説明

緑化用パネル

【課題】植栽基盤材を収納し植物を植設した状態で上下に複数段に積み重ねても、下段側の植栽基盤材や植物が上段側の緑化用パネルに押し潰されるようなことがなく、従って、植物を植栽して複数段に積み重ねた状態で搬送することができ、屋上等の設置箇所への搬送を効率的に行うことができる緑化用パネルを提供することを課題とする。
【解決手段】使用時には、前記植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保した状態で、パネル本体を上下複数段に積み重ねることができるとともに、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体を相互に係合させることができ、且つ不使用時には、前記植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接するパネル本体を相互に嵌合させることができるような係合・嵌合機能併備突出体が、前記パネル本体に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として屋上緑化等の施工を行うための緑化用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市緑化等の要請が高まり、それに応じて建築物の屋上に植生パネル等を設置して緑化を行う技術が開発され、普及しつつある。このような屋上緑化は、建築物の屋上で植物を栽培し、屋上面からの熱の吸収、放出を緩和することで、いわゆるヒートアイランド現象を抑制するものであり、また建築物の屋上で植物を栽培が行なわれることで、大気汚染等に対する環境改善を図ることも意図するものである。そして、このような屋上緑化の技術として、たとえば下記特許文献1や特許文献2のような特許出願もなされている。
【0003】
このような屋上緑化の技術は、一般に集中管理型緑化と粗放型緑化とに大別される。集中管理型緑化では、ヒートアイランド現象抑制等、単に技術的観点からのみならず、人工の庭園等を施工して美観を維持することも重視されるので、一定期間ごとに念入りなメンテナンスを行なう等、その名のごとく集中的な管理が必要となる。
【0004】
これに対して粗放型緑化では、集中管理型緑化のように美観が要求されるわけではなく、専ら技術的な観点のみ考慮することで足りるとされ、またメンテナンスも極力省力することが望まれている。このようなメンテナンス省力の観点から、粗放型緑化では、灌水をさほど必要としないセダム類が主たる植物種として用いられている。
【0005】
また、土壌は植栽の基盤となるものであり、植物を好適に生育させるには積層される土壌の厚さも一定以上必要であるが、上記セダム植物は他の植物に比べて土壌層の厚さが薄くても生育するので、屋上部に多大な積載荷重をかけない、いわゆる薄層緑化に最も適した植物種であることも、セダム植物が主として粗放型緑化に用いられている理由の1つでもある。
【0006】
薄層緑化に関する技術として、たとえば下記特許文献3のような出願がなされている。この特許文献3は、当該特許文献3の実用新案登録請求の範囲にも記載されているように、「上部が開放された箱状をなす多数の薄型トレーと、該薄型トレー内に予め植栽され、常緑キリンソウを含んだ緑化植物と、を備えた薄層緑化構造。」に係るものである。
【0007】
しかしながら、上記引用文献3に記載された薄型トレーは、屋上等の設置面の縦横に多数敷設して用いられるものであるため、上下に積み重ねることができるような構造となるように考慮されてはいない。従って、たとえば予め植栽基盤材を薄型トレーに収納して屋上部へ搬送しようとする場合、複数の薄型トレーを積み重ねて搬送することができず、搬送する効率が低下することとなる。このため、複数の薄型トレーを積み重ねて搬送するためには、複数の薄型トレーを積み重ねるための専用の棚等を別途準備し、そのような専用の棚等を用いて複数段に積み重ねる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−143940号公報
【特許文献2】特開2004−89005号公報
【特許文献3】実用新案登録第3151183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、植栽基盤材を収納し植物を植設した状態で上下に複数段に積み重ねても、下段側の植栽基盤材や植物が上段側の緑化用パネルに押し潰されるようなことがなく、従って、植物を植栽して複数段に積み重ねた状態で搬送することができ、屋上等の設置箇所への搬送を効率的に行うことができる緑化用パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、パネル本体に、土壌等の植栽基盤材を収納する植栽基盤材収納部を具備する緑化用パネルにおいて、使用時には、前記植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保した状態で、パネル本体を上下複数段に積み重ねることができるとともに、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体を相互に係合させることができ、且つ不使用時には、前記植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接するパネル本体を相互に嵌合させることができるような係合・嵌合機能併備突出体が、前記パネル本体に設けられていることを特徴とする緑化用パネルを提供するものである。
【0011】
このような係合・嵌合機能併備突出体の構成として、たとえば該係合・嵌合機能併備突出体に、上下に隣接するパネル本体を相互に係合させる係合用空間部を裏面側に有する係合用突出部を設けるとともに、上下に隣接するパネル本体を相互に嵌合させる嵌合用空間部を裏面側に有する嵌合用突出部を、前記係合用突出部の上部に設けることが可能である。
【0012】
このような構成において、嵌合用空間部と係合用空間部とは、底面視において長手部及び短手部を有するような形状に形成し、相互に相似形となるように形成し、さらに相互に直交して略十字形をなすように形成することが可能である。ここで、「長手部及び短手部を有するような形状」とは、たとえば長方形や楕円形のように、長手方向の寸法が短手方向の寸法よりも長く形成された形状のものである。従って、たとえば正方形や円形のようなものは除外される。
【0013】
パネル本体は、たとえば底面部と、該底面部から立ち上がり形成された側面部とからなる浅い箱形のトレー状に形成することができる。その場合、嵌合用突出部の高さは、パネル本体の側面部の高さよりも高く形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の緑化用パネルは、上述のように、使用時には、植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保した状態で、パネル本体を上下複数段に積み重ねることができるとともに、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体を相互に係合させることができるような係合・嵌合機能併備突出体がパネル本体に設けられているものであるため、植栽基盤材収納部に植栽基盤材を収納するとともに植物を植設し、その植栽基盤材が収納され植物が植設された緑化用パネルを、上下に隣接するパネル本体の係合・嵌合機能併備突出体が相互に係合するように、複数段に積み重ねることができる。
【0015】
そのように緑化用パネルを複数段に積み重ねた状態において、植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間が確保されているので、予め植栽基盤材を植栽基盤材収納部内に収納し、植栽基盤材に植物を植設した状態で緑化用パネルを複数段に積み重ねたとしても、下段の緑化用パネルの植栽基盤材収納部内に収納された植栽基盤材や、その植栽基盤材に植設された植物が、上段の緑化用パネルに押し潰されるようなことがない。
【0016】
従って、たとえばセダム植物等、背丈の低い薄層緑化用の植物を、複数段に積み重ねられた緑化用パネルの植栽基盤材収納部内の植栽基盤材に植設して搬送することができ、屋上等の設置箇所への搬送を効率的に行うことができるという効果がある。また、そのように緑化用パネルを複数段に積み重ねた状態で搬送を行っても、上述のように下段側の緑化用パネルの植栽基盤材や植物が上段の緑化用パネルに押し潰されるようなことがないので、植栽される植物への悪影響もない。
【0017】
また、上記係合・嵌合機能併備突出体は、不使用時には、植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間を確保することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接するパネル本体を相互に嵌合させることができるように構成されているので、上記本発明の緑化パネルを屋上等の緑化用として使用しない場合には、植栽基盤材収納部に植栽基盤材を収納しない空の緑化用パネルを嵩張らないように重ね合わせることができ、緑化用パネルの不使用時においては、極端に保管スペースをとることがない。
【0018】
さらに、嵌合用空間部と係合用空間部とを、底面視において長手部及び短手部を有するような形状に形成し、相互に相似形となるように形成し、さらに相互に直交して略十字形をなすように形成した場合には、上下段の緑化用パネルの嵌合用空間部を、それぞれ長手部及び短手部が同じ向きとなるように、該上下段の緑化用パネルを重ね合わせることによって、該上下段の緑化用パネルが相互に嵌合状態となり、また上下段の緑化用パネルの嵌合用空間部を、それぞれ長手部及び短手部が交差する方向となるように、該上下段の緑化用パネルを重ね合わせると、上下段の緑化用パネルは相互に嵌合状態とはならず、下段の緑化用パネルの嵌合用突出部が、上段の緑化用パネルの係合用空間部内に係合されることとなる。
【0019】
この場合において、嵌合用空間部と係合用空間部とは、相互に相似形となるように形成されているので、上記のように、下段の緑化用パネルの嵌合用突出部が、上段の緑化用パネルの係合用空間部内に係合された状態において、上下段の緑化用パネル相互間において、ガタつきが生じることもない。
【0020】
さらに、パネル本体を、たとえば底面部と、該底面部から立ち上がり形成された側面部とからなる浅い箱形のトレー状に形成し、嵌合用突出部の高さを、パネル本体の側面部の高さよりも高く形成した場合には、下段の緑化用パネルの嵌合用突出部が、上段の緑化用パネルの係合用空間部内に係合された状態において、植栽基盤材収納部における植栽基盤材の収納空間をより確実に確保することができるという効果がある。
また、このように嵌合用突出部の高さがパネル本体の側面部の高さよりも高く形成した場合には、その側面部の高さよりも高く形成された嵌合用突出部の頂部に、たとえばネット等を掛止することができ、そのような嵌合用突出部の頂部にネット等を掛止したとしても、植栽された薄層緑化等用の植物にネット等が不用意に引っかかるおそれもないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態の緑化用パネルの平面図。
【図2】同底面図。
【図3】同正面図。
【図4】同側面図。
【図5】図1のA−A線断面図。
【図6】図1のB−B線断面図。
【図7】図1のC−C線断面図。
【図8】植栽基盤を収納した緑化用パネルを積み重ねる状態を示す要部拡大断面図。
【図9】植栽基盤を収納した緑化用パネルを積み重ねる状態を示す外観斜視図。
【図10】植栽基盤を収納していない緑化用パネルを重ね合わせる状態を示す要部拡大断面図。
【図11】植栽基盤を収納していない緑化用パネルを重ね合わせる状態を示す要部拡大断面図。
【図12】他実施形態の緑化用パネルの要部拡大断面図。
【図13】植栽基盤を収納していない他実施形態の緑化用パネルを重ね合わせる状態を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。先ず、一実施形態としての緑化用パネルについて説明する。図1はその緑化用パネルの平面図、図2は底面図、図3は同正面図、図4は同側面図、図5は図1のA−A線断面図、図6は図1のB−B線断面図、図7は図1のC−C線断面図である。
【0023】
本実施形態の緑化用パネルは屋上緑化用に用いるもので、該緑化用パネルのパネル本体1は、図1に示すように全体が平面正方形状に形成され、且つ全体がポリエチレン、ポリプロピレン等の汎用性の合成樹脂で構成されている。また、このパネル本体1は、平面正方形状の底面部2と、該底面部2の四方から立ち上がり形成された側面部3とからなる浅い箱形のトレー状に形成されている。
【0024】
そして、前記側面部3で包囲された空間部が、土壌等の植栽基盤材を収納する植栽基盤材収納部4として形成されている。この土壌としては、天然土壌の他、軽量の人工土壌も用いることができる。また粒状のパーライト等、粘土鉱物を発泡させたようなものも植栽基盤材として用いることができる。
【0025】
パネル本体1の底面部2の縦方向及び横方向には、該底面部2からわずかに隆起するような偏平リブ5がそれぞれ2条ずつ、計4条形成されている。そして、この縦横に2条ずつ形成された偏平リブ5が交差する部分においては、係合・嵌合機能併備突出体6が立設されている。上記偏平リブ5が交差する部分に立設されるので、係合・嵌合機能併備突出体6は、計4個設けられることとなる。
【0026】
この係合・嵌合機能併備突出体6は、緑化用パネルの使用時に、前記植栽基盤材収納部4における植栽基盤材の収納空間を維持した状態で、パネル本体1を上下複数段に積み重ねることができるとともに、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体1を相互に係合させることができ、且つ不使用時には、前記植栽基盤材収納部4における植栽基盤材の収納スペースを維持することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接するパネル本体1を相互に嵌合させることができるように構成されたものである。
【0027】
前記係合・嵌合機能併備突出体6は、前記緑化用パネルの使用時に、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体1を相互に係合させる係合用突出部7と、前記緑化用パネルの不使用時に、複数段に重ね合わせたパネル本体1を相互に嵌合させる嵌合用突出部8とからなる。この係合用突出部7と嵌合用突出部8とは、図1に示すように、それぞれ平面略長方形状に形成され、係合用突出部7は前記偏平リブ5の上部に突出して形成され、嵌合用突出部8は前記係合用突出部7に略十字形をなすよう直交する方向で該係合用突出部7に跨がるように、該係合用突出部7の上部に突出して形成されている。この嵌合用突出部8の頂部8aは、図3乃至図7に示すように、側面部3の頂部3aよりも高い位置となるように形成されている。
【0028】
そして、前記係合用突出部7と嵌合用突出部8との背面側は、図2に示すように、係合用空間部9及び嵌合用空間部10として形成されている。上記緑化用パネルの使用時における係合、及び不使用時における嵌合は、この係合用空間部9及び嵌合用空間部10を利用して行われる。上述のように、係合用突出部7と嵌合用突出部8とは、それぞれ平面略長方形状に形成され、従って、係合用空間部9及び嵌合用空間部10は底面略長方形状に形成されているが、該係合用空間部9と嵌合用空間部10とは、相互に相似形となるような略長方形状に形成されている。この点をより詳細に説明すると、嵌合用突出部8は、図6及び図7に示すように、下部から上部に向かって徐々に細くなるように形成されているとともに、その断面形状はすべて相似形の長方形となるように形成されている。そして、嵌合用突出部8の頂部8aが、上段側の緑化用パネルの係合用空間部9に係合され、その係合状態においては、嵌合用突出部8の頂部8aが、上段側の緑化用パネルの係合用空間部9内でガタつきを生じさせることのない状態とされる必要があるため、結果として、嵌合用突出部8と係合用突出部7とは、相似形の平面略長方形状に形成されることとなり、従って、係合用空間部9と嵌合用空間部10とは、相互に相似形となるような略長方形状に形成されることとなるのである。
ここで、係合用空間部9は、該係合用空間部9内に係入される嵌合用突出部8の頂部8aの近辺の部分よりも大きな径である必要がある。この場合、ガタつきなく係合されることが望ましいので、係合用空間部9の径が嵌合用突出部8の頂部8a近辺の径より大きすぎても不都合であり、わずかに大きな寸法であることが望ましい。この意味では、係合用空間部9の径は、嵌合用突出部8の下部の径よりも小さいことが望ましい。
【0029】
さらに底面部2の中央には、図1に示すように平面略円形状の踏板部11が前記底面部2から突出して形成されている。この踏板部11は、たとえばメンテナンス等で植栽基盤材収納部4内への植栽基盤材の収納や植栽基盤材への植物の植設を行う際に、作業者の足の踏台となるものである。この踏板部11から4箇所の係合・嵌合機能併備突出体6の方向に向かって、細長い補強用のリブ12が形成されている。また踏板部11の裏面側には、図2に示すように、底面視略十字形の補強用のリブ13が形成されている。この踏板部11の裏面側のリブ13は、図5に示すように、裾部13aが底面部2に近づくように形成されている。また、このような補強用のリブ12、13と同様の補強用のリブ18が、図2に示すように、嵌合用突出部8の裏面側にも形成されている。
【0030】
さらに、四方の側面部3には、灌水パイプを挿通させるための切欠部14が、それぞれ2箇所ずつに形成されている。この切欠部14は、図3乃至図7に示すように、側面部3の頂部3aから四角形状に切り欠かれることによって形成されている。また切欠部14の底面部14aには、図1及び図2に示すように、該切欠部14に挿通された灌水パイプを固定する固定ピン等を挿入するためのピン挿入孔15が穿設されている。
【0031】
また前記切欠部14の両側の側面部3の頂部3aには、長孔16が穿設されている。この長孔16は、任意的に使用されるもので、たとえば植栽基盤材を植栽基盤材収納部4内に収納した後に、パネル本体1の上面に被せるネットを固定する固定ピン等を挿入する等の目的で使用される。さらに、側面部3の頂部3aには、短いフランジ17が外向きに突設されている。さらに、パネル本体1の底面部2と側面部3との境界部分には、排水用の孔18が穿設されている。
【0032】
そして、このような構成からなる緑化用パネル20を使用する場合には、図8に示すように、パネル本体1の植栽基盤収納部4内に土壌等の植栽基盤材21を収納するとともに、該植栽基盤材21に植物22を植設し、その状態で、同図のように上下に緑化用パネル20、20を積み重ねる。
【0033】
その際、同図に示すように、上段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10内に、下段の緑化用パネル20の嵌合用突出部8の頂部8aが係合されるように、下段の緑化用パネル20の上部に上段の緑化用パネル20を積み重ねる。この場合において、上段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10内には、嵌合用突出部8の頂部8aのみが係合状態とされているので、図8に示すように、植栽基盤収納部4内において、植栽基盤材21を収納し、植物22を植設するだけの収納空間が確保されることとなる。
【0034】
このように、植栽基盤材21を収納し、植物22を植設するだけの収納空間が確保されるように、上段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10内に下段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10の頂部8aを係合させて下段の緑化用パネル20の上部に上段の緑化用パネル20を積み重さね、図9に示すように、上下複数段に緑化用パネル20を積み重ねるとともに、左右にも緑化用パネル20を配置する。
【0035】
このように緑化用パネルを複数段に積み重ねた状態において、上述のように植栽基盤材収納部4における植栽基盤材の収納空間が確保されているので、予め植栽基盤材21を植栽基盤材収納部4内に収納し、その植栽基盤材21に植物を植設した状態で緑化用パネル20を複数段に積み重ねたとしても、下段の緑化用パネル20の植栽基盤材収納部4内に収納された植栽基盤材21や、その植栽基盤材21に植設された植物22が、上段の緑化用パネル20に押し潰されるようなことがない。従って、たとえばセダム植物等、背丈の低い薄層緑化用の植物を、複数段に積み重ねられた緑化用パネルの植栽基盤材収納部内の植栽基盤材に植設して搬送することができ、屋上等の設置箇所への搬送を効率的に行うことができるという効果がある。また、そのように緑化用パネルを複数段に積み重ねた状態で搬送を行っても、上述のように下段側の緑化用パネルの植栽基盤材や植物が上段の緑化用パネルに押し潰されるようなことがないので、植栽される植物への悪影響もない。
特に、上記のように嵌合用突出部8の頂部8aが、側面部3の頂部3aよりも高い位置となるように形成されているので、緑化用パネルを複数段に積み重ねた状態において、植栽基盤材収納部4における植栽基盤材の収納空間が一層確保され易くなる。
【0036】
尚、植栽基盤材21を植栽基盤材収納部4内に収納した状態で、図9に示すように、踏板部11が植栽基盤材21の表面から裸出しているので、低い段数に緑化用パネル20を積み重ねるような場合に、たとえばメンテナンス等で植栽基盤材収納部4内への植栽基盤材の収納や植栽基盤材への植物の植設を行う際に、踏板部11を作業者の足の踏台として使用することができる。
【0037】
一方、緑化用パネル20を屋上部の緑化用として使用しない場合には、図10及び図11に示すように、上段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10内に、下段の緑化用パネル20の嵌合用突出部8が嵌合されるように、下段の緑化用パネル20の上部に上段の緑化用パネル20を積み重ねる。この場合には、同図に示すように、植栽基盤材収納部4における植栽基盤材21の収納スペースを維持することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接する緑化パネル20
を相互に嵌合させることができるように構成されているので、緑化パネル20を屋上等の緑化用として使用しない場合には、植栽基盤材収納部4に植栽基盤材を収納しない空の緑化用パネルを嵩張らないように重ね合わせることができ、緑化用パネルの不使用時においては、極端に保管スペースをとることがないのである。
【0038】
上述のように、本実施形態においては、嵌合用空間部10を裏面側に備えた嵌合用突出部8と、係合用空間部9を裏面側に備えた係合用突出部7とを併備する係合・嵌合機能併備突出体6がパネル本体1に具備されているため、緑化用パネル20の使用時には、植栽基盤材21の収納空間を確保しつつ、緑化用パネル20を複数段に積載して搬送等を効率的に行うことができ、緑化用パネル20の不使用時には、植栽基盤材収納部4に植栽基盤材を収納しない空の緑化用パネルを嵩張らないように重ね合わせて、スペースをとらずに保管することができる。
【0039】
尚、上記実施形態では、パネル本体1を平面正方形状に形成したが、パネル本体の形状は上記実施形態に限定されるものではなく、その形状は問わない。また、該実施形態では、パネル本体1がポリエチレンやポリプロピレン等の汎用の合成樹脂で構成されていたが、パネル本体1の材質も該実施形態に限定されない。たとえば上記以外の合成樹脂を用いることが可能であり、また合成樹脂以外の素材、たとえばアルミニウム等の金属を用いることも可能である。
【0040】
また、植栽基盤材の種類も天然土壌や人工土壌に限らず、パーライト等の粘土鉱物等を用いることも可能である。
【0041】
さらに、上記実施形態においては、係合用突出部7と嵌合用突出部8とが、それぞれ平面略長方形状に形成され、従って、係合用空間部9及び嵌合用空間部10が底面略長方形状に形成されていたが、係合用突出部7や嵌合用突出部8の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば楕円形状に形成することも可能である。
【0042】
さらに、図12に示すように、嵌合用突出部8の側面に、リブ23を形成することも可能である。この場合には、上下の緑化用パネル20を重ね合わせたときに、図13に示すように、下段の緑化用パネル20のリブ23が、上段の緑化用パネル20の係合用空間部9内に係入されることとなる。このため、同図に示すように、下段の緑化用パネル20の嵌合用突出部8は、上段の緑化用パネル20の嵌合用空間部10内に深く入り込んだ状態で嵌合されるようなことがないので、上下段の緑化用パネル20、20が不用意に密着されて、嵌合状態を解除することが困難となるおそれを解消することができる。
【0043】
ただし、上記実施形態のように嵌合用突出部8の側面にリブ23が形成されていない場合と比較すると、緑化用パネル20を複数段に積み重ねたときに、リブ23が存在する分だけ嵩張ることとなる。従って、このようなリブ23の形成の有無は、上記図10の実施形態の場合と、図12、図13の実施形態の場合との得失を比較考量しつつ、選定すればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 パネル本体
2 底面部
3 側面部
6 係合・嵌合機能併備突出体
7 係合用突出部
8 嵌合用突出部
9 係合用空間部
10 嵌合用空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル本体(1)に、土壌等の植栽基盤材を収納する植栽基盤材収納部(4)を具備する緑化用パネルにおいて、使用時には、前記植栽基盤材収納部(4)における植栽基盤材の収納空間を確保した状態で、パネル本体(1)を上下複数段に積み重ねることができるとともに、複数段に積み重ねた状態で上下に隣接するパネル本体(1)を相互に係合させることができ、且つ不使用時には、前記植栽基盤材収納部(4)における植栽基盤材の収納空間を確保することなく、上下複数段に重ね合わせることができるとともに、上下に隣接するパネル本体(1)を相互に嵌合させることができるような係合・嵌合機能併備突出体(6)が、前記パネル本体(1)に設けられていることを特徴とする緑化用パネル。
【請求項2】
前記係合・嵌合機能併備突出体(6)には、上下に隣接するパネル本体(1)を相互に係合させる係合用空間部(9)を裏面側に有する係合用突出部(7)が設けられているとともに、上下に隣接するパネル本体(1)を相互に嵌合させる嵌合用空間部(10)を裏面側に有する嵌合用突出部(8)が、前記係合用突出部(7)の上部に設けられている請求項1記載の緑化用パネル。
【請求項3】
嵌合用空間部(10)と係合用空間部(9)とは、底面視において長手部及び短手部を有するような形状に形成され、且つ嵌合用空間部(10)と係合用空間部(9)とは、相互に相似形となるように形成されているとともに、相互に直交して略十字形をなすように形成されている請求項2記載の緑化用パネル。
【請求項4】
パネル本体(1)が、底面部(2)と、該底面部(2)から立ち上がり形成された側面部(3)とからなる浅い箱形のトレー状に形成され、前記嵌合用突出部(8)の高さが、前記パネル本体(1)の側面部(3)の高さよりも高く形成されている請求項2又は3記載の緑化用パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−167135(P2011−167135A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34824(P2010−34824)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】