸塩 0.01g
化合物1〜5 0.3g
ホウ酸 0.5g
濃グリセリン 2.0g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
希塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0048】
[製剤例8]
本発明におけるRhoキナーゼ阻害薬((S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン)とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体との配合剤の点眼剤の一般的な製剤例を以下に示す。
点眼剤(100mL中)
(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン 0.4g
化合物1〜5 0.3g
リン酸二水素ナトリウム 0.8g
塩化ナトリウム 0.5g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
【0049】
[試験例1]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とプロスタグランジン類(ラタノプロスト)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は併用投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0050】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を0.3%(w/v)の濃度で下記の基剤Aに溶解して調製した。
基剤A(100mL中)
リン酸二水素ナトリウム 0.8g
塩化ナトリウム 0.5g
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
B.ラタノプロスト点眼液の調製:市販のキサラタン(登録商標)点眼液0.005%をそのまま使用した。
【0051】
(動物および群構成)
実験動物:カニクイザル(性別:雄性、一群6頭)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.3%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
ラタノプロスト投与群:ラタノプロスト点眼液0.005%(点眼量:40μL)を投与。
化合物4+ラタノプロスト投与群:化合物4の0.3%溶液(点眼量:40μL)とラタノプロスト点眼液0.005%(点眼量:40μL)の両方を投与。
【0052】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)化合物4を実験動物の片眼に点眼し、5分後ラタノプロストを同一眼に点眼した。基剤Aを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の1時間、3時間,5時間及び7時間後に眼圧を測定した。
【0053】
(結果および考察)
実験結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示したように、化合物4とラタノプロストの併用群では化合物4投与群およびタラタノプロスト投与群よりもさらに眼圧が下降し、作用の持続性の向上が認められた。
以上から、プロスタグランジン類とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果、並びに持続効果の向上が得られることがわかった。
【0056】
[試験例2]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とプロスタグランジン類(イソプロピルウノプロストン)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は合剤として投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0057】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を0.03%(w/v)の濃度で試験例1記載の基剤Aに溶解して調製した。
B.イソプロピルウノプロストン点眼液の調製:市販のレスキュラ(登録商標)点眼液0.12%を同量の基剤Aで希釈して0.06%点眼液を調製した。
C.合剤点眼液の調製:市販のレスキュラ(登録商標)点眼液0.12%と基剤Aに溶解した化合物4溶液を同量混和し、化合物4を0.03%含有しイソプロピルウノプロストンを0.06%する合剤点眼液を調製した。
【0058】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群8羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.03%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
イソプロピルウノプロストン投与群:イソプロピルウノプロストン0.06%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
合剤投与群:合剤点眼液(点眼量:40μL)を投与。
【0059】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)被験化合物を実験動物の片眼に点眼し、基剤Bを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の1時間、2時間,3時間,4時間,5時間,6時間及び7時間後に
眼圧を測定した。
【0060】
(結果及び考察)
試験の結果を図1に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図1から明らかなように、化合物4とイソプロピルウノプロストンの合剤投与群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物4投与群又はイソプロピルウノプロストン投与群よりも優れた眼圧下降作用を示し、また、その作用の持続性の向上を示した。
以上から、プロスタグランジン類とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果、並びに持続効果の向上が得られることがわかった。
【0061】
[試験例3]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体と炭酸脱水酵素阻害薬(ブリンゾラミド)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は併用投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0062】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を0.1%(w/v)の濃度で試験例1記載の基剤Aに溶解して調製した。
B.ブリンゾラミド点眼液の調製:市販のエイゾプト(登録商標)懸濁性点眼液1%をそのまま使用した。
【0063】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群8羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.1%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
ブリンゾラミド投与群:ブリンゾラミド点眼液1%(点眼量:40μL)を投与。
化合物4+ブリンゾラミド投与群:化合物4溶液0.1%点眼液(点眼量:40μL)とブリンゾラミド点眼液1%(点眼量:40μL)の両方を投与。
【0064】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)化合物4を実験動物の片眼に点眼し、続いてブリンゾラミド点眼液1%溶液を同一眼に点眼した。片眼に基剤Aを点眼した。
3)点眼後0.5時間に眼圧を測定後、37℃に温めた水道水を60mg/kg経口投与した。
4)薬剤点眼の1時間、1.5時間,2時間,2.5時間,3.5時間及び4.5時間後に眼圧を測定した。
【0065】
(結果及び考察)
試験の結果を図2に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図2から明らかなように、化合物4とブリンゾラミドの併用群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物4投与群又はブリンゾラミド投与群よりも優れた眼圧下降作用を示し、また、その作用の持続性の向上を示した。
以上から、炭酸脱水酵素阻害薬とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果、並びに持続効果の向上が得られることがわかった。
【0066】
[試験例4]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とα2刺激薬(ブリモニジン)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は合剤として投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0067】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を下記の基剤Bに溶解し、0.03%(w/v)の濃度の化合物4点眼液を調製した。
基剤B(100mL中)
ホウ酸 2g
精製水 適量
B.ブリモニジン点眼液の調製:ブリモニジンを基剤Bに溶解し、0.001%(w/v)の濃度のブリモニジン点眼液を調製した。
C.合剤点眼液の調製:化合物4一塩酸塩とブリモニジンの両方を基剤Bに溶解し、化合物4を0.3%含有しブリモニジンを0.001%含有する点眼液を調製した。
【0068】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群8羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.03%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
ブリモニジン投与群:ブリモニジンの0.001%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
合剤投与群:合剤点眼液(点眼量:40μL)を投与。
【0069】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)被験化合物を実験動物の片眼に点眼し、基剤Bを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の0.5時間、1時間、2時間,3時間,4時間及び5時間後に眼圧を測定した。
【0070】
(結果及び考察)
試験の結果を図3に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図3から明らかなように、化合物4とブリモニジンの合剤投与群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物4投与群又はブリモニジン投与群よりも優れた眼圧下降作用を示した。
以上から、α2刺激薬とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果が得られることがわかった。
【0071】
[試験例5]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とβ遮断薬(ベタキソロール)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は併用投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0072】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を0.03%(w/v)の濃度で試験例1記載の基剤Aに溶解して調製した。
B.ベタキソロール点眼液の調製:市販のベトプティック(登録商標)0.5%点眼液をそのまま使用した。
【0073】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群8羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.03%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
ベタキソロール投与群:塩酸ベタキソロールの0.5%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
化合物4+ベタキソロール投与群:化合物4の0.03%点眼液(点眼量:40μL)と塩酸ベタキソロール点眼液0.5%(点眼量:40μL)の両方を投与。
【0074】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)化合物4を実験動物の片眼に点眼し、続いてベタキソロールを同一眼に点眼した。基剤Bを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の1時間、2時間,3時間,4時間,5時間,6時間及び7時間後に眼圧を測定した。
【0075】
(結果及び考察)
試験の結果を図4に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図4から明らかなように、化合物4とベタキソロールの併用群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物4投与群又はベタキソロール投与群よりも優れた眼圧下降作用を示し、また、その作用の持続性の向上を示した。
以上から、β遮断薬とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果、並びに持続効果の向上が得られることがわかった。
【0076】
[試験例6]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とα1遮断薬(ブナゾシン)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は合剤として投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0077】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を試験例4記載の基剤Bに溶解し、0.03%の濃度の化合物4溶液を調製した。
B.ブナゾシン点眼液の調製:市販のデタントール(登録商標)0.01%点眼液を基剤Bで2倍希釈し0.005%のブナゾシン塩酸塩点眼液を調製した。
C.合剤点眼液の調製:基剤Bで溶解した化合物4溶液と同量の市販のデタントール(登録商標)0.01%点眼液を混和し、化合物4を0.03%含有しブナゾシン塩酸塩を0.005%含有する合剤点眼液を調製した。
【0078】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群7羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:0.03%の化合物4点眼液(点眼量:40μL)を投与。
ブナゾシン投与群:0.005%のブナゾシン塩酸塩点眼液(点眼量:40μL)を投与。
合剤投与群:合剤点眼液(点眼量:40μL)を投与。
【0079】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)被験化合物を実験動物の片眼に点眼し、基剤Bを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の1時間、2時間,3時間,4時間及び5時間後に眼圧を測定した。
【0080】
(結果及び考察)
試験の結果を図5に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図5から明らかなように、化合物4とブナゾシンの合剤投与群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物3投与群又はブナゾシン投与群よりも優れた眼圧下降作用を示し、また、その作用の持続性の向上を示した。
以上から、α1遮断薬とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果、並びに持続効果の向上が得られることがわかった。
【0081】
[試験例7]
イソキノリン−6−スルホンアミド誘導体とRhoキナーゼ阻害薬((S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン)との組み合わせによる有用性を調べるため、実験動物に両薬物を単独又は合剤として投与した時の眼圧下降効果を比較検討した。
【0082】
(被験化合物溶液の調製)
A.化合物4点眼液の調製:化合物4一塩酸塩を基剤Aに溶解し、0.03%(w/v)の濃度の化合物4点眼液を調製した。
B.(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン点眼液の調製:(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリンを基剤Aに溶解し、0.1%(w/v)の濃度の点眼溶液を調製した。
C.合剤点眼液の調製:化合物4一塩酸塩および(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン1−イル)スルホニル]イソキノリンを基剤Aに溶解し、0.03%の化合物4を含有し、0.1%の(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリンを含有する点眼液を調製した。
【0083】
(動物および群構成)
実験動物:ニュージーランド白色ウサギ(性別:雄性、一群8羽)
群構成:以下の3群を設けた。
化合物4投与群:化合物4の0.03%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン投与群:(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン1−イル)スルホニル]イソキノリンの0.1%点眼液(点眼量:40μL)を投与。
合剤投与群:合剤点眼液(点眼量:40μL)を投与。
【0084】
(投与方法及び測定方法)
1)被験化合物溶液投与直前に眼圧を測定した。
2)被験化合物を実験動物の片眼に点眼し、基剤Bを片眼に点眼した。
3)薬剤点眼の1時間、2時間,3時間,4時間及び5時間後に眼圧を測定した。
【0085】
(結果及び考察)
試験の結果を図6に示す。眼圧は対照眼からの変化値を示す。
図6から明らかなように、化合物4と(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリンの併用群は、薬剤単独投与群、すなわち、化合物4投与群又は(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン投与群よりも優れた眼圧下降作用を示した。
以上から、Rhoキナーゼ阻害薬とイソキノリン−6−スルホンアミド誘導体を組み合わせることにより、より強い眼圧下降効果が得られることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(S)−6−(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン、(S)−6−(7−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル)イソキノリン、6−{(2R,7R)−2,7−ジメチル−1,4−ジアゼパン−1−イルスルホニル}イノキノリン、(R)−6−(2−メチル−1,4−ジアゾカン−1−イルスルホニル)イソキノリン、及び(R)−6−(5−メチル−1,4,7−オキサジアゾナン−4−イルスルホニル)イソキノリンから選ばれる化合物又はその塩と、(B)プロスタグランジン類、炭酸脱水素酵素阻害剤、α2刺激薬、β遮断薬、α1遮断薬及びRhoキナーゼ阻害剤から選ばれる1種又は2種以上とを組み合わせてなる緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項2】
プロスタグランジン類が、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト又はイソプロピルウノプロストンである請求項1記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項3】
炭酸脱水酵素阻害剤が、ブリンゾラミド又はドルゾラミドである請求項1又は2記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項4】
α2刺激薬が、ブリモニジンである請求項1〜3のいずれか1項記載の緑内障予防又は治療剤。
【請求項5】
β遮断薬が、ベタキソロール、チモロール、又はニプラジロールである請求項1〜4のいずれか1項記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項6】
α1遮断薬が、ブナゾシンである請求項1〜5のいずれか1項記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項7】
Rhoキナーゼ阻害剤が、(S)−4−フルオロ−5−[(2−メチル−1,4−ジアゼパン−1−イル)スルホニル]イソキノリン、又はファスジルである請求項1〜6のいずれか1項記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項8】
成分(A)と成分(B)とが、それぞれ別製剤である請求項1〜7のいずれか1項記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。
【請求項9】
成分(A)と成分(B)とを一の製剤中に含有する請求項1〜7のいずれか1項記載の緑内障又は高眼圧症の予防又は治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35802(P2013−35802A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174762(P2011−174762)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(599118539)株式会社デ・ウエスタン・セラピテクス研究所 (8)
【Fターム(参考)】