説明

緑化促進用パネル

【課題】雨水により播種が流出し易い法面や荒廃地の緑化がより確実に行えるようにするための緑化促進用パネルを提供する。
【解決手段】縦桟2と横桟3を格子状に組みつけて一体化した矩形状の格子体4と、該格子体4の四面に取付けられ、格子体下方に長く延ばして形成される枠体5とよりなり、枠体5端は、鋭く形成され、法面や荒廃地への差込みが容易に行えるようにして、設置したパネル1が移動しにくくすると共に、雨水が外部から浸入したり、パネル外へ種子と共に外部へ流出しにくくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面ないし傾斜地(以下、単に法面という)や荒廃地の緑化工法に用いるのに適した格子状のパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
法面や荒廃地では、植生のため播種しても種子が風雨によって流出しがちで、生育しにくい。本出願人は、先に特願2004−233964号において、砂地の緑化を促進するための工法に用いられる格子状のパネルについて提案した。このパネルによると、砂地に設置することによりパネル内に播種した種子や土砂が風雨によって流出されるのが抑制され、砂地の緑化が促進される効果がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述するパネルについて改良を加え、雨水により播種が流出し易い法面や荒廃地の緑化がより確実に行えるようにするための緑化促進用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明のパネルは、枠と、該枠内を仕切って多数の区画を形成する仕切りよりなり、法面や荒廃地に設置される緑化促進用パネルであって、枠が上記仕切り下方に該仕切りより長く延びて形成されることを特徴とし、
請求項2に係る発明のパネルは、矩形状の外枠と、該外枠内を仕切って多数の区画を形成する仕切りと、上記外枠を構成する各辺の上縁に引掛けて係止され、上記外枠下方に該外枠より長く延びて外枠の各辺にそれぞれ取付けられる鉤状断面の枠体とよりなることを特徴とする。
【0005】
上記各発明の枠又は外枠を仕切る仕切りによって形成される各区画は、例えば矩形状、六角形等の多角形、円弧状をなすもので、区画が例えば矩形状をなすパネルは格子状、六角形をなすパネルはハニカム状を呈すようになる。
【0006】
上述する各発明のパネルには、好ましくは例えば鉄のようなリサイクル材を用いてリサイクルできるようにされるか、一定期間使用すると腐食したり、劣化して分解する材料を用いるのが望ましい。
【0007】
請求項3に係る発明のパネルは、請求項1又は2に係る発明において、枠、または枠体の下端を法面や荒廃地への差込を容易にするため鋭く形成したことを特徴とし、
請求項4に係わる発明は、請求項1ないし3に係わる発明において、枠又は枠体が仕切り上方に仕切りより長く延びて形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項5に係る発明のパネルは、急傾斜の法面に設置されるパネルであって、請求項1〜3に係る発明において、枠又は枠体にパネルを支持する一定長さないし幅の脚をヒンジによって回動可能に取付けたことを特徴とし、
請求項6に係わる発明は、請求項5に係わる発明の脚が枠又は枠体に取外し可能に取付けられることを特徴とする。
【0009】
本発明において用いる脚は、例えば一ないし複数のロッド、フォーク状をなす多数のロッド、格子状又は孔のないプレートなどで構成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明のパネルによると、法面や荒廃地には枠だけが接地することが可能で、パネル全体が設置するのと比べ、接地面積が少ないため、枠が法面や荒廃地に食い込み易くなり、食い込みによりパネルが移動しにくくなると共に、法面や荒廃地に多少の凹凸があっても枠が接地し易くなり、枠の接地により外部から雨水が浸入して水路を形成したり、パネル内を洗掘し、これにより雨水が種子と共に流出する、といった問題が生じにくくなること、パネル内に降り注いだ雨水により保水性が高まって植物の育成がより確実に行えるようになること、等の効果を奏する。また,雨水は一旦地下に浸透した後に下方にて表面水となって流出するため,降雨直後に直接表面を流出する場合に比べて,流出時間が遅くなるため,洪水等の発生を抑制することが出来る。
【0011】
請求項2に係る発明のパネルによると、既存のパネルにも枠体を取付けることが可能であり、これにより上述する請求項1に係る発明と同様の効果を奏するようになる。
請求項3に係る発明のパネルによると、枠又は枠体先端を法面や荒廃地に差し込むことにより、外部から雨水が浸入したり、パネル内の雨水が流出するのをより確実に抑制することができるようになり、植物の育成をより確実に行うことができる。
【0012】
軟弱な地盤において、地山の肌落ちが懸念される場合、パネル上にオーバーフローした土砂が進入、堆積、流出し土砂の移動を防止することができないが、請求項4に係わる発明のパネルによると、枠又は枠体の高さを高くすることにより、土砂の侵入、堆積、流出と言った一連の移動を抑止する事が可能となる。
【0013】
請求項5に係る発明のパネルは、枠又は枠体下端の脚を側方に伸ばして急傾斜の法面に立て掛けて取付けられるが、側方に延びる脚が接地することにより、法面に立て掛けるだけで取付けることができ、パネルが法面よりずり落ちることはないため、パネルを法面に取付けるためにアンカー等で固定する必要もない。
この場合の枠の固定方法は,枠体下端の脚にアンカ−挿入用の孔を加工しておき,これに挿入して固定しても良い。
【0014】
請求項6に係わる発明のパネルによると、不要時には脚を取外して邪魔にならないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係る緑化促進用のパネル1について示すもので、全体が鋼製又はプラスチック製で、仕切りとしての縦桟2と横桟3を格子状に組みつけて一体化し、矩形状の多数の区画を形成した矩形状の格子体4と、該格子体4の四辺に取付けられ、格子体下方に長く延ばして形成される枠5とよりなり、枠下端は、図2に示すように法面や荒廃地への差込を容易にするため鋭く形成されている。
【0016】
上述する区画は矩形状をなしているが、五角形、六角形、その他の多角形、或いは円弧状など任意の形態にすることができ、その形状はとくに限定されるものではない。
図3は、図1に示すパネル1の枠下端を畦6の斜面に差込んで取付けた例を示すもので、パネル1を通して植生が行われている態様を示している。
【0017】
図4は、パネルを構成する鉤状断面の枠体7を示すもので、仕切りとしての縦桟又は横桟に差し込まれる切込み溝9が縦桟又は横桟と同一ピッチで形成してあり、図5に示すように枠体7と共にパネルを構成する矩形状の枠体8の各辺の上縁に縦桟又は横桟が切込み溝9内に嵌るようにして引掛けて取付けられる。
本実施形態の縦桟及び横桟と外枠8よりなる格子体4には既存の枠体、例えばグレーチングを用いることができる。
【0018】
図6は、図5に示す上記格子体4の外枠8に、プレート状の脚11をヒンジ12によって回動可能に取り付けた凹形断面の取付部14を嵌め込んで取外し可能に取付けたパネル13について示すもので、図7に示すように畦6の斜面に取付けるときには、脚11を耕作地15の上に置いて、パネル13を畦6の斜面に立て掛けることにより取付けられる。本実施形態のパネルによれば、畦6の斜面に立て掛けられた状態で、脚11が耕作地15の上に置かれることによりパネル13のずり落ちが防止される。
【0019】
図8は、上述するプレート状の脚11を図1に示すタイプのパネル1の中間部に直接取付けたパネル17について示すもので、図7に示すように畦6の斜面に取付けるときには、脚11を耕作地15の上に置いて、パネル17の枠体下端を畦6の斜面に差込むことにより行われる。
【0020】
本実施形態のパネルによれば、パネル17は枠体下端を畦6の斜面に差込んで取付けられると共に、脚11が耕作地15上に置かれることによりパネル17のずり落ちが防止された状態でしっかりと固定される。
【0021】
図9に示すパネル19は、図1に示すパネル1において、枠5を格子体上方にも長く伸ばして形成したもので、本実施形態のパネルによると、地山の肌落ちが懸念されるような設置箇所においても、パネル内への土砂の侵入や堆積或いはパネル外への土砂の流出といった移動を抑止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のパネルは、法面や荒廃地の緑化のため、法面や荒廃地に設置される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る緑化促進用パネルの斜視図。
【図2】図1に示す緑化促進用パネルの要部の断面図。
【図3】畦に取付けた緑化促進用パネルの斜視図。
【図4】枠体の一部を示す斜視図。
【図5】図4に示す枠体を取付けた緑化促進用パネルの断面図。
【図6】緑化促進用パネルの別の例の一部の斜視図。
【図7】図6に示す緑化促進用パネルを畦に取付けた状態を示す斜視図。
【図8】緑化促進用パネルの更に別の例の一部の斜視図。
【図9】緑化促進用パネルの他の例の一部の斜視図。
【符号の説明】
【0024】
1、13、17、19・・緑化促進用パネル
2・・縦桟
3・・横桟
4・・格子体
5、7・・枠体
6・・畦
8・・外枠
9・・切込み溝
11・・脚
12・・ヒンジ
15・・耕作地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、該枠内を仕切って多数の区画を形成する仕切りよりなり、法面や荒廃地に設置される緑化促進用パネルであって、枠が上記仕切り下方に該仕切りより長く延びて形成されることを特徴とする緑化促進用パネル。
【請求項2】
矩形状の外枠と、該外枠内を仕切って多数の区画を形成する仕切りと、上記外枠を構成する各辺の上縁に引掛けて係止され、上記外枠下方に該外枠より長く延びて外枠の各辺にそれぞれ取付けられる鉤状断面の枠体とよりなることを特徴とする緑化促進用パネル。
【請求項3】
枠、または枠体の下端を法面や荒廃地への差込を容易にするため鋭く形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の緑化促進用パネル。
【請求項4】
枠又は枠体が仕切り上方に仕切りより長く延びて形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の緑化促進用パネル。
【請求項5】
急傾斜の法面に設置されるパネルであって、枠又は枠体下端にパネルを支持する一定長さないし幅の脚をヒンジによって回動可能に取付けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の緑化促進用パネル。
【請求項6】
脚が枠又は枠体に取外し可能に取付けられることを特徴とする請求項5記載の緑化促進用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−219927(P2006−219927A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35637(P2005−35637)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000133294)株式会社ダイクレ (65)
【Fターム(参考)】