説明

緑茶抽出物を含有する組成物

本発明は、緑茶抽出物を有効成分として含有する組成物に関する。前記組成物は、肥満等の治療又は予防に効果的であり、これを食品及び医薬分野等において多様に活用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑茶抽出物を有効成分として含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の変化及び食生活の欧米化により、肥満とともに、脂質異常症(高脂血症)、高血圧、動脈硬化といった体内への脂質蓄積からくる現代人の生活習慣病(成人病)の問題は深刻であり、肥満は、主に高脂肪、高蛋白食品の過食に起因する場合が非常に多い。特に、体重過多は節制された食餌療法が要求されるが、それを実生活において実践するには、多くの困難があることも事実である。また、体重が若干減少したとしても、リバウンド現象等により再び体重が増加する危険性が高い。したがって、体重の維持ないし減量のためには、長い時間をかけての地道な努力と注意が必要である。
【0003】
体重調節のためには、適切な薬物治療と健康的な運動を通じて体重を落とし、病気を治療する抗肥満療法が必要である。抗肥満療法は、肥大した人やスタイルを整えたいと願う女性らの美容のための体重減量又は体重減量のための食事療法や食事調節をいう。しかしながら、多くの人々が、短時間での体重減量効果を得るために、身体の特定部位の脂肪を吸引する外科的治療を受けたり、漢方薬又は西洋薬を服用したりすることにより副作用が起こるケースもしばしば見られる。
【0004】
肥満患者の大部分は、原因発生後の治療を中心とするため、すでに肥満症による合併症が誘発された以降である場合が多い。また、症状に応じた治療効果も、老若男女又は個々人によって差があるため、今日の現代人にとっては、予防と治療を兼ねた抗肥満剤の開発がより一層切実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0407037号公報
【特許文献2】韓国特許公開第10−2007−0103324号公報
【特許文献3】韓国特許公開第10−2008−0090805号公報
【特許文献4】韓国登録特許第10−0826863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施例の目的は、初摘緑茶抽出物を含む組成物を提供することである。
【0007】
本発明の他の一実施例の目的は、総カテキン含量が20重量%〜40重量%である緑茶抽出物を含む組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例に係る組成物は、初摘緑茶抽出物を有効成分として含む。また、他の一実施例において、本発明に係る組成物は、総カテキン含量が20重量%〜40重量%である緑茶抽出物を有効成分として含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る緑茶抽出物を有効成分として含有する組成物は、肥満等の治療又は予防に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、茶カテキン、熱水抽出、酒精抽出過程を示す流れ図である。
【図2】図2は、脂肪細胞に対する緑茶抽出物の濃度別脂肪分解能を測定した結果を示したグラフである。
【図3】図3は、緑茶抽出物投与時における、体重変化の過程を示したグラフである。
【図4】図4は、緑茶抽出物投与時における、体重変化の結果を算出したグラフである。
【図5】図5は、緑茶抽出物投与時における、平均体重に対する副睾丸脂肪重量に換算した結果を示したグラフである。
【図6】図6は、緑茶抽出物の臓器及び組織に対する毒性試験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る組成物は、緑茶抽出物を有効成分として含むことを特徴とする。前記緑茶抽出物を抽出する方法は、特に制限されるものではないが、一実施例において、熱水抽出物又はC〜Cの低級アルコール抽出物とすることができ、たとえば、熱水抽出物又はエタノール抽出物とすることができ、具体的に、初摘緑茶に対する熱水抽出物とすることができる。たとえば、熱水抽出による初摘緑茶抽出物は、図1による過程を経て抽出することができる。具体的には、緑茶葉投入、熱水抽出、濾過、減圧濃縮及び噴霧乾燥の工程を経て製品化することになる。
【0012】
一実施例において、本発明に係る組成物は、初摘緑茶抽出物を有効成分として含むことができる。初摘緑茶は味が甘く、渋味や苦味が少ない特徴を有している。これは、同じ時期に採葉されて茶に使用される緑茶葉の標準工程による場合、一般緑茶に比べて、アミノ酸成分が高いためであり、このときのアミノ酸がまさにテアニン(Theanine)である。特に、「うまみ」と言われる味の主成分であるテアニンの含量は、人為的にテアニンの含量を高めていない緑茶に比べて約2倍高いということが確認された。この他にも、初摘緑茶の抽出物は、カテキン成分のうち最も核心的なEGCG(Epigallocatechin gallate)の含量が一般緑茶の抽出物に比べて著しく多いものと示されている。
【0013】
本発明に係る初摘緑茶抽出物は、肥満と関連性の高い成分であるカテキン、カフェイン及びテアニン等の成分が高い含量比で存在するという特徴がある。これらの成分は、人為的な方式ではなく自然のままの状態で存在するため、互いに干渉を引き起こすことなく、卓越した香りとともに、肥満の治療及び予防に優れた効果を発揮する。
【0014】
本明細書において、「初摘緑茶」とは、初摘茶、春茶又は一番茶等とも呼ばれる緑茶であり、1年のうち一番初めに採葉した緑茶を意味する。韓国では、通常4月から5月の間に初摘緑茶を採葉することになる。一般的に、初摘緑茶は、それ自体が有する特性を最大限生かすために手摘みによる採葉を行うため、毎年収穫される量は非常に少ないだけでなく、その価格もまた非常に高価であるという特徴がある。本発明においては、初摘緑茶に対する相対的な概念として、「一般緑茶」という用語を用いる。一般緑茶とは、初摘緑茶を採葉した後の二、三、四番茶又はそれ以降に採葉した緑茶であり、時期的には、5月以降から秋までに採葉した緑茶のことを意味する。
【0015】
本発明はまた、緑茶抽出物を有効成分として含有する組成物であって、総カテキン成分が、抽出物全体の重量を基準に、20重量%〜40重量%、具体的には、25重量%〜35重量%であることを特徴とする組成物を提供する。カテキン成分としては、EGC(エピガロカテキン)、EC(エピカテキン)、EGCG(エピガロカテキンガレート)、ECG(エピカテキンガレート)等が含まれる。一実施例において、前記総カテキン成分の含量を満たす緑茶抽出物は、上で説明した初摘緑茶抽出物とすることができる。
【0016】
人体に及ぼす各種生活習慣病のうち肥満に関連する部分について見てみると、血管内壁に溜まった強い毒性の酸化された低比重リポタンパク質(Oxid LDL)の生成は、血管内にコレステロール及びコレステリルエステル(cholesteryl ester)の状態で蓄積され、泡沫細胞( foam cell)の形成を通じて動脈硬化の原因の一つとして知られている。茶のカテキン成分は、こうした動脈硬化の原因となるLDL(Low density lipid)の酸化(oxidation)に対する強力な抑制効果を有する。したがって、本発明に係る緑茶抽出物又は初摘緑茶抽出物を含む組成物は、動脈硬化の治療又は予防用組成物とすることができる。
【0017】
また、カテキン成分は、血漿及び肝臓のコレステロールを減少させる一方、コレステロールの再吸収抑制作用等が明らかとされており、体内のコレステロール低下や肥満細胞のヒスタミン遊離抑制活性等による抗肥満効果も知られている。したがって、本発明に係る緑茶抽出物又は初摘緑茶抽出物を含む組成物は、抗肥満用組成物とすることができる。
【0018】
特に、体脂肪増加抑制に対するカテキンの効果は、小腸の消化酵素の作用を妨害して、過剰供給された栄養素の吸収抑制や糞便を通じた排泄作用を助け、体脂肪の蓄積を抑制させることになる。こうした作用は、カテキン成分が血中インスリン濃度を低下させて血液中の血糖値を低くし、体脂肪を抑制させるためである。したがって、本発明に係る緑茶抽出物又は初摘緑茶抽出物を含む組成物は、糖尿病、脂質異常症及び高血圧の治療ないし予防用組成物とすることができる。
【0019】
カテキン成分のまた別の長所は、優れた解毒作用であり、体内に蓄積された薬剤過用と毒性に起因する害を無力化させる作用が優れている。また、茶等の形態で長期間にわたって飲用した場合にも、副作用がないものと知られている。こうした薬理作用は、化学構造上、カテキンが水酸基(−OH)を多く含有しており、それによって他の物質と容易に結合してその物質の性質を変化させ、抑制させるためである。
【0020】
本発明において使用された緑茶抽出物の総カテキン含量は、一般的な従来の緑茶抽出物と比較した場合、相対的に高いと言える。特に、カテキン成分のうち最も核心的な要素といえるEGCGの含量が、一般の緑茶抽出物に比べ、多くて二倍近く高いものと確認された。一実施例において、本発明に係る緑茶抽出物は、EGCGの含量が、抽出物全体の重量を基準に、7重量%〜20重量%、具体的には、10重量%〜15重量%である。
【0021】
また、他の一実施例において、本発明に係る緑茶抽出物は、カフェインの含量が、抽出物全体の重量を基準に、2.5重量%〜4.5重量%である。これは、脂肪分解に優れた効果を示すカフェインの含量が、一般的な従来の緑茶抽出物に比べて約1.5倍程度高いものである。
【0022】
緑茶中のアルカロイド成分であるメチルキサンチン(methylxanthin)誘導体のうち、血管拡張剤及び神経作用剤としても使用されるカフェインの活性作用は、カテキンの抑制作用とテアニン成分の選択的調節作用を受けて、中枢神経系が拡張されるが、続いて抑制作用が現れつつ、速効性の生理作用を引き起こすことになる。このようなカフェインの特徴は、興奮、強心、利尿、解熱、収斂等の多様な薬理学的作用を示すことになる。特にポリフェノール成分とともに人体内にコレステロール含量が多くなることを防止することにより、狭心症、心筋梗塞等を治療又は予防する役割をする。したがって、本発明に係る緑茶抽出物又は初摘緑茶抽出物を含む組成物は、狭心症ないし心筋梗塞の治療又は予防用組成物とすることもできる。
【0023】
本発明の一実施例に係る緑茶抽出物は、抽出物全体の重量を基準に、4.5重量%〜10重量%の総アミノ酸をさらに含むことができる。特に、緑茶アミノ酸の半分以上を占めるテアニンは、他の植物体においてはほとんど発見されない緑茶特有の成分である。テアニン成分は、緑茶の味と効能を決定づける重要な成分であり、多様な生理活性効能を有するという報告がされている。たとえば、テアニン成分は、カフェインの興奮作用抑制、緊張緩和、抗ストレス及び免疫促進作用等の効能があることが明らかにされる中、多様な分野において注目されている物質である。一実施例において、本発明に係る緑茶抽出物は、組成物全体の重量を基準に、2重量%〜5重量%、具体的には、2.5重量%〜3.5重量%のテアニンを含有する。
【0024】
本発明においては、4月〜5月に採葉した済州産初摘緑茶を対象に、熱水抽出した抽出物を利用して実験を実施した。初摘緑茶熱水抽出物を培養された脂肪細胞に濃度依存的に処理をし、培地に露出されたグリセロール(Glycerol)と遊離脂肪酸(Free Fatty Acid)の増加量を測定することにより、脂肪分解効果を確認した。その結果、対照群として使用された茶カテキン(含量70%)よりも、初摘緑茶熱水抽出物が脂肪分解効果に優れるという有意な結果を確保した。
【0025】
また、マウスを通じた食餌実験を実施した。具体的には、一般飼料を与えた群と高脂肪食を与えた群、高脂肪食と茶カテキンを与えた群、高脂肪食と初摘緑茶熱水抽出物を茶カテキン1/2量で与えた群、高脂肪食と初摘緑茶熱水抽出物を茶カテキンと同量与えた群、最後に、高脂肪食と茶カテキン2倍量の初摘緑茶熱水抽出物を与えた群に分けて、8週間の実験を行った。実験結果を分析してみると、高脂肪食とともに茶カテキンを摂取した群は、特別な減量効果がなかったが、高脂肪食とともに初摘緑茶熱水抽出物を茶カテキンの摂取量と同量で摂取した群及び2倍量摂取した群は、体重が有意に減少した。したがって、本発明に係る初摘緑茶抽出物は、減量に効果的であるという結果を確認した。
【0026】
一実施例において、本発明に係る緑茶抽出物を含む食品添加剤及び機能性食品等を提供する。
【0027】
本発明は、前記緑茶抽出物を含む、多様な形態の食品添加剤又は機能性食品を提供する。前記抽出物を含む発酵乳、チーズ、ヨーグルト、ジュース、生菌製剤及び健康補助食品等に加工することができ、その他多様な食品添加剤の形態で使用することができる。
【0028】
一実施例において、前記緑茶抽出物は、本発明が目的とする主効果を損なわない範囲内において、主効果に相乗効果を与え得る他の成分等を含有することができる。たとえば、物性改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、増粘剤、無機塩類、乳化剤及び合成高分子物質等の添加剤をさらに含むことができる。その他にも、水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖及び海藻エキス等の補助成分をさらに含むこともできる。前記成分は、剤型又は使用目的に応じて、当業者が困難なく適宜選定して配合することができ、その添加量は、本発明の目的及び効果を損なわない範囲内において選択することができる。たとえば、前記成分の添加量は、組成物全体の重量を基準として、0.01重量%〜5重量%、より具体的には、0.01重量%〜3重量%の範囲とすることができる。
【0029】
本発明に係る抽出物は、溶液、乳化物、粘性型混合物、タブレット、粉末等の多様な形態に剤型化することができ、これは、単純飲用、注射投与、スプレー方式又はスクイーズ方式等の多様な方法で投与することができる。
【0030】
本発明はまた、前記緑茶抽出物を含む薬学組成物を提供する。本発明に係る抽出物を含む薬学組成物は、体重調節、血糖降下及び血中コレステロール降下の効能が認められる。
【0031】
本発明に係る抽出物を医薬品に適用する場合には、前記抽出物を有効成分として使用される無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液状の形態で経口投与剤あるいは非経口投与剤に製剤化することができる。
【0032】
前記経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟・硬カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤等を挙げることができる。また、前記非経口投与のための製剤としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤等を挙げることができる。本発明の有効成分を製剤化するためには、常法に従って実施すれば容易に製剤化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他常用される補助剤を適当に使用することができる。
【0033】
本発明に係る前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下等に投与することができる。
【0034】
また、前記活性成分の投与量は、治療を受ける対象者の年齢、性別、体重や、治療する特定の疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断によって変わるであろう。こうした因子に基づく投与量の決定は、当業者の水準内にある。一般的な投与量は、0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日、より具体的には、0.5mg/kg/日〜1500mg/kg/日である。
【0035】
(実施形態)
以下、本発明の好ましい実施例等を通じて本発明についてさらに詳述するが、以下の実施例等は、本発明の効果を例示的に確認するためのものであり、本発明のカテゴリがこれらにのみ限定されるものではない。
【0036】

実施例1:緑茶抽出物の熱水抽出
実験に使用された初摘緑茶は、韓国産済州緑茶を使用した。初摘緑茶を、熱水抽出工程を経て分離・精製した。具体的な熱水抽出工程については、図1に示したとおりである。
【0037】
図1において、右側のフローチャートは、一般的な茶カテキン抽出工程を示したもの、中央のフローチャートは、熱水抽出工程を示したもの、また、左側のフローチャートは、アルコール抽出工程を示したものである。
【0038】
本実施例に係る抽出工程は、熱水抽出工程によるものであり、初摘緑茶葉重量比で5倍の溶媒(水)に投入する工程、50℃〜80℃、30分〜12時間以上で熱水抽出する工程、濾過工程、減圧濃縮工程、及び噴霧乾燥工程を経ることになる。
【0039】
実験例1:試料の含量分析
実施例1による初摘緑茶抽出物に対する成分含量を確認する実験を行った。具体的には、第三者機関である「健康機能食品院」を通じて、カテキン、アミノ酸及びカフェインの含量を分析した。分析の結果については、下記表1、表2及び表3のとおりである。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
前記表1、表2及び表3において示した数値は、抽出物1gに対する構成成分の含量を重量%で示したものである。
【0044】
表1を参照すると、初摘緑茶抽出物は、総アミノ酸の含量が6.19で、そのうちテアニンの含有量は2.97と示された。これに対し、一般緑茶抽出物は、総アミノ酸の含量が4.23で、そのうちテアニンの含量は1.89と示された。また、総カテキン含量を比較すると、初摘緑茶抽出物は、総カテキンの含量は30.85で、そのうちEGCGの含量は11.36と示されたのに対し、一般緑茶抽出物は、総カテキンの含有量は26.77であり、そのうちEGCGの含量は6.39と示された。また、カフェインの場合、初摘緑茶抽出物の含量が一般緑茶抽出物に比べて25%程度高いものと示された。
【0045】
したがって、本願発明の一実施例に係る初摘緑茶抽出物は、一般緑茶抽出物に比べ、総アミノ酸の含量が約1.5倍程度高く、特に、テアニンの含量は2倍近く高いものと示され、総カテキンの含量は、初摘緑茶抽出物が一般緑茶抽出物に比べて約15%高く、特に、EGCGの含有量は2倍程度高いものと示された。また、カフェインは、一般緑茶抽出物に比べ、初摘緑茶抽出物がより高いものと示された。
【0046】
実験例2:分化した脂肪細胞への処理時における中性脂肪分解能
[ステップ1]脂肪細胞の培養と分化誘導
マウスの未分化脂肪細胞3T3−L1脂肪細胞(3T3−L1 adipocyte、ATCCから購入)を、10%胎児血清(calf serum,Gibco co.米国)をDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium,Lonza,12−604F,米国)に添加した培地において培養した。2日に1回ずつ培地を交換しながら、80%融合するまで、37℃の10%CO培養器において培養した。その次に、10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum,Gibco co.米国)、0.5mMの3−イソブチル−1−メチルキサンチン(3−isobutyl−1−methylxanthine,Sigma co.米国)、1μMのデキサメタゾン(dexamethasone,Sigma co.米国)及び167nMのインスリン(insulin,Sigma co.米国)を含む培地において48時間培養後、その培地を、10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum)と167nMのインスリンを含むDMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。最後に、10%のウシ胎児血清(fetal bovine serum)のみを含む培地で48時間さらに培養し、分化した脂肪細胞を得た。
【0047】
[ステップ2]分化された脂肪細胞への薬物処置
完全分化を誘導した後、脂肪細胞から培養液を分離してPBSで洗浄した後、2%の遊離脂肪酸ウシ血清アルブミン(Free Fatty Acid Bovine Serum Albumin,Sigma co.米国)を低濃度のグルコースDMEM(With 1000mg/L D−glucose,Without L−glutamine,Without phenol−red,LM001−04,Welgene,韓国)に添加した培地に交換し、24時間、10%CO培養器で培養した。低濃度グルコースDMEM培地に、陽性対照群には茶カテキン製品(70%,PFI co.Japan)を、陰性対照群には一般緑茶熱水抽出物(BTC,韓国)を、実験群には済州産緑茶から採った初摘緑茶熱水抽出物(Bioland,韓国)を、それぞれ50ppm,100ppm,200ppmで処理し、37℃の10%CO培養器で培養した。
【0048】
[ステップ3]完全分化された脂肪細胞への薬物処理後の脂肪分解能測定
前記ステップ2で培養された細胞の培地をそれぞれ回収し、マイクロプレート(microplate)にそれぞれ50μlずつ分注した後、遊離脂肪酸測定キット(Roche,Cat♯.1−383−175,Germany)の反応混合物Aを、サンプルと同量の50μlずつを各セクションに分注し、25℃で10分間反応させた後、N−エチル−マレイミド溶液(N−ethyl−maleinimide solution)5μlを各セクションに分注し、初期吸光度546nmで測定した。反応混合物Bを各セクションに5μlずつ分注し、よく混ぜて与えた。その次に、25℃で15分間反応させた後、最終吸光度を測定した。ブランク(Blank)の吸光度を基準に最終値から初期値を差し引いた数を、各サンプルの差の値から除いた数値を最終遊離酸の濃度と決定した。結果は、図2に示した。
【0049】
図2を参照すると、50ppmの濃度において、茶カテキン(Tea Catechin)は、対照群(Media)と比較したとき、脂肪の分解能が確認されなかった。それに比べ、一般緑茶熱水抽出物と初摘緑茶熱水抽出物においては、いずれも脂肪酸分解能を確認することができた。また、100ppmの濃度においては、初摘緑茶熱水抽出物のみ脂肪分解能があることを確認した。ただし、200ppmの濃度においては、3つの群(茶カテキン、一般緑茶、初摘緑茶)すべて、対照群(Media)に比べて特別な効能を見せなかった。
【0050】
実験例3:DIO(Diet−Induced Obesity)モデルにおける血清化学検査
[ステップ1]試料の準備
動物実験に、対照的として使用された茶カテキン(70%,Pharmafood Inc.日本)200mpkは、毎日、経口投与前にHPLCグレードHO(Sigma co.米国)に溶かして準備し、実験群に使用された初摘緑茶熱水抽出物(Bioland, 韓国)もまた、100mpk,200mpk,400mpkの濃度で、経口投与前にHPLCグレードHOに溶かして準備した。
【0051】
[ステップ2]実験群の設定、体重減量及び脂肪分解効果の検証
本実験を行うために、7週齢のC57BL/6J雄マウスを対象に、1群当たり10匹ずつ準備し、1週間の適応期間を持たせた後、個別に檻に分離して、12時間の間隔で昼(7時〜17時)と夜の周期により管理した。群は、1)一般飼料群(一般飼料)、2)高脂肪食餌群(対照群)、3)高脂肪食餌及び茶カテキン200mpk摂取群(茶カテキン)、4)高脂肪食餌及び初摘緑茶熱水抽出物100mpk摂取群(初摘緑茶100mpk)、5)高脂肪食餌及び初摘緑茶熱水抽出物200mpk摂取群(初摘緑茶200mpk)、6)高脂肪食餌及び初摘緑茶熱水抽出物400mpk摂取群(初摘緑茶400mpk)の合計6つの群に分けられ、1日1回ずつ、8週間、一定の時間(午前10時)に経口投与し、対照群である高脂肪食餌群の10匹には、同量の水を投与した。
【0052】
体重は、毎週1回(午前11時)測定を実施した。投与開始8週後に、実験群と対照群の最終体重を測定して分析した結果は、図3及び4に示した。
【0053】
図3は、各個体群別に体重の変化の過程を示したものであり、図4は、体重の増加幅を示したものである。図3及び図4をともに参照すると、高脂肪食とともに茶カテキンが与えられた群(茶カテキン)の体重は、開始時の19.25±0.69gから、8週後には33.33±2.73gに増加し、対照群に比べて、特別な体重減量効果を統計的に確認することができなかった。これに比べ、初摘緑茶抽出物200mpkを摂取した群(初摘緑茶200mpk)の体重は、開始時の19.12±0.70gから、8週後には31.59±1.46gに体重が増加し、また、初摘緑茶抽出物400mpkを摂取した群(初摘緑茶400mpk)の体重は、開始時の19.24±0.68gから、8週後には30.50±2.50gに体重が増加したものと示された。したがって、本発明に係る初摘緑茶抽出物は、統計的に体重増加を抑制する効果があることを確認した。
【0054】
また、各個体群の副睾丸脂肪の重量を8週目に剖検後、測定した結果、対照群は2.102±0.170gであったが、初摘緑茶抽出物200mpkを摂取した群(初摘緑茶200mpk)の副睾丸の重量は1.862±0.099gと確認され、初摘緑茶抽出物400mpkを摂取した群(初摘緑茶400mpk)の副睾丸脂肪重量は1.543±0.069gと確認された。これらの結果を平均体重に対する副睾丸重量に換算して計算した。計算の結果は、図5に示した。
【0055】
図5を参照すると、初摘緑茶熱水抽出物400mpkを高脂肪食餌とともに食餌した群(初摘緑茶400mpk)の場合には、副睾丸脂肪の重量が他の群に比べて統計的に有意に減少したことを確認した。これを通じ、本発明に係る初摘緑茶抽出物は、脂肪分解効果があることを知ることができる。
【0056】
[ステップ3]実験群及び対照群の血清検査
長期毒性実験は、茶カテキン及び初摘緑茶熱水抽出物を多様な濃度で8週間投与して、肥満予防及び治療等の試験に利用されたC57BL/6Jマウスを対象に実験した。
【0057】
動物の各臓器(組織)に及ぼす影響を調査するために、茶カテキン及び初摘緑茶熱水抽出物を濃度別に処理した実験群と溶媒のみを投与した対照群の動物から8週後に血液を採取して、GPT(glutamate−pyruvate transferase)及びBUN(Blood Urea Nitrogen)の血液中の濃度をセレクトE(Select E,Vital Scientific NV,Netherland)機器を利用して測定した。測定結果は、図6に示した。
【0058】
図6を参照すると、HDLC(High Density Lipid conc)とLDLC(Low Density Lipid conc.)は、正常的に肥満が誘導されたかを確認する指標である。対照群、並びに茶カテキン、初摘緑茶(初摘緑茶100mpk、初摘緑茶200mpk及び初摘緑茶400mpk)を処理した実験群のいずれも、HDLCとLDLCは類似な数値を示した。したがって、一般飼料を摂取した個体群(一般飼料)を除いた、高脂肪食餌を適用した個体群(対照群、茶カテキン、初摘緑茶100mpk、初摘緑茶200mpk及び初摘緑茶400mpk)のすべてにおいて、肥満が正常に誘導されたことを確認することができる。
【0059】
また、GPTは、肝臓毒性を確認する指標であり、BUNは、腎臓毒性を確認する指標である。肝臓毒性と関連したGPT及び腎臓毒性と関連したBUNは、対照群と比較して、実験群(茶カテキン、初摘緑茶100mpk、初摘緑茶200mpk及び初摘緑茶400mpk)は、特別な差を見せなかった。また、各動物から肝臓と腎臓を摘出し、通常的な組織切片の製作過程を経て、光学顕微鏡で組織学的観察を行ったところ、特異な異常が観察されなかった。したがって、本発明に係る初摘緑茶抽出物は、特別な毒性はないと見られる。
【0060】
GLUC(glucose、血糖)指標は、血糖と関連したもので、高い数値は糖尿病を示すこともある。また、TG(triglyceride、中性脂肪)は、コレステロールとともに動脈硬化を引き起こす血中脂肪成分である。また、CHOL(cholesterol、コレステロール)は、肥満、肝疾患及び糖尿病の診断を役立つ指標である。図6において、GLUC及びCHOLともに、初摘緑茶を処理した場合(初摘緑茶100mpk、初摘緑茶200mpk及び初摘緑茶400mpk)に、対照群に比べて濃度依存的に低い数値を示すものと確認された。したがって、本発明に係る組成物は、糖尿病及び肥満の治療及び予防に効果があるということが分かる。
【0061】
TG(triglyceride、中性脂肪)は、コレステロールとともに動脈硬化を引き起こす血中脂肪成分である。図6においては、対照群に比べて初摘緑茶を投与した実験群(初摘緑茶100mpk、初摘緑茶200mpk及び初摘緑茶400mpk)において、濃度依存的にTG値が著しく低いものと示された。したがって、本発明に係る組成物は、CHOL及びTGの数値をいずれも下げる効果があり、これを通じ、脂質異常症、高血圧、動脈硬化、狭心症及び心筋梗塞の治療及び予防にも効果があるものと確認された。
【0062】
本発明による初摘緑茶抽出物含有組成物は、下記のとおり、様々な剤型に応用可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
[製剤例1]軟質カプセル剤
初摘緑茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、大豆油180mg、紅参抽出物50mg、パーム油2mg、パーム硬化油8mg、蜜蝋4mg及びレシチン6mgを混合し、通常の方法により、1カプセル当たり400mgずつ充填して軟質カプセルを製造した。
【0064】
[製剤例2]錠剤
初摘緑茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg、澱粉96mg及びステアリン酸マグネシウム4mgを混合し、30%エタノールを40mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥し、打錠機を利用して錠剤で打錠した。
【0065】
[製剤例3]顆粒剤
初摘緑茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖100mg、紅参抽出物50mg及び澱粉600mgを混合し、30%エタノールを100mg添加して顆粒を形成した後、60℃で乾燥し、顆粒を形成して包に充填した。内容物の最終的な重量は1gとした。
【0066】
[製剤例4]ドリンク剤
初摘緑茶抽出物100mg、大豆抽出物50mg、ブドウ糖10g、紅参抽出物50mg、クエン酸2g及び精製水187.8gを混合し、瓶に充填した。内容物の最終容量は200mlとした。
【0067】
[製剤例5]健康食品の製造
初摘緑茶抽出物 1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
ミネラル混合物
硫酸第一鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
第一リン酸カリウム 15mg
第二リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg

前記ビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に適した成分を好ましい実施例として混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよく、通常の健康食品の製造方法により前記成分を混合した後に顆粒を製造し、通常の方法により健康食品組成物の製造に使用することができる。
【0068】
[製剤例6]健康飲料の製造
初摘緑茶抽出物 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水を加えた全体 900ml

通常の健康飲料の製造方法により前記成分を混合した後、約1時間、85℃で攪拌加熱した後、作られた溶液を濾過し、滅菌された2l容器に取得して密封滅菌した後、冷蔵保管してから本発明の健康飲料組成物の製造に使用する。
【0069】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に適した成分を好ましい実施例として混合組成したが、需要階層や需要国、使用用途等、地域的、民族的嗜好度に応じて、その配合比を任意に変形実施してもよい。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に、本発明の範疇内において多様な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る緑茶抽出物を有効成分として含有する組成物は、食品及び医薬分野等において多様に活用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、抗肥満用組成物。
【請求項2】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、糖尿病の治療又は予防用組成物。
【請求項3】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、脂質異常症の治療又は予防用組成物。
【請求項4】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、高血圧の治療又は予防用組成物。
【請求項5】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、動脈硬化の治療又は予防用組成物。
【請求項6】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、狭心症の治療又は予防用組成物。
【請求項7】
初摘緑茶抽出物を有効成分として含む、心筋梗塞の治療又は予防用組成物。
【請求項8】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、抗肥満用組成物。
【請求項9】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、糖尿病の治療又は予防用組成物。
【請求項10】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、脂質異常症の治療又は予防用組成物。
【請求項11】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、高血圧の治療又は予防用組成物。
【請求項12】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、動脈硬化の治療又は予防用組成物。
【請求項13】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、狭心症の治療又は予防用組成物。
【請求項14】
抽出物全体の重量を基準として、20重量%〜40重量%の総カテキンを含有する緑茶抽出物を有効成分として含む、心筋梗塞の治療又は予防用組成物。
【請求項15】
前記初摘緑茶抽出物又は緑茶抽出物は、熱水抽出物又はC〜Cの低級アルコール抽出物である、請求項1〜請求項14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
前記C〜Cの低級アルコール抽出物は、エタノール抽出物である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記緑茶抽出物に含有された総カテキンは、EGCG(Epigallocatechin gallate)を含み、
前記EGCGの含量は、抽出物全体の重量を基準として、7重量%〜20重量%である、請求項8〜請求項14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
前記緑茶抽出物は、抽出物全体の重量を基準として、2.5重量%〜4.5重量%のカフェインを含む、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記緑茶抽出物は、抽出物全体の重量を基準として、総アミノ酸含量が4.5重量%〜10重量%である、請求項17記載の組成物。
【請求項20】
前記総アミノ酸は、テアニンを含み、
前記テアニンの含量は、抽出物全体の重量を基準として、2重量%〜5重量%である、請求項19記載の組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−527450(P2012−527450A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511760(P2012−511760)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003162
【国際公開番号】WO2010/134756
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】