説明

線図の描画方法及び線図の描画器具

【課題】新たな線図の描画方法を提供するものであり、従来、存在しなかった新鮮な視覚効果を発揮する描画方法を開発せんとするものである。
【解決手段】 最初の工程として、塗布具によって紙にインキを塗布する。塗布するインキは、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたものである。次いで、所望の線図に沿って塗布したインキを消しゴムでこする。こする際には、フリーハンドで所定の軌跡を描くか或いは、型を置き、その型の上からインキをこする。インキをこすることにより、紙に対する付着力が弱い方の顔料又は染料が紙から離脱し、付着力が強い側の顔料又は染料が紙に残るので、こすった軌跡に応じた線図が現れる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絵や文字等の線画を紙に描く方法に関するものであり、特有の視覚効果を発揮するものである。
【0002】
【従来の技術】絵や文字等の線画は、ボールペンや、万年筆、ラインマーカ等の筆記具や、筆、クレヨン等の絵画用具によって描かれる。これらの公知の道具によって描かれた絵や文字等は、いずれも単純な単色の線を基本とするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、新たな線図の描画方法を提供するものである。すなわち発明は、従来、存在しなかった新鮮な視覚効果を発揮する描画方法を開発せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らが開発した新たな視覚効果を発揮する線図の描画方法は、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキを塗布具によって紙に塗布し、さらに所望の線図に沿って前記インキをこすることを特徴とする。
【0005】本発明の方法では、最初の工程として、塗布具によって紙にインキを塗布する。ここで最初に塗布するインキは、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたものが採用される。最初に行うインキの塗布は、紙に対して一様に行っても良いし、文字や図形等の線図を描くものであっても良い。そして次いで、所望の線図に沿って塗布したインキをこする。インキをこするための道具としては、消しゴムを使用することが望ましい。消しゴム等でこする際には、フリーハンドによって所望の軌跡を描いてもよいが、テンプレートや字消し板の様な型を置き、その型の上からインキをこすることも推奨される。本発明では、前記した様に、インキが塗布された上から当該インキをこするが、インキには前記の様に紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されている。そのためインキをこすることにより、紙に対する付着力が弱い方の顔料又は染料が紙から離脱し、付着力が強い側の顔料又は染料が紙に残る。そのためこすった軌跡に応じた線図が現れる。
【0006】請求項2に記載の発明は、塗布具はボールペン又はマーキングペンであり、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、金属粉含有インキ、二重発色インキ、真珠光沢含有インキのいずれかであり、前記インキは塗布具に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の線図の描画方法である。
【0007】本発明の線図の描画方法では、塗布具はボールペン又はマーキングペンであり、インキは塗布具に内蔵されている。そのため通常の文字や図形或いは絵を描く感覚で、紙にインキを塗布することができる。またインキは、金属粉含有インキ、二重発色インキ、真珠光沢含有インキのいずれかが採用されている。たとえばインキに金属粉含有インキを採用すると、消しゴム等でインキをこすった時、金属粉が紙から離脱し、他の染料や顔料が紙に残る。真珠光沢含有インキを採用する場合も同様である。また二重発色インキを採用した場合は、消しゴム等でこすった場合に、線の中心部分の発色が鮮明となり、特有の視覚効果が現れる。
【0008】また上記した発明をさらに改良した請求項3に記載の発明は、消しゴムをもってインキをこすることを特徴とする請求項1又は2に記載の線図の描画方法である。
【0009】また請求項4に記載の発明は、インキを紙に対して一様に塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の線図の描画方法である。
【0010】請求項5に記載の発明は、インキを紙に対して所望の線図を描いて塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の線図の描画方法である。
【0011】請求項6に記載の発明は、塗布されたインキの上に、型を置き、さらにその型の上からインキをこすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の線図の描画方法である。
【0012】紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキには、真珠光沢含有インキが使用可能である。
【0013】また紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキには、紙に対する付着力が弱い顔料又は染料として、カーボンブラック、金属酸化物又は有機顔料が使用可能である。
【0014】紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、紙に対する付着力が強い染料として、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾ系、アセト酢酸アニリドアゾ系、ナフタレン誘導体アゾ系、深色化ジスアゾ系、高性能化ジスアゾ系、キニザリン系、ブロアミン系、ニトロ系のいずれかの酸性染料、又は銅フタロシアニン系、ベンジン系、トリジン系、ジアニシジン系、スチルベンゾアゾ系、尿素結合を有するジアゾ又はカップリング成分を用いたアゾ系、ジアミンジフェニルアミンアゾ系、連続アゾ型ポリアゾ系、ポリアゾ系、チアゾールアゾ系、顔料スルホン化物系のいずれかの直接染料、或いはキノンイミン系、アゾ系、ポリメチン系、アゾメチン系、ジアゾメチン系、ジアゾトリメチン系、トリアゾトリメチン系、トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、ベンゾチアゾールアゾ系のいずれかの塩基性染料が使用可能である。
【0015】また上記した発明を実現するための器具の発明は、金属粉顔料と染料が混合されたインキが内蔵された塗布具と、所定形状の型とが組み合わされて構成される上記した発明の線図の描画方法に使用する描画器具である。
【0016】本発明の描画器具では、金属粉顔料と染料が混合されたインキが内蔵された塗布具と、所定形状の型とが組み合わされているので、上記した発明を直ちに実施することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下さらに、本発明の実施形態について説明する。図1,2,3は、本発明の線図の描画方法の工程を示す説明図である。図4は、本発明の実施形態で表出された線図の説明図である。図5は、本発明の他の実施形態で表出された線図の説明図である。図6は、本発明の他の実施形態おける線図の描画方法の工程を示す説明図である。図7,8は、図6の実施形態で使用する型の例を示す型の正面図である。図9は、本発明のさらに他の実施形態おける線図の描画方法の工程を示す説明図である。図10は、図9に示す実施形態で表出された線図の説明図である。図11は、図10の一部を拡大した説明図である。図12は、本発明の実施形態の線図の描画器具の斜視図である。
【0018】本発明の実施形態の線図の描画方法では、図1の様に特有のインキが内蔵された塗布具(ボールペン)1を使用する。塗布具1の機械的構造は、公知のボールペンと同様である。またボールペンに代わって、マーキングペンや万年筆も活用可能である。
【0019】ボールペン1に内蔵されたインキは、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたものである。この性質を有するインキには、例えば金属粉含有インキ、二重発色インキ、真珠光沢含有インキが挙げられる。以下、本発明の線図の描画方法の工程説明に先立ち、ボールペン1に内蔵されたインキの性状について詳細に説明する。
【0020】金属粉含有インキは、金属粉顔料含有インキ或いはメタリックインキとも称されるものであり、アルミニウム粉や真鍮粉等の金属粉顔料を含有するインキである。金属粉含有インキにおいて、金属粉顔料としてアルミニウム粉、真鍮粉、銅粉、金粉、銀粉等の何れを用いてもよいが、特にアルミニウム粉顔料を使用するインキを採用した場合に本発明の効果が顕著である。アルミニウム粉顔料は、リーフィングタイプであってもよく、ノンリーフィングタイプであってもよい。具体的には、商品名「アルペーストWJP−U75C」、「アルペーストWE1200」、「アルペーストWXM7675」、「アルペーストWXM0630」(以上、東洋アルミニウム(株)製)、「1110W」、「2172SW」(以上、昭和アルミニウム社製)、「AW−808C」、「AW−7000R」(以上、旭化成社製)等が例示できる。また、「F500−RG」、「F500BG−W」、「F701RE−G」(以上、昭和アルミニウム社製)等の着色アルミニウム系顔料も使用できる。その他の金属粉顔料として、真鍮粉顔料の具体例を挙げると、商品名「BS−605」、「BS−607」(以上、東洋アルミニウム(株)製)、「ブロンズパウダーP−555」、「ブロンズパウダーP−777」(以上、中島金属箔粉工業(株)製)等である。これら金属粉顔料は、1種又は2種以上で使用することができる。これらの金属粉顔料の平均粒径が小さすぎると筆跡の金属光沢が不足し、大きすぎるとペン先等で目詰まりしやすく、インキの流出が悪くなるため、平均粒径が5〜30μm、特に5〜15μmの範囲にある場合、筆記性、印刷適性が優れている。
【0021】また二重発色インキとは、紙に浸透しやすい着色剤と浸透しにくい着色剤の両方を含有するインキであって、例えば、金属粉顔料、水溶性染料、水及び浸透性有機溶剤からなる。このようなインキを紙、布等の溶剤浸透性表面に塗布して文字、記号、図形等を筆記すると、金属粉顔料は筆記されたままの図形等を形成するのに対し、水溶性染料は溶剤とともにその図形等の外側まで浸透拡散し、あたかも図形等に縁取りを施したかの如き外観を呈し、独特の視覚的効果を有する。
【0022】二重発色インキは、前記した様に、紙に浸透しにくい着色剤と、被塗布表面に浸透しやすい着色剤と、水と、水溶性有機溶剤とを、通常含有する。紙に浸透しにくい着色剤として、アルミニウム粉顔料、真鍮粉顔料等の金属粉顔料が好適に用いられる。このような着色剤を含有するインキは一種の金属粉含有インキでもある。インキに含有される金属粉顔料の具体例は上記と全く同一となるので、列挙は省略する。これらの金属粉顔料の平均粒径が小さすぎると筆跡の金属光沢が不足し、大きすぎるとペン先等で目詰まりしやすく、インキの流出が悪くなるため、平均粒径が1〜20μmの範囲にある場合、筆記性が優れている。また、金属粉顔料以外でも、従来水性インキに用いられている通常の顔料は、被塗布表面に浸透しにくい着色剤として使用可能である。この種の顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料や、キナクリドンバイオレット等のキナクリドン系あるいはハンザエロー10G等の不溶性アゾ顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0023】紙に浸透しやすい着色剤としては、溶媒に対する溶解性又は分散性に支障のないものであれば公知の染料、顔料をそのまま用いることができる。そのような染料としては、例えば金属錯塩系染料、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾ系、アセト酢酸アニリドアゾ系、ナフタレン誘導体アゾ系、深色化ジスアゾ系、高性能化ジスアゾ系、キニザリン系、ブロアミン系、アントラキノン系、ニトロ系等の酸性染料;銅フタロシアニン系、ベンジン系、トリジン系、ジアニシジン系、スチルベンゾアゾ系、尿素結合を有するジアゾ又はカップリング成分を用いたアゾ系、ジアミンジフェニルアミンアゾ系、連続アゾ型ポリアゾ系、ポリアゾ系、チアゾールアゾ系、顔料スルホン化物系等の直接染料;ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、アクリジン系、ジ(トリ)アリルメタン系、キノンイミン系、キサンテン系、アゾ系、ポリメチン系、アゾメチン系、ジアゾメチン系、ジアゾトリメチン系、トリアゾトリメチン系、トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、ベンゾチアゾールアゾ系等の塩基性染料が挙げられる。また上記した塩基性染料と一部重複するが、カルボニウム系染料に分類されるものも使用可能である。顔料としては、例えばフタロシアニン、ジオキサジン、カーボン等が使用できる。さらに、蛍光顔料等の顔料も使用できる。これら着色剤は1種でも2種以上でも用いることができる。
【0024】水溶性有機溶剤としては、例えばアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類等が挙げられる。さらに具体的には、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール等が好適に使用することができる。
【0025】真珠光沢顔料含有インキとは、雲母を微細な粉末にし、その表面を酸化チタン及び酸化鉄などの高屈折率の金属酸化物で被覆して安定化させて製造したいわゆる真珠光沢顔料を含むインキである。このインキにおいては、高屈折率の金属酸化物の層と、低屈折率の雲母および周りの媒体との境界で反射した光が真珠状または金属状の光沢をかもしだすものである。
【0026】真珠光沢顔料含有インキに含有される真珠光沢顔料を具体的に例示すれば、商品名「Iriodin100」、同103、同111、同120、同123、同151、同153、同163、同173、同201、同211、同221、同223、同231、同205、同215、同217、同219、同225、同235、同249、同259、同289、同299、「Timiron MP−115」、同MP−1001、同MP−47、同MP−1005、同MP−10、同MP−45SP、「Extender W」(以上全てメルクジャパン社製)等が挙げられる。真珠光沢顔料含有インキには、上記のような真珠光沢顔料のほか、公知の染料及び又はカーボンブラックを含有させることによって、多種類の色調を選択することができる。また、いわゆる着色型真珠光沢顔料である商品名「Iriodin300」、同302、同303、同306、同309、同320、同323、同351、同355、同500、同502、同504、同505、同507、同520、同522、同524、同530、同532、同534、「Timiron MP−25」、同MP−20、「Colorona Bronze」、「Colorona Light Blue」、「Colorona Platina Silver」(以上全てメルクジャパン社製)等を用いれば、染料等を添加しないでも多種類の色調を選択することができ、しかも、耐光性、耐水性に優れたインキが製造できる。これらの真珠光沢顔料の平均粒径が小さすぎると筆跡の光沢が不足し、大きすぎるとペン先等で目詰まりしやすく、インキの流出が悪くなるため、平均粒径が5〜60μmの範囲にある場合、筆記性、印刷適性が優れている。
【0027】また水性インキには、粘度調整のため、増粘剤が添加されることが通常であるが、ボールペン1に内蔵するインキの増粘剤として、チキソトロピー性の多糖類又はその誘導体を用いることができる。増粘剤としてチキソトロピー性の多糖類又はその誘導体を用いると、チキソトロピーの性質を有する、いわゆる「ゲルタイプ」のインキを容易に調製することができる。これは、ボールペンに用いたとき、回転するボールによりインキの粘度が低下することを意味するので、水性ボールペン用のインキとして有用な性質である。
【0028】増粘剤としては、特に、天然多糖類又はその誘導体、即ち、微生物産系多糖類又はその誘導体、水溶性植物系多糖類又はその誘導体、水溶性動物系多糖類又はその誘導体等を用いることが好ましい。微生物産系多糖類又はその誘導体としては、例えば、プルラン、キサンタンガム(ザンサンガム)、ウェランガム、ラムザンガム、サクシノグルカン、デキストラン等が挙げられる。水溶性植物系多糖類又はその誘導体としては、例えば、トラガンシガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、ガティガム、アラビノガラクタンガム、アラビアガム、クイスシードガム、ペクチン、デンプン、サイリュームシードガム、カラギーナン、アルギン酸、寒天等が挙げられる。水溶性動物系多糖類又はその誘導体としては、例えば、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。
【0029】これら増粘剤の中でも、特に微生物産系多糖類又はその誘導体がインキに含有される場合に、アルミニウム粉顔料に対する保存性が良く、塗布具は筆記性に優れる。特にラムザンガムがアルミニウム粉顔料に対する保存性の点で推奨される。ラムザンガムとしては三晶株式会社製商品名「K7C233」が好適に使用できる。
【0030】インキ組成物の粘度は、金属粉含有インキにおいては、20°Cにおいて2000〜40000mPa・sに調整するとアルミニウム粉顔料等の金属粉顔料が沈降せず、筆記、印刷適性が優れたインキ組成物を得ることができる。特に最適な範囲として、20°Cにおいて3000〜15000mPa・sに調整することが好ましい。なお、本明細書に記載する粘度は、全てELD型粘度計でコーンロータ(3°コーンR14)を用い0.5rpmにより測定したものである。二重発色インキにおいては、20°Cにおいて1000〜10000mPa・sに調整すると金属粉顔料等が沈降せず、筆記、印刷適性が優れたインキ組成物を得ることができる。特に最適な範囲として、20°Cにおいて2000〜5000mPa・sに調整することが好ましい。真珠光沢顔料含有インキにおいては、20°Cにおいて2000〜40000mPa・sに調整するとアルミニウム粉顔料等が沈降せず、筆記、印刷適性が優れたインキ組成物を得ることができる。特に最適な範囲として、20°Cにおいて3000〜15000mPa・sに調整することが好ましい。
【0031】多糖類の使用量の適量としては、例えば、インキ組成全量に対して0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜2重量%である。多糖類の使用量が少なすぎると、金属粉等の顔料の分散性が低下し、顔料が沈降しやすくなる。一方、使用量が多すぎると、インキの粘度が高くなりすぎて、筆記性、印刷適性が低下する。
【0032】インキには、必要に応じ、安定化剤を添加する。安定化剤としては、例えば、安息香酸のナトリウム塩などのカルボン酸のナトリウム塩が挙げられる。なお、インキには、従来と同様、染料、界面活性剤、分散剤、防腐剤、PH調整剤、防錆剤、消泡剤等の添加剤を添加してよい。
【0033】次に、本発明の線図の描画方法の具体的工程について説明する。本実施形態の線図の描画方法では、ボールペン1によって、紙2の所定の範囲にインキを塗布する。具体的には、図2に示すように、紙2の一部又は全部にインキをべた塗りする。ここで、本実施形態で塗布されたインキは、染料5等の紙2に対する付着力が強いもの(図2において、小さい点で示す)と、金属粉6等の紙2に対する付着力が弱いもの(図2において、大きい点で示す)が混在している。従って、紙2の色は、染料5と金属粉6とが入れ混じった、両者の中間的な色調となる。
【0034】続いて本実施形態では、図3の様に消しゴム7を紙2に押し当て、消しゴム7でインキの塗膜をこすりつつ、所望の線図を描く。たとえば、「サクラ」の文字を描く。その結果、消しゴム7によって、インキの塗膜から金属粉6だけが除かれ、紙2上に、「サクラ」の文字が浮き出る。すなわち紙2の大部分は、染料5と金属粉6とが入れ混じった、中間的な色調であり、多くの場合、金属光沢のある色であるのに対し、消しゴム7によってこすった部位は、表面の金属粉6が除去され、染料5の色が鮮明に浮き出る。そのため紙2に「サクラ」の文字が浮き出る。
【0035】上記した例は、紙2にインキをべた塗りして消しゴム7でこすった例を説明したが、紙2に文字等の線図を描いた上で、消しゴム7でこすっても、興味ある表現を行うことができる。図5は、紙2に文字等の線図を描いた上で、消しゴム7でこすった例を示すものである。すなわち図5に示す例では、ボールペン1により、紙に「サクラ」の文字を描く。そしてそのインキの文字を、消しゴム7で「クレパス」の文字軌跡を描いてこする。その結果、図5の様に、「サクラ」の文字の一部に「クレパス」の文字が浮き出る。すなわち「サクラ」の文字部分は、染料5と金属粉6とが入れ混じった中間的な色調であるのに対し、「クレパス」の文字部分は、金属粉6が除かれて染料5単独の色調となる。
【0036】また「クレパス」の様な文字だけでなく、ハートの様な図形10を入れることもできる。図形は、例えばハートの形の軌跡を辿って消しゴム7を動かしてもよいが、例えばテンプレートや、字消し板の様な所定形状の穴が設けられた型板を使用すれば、より容易に表出させることができる。すなわち、図6の様に、紙2の上に、型板11を乗せ、型板11の開口12を消しゴム7でこする。その結果、開口12の部分でのみ消しゴム7がインキと接し、ハート形の部分のみの金属粉6が除かれる。型板の形状としては、図7,8に示すような各種のものが採用可能である。
【0037】また前述した各種インキの中で、二重発色インキを採用した場合には、さらに特有の視覚効果が得られる。二重発色インキを内蔵するボールペン1で、紙2に線20を描くと、図9(a)の様に中間部に金属粉等と染料が入り交じった線21が描かれ、線21の両側に染料のみの線22,23が縁取り状に滲み現れる。そして線20を消しゴム7でこすると、こすられた部位の中央の線21から金属粉だけが除かれる。その結果、こすられた部位は、他の部位と明らかに異なる色調となる。また当該部分の色調は、縁取り状に現れた滲み部分の線22,23とも異なる。したがって線20を消しゴム7でこすることにより、金属粉等と染料が入り交じった色調部分25と、染料だけが現れた色調部分26と、滲み部分の線22,23の三色の色調が現れる。
【0038】例えば、図10の様に「サクラクレパス」の文字を筆記具1で多数描き、さらにその上にハート形の型板10を載せて、消しゴム7でこすると、ハートの部分に、染料だけが現れた色調部分26と、滲み部分の線22,23の二色の色調となり、他の部位は金属粉等と染料が入り交じった色調部分25と、滲み部分の線22,23の二色の色調となる。より詳細に図解すると、図11の様に、「ラ」の文字の右側は、染料だけが現れた色調部分26と、滲み部分の線22,23の二色の色調となり、他の部位については、金属粉等と染料が入り交じった色調部分25と、滲み部分の線22,23の二色の色調となる。
【0039】以上説明した実施形態では、インキを消しゴム7によってこする例を説明した。消しゴム7の使用は、消しゴムが剥離効果が高いものであることから推奨されるが、例えば通常のゴムや、布を使用してインキをこすっても、相当の効果が期待できる。実施形態で使用するボールペン1と、消しゴム7及び型板11は一つの箱や袋30に入れて、セット状態で販売したり、持ち運ばれることが望ましい(図12)。
【0040】
【発明の効果】本発明の線図の描画方法は、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキを塗布具によって紙に塗布し、さらに所望の線図に沿って前記インキをこすることにより、所望の線図を浮き立たせることができ、従来に無かった視覚効果を得ることができる。
【0041】また塗布されたインキの上に、型を置き、さらにその型の上からインキをこすることにより、同一の図形を容易に表出することができる効果がある。さらに金属粉顔料と染料が混合されたインキが内蔵された塗布具と、所定形状の型とが組み合わされてなる請求項1に記載の線図の描画方法に使用する描画器具は、持ち運びに便利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の線図の描画方法の工程を示す説明図である。
【図2】本発明の線図の描画方法の工程を示す説明図である。
【図3】本発明の線図の描画方法の工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態で表出された線図の説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態で表出された線図の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態おける線図の描画方法の工程を示す説明図である。
【図7】図6の実施形態で使用する型の例を示す型の正面図である。
【図8】図6の実施形態で使用する型の例を示す型の正面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態おける線図の描画方法の工程を示す説明図である。
【図10】図9に示す実施形態で表出された線図の説明図である。
【図11】図10の一部を拡大した説明図である。
【図12】本発明の実施形態の線図の描画器具の斜視図である。
【符号の説明】
1 塗布具(ボールペン)
2 紙
5 染料
6 金属粉
7 消しゴム
11 型板
12 開口
20 線
21 金属粉等と染料が入り交じった線
22,23 滲み部分の線
25 金属粉等と染料が入り交じった色調部分
26 染料だけが現れた色調部分
30 袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】 紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキを塗布具によって紙に塗布し、さらに所望の線図に沿って前記インキをこすることを特徴とする線図の描画方法。
【請求項2】 塗布具はボールペン又はマーキングペンであり、紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、金属粉含有インキ、二重発色インキ、真珠光沢含有インキのいずれかであり、前記インキは塗布具に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載の線図の描画方法。
【請求項3】 消しゴムをもってインキをこすることを特徴とする請求項1又は2に記載の線図の描画方法。
【請求項4】 インキを紙に対して一様に塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項5】 インキを紙に対して所望の線図を描いて塗布することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項6】 塗布されたインキの上に、型を置き、さらにその型の上からインキをこすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項7】 紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキには、増粘剤として、チキソトロピー性の多糖類又はその誘導体が配合されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項8】 紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、真珠光沢含有インキであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項9】 紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、紙に対する付着力が弱い顔料又は染料として、カーボンブラック、金属酸化物又は有機顔料が含有されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項10】 紙に対する付着力が異なる二以上の顔料又は染料が混合されたインキは、紙に対する付着力が強い染料として、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾ系、アセト酢酸アニリドアゾ系、ナフタレン誘導体アゾ系、深色化ジスアゾ系、高性能化ジスアゾ系、キニザリン系、ブロアミン系、ニトロ系のいずれかの酸性染料、又は銅フタロシアニン系、ベンジン系、トリジン系、ジアニシジン系、スチルベンゾアゾ系、尿素結合を有するジアゾ又はカップリング成分を用いたアゾ系、ジアミンジフェニルアミンアゾ系、連続アゾ型ポリアゾ系、ポリアゾ系、チアゾールアゾ系、顔料スルホン化物系のいずれかの直接染料、或いはキノンイミン系、アゾ系、ポリメチン系、アゾメチン系、ジアゾメチン系、ジアゾトリメチン系、トリアゾトリメチン系、トリアゾールアゾ系、チアゾールアゾ系、ベンゾチアゾールアゾ系のいずれかの塩基性染料が含有されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の線図の描画方法。
【請求項11】 金属粉顔料と染料が混合されたインキが内蔵された塗布具と、所定形状の型とが組み合わされてなる請求項1乃至10のいずれかに記載の線図の描画方法に使用する描画器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2000−355200(P2000−355200A)
【公開日】平成12年12月26日(2000.12.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−101434(P2000−101434)
【出願日】平成12年4月3日(2000.4.3)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)