説明

緑化手摺ユニット及び建物の緑化方法

【課題】施工中の建物の手摺の施工と、手摺の緑化とを一体に行うことができる緑化手摺ユニットを提供する。
【解決手段】施工中の建物の手摺の施工と該手摺の緑化とを一体に行うための緑化手摺ユニット11であって、該緑化手摺ユニット11は、プランター12と、該プランター12を収納すべく開口した収納口15を備え該収納口15に連設されプランター12を保持すべく枠体16で囲われたプランター収納部13と、該プランター収納部13の上方に連設される手摺部14とが一体的に構成され、該手摺部14は、少なくとも一対の縦支柱17と該縦支柱17の上端に連接される横枠18とを備える外枠部19と、該外枠部19の内側に配設される植物登はん用のワイヤーメッシュ部20とから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工中の建物の手摺の施工と、手摺の緑化とを一体に行うための緑化手摺ユニット、及び建物の緑化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の栽培に用いるプランターと、プランターに植生するつる植物等を登はんさせるための格子状のメッシュ部とを一体に構成した、建物の壁面緑化ユニットが知られている。
【0003】
この建物の壁面緑化ユニットは、建物の壁面に鉄骨下地材や支持金物等を用いて、嵌め込み用の枠体を別途に作成し、この枠体に壁面緑化ユニットを嵌め込んで、建物の壁面に取り付けている。あるいは、バルコニー手摺に別途の緑化ユニットを取り付けている。
【0004】
なお、特開2004−159582号公報には、建築物用緑化構造及び緑化植物基盤が開示されており(特許文献1参照)、特開2002−97653号公報には、壁面緑化用ユニットパネルが開示されており(特許文献2参照)、特開2002−77号公報には、壁面緑化パネルが開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−159582号公報
【特許文献2】特開2002−97653号公報
【特許文献3】特開2002−77号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来例の建物の壁面緑化ユニットにおいては、鉄骨下地材や支持金物等を用いるので、その分のコストが高くなり、また、嵌め込み用の枠体を別途に作成する施工手間が掛かるという問題点を有している。
【0007】
また、外廊下、外階段及びバルコニー等のような手摺が必要な場所を緑化する際には、プランターが足掛かりとなることから乗越え防止の安全対策上、手摺の外側に当該プランターを設置する必要がある。この場合、従来の壁面緑化ユニットでは、上述のコスト高や施工手間の問題点の他に、手摺の外側への枠体の施工は作業性や安全性が悪く、また、設置後のメンテナンス性も悪いという問題点を有している。
【0008】
従って、従来例における壁面緑化ユニットにおいては、上述のコスト高や施工手間の問題点を解決することと、手摺の外側への作業性を改善して、設置後のメンテナンス性を良好にすることに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、施工中の建物の手摺の施工と該手摺の緑化とを一体に行うための緑化手摺ユニットであって、該緑化手摺ユニットは、プランターと、該プランターを収納すべく開口した収納口を備え該収納口に連設され前記プランターを保持すべく枠体で囲われたプランター収納部と、該プランター収納部の上方に連設される手摺部とが一体的に構成され、前記手摺部は、少なくとも一対の縦支柱と該縦支柱の上端に連接される横枠とを備える外枠部と、該外枠部の内側に配設される植物登はん用のワイヤーメッシュ部とから成ることである。
【0010】
また、前記プランター収納部は、収納したプランターを引き出すための引出機構を備えること、;
前記引出機構は、一対の縦支柱に設けられてプランターの縁部を摺動自在に係止する一対のレール部材と、前記プランターの下部両端に設けられて当該プランターの下方の床面を転動するキャスター、又は当該プランターを載置する台車とから構成されること、;
前記引出機構は、枠体に設けられる一対のアングル材と、該アングル材の上部に架け渡されるプランター受け板と、前記枠体に設けられ前記プランター受け板を押上げる一対のジャッキと、前記プランター受け板の下部に配設されて当該プランター受け板を載置する台車とから構成されること、;
前記プランター収納部は、収納したプランターに自動灌水を行うための灌水チューブが装備されること、;
を含むものである。
【0011】
また、本発明の要旨は、施工中の建物に沿って設けられる工事用枠組足場の外側に、請求項1に記載の緑化手摺ユニットを取り付ける取付部を設け、該取付部に前記緑化手摺ユニットの縦支柱を取り付けて、当該緑化手摺ユニットを仮設し、プランター収納部に収納したプランターの植物を先行栽培して、ワイヤーメッシュ部に植物を登はんさせ、当該植物を先行栽培した緑化手摺ユニットを、施工中の建物の手摺の施工時に所定の設置位置に移設することである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る緑化手摺ユニットによれば、手摺の施工と、手摺の緑化とを同時に行うので、作業工程が減縮され、施工性が良好であり、工期が短縮できる。
また、地上での作業になるので、施工時の安全性が確保できる。
そして、従来例のような嵌め込み用の枠体を製作しないので、その分施工手間が掛からず、構成部材を減少できる。従って、軽量化が可能であると共にコストダウンを図ることができる。
更に、建設終了時には緑化が完成しており、生育状況が良好であるという種々の優れた効果を奏する。
【0013】
プランター収納部は、収納したプランターを引き出すための引出機構を備えることによって、プランターを収納口から引き出して、手摺部の内側で植物の植え替えや土の管理を行えるので、メンテナンス性が良好であるという優れた効果を奏する。
【0014】
プランター収納部は、収納したプランターに自動灌水を行うための灌水チューブが装備されることによって、植物への水やりを自動的に行えるので、メンテナンス性が良好であるという優れた効果を奏する。
【0015】
本発明に係る建物の緑化方法によれば、建設現場において環境技術や環境意識の高さを広告、宣伝できる。また、プランターの植物を先行栽培して、ワイヤーメッシュ部に植物を登はんさせてから、施工中の建物に移設できるという種々の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る緑化手摺ユニット11を設置位置に設置する状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施例の引出機構を説明する、要部の斜視図である。
【図3】(イ)プランター12の斜視図である。(ロ)プランター12の他の実施例を示す、要部の斜視図である。(ハ)台車28の要部の斜視図である。
【図4】第2実施例の引出機構を説明する、プランター収納部13の斜視図である。
【図5】第2実施例の引出機構を説明する、プランター収納部13の正面図である。
【図6】ジャッキ34を説明する断面図である。
【図7】アングル材39及びプランター受け板40を説明する、要部の正面図である。
【図8】アングル材39を説明する、要部の斜視図である。
【図9】プランター12を引き出す状態を説明する、プランター収納部13の側面図である。
【図10】プランター12とプランター受け板40と台車35とを分離して示した斜視図である。
【図11】他の実施例のジャッキ41を説明する、プランター収納部13の正面図である。
【図12】緑化手摺ユニット11を仮設した工事用枠組足場51の正面図である。
【図13】緑化手摺ユニット11を仮設した工事用枠組足場51の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、図1において、符号11は緑化手摺ユニットを示し、この緑化手摺ユニット11は、プランター12と、プランター12を収納するプランター収納部13と、プランター収納部13の上方に連設される手摺部14とが一体的に構成される。
【0018】
プランター収納部13は、内側に開口した収納口15を備え、この収納口15の外側が枠体16で囲われている。プランター収納部13には、収納したプランター12の引き出しを容易に行うための引出機構を備える。引出機構の詳細は後述する。
【0019】
手摺部14は、少なくとも一対の縦支柱17と該縦支柱17の上端に連接される横枠18とを備える外枠部19と、外枠部19の内側に配設される植物登はん用のワイヤーメッシュ部20とから成る。外枠部19とワイヤーメッシュ部20とは、連結部21で連結されている。
【0020】
外枠部19は、スチール製又はアルミ製の丸パイプ、角パイプ、又はフラットバーで形成されており、スチールの外周面には溶融亜鉛メッキが施されている。
【0021】
ワイヤーメッシュ部20は、四角形状の内枠部20aにワイヤーメッシュ20bが格子状に配設されている。このようなワイヤーメッシュ部20は、プランター12に植生したつる植物33等を登はんさせる部分である。
【0022】
縦支柱17の下方には、パイプ受け22が設けられている。このパイプ受け22は、灌水チューブ23を支持する部分である。従って、プランター収納部13は、プランター12に自動灌水を行うための灌水チューブ23が装備されるので、植物33への水やりが自動的に行える。
【0023】
次に、上述の引出機構について説明する。引出機構は、プランター12を収納口15から引き出して、植物33の植え替えや土の管理等のメンテナンスを容易に行うために設けられる。
【0024】
第1実施例の引出機構は、図2に示すように、一対の縦支柱17にそれぞれ設けられる一対のレール部材24から構成される。
【0025】
レール部材24は、例えばチャンネル材で形成され、プランター12の縁部12aを摺動自在に係止する。引手部32に指を掛けて手前に引けば、プランター12を収納口15から引き出せる。また、レール部材24には、プランター12を固定するための固定ネジ29が設けられている。
【0026】
プランター12の下部12bには、レベルアジャスター25が設けられている。このレベルアジャスター25を突出させて、プランター12の固定状態を維持する。プランター12を引き出す時には、レベルアジャスター25を引っ込めて固定状態を解除する。
【0027】
プランター12の下部12bの両端には、図3(ロ)に示すように、キャスター26を設けてもよい。キャスター26がプランター12の下方の床面を転動する。
【0028】
また、キャスター26に替えて、図3(ハ)に示すように、キャスター27付きの台車28を別体で設けてもよい、この台車28をプランター12の底部12bに配設して載置し、プランター12を引き出す。
【0029】
図2中の符号30は、レール部材24の先端部を塞ぐ化粧フタを示し、符号31は、一対の縦支柱17間に架け渡される横つなぎ材を示す。図3(イ)中の符号29aは、固定ネジ29を螺合する固定ネジ孔を示す。
【0030】
次に、第2実施例の引出機構を図4及び図5に示す。この引出機構は、枠体16に取り付けられる一対のアングル材39と、アングル材39の上部に架け渡されるプランター受け板40と、枠体16に取り付けられプランター受け板40を押上げる一対のジャッキ34と、プランター受け板40の下部に配設されるキャスター35a付きの台車35とから構成される。
【0031】
ジャッキ34は、図6に示すように、レバー36を押し下げると、ギアー37が螺合するロッド38を上方に突出する仕組みになっている。
【0032】
通常時は、図7及び図8に示すように、枠体16の内側に設けたアングル材39の上部に、プランター受け板40が架け渡されており、このプランター受け板40の上部にプランター12が載置されている。
【0033】
メンテナンス時にプランター12を引き出す方法について説明する。まず、レバー36を操作して、ジャッキ34のロッド38を突出させ、プランター受け板40と共にプランター12を押し上げる。この状態で、プランター12の下部に台車35を差し入れる(図5参照)。次に、ロッド38を下げ、プランター受け板40と共にプランター12を台車35に載置して、収納口15から引き出す(図9参照)。
【0034】
図10は、プランター12と、プランター受け板40と、台車35とを分離して示した斜視図である。プランター受け板40の表面には長孔42が形成されており、裏面には、剛性を持たせるためにリブ45が形成されている。また、台車35の表面には補強用の丸鋼43が設けられている。
【0035】
図11は、他の実施例のジャッキ41を説明する、プランター収納部13の正面図である。このジャッキ41は、空気圧式であって、キャスター46a付きの台車46の上部に配設される。図示しないポンプでジャッキ41を膨出させると、プランター受け板40と共にプランター12が押し上がり、アングル材39から離隔するので、台車46と一緒にプランター12を収納口15から引き出す。
【0036】
このような緑化手摺ユニット11は、外廊下、外階段及びバルコニー等のような手摺が必要な場所を緑化する際に用いられ、施工位置のスラブコンクリート58に予め設けたさや管44に対して、縦支柱17の下端部をボルトで固定する。更に、隣接する緑化手摺ユニット11同士の端部を固定してから、パイプ受け22に灌水チューブ23を配設して、図示しない散水ポンプや散水タイマーをセットする。
【0037】
以上のように構成される緑化手摺ユニット11は、プランター12と、プランター収納部13と手摺部14とが一体的に構成されるので、施工中の建物の手摺の施工と、手摺の緑化とを同時に行うことができる。つまり、植物33を先行栽培した緑化手摺ユニット11を、施工中の建物の手摺の施工時に所定の施工位置に移設することで、作業工程が減縮され、施工性が良好であり、工期が短縮できるという利点がある。
【0038】
次に、緑化手摺ユニット11を用いた建物の緑化方法について、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0039】
施工中の建物55に沿って設けられる工事用枠組足場51の外側に、緑化手摺ユニット11を取り付ける取付部53を設け、この取付部53に縦支柱17の下端部をボルトで固定して、緑化手摺ユニット11を仮設する。このような方法で工事用枠組足場51の外側に複数の取付部53を連設して、複数の緑化手摺ユニット11を複数階に渡って仮設する。なお、図12及び図13中の符号56は足場板を示し、符号57は垂下植物を示す。
【0040】
工事用枠組足場51の外側に仮設した緑化手摺ユニット11は、プランター12の植物33を先行栽培して、ワイヤーメッシュ部20に植物33を登はんさせる。その後、施工中の建物55の手摺の施工時に、緑化手摺ユニット11を所定の設置位置に移設する。
【0041】
このような建物の緑化方法によれば、建設現場において環境技術や環境意識の高さを広告、宣伝できる利点がある。
【符号の説明】
【0042】
11 緑化手摺ユニット
12 プランター
12a 縁部
12b 下部
13 プランター収納部
14 手摺部
15 収納口
16 枠体
17 縦支柱
18 横枠
19 外枠部
20 ワイヤーメッシュ部
20a 内枠部
20b ワイヤーメッシュ
21 連結部
22 パイプ受け
23 灌水チューブ
24 レール部材
25 レベルアジャスター
26、27 キャスター
28 台車
29 固定ネジ
29a 固定ネジ孔
30 化粧フタ
31 横つなぎ材
32 引手部
33 植物
34 ジャッキ
35 台車
35a キャスター
36 レバー
37 ギアー
38 ロッド
39 アングル材
40 プランター受け板
41 ジャッキ
42 長孔
43 丸鋼
44 さや管
45 リブ
46 台車
46a キャスター
51 工事用枠組足場
53 取付部
55 施工中の建物
56 足場板
57 垂下植物
58 スラブコンクリート
59 排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工中の建物の手摺の施工と該手摺の緑化とを一体に行うための緑化手摺ユニットであって、
該緑化手摺ユニットは、プランターと、該プランターを収納すべく開口した収納口を備え該収納口に連設され前記プランターを保持すべく枠体で囲われたプランター収納部と、該プランター収納部の上方に連設される手摺部とが一体的に構成され、
該手摺部は、少なくとも一対の縦支柱と該縦支柱の上端に連接される横枠とを備える外枠部と、該外枠部の内側に配設される植物登はん用のワイヤーメッシュ部とから成ること
を特徴とする緑化手摺ユニット。
【請求項2】
プランター収納部は、収納したプランターを引き出すための引出機構を備えること
を特徴とする請求項1に記載の緑化手摺ユニット。
【請求項3】
引出機構は、一対の縦支柱に設けられてプランターの縁部を摺動自在に係止する一対のレール部材と、前記プランターの下部両端に設けられて当該プランターの下方の床面を転動するキャスター、又は当該プランターを載置する台車とから構成されること
を特徴とする請求項2に記載の緑化手摺ユニット。
【請求項4】
引出機構は、枠体に設けられる一対のアングル材と、該アングル材の上部に架け渡されるプランター受け板と、前記枠体に設けられ前記プランター受け板を押上げる一対のジャッキと、前記プランター受け板の下部に配設されて当該プランター受け板を載置する台車とから構成されること
を特徴とする請求項2に記載の緑化手摺ユニット。
【請求項5】
プランター収納部は、収納したプランターに自動灌水を行うための灌水チューブが装備されること
を特徴とする請求項1に記載の緑化手摺ユニット。
【請求項6】
施工中の建物に沿って設けられる工事用枠組足場の外側に、請求項1に記載の緑化手摺ユニットを取り付ける取付部を設け、
該取付部に前記緑化手摺ユニットの縦支柱を取り付けて、当該緑化手摺ユニットを仮設し、
プランター収納部に収納したプランターの植物を先行栽培して、ワイヤーメッシュ部に植物を登はんさせ、
当該植物を先行栽培した緑化手摺ユニットを、施工中の建物の手摺の施工時に所定の設置位置に移設すること
を特徴とする建物の緑化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177279(P2012−177279A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41667(P2011−41667)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【Fターム(参考)】