緑色野菜粉砕物を含有する飲料
【課題】緑色野菜粉砕物を含有する飲料において、着色料や重金属等を使用することなく、野菜本来の緑色を保持した飲料を提供すること。詳しくは、飲料を殺菌する際の加熱、流通時や保管時の高温状態を経ても緑色の退色を低減した飲料を提供すること。特に、加熱殺菌後の緑色野菜の緑色の退色を抑えた緑色野菜飲料を提供すること。
【解決手段】緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
【解決手段】緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜粉砕物を含有する飲料に関するものである。詳しくは、飲料を殺菌する際の加熱、流通時や保管時の高温状態を経ても緑色の退色を低減した飲料に関する。特に、加熱殺菌後も緑色野菜の緑色の退色を低減した飲料に関する。さらに、緑色野菜粉砕物の懸濁安定性に優れ、低粘度で、風味が良好な飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人は食生活の変化により野菜の摂取量が不足しがちであると指摘されている。しかし、近年、消費者の健康に関する意識が高まり野菜類を摂取する機会が増えている。特に、野菜を手軽に摂取する方法の1つとして野菜ジュース等の飲料が需要のある商品となっている。素材としては、アブラナ科植物、イネ科植物、セリ科植物などの緑色野菜が素材として人気が高まっている。特に、いわゆる青汁といわれている大麦若葉、ケール、小麦若葉、明日葉などの需要が高まっている。
【0003】
しかしながら、緑色野菜をジュースのような飲料として製品化する場合、緑色野菜の特徴というべき緑色を、緑色野菜飲料の製造の際の加熱殺菌後も保持することが困難であることから緑色野菜以外の野菜を使用したり、外観の見えない紙パック容器や缶容器で販売することが行われている。
これらの緑色野菜を含有する飲料の退色を防止する方法として様々な検討がなされてきた。
【0004】
特許文献1には、葉緑素を含む緑色野菜の搾汁と、有機酸を含む果汁又は有機酸液とを、格別に凍結させて混合するにあたり両者が直接接触することのない状態で全体を凍結させ、冷凍状態で流通し飲用時にこれを溶解、希釈するようにして緑色野菜の緑色を保持した緑色野菜ジュースの退色防止処理法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2にはβ―カロチンと青色色素を配合することで着色により色の減退を予防した緑色飲料が開示されている。
【0006】
さらに、緑色野菜等の緑色の退色防止のため、緑色野菜に含まれるクロロフィル中のマグネシウムを銅、鉄、亜鉛等の重金属で置換して安定化する方法が知られている。
例えば、特許文献3、特許文献4では重金属源としてグルコン酸銅もしくはグルコン酸亜鉛を用いている。
【0007】
一方、緑色野菜を含有する飲料において、懸濁安定性を高める方法として、種々の検討がなされてきた。特許文献5では、β―グルカンを添加することで、緑色野菜成分の沈降を抑制した飲料の作製方法が開示されている。
【0008】
さらに、結晶セルロースを添加することで、懸濁成分として抹茶粉末を、安定化した飲料の製造法として、特許文献6に開示されている。また、特許文献7には容器詰め抹茶飲料の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−109578号公報
【特許文献2】特開2002−119265号公報
【特許文献3】特開2008−86269号公報
【特許文献4】特開2009−165439号公報
【特許文献5】特開2005−73508号公報
【特許文献6】特開平9−3243号公報
【特許文献7】特開2007−53913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1では冷凍状態を維持することが必須であり、流通時や保管時の高温状態に耐えることができない。特許文献2のように、野菜飲料に色素を添加することは消費者の印象としてはよくない。また、緑色野菜が本来有する鮮やかな緑色を保持する効果はない。特許文献3、4では、一般的に銅や亜鉛等の重金属は独特の金属風味を有するので望ましい風味は得られない。
【0011】
特許文献5に開示されるβ―グルカンは、化学構造の点で、結晶セルロースと異なる。また、飲料に使用した際に水系媒体に溶解する点も異なるため、緑色の保持性は不十分である。該文献の飲料の製造工程に関しては、殺菌工程の開示がないため加熱殺菌後での退色は問題にならなかった。
特許文献6,7では、抹茶飲料は加熱殺菌後の退色がないため、緑色の退色防止を検討する必要がなかった。
【0012】
以上から、本発明の課題は緑色野菜粉砕物を含有する飲料において、特別な着色料や重金属等を使用することなく、野菜本来の緑色を保持した飲料を提供することである。詳しくは、飲料を殺菌する際の加熱、流通時や保管時の高温状態を経ても緑色の退色を低減した飲料を提供すること、特に、加熱殺菌後の緑色野菜の退色を抑えた緑色野菜飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、緑色野菜粉砕物を、水系媒体に懸濁させた飲料において、結晶セルロースを共存させることにより、加熱殺菌後の退色を抑えられることを見出した。さらに、該飲料が、高い懸濁安定性を有し、低粘度ですっきりした飲み口、良好な風味を兼ね備えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
(2)緑色野菜粉砕物と結晶セルロースが水系媒体に懸濁又は溶解した状態で、加熱殺菌処理を施された(1)に記載の飲料。
(3)結晶セルロースの含有量が、0.15質量%以上である(1)または(2)に記載の飲料。
(4)緑色野菜粉砕物の含有量が、2質量%以上である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の飲料。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、加熱殺菌後の緑色の退色が低減された緑色野菜粉砕物を含む飲料を提供できる。さらに、緑色野菜粉砕物の懸濁安定性に優れ、低粘度で、風味が良好な飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の飲料は、緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有するものである。
【0017】
<緑色野菜>
本発明において「緑色野菜」とは、大麦若葉、ケール、明日葉、小麦若葉、ゴーヤ、ほうれん草、セロリ、ブロッコリー、キャベツ、小松菜、レタス、パセリ、モロヘイヤ、ピーマン、イグサ、アルファルファ、はと麦若葉、ブロッコリスプラウト、ミズナ、カラシナ、クレソン、クレソンスプラウト、わさび葉、ホウレンソウ、ブロッコリー、大根葉、桑葉、ニラ、アロエのことである。これらは、水系媒体に懸濁した状態で、加熱殺菌すると、緑色が退色する。それに対し、抹茶は、結晶セルロースを添加せずとも、退色しないため、本発明の緑色野菜には含まない。上記の緑色野菜は一種を単独で使用しても、二種以上を併用して使用してもよい。
【0018】
本発明の飲料に用いる緑色野菜としては、緑色の鮮やかさ等の視覚的な面、さらに、栄養成分補給、生活習慣病の予防の観点から、好ましくは、大麦若葉、ケール、小麦若葉、明日葉、ゴーヤ、ほうれん草であり、より好ましくは大麦若葉、ケール、明日葉、ゴーヤであり、さらに好ましくは大麦若葉、ケール、明日葉である。
【0019】
<大麦若葉>
大麦はイネ科の越年草で、その穂の形によって六条種と二条種に分けられ、六条種はさらに裸麦と皮麦に分けられる。二条種は俗にビール麦と呼ばれている。日本ではこのビール麦の他、六条大麦と裸麦の3種の大麦が主に栽培されている。本発明においては六条大麦、裸麦、ビール麦の3種の大麦はもちろんのこと他の種類の大麦も全て使用することができる。
【0020】
<ケール>
ケールはアブラナ科アブラナ属に属する多年生草木で、ヨーロッパの海岸沿いなどに自生している。もともとはキャベツの改良種であり、現在はギリシャやローマで栽培されその葉が食されている。日本では、観賞用又は飼料用として利用されてきたが、葉にはビタミンU、Cが多く含まれており、胃炎や胃潰瘍の予防、肝機能や便秘の改善に有効であることから、最近では青汁の原料としても利用されている。栽培形態に関わらず、上述のケールは、全て本発明のケールに含まれる。
【0021】
<明日葉>
明日葉は、セリ科シシウド属の日本原産の植物であり、房総半島から紀伊半島と伊豆諸島の太平洋岸に自生している。主に、天ぷらやおひたし等で食されてきた植物である。便秘防止や利尿・強壮作用があるとされ、ミネラルやビタミンも豊富なことから、近年健康食品として人気が高まっている。栽培形態に関わらず、上述の明日葉は、全て本発明の明日葉に含まれる。
【0022】
<粉砕物>
本発明において「粉砕物」とは、通常用いられる公知の粉砕方法を用いて緑色野菜を粉砕したものである。粉砕方法としては、ミキサー、ジューサー、臼、ボールミル、ハンマーミル、ジェットミルなどの公知の粉砕方法を用いることができる。本発明における粉砕とは、緑色野菜が本来の大きさよりも小さくなることである。粉砕物はそのまま、もしくは一旦殺菌後、飲料の原料として使用することができる。粉砕物は、乾燥物、湿潤物のどちらでもよいが、乾燥物を用いることが好ましい。
【0023】
<結晶セルロース>
本発明に用いる「結晶セルロース」とは、結晶セルロース単独のもの、もしくは、結晶セルロースと親水性ガムとを含む結晶セルロース複合体である。ここでいう複合化とは、結晶セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、親水性ガムで被覆されることをいう。結晶セルロースは、飲料の懸濁安定性の点で、複合体を用いることが好ましい。
【0024】
ここでいう、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
【0025】
本発明に用いることができる「結晶セルロース」の平均重合度は、500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、親水性ガムと複合化する場合、その工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
【0026】
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと親水性ガムに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、親水性ガムとの複合化の制御が容易になる。
【0027】
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
【0028】
本発明に使用する結晶セルロース中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、結晶セルロースを、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、4以下が最も好ましい。
【0029】
<親水性ガム>
上記結晶セルロースと複合化する場合に用いる親水性ガムとは、化学構造の一部に糖又は多糖を含む親水性高分子物質のことである。ここで親水性とは、常温の純水に、一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、この新水性ガム0.05gを、50mLの純水に、攪拌下(スターラーチップ)で、平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、親水性ガム中に1質量%以上含まれることである。親水性ガムとして、多糖類を用いる場合には、以下のものが好適である。
【0030】
例えば、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの親水性ガムは2種以上を組み合わせてもよい。
【0031】
上述の親水性ガムの中でも、CMC−Na、カラヤガム、キサンタンガムが、結晶セルロースと複合化しやすく、得られた複合体の懸濁安定性が優れる点で好ましく、CMC−Na、カラヤガムが凝集を防止する点でより好ましく、CMC−Naが低粘度を兼ね備える点で特に好ましい。
【0032】
<CMC−Na>
CMC−Naとは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化して得られる。
【0033】
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、CMC−Naの分散性が十分であること、及び製造が容易であることから好ましい。より好ましくは、置換度は0.6〜1.3である。またCMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。特に好ましくは、20mPa・s以下である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすく、下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
【0034】
<カラヤガム>
カラヤガムとは、アオギリ科カラヤの木の樹液を精製したもののことである。市販のグレードとしては、色調、樹皮、異物の割合から、Hand−picked−selected(HPS)、Superior No.1、Superior No.2、Superior No.3、Shiftingsがある(株式会社幸書房2001年発行、国崎、佐野著「食品多糖類」88ページ、表4−4参照)。本発明で用いるカラヤガムは食品で使用できるグレードであれば制限なく使用できる。この中でも、本発明に用いるには、HPS、Superior No.1が好ましく、HPSが複合体の懸濁安定性の点で好ましい。特に、中央および北インドのSterculia urens由来のものが、複合体の懸濁安定性の点で好適である。
【0035】
<キサンタンガム>
キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られるガムであり、 グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。本発明で用いるキサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。上記の構造を有し、食品で使用できるグレードであれば粘度に制限なく使用できる。
【0036】
<セルロースと親水性ガムの配合比率>
本発明に用いるセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び親水性ガムを1〜50質量%含む。複合化によって、親水性ガムがセルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、水溶液に分散した際に、懸濁安定性、分散安定性が発現する。また、セルロースと親水性ガムを上記の組成とすることで、複合化が促進され、水分散体における懸濁安定性、分散安定性が向上して、水不溶性成分の沈降防止効果を達成することができる。
【0037】
<CMC−Naとキサンタンガムの配合比率>
CMC−Naとキサンタンガムを併用して用いる場合には、両者の質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本発明に使用することが出来るセルロース複合体において、CMC−Naとキサンタンガムが前記の範囲にあることで、緑色野菜飲料の懸濁安定性を示す。また、CMC−Naとキサンタンガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
【0038】
<分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径>
セルロース複合体は、分散液中では、体積平均粒子径が0.01〜200μmのセルロース複合体微粒子からなることが好ましい。セルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることがより好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0039】
セルロース複合体の体積平均粒子径が20μm以下であると、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは、体積平均粒子径は15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。体積平均粒子径が小さいほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上するため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
【0040】
<乾燥粉末としてのセルロース複合体の重量平均粒子径>
乾燥粉末として製造されたセルロース複合体は、これらの微粒子が凝集し、見かけの重量平均粒子径が10〜250μmの二次凝集体を形成している。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。この見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。尚、この乾燥後のセルロース複合体の二次凝集体の重量平均粒子径と、レーザー回折法による分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径は測定原理が全く異なるため、それぞれで得られた値は必ずしも相関するものではない。
【0041】
<セルロース複合体のコロイド状成分量>
さらに、セルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、親水性ガムを含む)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース成分の大きさは10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。ここでいう大きさは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。コロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、分散安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
【0042】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G')について説明する。本発明に使用することのできるセルロース複合体は、セルロース複合体を1質量%含む水分散体の貯蔵弾性率(G')が0.06Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと親水性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性に優れる。貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.8質量%の純水分散体を調製し、得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと親水性ガムが高度に複合化していることを表している。セルロース複合体の貯蔵弾性率は0.2Pa以上がより好ましく、0.35Pa以上がさらに好ましく、0.70Pa以上がさらに好ましく、1.1Pa以上が特に好ましく、2Pa以上が最も好ましい。
【0043】
上限は、特に設定されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、コラーゲンの凝集抑制効果及び水懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量において、飲み口が軽いため好ましい。
【0044】
<セルロース複合体の粘度>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の粘度について説明する。セルロース複合体を1質量%の純水溶液で測定した粘度が300mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度とは、純水中に1質量%に調製した水溶液を200mlビーカーに充填し、25℃に温調した後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを分散液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。粘度が低いほど、飲料に使用した際、すっきりとしたのど越しを発現しやすくなるため好ましい。より好ましくは250mPa・s以下であり、さらに好ましくは100mPa・s以下であり、特に好ましくは50mPa・s以下であり、30mPa・s以下が最も好ましい。その下限値は、特に設定されるものではないが、5mPa・s以上である。
【0045】
<親水性物質>
セルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、親水性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
【0046】
その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
【0047】
<セルロース複合体の製造方法>
本発明に使用することができるセルロース複合体の製造方法を説明する。本発明の特定の貯蔵弾性率を満たすセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと親水性ガムに機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に親水性ガムを複合化させることによって得られる。また、親水性ガムや、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明に使用することができるセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
【0048】
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物がシャバシャバな状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。
【0049】
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、酸性又は高塩濃度のセルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。
【0050】
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
【0051】
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体の貯蔵弾性率(G')が高くなる。
【0052】
本発明に使用することができるセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
【0053】
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。
【0054】
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成され、安定剤等として優れた機能を奏する。
以下、本発明の飲料について説明する。
【0055】
<緑色野菜粉砕物の含有量>
本発明における緑色野菜粉砕物の含有量は乾燥物換算で、0.1質量%以上が好ましい。この範囲であると、栄養成分を十分摂取することができる。より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは、2質量%以上である。
【0056】
上限は、10質量%以下が好ましい。この範囲であると、飲料とした場合の粘度が低く、口ざわり、のど越し等の食感が優れる。より好ましくは、5質量%以下であり、さらに好ましくは、3質量%以下である。
【0057】
ここで、緑色野菜粉砕物が湿潤物の場合は、その固形分を換算した値が適用される。緑色野菜粉砕物を10質量%を超える量を含む場合でも、直接飲用せず、希釈して飲用する濃縮液等であれば、本発明の飲料に含まれる。
【0058】
<結晶セルロースの含有量>
結晶セルロースの含有量としては、特に制限はないが、0.01質量%以上が好ましい。結晶セルロースの含有量を、0.01質量%以上とすることで、緑色の退色防止効果が優れる。より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.5質量%以上である。特に上限はないが、飲料の飲みやすさ(のど越し、舌のざらつき)の点から5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0059】
結晶セルロース複合体を用いる場合は、上述の含有量は、親水性ガムを含む結晶セルロース複合体(親水性物質は除く)の含有量が該当する。
【0060】
<水系媒体>
水系媒体とは、緑色野菜粉砕物、結晶セルロースを含有、溶解させることのできる水単独または、水分を多く含む液状物質のことである。具体例としては、水、イオン交換水、果汁、乳、酒等のことである。
【0061】
<飲料の粘度>
本発明の飲料の粘度は、25℃において、500mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度とは飲料を粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、飲料に、ローターを差し込んだ後、30秒間静置後に、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。この範囲内であれば、飲みやすい飲料を調製できる。かかる観点より、100mPa・s以下がより好ましく、特に、50mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下が最も好ましい。
【0062】
<飲料のpH>
本発明における飲料のpHは3〜7の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5.0〜7.0であり、さらに好ましくは6〜6.5である。この範囲内に調整することにより緑色野菜特有の鮮やかな緑色をさらに安定的に保持することができる。pHの調整は重曹を添加する等の一般的な方法を使用することができる。pHは、一般的なpH計(HORIBA製 pHメータD−50)を用いて測定することができる。
【0063】
<飲料の緑色の指標>
緑色野菜飲料の色調は鮮やかな緑色であることが望ましい。ここでいう緑色とは、飲料を、攪拌等を施し、均一に懸濁した状態で、液体用セルに仕込み、色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)により、得られる色調の値(明度:L、色相:a、彩度:b)を基に算出される。この色調の値は、JIS Z8730(色差表示方法)に制定されるL*a*b*表色系の色度図が基になったものである。
【0064】
本発明でいう緑色は、上記の色調の値から、−a/bで表すことができる。−a/bは1に近いほど鮮やかな緑色であることを示す。
ここで、飲料の加熱殺菌前の−a/b値を基準として、殺菌後の−a/bが保持されている(以下の緑色保持率が高い)ほど、加熱後も、鮮やかな緑色が保持されていることになる。
【0065】
本発明において緑色保持率とは、[保持率]=[殺菌後の−a/b]÷[殺菌前の−a/b]で定義される。保持率は0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。0.9以上では殺菌前後の緑色の退色が目視では観測できない程度である。
【0066】
<併用可能な成分>
飲料には処方上添加してよい成分として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤が挙げられ、これらを単独、又は併用して配合してもよい。
【0067】
<飲料の製造方法>
緑色野菜粉末、結晶セルロース、及び水系媒体を含む飲料を製造する方法としては次の方法が挙げられる。主原料或いは着色料、香料、酸味料、増粘剤等の成分と同時に、結晶セルロースを水に分散させることにより飲料を製造することができる。
【0068】
また、結晶セルロースが乾燥粉末の場合、水への分散方法としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の分散機・乳化機・磨砕機等の混練機を使用して分散することができる。混練機の具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサー、ボールミル、コロイドミル、ビーズミル、ライカイ機等のミル類、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザーに代表される分散機・乳化機、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクルトルーダー、タービュライザー等に代表される混練機等が使用できる。2種以上の混練機を組み合わせて使用してもかまわない。また、加温しながら行ったほうが分散は容易である。
【0069】
飲料が、水不溶性成分として、体積平均粒子径が100μm以上の粒子を0.01質量%以上含有する際は、その製造工程において、高圧ホモジナイザー(例えばAPV製 マントンゴーリンホモジナイザー)で10MPa以上の圧力をかけ、粒子を小さくしておくことが、安定性の点から好ましい。水不溶性成分とは、コラーゲン、ミネラル、食物繊維、カルシウム、ココア等の食品成分であり、飲料中で一部溶解しても大部分が懸濁した状態で存在するものである。ここで、体積平均粒子径はレーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0070】
本発明の飲料では、容器詰め前の不溶性成分の体積平均粒子径が、80μm以下であることが、口に含んだ際のざらつきが少なく、飲み口が良好であるため好ましい。50μm以下がより好ましく、40μm以下が特に好ましい。
【0071】
<殺菌条件>
本発明において、食品衛生法に定められた殺菌方法はいずれを使用してもよい。殺菌方法には超高温瞬間殺菌(UHT殺菌)、レトルト殺菌等の間接殺菌法と、直接殺菌法がある。本発明における殺菌方法は間接殺菌が好ましく、特に超高温瞬間殺菌(UHT殺菌)が好ましい。超高温瞬間殺菌は好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜145℃で1〜60秒が好ましく、より好ましくは3〜30秒、最も好ましくは5〜20秒処理をすることで、殺菌しつつ凝集物の低減効果を十分に維持できる。
【0072】
<保存形態>
飲料を容器詰めにする場合に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタラートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化された容器、瓶、紙パック等の通常の形態で保存することができる。特に、これらの容器に密閉充填されることが望ましい。
【実施例】
【0073】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0074】
<緑色の指標>
飲料を、攪拌等を施し、均一に懸濁した状態で、液体用セルに仕込み、色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)により、得られる色調の値(明度:L、色相:a、彩度:b)を基に算出する。この色調の値は、JIS Z8730(色差表示方法)に制定されるL*a*b*表色系の色度図が基になったものであり、色の保持率は下記式より求める。
[保持率]=[殺菌後の−a/b]÷[殺菌前の−a/b]
【0075】
<粘度>
粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、以下の条件で選んだローターを作製した飲料に差し込み、30秒間静置後、60rpmで30秒間回転させ、測定した。
ローター:1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3
【0076】
<懸濁安定性の評価方法>
飲料の懸濁安定性は基準を定め、目視により判定した。懸濁安定性は容器の底面の沈降物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降。
【0077】
<pH>
pH計(HORIBA製 pHメータD−50)を用いて測定した。
【0078】
<官能評価>
殺菌後の飲料を15人のパネラーが風味についての評価を行い、最も多かった意見を採用した。
【0079】
(実施例1)
結晶セルロースを用いて次のようにして青汁(大麦若葉含有飲料)を作成した。市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)90gに、純水を加えた後に、セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名セオラスSC―900、組成:結晶セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン/菜種油=73.0/2.8/5.0/19.0/0.2質量部、体積平均粒子径:7.9μm、粒子L/D:4.5、コロイド状成分量:75質量%、粘度(1%水分散体):45mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.44Pa)を3g加えた。次いで、全量が3000gになるようにメスアップ後、プロペラ式攪拌機で攪拌を用いて500rpmで10分間分散した。続いて、高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー 圧力20MPa)で処理し青汁1を得た。青汁1の色調(−a/b)を分光色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)を用いて測定した。測定結果を表―1に示す。青汁1を、超高温瞬間滅菌(UHT)装置(パワーポイント・インターナショナル(株)製、小型連続式、UHT装置)を用いて、140℃3秒間で殺菌後にガラス瓶(容量250mL)に充填した。殺菌直後の青汁1の緑色野菜粉砕物の体積平均粒子径は、32μmであった。
【0080】
5℃で3日間保存した後、色調(−a/b)を分光色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)を用いて測定した。測定結果を表―1に示す。殺菌前と比較した殺菌後の色調(−a/b)の保持率を表―1に示す。また、5℃で14日間保存後の飲料の懸濁安定性、pH、及び飲料を1日間25℃雰囲気中に静置後の粘度を測定した。結果を同様に表―1に示す。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様のセルロース複合体を15g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0082】
(実施例3)
実施例1と同様のセルロース複合体を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1と同様のセルロース複合体を90g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0084】
(実施例5)
実施例1と同様のセルロース複合体を120g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0085】
(実施例6)
青汁粉末の添加量を45gにする以外は、実施例3と同様操作で、飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0086】
(実施例7)
青汁粉末の添加量を270gにする以外は、実施例3と同様操作で、飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0087】
(実施例8)
セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、セオラスN−81、組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=80.0/10.0/10.0質量部、体積平均粒子径:8.3μm、粒子L/D:4.8、コロイド状成分量:72質量%、粘度(1%水分散体):15mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.21Pa)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0088】
(実施例9)
セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、セオラスRC−591、組成:結晶セルロース/CMC−Na=89.0/11.0質量部、体積平均粒子径:7.9μm、粒子L/D:4.4、コロイド状成分量:77質量%、粘度(1%水分散体):27mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.32Pa)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0089】
(製造例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度220であった)。
次に、ウエットケーキ状の結晶セルロース、キサンタンガム(三栄源FFI(株)製、商品名ビストップD−712)、CMC−Na(第一工業製薬(株)、商品名セロゲンF−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)、デキストリン(三和澱粉(株)商品名サンデック♯30)を用意し、組成が、結晶セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン=73.0/3.0/5.0/19.0/になるように、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、「開発品1」を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.3kWh/kgであった。
【0090】
(実施例10)
セルロース複合体(開発品1:結晶セルロースを73質量%、CMC−Naを5.0質量%、キサンタンガムを3.0質量%、デキストリンを19.0質量%含むセルロース複合体。特に、貯蔵弾性率が1.2Paであり、体積平均粒子径は8μmであり、コロイド状セルロース成分が84%であり、粘度が85mPa・sである結晶セルロース複合体。)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0091】
(製造例2)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度220であった)。
次に、ウエットケーキ状の結晶セルロース、CMC−Na(第一工業製薬(株)、商品名セロゲンF−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)を用意し、組成が、結晶セルロース/CMC−Na=89.0/11.0質量部になるように、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、「開発品2」を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.25kWh/kgであった。
【0092】
(実施例11)
セルロース複合体(開発品2:結晶セルロースを89質量%、CMC−Naを11質量%含むセルロース複合体。特に、貯蔵弾性率が2.1Paであり、体積平均粒子径は9μmであり、コロイド状セルロース成分が84%であり、粘度が220mPa・sである結晶セルロース複合体。)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0093】
(実施例12)
市販のケール粉末(小林製薬(株)製、ケール青汁 食物繊維のチカラ)240gに純水を加えた後に、実施例1と同様のセルロース複合体を15g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0094】
(比較例1)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)90gに、純水を加え、全量が3000gになるようにメスアップした。次いで、プロペラ式攪拌機で攪拌を用いて500rpmで10分間分散した。続いて、高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー 圧力20MPa)で処理し青汁2を得た。青汁2を用いて実施例1と同様にして、殺菌前後の色調(−a/b)を測定した。色調の測定結果及び保持率を表―2に示す。5℃で14日間保存後の飲料の懸濁安定性、pH、及び飲料を1日間25℃雰囲気中に静置後の粘度を測定した。結果を表―2に示す。
【0095】
(比較例2)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)45gに、純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す。
【0096】
(比較例3)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)270gに純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す。
【0097】
(比較例4)
市販のケール粉末(小林製薬(株)製、ケール青汁 食物繊維のチカラ)240gに純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す
【0098】
セルロース複合体を添加したサンプルはいずれも、セルロース複合体の種類によらず、保持率が0.8を超えており、セルロース複合体無添加のサンプルと比較して鮮やかな緑色の外観を保持していた。
以上の結果より、結晶セルロースが加熱殺菌前後で緑色野菜粉砕物を含む飲料の緑色の退色を低減する効果があることが確認された。
【0099】
また、セルロース複合体を添加することで、飲料中の不溶性成分の底面への堆積が低減されることも確認された。
さらに、官能評価の結果、セルロース複合体を含有する飲料はいずれも、セルロース複合体を含まない飲料と比較して風味の点で優れていた。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、食品工業において、緑色野菜粉砕物を含有した飲料に利用できる。特に、本発明により、緑色野菜粉砕物が、水系媒体に分散された状態で、加熱殺菌を経て、容器詰めされた飲料において、着色料や重金属等を使用せずとも、野菜本来の緑色を保持し、低粘度で、長期に懸濁安定状態を保つことが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜粉砕物を含有する飲料に関するものである。詳しくは、飲料を殺菌する際の加熱、流通時や保管時の高温状態を経ても緑色の退色を低減した飲料に関する。特に、加熱殺菌後も緑色野菜の緑色の退色を低減した飲料に関する。さらに、緑色野菜粉砕物の懸濁安定性に優れ、低粘度で、風味が良好な飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人は食生活の変化により野菜の摂取量が不足しがちであると指摘されている。しかし、近年、消費者の健康に関する意識が高まり野菜類を摂取する機会が増えている。特に、野菜を手軽に摂取する方法の1つとして野菜ジュース等の飲料が需要のある商品となっている。素材としては、アブラナ科植物、イネ科植物、セリ科植物などの緑色野菜が素材として人気が高まっている。特に、いわゆる青汁といわれている大麦若葉、ケール、小麦若葉、明日葉などの需要が高まっている。
【0003】
しかしながら、緑色野菜をジュースのような飲料として製品化する場合、緑色野菜の特徴というべき緑色を、緑色野菜飲料の製造の際の加熱殺菌後も保持することが困難であることから緑色野菜以外の野菜を使用したり、外観の見えない紙パック容器や缶容器で販売することが行われている。
これらの緑色野菜を含有する飲料の退色を防止する方法として様々な検討がなされてきた。
【0004】
特許文献1には、葉緑素を含む緑色野菜の搾汁と、有機酸を含む果汁又は有機酸液とを、格別に凍結させて混合するにあたり両者が直接接触することのない状態で全体を凍結させ、冷凍状態で流通し飲用時にこれを溶解、希釈するようにして緑色野菜の緑色を保持した緑色野菜ジュースの退色防止処理法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2にはβ―カロチンと青色色素を配合することで着色により色の減退を予防した緑色飲料が開示されている。
【0006】
さらに、緑色野菜等の緑色の退色防止のため、緑色野菜に含まれるクロロフィル中のマグネシウムを銅、鉄、亜鉛等の重金属で置換して安定化する方法が知られている。
例えば、特許文献3、特許文献4では重金属源としてグルコン酸銅もしくはグルコン酸亜鉛を用いている。
【0007】
一方、緑色野菜を含有する飲料において、懸濁安定性を高める方法として、種々の検討がなされてきた。特許文献5では、β―グルカンを添加することで、緑色野菜成分の沈降を抑制した飲料の作製方法が開示されている。
【0008】
さらに、結晶セルロースを添加することで、懸濁成分として抹茶粉末を、安定化した飲料の製造法として、特許文献6に開示されている。また、特許文献7には容器詰め抹茶飲料の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−109578号公報
【特許文献2】特開2002−119265号公報
【特許文献3】特開2008−86269号公報
【特許文献4】特開2009−165439号公報
【特許文献5】特開2005−73508号公報
【特許文献6】特開平9−3243号公報
【特許文献7】特開2007−53913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1では冷凍状態を維持することが必須であり、流通時や保管時の高温状態に耐えることができない。特許文献2のように、野菜飲料に色素を添加することは消費者の印象としてはよくない。また、緑色野菜が本来有する鮮やかな緑色を保持する効果はない。特許文献3、4では、一般的に銅や亜鉛等の重金属は独特の金属風味を有するので望ましい風味は得られない。
【0011】
特許文献5に開示されるβ―グルカンは、化学構造の点で、結晶セルロースと異なる。また、飲料に使用した際に水系媒体に溶解する点も異なるため、緑色の保持性は不十分である。該文献の飲料の製造工程に関しては、殺菌工程の開示がないため加熱殺菌後での退色は問題にならなかった。
特許文献6,7では、抹茶飲料は加熱殺菌後の退色がないため、緑色の退色防止を検討する必要がなかった。
【0012】
以上から、本発明の課題は緑色野菜粉砕物を含有する飲料において、特別な着色料や重金属等を使用することなく、野菜本来の緑色を保持した飲料を提供することである。詳しくは、飲料を殺菌する際の加熱、流通時や保管時の高温状態を経ても緑色の退色を低減した飲料を提供すること、特に、加熱殺菌後の緑色野菜の退色を抑えた緑色野菜飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、緑色野菜粉砕物を、水系媒体に懸濁させた飲料において、結晶セルロースを共存させることにより、加熱殺菌後の退色を抑えられることを見出した。さらに、該飲料が、高い懸濁安定性を有し、低粘度ですっきりした飲み口、良好な風味を兼ね備えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
(2)緑色野菜粉砕物と結晶セルロースが水系媒体に懸濁又は溶解した状態で、加熱殺菌処理を施された(1)に記載の飲料。
(3)結晶セルロースの含有量が、0.15質量%以上である(1)または(2)に記載の飲料。
(4)緑色野菜粉砕物の含有量が、2質量%以上である(1)〜(3)のいずれか1つに記載の飲料。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、加熱殺菌後の緑色の退色が低減された緑色野菜粉砕物を含む飲料を提供できる。さらに、緑色野菜粉砕物の懸濁安定性に優れ、低粘度で、風味が良好な飲料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の飲料は、緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有するものである。
【0017】
<緑色野菜>
本発明において「緑色野菜」とは、大麦若葉、ケール、明日葉、小麦若葉、ゴーヤ、ほうれん草、セロリ、ブロッコリー、キャベツ、小松菜、レタス、パセリ、モロヘイヤ、ピーマン、イグサ、アルファルファ、はと麦若葉、ブロッコリスプラウト、ミズナ、カラシナ、クレソン、クレソンスプラウト、わさび葉、ホウレンソウ、ブロッコリー、大根葉、桑葉、ニラ、アロエのことである。これらは、水系媒体に懸濁した状態で、加熱殺菌すると、緑色が退色する。それに対し、抹茶は、結晶セルロースを添加せずとも、退色しないため、本発明の緑色野菜には含まない。上記の緑色野菜は一種を単独で使用しても、二種以上を併用して使用してもよい。
【0018】
本発明の飲料に用いる緑色野菜としては、緑色の鮮やかさ等の視覚的な面、さらに、栄養成分補給、生活習慣病の予防の観点から、好ましくは、大麦若葉、ケール、小麦若葉、明日葉、ゴーヤ、ほうれん草であり、より好ましくは大麦若葉、ケール、明日葉、ゴーヤであり、さらに好ましくは大麦若葉、ケール、明日葉である。
【0019】
<大麦若葉>
大麦はイネ科の越年草で、その穂の形によって六条種と二条種に分けられ、六条種はさらに裸麦と皮麦に分けられる。二条種は俗にビール麦と呼ばれている。日本ではこのビール麦の他、六条大麦と裸麦の3種の大麦が主に栽培されている。本発明においては六条大麦、裸麦、ビール麦の3種の大麦はもちろんのこと他の種類の大麦も全て使用することができる。
【0020】
<ケール>
ケールはアブラナ科アブラナ属に属する多年生草木で、ヨーロッパの海岸沿いなどに自生している。もともとはキャベツの改良種であり、現在はギリシャやローマで栽培されその葉が食されている。日本では、観賞用又は飼料用として利用されてきたが、葉にはビタミンU、Cが多く含まれており、胃炎や胃潰瘍の予防、肝機能や便秘の改善に有効であることから、最近では青汁の原料としても利用されている。栽培形態に関わらず、上述のケールは、全て本発明のケールに含まれる。
【0021】
<明日葉>
明日葉は、セリ科シシウド属の日本原産の植物であり、房総半島から紀伊半島と伊豆諸島の太平洋岸に自生している。主に、天ぷらやおひたし等で食されてきた植物である。便秘防止や利尿・強壮作用があるとされ、ミネラルやビタミンも豊富なことから、近年健康食品として人気が高まっている。栽培形態に関わらず、上述の明日葉は、全て本発明の明日葉に含まれる。
【0022】
<粉砕物>
本発明において「粉砕物」とは、通常用いられる公知の粉砕方法を用いて緑色野菜を粉砕したものである。粉砕方法としては、ミキサー、ジューサー、臼、ボールミル、ハンマーミル、ジェットミルなどの公知の粉砕方法を用いることができる。本発明における粉砕とは、緑色野菜が本来の大きさよりも小さくなることである。粉砕物はそのまま、もしくは一旦殺菌後、飲料の原料として使用することができる。粉砕物は、乾燥物、湿潤物のどちらでもよいが、乾燥物を用いることが好ましい。
【0023】
<結晶セルロース>
本発明に用いる「結晶セルロース」とは、結晶セルロース単独のもの、もしくは、結晶セルロースと親水性ガムとを含む結晶セルロース複合体である。ここでいう複合化とは、結晶セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、親水性ガムで被覆されることをいう。結晶セルロースは、飲料の懸濁安定性の点で、複合体を用いることが好ましい。
【0024】
ここでいう、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
【0025】
本発明に用いることができる「結晶セルロース」の平均重合度は、500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、親水性ガムと複合化する場合、その工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
【0026】
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと親水性ガムに機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、親水性ガムとの複合化の制御が容易になる。
【0027】
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
【0028】
本発明に使用する結晶セルロース中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、結晶セルロースを、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子の平均値として算出される。
L/Dは、20以下が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、4以下が最も好ましい。
【0029】
<親水性ガム>
上記結晶セルロースと複合化する場合に用いる親水性ガムとは、化学構造の一部に糖又は多糖を含む親水性高分子物質のことである。ここで親水性とは、常温の純水に、一部が溶解する特性を有することである。定量的に親水性を定義すると、この新水性ガム0.05gを、50mLの純水に、攪拌下(スターラーチップ)で、平衡まで溶解させ、目開き1μmのメンブレンフィルターで処理した際に、通過する成分が、親水性ガム中に1質量%以上含まれることである。親水性ガムとして、多糖類を用いる場合には、以下のものが好適である。
【0030】
例えば、サイリウムシードガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、ガッティガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの親水性ガムは2種以上を組み合わせてもよい。
【0031】
上述の親水性ガムの中でも、CMC−Na、カラヤガム、キサンタンガムが、結晶セルロースと複合化しやすく、得られた複合体の懸濁安定性が優れる点で好ましく、CMC−Na、カラヤガムが凝集を防止する点でより好ましく、CMC−Naが低粘度を兼ね備える点で特に好ましい。
【0032】
<CMC−Na>
CMC−Naとは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)でエーテル化して得られる。
【0033】
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、0.6〜2.0が好ましい。置換度が前記の範囲であれば、CMC−Naの分散性が十分であること、及び製造が容易であることから好ましい。より好ましくは、置換度は0.6〜1.3である。またCMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下がさらに好ましい。特に好ましくは、20mPa・s以下である。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、親水性ガムとの複合化が促進されやすく、下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
【0034】
<カラヤガム>
カラヤガムとは、アオギリ科カラヤの木の樹液を精製したもののことである。市販のグレードとしては、色調、樹皮、異物の割合から、Hand−picked−selected(HPS)、Superior No.1、Superior No.2、Superior No.3、Shiftingsがある(株式会社幸書房2001年発行、国崎、佐野著「食品多糖類」88ページ、表4−4参照)。本発明で用いるカラヤガムは食品で使用できるグレードであれば制限なく使用できる。この中でも、本発明に用いるには、HPS、Superior No.1が好ましく、HPSが複合体の懸濁安定性の点で好ましい。特に、中央および北インドのSterculia urens由来のものが、複合体の懸濁安定性の点で好適である。
【0035】
<キサンタンガム>
キサンタンガムとは、トウモロコシなどの澱粉を細菌 Xanthomonas campestrisにより発酵させて作られるガムであり、 グルコース2分子、マンノース2分子、グルクロン酸の繰り返し単位からなるものである。本発明で用いるキサンタンガムにはカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩も含まれる。上記の構造を有し、食品で使用できるグレードであれば粘度に制限なく使用できる。
【0036】
<セルロースと親水性ガムの配合比率>
本発明に用いるセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び親水性ガムを1〜50質量%含む。複合化によって、親水性ガムがセルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、水溶液に分散した際に、懸濁安定性、分散安定性が発現する。また、セルロースと親水性ガムを上記の組成とすることで、複合化が促進され、水分散体における懸濁安定性、分散安定性が向上して、水不溶性成分の沈降防止効果を達成することができる。
【0037】
<CMC−Naとキサンタンガムの配合比率>
CMC−Naとキサンタンガムを併用して用いる場合には、両者の質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本発明に使用することが出来るセルロース複合体において、CMC−Naとキサンタンガムが前記の範囲にあることで、緑色野菜飲料の懸濁安定性を示す。また、CMC−Naとキサンタンガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
【0038】
<分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径>
セルロース複合体は、分散液中では、体積平均粒子径が0.01〜200μmのセルロース複合体微粒子からなることが好ましい。セルロース複合体の体積平均粒子径は、20μm以下であることがより好ましい。ここで、該体積平均粒子径は、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0039】
セルロース複合体の体積平均粒子径が20μm以下であると、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは、体積平均粒子径は15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。体積平均粒子径が小さいほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上するため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
【0040】
<乾燥粉末としてのセルロース複合体の重量平均粒子径>
乾燥粉末として製造されたセルロース複合体は、これらの微粒子が凝集し、見かけの重量平均粒子径が10〜250μmの二次凝集体を形成している。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。この見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。尚、この乾燥後のセルロース複合体の二次凝集体の重量平均粒子径と、レーザー回折法による分散液中のセルロース複合体の体積平均粒子径は測定原理が全く異なるため、それぞれで得られた値は必ずしも相関するものではない。
【0041】
<セルロース複合体のコロイド状成分量>
さらに、セルロース複合体は、コロイド状セルロース成分を30質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース成分の含有量とは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力2,000rpm(5600G※Gは重力加速度)×15分間)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、親水性ガムを含む)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース成分の大きさは10μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは1μm以下である。ここでいう大きさは、セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、レーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。コロイド状セルロース成分の含有量が30質量%以上であると、分散安定性、懸濁安定性がより容易に向上する。より好ましくは、40質量%以上であり、特に好ましくは、50質量%以上である。コロイド状セルロース成分含有量は、多ければ多いほど、分散安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
【0042】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G')について説明する。本発明に使用することのできるセルロース複合体は、セルロース複合体を1質量%含む水分散体の貯蔵弾性率(G')が0.06Pa以上であることが好ましい。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと親水性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性に優れる。貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.8質量%の純水分散体を調製し、得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと親水性ガムが高度に複合化していることを表している。セルロース複合体の貯蔵弾性率は0.2Pa以上がより好ましく、0.35Pa以上がさらに好ましく、0.70Pa以上がさらに好ましく、1.1Pa以上が特に好ましく、2Pa以上が最も好ましい。
【0043】
上限は、特に設定されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、コラーゲンの凝集抑制効果及び水懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量において、飲み口が軽いため好ましい。
【0044】
<セルロース複合体の粘度>
次に、本発明に使用することのできるセルロース複合体の粘度について説明する。セルロース複合体を1質量%の純水溶液で測定した粘度が300mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度とは、純水中に1質量%に調製した水溶液を200mlビーカーに充填し、25℃に温調した後、粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、ローターを分散液に差し込んだ後、30秒間静置した後、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。粘度が低いほど、飲料に使用した際、すっきりとしたのど越しを発現しやすくなるため好ましい。より好ましくは250mPa・s以下であり、さらに好ましくは100mPa・s以下であり、特に好ましくは50mPa・s以下であり、30mPa・s以下が最も好ましい。その下限値は、特に設定されるものではないが、5mPa・s以上である。
【0045】
<親水性物質>
セルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、親水性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
【0046】
その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
【0047】
<セルロース複合体の製造方法>
本発明に使用することができるセルロース複合体の製造方法を説明する。本発明の特定の貯蔵弾性率を満たすセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと親水性ガムに機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に親水性ガムを複合化させることによって得られる。また、親水性ガムや、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明に使用することができるセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
【0048】
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。混練時の固形分は、20質量%以上とすることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物がシャバシャバな状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施してもよい。
【0049】
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと親水性ガムとの複合化が促進され、酸性又は高塩濃度のセルロース複合体の分散安定性、懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上である。
【0050】
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
【0051】
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体の貯蔵弾性率(G')が高くなる。
【0052】
本発明に使用することができるセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
【0053】
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。
【0054】
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成され、安定剤等として優れた機能を奏する。
以下、本発明の飲料について説明する。
【0055】
<緑色野菜粉砕物の含有量>
本発明における緑色野菜粉砕物の含有量は乾燥物換算で、0.1質量%以上が好ましい。この範囲であると、栄養成分を十分摂取することができる。より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは、2質量%以上である。
【0056】
上限は、10質量%以下が好ましい。この範囲であると、飲料とした場合の粘度が低く、口ざわり、のど越し等の食感が優れる。より好ましくは、5質量%以下であり、さらに好ましくは、3質量%以下である。
【0057】
ここで、緑色野菜粉砕物が湿潤物の場合は、その固形分を換算した値が適用される。緑色野菜粉砕物を10質量%を超える量を含む場合でも、直接飲用せず、希釈して飲用する濃縮液等であれば、本発明の飲料に含まれる。
【0058】
<結晶セルロースの含有量>
結晶セルロースの含有量としては、特に制限はないが、0.01質量%以上が好ましい。結晶セルロースの含有量を、0.01質量%以上とすることで、緑色の退色防止効果が優れる。より好ましくは0.15質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.5質量%以上である。特に上限はないが、飲料の飲みやすさ(のど越し、舌のざらつき)の点から5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0059】
結晶セルロース複合体を用いる場合は、上述の含有量は、親水性ガムを含む結晶セルロース複合体(親水性物質は除く)の含有量が該当する。
【0060】
<水系媒体>
水系媒体とは、緑色野菜粉砕物、結晶セルロースを含有、溶解させることのできる水単独または、水分を多く含む液状物質のことである。具体例としては、水、イオン交換水、果汁、乳、酒等のことである。
【0061】
<飲料の粘度>
本発明の飲料の粘度は、25℃において、500mPa・s以下であることが好ましい。ここで、粘度とは飲料を粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、飲料に、ローターを差し込んだ後、30秒間静置後に、60rpmで30秒間回転させた後の測定値を指す(但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りである。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)。この範囲内であれば、飲みやすい飲料を調製できる。かかる観点より、100mPa・s以下がより好ましく、特に、50mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下が最も好ましい。
【0062】
<飲料のpH>
本発明における飲料のpHは3〜7の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5.0〜7.0であり、さらに好ましくは6〜6.5である。この範囲内に調整することにより緑色野菜特有の鮮やかな緑色をさらに安定的に保持することができる。pHの調整は重曹を添加する等の一般的な方法を使用することができる。pHは、一般的なpH計(HORIBA製 pHメータD−50)を用いて測定することができる。
【0063】
<飲料の緑色の指標>
緑色野菜飲料の色調は鮮やかな緑色であることが望ましい。ここでいう緑色とは、飲料を、攪拌等を施し、均一に懸濁した状態で、液体用セルに仕込み、色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)により、得られる色調の値(明度:L、色相:a、彩度:b)を基に算出される。この色調の値は、JIS Z8730(色差表示方法)に制定されるL*a*b*表色系の色度図が基になったものである。
【0064】
本発明でいう緑色は、上記の色調の値から、−a/bで表すことができる。−a/bは1に近いほど鮮やかな緑色であることを示す。
ここで、飲料の加熱殺菌前の−a/b値を基準として、殺菌後の−a/bが保持されている(以下の緑色保持率が高い)ほど、加熱後も、鮮やかな緑色が保持されていることになる。
【0065】
本発明において緑色保持率とは、[保持率]=[殺菌後の−a/b]÷[殺菌前の−a/b]で定義される。保持率は0.8以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。0.9以上では殺菌前後の緑色の退色が目視では観測できない程度である。
【0066】
<併用可能な成分>
飲料には処方上添加してよい成分として、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤が挙げられ、これらを単独、又は併用して配合してもよい。
【0067】
<飲料の製造方法>
緑色野菜粉末、結晶セルロース、及び水系媒体を含む飲料を製造する方法としては次の方法が挙げられる。主原料或いは着色料、香料、酸味料、増粘剤等の成分と同時に、結晶セルロースを水に分散させることにより飲料を製造することができる。
【0068】
また、結晶セルロースが乾燥粉末の場合、水への分散方法としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の分散機・乳化機・磨砕機等の混練機を使用して分散することができる。混練機の具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサー、ボールミル、コロイドミル、ビーズミル、ライカイ機等のミル類、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザーに代表される分散機・乳化機、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクルトルーダー、タービュライザー等に代表される混練機等が使用できる。2種以上の混練機を組み合わせて使用してもかまわない。また、加温しながら行ったほうが分散は容易である。
【0069】
飲料が、水不溶性成分として、体積平均粒子径が100μm以上の粒子を0.01質量%以上含有する際は、その製造工程において、高圧ホモジナイザー(例えばAPV製 マントンゴーリンホモジナイザー)で10MPa以上の圧力をかけ、粒子を小さくしておくことが、安定性の点から好ましい。水不溶性成分とは、コラーゲン、ミネラル、食物繊維、カルシウム、ココア等の食品成分であり、飲料中で一部溶解しても大部分が懸濁した状態で存在するものである。ここで、体積平均粒子径はレーザー回折法(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径のことである。
【0070】
本発明の飲料では、容器詰め前の不溶性成分の体積平均粒子径が、80μm以下であることが、口に含んだ際のざらつきが少なく、飲み口が良好であるため好ましい。50μm以下がより好ましく、40μm以下が特に好ましい。
【0071】
<殺菌条件>
本発明において、食品衛生法に定められた殺菌方法はいずれを使用してもよい。殺菌方法には超高温瞬間殺菌(UHT殺菌)、レトルト殺菌等の間接殺菌法と、直接殺菌法がある。本発明における殺菌方法は間接殺菌が好ましく、特に超高温瞬間殺菌(UHT殺菌)が好ましい。超高温瞬間殺菌は好ましくは130〜150℃、より好ましくは135〜145℃で1〜60秒が好ましく、より好ましくは3〜30秒、最も好ましくは5〜20秒処理をすることで、殺菌しつつ凝集物の低減効果を十分に維持できる。
【0072】
<保存形態>
飲料を容器詰めにする場合に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタラートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合化された容器、瓶、紙パック等の通常の形態で保存することができる。特に、これらの容器に密閉充填されることが望ましい。
【実施例】
【0073】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0074】
<緑色の指標>
飲料を、攪拌等を施し、均一に懸濁した状態で、液体用セルに仕込み、色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)により、得られる色調の値(明度:L、色相:a、彩度:b)を基に算出する。この色調の値は、JIS Z8730(色差表示方法)に制定されるL*a*b*表色系の色度図が基になったものであり、色の保持率は下記式より求める。
[保持率]=[殺菌後の−a/b]÷[殺菌前の−a/b]
【0075】
<粘度>
粘度計(東機産業(株)製、TVB−10形粘度計)を用いて、以下の条件で選んだローターを作製した飲料に差し込み、30秒間静置後、60rpmで30秒間回転させ、測定した。
ローター:1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3
【0076】
<懸濁安定性の評価方法>
飲料の懸濁安定性は基準を定め、目視により判定した。懸濁安定性は容器の底面の沈降物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降。
【0077】
<pH>
pH計(HORIBA製 pHメータD−50)を用いて測定した。
【0078】
<官能評価>
殺菌後の飲料を15人のパネラーが風味についての評価を行い、最も多かった意見を採用した。
【0079】
(実施例1)
結晶セルロースを用いて次のようにして青汁(大麦若葉含有飲料)を作成した。市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)90gに、純水を加えた後に、セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、商品名セオラスSC―900、組成:結晶セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン/菜種油=73.0/2.8/5.0/19.0/0.2質量部、体積平均粒子径:7.9μm、粒子L/D:4.5、コロイド状成分量:75質量%、粘度(1%水分散体):45mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.44Pa)を3g加えた。次いで、全量が3000gになるようにメスアップ後、プロペラ式攪拌機で攪拌を用いて500rpmで10分間分散した。続いて、高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー 圧力20MPa)で処理し青汁1を得た。青汁1の色調(−a/b)を分光色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)を用いて測定した。測定結果を表―1に示す。青汁1を、超高温瞬間滅菌(UHT)装置(パワーポイント・インターナショナル(株)製、小型連続式、UHT装置)を用いて、140℃3秒間で殺菌後にガラス瓶(容量250mL)に充填した。殺菌直後の青汁1の緑色野菜粉砕物の体積平均粒子径は、32μmであった。
【0080】
5℃で3日間保存した後、色調(−a/b)を分光色差計(日本電色(株)製、分光色差計SE−2000)を用いて測定した。測定結果を表―1に示す。殺菌前と比較した殺菌後の色調(−a/b)の保持率を表―1に示す。また、5℃で14日間保存後の飲料の懸濁安定性、pH、及び飲料を1日間25℃雰囲気中に静置後の粘度を測定した。結果を同様に表―1に示す。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様のセルロース複合体を15g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0082】
(実施例3)
実施例1と同様のセルロース複合体を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1と同様のセルロース複合体を90g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0084】
(実施例5)
実施例1と同様のセルロース複合体を120g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0085】
(実施例6)
青汁粉末の添加量を45gにする以外は、実施例3と同様操作で、飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0086】
(実施例7)
青汁粉末の添加量を270gにする以外は、実施例3と同様操作で、飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0087】
(実施例8)
セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、セオラスN−81、組成:結晶セルロース/カラヤガム/デキストリン=80.0/10.0/10.0質量部、体積平均粒子径:8.3μm、粒子L/D:4.8、コロイド状成分量:72質量%、粘度(1%水分散体):15mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.21Pa)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0088】
(実施例9)
セルロース複合体(旭化成ケミカルズ(株)製、セオラスRC−591、組成:結晶セルロース/CMC−Na=89.0/11.0質量部、体積平均粒子径:7.9μm、粒子L/D:4.4、コロイド状成分量:77質量%、粘度(1%水分散体):27mPa・s、貯蔵弾性率(1%水分散体):0.32Pa)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0089】
(製造例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度220であった)。
次に、ウエットケーキ状の結晶セルロース、キサンタンガム(三栄源FFI(株)製、商品名ビストップD−712)、CMC−Na(第一工業製薬(株)、商品名セロゲンF−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)、デキストリン(三和澱粉(株)商品名サンデック♯30)を用意し、組成が、結晶セルロース/キサンタンガム/CMC−Na/デキストリン=73.0/3.0/5.0/19.0/になるように、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、「開発品1」を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.3kWh/kgであった。
【0090】
(実施例10)
セルロース複合体(開発品1:結晶セルロースを73質量%、CMC−Naを5.0質量%、キサンタンガムを3.0質量%、デキストリンを19.0質量%含むセルロース複合体。特に、貯蔵弾性率が1.2Paであり、体積平均粒子径は8μmであり、コロイド状セルロース成分が84%であり、粘度が85mPa・sである結晶セルロース複合体。)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0091】
(製造例2)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度220であった)。
次に、ウエットケーキ状の結晶セルロース、CMC−Na(第一工業製薬(株)、商品名セロゲンF−7A、1%溶解液の粘度11mPa・s)を用意し、組成が、結晶セルロース/CMC−Na=89.0/11.0質量部になるように、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、「開発品2」を得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、0.25kWh/kgであった。
【0092】
(実施例11)
セルロース複合体(開発品2:結晶セルロースを89質量%、CMC−Naを11質量%含むセルロース複合体。特に、貯蔵弾性率が2.1Paであり、体積平均粒子径は9μmであり、コロイド状セルロース成分が84%であり、粘度が220mPa・sである結晶セルロース複合体。)を30g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0093】
(実施例12)
市販のケール粉末(小林製薬(株)製、ケール青汁 食物繊維のチカラ)240gに純水を加えた後に、実施例1と同様のセルロース複合体を15g使用し、実施例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―1に示す。
【0094】
(比較例1)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)90gに、純水を加え、全量が3000gになるようにメスアップした。次いで、プロペラ式攪拌機で攪拌を用いて500rpmで10分間分散した。続いて、高圧ホモジナイザー(APV社製 マントンゴーリンホモジナイザー 圧力20MPa)で処理し青汁2を得た。青汁2を用いて実施例1と同様にして、殺菌前後の色調(−a/b)を測定した。色調の測定結果及び保持率を表―2に示す。5℃で14日間保存後の飲料の懸濁安定性、pH、及び飲料を1日間25℃雰囲気中に静置後の粘度を測定した。結果を表―2に示す。
【0095】
(比較例2)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)45gに、純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す。
【0096】
(比較例3)
市販の青汁粉末(アサヒフードアンドヘルスケア(株)製、青汁 大分県産の大麦若葉)270gに純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す。
【0097】
(比較例4)
市販のケール粉末(小林製薬(株)製、ケール青汁 食物繊維のチカラ)240gに純水を加えた後、比較例1と同様にして飲料を作製し、測定および評価を行った。結果を表―2に示す
【0098】
セルロース複合体を添加したサンプルはいずれも、セルロース複合体の種類によらず、保持率が0.8を超えており、セルロース複合体無添加のサンプルと比較して鮮やかな緑色の外観を保持していた。
以上の結果より、結晶セルロースが加熱殺菌前後で緑色野菜粉砕物を含む飲料の緑色の退色を低減する効果があることが確認された。
【0099】
また、セルロース複合体を添加することで、飲料中の不溶性成分の底面への堆積が低減されることも確認された。
さらに、官能評価の結果、セルロース複合体を含有する飲料はいずれも、セルロース複合体を含まない飲料と比較して風味の点で優れていた。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、食品工業において、緑色野菜粉砕物を含有した飲料に利用できる。特に、本発明により、緑色野菜粉砕物が、水系媒体に分散された状態で、加熱殺菌を経て、容器詰めされた飲料において、着色料や重金属等を使用せずとも、野菜本来の緑色を保持し、低粘度で、長期に懸濁安定状態を保つことが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
【請求項2】
緑色野菜粉砕物と結晶セルロースが水系媒体に懸濁又は溶解した状態で、加熱殺菌処理を施された請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
結晶セルロースの含有量が、0.15質量%以上である請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
緑色野菜粉砕物の含有量が、2質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項1】
緑色野菜粉砕物、結晶セルロース、及び水系媒体を含有する飲料。
【請求項2】
緑色野菜粉砕物と結晶セルロースが水系媒体に懸濁又は溶解した状態で、加熱殺菌処理を施された請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
結晶セルロースの含有量が、0.15質量%以上である請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
緑色野菜粉砕物の含有量が、2質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【公開番号】特開2012−239403(P2012−239403A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110350(P2011−110350)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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