説明

線材の巻取り・繰出し装置

【課題】コストの増加を抑えながら、高い精度で線材の巻取り・繰出しを実行することができる線材の巻取り・繰出し装置を提供する。
【解決手段】線材の巻取り・繰出し装置1は、ベースフレーム10,11,12と、モータ21と、円柱状の外観形状を有し、外周面に線材60の巻取り領域を有するドラム40と、ドラム40の断面中心よりも径方向外側をX軸方向に挿通し、ドラム40をX軸方向にスライド自在に支持するスライド軸32,33と、ドラム40の回転に連動して、ドラム40をX軸方向にスライド(矢印A)させる送りねじ50とを有する。そして、スライド軸32,33は、モータ21からの回転駆動力を受け、その軸中心とドラム40の断面中心とのオフセット量を半径として、ドラム40の断面中心を中心として公転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の巻取り・繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
線材の巻取り・繰出し装置は、生産ラインにおけるワークの昇降やスライド駆動などの広い用途に用いられている(例えば、特許文献1,2)。従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置の構成について、図6を用い説明する。
図6に示すように、従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置は、フレーム910,911,912,913をベースに構成され、フレーム913にモータ920が取り付けられている。モータ920の回転軸には、スプライン軸951が接合され、途中の部分にはプーリ991が取り付けられている。スプライン軸951は、フレーム911とフレーム912とに回転自在の状態で支持されている。
【0003】
プーリ991の下方には、プーリ992が配されており、プーリ991とプーリ992との間には、ベルト990が張設されている。プーリ992は、送りねじ950の軸端に取り付けられており、送りねじ950は、フレーム911とフレーム912とに回転自在の状態で支持されている。
スプライン軸951には、その回転に連動して回転するドラム940が取り付けられており、スリーブ945,946により、X軸方向左右にスライド自在となっており、回転駆動力をドラム940へ伝達する。ドラム940のX軸方向左右には、スプライン軸951の回転によっても回転しないブラケット941、942が取り付けられている。ブラケット941とブラケット942とは、Z軸方向下方部分でブリッジ部材943により連結されている。そして、ブリッジ部材943には、ねじ受け部材944が固定されており、送りねじ950に対応するねじ孔が開けられている。これより、ドラム940は、送りねじ950の回転量に応じて、X軸方向左右にスライドする。
【0004】
従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置では、モータ920の回転量に応じてドラム940が回転しながら、当該回転量に応じてX軸方向にスライド駆動する。このため、ドラム940の外周面に巻き取られるワイヤ960は、重なったりせずに整列状態で巻取り・繰出しが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−127138号公報
【特許文献2】特開2009−204134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラム940に回転駆動力を伝達するのにスプライン軸951を用いているので、ドラム940の回転に際してのガタつきが生じるという問題がある。即ち、スプライン軸951に対してドラム940をスライド自在とするために、スプライン軸951とスリーブ945,946の間には、ある程度の隙間を確保しなければならず、これがガタつきの原因となる。具体的には、図7に示すように、スプライン軸951が挿通する孔940bがドラム940の断面中心に開けられているので、スプライン軸951とドラム940との間にガタつきがある場合、ドラム940の外周面940aでは、ドラム径Dに応じてガタつきが増幅されてしまう。
【0007】
ドラム940の回転に際して大きなガタつきが存在すると、線材の巻取り・繰出しもスムーズに行うことができなくなり。また、モータ920の回転駆動を停止している際にも、ドラム940が微動する場合が生じ、これに伴いワイヤ960も巻取りまたは繰出されてしまう。このような現象は、装置の精度という観点から問題となる。
なお、スプライン軸951とスリーブ945,946とについて、高い精度のものを用いればガタつきを小さくすることも考えられるが、このように高い精度のスプライン軸951およびスリーブ945,946を採用するためにはコストの増加を招くという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図るべくなされたものであって、コストの増加を抑えながら、高い精度で線材の巻取り・繰出しを実行することができる線材の巻取り・繰出し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、次の特徴を備える。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置は、ベースフレームと、ベースフレームに固定され、回転駆動力を発生する駆動源と、円柱状または円筒状の外観形状を有し、外周面に線材の巻取り領域を有するドラムと、ドラムに対し、その断面中心よりも径方向外側を長手方向に挿通し、ドラムを長手方向にスライド自在に支持するスライド軸と、ドラムを、その回転に連動して長手方向にスライドさせるスライド駆動部とを有する。そして、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、スライド軸が、駆動源の回転駆動力を受け、その軸中心とドラムの断面中心とのオフセット量を半径として公転し、ドラムは、スライド軸の公転により回転することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、スライド軸が、ドラムの断面中心よりも径方向外側を長手方向に挿通しており、ドラムが、挿通したスライド軸から回転駆動力の伝達を受けて回転するので、ドラム断面中心を長手方向に挿通するスプライン軸から回転駆動力の伝達を受ける上記従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置に比べて、ガタつきを小さくして高い精度での線材の巻取りおよび繰出しが可能となる。即ち、本発明に係る装置では、スライド軸とドラムとの間に精度が上記従来技術に係る装置のスプライン軸とスリーブとの精度と同じであったとしても、スライド軸が挿通している箇所から線材の巻取り領域であるドラムの外周面までの断面方向での距離が、上記従来技術に係る装置に比べて小さいので、その分、ガタつきが小さく、高い精度を得られる。
【0011】
また、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記のようにドラムの断面中心ではなく、スライド軸が断面中心よりも径方向外側を挿通する構成とすることで、高い精度を得られるので、必ずしも高い加工精度で各部位を製作しなくても高い精度を得られる。
従って、本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置は、コストの増加を抑えながら、高い精度で線材の巻取り・繰出しを実行することができる。
【0012】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置は、一例として、次のようなバリエーション構成を採用することができる。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、スライド駆動部が、ベースフレームに固定された送りねじを有し、ドラムの断面中心において、その軸方向(長手方向)に長さを有し、送りねじと螺合するねじ穴が設けられており、ドラムが、その回転による前記送りねじのねじ込み量に応じてスライドするという構成を採用することができる。このような構成を採用することにより、ドラムは、断面中心のねじ穴に螺合された送りねじにより、回転量に応じて軸方向(長手方向)にスライドできる。このため、送りねじのねじピッチにより、ドラムの外周面への線材の整列巻取りが実現できる。
【0013】
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、送りねじのねじピッチが、ドラムの外周面に巻き取られた状態での線材の幅Wと同値で設定されていることを特徴とする。このような構成を採用することにより、確実に線材の整列巻取りが実現できる。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、スライド駆動部が、ドラムにおける外周面の線材の巻取り領域以外の領域に対し外接し、当該外周面に対して回転自在のローラを有し、スライド駆動部におけるローラの中心軸がドラムの中心軸に対して、0[°]よりも大きく90[°]未満の角度を以って配されており、ドラムが、その回転により、スライド駆動部のローラとの間での中心軸同士がなす角度に応じて、スライドするという構成を採用することができる。
【0014】
このような構成を採用する場合には、上記送りねじを採用する場合に比べて、種々の径を有する線材に対応することができ、種々の線材に適用することができる。よって、装置の汎用化により、製造コストの低減を図ることが可能となる。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、ドラムの外周面に巻き取られた状態での前記線材の幅をWとし、ドラムの外周径をDとするとき、スライド駆動部におけるローラの中心軸と、ドラムの中心軸とがなす角度θは、次の関係を満たすように設定される。
【0015】
[数1] W≦πD×tanθ
これにより、巻取りの際のテンションにより断面形状が変形するような線材に対しても、本発明に係る装置では、確実に線材の整列巻取りが可能となる。
本発明に係る線材の巻取り・繰出し装置では、上記構成において、ドラムに対し、その断面中心に対して前記スライド軸と同心円上を長手方向に挿通し、ドラムを長手方向にスライド自在に支持する第2スライド軸を有し、スライド軸と第2スライド軸とは、その軸中心が、ドラムの断面中心に対して点対称の関係を以って配置されているという構成を採用することもできる。このように第2スライド軸も備える場合には、ドラムへの線材の巻取りに際して大きな力がドラムに係る場合にあっても、高い精度での線材の巻取り・繰出しが可能となる。
【0016】
なお、スライド軸については、3本以上備える構成とすることも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る線材の巻取り・繰出し装置1の外観を示す模式斜視図である。
【図2】線材の巻取り・繰出し装置1の要部構成を示す模式断面図である。
【図3】ドラム40の構成を示す模式正面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る線材の巻取り・繰出し装置2の外観を示す模式斜視図である。
【図5】線材の巻取り・繰出し装置2の要部構成を示す模式正面図である。
【図6】従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】従来技術に係るドラム940の構成を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明を実施するための形態について、図面を参酌しながら説明する。
なお、以下の説明に係る実施の形態は、本発明の構成上の特徴および当該特徴的構成から奏される作用効果を分かりやすく説明するための例として用いるものである。よって、本発明は、その本質的な特徴部分を除き、以下の形態に何ら限定を受けるものではない。
[実施の形態1]
1.全体構成
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1の全体構成について、図1を用い説明する。
【0019】
図1に示すように、線材の巻取り・繰出し装置1は、フレーム10,11,12をベースに形成されている。フレーム11,12は、フレーム10におけるX軸方向の両端部分からZ軸方向上向きに規律する状態で接合されている。フレーム12には、X軸方向右側にギアボックス20を介してモータ21が取り付けられている。
フレーム11およびフレーム12のそれぞれには、互いの対向する側の主面に沿って、回転プレート30,31が配されている。回転プレート30,31は、スライド軸32,33により互いが接合されている。また、回転プレート30と回転プレート31との間には、円柱状のドラム40が配されており、スライド軸32,33が挿通されている。ドラム40は、スライド軸32,33の長手方向(X軸方向)に沿ってスライド移動が自在となっている。
【0020】
ドラム40は、その外周面の一部に線材であるワイヤ60を巻回できる領域がある。また、ドラム40には、X軸方向左側の端面に対し、断面中心に形成された雌ねじ部に螺合する送りねじ50が挿入されている。送りねじ50は、他端がフレーム11に固定されており、回転プレート30とは干渉しないようになっている。
フレーム10には、2箇所に孔が開けられており(図1では、1箇所だけを図示)、それぞれからワイヤ60がZ軸方向に出入りできるようになっている。そして、フレーム10におけるZ軸方向上面には、上記孔の縁部分にワイヤ60をガイドする位置決めローラ70が回転自在の状態で設けられている。
【0021】
図1に示すように、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、モータ21の正逆回転に伴い回転プレート30,31が回転する。そして、回転プレート30,31の回転により、モータ21からの回転駆動力は、スライド軸32,33を介してドラム40に伝達され、ドラム40も回転する。このとき、送りねじ50との螺合により、ドラム40の回転量と送りねじ50のねじピッチに応じて、ドラム40は、X軸方向の右または左にスライド駆動する(矢印A)。
【0022】
以上のようにして、ワイヤ60の巻取り・繰出しが実行される。
2.要部構成
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1の要部構成について、図2を用い説明する。図2は、ドラム40およびその周辺部分の構成を示す断面図である。
図2に示すように、フレーム11,12の間に配されたドラム40には、X軸方向に挿通する3つの孔が設けられている。その内の一つの孔40bは、ドラム40の断面中心に設けられており、X軸方向左側部分に雌ねじ部40cが形成されており、フレーム11に固定された送りねじ50が螺合している。残り二つの孔は、孔40bよりも断面径外側に設けられており、断面中心に対して同心円上に設けられている。各孔には、リニアモーションベアリング81,82,83,84が取り付けられており、挿通するスライド軸32,33がスライド自在となっている。ここで、送りねじ50およびこれと螺合する雌ねじ部40cのねじピッチは、巻取り・繰出しを行うワイヤ60の線径に応じて規定されている。
【0023】
回転プレート30,31はそれぞれフレーム11,12に対して、ベアリング80,85を介して取り付けられており、回転プレート31は、モータ21に連結された回転軸20aと接合されている。
なお、ワイヤ60は、ドラム40における外周面40aの一部に巻取られる。
3.ドラム40における孔40d,40eの配置
ドラム40における孔40d,40eの配置について、図3を用い説明する。図3は、ドラム40を図1におけるX軸方向左側より見た模式正面図である。
【0024】
図3に示すように、ドラム40においては、送りねじ50と螺合する雌ねじ部40cが形成された孔40bは、ドラム40の断面中心に開けられている。
一方、スライド軸32,33が挿通する孔40d,40eは、ドラム40の断面中心からD/2だけ外側であって、互いに同心円上に開けられている。
図6に示す従来技術に係る線材の巻取り・繰出し装置では、ドラムの断面中心でドラムに回転駆動力を伝達するので、スプライン軸とドラムとの間のガタつきが、ドラムの直径Dに比例して増幅された形で現れ、線材の巻取りにおいて精度低下に繋がる。
【0025】
一方、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、ドラム40に回転駆動力を伝達するスライド軸32,33が挿通する孔40d,40eが断面中心からD/2だけ外側に開けられているので、仮に、スライド軸32,33とリニアモーションベアリング81〜84との間のガタつきが上記と同様である場合にも、ドラム40の外周面40aに現れるガタつきは、上記従来の線材の巻取り・繰出し装置に比べて非常に小さなものとなる。
【0026】
以上より、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置1では、高精度で高価なベアリングなどを特に用いなくても、従来技術に係る装置に比べて高い精度での線材の巻取り・繰出しを実行することができる。
[実施の形態2]
1.全体構成
実施の形態2に係る線材の巻取り・繰出し装置2の全体構成について、図4を用い説明する。なお、図4では、上記実施の形態1に係る線材の巻取り・繰出し装置1と同一構成の部分については、同一の符号を付し、以下においてもその説明を省略する。
【0027】
図4に示すように、フレーム11には、送りねじは取り付けられておらず、ドラム40にも対応する雌ねじ部が形成されていない。本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、フレーム12にL字形状のサブフレーム93が接合されており、その先端部分がドラム40の上方の一部を覆うようになっている。サブフレーム93の先端部分には、角度調整ブロック92が軸Ax周りに回転自在(rot.1)の状態で取り付けられている。
【0028】
角度調整ブロック92に対しては、サブフレーム93の幅方向両縁に形成されたガイドプレート94,95により、回転の範囲が制限されている。また、ガイドプレート94,95には、角度調整ねじ96が取り付けられており、角度調整ブロック92の回転を規制できるようになっている(ガイドプレート94に取り付けられている角度調整ねじについては、図示を省略)。
【0029】
角度調整ブロック92には、これと一体に回転するローラガイド91が接合されており、ローラガイド91には、送りローラ90が軸支されている。ローラガイド91の軸部分91aは、角度調整ブロック92の上方に突出しており、一体として回転するように固定されている。送りローラ90は、ドラム40の外周面に対して接しており、ドラム40の回転に伴って従動するようになっている。また、ローラ90の回転軸は、ドラム40の回転軸に対して平行ではなく、巻き取るワイヤ60の幅Wに応じて角度を有し設定されている。
【0030】
ローラ90は、接触圧は、例えば、2[kgf]〜7[kgf]とすることができる。より具体的には、ねじによりドラム40の外周面40aに対するローラ90の押し付け力を調整できる構成を採用する場合、例えば、接触圧が0[kgf]の状態から、ねじを1.5〜2回転(1.5[mm]程度)締め込む程度でよい。
なお、ワイヤ60は、テンションをかけてドラム40に巻き取られるため、ドラム40の外周面上では、高さに比べて幅が広い扁平形状へと変形する。本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、このようなワイヤ60の断面形状の変形も考慮してローラ90の回転軸の角度設定がなされている。これについて、次に説明する。
【0031】
2.ローラ90の角度設定
線材の巻取り・繰出し装置2におけるローラ90の回転軸の角度設定について、図5を用い説明する。
図5に示すように、ローラ90は、ドラム40の外周面40aに対して接するように配されている。なお、ローラ90が接する領域は、ワイヤ60の巻取り領域を除く領域である。
【0032】
図5の二点鎖線で囲む部分に示すように、ローラ90の回転軸Axは、ドラム40の回転軸Axに対して、角度θを以って配されている。上記のように、ドラム40に巻き取られた状態でのワイヤ60の断面幅をWとし、ドラム40の外径をDとするとき、次の関係を満たすようにローラ90が配されている。
[数2] W≦πD×tanθ
3.優位性
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、上記実施の形態1に係る線材の巻取り・繰出し装置1が有する優位性に加えて、次のような優位性も併せ持つ。
【0033】
本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、ドラム40の外周面40aに対して外接するローラ90を備える。ローラ90は、その回転軸Axがドラム40の回転軸Axに対して調整できるようになっている。このため、モータ21からの回転駆動力を受けてドラム40が回転駆動するとき、ローラ90との接触により発生するドラム40の回転軸方向(Y軸方向)への力の成分の作用により、ドラム40がその回転軸方向へとスライドする(図4の矢印B)。
【0034】
ドラム40の回転軸Axに対するローラ90の回転軸Axがなす角度は、上記(数2)を満足するように設定されており、当該状態で、角度調整ブロック92は、角度調整ねじ96によって回転が規制される。このように、ドラム40は、一回転するときに、ワイヤ60の幅W分だけX軸方向にスライドし(図4の矢印B)、ドラム40に対するワイヤ60の巻取り・繰出しに際して、整列状態を維持することができる。
【0035】
以上のように、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、ドラム40の回転軸Axに対するローラ90の回転軸Axの角度θをワイヤ60の線幅W毎に設定することができ、種々の線幅のワイヤなどの線材に対応することができる。
また、線材の巻取り・繰出し装置2では、ローラ90はドラム40の回転に対して従動しているだけであって、ローラ90を駆動させるための別の駆動源を必要とはせず、装置コストという観点から優れている。
【0036】
従って、本実施の形態に係る線材の巻取り・繰出し装置2では、上記実施の形態1に係る線材の巻取り・繰出し装置1が有する優位性に加えて、種々の線幅の線材に対して対応が可能であるとともに、コストの上昇を招くことがなく、線材へのダメージを軽減しながら整列状態を以って巻取り・繰出しができる。
[その他の事項]
上記実施の形態1,2では、巻取りおよび繰出しの対象である線材の一例として、ワイヤ60を採用したが、線材の種類については、これに限られるものではない。ロープや紐に適用することもでき、また、ワイヤについても単線のものや撚り線のものに適用することもできる。
【0037】
また、上記実施の形態1,2では、ワイヤの一方端側を巻取りながら、他方端側を繰出すという駆動形態を採用したが、例えば、ウィンチのように、ワイヤの一端をドラムに固定しておき、他端を巻取り・繰出すという構成とすることもできる。
また、上記実施の形態1,2では、ドラム40を金属材料を用い構成することとしたが、使用材料はこれに限定されるものではない。例えば、ローラの外周面をゴムや樹脂などで構成することもできるし、ドラムおよびローラをともに樹脂材料を用い構成することもできる。
【0038】
なお、上記実施の形態2の構成を採用する場合において、ローラなどの材料としてゴムなどを用いる際には、ドラムとローラとのスリップ角を考慮することが必要となる場合も考えられる。
また、上記実施の形態1,2では、ドラム40に対して、2本のスライド軸32,33が挿通する構成を一例として採用したが、ドラムを挿通するスライド軸の本数については、これに限定されるものではない。例えば、1本であってもよいし、逆に、3本以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、製造コストの上昇を抑えながら、高い精度での線材の巻取り・繰出しが可能な線材の巻取り・繰出し装置を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0040】
1,2.線材の巻取り・繰出し装置
10,11,12.フレーム
20.ギアボックス
21.モータ
30,31.回転プレート
32,33.スライド軸
40.ドラム
50.送りねじ
60.ワイヤ
70.位置決めローラ
80,85.ベアリング
81〜84.リニアモーションベアリング
90.送りローラ
91.ローラガイド
92.角度調整ブロック
93.サブフレーム
94,95.ガイドプレート
96.角度調整ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、
前記ベースフレームに固定され、回転駆動力を発生する駆動源と、
円柱状または円筒状の外観形状を有し、外周面に線材の巻取り領域を有するドラムと、
前記ドラムに対し、その断面中心よりも径方向外側を軸方向に挿通し、前記ドラムを軸方向にスライド自在に支持するスライド軸と、
前記ドラムを、その回転に連動して長手方向にスライドさせるスライド駆動部と、
を有し、
前記スライド軸は、前記駆動源の回転駆動力を受け、その軸中心と前記ドラムの断面中心とのオフセット量を半径として公転し、
前記ドラムは、前記スライド軸の公転により回転する
ことを特徴とする線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項2】
前記スライド駆動部は、前記ベースフレームに固定された送りねじを有し、
前記ドラムの断面中心には、軸方向に長さを有し、前記送りねじと螺合するねじ穴が設けられており、
前記ドラムは、その回転による前記送りねじのねじ込み量に応じてスライドする
ことを特徴とする請求項1に記載の線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項3】
前記送りねじのねじピッチは、前記ドラムの外周面に巻き取られた状態での前記線材の幅Wと同値で設定されている
ことを特徴とする請求項2に記載の線材の巻取り・送り出し装置。
【請求項4】
前記スライド駆動部は、前記ドラムにおける外周面の前記線材の巻取り領域以外の領域に対し外接し、当該外周面に対して回転自在のローラを有し、
前記スライド駆動部のローラは、その中心軸が前記ドラムの中心軸に対して、0°よりも大きく90°未満の角度を以って配されており、
前記ドラムは、その回転により、前記スライド駆動部のローラとの間での中心軸同士がなす角度に応じて、スライドする
ことを特徴とする請求項1に記載の線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項5】
前記ドラムの外周面に巻き取られた状態での前記線材の幅をWとし、
前記ドラムの外周径をDとするとき、
前記スライド駆動部におけるローラの中心軸と、前記ドラムの中心軸とがなす角度θは、
W≦πD×tanθ
の関係を満たす
ことを特徴とする請求項4に記載の線材の巻取り・繰出し装置。
【請求項6】
前記ドラムに対し、その断面中心に対して前記スライド軸と同心円上を長手方向に挿通し、前記ドラムを長手方向にスライド自在に支持する第2スライド軸を有し、
前記スライド軸と第2スライド軸とは、その軸中心が、前記ドラムの断面中心に対して点対称の関係を以って配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の線材の巻取り・繰出し装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−107700(P2012−107700A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256990(P2010−256990)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(592127965)NKE株式会社 (28)
【Fターム(参考)】