説明

線形振動子

【課題】本発明は、線形振動子に関し、より詳細には、携帯用電子機器に取り付けられて無音の着信信号発生装置に適用されることができる線形振動子に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態による線形振動子は、一定サイズの内部空間を提供する固定部と、上記内部空間に配置され磁力を発生させる少なくとも一つのマグネットと、当該マグネットと対向するように配置されて当該マグネットとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイルと質量体とを備える振動部と、上記固定部と上記振動部に結合して当該振動部の振動を媒介し表面の所定領域にダンピング増加部が付着される弾性部材と、を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形振動子に関し、より詳細には、携帯用電子機器に取り付けられて無音の着信信号発生装置に適用されることができる線形振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使用者の便宜のために大型LCD画面の個人携帯端末機の発売が急増しており、これにより、タッチスクリーン方式が採択され、タッチの際に振動を発生させるために振動モーターが用いられている。
【0003】
振動モーターは、電磁気的な力の発生原理を用いて電気的エネルギーを機械的振動に変換する部品で、個人携帯端末機に搭載されて無音着信通知用に用いられている。
【0004】
従来の振動モーターでは、回転力を発生させて不平衡質量の回転部を回転させることにより機械的振動を得る方式が用いられており、回転力は、ブラシ(Brush)とコミュテータ(Commutator)との接触によって整流作用を経て発生する。
【0005】
しかしながら、このようなコミュテータを用いたブラシの構造では、モーターの回転時にブラシがコミュテータのセグメントとセグメントとの隙間を通りながら機械的な摩擦と電気的なスパークを誘発し異物を生成するため、モーターの寿命が短くなるという問題があった。
【0006】
また、モーターへの電圧の印加時に回転慣性によって目標振動量への到達に時間がかかるため、タッチスクリーンに適した振動の具現に問題があった。
【0007】
このようなモーターの寿命及び応答性の短所を克服しタッチスクリーンの振動機能を具現するために多く用いられているものが線形振動子である。
【0008】
線形振動子は、モーターの回転原理を用いたものではなく、内部に設けられるスプリングと当該スプリングに取り付けられた質量体から得られた電磁気力を共振周波数に合わせて周期的に発生させることにより起こる共振による振動の発生原理を用いたものである。
【0009】
上記のような共振現象を用いた線形振動子は、正常的な条件下でスプリングが共振周波数に合わせて上下方向への引張りと圧縮を繰り返しながら振動するようになる。しかしながら、様々な要因によって、スプリングが上下方向ではない別の方向への引張りと圧縮を繰り返しながら振動する現象が生じることもある。
【0010】
このような現象は、スプリングがケースに接触して騒音を発生させて騒音発生の原因となる。
【0011】
具体的には、線形振動子に所望の共振周波数を印加しても実際は不所望の周波数が印加され、これにより、不所望のモード、即ち、質量体とは独立してスプリングのみが振動するサージングモードが発生することがある。
【0012】
サージングモードが発生する場合、スプリングは、ケース及び質量体等と接触し、これにより、騒音が発生することがある。
【0013】
したがって、サージングモードでのスプリングとケース又は質量体との接触を防止して騒音発生を改善するようにする研究が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、高周波領域で発生する弾性部材の固有モードであるサージングモードでの弾性部材とケースとの接触又は弾性部材と質量体との接触を防止して騒音発生を改善するようにする線形振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態による線形振動子は、一定サイズの内部空間を提供する固定部と、上記内部空間に配置され磁力を発生させる少なくとも一つのマグネットと、当該マグネットと対向するように配置されて当該マグネットとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイルと質量体とを備える振動部と、上記固定部と上記振動部に結合して当該振動部の振動を媒介し表面の所定領域にダンピング増加部が付着される弾性部材と、を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記ダンピング増加部は、上記弾性部材にコーティングされることができる。
【0017】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記ダンピング増加部は、ゴム材質で形成されることができる。
【0018】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記ダンピング増加部は、ウレタンを含むことができる。
【0019】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記弾性部材は、上記固定部に結合する固定端部と、上記振動部に結合する自由端部と、上記固定端部と上記自由端部とを連結して弾性力を提供する少なくとも一つの連結ストリップ部と、を含み、上記ダンピング増加部は、少なくとも一つの上記連結ストリップ部の所定領域に付着されることができる。
【0020】
本発明の一実施形態による線形振動子は、上記コイルに電源が印加されるように一端は上記振動部と結合して自由端となり他端は上記固定部に結合して固定端となる基板をさらに含むことができる。
【0021】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記固定部は、上記内部空間を提供し下部が開放されたケースと、上記内部空間を密閉するブラケットと、を含み、上記マグネットは、上記ブラケットの一面又は上記ケースの一面に結合することができる。
【0022】
本発明の一実施形態による線形振動子の上記固定部は、上記内部空間を提供し下部が開放されたケースと、上記内部空間を密閉するブラケットと、を含み、上記マグネットは、多数形成されて上記ケースの一面と上記ブラケットの一面にそれぞれ結合することができる。
【0023】
本発明の他の実施形態による線形振動子は、一定サイズの内部空間を提供し下部が開放されたケースと上記内部空間を密閉するブラケットとを備える固定部と、上記内部空間に配置され磁力を発生させる少なくとも一つのマグネットと、当該マグネットと対向するように配置されて当該マグネットとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイル及び質量体を固定支持するホルダーを備える振動部と、上記固定部と上記振動部に結合して当該振動部の振動を媒介し表面の所定領域にゴム材質のダンピング増加部がコーティングされる弾性部材と、を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による線形振動子によると、不所望の高周波領域で発生する弾性部材の固有モードであるサージングモードでの弾性部材とケースとの接触又は弾性部材と質量体との接触を防止することにより、騒音発生と接触による弾性部材の破壊を未然に防止することができる。
【0025】
また、磁気の効率に変化を与えず共振周波数での動作にも影響を与えないため、最大振動量の変化なしに安定した線形振動が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態による線形振動子を示す概略分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による線形振動子を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による線形振動子に提供される弾性部材を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による線形振動子に提供されるダンピング増加部が付着された弾性部材を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態による線形振動子のサージングモードでの振動の変位を従来と比較したグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態による線形振動子を示す概略断面図である。
【図7】本発明のさらに他の実施形態による線形振動子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。但し、本発明の思想は、提示される実施形態に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同一思想の範囲内で他の構成要素の追加、変更、削除などによって、退歩的な他の発明や本発明の思想の範囲内に含まれる他の実施形態を容易に提案することができるが、これもまた本願発明の思想の範囲内に含まれる。なお、図面上における同一機能の構成要素に対しては同一符号を付して説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態による線形振動子を示す概略分解斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態による線形振動子を示す概略断面図であり、図3は、本発明の一実施形態による線形振動子に提供される弾性部材を示す概略斜視図であり、図4は、本発明の一実施形態による線形振動子に提供されるダンピング増加部が付着された弾性部材を示す概略斜視図であり、図5は、本発明の一実施形態による線形振動子のサージングモードでの振動の変位を従来と比較したグラフである。
【0029】
なお、方向に関する用語の定義において、半径方向の外方又は内方は、ケース112の中心から当該ケース112の外周面に向かう方向又はその反対方向であることができる。
【0030】
図1から図4を参照すると、本発明の一実施形態による線形振動子100は、当該線形振動子100の外観を形成する固定部110と、磁界部120をなすマグネット122と、コイル132と質量体134とを備える振動部130と、ダンピング増加部145が付着される弾性部材140と、を含むことができる。
【0031】
固定部110は、一定サイズの内部空間を提供し、具体的には、下部が開放されたケース112と、当該ケース112によって形成される上記内部空間を密閉するブラケット114と、を含むことができる。
【0032】
ここで、上記ケース112及び上記ブラケット114によってマグネット122を含む磁界部120及び振動部130等を収容できる空間が形成されることができ、当該ケース112及び当該ブラケット114は一体的に形成されることもできる。
【0033】
また、上記ケース112の上面には、後述する磁性流体126をマグネット122の外周面に配置するための少なくとも一つの流入ホール116が形成され、当該流入ホール116を介して上記磁性流体126を簡便に塗布することができる。
【0034】
また、上記流入ホール116は、弾性部材140と振動部130のホルダー136とを結合する場合、即ち、溶接によって弾性部材140とホルダー136とを結合する場合に必要なレーザービームが貫通するホールであることができる。
【0035】
上記マグネット122は、ヨークプレート124と共に本発明の一実施形態による線形振動子100の磁界部120を構成し、固定部110を構成するブラケット114の上面にボンディング、圧入及び溶接の少なくとも一つの方法で結合されることができる。
【0036】
上記マグネット122は、ホルダー136に結合されたコイル132の内径より小さい外径を備え、上記ブラケット114に結合して固定部材として作用することができる。
【0037】
なお、上記ブラケット114の上面に上記マグネット122の外径に対応するように突出形成される外壁114aを備えて当該外壁114aの内面に当該マグネット122の外周面を挿入固定することにより、当該ブラケット114と当該マグネット122とがより堅固に結合されることができる。
【0038】
ここで、上記マグネット122の一面である上部面には、当該マグネット122との相互作用によって電磁気力を発生させるコイル132を通して当該マグネット122に流れる磁束を円滑に形成するようにするヨークプレート124が結合されることができる。
【0039】
上記ヨークプレート124は、磁性物質で形成され、これにより、磁性流体126の塗布を円滑にすることができる。
【0040】
即ち、上記マグネット122及び上記ヨークプレート124の外周面とコイル132との間には、磁性流体126が塗布され、当該磁性流体126は、振動部130の異常振動を防止する機能をすることができる。
【0041】
即ち、上記磁性流体126は、振動部130の上下運動を円滑にするように上記マグネット122と上記コイル132との間隙に配置され、外部衝撃等によって上記振動部130が左右又は上下に揺れて発生する異常振動を防止することができる。
【0042】
上記磁性流体126は、上記マグネット122の磁束に集束する性質を有する物質で、当該マグネット122の一面に塗布される場合、当該マグネット122の磁束発生箇所に集束して一つの環状をなすようになる。
【0043】
ここで、上記磁性流体126は、液体中に磁性粉末をコロイド状に分散化させた後に重力や磁場等による磁性粉末の沈殿や凝集が発生しないように界面活性剤を添加したもので、例えば、四酸化三鉄、鉄−コバルト合金微分子を油又は水の中に分散させたものと、最近ではトルエン中にコバルトを分散させたもの等が挙げられる。
【0044】
このような磁性粉末は、超微粒子粉末であり、超微粒子特有のブラウン運動をするため、外部磁場、重力又は遠心力等が加えられても流体中の磁性粉末粒子の濃度は一定に維持される特徴を有する。
【0045】
また、上記磁性流体126は、上記マグネット122の外面と上記コイル132の中空部の内面との間隙に充填されて上記振動部130がスムーズに振動又はスライディングするようにすることができる。
【0046】
上記振動部130は、コイル132と質量体134とを含み、当該コイル132と当該質量体134は、ホルダー136によって固定され、振動の媒介は、弾性部材140によって具現されることができる。
【0047】
即ち、上記振動部130は、上記弾性部材140を媒介として上下に振動する部材であることができる。
【0048】
上記コイル132は、マグネット122と対向するように配置され、一面を含む当該マグネット122の一部が当該コイル132によって形成される空間内に挿入されることができる。
【0049】
ここで、上記コイル132は、上記マグネット122の外径より大きい内径を備え、上記振動部130が運動している間に当該コイル132と当該マグネット122が非接触状態を維持することができる。
【0050】
また、上記コイル132は、ホルダー136の中空の内部面に結合し、当該コイル132に一定の周波数で電流を印加すると、当該コイル132の周辺に磁場を誘導することができる。
【0051】
この際、上記コイル132を介して電磁気力が印加されると、上記マグネット122から当該コイル132への磁束の方向は左右に分けられ、当該コイル132によって発生する磁場は上下に形成されて上記振動部130が上下に振動するようになる。
【0052】
したがって、上記マグネット122の磁束方向と上記振動部130の振動方向は、垂直をなす。
【0053】
即ち、上記振動部130の機械的固有周波数と同一の周波数を有する電磁気力を印加すると、当該振動部130は共振振動をして最大の振動量が得られ、当該振動部130の固有周波数は当該振動部130の質量と弾性部材140の弾性係数によって影響を受けるようになる。
【0054】
ここで、上記振動部130のコイル132に印加される電流、即ち、一定の周波数を有する外部電源は、当該振動部130に結合する基板150によって提供されることができる。
【0055】
上記ホルダー136は、コイル132の外周面に結合し、質量体134を固定支持し、上部及び下部が開放された中空円筒状に形成されることができる。
【0056】
具体的には、上記ホルダー136は、上記コイル132及び上記質量体134の一面に接触する円筒状の垂直部136aと、当該垂直部136aの端部から半径方向の外方及び内方に伸びて形成されて上記コイル132及び上記質量体134の他面を支持する外側水平部136b及び内側水平部136cと、からなることができる。
【0057】
上記垂直部136aの外周面と上記外側水平部136bの下部面は、上記質量体134と接触して当該質量体134を固定支持し、上記垂直部136aの内周面と上記内側水平部136cの下部面は、上記コイル132を固定支持することができる。
【0058】
また、上記ホルダー136は、鉄を含む材質からなることができる。これは、上記弾性部材140と同一の材質で形成することにより結合を容易且つ堅固にするためである。
【0059】
しかしながら、上記ホルダー136及び上記弾性部材140の材質は、鉄を含む材質に限定されず、結合を容易且つ堅固にできるものであればいずれであっても良い。
【0060】
また、上記ホルダー136の垂直部136aは、コイル132と質量体134との間の空間を形成するように当該コイル132と当該質量体134の下部面より高く形成され、上記空間に接着剤Bが充填されて当該コイル132と当該質量体134との結合をより堅固にすることができる。
【0061】
上記質量体134は、ホルダー136の垂直部136aの外部面と外側水平部136bの下部面に結合して上下に振動する振動体で、上下に振動する場合に固定部110内で接触することなく振動できるように上記ケース112の内部面の内径よりは小さい外径サイズで備えられることができる。
【0062】
これにより、上記ケース112の内部面と上記質量体134の外部面との間には、一定サイズの間隙が形成されることができる。
【0063】
このような質量体134は、上記マグネット122から発生する磁力の影響を受けない非磁性体又は常磁性体の素材で構成されることが好ましい。
【0064】
したがって、上記質量体134は、鉄より重い比重を有するタングステン等の物質からなることが好ましい。これは、同一の体積内で上記振動部130の質量を高めることにより共振周波数を調節して振動量を最大にするためである。
【0065】
しかしながら、上記質量体134は、タングステンに限定されず、設計者の意図に応じて多様な材質からなることもできる。
【0066】
ここで、上記線形振動子100の固有振動数を補正するために、上記質量体134にサブ質量体をさらに挿入できる空間を形成することにより当該質量体134の質量を加減することもできる。
【0067】
上記弾性部材140は、前述したようにホルダー136とケース112に結合して上記振動部130に弾性力を提供する部材で、当該振動部130の一構成要素であることができるが、ここでは、便宜上、独立の構成要素として説明する。
【0068】
上記振動部130の固有周波数は、上記弾性部材140の弾性係数に従属することができる。
【0069】
具体的には、上記弾性部材140は、固定部110であるケース112に結合する固定端部142と、振動部130であるホルダー136に結合する自由端部146と、上記固定端部142と上記自由端部146とを連結する少なくとも一つの連結ストリップ部144と、を備える板スプリングであることができる。
【0070】
即ち、上記固定端部142は、上記ケース112の密閉側の下部面に固定される部分であり、上記自由端部146は、ホルダー136の内側水平部136c及び外側水平部136bの少なくとも一つの上面に固定される部分であることができる。
【0071】
上記連結ストリップ部144は、上記固定端部142と一端が連結され螺旋方向に曲がって弾性力を発生させる部分であることができる。
【0072】
ここで、上記弾性部材140の表面の所定領域にはダンピング増加部145が付着され、当該ダンピング増加部145によって当該弾性部材140自体のダンピング係数が増加することができる。
【0073】
具体的には、上記ダンピング増加部145は、上記弾性部材140の連結ストリップ部144の所定領域に付着され、当該連結ストリップ部144の上面及び下面の少なくとも一面の全体又は一部に付着されることができる。
【0074】
上記ダンピング増加部145は、コーティング処理により上記弾性部材140に付着され、ゴム材質からなることができる。
【0075】
また、上記ダンピング増加部145は、ウレタンを含む材質からなり、その厚さが数μmの水準で形成されることができる。
【0076】
上記弾性部材140に付着されるダンピング増加部145によって、本発明の一実施形態による線形振動子100は、不所望の高周波領域で発生する弾性部材140の固有モードであるサージングモードでの弾性部材140とケース112との接触又は弾性部材140と質量体134との接触を防止することにより、騒音発生と接触による弾性部材140の破壊を未然に防止することができる。
【0077】
また、磁気の効率に変化を与えず共振周波数での動作にも影響を与えないため、最大振動量の変化なしに安定した線形振動が得られる。
【0078】
即ち、本発明の一実施形態による線形振動子100は、ケース112の内部に配置される振動部130、即ち、質量体134及び弾性部材140によって決められる機械的共振周波数に対応する共振周波数を有する電磁気力(電流)を印加させて振動を発生させるが、この場合、不所望の周波数帯域の信号が混じることになる。
【0079】
ここで、不所望の周波数帯域の信号は、振動部130に正常的な上下方向への振動ではない異常振動を誘発させ、特に、質量体134とは関係なく弾性部材140のみが振動するサージングモードを誘発させる。
【0080】
即ち、サージングモードは、不所望の周波数帯域のうち高周波帯域である4000〜6000Hzに対応する周波数信号によって弾性部材140の連結ストリップ部144のみが振動する現象で、このような現象は、弾性部材140とケース112との接触又は弾性部材140と質量体134との接触を誘発して騒音発生をもたらす。
【0081】
このようなサージングモードは、弾性部材140が存在する限り必然的に発生せざるを得ない現象であるため、騒音発生を最小化するためにはサージングモードによる弾性部材140の振動を最小化しなければならない。
【0082】
したがって、本発明の一実施形態による線形振動子100では、弾性部材140にダンピング増加部145を付着させることによりサージングモードによる当該弾性部材140の振動を最小化している。
【0083】
図5を参照すると、ダンピング増加部145が付着されている線形振動子Aの場合、ダンピング増加部が付着されていない従来の線形振動子Bに比べてサージングモードでの振動の変位が大きく減少したことを確認することができる。
【0084】
図5は、有限要素モデルを用いて共振による弾性部材140の変位の変化をハーモニック(harmonic)解釈によって検証したグラフで、ダンピング係数が0.1のダンピング増加部145が20μmの厚さでコーティングされた場合を仮定したものである。
【0085】
図5に示されるように、不所望の周波数帯域のうちサージングモードを誘発させる高周波帯域(4000〜6000Hz)でダンピング増加部145がコーティングされた弾性部材140の場合が従来の場合より変位の変化が大きく減少したことが分かる。
【0086】
さらに、本発明の一実施形態による線形振動子100は、コイル132に電源が印加されるように基板150を備え、当該基板150は、印刷回路基板であることができる。
【0087】
ここで、上記基板150は、振動部130の振動時にマグネット122と接触しないように当該マグネット122を通過させる貫通ホール152を備えることができる。
【0088】
即ち、上記貫通ホール152は、上記マグネット122と上記基板150との接触を防止し、上記振動部130の振動及び運動の際に振幅に制限がないようにして当該振動部130の最大振動量を確保することができる。
【0089】
したがって、本発明の一実施形態による線形振動子100は、上記貫通ホール152によって、より安定した線形振動を具現することができる。
【0090】
具体的には、上記基板150の一端は、上記振動部130と結合して自由端となり、他端は、固定部110に結合して固定端となることができる。
【0091】
上記固定部110に結合される上記基板150の他端には、コイル132に電源を供給するための電源連結端子154が形成され、当該電源連結端子154は、固定部110であるケース112の外部に配置されることができる。
【0092】
また、上記基板150の一面には、上記振動部130の振動による当該振動部130と固定部110であるブラケット114との接触を防止するようにするダンパー160が備えられることができる。
【0093】
上記ダンパー160は、上記振動部130の線形運動による接触を防止するように弾性材質からなり、過度な振動によって当該振動部130が上記ブラケット114に接触してタッチ騒音が発生することを防止すると共に当該振動部130の磨耗を防止することができる。
【0094】
ここで、上記ダンパー160には、外部衝撃がある場合に当該外部衝撃を吸収するようにゴム、コルク、プロピレン又はポロン等の多様な衝撃吸収材質を用いることができる。
【0095】
上記ダンパー160は、図1から図4に示されるように基板150の下面に備えられることができるが、これに限定されず、ケース112の上部の内部密閉面又はブラケット114の上面に備えられることもできる。
【0096】
図6は、本発明の他の実施形態による線形振動子を示す概略断面図である。
【0097】
図6を参照すると、本発明の他の実施形態による線形振動子200は、マグネット222及びヨークプレート224の形成位置を除いては前述した本発明の一実施形態による線形振動子100と同一であるため、以下では当該マグネット222及びヨークプレート224の形成位置に関してのみ説明する。
【0098】
マグネット222は、固定部210に結合されるものの、前述した本発明の一実施形態による線形振動子100とは異なり、当該固定部210のブラケット214ではないケース212の内部密閉面に結合されることができる。
【0099】
したがって、上記弾性部材240は、上下振動時にマグネット222との接触を防止するために、中央に当該マグネット222の外径より大きいホールを備えることができる。
【0100】
ここで、上記マグネット222の一面である下部面には、当該マグネット222との相互作用によって電磁気力を発生させるコイル232を通して当該マグネット222に流れる磁束を円滑に形成するようにするヨークプレート224が結合されることができる。
【0101】
図7は、本発明のさらに他の実施形態による線形振動子を示す概略断面図である。
【0102】
図7を参照すると、本発明のさらに他の実施形態による線形振動子300は、マグネット322を除いては前述した本発明の一実施形態による線形振動子100と構成及び効果が同一であるため、以下では当該マグネット322に関してのみ説明する。
【0103】
マグネット322は、第1及び第2のマグネット322a、322bを含むことができる。
【0104】
上記第2のマグネット322bは、固定部310であるケース312の上部の内部密閉面に接触して形成され、上記第1のマグネット322aは、ブラケット314の上面に結合して形成されることができる。
【0105】
上記第1及び第2のマグネット322a、322bは、磁場を発生させるようにそれぞれ垂直方向に上下部が相違する極に着磁されて一定強さの磁力を発生させる円筒状の永久磁石であり、ケース312の上部の内部密閉面及びブラケット314の上部面に固定配置されるように接着剤等で接着されることができる。
【0106】
上記第1及び第2のマグネット322a、322bは、磁力を発生させるように同じ極性が対向して配置され、離隔して形成されることができる。
【0107】
極性が対向するように配置される上記第1及び第2のマグネット322a、322bによって、当該第1及び第2のマグネット322a、322bの間に存在する磁気力線が半径方向の外方に広がって磁気の効率が高くなり、特に、当該第1及び第2のマグネット322a、322bの外側に位置するコイル332が鎖交される箇所に磁気力が集中されるため、同一体積で同一電流を消費する場合、単一のマグネットに比べてより大きな電磁気力及び振動量を具現することができる。
【0108】
しかしながら、上記マグネット322は、第1及び第2のマグネット322a、322bで形成されることに限定されず、極性が対向するように配置されさえすれば3個以上のマグネットで形成されても良い。
【0109】
ここで、上記第1のマグネット322aの一面である上部面には、当該第1のマグネット322aとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイル332を通して当該第1のマグネット322aに流れる磁束を円滑に形成するようにするヨークプレート324が結合されることができる。
【0110】
但し、上記ヨークプレート324は、上記第1のマグネット322aと上記第2のマグネット322bとの間に配置されても良い。
【0111】
上述した本発明の実施形態によると、弾性部材140、240にダンピング増加部145を付着させることにより、不所望の高周波領域で発生する弾性部材140、240の固有モードであるサージングモードでの弾性部材140、240とケース112、212、312との接触又は弾性部材140、240と質量体134との接触を防止して騒音発生と接触による弾性部材140、240の破壊を未然に防止することができる。
【0112】
また、磁気の効率に変化を与えず共振周波数での動作にも影響を与えないため、最大振動量の変化なしに安定した線形振動が得られる。
【0113】
以上、本発明による実施形態を基に本発明の構成及び特徴を説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲内で多様な変更又は変形が可能であることは本発明の属する技術分野における当業者に自明のことである。したがって、このような変更又は変形は、添付の特許請求の範囲に属する。
【符号の説明】
【0114】
100、200、300 線形振動子
110、210、310 固定部
120 磁界部
122、222、322 マグネット
130 振動部
132、232、332 コイル
134 質量体
136 ホルダー
140、240 弾性部材
145 ダンピング増加部
150 基板
160 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定サイズの内部空間を提供する固定部と、
前記内部空間に配置され磁力を発生させる少なくとも一つのマグネットと、
前記マグネットと対向するように配置されて当該マグネットとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイルと質量体とを備える振動部と、
前記固定部と前記振動部に結合して当該振動部の振動を媒介し、表面の所定領域にダンピング増加部が付着される弾性部材と
を含む、線形振動子。
【請求項2】
前記ダンピング増加部は、前記弾性部材にコーティングされる、請求項1に記載の線形振動子。
【請求項3】
前記ダンピング増加部は、ゴム材質で形成される、請求項1または2に記載の線形振動子。
【請求項4】
前記ダンピング増加部は、ウレタンを含む、請求項1から3の何れか1項に記載の線形振動子。
【請求項5】
前記弾性部材は、前記固定部に結合する固定端部と、前記振動部に結合する自由端部と、前記固定端部と前記自由端部とを連結して弾性力を提供する少なくとも一つの連結ストリップ部と、を含み、
前記ダンピング増加部は、前記少なくとも一つの連結ストリップ部の所定領域に付着される、請求項1から4の何れか1項に記載の線形振動子。
【請求項6】
前記コイルに電源が印加されるように一端は前記振動部と結合して自由端となり他端は前記固定部に結合して固定端となる基板をさらに含む、請求項1から5の何れか1項に記載の線形振動子。
【請求項7】
前記固定部は、前記内部空間を提供し下部が開放されたケースと、前記内部空間を密閉するブラケットと、を含み、
前記マグネットは、前記ブラケットの一面又は前記ケースの一面に結合する、請求項1から6の何れか1項に記載の線形振動子。
【請求項8】
前記固定部は、前記内部空間を提供し下部が開放されたケースと、前記内部空間を密閉するブラケットと、を含み、
前記マグネットは、複数形成されて前記ケースの一面と前記ブラケットの一面にそれぞれ結合する、請求項1から6の何れか1項に記載の線形振動子。
【請求項9】
一定サイズの内部空間を提供し下部が開放されたケースと前記内部空間を密閉するブラケットとを備える固定部と、
前記内部空間に配置され磁力を発生させる少なくとも一つのマグネットと、
前記マグネットと対向するように配置されて当該マグネットとの相互作用によって電磁気力を発生させるコイル及び質量体を固定支持するホルダーを備える振動部と、
前記固定部と前記振動部に結合して当該振動部の振動を媒介し、表面の所定領域にゴム材質のダンピング増加部がコーティングされる弾性部材と
を含む、線形振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−85438(P2013−85438A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130(P2012−130)
【出願日】平成24年1月4日(2012.1.4)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】