線幅測定調整方法及び走査型電子顕微鏡
【課題】倍率、走査方向や測定装置を変更しても、測定結果の変動が生じない線幅測定調整方法及び走査型電子顕微鏡を提供すること。
【解決手段】線幅測定調整方法は、第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含む。前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うようにしてもよい。
【解決手段】線幅測定調整方法は、第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含む。前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うようにしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いたパターンの線幅測定における線幅測定調整方法に関し、特に、倍率を変更した場合にも測定値が変動しない線幅測定調整方法及び走査型電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンの線幅測定方法として、走査型電子顕微鏡による測定が行われている。走査型電子顕微鏡では、電子線走査範囲内に入射電子を走査させながら照射し、シンチレータを介して試料から放出される二次電子を取得し、取得した電子の電子量を輝度に変換して表示装置に表示している。
【0003】
このような走査型電子顕微鏡を用いて半導体装置の特性を管理する場合に、パターンの線幅が設計基準値内に形成されているか否かの作業を行うことが一般に採用されている。パターンの線幅の管理は、次のような手順によって行われている。半導体ウエハ上に形成されたレジストパターンの所定範囲をディスプレイに表示した後、その表示範囲内の測定ポイントに照準を当てて電子ビームを照射し、測定ポイントから反射された二次電子に基づいて輝度分布の波形を取得する。そして、輝度分布の波形の高レベル部分の幅を線幅と判断する。この線幅が許容誤差の範囲内にあるか否かを判断し、許容誤差の範囲内であれば、次のエッチング工程に移る。また、許容誤差の範囲内でなければレジストパターン形成の処理工程に戻される。
【0004】
このように、パターンの線幅の測定は、半導体装置の製造工程において重要であり、線幅を正確に測定するための種々の手法が提案されている。一般的に、二次電子量に対応する輝度の傾きが最大となる位置をパターンのエッジ位置としている。
【0005】
また、これに関連する技術として、特許文献1では、二次電子信号が極小値をとる位置をエッジ位置とみなすエッジ検出方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−296754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、走査型電子顕微鏡を使用してパターンの線幅測定をする場合には、輝度の傾きが最大となる位置をエッジ位置としたり、二次電子信号が極小値をとる位置をエッジ位置とする方法が採用されている。
【0007】
しかし、観察倍率を変えて測定する場合や、走査方向を変えたり、測定装置を変える事によって電子ビームのビーム径が異なる場合には、同じ測定対象であっても異なる測定結果になってしまうという不都合が生じる。
【0008】
観察倍率を変えた場合には、次のように測定結果が異なる現象が発生する。例えば、観察倍率を上げると、観察倍率が低いときに比べて単位時間あたりの電子ビームの移動量が小さくなり、一定時間に電子ビームが照射される領域が小さくなる。一般に、電子ビームが照射される領域の大小によって検出されるエッジの位置が変化し、線幅の測定結果が異なる。従って、観察倍率が高いときと観察倍率が低いときとでは、線幅の測定結果が異なるという現象が生じる。
【0009】
また、ビーム径が異なる場合も、電子ビームが照射される領域が異なるため、上記の観察倍率を変えた場合と同様に、同じ線幅を測定した場合であっても、線幅の測定結果が変動してしまうことになる。
【0010】
このような問題に対して、従来は、観察倍率毎に線幅の校正データを取得しておき、線幅の相関を取って対応していた。また、ビーム径が異なる場合には、同一の試料を用いて線幅を測定し、測定値が異なる場合に、ビーム径を再調整していた。このように、同一パターンに対する線幅の測定結果を変動させないようにするために、手間がかかり、線幅の測定処理を効率良く行うことが困難であった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、目的は、観察倍率、走査方向や測定装置を変えても、測定結果が変動しないようにするための線幅測定調整方法及びこの線幅測定調整機能を有する走査型電子顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題は、第1の倍率において走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の倍率において走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0013】
この形態に係る線幅測定調整方法において、前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、前記第1の電子ビーム強度分布の重心と前記第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めてもよく、前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行ってもよい。
【0014】
本発明では、倍率が異なるために単位時間あたりの走査移動距離が異なるときに、それぞれの移動距離によって照射される電子ビームの分布を示す電子ビーム強度分布が同等となるように、電子ビーム強度分布を調整している。これにより、観察倍率を変えて線幅測定した場合であっても、電子ビームが照射される走査方向の距離がほぼ等しくなり、線幅の測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0015】
また、このような電子ビーム強度分布の調整を行うことにより、試料の広い範囲を測定対象とする低い観察倍率であっても、高い観察倍率で測定した結果と同じ値を得ることができ、広い範囲で線幅測定を効率良く行うことが可能となる。
【0016】
また、上記した課題は、第1のビーム径の電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2のビーム径の電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0017】
また、上記した課題は、第1の方向に走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の方向に走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の方向に走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の方向に走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0018】
本発明では、異なる走査型電子顕微鏡の使用により、電子ビームのビーム径が異なる場合に、電子ビーム強度分布を調整して電子ビームが照射される距離を同等にしている。これにより、電子顕微鏡間で測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。また、本発明では、電子ビーム形状が真円でなく、走査方向により電子ビームのビーム径が異なって見える場合に、走査方向に対する電子ビーム強度分布を調整して電子ビームが照射される距離を同等にしている。これにより、走査方向で測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0019】
また、本発明の他の形態によれば、上記の形態に係る線幅測定調整方法を実施する走査型電子顕微鏡が提供される。その一形態に係る走査型電子顕微鏡は、電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部とを備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
はじめに、走査型電子顕微鏡の構成について説明する。次に、一般的なパターンの線幅の測定方法について説明する。次に、観察倍率等が変更された場合の線幅測定のための調整方法について説明する。最後に、本発明の線幅測定調整方法を適用した線幅測定について説明する。
【0022】
(走査型電子顕微鏡の構成)
図1は、本実施形態に係る走査型電子顕微鏡の構成図である。
【0023】
この走査型電子顕微鏡100は、電子走査部10と、信号処理部30と、画像表示部40と、電子走査部10、信号処理部30及び画像表示部40の各部を制御する制御部20とに大別される。このうち、電子走査部10は、電子銃1とコンデンサレンズ2と偏向コイル3と対物レンズ4と移動ステージ5と試料ホルダ6とを有している。
【0024】
電子銃1から照射された荷電粒子9をコンデンサレンズ2、偏向コイル3、対物レンズ4を通して移動ステージ5上の試料7に照射するようになっている。
【0025】
荷電粒子9が照射されて試料7から出た二次電子又は反射電子の量は、シンチレータ等で構成される電子検出器8によって検出され、信号処理部30においてその検出量はAD変換器によってデジタル量に変換され、さらに輝度信号に変換されて画像表示部40で表示される。
【0026】
偏向コイル3の電子偏向量と画像表示部40の画像スキャン量は制御部20によって制御される。また、制御部20には、線幅測定を実行するためのプログラムが格納されている。
【0027】
(一般的なパターンの線幅の測定方法)
次に、図1に示した走査型電子顕微鏡100を用いて、図2に示す試料のパターンの線幅を測定する一般的な方法について説明する。
【0028】
試料7は、図2に示すように、半導体ウエハ上に下地層50が形成され、その上に配線パターン51が形成されたものを使用する。この配線パターン51が寸法管理の対象とするパターンである。試料7の一部は図2(a)に示すような平面形状となっている。ここで、破線52で囲んだ部分は、走査型電子顕微鏡100の観察領域を示している。
【0029】
図2(b)は、図2(a)に示す試料上に電子ビームを走査して得られる2次電子等の電子量を電子検出器によって検出し、検出した電子量を輝度信号に変換し、電子ビームの走査とCRTの走査とを同期させて画像表示した例を示している。
【0030】
図2(c)は、図2(a)のI−I線に沿って電子ビームを照射したときに得られる試料から放出あるいは反射される電子量を示した図である。
【0031】
電子ビームの照射によって試料から放出される2次電子等の電子量は、試料表面状態によって異なる。試料に対して電子ビームが垂直に照射される場合、試料の表面が平坦であれば放出される電子は少なく、試料の表面が傾斜していれば、斜面の低い側から横向きに出た2次電子は、試料内部を移動する距離が短いため、平坦なときよりも放出される電子は多くなる。また、放出または反射する電子の量は、電子ビームが照射される材質によって異なる。
【0032】
図2(c)に示すように、配線パターンが形成されていない平面の領域では輝度に変換された信号量は小さく、配線パターンが形成されている領域では信号量は大きくなっている。また、配線パターンが形成されていない領域と配線パターンが形成されている領域との境界(エッジ)では信号量の変化が大きくなっている。このようなエッジの位置を算出して、線幅を測定する。
【0033】
以上説明したように、試料の表面状態は、試料上に電子ビームを走査し、試料表面から放出される2次電子等の電子量を用いて算出している。試料のどの点における電子量を用いるかによって、表面状態を表す電子顕微鏡像が異なる。例えば、表面上の2次電子等の電子量を取得する点の間隔が狭い方が、間隔が広いときよりも精密に表面状態を表すことができる。この2次電子等の電子量を取得する点を測定点と呼ぶ。なお、観察倍率が高いときは観察倍率が低いときよりも測定点の間隔は狭くなる。観察倍率が高いときは観察倍率が低いときよりも狭い範囲を走査するが、その走査時間は変わらないからである。
【0034】
また、試料の表面状態を示す値として、ある測定点xにおける2次電子等の電子量だけでなく隣接する測定点における2次電子等の電子量を用いる場合もある。この場合、例えば、これらの測定点における値を加算平均し、測定点xにおける試料の表面状態を示す値としている。これにより、試料の表面状態を表す値が平滑化される。
【0035】
(観察倍率等が変更された場合の線幅測定のための調整方法)
次に、観察倍率が異なっても、同一パターンの測定結果が同じになるようにする線幅測定のための調整方法について説明する。
【0036】
図3は2つの異なる倍率で電子ビームを走査したときに得られる電子ビーム強度分布を示している。電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査したときの、走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の照射点の電子ビーム量で表される。例えば、図3(a)は、電子ビームが照射される走査方向の距離が5のときの単位距離毎の電子ビーム量を示す電子ビーム強度分布であり、図3(b)は、電子ビームが照射される走査方向の距離が3のときの単位距離毎の電子ビーム量を示す電子ビーム強度分布である。
【0037】
なお、図3(a)は図3(b)よりも観察倍率が低い場合であって、図3(a)と図3(b)の走査時間が同じ場合の一例を示している。図3に示すように、電子ビームが照射される走査方向の距離は、観察倍率と走査時間によって決まり、観察倍率を変えれば、走査時間が同じであっても走査距離は異なる。そのため、異なる走査距離を電子ビームが照射したときに試料から放出される2次電子量が異なり、同一パターンであっても測定結果が異なる。
【0038】
本実施形態では、基準とする観察倍率及び基準と異なる観察倍率のそれぞれについて予め決められた距離を走査したとしたときの電子ビーム強度分布を求め、基準と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布を基準の観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布と同等にするように調整する。基準と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布の調整は、基準と異なる観察倍率について予め決められた距離を走査したときに得られる画像から、電子ビーム強度分布を作成するときに、電子ビームの照射距離を増減して行う。これにより、観察倍率が異なっても電子ビームが照射される走査方向の距離が同じになるようにする。
【0039】
例えば、図3(a)の電子ビーム強度分布を基準としたとき、図3(b)の電子ビーム強度分布を調整して図3(a)の電子ビーム強度分布と同等な分布にする。この調整において、電子ビームが走査方向に照射される距離が図3(a)に近い値になるように図3(b)の走査距離を変えて調整する。
【0040】
2つの電子ビーム強度分布が同等か否かは、電子ビーム強度分布を表す値を比較して判断する。電子ビーム強度分布を表す値は、電子ビーム強度分布を走査方向に沿って2等分し、2等分した分布のそれぞれについて重心を算出し、算出した重心間の距離差とする。
【0041】
以下に、図4を参照して、電子ビーム強度分布の数値化について説明する。
【0042】
図4(a)は、電子ビーム強度分布の一例を示しており、各単位距離毎の照射点の電子ビーム量は、単位電子ビーム量(‘○’で表す)の個数で表している。図4(a)の電子ビーム強度分布は、照射点の座標(走査方向の座標)が1から9までの広がりを有している。また、例えば、照射点3の電子ビーム量は2である。
【0043】
まず、図4(a)に示す電子ビーム強度分布を、図4(b)に示すように電子ビームの走査方向に沿って前方分布と後方分布に2等分する。図4(b)において、前方分布は座標軸上の5から9、後方分布は座標軸上の1から5となる。
【0044】
次に、図4(b)に示した電子ビーム強度分布において、前方分布及び後方分布を数値化する。
【0045】
前方分布の値は、電子ビームの照射点を示す走査方向の座標値とその照射点に照射される単位電子ビームの合計値とを乗算した値をその照射点における電子ビーム量とし、前方分布内の各照射点における電子ビーム量の総和を前方分布内に照射される単位電子ビーム量の合計で除した値としている。同様に、後方分布の値は、電子ビームの照射点を示す走査方向の座標値とその照射点に照射される単位電子ビームの合計値とを乗算した値をその照射点における電子ビーム量とし、後方分布内の各照射点における電子ビーム量の総和を後方分布内に照射される単位電子ビーム量の合計で除した値としている。
【0046】
このように、前方分布及び後方分布の値は、各分布の走査方向の座標軸上の重心位置を示しており、次に示す式で表される。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【0047】
この計算の結果、図4(b)に示すように、電子ビーム強度分布の前方分布の重心(X0R)と後方分布の重心(X0L)との距離差は3.46となる。
【0048】
なお、本明細書において、電子ビーム強度分布の前方分布の重心と後方分布の重心との距離差を実効照射移動距離とも呼ぶ。
【0049】
(実施例1)
次に、異なる2つの倍率における電子ビーム強度分布を同等にする方法を説明する。
【0050】
まず、図5及び図6を参照して電子ビーム強度分布の算出について説明する。その後、図6、図7及び図8を参照して電子ビーム強度分布の調整について説明する。
【0051】
(1)電子ビーム強度分布の算出
電子ビームはビーム径で決まる大きさの電子ビームを照射しながら移動しているため、試料表面上の測定点xに照射された電子ビームによって放出される二次電子だけを検出することはできない。電子ビームは、測定点xを通過して走査方向に進んだ部分にも電子ビームが照射され、走査方向に進んだ部分に照射された電子ビームによって放出される二次電子も検出することになるからである。このように、電子ビームは測定点から走査方向に一定の広がりを持つため、測定点における電子量はその測定点から得られる電子量だけではなく、電子ビームが広がる範囲から得られる電子量も含まれる。
【0052】
図5は、電子ビームが時間t1でx=1の測定点を通過するときの、電子ビームの走査方向の広がりをモデル化する説明図である。ここで、電子ビームは、ビーム径で決まる大きさの単位電子ビームからなるものとし、電子ビームの広がりは単位電子ビームが2単位時間進む距離とする。
【0053】
図5(a)は、倍率が低い場合であり、5単位の距離、すなわち、単位電子ビーム5個分(B1,B2,B3,B4,B5)の距離まで電子ビームが広がって照射されることを示している。この広がった範囲の電子ビームは、「測定点から走査速度に依存した距離だけ走査方向に広がる電子ビーム」であり、以下、「拡張電子ビーム」と呼ぶ。図5(b)は倍率が高い場合であり、拡張電子ビームは、3単位の距離、すなわち、単位電子ビーム3個分(B6,B7,B8)の距離に広がる。
【0054】
図6は、ある倍率において、測定点の数が3、すなわち測定時間tが1、2、3のときに測定する場合の電子ビーム強度分布を説明する図である。図6(a)は、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものであり、拡張電子ビームの遷移の1行目は、ある時点(t=1)で試料に照射される電子ビーム、2行目は、1行目の時点から一定の微小時間を経過して移動したときの試料に照射される電子ビームを表している。3行目も同様に、2行目の時点から一定の微小時間を経過して移動したときの試料に照射される電子ビームを表している。
【0055】
図6(b)は、各単位距離毎に電子ビーム量を合計して求めた、電子ビーム強度分布である。測定点が3点の場合に、電子ビームが照射される走査方向の距離は、照射点の座標が1から9までとなることを示している。また、例えば、照射点が5の点では電子ビーム量が3になることを示している。
【0056】
(2)電子ビーム強度分布の調整
次に、図6で求めた電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布として、図6と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布を調整する処理について説明する。なお、図6(b)の電子ビーム強度分布は図4(a)の電子ビーム強度分布と同一であり、実行照射移動距離SPIDは3.46である。
【0057】
図7は、基準電子ビーム強度分布を求めるときに使用した観察倍率(基準倍率とする)に対して観察倍率を2倍にした場合の拡張電子ビームの遷移を示したものである。
【0058】
図7(a)は、図6(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。図7(a)は、図6(a)に比べて観察倍率が2倍であるため、測定時間における測定点(照射点)の間隔が狭くなっている。
【0059】
図8は、図7の電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布と同等にする処理のフローチャートである。
【0060】
はじめに、図8のステップS1において、初期設定をする。初期設定では、測定点数Nを1とおく。また、予め基準となる基準実効照射移動距離SPIDを算出する。ここでは図6に示した電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布とし、基準実行照射移動距離SPIDは3.46である。
【0061】
次のステップS2では、測定点数がNのときの実効照射移動距離PIDを算出する。
【0062】
次のステップS3では、実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとを比較する。実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとの差の絶対値が所定の値α(例えば0.2)よりも小さいと判定されたとき、ステップS5に移行し、測定点数をNと決定して本処理は終了する。一方、実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとの差の絶対値が所定の値αよりも大きいと判定されたときは、ステップS4に移行する。
【0063】
次のステップS4では、測定点数Nを1増やし、ステップS2に戻り測定点数算出処理を続行する。
【0064】
図7(b)は、測定点数が3の場合の計算結果を示している。測定点数が3のときは、電子ビーム強度分布値は、1.78となり、基準電子ビーム強度分布値と大きく異なる。
【0065】
図7(c)は、測定点数が7のときの結果であり、実効照射移動距離と基準実効照射移動距離とが近似する。
【0066】
この場合には、被測定対象の電子量を算出する際に、測定点数を7とする。すなわち、所定の測定点を含んだ隣接する前後7つの測定点に電子ビームが照射されたときに検出される電子量を用いて、所定の演算(例えば、加算平均)をして、当該位置における電子量とする。これにより、倍率を変えて被測定対象を観察した場合であっても、電子ビームが照射される範囲をほぼ等しくすることができ、測定データの変動を抑制することができる。
【0067】
(実施例2)
実施例2では、ビーム径が異なる電子ビームによって走査したときに得られる2つの電子ビーム強度分布を同等にする方法について説明する。
【0068】
図9は、拡張電子ビームが照射される距離を6単位の距離で表したときの、電子ビーム強度分布を算出する説明図である。又、図10は、図9におけるビーム径よりも大きいビーム径の電子ビームを使用したときの電子ビーム強度分布を図9の電子ビームと同等にする処理を説明する図である。
【0069】
拡張電子ビームが照射される距離は、電子ビームの走査速度だけではなく、電子ビームのビーム径にも依存する。例えば、基準の電子ビームのビーム径が半径aであり、対象とする電子ビームのビーム径が半径b(>a)であるとする。拡張電子ビームが照射される距離を6単位の距離としたとき、半径bのビーム径を持つ電子ビームによる拡張電子ビームの方が半径aのビーム径を持つ電子ビームによる拡張電子ビームよりも照射される距離が長くなる。計算の便宜上、半径bのビーム径についても、半径aのビーム径の単位電子ビームを用いて拡張電子ビームを表す。例えば、図10に示すように、拡張電子ビームが照射される距離を7単位の距離とする。
【0070】
図9(a)は、図6(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。
【0071】
図9(b)は、測定点を3点とした場合の電子ビーム強度分布であり、図9(c)は、図9(b)で求めた電子ビーム強度分布の値を求めた図である。
【0072】
図10(a)は、図9(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。
【0073】
ここで、基準となる実効照射移動距離は図9(c)に示すように、3.89である。これに対し、測定点数を3点とした場合の実効照射移動距離は、図10(b)に示すように、4.19である。従って、このまま測定点数を3点とすると、基準の測定値と異なる値となる。
【0074】
実効照射移動距離を基準の実効照射移動距離と一致させるために、本実施例では、調整係数を用いて電子ビーム照射量を調整する。この調整係数は、拡張電子ビームの電子ビーム照射量を調整する値である。この調整係数を、電子ビーム強度分布を形成する両端の拡張電子ビームに乗じることにより実効照射移動距離を基準の実効照射移動距離と一致させる。
【0075】
本実施例の場合は、実効照射移動距離を4.19から基準値3.89に近づけるために、拡張電子ビームの電子ビーム照射量の値を小さくする。図10(c)に示すように、実効照射移動距離が3.89になるように調整係数を求める。すなわち、測定点の最初と最後の電子ビーム照射量を基準の1に対して0.68とすることにより、実行照射移動距離を3.89にすることができる。
【0076】
この調整係数を基に測定点数を計算する。すなわち、拡張電子ビームC1,C2,C3を合成して得た電子ビーム強度分布に対し、C1,C3を構成する単位電子ビーム量を0.68倍する。計算の結果、0.68×1+1+0.68×1=2.36となり、測定点数を2.36とすることにより実効照射移動距離が基準の実効照射移動距離3.89と等しくなることが導かれる。従って、この場合には、被測定対象の電子量を算出する際に、測定点数を2.36として算出すればよい事になる。これにより、電子ビーム径が異なる測定装置を使用する場合であっても、上記のように調整することにより、電子ビームの照射範囲が基準のビーム径の電子ビームを使用した場合とほぼ等しくなるため、測定データの変動を防止することができる。
【0077】
また、図11に示すように、電子ビームの形状が真円でない場合に、走査方向の違いによって生ずるビーム径の差も本実施例と同様な調整をすることで、走査方向の違いによる測定データの変動も防止することができる。
【0078】
なお、走査型電子顕微鏡100の制御部20は、例えばマイクロコンピュータで構成され、上記測定点数の調整処理は、走査型電子顕微鏡100の制御部20に格納されているプログラムを用いて行う。
【0079】
また、上記した電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム走査によって得られる2次電子の強度分布画像において、照射点の2次電子量を電子ビーム量とみなし、電子ビーム強度分布を生成するときに行っても良い。
【0080】
(線幅測定)
以下に、異なる観察倍率であっても電子ビーム強度分布が一定となるようにする方法を適用した、線幅測定について図12及び図13のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
図12は運用のための基準値を決定する処理の流れを示しており、図13は線幅測定を行う処理の流れを示している。
【0082】
走査型電子顕微鏡100を用いて線幅を測定する前に、図12に従って運用のための基準値を決定する。
【0083】
まず、ステップS11で、初期測定点数テーブルを作成する。初期測定点数テーブルは、図14(a)に示すように、走査型電子顕微鏡100の各倍率における測定点数を規定するものである。測定点数の決定は、本実施形態で示した方法を用いて行う。
【0084】
次のステップS12では、ステップS11で求めた初期測定点数を線幅の測定の際に使用する運用測定点数とする。図14(b)に、運用測定点数テーブルの一例を示す。
【0085】
次のステップS13では、走査型電子顕微鏡100の光軸を調整する。
【0086】
次のステップS14では、基準線幅Wrを求める。基準線幅Wrは実際の線幅測定の際に走査型電子顕微鏡が正常に機能するか否かの判定基準として使用される。基準線幅Wrは、基準測定対象物を予め決めた基準倍率(例えば、50000倍)で、初期測定点数テーブルを適用して測定する。図14(c)に、基準線幅テーブルの一例を示す。図14(c)では、基準倍率50000倍で求めた基準線幅Wrが210nmであることを示している。
【0087】
以下に、図13を用いて、実際に線幅を測定する処理について説明する。
【0088】
まず、ステップS21において、運用基準値を決定する際に使用した基準測定対象物を用い、基準倍率で試料の表面状態を表すラインプロファイルデータDpを取得する。ラインプロファイルデータDpを取得したときの時間をT1とする。
【0089】
次のステップS22において、ステップS21で取得したラインプロファイルデータDpから、初期測定点数テーブルを適用して、線幅W1を決定する。
【0090】
次のステップS23において、ステップS22で求めた線幅W1と基準線幅Wrとの比較を行う。すなわち、基準測定対象物を基準倍率で測定し、初期測定点数を適用して線幅を決定した結果、所定の許容誤差の範囲に入っているか否かを判定する。所定の許容誤差の範囲は、例えば線幅の差が0.4nmとする。所定の許容誤差の範囲に入っていなければ基準値として使用することができないため、ステップS29に移行し、運用基準値を再設定する。所定の許容誤差の範囲に入っていると判定されれば、ステップS24に移行する。
【0091】
次のステップS24では、運用測定点数テーブルを適用して、ラインプロファイルデータDpから線幅W2を決定する。
【0092】
次のステップS25では、線幅W2と基準線幅Wrとを比較する。線幅W2と基準線幅Wrとの差が、所定の許容誤差の範囲内か否かを判定する。所定の許容誤差の範囲は、例えば、線幅の差が0.2nmとする。所定の許容誤差の範囲内であれば、ステップS26に移行し、許容誤差の範囲内でなければ、ステップS30に移行する。
【0093】
次のステップS26では、被測定試料のラインプロファイルデータを取得し、運用測定点数テーブルを適用して線幅を測定する。また、ラインプロファイルデータを取得した時刻をT2とする。
【0094】
次のステップS27では、運用を開始してから被測定試料の測定を行ったときまでの時間を計測し、所定の時間、例えば24時間経過しているか否かを判定する。24時間経過していなければ、ステップS28に移行する。24時間経過していれば、試料が変化している可能性が高いため、ステップS21に戻り、再び運用基準値を設定する。
【0095】
次のステップS28では、線幅の測定がすべて終了したか否かを判定し、すべて終了していれば、本処理は終了する。線幅の測定が終了したか否かは、操作ボタン等によりユーザから測定が終了した旨の通知があるか否かで判定してもよい。線幅の測定が終了していなければ、ステップS26に戻り測定を継続する。
【0096】
ステップS25において、運用測定点数テーブルを適用して決定した線幅W2が基準値との比較により許容誤差の範囲に入っていなかったときは、ステップS30に移行する。
【0097】
ステップS30では、運用測定点数テーブルの値を調整する。ステップS23において、運用基準値が適用可能であることが保証されているため、ステップS30では、運用測定点数を微調整して、適用可能な値にする。例えば、W2が基準線幅Wrよりも大きい場合には、基準倍率と同じ倍率の測定点数を−0.1する。また、W2が基準線幅Wrよりも小さい場合には、基準倍率と同じ倍率の測定点数を+0.1する。基準倍率以外の倍率については、本実施形態で説明した方法により、基準倍率の測定点数から算出する。
【0098】
なお、測定点数の調整として、−0.1および+0.1するようにしたが、この値に限らない。また、ステップS27において、試料の変化が許容できない時間として24時間を設定しているが、この時間も適宜変更することが可能である。さらに、線幅の許容誤差の範囲も適宜変更が可能である。
【0099】
以上説明したように、観察倍率が異なり、単位時間あたりの走査移動距離が異なるときに、それぞれの走査移動距離によって照射される電子ビームの分布を表す電子ビーム強度分布が同等になるように、電子ビーム強度分布を調整している。これにより、観察倍率を変えて線幅を測定した場合であっても、電子ビームが照射される走査方向の距離が基準となる距離とほぼ等しくなるため、線幅の測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0100】
また、異なる走査型電子顕微鏡の使用により、観察倍率が同じであるにもかかわらずビーム径が異なる場合であっても、電子ビーム強度分布を調整して、電子ビームが照射される距離を基準となる距離と同等にしているため、同一のパターンの線幅について電子顕微鏡間で測定結果が異なるという現象を防止することができる。
【0101】
さらに、同じ走査型電子顕微鏡で電子ビームの走査方向により、ビーム径が異なって見える場合であっても、電子ビーム強度分布を調整して、電子ビームが照射される距離を基準となる距離と同等にしているため、同一のパターンの線幅について走査方向の違いで測定結果が異なるという現象を防止することができる。
【0102】
これにより、試料の広い範囲を測定対象とする低い観察倍率で線幅を測定する場合であっても、高倍率で測定した結果と同じ値を得ることができ、広い範囲を効率良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態で使用される走査型電子顕微鏡の構成図である。
【図2】信号処理部が取得する電子像およびプロファイルの説明図である。
【図3】電子ビーム強度分布の一例を示す図である。
【図4】電子ビーム強度分布の値を求める処理を説明する図である。
【図5】照射電子ビームの走査方向への広がりを説明する図である。
【図6】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その1)である。
【図7】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その2)である。
【図8】電子ビーム強度分布を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その3)である。
【図10】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その4)である。
【図11】電子ビームの形状の一例を示す図である。
【図12】線幅測定の運用基準値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】線幅測定を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】線幅測定処理に使用されるデータの一例である。
【符号の説明】
【0104】
1…電子銃、2…コンデンサレンズ、3…偏向コイル、4…対物レンズ、5…移動ステージ、7…試料、8…電子検出器、9…荷電粒子、10…電子走査部、20…制御部、30…信号処理部、40…画像表示部、50…下地層、51…レジストパターン、100…走査型電子顕微鏡。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いたパターンの線幅測定における線幅測定調整方法に関し、特に、倍率を変更した場合にも測定値が変動しない線幅測定調整方法及び走査型電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
パターンの線幅測定方法として、走査型電子顕微鏡による測定が行われている。走査型電子顕微鏡では、電子線走査範囲内に入射電子を走査させながら照射し、シンチレータを介して試料から放出される二次電子を取得し、取得した電子の電子量を輝度に変換して表示装置に表示している。
【0003】
このような走査型電子顕微鏡を用いて半導体装置の特性を管理する場合に、パターンの線幅が設計基準値内に形成されているか否かの作業を行うことが一般に採用されている。パターンの線幅の管理は、次のような手順によって行われている。半導体ウエハ上に形成されたレジストパターンの所定範囲をディスプレイに表示した後、その表示範囲内の測定ポイントに照準を当てて電子ビームを照射し、測定ポイントから反射された二次電子に基づいて輝度分布の波形を取得する。そして、輝度分布の波形の高レベル部分の幅を線幅と判断する。この線幅が許容誤差の範囲内にあるか否かを判断し、許容誤差の範囲内であれば、次のエッチング工程に移る。また、許容誤差の範囲内でなければレジストパターン形成の処理工程に戻される。
【0004】
このように、パターンの線幅の測定は、半導体装置の製造工程において重要であり、線幅を正確に測定するための種々の手法が提案されている。一般的に、二次電子量に対応する輝度の傾きが最大となる位置をパターンのエッジ位置としている。
【0005】
また、これに関連する技術として、特許文献1では、二次電子信号が極小値をとる位置をエッジ位置とみなすエッジ検出方法が開示されている。
【特許文献1】特開平5−296754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、走査型電子顕微鏡を使用してパターンの線幅測定をする場合には、輝度の傾きが最大となる位置をエッジ位置としたり、二次電子信号が極小値をとる位置をエッジ位置とする方法が採用されている。
【0007】
しかし、観察倍率を変えて測定する場合や、走査方向を変えたり、測定装置を変える事によって電子ビームのビーム径が異なる場合には、同じ測定対象であっても異なる測定結果になってしまうという不都合が生じる。
【0008】
観察倍率を変えた場合には、次のように測定結果が異なる現象が発生する。例えば、観察倍率を上げると、観察倍率が低いときに比べて単位時間あたりの電子ビームの移動量が小さくなり、一定時間に電子ビームが照射される領域が小さくなる。一般に、電子ビームが照射される領域の大小によって検出されるエッジの位置が変化し、線幅の測定結果が異なる。従って、観察倍率が高いときと観察倍率が低いときとでは、線幅の測定結果が異なるという現象が生じる。
【0009】
また、ビーム径が異なる場合も、電子ビームが照射される領域が異なるため、上記の観察倍率を変えた場合と同様に、同じ線幅を測定した場合であっても、線幅の測定結果が変動してしまうことになる。
【0010】
このような問題に対して、従来は、観察倍率毎に線幅の校正データを取得しておき、線幅の相関を取って対応していた。また、ビーム径が異なる場合には、同一の試料を用いて線幅を測定し、測定値が異なる場合に、ビーム径を再調整していた。このように、同一パターンに対する線幅の測定結果を変動させないようにするために、手間がかかり、線幅の測定処理を効率良く行うことが困難であった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑みなされたものであり、目的は、観察倍率、走査方向や測定装置を変えても、測定結果が変動しないようにするための線幅測定調整方法及びこの線幅測定調整機能を有する走査型電子顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題は、第1の倍率において走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の倍率において走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0013】
この形態に係る線幅測定調整方法において、前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、前記第1の電子ビーム強度分布の重心と前記第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めてもよく、前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行ってもよい。
【0014】
本発明では、倍率が異なるために単位時間あたりの走査移動距離が異なるときに、それぞれの移動距離によって照射される電子ビームの分布を示す電子ビーム強度分布が同等となるように、電子ビーム強度分布を調整している。これにより、観察倍率を変えて線幅測定した場合であっても、電子ビームが照射される走査方向の距離がほぼ等しくなり、線幅の測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0015】
また、このような電子ビーム強度分布の調整を行うことにより、試料の広い範囲を測定対象とする低い観察倍率であっても、高い観察倍率で測定した結果と同じ値を得ることができ、広い範囲で線幅測定を効率良く行うことが可能となる。
【0016】
また、上記した課題は、第1のビーム径の電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2のビーム径の電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0017】
また、上記した課題は、第1の方向に走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の方向に走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の方向に走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の方向に走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法により解決する。
【0018】
本発明では、異なる走査型電子顕微鏡の使用により、電子ビームのビーム径が異なる場合に、電子ビーム強度分布を調整して電子ビームが照射される距離を同等にしている。これにより、電子顕微鏡間で測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。また、本発明では、電子ビーム形状が真円でなく、走査方向により電子ビームのビーム径が異なって見える場合に、走査方向に対する電子ビーム強度分布を調整して電子ビームが照射される距離を同等にしている。これにより、走査方向で測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0019】
また、本発明の他の形態によれば、上記の形態に係る線幅測定調整方法を実施する走査型電子顕微鏡が提供される。その一形態に係る走査型電子顕微鏡は、電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部とを備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
はじめに、走査型電子顕微鏡の構成について説明する。次に、一般的なパターンの線幅の測定方法について説明する。次に、観察倍率等が変更された場合の線幅測定のための調整方法について説明する。最後に、本発明の線幅測定調整方法を適用した線幅測定について説明する。
【0022】
(走査型電子顕微鏡の構成)
図1は、本実施形態に係る走査型電子顕微鏡の構成図である。
【0023】
この走査型電子顕微鏡100は、電子走査部10と、信号処理部30と、画像表示部40と、電子走査部10、信号処理部30及び画像表示部40の各部を制御する制御部20とに大別される。このうち、電子走査部10は、電子銃1とコンデンサレンズ2と偏向コイル3と対物レンズ4と移動ステージ5と試料ホルダ6とを有している。
【0024】
電子銃1から照射された荷電粒子9をコンデンサレンズ2、偏向コイル3、対物レンズ4を通して移動ステージ5上の試料7に照射するようになっている。
【0025】
荷電粒子9が照射されて試料7から出た二次電子又は反射電子の量は、シンチレータ等で構成される電子検出器8によって検出され、信号処理部30においてその検出量はAD変換器によってデジタル量に変換され、さらに輝度信号に変換されて画像表示部40で表示される。
【0026】
偏向コイル3の電子偏向量と画像表示部40の画像スキャン量は制御部20によって制御される。また、制御部20には、線幅測定を実行するためのプログラムが格納されている。
【0027】
(一般的なパターンの線幅の測定方法)
次に、図1に示した走査型電子顕微鏡100を用いて、図2に示す試料のパターンの線幅を測定する一般的な方法について説明する。
【0028】
試料7は、図2に示すように、半導体ウエハ上に下地層50が形成され、その上に配線パターン51が形成されたものを使用する。この配線パターン51が寸法管理の対象とするパターンである。試料7の一部は図2(a)に示すような平面形状となっている。ここで、破線52で囲んだ部分は、走査型電子顕微鏡100の観察領域を示している。
【0029】
図2(b)は、図2(a)に示す試料上に電子ビームを走査して得られる2次電子等の電子量を電子検出器によって検出し、検出した電子量を輝度信号に変換し、電子ビームの走査とCRTの走査とを同期させて画像表示した例を示している。
【0030】
図2(c)は、図2(a)のI−I線に沿って電子ビームを照射したときに得られる試料から放出あるいは反射される電子量を示した図である。
【0031】
電子ビームの照射によって試料から放出される2次電子等の電子量は、試料表面状態によって異なる。試料に対して電子ビームが垂直に照射される場合、試料の表面が平坦であれば放出される電子は少なく、試料の表面が傾斜していれば、斜面の低い側から横向きに出た2次電子は、試料内部を移動する距離が短いため、平坦なときよりも放出される電子は多くなる。また、放出または反射する電子の量は、電子ビームが照射される材質によって異なる。
【0032】
図2(c)に示すように、配線パターンが形成されていない平面の領域では輝度に変換された信号量は小さく、配線パターンが形成されている領域では信号量は大きくなっている。また、配線パターンが形成されていない領域と配線パターンが形成されている領域との境界(エッジ)では信号量の変化が大きくなっている。このようなエッジの位置を算出して、線幅を測定する。
【0033】
以上説明したように、試料の表面状態は、試料上に電子ビームを走査し、試料表面から放出される2次電子等の電子量を用いて算出している。試料のどの点における電子量を用いるかによって、表面状態を表す電子顕微鏡像が異なる。例えば、表面上の2次電子等の電子量を取得する点の間隔が狭い方が、間隔が広いときよりも精密に表面状態を表すことができる。この2次電子等の電子量を取得する点を測定点と呼ぶ。なお、観察倍率が高いときは観察倍率が低いときよりも測定点の間隔は狭くなる。観察倍率が高いときは観察倍率が低いときよりも狭い範囲を走査するが、その走査時間は変わらないからである。
【0034】
また、試料の表面状態を示す値として、ある測定点xにおける2次電子等の電子量だけでなく隣接する測定点における2次電子等の電子量を用いる場合もある。この場合、例えば、これらの測定点における値を加算平均し、測定点xにおける試料の表面状態を示す値としている。これにより、試料の表面状態を表す値が平滑化される。
【0035】
(観察倍率等が変更された場合の線幅測定のための調整方法)
次に、観察倍率が異なっても、同一パターンの測定結果が同じになるようにする線幅測定のための調整方法について説明する。
【0036】
図3は2つの異なる倍率で電子ビームを走査したときに得られる電子ビーム強度分布を示している。電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査したときの、走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の照射点の電子ビーム量で表される。例えば、図3(a)は、電子ビームが照射される走査方向の距離が5のときの単位距離毎の電子ビーム量を示す電子ビーム強度分布であり、図3(b)は、電子ビームが照射される走査方向の距離が3のときの単位距離毎の電子ビーム量を示す電子ビーム強度分布である。
【0037】
なお、図3(a)は図3(b)よりも観察倍率が低い場合であって、図3(a)と図3(b)の走査時間が同じ場合の一例を示している。図3に示すように、電子ビームが照射される走査方向の距離は、観察倍率と走査時間によって決まり、観察倍率を変えれば、走査時間が同じであっても走査距離は異なる。そのため、異なる走査距離を電子ビームが照射したときに試料から放出される2次電子量が異なり、同一パターンであっても測定結果が異なる。
【0038】
本実施形態では、基準とする観察倍率及び基準と異なる観察倍率のそれぞれについて予め決められた距離を走査したとしたときの電子ビーム強度分布を求め、基準と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布を基準の観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布と同等にするように調整する。基準と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布の調整は、基準と異なる観察倍率について予め決められた距離を走査したときに得られる画像から、電子ビーム強度分布を作成するときに、電子ビームの照射距離を増減して行う。これにより、観察倍率が異なっても電子ビームが照射される走査方向の距離が同じになるようにする。
【0039】
例えば、図3(a)の電子ビーム強度分布を基準としたとき、図3(b)の電子ビーム強度分布を調整して図3(a)の電子ビーム強度分布と同等な分布にする。この調整において、電子ビームが走査方向に照射される距離が図3(a)に近い値になるように図3(b)の走査距離を変えて調整する。
【0040】
2つの電子ビーム強度分布が同等か否かは、電子ビーム強度分布を表す値を比較して判断する。電子ビーム強度分布を表す値は、電子ビーム強度分布を走査方向に沿って2等分し、2等分した分布のそれぞれについて重心を算出し、算出した重心間の距離差とする。
【0041】
以下に、図4を参照して、電子ビーム強度分布の数値化について説明する。
【0042】
図4(a)は、電子ビーム強度分布の一例を示しており、各単位距離毎の照射点の電子ビーム量は、単位電子ビーム量(‘○’で表す)の個数で表している。図4(a)の電子ビーム強度分布は、照射点の座標(走査方向の座標)が1から9までの広がりを有している。また、例えば、照射点3の電子ビーム量は2である。
【0043】
まず、図4(a)に示す電子ビーム強度分布を、図4(b)に示すように電子ビームの走査方向に沿って前方分布と後方分布に2等分する。図4(b)において、前方分布は座標軸上の5から9、後方分布は座標軸上の1から5となる。
【0044】
次に、図4(b)に示した電子ビーム強度分布において、前方分布及び後方分布を数値化する。
【0045】
前方分布の値は、電子ビームの照射点を示す走査方向の座標値とその照射点に照射される単位電子ビームの合計値とを乗算した値をその照射点における電子ビーム量とし、前方分布内の各照射点における電子ビーム量の総和を前方分布内に照射される単位電子ビーム量の合計で除した値としている。同様に、後方分布の値は、電子ビームの照射点を示す走査方向の座標値とその照射点に照射される単位電子ビームの合計値とを乗算した値をその照射点における電子ビーム量とし、後方分布内の各照射点における電子ビーム量の総和を後方分布内に照射される単位電子ビーム量の合計で除した値としている。
【0046】
このように、前方分布及び後方分布の値は、各分布の走査方向の座標軸上の重心位置を示しており、次に示す式で表される。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【0047】
この計算の結果、図4(b)に示すように、電子ビーム強度分布の前方分布の重心(X0R)と後方分布の重心(X0L)との距離差は3.46となる。
【0048】
なお、本明細書において、電子ビーム強度分布の前方分布の重心と後方分布の重心との距離差を実効照射移動距離とも呼ぶ。
【0049】
(実施例1)
次に、異なる2つの倍率における電子ビーム強度分布を同等にする方法を説明する。
【0050】
まず、図5及び図6を参照して電子ビーム強度分布の算出について説明する。その後、図6、図7及び図8を参照して電子ビーム強度分布の調整について説明する。
【0051】
(1)電子ビーム強度分布の算出
電子ビームはビーム径で決まる大きさの電子ビームを照射しながら移動しているため、試料表面上の測定点xに照射された電子ビームによって放出される二次電子だけを検出することはできない。電子ビームは、測定点xを通過して走査方向に進んだ部分にも電子ビームが照射され、走査方向に進んだ部分に照射された電子ビームによって放出される二次電子も検出することになるからである。このように、電子ビームは測定点から走査方向に一定の広がりを持つため、測定点における電子量はその測定点から得られる電子量だけではなく、電子ビームが広がる範囲から得られる電子量も含まれる。
【0052】
図5は、電子ビームが時間t1でx=1の測定点を通過するときの、電子ビームの走査方向の広がりをモデル化する説明図である。ここで、電子ビームは、ビーム径で決まる大きさの単位電子ビームからなるものとし、電子ビームの広がりは単位電子ビームが2単位時間進む距離とする。
【0053】
図5(a)は、倍率が低い場合であり、5単位の距離、すなわち、単位電子ビーム5個分(B1,B2,B3,B4,B5)の距離まで電子ビームが広がって照射されることを示している。この広がった範囲の電子ビームは、「測定点から走査速度に依存した距離だけ走査方向に広がる電子ビーム」であり、以下、「拡張電子ビーム」と呼ぶ。図5(b)は倍率が高い場合であり、拡張電子ビームは、3単位の距離、すなわち、単位電子ビーム3個分(B6,B7,B8)の距離に広がる。
【0054】
図6は、ある倍率において、測定点の数が3、すなわち測定時間tが1、2、3のときに測定する場合の電子ビーム強度分布を説明する図である。図6(a)は、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものであり、拡張電子ビームの遷移の1行目は、ある時点(t=1)で試料に照射される電子ビーム、2行目は、1行目の時点から一定の微小時間を経過して移動したときの試料に照射される電子ビームを表している。3行目も同様に、2行目の時点から一定の微小時間を経過して移動したときの試料に照射される電子ビームを表している。
【0055】
図6(b)は、各単位距離毎に電子ビーム量を合計して求めた、電子ビーム強度分布である。測定点が3点の場合に、電子ビームが照射される走査方向の距離は、照射点の座標が1から9までとなることを示している。また、例えば、照射点が5の点では電子ビーム量が3になることを示している。
【0056】
(2)電子ビーム強度分布の調整
次に、図6で求めた電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布として、図6と異なる観察倍率のときに得られる電子ビーム強度分布を調整する処理について説明する。なお、図6(b)の電子ビーム強度分布は図4(a)の電子ビーム強度分布と同一であり、実行照射移動距離SPIDは3.46である。
【0057】
図7は、基準電子ビーム強度分布を求めるときに使用した観察倍率(基準倍率とする)に対して観察倍率を2倍にした場合の拡張電子ビームの遷移を示したものである。
【0058】
図7(a)は、図6(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。図7(a)は、図6(a)に比べて観察倍率が2倍であるため、測定時間における測定点(照射点)の間隔が狭くなっている。
【0059】
図8は、図7の電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布と同等にする処理のフローチャートである。
【0060】
はじめに、図8のステップS1において、初期設定をする。初期設定では、測定点数Nを1とおく。また、予め基準となる基準実効照射移動距離SPIDを算出する。ここでは図6に示した電子ビーム強度分布を基準電子ビーム強度分布とし、基準実行照射移動距離SPIDは3.46である。
【0061】
次のステップS2では、測定点数がNのときの実効照射移動距離PIDを算出する。
【0062】
次のステップS3では、実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとを比較する。実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとの差の絶対値が所定の値α(例えば0.2)よりも小さいと判定されたとき、ステップS5に移行し、測定点数をNと決定して本処理は終了する。一方、実効照射移動距離PIDと基準実効照射移動距離SPIDとの差の絶対値が所定の値αよりも大きいと判定されたときは、ステップS4に移行する。
【0063】
次のステップS4では、測定点数Nを1増やし、ステップS2に戻り測定点数算出処理を続行する。
【0064】
図7(b)は、測定点数が3の場合の計算結果を示している。測定点数が3のときは、電子ビーム強度分布値は、1.78となり、基準電子ビーム強度分布値と大きく異なる。
【0065】
図7(c)は、測定点数が7のときの結果であり、実効照射移動距離と基準実効照射移動距離とが近似する。
【0066】
この場合には、被測定対象の電子量を算出する際に、測定点数を7とする。すなわち、所定の測定点を含んだ隣接する前後7つの測定点に電子ビームが照射されたときに検出される電子量を用いて、所定の演算(例えば、加算平均)をして、当該位置における電子量とする。これにより、倍率を変えて被測定対象を観察した場合であっても、電子ビームが照射される範囲をほぼ等しくすることができ、測定データの変動を抑制することができる。
【0067】
(実施例2)
実施例2では、ビーム径が異なる電子ビームによって走査したときに得られる2つの電子ビーム強度分布を同等にする方法について説明する。
【0068】
図9は、拡張電子ビームが照射される距離を6単位の距離で表したときの、電子ビーム強度分布を算出する説明図である。又、図10は、図9におけるビーム径よりも大きいビーム径の電子ビームを使用したときの電子ビーム強度分布を図9の電子ビームと同等にする処理を説明する図である。
【0069】
拡張電子ビームが照射される距離は、電子ビームの走査速度だけではなく、電子ビームのビーム径にも依存する。例えば、基準の電子ビームのビーム径が半径aであり、対象とする電子ビームのビーム径が半径b(>a)であるとする。拡張電子ビームが照射される距離を6単位の距離としたとき、半径bのビーム径を持つ電子ビームによる拡張電子ビームの方が半径aのビーム径を持つ電子ビームによる拡張電子ビームよりも照射される距離が長くなる。計算の便宜上、半径bのビーム径についても、半径aのビーム径の単位電子ビームを用いて拡張電子ビームを表す。例えば、図10に示すように、拡張電子ビームが照射される距離を7単位の距離とする。
【0070】
図9(a)は、図6(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。
【0071】
図9(b)は、測定点を3点とした場合の電子ビーム強度分布であり、図9(c)は、図9(b)で求めた電子ビーム強度分布の値を求めた図である。
【0072】
図10(a)は、図9(a)と同様に、連続的に動く電子ビームを離散的な拡張電子ビームの遷移として模式的に表したものである。
【0073】
ここで、基準となる実効照射移動距離は図9(c)に示すように、3.89である。これに対し、測定点数を3点とした場合の実効照射移動距離は、図10(b)に示すように、4.19である。従って、このまま測定点数を3点とすると、基準の測定値と異なる値となる。
【0074】
実効照射移動距離を基準の実効照射移動距離と一致させるために、本実施例では、調整係数を用いて電子ビーム照射量を調整する。この調整係数は、拡張電子ビームの電子ビーム照射量を調整する値である。この調整係数を、電子ビーム強度分布を形成する両端の拡張電子ビームに乗じることにより実効照射移動距離を基準の実効照射移動距離と一致させる。
【0075】
本実施例の場合は、実効照射移動距離を4.19から基準値3.89に近づけるために、拡張電子ビームの電子ビーム照射量の値を小さくする。図10(c)に示すように、実効照射移動距離が3.89になるように調整係数を求める。すなわち、測定点の最初と最後の電子ビーム照射量を基準の1に対して0.68とすることにより、実行照射移動距離を3.89にすることができる。
【0076】
この調整係数を基に測定点数を計算する。すなわち、拡張電子ビームC1,C2,C3を合成して得た電子ビーム強度分布に対し、C1,C3を構成する単位電子ビーム量を0.68倍する。計算の結果、0.68×1+1+0.68×1=2.36となり、測定点数を2.36とすることにより実効照射移動距離が基準の実効照射移動距離3.89と等しくなることが導かれる。従って、この場合には、被測定対象の電子量を算出する際に、測定点数を2.36として算出すればよい事になる。これにより、電子ビーム径が異なる測定装置を使用する場合であっても、上記のように調整することにより、電子ビームの照射範囲が基準のビーム径の電子ビームを使用した場合とほぼ等しくなるため、測定データの変動を防止することができる。
【0077】
また、図11に示すように、電子ビームの形状が真円でない場合に、走査方向の違いによって生ずるビーム径の差も本実施例と同様な調整をすることで、走査方向の違いによる測定データの変動も防止することができる。
【0078】
なお、走査型電子顕微鏡100の制御部20は、例えばマイクロコンピュータで構成され、上記測定点数の調整処理は、走査型電子顕微鏡100の制御部20に格納されているプログラムを用いて行う。
【0079】
また、上記した電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム走査によって得られる2次電子の強度分布画像において、照射点の2次電子量を電子ビーム量とみなし、電子ビーム強度分布を生成するときに行っても良い。
【0080】
(線幅測定)
以下に、異なる観察倍率であっても電子ビーム強度分布が一定となるようにする方法を適用した、線幅測定について図12及び図13のフローチャートを用いて説明する。
【0081】
図12は運用のための基準値を決定する処理の流れを示しており、図13は線幅測定を行う処理の流れを示している。
【0082】
走査型電子顕微鏡100を用いて線幅を測定する前に、図12に従って運用のための基準値を決定する。
【0083】
まず、ステップS11で、初期測定点数テーブルを作成する。初期測定点数テーブルは、図14(a)に示すように、走査型電子顕微鏡100の各倍率における測定点数を規定するものである。測定点数の決定は、本実施形態で示した方法を用いて行う。
【0084】
次のステップS12では、ステップS11で求めた初期測定点数を線幅の測定の際に使用する運用測定点数とする。図14(b)に、運用測定点数テーブルの一例を示す。
【0085】
次のステップS13では、走査型電子顕微鏡100の光軸を調整する。
【0086】
次のステップS14では、基準線幅Wrを求める。基準線幅Wrは実際の線幅測定の際に走査型電子顕微鏡が正常に機能するか否かの判定基準として使用される。基準線幅Wrは、基準測定対象物を予め決めた基準倍率(例えば、50000倍)で、初期測定点数テーブルを適用して測定する。図14(c)に、基準線幅テーブルの一例を示す。図14(c)では、基準倍率50000倍で求めた基準線幅Wrが210nmであることを示している。
【0087】
以下に、図13を用いて、実際に線幅を測定する処理について説明する。
【0088】
まず、ステップS21において、運用基準値を決定する際に使用した基準測定対象物を用い、基準倍率で試料の表面状態を表すラインプロファイルデータDpを取得する。ラインプロファイルデータDpを取得したときの時間をT1とする。
【0089】
次のステップS22において、ステップS21で取得したラインプロファイルデータDpから、初期測定点数テーブルを適用して、線幅W1を決定する。
【0090】
次のステップS23において、ステップS22で求めた線幅W1と基準線幅Wrとの比較を行う。すなわち、基準測定対象物を基準倍率で測定し、初期測定点数を適用して線幅を決定した結果、所定の許容誤差の範囲に入っているか否かを判定する。所定の許容誤差の範囲は、例えば線幅の差が0.4nmとする。所定の許容誤差の範囲に入っていなければ基準値として使用することができないため、ステップS29に移行し、運用基準値を再設定する。所定の許容誤差の範囲に入っていると判定されれば、ステップS24に移行する。
【0091】
次のステップS24では、運用測定点数テーブルを適用して、ラインプロファイルデータDpから線幅W2を決定する。
【0092】
次のステップS25では、線幅W2と基準線幅Wrとを比較する。線幅W2と基準線幅Wrとの差が、所定の許容誤差の範囲内か否かを判定する。所定の許容誤差の範囲は、例えば、線幅の差が0.2nmとする。所定の許容誤差の範囲内であれば、ステップS26に移行し、許容誤差の範囲内でなければ、ステップS30に移行する。
【0093】
次のステップS26では、被測定試料のラインプロファイルデータを取得し、運用測定点数テーブルを適用して線幅を測定する。また、ラインプロファイルデータを取得した時刻をT2とする。
【0094】
次のステップS27では、運用を開始してから被測定試料の測定を行ったときまでの時間を計測し、所定の時間、例えば24時間経過しているか否かを判定する。24時間経過していなければ、ステップS28に移行する。24時間経過していれば、試料が変化している可能性が高いため、ステップS21に戻り、再び運用基準値を設定する。
【0095】
次のステップS28では、線幅の測定がすべて終了したか否かを判定し、すべて終了していれば、本処理は終了する。線幅の測定が終了したか否かは、操作ボタン等によりユーザから測定が終了した旨の通知があるか否かで判定してもよい。線幅の測定が終了していなければ、ステップS26に戻り測定を継続する。
【0096】
ステップS25において、運用測定点数テーブルを適用して決定した線幅W2が基準値との比較により許容誤差の範囲に入っていなかったときは、ステップS30に移行する。
【0097】
ステップS30では、運用測定点数テーブルの値を調整する。ステップS23において、運用基準値が適用可能であることが保証されているため、ステップS30では、運用測定点数を微調整して、適用可能な値にする。例えば、W2が基準線幅Wrよりも大きい場合には、基準倍率と同じ倍率の測定点数を−0.1する。また、W2が基準線幅Wrよりも小さい場合には、基準倍率と同じ倍率の測定点数を+0.1する。基準倍率以外の倍率については、本実施形態で説明した方法により、基準倍率の測定点数から算出する。
【0098】
なお、測定点数の調整として、−0.1および+0.1するようにしたが、この値に限らない。また、ステップS27において、試料の変化が許容できない時間として24時間を設定しているが、この時間も適宜変更することが可能である。さらに、線幅の許容誤差の範囲も適宜変更が可能である。
【0099】
以上説明したように、観察倍率が異なり、単位時間あたりの走査移動距離が異なるときに、それぞれの走査移動距離によって照射される電子ビームの分布を表す電子ビーム強度分布が同等になるように、電子ビーム強度分布を調整している。これにより、観察倍率を変えて線幅を測定した場合であっても、電子ビームが照射される走査方向の距離が基準となる距離とほぼ等しくなるため、線幅の測定結果が異なるという現象を防止することが可能となる。
【0100】
また、異なる走査型電子顕微鏡の使用により、観察倍率が同じであるにもかかわらずビーム径が異なる場合であっても、電子ビーム強度分布を調整して、電子ビームが照射される距離を基準となる距離と同等にしているため、同一のパターンの線幅について電子顕微鏡間で測定結果が異なるという現象を防止することができる。
【0101】
さらに、同じ走査型電子顕微鏡で電子ビームの走査方向により、ビーム径が異なって見える場合であっても、電子ビーム強度分布を調整して、電子ビームが照射される距離を基準となる距離と同等にしているため、同一のパターンの線幅について走査方向の違いで測定結果が異なるという現象を防止することができる。
【0102】
これにより、試料の広い範囲を測定対象とする低い観察倍率で線幅を測定する場合であっても、高倍率で測定した結果と同じ値を得ることができ、広い範囲を効率良く測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施形態で使用される走査型電子顕微鏡の構成図である。
【図2】信号処理部が取得する電子像およびプロファイルの説明図である。
【図3】電子ビーム強度分布の一例を示す図である。
【図4】電子ビーム強度分布の値を求める処理を説明する図である。
【図5】照射電子ビームの走査方向への広がりを説明する図である。
【図6】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その1)である。
【図7】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その2)である。
【図8】電子ビーム強度分布を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その3)である。
【図10】電子ビーム強度分布調整処理を説明する図(その4)である。
【図11】電子ビームの形状の一例を示す図である。
【図12】線幅測定の運用基準値を決定する処理の一例を示すフローチャートである。
【図13】線幅測定を行う処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】線幅測定処理に使用されるデータの一例である。
【符号の説明】
【0104】
1…電子銃、2…コンデンサレンズ、3…偏向コイル、4…対物レンズ、5…移動ステージ、7…試料、8…電子検出器、9…荷電粒子、10…電子走査部、20…制御部、30…信号処理部、40…画像表示部、50…下地層、51…レジストパターン、100…走査型電子顕微鏡。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の倍率において走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の倍率において走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項2】
第1のビーム径の電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2のビーム径の電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項3】
第1の方向に走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の方向に走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の方向に走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の方向に走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項4】
前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、前記第1の電子ビーム強度分布の重心と前記第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の線幅測定調整方法。
【請求項5】
前記重心は、下記の演算式で求められることを特徴とする請求項4に記載の線幅測定調整方法。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【請求項6】
前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の線幅測定調整方法。
【請求項7】
電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、
前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、
第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部と
を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項8】
電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、
前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、
第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部と
を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項9】
前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、第1の電子ビーム強度分布の重心と第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めることを特徴とする請求項7又は8に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項10】
前記重心は、下記の演算式で求められることを特徴とする請求項9に記載の走査型電子顕微鏡。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【請求項11】
前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項1】
第1の倍率において走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の倍率において走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項2】
第1のビーム径の電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2のビーム径の電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項3】
第1の方向に走査される電子ビームが第1の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像と、第2の方向に走査される電子ビームが第2の照射距離を走査したときに得られる2次電子の強度分布画像において、線幅測定のための電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第1の方向に走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と前記第2の方向に走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように、前記第2の電子ビーム強度分布を調整することを含むことを特徴とする線幅測定調整方法。
【請求項4】
前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、前記第1の電子ビーム強度分布の重心と前記第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の線幅測定調整方法。
【請求項5】
前記重心は、下記の演算式で求められることを特徴とする請求項4に記載の線幅測定調整方法。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【請求項6】
前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の線幅測定調整方法。
【請求項7】
電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、
前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、
第1の倍率において走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2の倍率において走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部と
を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項8】
電子ビームを試料の表面に照射する電子銃と、
前記電子ビームの照射により前記試料から放出される電子を検出する電子検出部と、
第1のビーム径で走査される電子ビームの第1の電子ビーム強度分布と、第2のビーム径で走査される電子ビームの第2の電子ビーム強度分布とが同等になるように前記第2の電子ビーム強度分布を調整する制御部と
を備えることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項9】
前記電子ビーム強度分布は、電子ビームを走査して走査方向の単位距離毎の電子ビーム量を測定したと仮定したとき、単位距離毎の電子ビーム量で表され、前記電子ビーム強度分布の値は前記電子ビーム強度分布を走査方向に沿って第1の電子ビーム強度分布と第2の電子ビーム強度分布に2等分し、第1の電子ビーム強度分布の重心と第2の電子ビーム強度分布の重心との距離差で求めることを特徴とする請求項7又は8に記載の走査型電子顕微鏡。
【請求項10】
前記重心は、下記の演算式で求められることを特徴とする請求項9に記載の走査型電子顕微鏡。
X0=Σ(Xi×Pi)/ΣPi
ここで、X0を重心、Xiを単位距離毎の照射点、Piを照射点Xiにおける照射電子ビーム量とする。
【請求項11】
前記第2の電子ビーム強度分布の調整は、電子ビーム強度分布を作成するときに、前記第2の照射距離を増減して行うことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の走査型電子顕微鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−263566(P2007−263566A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84868(P2006−84868)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【Fターム(参考)】
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