説明

緑藻由来の硫酸化多糖を含有する血管障害改善剤及びその製造方法

【課題】優れた血小板凝集反応の抑制活性を有する硫酸化多糖を提供する。
【解決手段】緑藻植物又はその細片を酸性下90℃以上の水で抽出し、その抽出液を固液分離し、乾燥することにより得られる緑藻植物来のラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖は優れた血小板凝集反応の抑制活性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管障害改善剤に関し、特に、緑藻植物由来のラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖を含有する血管障害改善剤、疾患改善用組成物及びその利用等に関する。
【背景技術】
【0002】
海藻から抽出される硫酸化多糖などの酸性多糖については、種々の生理活性が知られており、例えば、抗凝血活性(特許文献1)や、コレステロール低下作用(特許文献2)が知られている。また、硫酸化多糖の低分子化製法として、酸添加による加水分解法が知られている(特許文献3)。さらに、硫酸化多糖から硫酸基を脱離させて生理活性を付与することも試みられている(特許文献4)。
【特許文献1】特開昭63−235301号
【特許文献2】特許第3634721号
【特許文献3】特開平7−215990号
【特許文献4】特開平11−60590号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした天然由来の成分については、おおよそ一般の抽出法で抽出した成分について同等の生理活性が認められる場合もあるが、抽出方法によってその生理活性が大きく異なる場合がある。したがって、抽出法による生理活性の変化の有無や変化の大きさを予測するのは極めて困難である。また、抽出後に低分子化したりあるいは硫酸基含有量を調節することよりも、抽出方法自体が重要となる。一方、近年、血管障害、血管内皮における障害による種々の前疾患状態や疾患が問題となってきている。なかでも、動脈硬化症など動脈における障害が問題となっている。
【0004】
本発明は、優れた血管障害改善性を有する緑藻由来の硫酸化多糖の製造方法、硫酸化多糖、血管障害改善剤、薬剤組成物及び食品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、緑藻植物のアオサ藻綱に属するヒトエグサからラムナン硫酸を主成分とする硫酸化多糖の抽出方法を種々検討した結果、高脂血症予防活性(コレステロール、中性脂肪低下)や血小板凝集反応の抑制活性に優れる硫酸化多糖を得られる抽出方法を見出した。さらに本製法により低分子化されたラムナン硫酸を主成分とする抽出物に、ヒトの経口摂取による臨床試験において有意にコレステロール低下作用を有していることを見いだし本発明を完成するに至った。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0006】
本発明の一つの形態によれば、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩の製造方法であって、緑藻又はその細片を準備する工程と、前記緑藻又はその細片から酸性水性媒体中で加熱して硫酸化多糖又はその塩を抽出する抽出工程とを備える製造方法が提供される。
【0007】
この形態においては、前記抽出工程は、前記酸性水性媒体は有機酸を含有することができる。また、前記抽出工程において、前記酸性媒体における酸濃度、抽出温度及び抽出時間を調整することにより、抽出される前記硫酸化多糖の硫酸基含量及び/又はゲルろ過クロマトグラフィーによるプルラン換算重量平均分子量を制御するようにすることもできる。さらに、この形態においては、血小板凝集抑制及びコレステロール低下活性を有する硫酸化多糖又はその塩を製造するものとしてもよい。
【0008】
また、前記抽出工程において有機酸を用いる場合、前記酸性媒体における前記有機酸の添加量0.3質量%以上1質量%以下とすることができる。
【0009】
さらに、前記抽出工程は前記水性媒体を90℃以上130℃以下に加熱して行うことができる。さらにまた、前記抽出工程は、ゲルろ過クロマトグラフィーによるプルラン換算重量平均分子量が200万以下である硫酸化多糖又はその塩を抽出する工程としてもよい。この態様においては、前記プルラン換算重量平均分子量は100万以下であってもよい。
【0010】
また、この形態においては、前記硫酸化多糖又はその塩は、以下の特徴(a)及び(b)を備えることができる。
(a)構成多糖におけるラムノース比率が70質量%以上、グルコース含量が1質量%以上30質量%以下、キシロース含量が1質量%以上10質量%以下
(b)硫酸基含量が10質量%以上40質量%以下
【0011】
本発明の他の一つの形態によれば、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩の製造方法であって、緑藻又はその細片を準備する工程と、前記緑藻又はその細片を水性媒体中で加熱して硫酸化多糖又はその塩を抽出する抽出工程と、抽出した前記硫酸化多糖をイオン交換により脱カチオン化後、所望の金属アルカリで中和する工程と、を備える、製造方法が提供される。
【0012】
この形態においては、前記抽出工程は、前記緑藻又はその細片を酸性の水性媒体を用いて抽出する工程とすることができる。
【0013】
これらの形態においては、前記緑藻はヒトエグサ(Monostroma nitidum)又はヒロハノヒトエグサ((Monostroma latissimum)とすることができる。
【0014】
本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかに記載の製造方法により得られ、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩が提供される。
【0015】
本発明の他の一つの形態によれば、以下の特徴(a)〜(c):
(a)ゲルろ過クロマトグラフィーによるプルラン換算重量平均分子量が200万以下
(b)構成多糖におけるラムノース比率が70質量%以上、グルコース含量が1質量%以上30質量%以下、キシロース含量が1質量%以上10質量%以下
(c)硫酸基含量が10質量%以上40質量%以下
を有し、血小板凝集反応の抑制活性を有する、硫酸化多糖又はその塩が提供される。
【0016】
この形態においては、前記血小板凝集反応は、ヒト血小板のリストセチン惹起ヒト血小板凝集反応、コラーゲン惹起血小板凝集反応及びトロンビン惹起血小板凝集反応から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。また、この態様においては、前記血小板凝集反応は、リストセチン惹起ヒト血小板凝集反応であってもよい。さらに、この態様においては、前記血小板凝集反応は、ヒト血小板のリストセチン惹起ヒト血小板凝集反応、コラーゲン惹起血小板凝集反応及びトロンビン惹起血小板凝集反応であってもよい。また、前記硫酸化多糖は、ナトリウム塩又はカリウム塩であってもよい。さらに、前記硫酸化多糖は、ヒトを含む動物における血中コレステロール低下作用を有することが好ましい態様である。
【0017】
本発明の他の一つの形態によれば、上記いずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の予防又は改善用剤が提供される。
【0018】
本発明の他の一つの形態によれば、食品組成物であって、上記いずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の予防又は改善用食品組成物が提供される。この形態において、前記食品組成物は、飲料又は飲料用であってもよく、さらに、茶葉又は飲用粉末と前記硫酸化多糖とを含有する飲料用とすることができる。さらにまた、高コレステロール血症のリスクのあるヒトに対して臨床上有効量のヒトエグサ由来のラムナン硫酸又はその塩を含有する、高コレステロール血症の予防用であってもよい。なお、ここで高コレステロール血症のリスクがあるヒトとは、血中の総コレステロール量が220mg/dl以上又はLDLコレステロール量が140mg/dl以上のヒトである。
【0019】
本発明の他の一つの形態によれば、薬剤組成物であって、上記いずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の改善を要する疾患の予防用又は治療用の薬剤組成物が提供される。この形態においては、血管障害の改善を要する疾患にあるヒトに対して臨床上有効量の前記硫酸化多糖を含有することができる。また、高コレステロール血症のリスクのあるヒトに対して臨床上有効量のヒトエグサ由来のラムナン硫酸多糖体を含有する高コレステロール血症の予防用の経口投与製剤とすることができる。さらに、前記血管障害は高コレステロール血症であり、経口投与製剤とすることもできる。また、前記疾患とは、動脈硬化症、血栓症、糖尿病、及び肺気道疾患から選択されるいずれかとすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の緑藻植物由来のラムノースを主たる構成単糖として有する硫酸化多糖の製造方法は、前記緑藻又はその細片を準備する工程と、前記緑藻又はその細片を酸性水性媒体中で加熱して硫酸化多糖又はその塩を抽出する抽出工程と、を備えている。本発明の製造方法によれば、硫酸化多糖の抽出を酸性下で行うことにより、血小板凝集反応の抑制活性に優れる硫酸化多糖を得ることができる。この硫酸化多糖によれば、過度の又は亢進された血小板凝集によって引き起こされる望ましくない血管、特に血管内皮の障害状態を改善する食品やこうした血管障害の改善を要する疾患や状態を予防又は治療する薬剤に用いることができる。
【0021】
また、本発明の硫酸化多糖の製造方法によって製造される硫酸化多糖は、良好なコレステロール低下作用も有している。このため、本製造方法によって得られる硫酸化多糖によれば、血中これステロールを低下させ、コレステロールによる血管内皮への障害を低減するとともに、血小板凝集反応を抑制できるため、血管内皮の障害状態を効果的に予防し、改善し、血管内皮の健全性を維持することができる。したがって、本製造方法によって製造される硫酸化多糖によれば、血管障害、特に血管内皮障害の予防、改善に有効な食品やこうした傷害の予防又は治療に有効な薬剤として用いることができる。
【0022】
なお、本明細書において、動物とは、ヒト及び非ヒト動物を含んでおり、非ヒト動物としては、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマなどの家畜、ニワトリ、七面鳥等の家禽、イヌ、ネコ等のペットが含まれる。
【0023】
以下、本発明の硫酸化多糖の製造方法、硫酸化多糖、血管障害改善剤、食品組成物及び薬剤組成物について詳細に説明する。
【0024】
(硫酸化多糖の製造方法)
緑藻又はその細片を酸性水性媒体を加熱して硫酸化多糖を抽出する抽出工程を有している。本発明で用いる緑藻としては、特に限定しないが、こうした藻類としては、ヒビミドロ目Monostroma、Protomonostromaや、アオサ目Blindingia、Enteromorpha、Ulva、Ulvariaが挙げられる。具体的には、Monostroma nitidum(ヒトエグサ)、Monostroma latissimum(ヒロハノヒトエグサ),Monostroma Sravillei(ウスヒトエグサ)、Monostroma angicava(エゾヒトエグサ)、Protomonostroma undulatum(シワヒトエグサ)、Enteromorpha prolifera(スジアオノリ)、Enteromorpha intestinalis(ボウアオノリ)、Enteromorpha compressa(ヒラアオノリ)、Enteromorpha linza(ウスバアオノリ)、Ulva pertusa(アナアオサ)、Ulvaria fusca(クロヒトエグサ)、Blindingia minima)ヒメアオノリ)が挙げられる。なかでも、ヒトエグサ、ヒロハノヒトエグサなどが好ましく用いられる。なお、ヒトエグサとヒロハノヒトエグサは類似しており、両者を区別することは必ずしも容易でない。したがって、ある藻類が両者のいずれかであると明確に分類できる場合を除いて、当該藻類をヒトエグサ又はヒロハノヒトエグサとして取り扱うことができる。
【0025】
緑藻は生の状態で用いることもできるが、通常、水分10%程度以下に乾燥した状態で流通されている。乾燥状態の緑藻は、まず、水に浸漬して吸水させることが好ましい。吸水方法は特に限定しないが、緑藻が十分膨潤する程度の量の水や温水に30分〜1時間程度浸漬させればよい。吸水させた後は、表面の水を適宜水切りしておくことができる。緑藻植物は適宜ブレンダーやカッター等により細片としてもよい。
【0026】
抽出工程は、吸水した緑藻又はその細片に十分量の酸性水性媒体中で加熱して行うことが好ましい。酸性下で抽出を行うことにより、リストセチン、コラーゲン及びトロンビンから選択される惹起物質による血小板凝集を抑制する活性を有する硫酸化多糖を得ることができる。なかでも、コラーゲン誘発性やリストセチン誘発性の血小板凝集抑制活性を有する硫酸化多糖を得ることができ、さらには、他の抽出方法に比して抗リストセチン誘発性血小板凝集抑制活性の高い硫酸化多糖を得ることができる。酸を添加しない抽出によれば、その後硫酸化多糖の精製度を高めても高い抗リストセチン誘発性血小板凝集活性を得られにくい。また、こうした抽出工程によれば、同時にヒトにおけるコレステロール低下作用を有する硫酸化多糖を得ることができる。
【0027】
本抽出工程は、得られる硫酸化多糖の硫酸基の含量が15%以上となるように、より好ましくは20%以上となるよう水性媒体の種類、加熱温度、pH、酸の種類、濃度及び抽出時間を設定することが好ましい。
【0028】
酸性水性媒体における水性媒体は、水を主成分とすることが好ましく、より好ましくは媒体としては水のみを用いる。なお、水と相溶するエタノール等の有機溶媒との混液であってもよい。
【0029】
加熱温度は、75℃以上であればよいが、好ましくは90℃以上である。また、より好ましくは95℃以上、より好ましくは沸騰させた状態で行う。また、加熱温度は130℃以下であることが好ましい。130℃以下であると低分子化がコントロールされやすいからである。より好ましくは121℃以下である。緑藻に対する酸性水性媒体の量は特に限定しないが、例えば、乾燥状態(水分10%以下程度)の緑藻植物1重量部に対して、10重量部以上30重量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、18重量部以上28重量部以下である。
【0030】
酸性水性媒体のpHは3以上5以下であることが好ましい。酸の強さが高いほど分解速度は高まるが、PHが3未満では硫酸基の分解脱離が発生しやすく、pHが5を超えると低分子化が緩慢になるからである。
【0031】
こうした酸性条件は、無機酸及び/又は有機酸の水性媒体への添加により形成される。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、有機酸としては、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、シュウ酸、ギ酸、酢酸、乳酸、アスコルビン酸等が挙げられる。硫酸基の脱離を抑制する観点からは、好ましくは有機酸を用い、なかでもクエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アスコルビン酸を好ましく用いることができる。これらの有機酸は、抽出時間、抽出温度及び添加量をコントロールすることにより、硫酸基の脱離を効果的に抑制するとともに、多糖を穏やかに分解し、硫酸基含量の低下を抑制しながら目的の低分子量の硫酸多糖が得られるからである。水性媒体に対する酸の濃度は、0.3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。酸は、水性媒体の加熱に先だって添加してもよいし、加熱開始後または温度が意図する抽出温度近傍になった時点で添加してもよい。
【0032】
抽出時間1時間以上20時間以下とすることができる。抽出時間は、加熱温度と添加する酸やその濃度に応じて適宜設定することができる。例えば、有機酸としてクエン酸を用いる場合には、抽出時間は、添加量が0.7質量%程度であり、抽出温度が常圧での沸点100℃の場合には、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上であり、さらに好ましくは約6時間である。酸添加による抽出物の高分子の低分子化分解反応は、300万以上1000万の分布範囲である分子量分布が、硫酸基分解脱離をともなわずに進行し、6時間で300万以上1000万以下の分布の分子量分布が無くなり数十万の分子量分布が増加してくる。クエン酸の添加量を増加させるかあるいは抽出温度を100℃以上に上げれば抽出時間を短縮することができる。
【0033】
また、有機酸など酸の種類、濃度、抽出温度、抽出時間をコントロールすることにより硫酸基含量の低下を抑制しながらプルラン換算重量平均分子量を200万から1万前後まで段階的に低分子化がさせることができる。このためには、抽出時におけるpHは、3以上5以下であることが好ましい。酸の強さが高いほど又抽出温度が高いほど分解速度は高まるが、PHが3以下の強酸性下では硫酸基の分解脱離が発生しやすい。ただ硫酸基の分解脱離のしやすさは、添加する酸の種類により特性が大きく異なり、無機酸の塩酸の場合、PH5.2の弱酸性下であっても硫酸基の脱離が確認された。
【0034】
次に、抽出液を固液分離して液体画分を採取する固液分離工程を実施する。固液分離工程は、自然沈降、遠心分離、ろ過、フィルタープレス、凝集剤の添加等の従来公知の固液分離方法を用いて実施することができるが、好ましくは、ろ過助剤として珪藻土を用いてろ過又は遠心分離(好ましくは5000×g以上)することが好ましい。藻体は、珪藻土と混合することによりろ過又は遠心分離操作により分離されやすくなる。固液分離は、各種操作を2種以上組み合わせて行ってもよい。なお、こうして得られた液体画分には、添加した酸が含まれているため、酸を除去した方が好ましい場合は、限外ろ過膜、イオン交換、又は透析等により除去することができる。
【0035】
こうして得られた液体画分は、硫酸化多糖を含有しており、この液体画分を溶液状の硫酸化多糖として用いることができるが、さらにこの液体画分を乾燥して固形あるいは半固形の硫酸化多糖として得ることもできる。乾燥工程は、凍結乾燥、噴霧乾燥等従来公知の乾燥方法を採用することができる。こうして、粉末状等の硫酸化多糖を得ることができる。
【0036】
本発明の製造方法によって得られる本発明の硫酸化多糖は、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩を含有している。本発明における硫酸化多糖としては、例えば、構成糖の3位又は4位が硫酸エステル化されている硫酸化多糖が挙げられる。硫酸化多糖は、その硫酸基において遊離の酸であってもよいし、金属塩などの塩であってもよい。こうした塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属等が挙げられる。
【0037】
本発明における硫酸化多糖の単糖組成は、ラムノースを主成分としており、構成単糖の50質量%以上がラムノースである。硫酸化多糖におけるラムノースモル比率は、好ましくは、60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。ラムノース比率との関係は必ずしも明らかではなく本発明を拘束するものではない。なお、硫酸化多糖における構成単糖の組成については、例えば、酸加水分解法により多糖を構成単糖まで分解後、遊離酸を分離除去し、単糖成分をHPLCで定量することにより得ることができる。酸加水分解法は、例えば、以下のようにして行うことができる。糖類含有試料を、酸加水分解〈多糖試料(約20mg)を2N硫酸(10ml)に溶解させ、沸騰水浴中で2時間加熱〉後、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Asahipack NH2P−50 4E、カラム温度:35℃、移動相:水/アセトニトリル=25/75、流量:1ml/min、検出器:RI)により決定することができる。
【0038】
また、本発明の硫酸化多糖は、ラムノース以外の構成単糖として、グルコース及び/又はキシロースを含むことができる。好ましくはグルコースを含有し、さらにキシロースを含んでいる。グルコースを含有する場合、その含量は1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、キシロースを含有する場合は、その含量は1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。なお、これらの構成単糖についても、ラムノース含量と同様にして算出することができる。
【0039】
本発明の硫酸化多糖のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるプルラン換算重量平均分子量は、血小板凝集活性及び/又はコレステロール低下作用を有する限り特に限定しないが、プルラン換算重量平均分子量が200万以下であることが好ましい。また、プルラン重量平均分子量が10万以上120万以下のものを用いることが好ましい。特に、コレステロール低下作用については、より好ましくは、10万超100万以下であり、さらに好ましくは30万超100万以下である。
【0040】
本発明の硫酸化多糖における硫酸含有量は、血小板凝集活性及び/又はコレステロール低下作用を有する限り特に限定しないが、おおむね15質量%以上であることが好ましい。また、上限も特に限定しないが、40質量%以下であることが好ましい。より好ましくは35質量%以下である。なお、硫酸基含有量は、燃焼フラスコ法、ロジソン酸法により求めることができる。燃焼フラスコ法は、例えば、分析化学、15巻、689〜691頁、(1966年)、17巻、1322〜1324頁、(1968年)に記載の燃焼フラスコ法を採用することができる。燃焼フラスコ法により試料中の硫黄元素を定量し、得られた試料中の硫黄原子の含有量(質量%)に3を乗ずることにより硫酸基含有量を算出することができる。また、ロジソン法は、例えば、Analytical Biochem、41巻、471〜476頁、(1971年)に記載の方法を採用することができる。
【0041】
なお、緑藻又はその細片からの硫酸化多糖の抽出工程は、中性の水性媒体を加熱して硫酸化多糖を抽出するようにしてもよい。抽出工程における水性媒体、抽出温度、抽出時間は上記と同様の範囲で実施することができる。この場合には、得られる硫酸化多糖をカチオン交換クロマトグラフィー等によりカチオン交換して脱カチオンした上、所望の金属アルカリ、好ましくはナトリウム及び/又はカリウムのアルカリにより中和した硫酸化多糖の塩を用いることが好ましい。こうしたアルカリ金属塩は、好ましい血小板凝集抑制活性を発揮することができる。
【0042】
本発明の硫酸化多糖又はその塩は、ヒトを含む動物における血小板凝集抑制活性を有している。血小板凝集抑制活性を有していることにより、それ自体血管傷害、血管内皮障害を改善し、予防することができる。なかでも、本発明の硫酸化多糖は、ヒト血小板のリストセチン惹起血小板凝集反応の抑制活性を有している。リストセチンは、血中のvWF(フォン・ビレブランド因子)や血小板に特異的に結合することが判った。リストセチンはvWFに結合して、vWFの立体構造を変化させて活性化し、この活性化vWFが血小板に容易に結合して血小板凝集を誘発することが判った。したがって、ヒト血小板のリストセチン誘発性血小板凝集は、血液の乱流箇所、具体的には、血流の速い動脈、血管の分岐部位及び血管形態が複雑な部位における血小板凝集の主たる凝集形態であると考えられている。したがって、リストセチン誘発性血小板凝集反応を抑制することで、動脈における血栓や動脈硬化を効果的に抑制することができると考えられる。
【0043】
また、本発明の硫酸化多糖は、ヒトを含む動物におけるコレステロール低下作用を有している。コレステロール低下作用を有していることにより、それ自体血管傷害、血管内皮障害を改善し、予防することができる。
【0044】
以上説明したように、本発明の硫酸化多糖は、優れた血小板凝集反応の抑制活性を有している。このため、血管障害、特に血管内皮障害を予防し、改善するのに有効であり、このため、血栓の形成を予防し、またそうした状態を改善することができる。また、本発明の硫酸化多糖は、コレステロール低下作用を有している。このため、コレステロールの蓄積による血管障害、特に、血管内皮障害を予防し、改善することができる。また、血小板凝集反応の抑制活性とコレステロール低下作用とを有する本発明の硫酸化多糖は、コレステロールによる血管内皮障害を予防し、改善し、さらに血栓の形成を抑制するため、動脈硬化や血栓症を生じるような血管内皮障害を効果的に予防し、改善できる。この結果、こうした硫酸化多糖は、動脈硬化症や血栓症などを効果的に予防することができる。
【0045】
本発明の硫酸化多糖は、粉末などの固体、溶液、懸濁液等の各種の形態を取ることができる。一般的には粉末等の固体状態で流通され、提供される。本組成物には、硫酸化多糖以外に硫酸化多糖の安定性等を高めるために適宜添加剤を含んでいてもよい。また、硫酸化多糖以外に、抽出原料由来のタンパク質等を含んでいる場合もある。
【0046】
(血管障害改善剤)
本発明の血管障害改善剤は、本発明の硫酸化多糖を有効成分として含有している。以上のことから、本発明の硫酸化多糖は、研究用試薬としての血管障害改善剤として用いることができるほか、血管障害に関連する疾患の予防や治療に用いる薬剤組成物やこうした疾患を有する若しくはリスクを有する個人や健常人に摂取させる食品組成物に用いることができる。
【0047】
(薬剤組成物)
本発明の薬剤組成物(以下、本薬剤組成物という。)は、本発明の硫酸化多糖を含有しており、血管障害に関連する疾患、すなわち、血管障害の改善を要する疾患の予防用又は治療用の薬剤組成物として使用できる。本薬剤組成物において、血管障害、特に、血管内皮障害の改善を要する疾患又は状態としては、動脈硬化症、血栓症、糖尿病、及び肺気道疾患などが挙げられる。なお、本薬剤組成物が対象とする疾患又は状態はこれらに限定されるものではない。
【0048】
なお、本薬剤組成物における硫酸化多糖は、硫酸エステル基における遊離の酸であってもよいし、医薬的に許容される塩であってもよい。こうした塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属等が挙げられる。
【0049】
また、本薬剤組成物は、本組成物以外の上記疾患に有効な他の薬剤を含有することができる。例えば、他の血小板凝集抑制剤、コレステロール低下剤などが挙げられる。本薬剤組成物は、また、上記疾患の有効な他の薬剤と併用して投与可能に組み合わせられた薬剤組成物セットとして提供されてもよい。
【0050】
本薬剤組成物は、少なくとも本発明の血管障害改善剤を有効成分として含むほか、医薬上許容される公知の薬剤担体を含んで、各種の製剤形態を備えることができる。こうした薬剤担体は、当該分野において周知であり、本薬剤組成物に適用される可能性のある製剤形態に用いられる公知の薬剤担体を適宜選択して用いればよい。本薬剤組成物の製剤形態としては、例えば、粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセル剤、チュアブル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、注射剤、坐剤、フィルム剤、ゲル剤が挙げられる。また、こうした製剤形態に用いられる薬剤担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチレンデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。さらに、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の添加剤を含んでいてもよい。こうした本薬剤組成物は、各種製剤形態に応じた公知の常套手段により調製することが可能である。
【0051】
本薬剤組成物は、経口、舌下、皮下又は静脈内注射、経皮、直腸投与などの投与方法でき、そのための必要な製剤形態が適宜選択される。好ましくは固形又は液体の経口剤として提供される。また、本薬剤組成物は、バルーン処置部位や血管の狭窄部位への局所適用剤としてもよい。本薬剤組成物は、こうした局所適用の製剤形態として、特に、フィルム剤、ゲル剤などが挙げられる。また、内視鏡、カテーテル、チューブ等を用いて経管的又は経皮的に本薬剤組成物を送達することもできる。
【0052】
さらに、本薬剤組成物は、バルーンやステントなどの各種の体内留置材料を含む血液接触面を有する医療用具などの形態で提供されてもよい。また、こうした血液接触面に対する表面処理剤として提供されてもよい。このような医療用具としては、体内留置材料であるバルーン、ステントが挙げられる。また、他の医療用具としては、カテーテル、採血用注射器、人工臓器、輸液パック、輸液チューブが挙げられる。表面処理の方法としては特に限定しないで、硫酸化多糖の血小板凝集反応の抑制活性を損なわないものであればよい。
【0053】
本薬剤組成物の有効投与量は、剤型、投与方法、対象者の年齢、体重、症状、投与スケジュール等により、適宜選択決定されるが、例えば、経口用の場合、硫酸化多糖の投与量は、成人で、1日あたり1mg〜5000mg以下であることが好ましく、より好ましくは100mg〜2000mgである。これらは、1日に数回に分けて投与しても良い。また、経口摂取以外について投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及び当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状により異なり適宜選択決定されるが、一般には、前記有効成分の投与量で、ヒト(例えば成人)0.0001mg/体重〜1000mg/体重、好ましくは0.01mg/体重〜100mg/体重、より好ましくは、0.01mg/体重〜30mg/体重である。また、局所適用する場合には、薬剤組成物における硫酸化多糖の含有量は、例えば薬剤組成物100重量%中、通常0.001重量%〜100重量%、好ましくは0.1重量%〜90重量%、より好ましくは、1.0重量%〜800重量%である。
【0054】
(予防又は治療方法)
本発明の予防又は治療方法は、本薬剤組成物を血管障害の改善を要する疾患若しくは状態を有する個体又は該疾患若しくは該状態対してリスクを有する個体に対して投与する工程を備えている。また、投与形態としては、これらの個体に経口投与することもできるし、こうした疾患部位又はこうした疾患の発生についてのリスクを有する部位に対して局所投与することもできる。
【0055】
(食品組成物)
本発明の食品組成物は、本発明の硫酸化多糖を含有しており、血管障害の予防若しくは改善用又は血管障害の改善を要する疾患の予防又は予後用の食品組成物(以下、本食品組成物という。)として利用できる。本食品組成物において、血管障害の改善を要する疾患とは、本薬剤組成物におけるものと同様である。また、本食品組成物に含まれる硫酸化多糖における硫酸エステル基における遊離の酸であってもよいし、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属等の塩とすることができる。
【0056】
本食品組成物は、例えば、本発明の硫酸化多糖を含有する加工食品、菓子類、調味料、嗜好性食品、飲料等の一般的な食品とすることができる。具体的形態としては、特に限定しないが、クッキー、ビスケット、キャンディ、ガム、ゼリー等の固形又は半固形嗜好食品類、果汁、茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料類、パン、麺類等の主食系の食品類、スープ、カレー、シチュー、各種ソースなどの副食系食品類、各種の風味・調味料類とすることができる。このほか、栄養補助食品、機能性食品、特定保健用食品、経管栄養剤等とすることもできる。栄養補助食品等としては、上記した薬剤組成物の経口投与形態と同様の製剤形態を採ることもできる。特に、本食品組成物は、摂取の容易性及び溶解性等から飲料又は飲料用であることが好ましい。具体的には、茶葉又は飲用粉末と前記硫酸化多糖とを含有する飲料用とすることができる。
【0057】
本食品組成物の有効な摂取量は、対象者の年齢、体重、状況等にもよるが、おおよそ硫酸化多糖の摂取量は、1日あたり1mg以上〜5000mg以下程度が好ましく、より好ましくは100mg〜2000mgである。これらは、1日に数回に分けて摂取してもよい。
【0058】
本食品組成物における硫酸化多糖の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、乾燥重量換算で0.01質量%以上20質量%以下程度が好ましく、より好ましくは、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0059】
(非ヒト動物用薬剤組成物等)
さらに、本血管障害改善剤は、非ヒト動物用の薬剤組成物や餌料組成物としても使用できる。非ヒト動物としては、家畜、家禽、ペット等が挙げられる。非ヒト動物においても、本血管障害改善剤を投与し又は摂取させることにより、血管障害の改善を要する疾患の予防又は治療が可能であり、健康の維持が可能となる。なお、本血管障害改善剤を含有する種々の形態の非ヒト動物用の薬剤組成物や餌料組成物を製造することは当業者において容易である。
【実施例】
【0060】
以下に実施例を挙げて、具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
(ヒトエグサからの硫酸化多糖の製造例1〜10)
(製造例1)
三重県産養殖ヒトエグサ約500g(水分約7%)を12lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水を加えて12.5kgとし、沸騰させて95℃〜100℃で6時間熱水抽出した。この熱水抽出液に水を加えて総量を12.5kgとした上、珪藻土300gを添加し混合して遠心分離して上澄み液を得た。この上澄み液の全量を凍結乾燥して粉体153gを得た。
【0062】
(製造例2)
三重県産養殖ヒトエグサ約500g(水分約7%)を12lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水を加えて12.5kgとし、65℃で2時間加熱して温水抽出した。この温水抽出液に水を加えて総量を12.5kgとした上、珪藻土300gを添加し混合して遠心分離して上澄み液を得た。この上澄み液の全量を凍結乾燥して粉体96gを得た。
【0063】
(製造例3)
三重県産養殖ヒトエグサ約500g(水分約7%)を12lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水を加えて12.5kgとし、クエン酸3.6gを加えて沸騰下(95℃〜100℃)で6時間熱水抽出した。この熱水抽出液に水を加えて総量を12.5kgとした上、珪藻土300gを添加し混合して遠心分離して上澄み液を得た。この上澄み液の全量を噴霧乾燥して粉体215gを得た。
【0064】
(製造例4)
製造例1で得た粉体を蒸留水で2w/v水溶液を調製した。この水溶液を2Nの塩酸で平衡化後、通水したカチオン交換樹脂カラムSK104(三菱化学株式会社製、カラムサイズ直径30mm長さ500mm)に通液して得た脱カチオン液(pH1.9〜2.4)をNaOHで中和して凍結乾燥して、粉体を得た。
【0065】
(製造例5)
製造例1で得た粉体を蒸留水で2w/v%水溶液を調製した。この水溶液を2Nの塩酸で平衡化後、通水したカチオン交換樹脂カラムSK104(三菱化学株式会社製、カラムサイズ直径30mm長さ500mm)に通液して得た脱カチオン液(pH1.9〜2.4)をCaOHで中和して凍結乾燥して、粉体を得た。
【0066】
(製造例6)
製造例1で得た粉体を蒸留水で2w/v水溶液を調製した。この水溶液を2Nの塩酸で平衡化後、通水したカチオン交換樹脂カラムSK104(三菱化学株式会社製、カラムサイズ直径30mm長さ500mm)に通液して得た脱カチオン液(pH1.9〜2.4)をKOHで中和して凍結乾燥して、粉体を得た。
【0067】
(製造例7)
製造例1で得た粉体を蒸留水で2w/v水溶液を調製した。この水溶液を和光ダイアライシスメンブラン27で透析して脱塩して凍結乾燥した。この粉末を次に、DE52充填カラム(ワットマン社製、カラムサイズ径30mm、長さ500mm)に通液し分離精製した上、さらに和光ダイアライシスメンブラン27で透析して脱塩したものを凍結乾燥して、粉体を得た。
【0068】
(製造例8)
三重県産養殖ヒトエグサ240gを6lの水に加え30分間浸漬後、洗浄水を分離し再度水を加え全量6.24kgとした。このものを液温60℃〜65℃に維持しながら2時間温水抽出を行った。遠心分離により温水抽出液3.79kgと固形分(以下、回収ヒトエグサという。)1.23kgを得た。この回収ヒトエグサ300gに、水3lとクエン酸100mgを加えて、95℃〜100℃で6時間適時加水しながら熱水抽出した。この熱水抽出液をろ過し、ろ液の全量を凍結乾燥して粉体(3g)を得た。この粉体を0.1mMトリス緩衝液(pH8.7)200mlに溶解し、タンパク質分解酵素(科研製薬株式会社製アクチナゼーE)約0.14gを加えて50℃で15時間インキュベート後、DE52充填カラム(7M尿素0.15M KClで平衡化)に注入して、7M尿素0.15MKCl 3l以上通液後、KCl濃度を0.15M〜2Mまで約11時間かけてグラジエント通液し、フラクションコレクターにて各溶出画分を回収した。各種の画分について、試料1について行ったGPCと同様の条件にてGPCを行い、保持時間(RT)が約14.5分となるピークを、主ピークとして有するフラクションを回収フラクションとしてまとめ、この全量を、透析チューブ用いて4〜5日透析し、濃縮液をフリーズドライして粉体を得た。こうして得られた粉末について、GPCを行ったところ、プルラン換算重量平均分子量は189万であった。
【0069】
(製造例9)
製造例8の製造時に得られたヒトエグサ温水抽出液550gを凍結乾燥により粉体3gを得た。この粉体3gを0.1mMトリス緩衝液(pH8.7)200mlに溶解し、タンパク質分解酵素(科研製薬株式会社製アクチナゼーE)約0.14gを加えて50℃で15時間インキュベート後、DE52充填カラム(7M尿素0.15M KClで平衡化)に注入して、7M尿素0.15MKCl 3l以上通液後、KCl濃度を0.15M〜2Mまで約11時間かけてグラジエント通液し、フラクションコレクターにて各溶出画分を回収した。各種の画分について、試料1についてのGPC条件にて保持時間(RT)が約15.5分となるピークを、主ピークとして有するフラクションを回収フラクションとしてまとめ、この全量を、透析チューブを用いて5日間透析し、濃縮液をフリーズドライして粉体(試料7)を得た。こうして得られた製造例9の試料についてGPCを行ったところ、プルラン換算重量平均分子量は62万であった。
【0070】
(製造例10)
三重県産養殖ヒトエグサ750g(水分約7%)を18lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水18lを加えて沸騰させてクエン酸5.4gを添加し、95℃〜100℃で6時間熱水抽出した。この熱水抽出液に水を加えて総量を18.8kgとした上、珪藻土540gを添加し混合して遠心分離して上澄み液(15.9kg)を得た。この上澄み液1.5lにさらに珪藻土5gを添加して減圧ろ過処理を行った。この操作を繰り返して上澄み液の全量を減圧ろ過し、得られたろ液の総量に水を加えて16kgとした。このろ液を次に、限外ろ過膜(分画分子量1万)でろ過した。限外ろ過処理は、膜透過液が50%の時点で終了させる。この濃縮液に対して減量分(透過液量分)を補充して全量で16kgとした。この処理を合計3回繰り返した。最終的に得られた16kgの濃縮液をスプレードライして粉体を得た。この粉体3gを0.1mMトリス緩衝液(pH8.7)200mlに溶解し、タンパク質分解酵素(科研製薬株式会社製アクチナーゼE)約0.14gを加えて50℃で15時間インキュベート後、DE52充填カラム(7M尿素0.15M KClで平衡化)に注入して、7M尿素0.15MKCl 3l以上通液後、KCl濃度を0.15M〜2Mまで約11時間かけてグラジエント通液し、フラクションコレクターにて各溶出画分を回収した。各種の画分について、試料1についてのGPC条件にて保持時間(RT)が約17分となるピークを、主ピークとして有するフラクションを回収フラクションとしてまとめ、この全量を、透析チューブを用いて5日間透析し、濃縮液をフリーズドライして粉体を得た。こうして得られた製造例10の試料について、GPCを行ったところ、プルラン換算重量平均分子量は21万であった。
【0071】
なお、以上の実施例のうち、製造例3、4、6、10が本発明の実施例に相当している。
【0072】
(実施例2)
次に、惹起物質としてリストセチン、トロンビン及びコラーゲンを用いて血小板凝集反応を行って、製造例1〜10で得られた硫酸化多糖の抑制活性を評価した。なお、血小板凝集反応は以下のようにして行った。結果を図1〜6に示す。
【0073】
評価は、サンプルに対して、攪拌しながら惹起物質を添加した後に、WBA Neo 全血血小板凝集能測定装置(細口吸引圧検知方式)の30μm× 30μmの角型開口のニッケル製マイクロメッシュフィルターメッシュを通して吸引し、その血液吸引量の時間経過を自動的に記録した。なお、詳細な条件は以下の通りであった。
測定方法:フィルターチップによる4濃度連続吸引測定
センサー:半導体蒸着型デジタルセンサー
解析方法:容量反応曲線ED50を応用した評価法
サンプル:全血(クエン酸ナトリウム加血液)
サンプル量:200μl x 4濃度
攪拌速度:800 rpm 5%
【0074】
図1に示すように、リストセチン惹起血小板凝集反応では、製造例3が安定して高い抑制活性を示した。製造例3を除く製造例のものでは、コントロールよりも凝集反応を促進するものがあったが、製造例4及び6においては、高濃度試料(2.5mg/ml)でリストセチン惹起血小板凝集反応を抑制する傾向が見られた。
【0075】
図2に示すように、トロンビン惹起血小板凝集反応では、製造例4が安定して高い抑制活性を示し、製造例3及び6も良好な抑制活性を示した。他の製造例にあっては、凝集反応を促進する傾向が見られた。
【0076】
図3に示すように、コラーゲン惹起血小板凝集反応では、製造例3及び6が安定して高い抑制活性を示し、次いで製造例4が良好であった。他の製造例にあっては、製造例2においてやや抑制活性が認められたもののその他の製造例では凝集反応を促進する傾向が見られた。
【0077】
以上のことから、硫酸化多糖は、その製造方法の相違により血小板凝集反応に対する反応性が大きく異なること、製造例3の硫酸化多糖は、他の製造例で得られる硫酸多糖においてリストセチン惹起血小板凝集反応について高い抑制活性を有しているともに、トロンビン惹起及びコラーゲン惹起血小板凝集の抑制活性についても良好であることがわかった。また、イオン交換によりカリウム塩又はナトリウム塩に置換したものも血小板凝集の抑制活性が良好であることがわかった。
【0078】
また、図4に示すように、リストセチン惹起血小板凝集反応では、製造例10が製造例8,9に比較して安定して高い抑制活性を示した。また、図5に示すように、トロンビン惹起血小板凝集活性反応では、製造例9、10が製造例8に比較して高い抑制活性を示したが、製造例10が最も良好であった。さらに、図6に示すように、コラーゲン惹起血小板凝集活性反応では、製造例9、10が製造例8に比較して高い抑制活性を示したが、製造例10が最も良好であった。以上のことから、プルラン換算重量平均分子量が200万を超えると良好な血小板凝集の抑制活性を有しているとはいえないが、当該分子量が100万以下、より好ましくは、60万以下程度で良好な血小板凝集の抑制活性を有していることがわかった。また、少なくとも当該分子量が20万以上であることが血小板凝集抑制活性に適切であることがわかった。
【0079】
(実施例4)
(ヒトエグサからの硫酸化多糖の製造例11)
三重県産養殖ヒトエグサ750g(水分約7%)を18lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水18lを加え、クエン酸5.4gを加えて沸騰下(95℃〜100℃)で6時間熱水抽出した。この熱水抽出液に水を加えて総量を18.8kgとした上、珪藻土540gを添加し混合して遠心分離して上澄み液を得た。この上澄み液(15.9kg)から1.5lを分取し、珪藻土5gを添加し、減圧ろ過処理を行う。この操作を繰り返して全量処理して、得られたろ液全量に水を加えて16kgに調整した。得られたろ液について限外ろ過(分画分子量10000)を行い、透過液が50%となった時点で終了させる。濃縮液に減量分に相当する水を新たに加え全量を16kgとし、この液を噴霧乾燥して粉体270gを得た。
【0080】
(実施例5)
実施例4で得られた硫酸化多糖(製造例11)について、ヒトに経口投与して一定期間毎に採血して血中脂質等について検査した。なお、試験条件は以下のとおりとした。結果を表1に示し、総コレステロール量及びLDLコレステロール量の推移について図4及び図5にそれぞれ示す。
【0081】
被験者:肝障害及び腎障害の疑いがなく、脂質系の影響のある薬物及びサプリメントを服用していない男性であり、年齢が37.1±10.1歳(21〜54歳)であり、血中総コレステロール値が摂食開始時において230±23.8mg/dlであった。
摂取条件:6週間にわたり一日一回食後に製造例8による硫酸化多糖一包(1.5g)を摂取させた。
採血条件:摂取開始日、摂取2週後、同4週後、同6週後及び4週休食後に採血した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1、図7及び図8に示すように、総コレステロール及びLDL−コレステロールは、被験食摂取後4週間後および6週間後に有意に減少した(図中のp値は摂食開始前とのpaired t検定による。)。この減少は摂取終了後4週休食後には元に復したことから、被験食の作用であると判断された。
【0084】
(実施例6)
本実施例では、三重県産養殖ヒトエグサについて、表2に示す8種類の酸(有機酸及び無機酸)を用い、表2に示す添加量(濃度)、抽出温度、抽出時間等の条件で抽出を行い、得られた硫酸化多糖についてGPCを行い、硫酸基含量を測定した。詳細な操作及びGPC条件を以下に示す。また、硫酸基含量は以下の方法で測定した。
【0085】
三重県産養殖ヒトエグサ400g(水分約7%)を10lの水に30分間浸漬させて膨潤させた後、10分間水切りを行った。この藻体に水10lを加えて沸騰させて表2に示す酸の表示される量を添加し、表2に記載の温度及び時間で抽出を行った。この熱水抽出液に水を加えて総量を10kgに調整後、その2.5kgを珪藻土ろ過により固液分離した。得られた清澄液300gを透析チューブにて脱塩精製後、凍結乾燥を行った。また、GPCは、以下の条件で行った。結果を併せて表2に示す。
HPLC条件:
カラム:Shodex OH Pak SB−806M HQ2本
溶離液:0.1M NaCl
カラム温度:40℃
検出器:RI
流速:1ml/分
【0086】
・硫酸基含有量の測定方法
(燃焼フラスコ法)
硫黄原子の元素分析を、分析化学、15巻、689〜691頁、(1966年)、17巻、1322〜1324頁、(1968年)に記載の燃焼フラスコ法により行い、得られた試料中の硫黄原子の含有量(重量%)に3を乗ずることにより硫酸基含有量を算出した。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示すように、酸の種類、濃度、抽出温度及び抽出時間により、得られる硫酸化多糖のプルラン換算重量平均分子量及び硫酸基含量を調整できることがわかった。また、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸及びアスコルビン酸を用いることにより、プルラン換算重量平均分子量を制御しやすいとともに、硫酸基含量を維持しやすいことがわかった。
【0089】
(実施例7)
製造例1及び製造例11で得た硫酸化多糖を、高脂肪食を摂取させたラットに対してそれぞれ投与して各種の血中脂肪パラメータ(総コレステロール、トリグリセリド、HDLコレステロール、LDLコレステロールを測定した。なお、試験条件は以下のとおりとした。結果を表3に示す。
試験動物:6週令Sprague-Dawley系SPFラット(Crj:C(SD)IGS、1群あたり雄6匹)
高脂肪食:粉末基礎資料CRF−1にコレステロール1質量%、コール酸0.20質量%、オリーブオイル2.5質量%を添加したもの。
摂取条件:ラットに28日間自由に高脂肪食を摂取させるとともに、製造例11の硫酸化多糖を2.5g/kg,1.0g/kg、0.5g/kgを1日1回強制的に経口投与した。
採血条件:採血は、投与開始2日前、13日後、27日後(なお、投与開始日を投与0日とし、投与開始翌日を投与開始一日後とする。)に頚静脈から注射筒で採取することにより行い、血清を分離後(3000rpm、1600×g、10分間)に測定を行った。
その他:投与前及び投与期間中1日1回一般状態を観察した。また、投与開始日、投与開始4、7、11、14、18、21、25及び28日後に体重を測定した。さらに、PT、APTTについて
投与開始1日前、投与開始14、18日後に採血し、測定した。なお、硫酸化多糖を投与しない以外は同様の条件で飼育したラットを対照例とした。
【0090】
【表3】

【0091】
表3に示すように、製造例11の硫酸化多糖においては、投与13日後から27日後にかけて、総コレステロール量及びLDLコレステロール量の有意な減少が認められた。また、製造例11には体重の増加抑制効果が認められた。なお、血液学的検査値や血液化学検査値に異常は認められないことから、毒性作用によるものではないと考えられた。一方、製造例1の硫酸化多糖においては、総コレステロール量、LDLコレステロール量について、製造例11のような効果は認められなかった。
(実施例8)
製造例8〜11について硫酸含有量と構成単糖の成分比率を測定した。なお、それぞれ以下の方法により測定した。結果を表4に示す。
【0092】
(1)硫酸基含有量の測定方法
(燃焼フラスコ法)
硫黄原子の元素分析を、分析化学、15巻、689〜691頁、(1966年)、17巻、1322〜1324頁、(1968年)に記載の燃焼フラスコ法により行い、得られた試料中の硫黄原子の含有量(重量%)に3を乗ずることにより硫酸基含有量を算出した。
(2)構成単糖の測定方法
試料を酸加水分解〈試料(約20mg)を2N硫酸(10ml)に溶解させ、沸騰水浴中で2時間加熱〉後、高速液体クロマトグラフィー(カラム:Asahipack NH2P−50 4E、カラム温度:35℃、移動相:水/アセトニトリル=25/75、流量:1ml/min、検出器:RI)にて各種単糖を同定し定量した。
【0093】
【表4】

【0094】
表4に示すように、試料8〜11は、いずれもラムノースを構成単糖の主成分としており、その質量比率は、68質量%から93質量%にわたっており、第2の主成分であるグルコースの質量比率との和では、92質量%から97質量%にわたり、さらにキシロースの質量比率を加えると、97質量%〜100質量%であった。また、硫酸基含量は、18〜23質量%の範囲であった。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】惹起物質としてリストセチンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図2】惹起物質としてトロンビンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図3】惹起物質としてコラーゲンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図4】惹起物質としてリストセチンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図5】惹起物質としてトロンビンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図6】惹起物質としてコラーゲンを用いた場合の血小板凝集反応の抑制活性を示すグラフ図。
【図7】ヒト摂取時における血中総コレステロール量の推移を示すグラフ図。
【図8】ヒト摂取時における血中LDL−コレステロール量の推移を示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩の製造方法であって、
緑藻又はその細片を準備する工程と、
前記緑藻又はその細片から酸性水性媒体中で加熱して硫酸化多糖又はその塩を抽出する抽出工程とを備える製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程は、前記酸性水性媒体は有機酸を含有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記抽出工程において、前記酸性媒体における酸濃度、抽出温度及び抽出時間を調整することにより、抽出される前記硫酸化多糖の硫酸基含量及び/又はゲルろ過クロマトグラフィーによるプルラン換算重量平均分子量を制御する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
血小板凝集抑制及びコレステロール低下活性を有する硫酸化多糖又はその塩を製造する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記酸性媒体における前記有機酸の添加量0.3質量%以上1質量%以下である、請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記抽出工程は前記水性媒体を90℃以上130℃以下に加熱して行う、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記抽出工程は、ゲルろ過クロマトグラフィーによるプルラン換算重量平均分子量が200万以下である硫酸化多糖又はその塩を抽出する工程である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記プルラン換算重量平均分子量は100万以下である、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記硫酸化多糖又はその塩は、以下の特徴(a)及び(b)を備える、請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
(a)構成多糖におけるラムノース比率が70質量%以上、グルコース含量が1質量%以上30質量%以下、キシロース含量が1質量%以上10質量%以下
(b)硫酸基含量が10質量%以上40質量%以下
【請求項10】
ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩の製造方法であって、
緑藻又はその細片を準備する工程と、
前記緑藻又はその細片を水性媒体中で加熱して硫酸化多糖又はその塩を抽出する抽出工程と、
抽出した前記硫酸化多糖をイオン交換により脱カチオン化後、所望の金属アルカリで中和する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項11】
前記抽出工程は、前記緑藻又はその細片を酸性の水性媒体を用いて抽出する工程である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記緑藻はヒトエグサ(Monostroma nitidum)又はヒロハノヒトエグサ((Monostroma latissimum)である、請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜12いずれかに記載の製造方法により得られ、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖又はその塩。
【請求項14】
以下の特徴(a)〜(c):
(a)ゲルろ過クロマトグラフィーによる重量平均分子量が200万以下
(b)構成多糖におけるラムノース比率が70質量%以上、グルコース含量が1質量%以上30質量%以下、キシロース含量が1質量%以上10質量%以下
(c)硫酸基含量が10質量%以上40質量%以下
を有し、血小板凝集反応の抑制活性を有する、硫酸化多糖又はその塩。
【請求項15】
前記血小板凝集反応は、ヒト血小板のリストセチン惹起ヒト血小板凝集反応、コラーゲン惹起血小板凝集反応及びトロンビン惹起血小板凝集反応から選択される1種又は2種以上である、請求項13又は14に記載の硫酸化多糖又はその塩。
【請求項16】
前記血小板凝集反応は、リストセチン惹起ヒト血小板凝集反応である、請求項15に記載の硫酸化多糖又はその塩。
【請求項17】
前記血小板凝集反応は、ヒト血小板のリストセチン惹起ヒト血小板凝集反応、コラーゲン惹起血小板凝集反応及びトロンビン惹起血小板凝集反応である、請求項15に記載の硫酸化多糖又はその塩。
【請求項18】
ナトリウム塩又はカリウム塩である、請求項13〜17のいずれかに記載の硫酸化多糖又はその塩。
【請求項19】
ヒトを含む動物における血中コレステロール低下作用を有する、請求項13〜18のいずれかに記載の硫酸化多糖又はその塩。
【請求項20】
請求項13〜19のいずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の予防又は改善用剤。
【請求項21】
食品組成物であって、
請求項13〜19のいずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の予防又は改善用食品組成物。
【請求項22】
前記食品組成物は、飲料又は飲料用である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
茶葉又は飲用粉末と前記硫酸化多糖とを含有する飲料用である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
高コレステロール血症のリスクのあるヒトに対して臨床上有効量のヒトエグサ由来のラムナン硫酸又はその塩を含有する、高コレステロール血症の予防用である、請求項20〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
薬剤組成物であって、
請求項13〜19のいずれかに記載の硫酸化多糖を含有する、血管障害の改善を要する疾患又は状態の予防用又は治療用の薬剤組成物。
【請求項26】
血管障害の改善を要する疾患又は状態にあるヒトに対して臨床上有効量の前記硫酸化多糖を含有する、請求項25に記載の薬剤組成物。
【請求項27】
高コレステロール血症のリスクのあるヒトに対して臨床上有効量のヒトエグサ由来のラムナン硫酸多糖体を含有する高コレステロール血症の予防用の経口投与製剤である、請求項25又は26に記載の薬剤組成物。
【請求項28】
前記血管障害は高コレステロール血症であり、経口投与製剤である、請求項25又は26に記載の薬剤組成物。
【請求項29】
前記疾患又は状態は、動脈硬化症、血栓症、糖尿病、及び肺気道疾患から選択される、請求項25又は26に記載の薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−57283(P2009−57283A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368390(P2005−368390)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(304040441)江南化工株式会社 (4)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】