説明

緑化システム及びその施工方法

【課題】緑化システムについて、その保水性を維持しながらも水はけ性を高める。
【解決手段】緑化システム1は、土壌層11の下に設けられて透水シート層12と、透水シート層12の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板からなる複数の保水ボード13と、複数の保水ボード13の下に設けられた保水シート層14と、保水シート層14の下に設けられた耐根シート層15とを備えている。そして、複数の保水ボード13は、全体として平面状に配置されると共に、互いに隣り合う保水ボード13同士の間に間隔23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建物の屋上等の植物が生育しにくい場所等を緑化するための緑化システム、及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、緑化システムがCO吸収や省エネルギー化等の環境向上を図る手段として注目されている。緑化システムは、例えば建物の屋上等に設置されるが、その設置場所に加わる荷重を低減するために、軽量化することが望まれている。
【0003】
そこで、不織布やフェルトのような樹脂繊維をマット状に成型した保水用ボードが提案されており、土壌の一部を軽量な保水用ボードに置き換える試みが行われている。そして、保水用ボードの上に載積された土壌層において、例えば芝生等の植物を生育するようにしている。
【0004】
しかし、上記保水用ボードは樹脂繊維からなるため、その保水用ボード自体を廃棄する際に多量のCOが排出されるという問題がある。さらに、上記保水用ボードには芝生等の根が入り込んでしまうため、例えば芝生の一部を他の植物に入れ替えるような場合には、保水用ボードごと芝生を取り外し、新たな保水用ボードと共に他の植物を設置する必要がある。この芝生の根が入り込んだ保水用ボードは、産業廃棄物として埋め立て処理しなければならず、環境配慮の観点で問題がある。
【0005】
また、上記保水用ボードは、樹脂繊維によって構成されているので、保水性に優れるものの、不必要に水分を保持してしまう問題も有している。例えば、降雨等により大量の水が保水用ボードに供給されたときには、長期にわたって水溜りのような状態が続いてしまうこととなる。
【0006】
一方、吸水ポリマーを含有する保水板によって、大量に供給された水を内部に保持することも提案されている。この保水板では、保水した水の蒸散を抑制できるが、吸水ポリマーに保持されている水分を植物が直接に利用できないため、合理的とはいえない。
【0007】
これに対し、特許文献1では、木質繊維板の全体に界面活性剤を添加し、保水性を向上させた植物栽培用の保水資材が提案されている。この保水資材によれば、植物が保水された水分を直接に利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−183177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、本発明者らは、保水機能を有する複数の保水ボードを例えば建物の屋上等に敷き詰めて緑化システムを形成することについて、鋭意研究を重ねている。そして、保水ボードとして上記特許文献1における保水資材を適用することを検討した。
【0010】
しかし、上記保水資材は、界面活性剤によってある程度の保水性が確保されているものの、大量に供給された水を保持できなくなる虞がある。また、この場合、水はけ性が低く、降雨等により供給された水が保水資材の表面に溜まってしまう問題がある。
【0011】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的とするところは、保水性を有する軽量な保水ボードを有する緑化システムについて、廃棄する際の環境への負荷を低減すると共に、その保水性を維持しながらも水はけ性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、保水ボードを保水シート層上に設けると共に、互いに隣り合う保水ボード同士の間に間隔を設けるようにした。
【0013】
具体的に、第1の発明は、植物を育生するための緑化システムを対象としている。この緑化システムは、植物が植えられた土壌層と、土壌層の下に設けられて透水性を有する透水シート層と、透水シート層の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板からなる複数の保水ボードと、複数の保水ボードの下に設けられて保水性を有する保水シート層と、保水シート層の下に設けられ、植物の根を通さないように構成された耐根シート層とを備えている。
【0014】
そして、複数の保水ボードは、全体として平面状に配置されると共に、互いに隣り合う保水ボード同士の間に間隔が設けられている。
【0015】
この第1の発明では、保水性を有する木質繊維板からなる保水ボードを土壌層の下に設けるようにしたので、土壌層に植えられた植物は、保水ボードに保水されている水分を根から吸収して育生される。また、重量が大きい土壌の一部が保水性を有する軽量な保水ボードに置き換えられるため、緑化システムは全体として大幅に軽量化される。また、保水ボードを木質繊維板によって構成したので、保水ボードに植物の根が絡んでいたとしても、当該植物の根と共に保水ボードを燃焼して廃棄することが可能となり、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減されることとなる。
【0016】
しかも、互いに隣り合う保水ボード同士の間に間隔が設けられているので、土壌層に大量に水が供給された場合でも、保水ボードによって保水しきれない水を互いに隣り合う保水ボード同士の間から下方へ排水することが可能となる。よって、この緑化システムでは、保水性を維持しながらも水はけ性が高められている。
【0017】
さらに、保水ボードの下には保水シート層が設けられているため、各保水ボード同士の間から保水ボードに保持されないまま下方に流れた水を保水シート層に保水して、その水を保水ボードの下面側に浸透させて保水させることも可能となる。
【0018】
第2の発明では、上記第1の発明に係る緑化システムにおいて、保水ボードは、撥水性を有する木質繊維板における少なくとも保水シート層と反対側の表層部に、親水性を有する親水層が形成されている。
【0019】
ここで、本発明者らは、木質繊維板を製造する際に又は木質繊維板を製造した後に、当該木質繊維板に界面活性剤を添加することを検討した。それによれば、木質繊維板を製造する際の抄造スラリーに界面活性剤を添加すると、同じ製造ラインで製造している他の製品が、界面活性剤の影響を受け易いことがわかった。
【0020】
一方、木質繊維板を製造した後に、その木質繊維板に界面活性剤を添加する方法として、例えば上記特許文献1で開示されているように、マット状に形成した木質繊維板の下面を吸引した状態で、上方から界面活性剤をスプレー塗布し、木質繊維板の全体に界面活性剤を浸透させる方法が考えられるが、この方法では吸引装置が必要になり、複数の保水ボードを形成するのに手間がかかるだけでなく、乾燥にもエネルギーが必要になる。
【0021】
これに対し、第2の発明では、木質繊維板の少なくとも保水シート層と反対側となる表層部に親水層を形成する構成としたので、木質繊維板の全体に界面活性剤を浸透させる必要がなく、容易に保水ボードを製造することが可能となる。
【0022】
第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る緑化システムにおいて、互いに隣り合う保水ボード同士の間には、灌水用パイプが配設されている。
【0023】
この第3の発明では、互いに隣り合う保水ボード同士の隙間を利用して灌水用パイプを配設することができる。そうして、灌水用パイプから供給される水は、各保水ボード同士の間を下方へ流れて保水シート層に保水された後に、保水ボードの下面側に保水されることとなる。
【0024】
第4の発明では、上記第1乃至第3の発明の何れか1つに係る緑化システムにおいて、互いに隣り合う保水ボード同士の間には、複数の粒状物が充填されている。
【0025】
この第4の発明では、複数の粒状物が保水ボード同士の間に充填されることにより、各保水ボード間の隙間が埋められるため、その上の透水シート層及び土壌層は安定して設けられる。さらに、その充填物が複数の粒状物であるため、各保水ボード間における透水性は良好に維持される。
【0026】
第5の発明では、上記第4の発明に係る緑化システムにおいて、複数の粒状物には、粒状の肥料が含まれている。
【0027】
この第5の発明では、各保水ボード間に粒状の肥料が設けられることから、この保水ボード間における透水性を維持しながらも、その肥料によって植物を良好に生育することが可能となる。
【0028】
第6の発明では、上記第4又は第5の発明に係る緑化システムにおいて、土壌層及び粒状物の流出を防止すると共に透水性を有する土壌流出防止材が側端部に設けられている。
【0029】
この第6の発明では、土壌流出防止材によって、余分な水を緑化システムから排出しつつ、緑化システムの側端部からの土壌層及び粒状物の流出が防止される。
【0030】
第7の発明では、上記第1乃至第6の発明の何れか1つに係る緑化システムにおいて、耐根シート層の直下には排水層が設けられている。
【0031】
この第7の発明では、耐根シート層の直下に設けられた排水層によって植物の根の周囲から余分な水が排出されやすくなるため、植物を良好に生育することが可能となる。
【0032】
第8の発明では、上記第1乃至第6の発明の何れか1つに係る緑化システムにおいて、耐根シート層の直上には排水層が設けられ、排水層と、保水シート層との間には、透水性を有すると共に植物の根の進展を遮蔽する透水耐根シート層が配置されている。
【0033】
この第8の発明では、排水層と保水シート層との間に透水耐根シート層が設けられているので、この透水耐根シート層により、上記保水シート層による水の拡散が補助される。一方、透水耐根シート層が植物の根を下方の排水層へ通さないため、排水層と植物の根等とを容易に分別して廃棄することが可能になる。
【0034】
第9の発明は、植物を育生するための緑化システムを施工する方法を対象としている。この緑化システムの施工方法は、植物の根を通さないように構成された耐根シート層を設置する工程と、耐根シート層の上に保水性を有する保水シート層を設ける工程と、保水シート層の上に、保水性を有する木質繊維板からなる複数の保水ボードを設ける工程と、保水ボードの上に透水性を有する透水シート層を設ける工程と、透水シート層の上に、植物が植えられる土壌層を設ける工程とを有する。
【0035】
そして、保水ボードを設ける工程では、複数の保水ボードを、全体として平面状に配置すると共に、互いに隣り合う保水ボード同士の間に間隔を設ける。
【0036】
この第9の発明では、複数の保水ボードを互いに間隔が設けられた状態で配置するようにしたので、保水性を維持しながらも水はけ性が高められた緑化システムを容易に施工することが可能となる。
【0037】
第10の発明では、上記第9の発明に係る緑化システムの施工方法において、保水ボードを設ける工程の前に、撥水性を有する木質繊維板に界面活性剤を含む水を接触させることにより、木質繊維板に撥水性を有する撥水層を残しつつ、木質繊維板の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層を形成する工程を行う。
【0038】
保水ボードを設ける工程では、親水層が形成された表層部を、保水ボードにおける保水シート層と反対側に配置させる。
【0039】
そして、保水ボードを設ける工程の後に、保水ボードにおける親水層に水を供給し、親水層に含まれる界面活性剤を撥水層へ浸透させることにより、保水ボードの全体に親水層を形成する工程を行う。
【0040】
この第10の発明では、木質繊維板に界面活性剤を含む水を接触させるようにしたので、容易に親水層を有する保水ボードを形成することが可能になる。しかも、保水ボードを設ける工程の前において、保水ボードが親水層だけでなく撥水層を有するようにしたので、保水ボードの保形性が良好に維持される。そのため、保水ボードを設ける工程における保水ボードの配設作業が容易となる。そうして、保水ボードの配設後に、その親水層に水を供給して保水ボードの全体に親水層を形成するようにしたので、保水ボードの保水性がより高められ、植物の生育が促されることとなる。
【0041】
この第11の発明では、上記第9の発明に係る緑化システムの施工方法において、保水ボードを設ける工程では、保水シート層の上に複数の木質繊維板を設けた後に、木質繊維板の表面に界面活性剤を含む水を散水し、木質繊維板の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層を形性する工程を行い、保水ボードを設ける工程の後に、保水ボードにおける親水層に水を供給し、親水層に含まれる界面活性剤を撥水層へ浸透させることにより、保水ボードの全体に親水層を形成する工程を行う。
【0042】
この第11の発明では、保水ボードに親水層を形成する前に、高い保形性有する木質繊維板を保水シート層の上に設けて、その後に木質繊維板に親水層を形成するようにしたので、保水ボードの配設作業を容易化することができる。
【発明の効果】
【0043】
第1の発明によると、重量が大きい土壌の一部が保水性を有する軽量な保水ボードに置き換えられるため、緑化システムを全体として大幅に軽量化することができる。また、保水ボードに植物の根が絡んでいたとしても、その植物の根と共に保水ボードを燃焼して廃棄することが可能となり、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減できる。しかも、互いに隣り合う保水ボード同士の間に間隔を設けることにより、保水ボードによって保水しきれない水を各保水ボード同士の間から下方へ排水できる。よって、緑化システムにおける保水性を維持しながらも、その水はけ性を高めることができる。さらに、各保水ボード同士の間から下方に流れた水を保水シートに保水して、その水を保水ボードの下面側に浸透させて保水させるが可能となる。
【0044】
第2の発明によると、木質繊維板の少なくとも保水シート層と反対側となる表層部に親水層を形成する構成としたので、木質繊維板の全体に界面活性剤を浸透させる必要がなく、容易に保水ボードを実現できる。
【0045】
第3の発明によると、互いに隣り合う保水ボード同士の隙間を利用して灌水用パイプを配設することができる。また、灌水用パイプから供給される水によって保水ボードを十分に保水することが可能になる。
【0046】
第4の発明によると、保水ボード同士の間に充填された複数の粒状物によって、透水シート層及び土壌層を安定して設けつつ、各保水ボード間における透水性を良好に維持できる。
【0047】
第5の発明によると、各保水ボード間に設けた粒状の肥料によって、保水ボード間における透水性を維持しながらも、その肥料によって植物を良好に生育することできる。
【0048】
第6の発明によると、土壌流出防止材によって、余分な水を緑化システムから排出しつつ、緑化システムの側端部からの土壌層及び粒状物の流出を防止できる。
【0049】
第7の発明によると、耐根シート層の直下に設けた排水層により、植物の根の周囲から余分な水を排出して植物を良好に生育することができる。
【0050】
第8の発明によると、排水層と保水シート層との間に設けた透水耐根シート層により、保水シート層による水の拡散を補助できる。さらに、排水層と植物の根等とを容易に分別して廃棄することが可能になる。
【0051】
第9の発明によると、保水性を維持しながらも水はけ性が高められた緑化システムを容易に施工することができる。
【0052】
第10の発明によると、容易に親水層を有する保水ボードを形成できる。しかも、保水ボードを設ける工程の前において保水ボードの保形性を良好に維持できるため、保水ボードの配設作業を容易化できる。さらに、保水ボードの配設後にその保水ボードの全体に親水層を形成することにより、植物の生育を促すことができる。
【0053】
第11の発明によると、親水層が形成されていない木質繊維板を保水シート層の上に設けた後に、その木質繊維板に親水層を形成するようにしたので、保水ボードの配設作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、本実施形態1における緑化システムの構造を示す断面図である。
【図2】図2は、保水ボードの配置を示す平面図である。
【図3】図3は、保水ボードの構造を示す断面図である。
【図4】図4は、保水ボードの構造を示す断面図である。
【図5】図5は、本実施形態2における緑化システムの構造を示す断面図である。
【図6】図6は、本実施形態3における緑化システムの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0056】
《発明の実施形態1》
図1〜図4は、本発明の実施形態1を示している。図1は、本実施形態1における緑化システムの構造を示す断面図である。図2は、保水ボードの配置を示す平面図である。図3及び図4は、保水ボードの構造を示す断面図である。
【0057】
本実施形態1における緑化システム1は、植物を育生するための緑化システムであって、植物10が植えられた土壌層11と、土壌層11の下に設けられて透水性を有する透水シート層12と、透水シート層12の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板19からなる複数の保水ボード13と、複数の保水ボード13の下に設けられて保水性を有する保水シート層14と、保水シート層14の下に設けられ、植物10の根を通さないように構成された耐根シート層15と、耐根シート層15の直下に設けられた排水層16とを備えている。
【0058】
本実施形態1の緑化システム1は、例えば建物の屋上等を構成するコンクリートスラブ17上に設けられている。そのことにより、建物の屋上は緑化システム1によって緑化されている。
【0059】
(排水層)
排水層16は、コンクリートスラブ17の表面に設置されている。排水層16は、設置面であるコンクリートスラブ17の表面上で緑化システム1の排水用の空間を確保するためのものであり、例えば、厚みが20mm程度であるプラスチック網状成型体又はプラスチック3次元立体成型体によって構成することが可能である。
【0060】
プラスチック網状成型体とは、例えばナイロン、ポリプロプレン又は塩化ビニル等の剛性を有する0.5mm〜2mm程度の樹脂線材を、カールさせた状態で立体網目状に嵩高に絡めたもの、好ましくは線材接点が熱融着されたものである。また、プラスチック3次元立体成型体とは、ナイロン、ポリプロプレン又は塩化ビニル等の剛性を有する樹脂を、例えばインジェクションプレス等の成型方法により、波状、3次元網目状又はウェブ状に立体成型されたものである。プラスチック網状成型体及びプラスチック3次元立体成型体は、何れも空隙部を有しており、その空隙部によって排水が可能な樹脂成型排水マットとなっている。
【0061】
プラスチックからなる網状成型体の例としては、例えば、新光ナイロン株式会社の「ヘチマロン」(登録商標)、東洋紡株式会社の「コスモジオ」(登録商標)等を挙げることができる。また、プラスチックからなる3次元立体成型体の例としては、例えば、ELMICH社の「VersiCell」(登録商標)や、複数のスペーサが一方向に突出して形成された板状の格子部材からなるプラスチック成型体等を挙げることができる。
【0062】
排水層16は、上記プラスチック網状成型体及びプラスチック3次元立体成型体以外にも、排水用の空間を確保できるような耐圧性を有するマット状の他の部材によって構成することが可能である。
【0063】
(耐根シート層)
耐根シート層15は、排水層16の表面に設けられると共に厚みが0.1mm程度であり、例えば、東洋紡株式会社の「コスモアングラス」(登録商標)等のようなポリエステル不織布によって構成されている。また、耐根シート層15は、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)又は塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)等からなる厚みが0.2mm〜2mm程度の樹脂シートによって構成することができる。
【0064】
また、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、ナイロン樹脂又はPP樹脂等の線状樹脂からなる樹脂織布と、この樹脂織布に熱融着されたポリエチレン樹脂(PE樹脂)、PP樹脂又はPVC樹脂からなるシート状物とを有し、厚みが例えば0.2mm〜2mm程度に形成された補強シートによっても、好適に耐根シート層15を構成することができる。
【0065】
また、例えばPE樹脂発泡体と上記補強シートとをラミネートした厚さが1mm〜3mm程度の発泡樹脂シートによって耐根シート層15を構成してもよい。耐根シート層15は、それ以外にも、保水ボード13及び土壌層11等の荷重に対する耐性を有し、当該耐根シート層15を越えて排水層16側へ植物10の根が侵入するのを防ぐと共に、水による経年劣化に耐え得る他の部材によって構成することも可能である。
【0066】
耐根シート層15を排水層16の上に設けることにより、植物10の根が耐根シート層15を越えて排水層16に入り込むことがないので、緑化システム1を廃棄する場合に、植物10等と樹脂等からなる排水層16とを容易に分別することができる。
【0067】
(保水シート層)
保水シート層14は、耐根シート層15の表面に設けられると共に、保水ボード13の下面に設置されている。保水シート層14は、互いに隣り合う保水ボード13同士の隙間を通過した水を、保水ボード13の下面側より全体に均一に浸透させるために設けられている。保水シート層14は、透水性が高い材料によって形成してもよいし、透水性が低い材料によって形成してもよい。緑化システム1における排水性を良好に維持するためには、水を完全に遮断して透過させないシートは、保水シート層14に適用できない。保水シート層14は、厚みが2mm程度であり、例えば、東洋紡株式会社の「ジャームガード」(登録商標)等のようなポリエステル不織布によって構成されている。
【0068】
保水シート層14の直下に耐根シート層15が配置されている場合、保水シート層14は水を透過又は保持する機能を有するシートであることが好ましく、例えば、0.2mm〜1mm程度の樹脂不織布を好適に用いることができる。これにより、互いに隣り合う保水ボード13同士の隙間を通過した水を、保水ボード13と耐根シート層15との間の保水シート層14を伝わせて、保水ボード13の裏面全体に供給することが可能になる。
【0069】
このような、水を透過又は保持する機能を有するシートとしては、燃やしても水と二酸化炭素しか発生しない例えばポリエステル樹脂、PP樹脂又はPE樹脂等からなる不織布を用いるのが好ましい。そのことにより、廃棄する際に植物との分別を不要にすることができる。このような材料としては、例えば東洋紡株式会社の親水性不織布である「ジャームガード」(登録商標)等が挙げられる。
【0070】
また、いわゆる生分解性プラスチックからなる不織布によって保水シート層14を構成してもよい。生分解性プラスチックとしては、微生物系のバイオポリエステル樹脂やバクテリアセルロース樹脂、天然物系のセルロース変性物、キトサン/セルロール変性物や酢酸セルロース変性物、化学合成系のポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、エチレンテレフタレート/サクシネート樹脂、又はポリプチレンサクシネート樹脂等、1ヶ月〜1年程度で土壌に分解されるものが好ましい。このような材料としては、例えば旭化成せんい株式会社の「ベンネット」(登録商標)や、シンワ株式会社の「Haibon」(登録商標)等が挙げられる。
【0071】
(木質繊維板からなる保水ボード)
保水ボード13は、比重が0.05〜0.35程度であるいわゆるインシュレーションボードによって好適に構成される。インシュレーションボードとは、長繊維の木質繊維をバインダーやワックスとともに湿式抄造し、板状に成型した木質繊維板19である。通常、インシュレーションボードは、耐水性を向上させるためにワックスが内添されており、多少の撥水性を有している。したがって、本実施形態では、界面活性剤等によって保水ボード13の濡れ性を向上させ、保水ボード13を容易に保水状態となるようにしている。このような界面活性剤としては、例えば、株式会社ハイポネックスジャパンの「ワターイン」(登録商標)や「ワターインキレート」(商品名)を適用することができる。
【0072】
保水ボード13は、例えば厚みが11mm程度の撥水性を有するインシュレーションボードにおける少なくとも保水シート層14と反対側の表層部に、親水性を有する親水層20が形成されている。
【0073】
保水ボード13は、施工後の緑化システムを構成した状態で、その全体が親水層20となっているが、図3に示すように、施工前にはインシュレーションボードの少なくとも一部の表層部に親水層20が形成される一方、その他の部分が撥水性を有する撥水層21が形成されている。
【0074】
例えば、施工前の保水ボード13は、図3に示すように、土壌層11側となる表層部のみに親水層20が形成されていてもよく、図4に示すように、表層部の全体が親水層20となり、その内側部分が撥水層21となるように形成してもよい。親水層20の厚みは、例えば5mm程度である。
【0075】
保水ボード13を構成する木質繊維板19の比重は、0.05未満であると、その上を人が歩行するための積載荷重に対する耐性が不足するだけでなく、保水量が大幅に少なくなってしまう。一方、0.35を越えると、比重が高すぎて植物の根の活着性が低下する。したがって、木質繊維板19の比重は0.05〜0.35とされている。
【0076】
また、この木質繊維板19の厚みは、10mm未満であると、保水量が大幅に不足する一方、25mmを越えると、不必要にコストが上昇するため、10mm〜25mmとされている。
【0077】
複数の保水ボード13は、その一部を図2に示すように、全体として平面状に配置されると共に、互いに隣り合う保水ボード13同士の間に間隔23が設けられている。各間隔23は、例えば5mm〜50mm程度であることが好ましい。本実施形態では、各保水ボード13同士の間隔23が50mm程度の幅とされている。
【0078】
(粒状物)
図1に示すように、各保水ボード13同士の間には、複数の粒状物24が充填されている。複数の粒状物24は、保水ボード13の表面と略平坦になるように、又は土壌層11と連続するように、例えば1mm〜5mm程度の粒径を有するようにしてもよい。粒状物24としては、例えば鹿沼土、日向土、パミス等の軽石、砕石、セラミック、ゼオライト、パーライト、又はバーミキュライト等を適用することができる。
【0079】
さらに、各保水ボード13同士の間には、粒状物24と共に肥料25を設けることが可能である。肥料25は、土壌層11に植栽される植物10に適したものを選択することが好ましい。さらに好ましくは、充填された肥料25以外の粒状物24の透水性を妨げない肥料であることが好ましい。そこで、本実施形態では、粒状の肥料25を、粒状の軽量土壌等の他の粒状物24と共に、各保水ボード13同士の間に充填している。すなわち、本実施形態における複数の粒状物24には、粒状の肥料25が含まれている。
【0080】
(透水シート層)
図1に示すように、保水ボード13の上には、透水シート層12が設けられている。透水シート層12には、厚みが0.5mm〜1.5mm程度であり、例えばポリエステル樹脂、PP樹脂又はPE樹脂等の保水機能を有する材料からなる樹脂不織布や樹脂織布によって構成することが可能である。
【0081】
特に、本実施形態における透水シート層12は、厚みが0.8mmである例えば東邦レオ株式会社の「FDフィルター」(商品名)等のポリエステル不織布によって構成されている。もちろん、保水シート層14と同様に、例えばPP樹脂やPE樹脂等の生分解性プラスチックからなる不織布等によって透水シート層12を構成してもよい。
【0082】
尚、透水シート層12である薄い不織布を土壌層11の上に設けるようにしてもよい。そのことにより、土壌を保持し、芝生等の植物10の活着状態を保護することができる。
【0083】
(土壌層)
土壌層11は、例えば一般的な園芸用土、腐葉土、砕石、セラミック又は軽量土壌等によって構成されている。特に、株式会社イングスの「IGソイル」(商品名)等の軽量土壌によって土壌層11を構成することが好ましい。軽量土壌とは、鹿沼土、日向土、パミス等の軽石、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト、ベントナイト、及び人工軽量土等の比重が比較的軽いものをいう。
【0084】
特に、植物10が芝生である場合、芝生が中性又は弱酸性を好むことから、アルカリ性の強い土壌には必要に応じて中和剤を添加するのが好ましい。
【0085】
軽量土壌は水はけ性が高すぎるため、その表面の植物10が水を吸う前に、下方の保水ボード13又は各保水ボード13同士の隙間から水が排出されてしまう。これに対し、本実施形態では、透水シート層12を保水ボード13と土壌層11との間に設けているので、透水シート層12の表面上で水を所定時間保持することができる。よって、土壌層11における保水性を高めることが可能となる。
【0086】
(灌水装置)
本実施形態の緑化システム1は灌水装置30を有している。灌水装置30は、土壌層11や保水ボード13等に水を供給することによって、植物10に水を十分な量の水を与えるためのものである。
【0087】
図1に示すように、灌水装置30は灌水パイプ31を有している。本実施形態の灌水パイプ31は土壌層11の軽量土壌に埋設されている。灌水パイプ31とは、パイプ内外に連通する多数の微細孔が形成されたパイプであり、当該微細孔から、パイプ内の水圧により水がパイプ外へ滲出するように構成されたものである。その他の例として、点滴散水を行うドリップチューブを用いてもよい。
【0088】
灌水装置30は、図1に示すように、例えば、所定位置における含水率を計測する含水率計32を有している。含水率計32は例えば土壌層11に埋設されている。含水率計32は保水ボード13に設けることも好ましい。そうして、含水率計32により計測された含水率が所定値以下であるときに灌水パイプ31から水を滲出させるようになっている。また、灌水装置30は、タイマーを有することにより、毎日同じ時刻に灌水するように構成してもよい。
【0089】
本実施形態の緑化システム1は、保水ボード13及び保水シート層14等を有することによって保水性が高められているため、一般的な緑化システムよりも灌水の頻度を低下させることができる。そのため、所定位置の土壌層11又は保水ボード13の含水率を含水率計32により計測し、当該含水率が所定値以下になったときに自動的に灌水が行われるように灌水装置30を構成することが望ましい。特に、降雨の多い梅雨時期や植物の活性の低い冬季には、灌水の回数を飛躍的に低減することが可能である。また、夏場においても、夕立で降った雨を効率よく保水できるため、灌水の回数を大幅に低減することが可能である。
【0090】
(植物)
植物10は、特に種類が限定されないが、芝生やつる性植物が好適である。植物10を育生するために、緑化システム1の施工時に、当該植物10の種を土壌層11又は透水シート層12等に散布しておいてもよく、苗を土壌層11に植えるようにしてもよい。また、植物10が芝生であれば、マット状に成型された芝生をロール状にした巻芝や、縦×横が150mm×370mmや、300mm×370mm程度である切芝を土壌層11上に載置してもよい。これらは、施工後1〜2ヶ月程度で、土壌層11及び保水ボード13に至るまで根を伸ばして活着する。
【0091】
(土壌流出防止材)
緑化システム1の側端部には、土壌層11及び粒状物24の流出を防止すると共に透水性を有する土壌流出防止材34が設けられている。土壌流出防止材34としては、水を容易に透過させる一方、0.5mm程度の粒状物24等の流出を防ぐことが可能な樹脂不織布や樹脂織布等を好適に用いることができる。
【0092】
−施工方法−
次に、緑化システム1の施工方法について説明する。本実施形態では、建物の屋上等におけるコンクリートスラブ17上に緑化システム1を形成する。
【0093】
まず、コンクリートスラブ17の表面に、樹脂成型排水マットである上記排水層16を設置する。次に、排水層16の上に、植物10の根を通さない上記耐根シート層15を設置する。次に、耐根シート層15の上に保水性を有する上記保水シート層14を設ける。
【0094】
また、予め複数の保水ボード13を形成しておく。すなわち、撥水性を有する木質繊維板19に界面活性剤を含む水を接触させることにより、木質繊維板19に撥水性を有する撥水層21を残しつつ、この木質繊維板19の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層20を形成する。具体的には、界面活性剤「ワターイン」(登録商標)を500倍に希釈した水溶液に木質繊維板19を浮かべたり、漬けたりする。木質繊維板19を浮かべると、その水に接した部分から木質繊維板19は徐々に保水されていく。そうして、表面から5mm程度を保水状態として親水層20を形成する。
【0095】
上述のように、施工前の保水ボード13は、図3に示すように、土壌層11側となる表層部のみに親水層20を形成していてもよく、図4に示すように、表層部の全体を親水層20とする一方、その内側部分が撥水層21となるように形成してもよい。
【0096】
その後、保水シート層14の上に、上記複数の保水ボード13を配設する。この工程では、親水層20が形成された表層部を、この保水ボード13における保水シート層14と反対側(つまり土壌層11側)に配置させる。さらに、図2に示すように、複数の保水ボード13を、保水シート層14上で全体として平面状に配置すると共に、互いに隣り合う保水ボード13同士の間に例えば5mm〜50mm程度の間隔23を設ける。
【0097】
木質繊維板(インシュレーションボード)は、水を含むことによって長さ方向及び幅方向の寸法が大きくなる。このとき、各保水ボード13間に間隔23を設けていなければ、保水ボード13の一部が浮き上がってしまう虞がある。したがって、このように間隔23を設けることによって、保水ボード13の浮き上がりを防止できる。また、降雨等により多量の水が供給された場合、保水ボード13同士の隙間を通ってその水を排出することができる。
【0098】
複数の保水ボード13をマトリクス状に配置すれば、上方から見て格子状の溝が各保水ボード13間の隙間によって形性されるため、保水ボード13上の排水性を高めて過剰な水をその隙間から好適に排出できる。
【0099】
また、保水シート層14の上に保水ボード13を配設する方法としては、保水シート層の14上に複数の木質繊維板19を所定の間隔で設けた後に、木質繊維板19の表面に界面活性剤を含む水を散水し、木質繊維板19の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層20を形性することも可能である。その後に、スプレーや如雨露などにより、保水ボード13における親水層20に水を供給し、親水層20に含まれる界面活性剤を撥水層21へ浸透させることにより、保水ボード13の全体に親水層20を形成する。
【0100】
このようにすれば、保水ボード13に親水層20を形成する前に、高い保形性有する木質繊維板19を保水シート層14の上に設けて、その後に木質繊維板19に親水層20を形成することから、保水ボード13の配設作業を容易化することができる。
【0101】
次に、図1に示すように、各保水ボード13同士の間に、粒状物24及び粒状の肥料25を充填する。尚、各保水ボード13同士の隙間は空隙としておいてもよい。また、保水シート層14上に設置した複数の保水ボード13における親水層20に水を供給する。そのことにより、親水層20に含まれる界面活性剤を撥水層21へ浸透させて、保水ボード13の全体に親水層20を形成することができる。尚、水は、土壌層11を形成してから供給してもよいし、さらに植物10を植生した後に供給してもよい。
【0102】
この場合、保水ボード13の施工前に木質繊維板19を完全な保水状態としてもよいが、木質繊維板19が完全に保水状態になると、例えば90cm×90cm等の大きな板を施工する場合に強度が弱くなってハンドリングが悪くなるだけでなく、完全に保水状態とするためにはかなりの長時間を要する。したがって、施工前には少なくとも表層部を界面活性剤を含む水によって親水層の状態としておき、施工後に保水部分に水を供給して、施工状態で完全な保水状態とすることが好ましい。
【0103】
次に、保水ボード13の上に透水性を有する透水シート層12を設ける。その後、
灌水パイプ31及び含水率計32を透水シート層12の上に設置した状態で、その透水シート層12の上に軽量土壌等の土壌層11を設ける。植物10が芝生である場合には、上述のように、ロール状の芝生を土壌層11の上で展開するようにしてもよい。こうして、保水性を維持しながらも水はけ性が高められた緑化システム1を施工することができる。
【0104】
したがって、この実施形態1によると、重量が大きい土壌の一部を保水性を有する軽量な保水ボード13に置き換えるようにしたので、緑化システム1を全体として大幅に軽量化することができる。また、保水ボード13に植物10の根が絡んでいたとしても、その植物10の根と共に保水ボード13を燃焼して廃棄することが可能となり、廃棄する際の環境への負荷が容易に低減できる。しかも、互いに隣り合う保水ボード13同士の間に間隔23を設けることにより、保水ボード13によって保水しきれない水を各保水ボード13同士の間から下方へ排水できる。よって、緑化システム1における保水性を維持しながらも、その水はけ性を高めることができる。さらに、各保水ボード13同士の間から保水ボードに保持されないまま下方に流れた水を保水シート層14に保水して、その水を保水ボード13の下面側に浸透させて保水させることが可能となる。
【0105】
さらに、木質繊維板19の少なくとも保水シート層14と反対側となる表層部に親水層20を形成する構成としたので、木質繊維板19の全体に界面活性剤を浸透させる必要がなく、容易に保水ボード13を実現できる。また、保水ボード13同士の間に充填された複数の粒状物24によって、透水シート層12及び土壌層11を安定して設けつつ、各保水ボード13間における透水性を良好に維持できる。
【0106】
さらにまた、各保水ボード13間に設けた粒状の肥料25によって、保水ボード13間における透水性を維持しながらも、その肥料によって植物10を良好に生育することできる。また、土壌流出防止材34によって、余分な水を緑化システム1から排出しつつ、緑化システム1の側端部からの土壌層11及び粒状物24の流出を防止できる。さらに、耐根シート層15の直下に設けた排水層16により、植物10の根の周囲から余分な水を容易に排出して植物10を良好に生育することができる。
【0107】
しかも、施工前の保水ボード13として、木質繊維板19の少なくとも一部の表層部に親水層20を形成する一方、その他の部分に撥水層21を残しておくようにしたので、施工前における保水ボード13の保形性を良好に維持できるため、保水ボード13の配設作業を容易化できる。また、保水ボード13の配設後にその保水ボード13の全体に親水層20を形成することにより、植物10の生育を好適に促すことができる。
【0108】
《発明の実施形態2》
図5は、本発明の実施形態2を示している。図5は、本実施形態2における緑化システムの構造を示す断面図である。尚、以降の各実施形態では、図1〜図4と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0109】
本実施形態2は、上記実施形態1において、土壌層11に芝生保護材36を埋設すると共に、互いに隣り合う保水ボード13同士の間に灌水パイプ31を配設したものである。
【0110】
緑化システム1を駐車場に設ける場合には、緑化システム1の上に車両が駐車されることから、土壌層11で育成されている植物10としての芝生を保護する必要がある。そのため、樹脂製の芝生保護材36が土壌層11に埋設されている。
【0111】
芝生保護材36とは、上からの加重を分散させることにより、芝生の根が枯死することを防ぐためのものであり、PP樹脂やPVC樹脂等の樹脂を3次元リブ成型したものが好適に用いられる。例えば、日本植生株式会社の「タフタフパーク」(商品名)、新和商事株式会社の「ターフパーキング」(商品名)、又はELMICH社の「TurfPave」(商品名)を芝生保護材36とすることが可能である。
【0112】
本実施形態における芝生保護材36は、上下方向に開口部を有する筒状の筒状部材37を複数有し、各筒状部材37が千鳥状に配置された状態で互いに一体に結合された構成となっている。尚、駐車場に限らず、人の通り道等、芝生が頻繁に上から踏みつけられることが想定される場合には、駐車場と同様に芝生保護材36を緑化システム1に設けることが好ましのは言うまでもない。
【0113】
緑化システム1は、植物10としての芝生が植えられた土壌層11と、土壌層11に埋設された芝生保護材36と、土壌層11の下に設けられて透水性を有する透水シート層12と、透水シート層12の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板19からなる複数の保水ボード13と、複数の保水ボード13の下に設けられて保水性を有する保水シート層14と、保水シート層14の下に設けられ、透水性を有すると共に植物10の根の進展を遮蔽する透水耐根シート層27と、透水耐根シート層27の下に設けられた排水層16と、排水層16の下に設けられると共にコンクリートスラブ17の表面に配設された耐根シート層15とを備えている。
【0114】
すなわち、耐根シート層15の直上には排水層16が設けられ、排水層16と保水シート層14との間には透水耐根シート層27が配置されている。
【0115】
そして、耐根シート層15は、厚みが1mm程度であるPP樹脂シートによって形成され、駐車場スペースの全体に配設されている。排水層16は、厚みが10mm程度である樹脂網状成型体として、東洋紡株式会社の「コスモジオ」(登録商標)によって構成されている。
【0116】
透水耐根シート層27は、厚みが0.1mm程度であるポリエステル不織布として、東洋紡株式会社の「コスモアングラス」(登録商標)によって構成されている。透水耐根シート層27の端部は、緑化する領域からはみ出すように施工した後に、その端部を上側に折り返して透水シート層12と芝生の層との間に挟み込むようにした。一方、保水シート層14、保水ボード13、透水シート層12及び土壌層11は、実施形態1と同様のものである。
【0117】
(透水耐根シート層)
本実施形態のように、排水層16の下に耐根シート層15を設ける場合、排水層16と保水シート層14との間には、上記透水耐根シート層27を設けるのが好ましい。透水耐根シート層27は、直上に設けられる保水シート層14による水の拡散を補助するものである。この透水耐根シート層27を設けないと、保水シート層14を通過した根が排水層16に入り込んでしまう結果、分別廃棄が難しくなるだけでなく、排水層16における排水不良を招く原因となる。また、植物10が育成された植物育成層と排水層16との分別も困難になる。
【0118】
透水耐根シート層27としては、耐根性及び透水性を有する種々のシートを適用できる。例えば厚さ0.1mm〜0.5mm程度の樹脂不織布、密に織られた樹脂織布、又は綿布等を適用することが可能である。このような材料の例としては、例えば東洋紡株式会社の「コスモアングラス」(登録商標)や、ビルマテル株式会社のスパンボンドポリエステル樹脂不織布である「エコロベース」(登録商標)の透水シート等が挙げられる。
【0119】
この場合、互いに隣り合う保水ボード13同士の隙間を通過した水が、保水ボード13と透水耐根シート層27との間の保水シート層14を伝って保水ボード13の裏面側へ水を供給することができる。
【0120】
そして、互いに間隔23を設けて配置された保水ボード13同士の間には、灌水パイプ31が粒状物24と共に配置されている。隣り合う保水ボード13同士の間隔23は例えば50mm程度である。
【0121】
したがって、この実施形態2によると、上記実施形態1と同様の効果が得られることに加え、互いに隣り合う保水ボード13同士の隙間を利用して灌水用パイプ31を配設することができる。また、灌水用パイプ31から供給される水によって保水ボード13を十分に保水することができる。また、排水層16と保水シート層14との間に設けた透水耐根シート層27により、保水シート層14による水の拡散を補助できる。さらに、排水層16と芝生の根等とを容易に分別して廃棄することが可能になる。
【0122】
《発明の実施形態3》
図6は、本発明の実施形態3を示している。図6は、本実施形態3における緑化システムの構造を示す断面図である。
【0123】
上記実施形態1では緑化システム1を建物の屋上等のコンクリートスラブ17上に形成したのに対し、本実施形態の緑化システム1は地上の駐車場等に設けるようにしたものである。
【0124】
すなわち、本実施形態3における緑化システム1は、植物10としての芝生が植えられた土壌層11と、土壌層11に埋設された芝生保護材36と、土壌層11の下に設けられて透水性を有する透水シート層12と、透水シート層12の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板19からなる複数の保水ボード13と、複数の保水ボード13の下に設けられて保水性を有する保水シート層14と、保水シート層14の下に設けられ、植物10の根を通さないように構成された耐根シート層15とを備えている。
【0125】
耐根シート層15、保水シート層14、保水ボード13、透水シート層12、芝生保護材36及び土壌層11は、実施形態1と同様のものである。また、互いに間隔23を設けて配置された保水ボード13同士の間には、灌水パイプ31が粒状物24と共に配置されている。隣り合う保水ボード13同士の間隔23は例えば50mm程度である。
【0126】
そして、耐根シート層15は、砕石層38の表面に配設されている。本実施形態の緑化システム1は、樹脂製の排水層を有しておらず、砕石層38が排水層として機能するようになっている。
【0127】
したがって、この実施形態3によると、地上に緑化システム1を配置しながらも、上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0128】
尚、本発明は上記実施形態1〜3に限定されるものでなく、本発明には、これらの実施形態1〜3を適宜組み合わせた構成が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明は、例えば建物の屋上等の植物が生育しにくい場所等を緑化するための緑化システム、及びその施工方法について有用である。
【符号の説明】
【0130】
1 緑化システム
10 植物
11 土壌層
12 透水シート層
13 保水ボード
14 保水シート層
15 耐根シート層
16 排水層
19 木質繊維板
20 親水層
21 撥水層
23 間隔
24 粒状物
25 肥料
27 透水耐根シート層
31 灌水パイプ
34 土壌流出防止材
38 砕石層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育生するための緑化システムであって、
上記植物が植えられた土壌層と、
上記土壌層の下に設けられて透水性を有する透水シート層と、
上記透水シート層の下に設けられ、保水性を有する木質繊維板からなる複数の保水ボードと、
上記複数の保水ボードの下に設けられて保水性を有する保水シート層と、
上記保水シート層の下に設けられ、上記植物の根を通さないように構成された耐根シート層とを備え、
上記複数の保水ボードは、全体として平面状に配置されると共に、互いに隣り合う上記保水ボード同士の間に間隔が設けられている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項2】
請求項1に記載された緑化システムにおいて、
上記保水ボードは、撥水性を有する上記木質繊維板における少なくとも上記保水シート層と反対側の表層部に、親水性を有する親水層が形成されている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された緑化システムにおいて、
互いに隣り合う上記保水ボード同士の間には、灌水用パイプが配設されている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載された緑化システムにおいて、
互いに隣り合う上記保水ボード同士の間には、複数の粒状物が充填されている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項5】
請求項4に記載された緑化システムにおいて、
上記複数の粒状物には、粒状の肥料が含まれている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された緑化システムにおいて、
上記土壌層及び上記粒状物の流出を防止すると共に透水性を有する土壌流出防止材が側端部に設けられている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載された緑化システムにおいて、
上記耐根シート層の直下には排水層が設けられている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1つに記載された緑化システムにおいて、
上記耐根シート層の直上には排水層が設けられ、
上記排水層と、上記保水シート層との間には、透水性を有すると共に上記植物の根の進展を遮蔽する透水耐根シート層が配置されている
ことを特徴とする緑化システム。
【請求項9】
植物を育生するための緑化システムを施工する方法であって、
上記植物の根を通さないように構成された耐根シート層を設置する工程と、
上記耐根シート層の上に保水性を有する保水シート層を設ける工程と、
上記保水シート層の上に、保水性を有する木質繊維板からなる複数の保水ボードを設ける工程と、
上記保水ボードの上に透水性を有する透水シート層を設ける工程と、
上記透水シート層の上に、上記植物が植えられる土壌層を設ける工程とを有し、
上記保水ボードを設ける工程では、上記複数の保水ボードを、全体として平面状に配置すると共に、互いに隣り合う上記保水ボード同士の間に間隔を設ける
ことを特徴とする緑化システムの施工方法。
【請求項10】
請求項9に記載された緑化システムの施工方法において、
上記保水ボードを設ける工程の前に、撥水性を有する上記木質繊維板に界面活性剤を含む水を接触させることにより、上記木質繊維板に撥水性を有する撥水層を残しつつ、該木質繊維板の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層を形成する工程を行い、
上記保水ボードを設ける工程では、上記親水層が形成された表層部を、該保水ボードにおける上記保水シート層と反対側に配置させると共に、
上記保水ボードを設ける工程の後に、上記保水ボードにおける上記親水層に水を供給し、上記親水層に含まれる上記界面活性剤を上記撥水層へ浸透させることにより、上記保水ボードの全体に上記親水層を形成する工程を行う
ことを特徴とする緑化システムの施工方法。
【請求項11】
請求項9に記載された緑化システムの施工方法において、
上記保水ボードを設ける工程では、上記保水シート層の上に複数の木質繊維板を設けた後に、該木質繊維板の表面に界面活性剤を含む水を散水し、上記木質繊維板の少なくとも一部の表層部に親水性を有する親水層を形性する工程を行い、
上記保水ボードを設ける工程の後に、上記保水ボードにおける上記親水層に水を供給し、上記親水層に含まれる上記界面活性剤を上記撥水層へ浸透させることにより、上記保水ボードの全体に上記親水層を形成する工程を行う
ことを特徴とする緑化システムの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−223155(P2012−223155A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95243(P2011−95243)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【特許番号】特許第4871417号(P4871417)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(599124024)株式会社イングス (5)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】