説明

緑膿菌の殺菌方法

【課題】緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を選択的に殺菌し、安全で使用しやすい殺菌方法及び殺菌剤を提供すること。
【解決手段】緑膿菌に、下記一般式(1)で表される化合物(A):
RO−(EO)n−H (1)
(式中、Rは炭素数10又は12のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nは3の数を示す。)を使用する緑膿菌の殺菌方法;並びに当該化合物(A)を有効成分とする、緑膿菌用殺菌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑膿菌の殺菌方法及び殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
病院内には様々な微生物が存在するが、特に緑膿菌は多剤耐性を持つことや、院内感染を引き起こすことから、非常に問題となっている菌である。このような現状に対し、様々な殺菌剤や抗菌剤が緑膿菌制御のために使用されているが、これらの殺菌剤や抗菌剤に対する耐性菌が生じている。一方、家庭では緑膿菌はヌメリ等の汚れの原因となり、また工業分野では食品や飲料等への汚染だけではなく、施設の劣化の原因ともなっている。
【0003】
特に、院内感染が広がる背景には手や硬質表面を媒体に緑膿菌が伝播されることが挙げられる。そこで、安全性が高く、より刺激の少ない物質を含み、さらに安価で常にこれらの表面を制菌できる殺菌剤や殺菌方法の開発が求められている。
【0004】
このような現状に対し、緑膿菌の制御のための殺菌剤の技術が報告されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−328404号公報
【特許文献2】特開平7−69873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
皮膚上には皮膚常在菌が存在することから、使用者の安全でかつ快適な使用のためには、これらの菌に影響を与えない剤が必要とされている。しかしながら、特許文献1、2で使用されているような一般的な殺菌剤では常在菌の殺菌性も生じてしまう。
【0007】
従って、本発明の課題は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を選択的に殺菌し、安全で使用しやすい殺菌方法及び殺菌剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明者は、緑膿菌に対し、殺菌効果を有する組成物について種々検討したところ、下記一般式(1)で表される化合物が、安全であり、医療及び家庭、工業分野において問題となっている緑膿菌に対して選択的に殺菌作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は
〔1〕 緑膿菌に、下記一般式(1)で表される化合物(A):
RO−(EO)n−H (1)
(式中、Rは炭素数10又は12のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nは3の数を示す。)
を使用する緑膿菌の殺菌方法;並びに
〔2〕 上記一般式(1)で表される化合物(A)を有効成分とする、緑膿菌用殺菌剤;に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緑膿菌をより安全かつ選択的に殺菌することができ、快適で安全な環境を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤の有効成分としては、一般式(1)で表される化合物(A):
RO−(EO)n−H (1)
(式中、Rは炭素数10又は12のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nは3の数を示す。)が用いられる。
【0012】
緑膿菌の殺菌効果に優れる観点から、一般式(1)におけるRは、炭素数10又は12の直鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数10又は12の直鎖アルキル基がより好ましく、炭素数12の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
【0013】
化合物(A)の具体例としては、C10アルコールエチレンオキサイド3モル付加物、C12アルコールエチレンオキサイド3モル付加物が挙げられるが、C10アルコールとしては、例えば1−デシルアルコール、イソデシルアルコール、C12アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、イソドデシルアルコールが挙げられる。
【0014】
本発明において化合物(A)は、緑膿菌の殺菌効果を発揮できる濃度として、系内に10ppm以上存在することが好ましいが、経済性と効果の観点から10〜100,000ppmの濃度で使用することが好ましく、更に30〜10,000ppmが好ましく、より更に100〜10,000ppmが好ましい。
【0015】
本発明の緑膿菌の殺菌方法は、上記の如く、使用時の濃度として化合物(A)が好ましくは10〜100,000ppm存在すればよいので、本発明の殺菌剤中の化合物(A)の濃度は特に限定されないが、経済性と効果の観点から0.001〜50重量%が好ましく、更に0.01〜10重量%が好ましく、より更に0.1〜5重量%が好ましい。
【0016】
また、本発明の殺菌剤は、化合物(A)の他に、化合物(A)以外のアルコール系化合物(即ち、「RO−(EO)n−H」で表される化合物(ここで、Rは炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、nは0又は1以上の自然数を示す)であって、化合物(A)以外の化合物)をさらに含んでもよい。このようなアルコール系化合物を含む場合、経済性と効果の観点から、化合物(A)及びこのようなアルコール系化合物の殺菌剤における合計量中、化合物(A)は、60〜100重量%を占めることが好ましく、90〜100重量%を占めることがより好ましく、95〜100重量%を占めることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤における化合物(A)の形態としては、化合物(A)の水溶液として用いてもよいし、界面活性剤を用いて乳化、分散又は可溶化系としてもよいし、有機溶剤を用いて有機溶剤溶液としてもよい。
【0018】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤として、界面活性剤を併用することができる。併用する界面活性剤としては、特に限定されないが、化合物(A)を水系中に安定に存在させることができ、かつ、化合物(A)の効果が維持できるような界面活性剤が望ましい。また、乳化・分散・可溶化性能の観点、低刺激性の観点から、陰イオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0019】
陰イオン性界面活性剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す)アルキルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、POEアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、POEアリールフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、POEアルキル硫酸エステル塩、POEアリールフェニルエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、POEトリベンジルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、POEアルキルリン酸塩、POEトリベンジルフェニルエーテルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸塩(石けん)、POEアルキルエーテル酢酸塩等が挙げられ、中でもアルキル硫酸エステル塩、POEアルキル硫酸エステル塩、POEアルキルエーテル酢酸塩を用いることがより好ましい。これらの陰イオン性界面活性剤のアルキル炭素数は10〜18が好ましく、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0020】
非イオン性界面活性剤としては、化合物(A)を除く非イオン性界面活性剤を挙げることができるが、併用する場合、化合物(A)の効果を維持できる非イオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤として、POEアルキルエーテル(但し、化合物(A)を除く)、POEアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレン・POE(ブロック又はランダム)アルキルエーテル、POEアリールフェニルエーテル、POEスチレン化フェニルエーテル、POEトリベンジルフェニルエーテル等の1価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド等の多価アルコール誘導体型非イオン性界面活性剤等が挙げられ、中でもPOEアルキルエーテル(但し、化合物(A)を除く)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステルがより好ましいものとして挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤のアルキル炭素数は10〜18が好ましく、エチレンオキシド平均付加モル数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0021】
界面活性剤は単独で、あるいはより乳化・分散・可溶化性能を高めるために2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
界面活性剤の濃度は特に限定されないが、経済性と効果の観点から、殺菌剤中0.01〜50重量%が好ましく、更に0.02〜40重量%が好ましく、より更に0.02〜30重量%が好ましい。
【0023】
化合物(A)を有機溶剤溶液とするための有機溶剤は特に限定されないが、例えばアルコール類、炭化水素類、エステル類及び極性非プロトン溶剤等が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられ、中でもエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが好ましい。炭化水素類としては、ヘキサン、オクタン、流動パラフィン、シクロヘキサン、ベンゼン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、オクタン酸メチル、動植物由来油脂等が挙げられる。さらに極性非プロトン溶剤としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドが挙げられ、中でもジメチルスルホキシドが好ましい。
【0024】
有機溶剤は単独で、あるいはより分散・可溶化・安定性能を高めるために2種以上を組み合わせて用いることができる。また、界面活性剤と有機溶剤を組み合わせて使用することもできる。有機溶剤を用いる場合は、有機溶剤の濃度は特に限定されないが、殺菌剤中0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜5重量%がより好ましく、0.1〜3重量%が更に好ましい。
【0025】
さらに、本発明の殺菌方法及び殺菌剤に用いる化合物(A)は、他の殺菌剤や抗菌剤を併用することも可能である。
【0026】
上記の他の殺菌剤や抗菌剤としては特に限定されないが、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン等の四級塩、イミダゾールやベンゾイミダゾール等のイミダゾール類、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニジン等のビグアニド類、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール類、トリクロサン、トリクロロカルバニリド等のカルバニリド類、イソチアゾリンやイソチアゾロン等のチアゾリン化合物、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル等のパラベン類、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸等の有機酸およびその塩、ポリリジン等のカチオンポリマー、抗菌香料、およびカテキン類、天然精油、ヒノキチオール、モウソウチク、クレオソート油、ワサオール、バクテリオシン等の天然由来の抗菌化合物、βラクタム等に代表される各種抗生物質、銀、銅、亜鉛、イオウ、オゾン、塩素化合物、ヨウ素化合物、過酸化物、ホウ酸等の無機系抗菌化合物等が挙げられる。
【0027】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤に用いる化合物(A)の使用形態では、その粘度を上昇させて対象物への付着性を向上させるために、キサンタンガム、カチオン化セルロース、ポリアクリル酸等の増粘剤を併用して用いることも可能である。
【0028】
更に、本発明の殺菌方法及び殺菌剤に用いる化合物(A)の使用形態では、キレート剤を併用することができる。該キレート剤としては特に限定されないが、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、コハク酸、サリチル酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、トリポリリン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸/マレイン酸共重合物及びそれらの塩が挙げられる。キレート剤を用いる場合は、キレート剤の濃度は特に限定されないが、殺菌剤中0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%が更に好ましい。
【0029】
また、界面活性剤、有機溶剤、殺菌・抗菌剤、キレート剤は組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤に用いる化合物(A)の使用形態は、液状の他、ペースト、クリーム、粉末、タブレット等、用途に応じて様々な形態をとることが可能であり、液状ないしゲル状であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の殺菌方法及び殺菌剤に用いる化合物(A)は、プラスチック、合成樹脂、ゴム、合成皮革、塗料等の素材に分散させ、練りこんだ形態でも用いることができる。
【0032】
本発明の殺菌方法及び殺菌剤は、緑膿菌の危害が懸念される病院内、家庭内、工業施設内の水周りに好ましく使用することができる。水周りの中では、手洗い場、排水溝、浴室、洗濯槽、キッチン、トイレ周り、貯水タンク等に好適に使用することができる。
【0033】
本発明の殺菌方法は、例えば、有効成分である化合物(A)を含有する殺菌剤を使用して緑膿菌を殺菌する。使用形態としては、対象物、例えば身体又は硬質表面に殺菌剤を接触させる形態や、対象物の素材に練りこむ形態が挙げられる。また、本発明の殺菌方法は、殺菌効果をよりよく発現させる観点から、緑膿菌周辺のタンパク質等の汚れを除去した条件が好ましい。タンパク質等の汚れを除去する方法としては、水洗又は界面活性剤を用いた洗浄が挙げられる。対象物の表面と接触させる条件が満足されるならば、接触させる方法としては特に限定されないが、例えば、対象物表面に本発明の殺菌剤を付着させたり、塗り付けたりする方法が挙げられる。また、化合物(A)を含有する水溶液を一定量溜めて対象菌が存在し得る対象物を浸漬して使用する方法、対象物が広範に亘る場合には、スプレー機器を用いてミストとして本発明の殺菌剤を吹き付けたり、発泡機を用いて泡状にしたものを吹き付けたりする方法が挙げられる。さらには、本発明の殺菌剤を流したり、はけ等により塗布してもよい。その他、タオル等に該溶液を含浸させて、拭いても良い。本明細書において対象物とは、例えば身体又は硬質表面であり、硬質表面としては、例えばプラスチック、ガラス、セラミックス、金属等の材質からなる硬質表面が挙げられ、食品又は飲料製造プラント等の製造設備や製造器具の硬質表面や、医療機器、例えば内視鏡や人工透析機等の硬質表面が挙げられる。
【0034】
また、対象物によっては殺菌剤を溶液系にせず、クリーム状や軟膏にして塗り広げることも可能である。この場合、化合物(A)は適切な媒体に溶解、分散された形状で提供される。更に、緑膿菌が問題となる場所に使われるような合成樹脂やゴム等の素材に本発明の殺菌剤を練りこんだ形態としてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例及び比較例:殺菌性能の検定
【0037】
成分(A):RO−(EO)n−H
(実施例)
(A−1)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド3モル付加物〔NIKKOL BL−3SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=3〕
(A−2)C10直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド3モル付加物〔NIKKOL BD−3SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C10アルキル、n=3〕
【0038】
(比較例)
(A−3)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド1モル付加物〔NIKKOL BL−1SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=1〕
(A−4)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド2モル付加物〔NIKKOL BL−2SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=2〕
(A−5)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド4モル付加物〔NIKKOL BL−4SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=4〕
(A−6)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド5モル付加物〔NIKKOL BL−5SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=5〕
(A−7)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド6モル付加物〔NIKKOL BL−6SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=6〕
(A−8)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド7モル付加物〔NIKKOL BL−7SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=7〕
(A−9)C12直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド8モル付加物〔NIKKOL BL−8SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C12アルキル、n=8〕
(A−10)C10直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド2モル付加物〔NIKKOL BD−2SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C10アルキル、n=2〕
(A−11)C10直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド4モル付加物〔NIKKOL BD−4SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C10アルキル、n=4〕
(A−12)C10直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド5モル付加物〔NIKKOL BD−5SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C10アルキル、n=5〕
(A−13)C10直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド8モル付加物〔NIKKOL BD−8SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C10アルキル、n=8〕
(A−14)C14直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド2モル付加物〔NIKKOL BM−2SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C14アルキル、n=2〕
(A−15)C14直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド3モル付加物〔NIKKOL BM−3SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C14アルキル、n=3〕
(A−16)C14直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド4モル付加物〔NIKKOL BM−4SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C14アルキル、n=4〕
(A−17)C14直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド5モル付加物〔NIKKOL BM−5SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C14アルキル、n=5〕
(A−18)C14直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド8モル付加物〔NIKKOL BM−8SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C14アルキル、n=8〕
(A−19)C16直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド2モル付加物〔NIKKOL BC−2SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C16アルキル、n=2〕
(A−20)C16直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド3モル付加物〔NIKKOL BC−3SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C16アルキル、n=3〕
(A−21)C16直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド4モル付加物〔NIKKOL BC−4SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C16アルキル、n=4〕
(A−22)C16直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド5モル付加物〔NIKKOL BC−5SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C16アルキル、n=5〕
(A−23)C16直鎖第1級アルコールエチレンオキサイド8モル付加物〔NIKKOL BC−8SY、日光ケミカルズ(株)製、R=C16アルキル、n=8〕
【0039】
評価菌種
Pseudomonas aeruginosa ATCC15692 (緑膿菌)
Staphylococcus epidermidis NBRC12773 (表皮ブドウ球菌)
【0040】
殺菌性能評価方法
37℃でLB培地を用い、評価菌を12〜16時間培養を行い、菌培養液とした。本菌培養液から菌を遠心分離により集菌し、生理食塩水(大塚製薬)により洗浄してタンパク質等が含まれる培地成分を除去し、濃縮を行った。(A−1)〜(A−23)の各成分を生理食塩水(大塚製薬)に目的の濃度(表1:100ppm、表2:各濃度)となるように溶解し、試験液とした。前記試験液に、濃縮された菌培養液から約108菌/mLとなるように菌を供し、25℃で混合し、10分間暴露した。その後、上記混合物200μLを、適正に希釈したLP希釈液「ダイゴ」(和光純薬)1.8mLに入れて失活を行った。さらにこれを生理食塩水を用いて1:10の段階希釈を行い、希釈物100μLを標準寒天培地「ダイゴ」(日本製薬)に播種し、37℃で一晩培養した後、増殖菌数のカウントを行った。比較のために生理食塩水のみに評価菌を供し同様の作業を行ったものをコントロールとし、これとの差をlog reduction(菌減少数〔log〕)として評価を行った。100ppmで評価し、評価菌Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)と比較菌Staphylococcus epidermidis(表皮ブドウ球菌)での結果を表1に示す。また、各濃度における評価菌Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)での結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1の結果から明らかなように、本発明の緑膿菌の殺菌方法に用いる化合物である(A−1)、(A−2)は緑膿菌に対し、優れた殺菌性能を有し、(A−1)がさらに優れていた。これに対し、類似構造を有していても、比較例(A−3)〜(A−23)では殺菌効果が劣っていた。また、表皮ブドウ球菌に対してはいずれの剤も殺菌効果が無かったことから、本発明の緑膿菌殺菌方法に用いる特定の化合物は、通常の常在菌には殺菌性を示さず、選択的に緑膿菌に対して殺菌効果を有することが分かった。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の結果から明らかなように、各濃度においても、緑膿菌に対して優れた殺菌性能を有していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、身体及び硬質表面等における緑膿菌をより安全かつ選択的に殺菌することができ、快適で安全な環境を達成できる殺菌方法及び殺菌剤が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑膿菌に、下記一般式(1)で表される化合物(A):
RO−(EO)n−H (1)
(式中、Rは炭素数10又は12のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nは3の数を示す。)
を使用する緑膿菌の殺菌方法。
【請求項2】
使用時の化合物(A)の濃度が10〜100,000ppmである、請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物(A)において、Rが炭素数10又は12の直鎖のアルキル基である、請求項1又は2記載の殺菌方法。
【請求項4】
下記一般式(1)で表される化合物(A):
RO−(EO)n−H (1)
(式中、Rは炭素数10又は12のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nは3の数を示す。)
を有効成分とする、緑膿菌用殺菌剤。

【公開番号】特開2011−162483(P2011−162483A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27632(P2010−27632)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】