説明

線材及び該線材よりなる製品

【課題】 本発明は、植物忌避用の資材としての汎用性があり、また、耐候性に優れた植物忌避用線材を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る植物忌避用線材Aは、合成樹脂と植物忌避剤とを含有する混合樹脂を含むことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蔓植物の這い上がりを防止する線材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記先行技術文献に例示するように、樹根から這い上がってくる蔓植物が伸長しないように種々の対策が講じられている。
【0003】
下記特許文献1に示されるものは、発芽、育成した植物の根が、屋上の目地間に配された押さえコンクリートやドレン回りのシール材に侵入するのを防止するものであり、建造物の屋上などの防水施工の際に使用される目地材や屋上などの水下部に設けられるドレン回りをシールするシール材に植物忌避剤としてクロロトリルプロピオン酸ポリグリコールエステルを含有させたものである。
【0004】
下記特許文献2に示されるものは、堤防や街路樹に植生された植物の成長に伴う根の蔓延よる問題を解決し、植物の生長を妨げることなく根域と非根域を区別する植物忌避資材に関するものであり、基材シートの少なくとも片側表面に、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステル(植物忌避剤)を有している植物忌避資材が示されており、植物忌避剤を基材シートに保持させる方法として、接着剤を介して付着させるか又は含浸させることが示され、基材シートとしては、織編物、立体織編物、不織布等の繊維構造物を用いることができ、道路や堤防等の法面、路肩、中央分離帯、建物周辺等の緑化用地において、布帛の形態のまま敷設して使用することができる植物忌避資材が示されている。
【0005】
下記特許文献3に示されるものは、樹根の横方向への伸長を阻害することなく、樹根の地表面への隆起を抑制し、街路の舗装部分におけるブロック等を持ち上げるのを防止することを目的とするものであり、樹木の根元部における樹根の上部側に、樹根の隆起を抑制する忌避剤を含浸やコーティング等により具備させた樹根忌避用シート材を少なくとも水平方向に配置することが示されており、忌避剤として2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)−プロピオン酸ポリグリコールエステルを使用することが示されており、シートは、たとえばスパンボンド不織布、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成繊維からなる不織布、布帛、網状物のような素材で構成されることが示されている。
【0006】
下記特許文献4に示されるものは、金網、フェンス、コンクリート、支柱、ロープ等の建築物に蔓性植物が巻きついて生育したり、這い上がって生育することを抑制する塗料及びその生育抑制方法に関するものであり、オーキシン活性を有する化合物を有効成分として含有する塗料を建築物に塗布する蔓性植物の生育抑制方法が示されており、前記オーキシン活性を有する化合物が、フェノキシ酸系化合物、芳香族カルボン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、前記フェノキシ酸系化合物が、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、その塩及びその誘導体、2−メチル−4−クロロフェノキシ酢酸、その塩及びその誘導体、2−メチル−4−クロロフェノキシ酪酸、その塩及びその誘導体、α−(2−メチル−4−クロロフェノキシ)プロピオン酸、その塩及びその誘導体、3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルオキシ酢酸、その塩及びその誘導体、トリエチルアンモニウム=3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルオキシアセタート、その塩及びその誘導体、ブトキシエチル=3,5,6−トリクロロ−2−ピリジルオキシアセタート、その塩及びその誘導体、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド、その塩及びその誘導体、α−(2−ナフトキシ)プロピオンアニリド、その塩及びその誘導体、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、前記芳香族カルボン酸系化合物が、3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸、その塩及びその誘導体、4−アミノ−3,5,6−トリクロロ−2−ピリジンカルボン酸、その塩及びその誘導体、からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることが示されており、塗料の塗布方法は、比較的に塗布面積が狭い場合には刷毛刷りやコテ塗りで、広い面積の場合にはスプレー塗装で行い、フェンス、金網などの部材を予め前記の塗料中にディッピングすることもできることが示されている。
【0007】
下記特許文献5に示されるものは、大型樹木のように根の貫通力が高い植生に対しても優れた植物忌避性を発揮する繊維構造物からなる植物忌避シートに関するものであり、重ね組織を有する織物からなる基材シートの少なくとも片面に高分子樹脂が付与されている植物忌避シートが示されており、樹脂の付与方法としては、コーティング法、スプレー法、グラビアロール等による印刷法などの方法が使用でき、また、基材シートの両面に樹脂を付与する場合には、ディップ法にて基材シートに樹脂を含浸させることが示されている。
【0008】
下記特許文献6に示されるものは、十分なフィルタ効果を有し、長期間使用した場合であっても、十分に耐根効果を発揮することができる耐根シート及びその製造方法に関するものであり、植物忌避剤が吸着された微粉体を繊維に含ませた耐根繊維からなり、透水量が200ml/cm・30s以上である耐根シートが示されており、耐根繊維は、植物忌避剤が吸着された微粉体を繊維に練り込んでなることが示されており、植物忌避剤が、2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシン)−プロキオン酸ポリグリコールエステルであることが示されており、
2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシン)−プロキオン酸ポリグリコールエステルは、加水分解することにより、ポリグリコール鎖に結合した2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシン)−プロキオン酸が徐々に解離し、解離した2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシン)−プロキオン酸が、植物の根の張り出しに対して、耐根効果を発揮することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−183895号公報
【特許文献2】特開2002−335762号公報
【特許文献3】特開2004−168681号公報
【特許文献4】特開2004−345992号公報
【特許文献5】特開2005− 58178号公報
【特許文献6】特開2007−222040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のような従来の植物忌避資材は、特許文献1に記載のシール材に植物忌避剤を含有させる以外は、当該植物忌避剤を基材シートに接着、含浸又はコーティング、繊維への練り込み等の後加工により、植物忌避剤を付着させるものであった。
【0011】
したがって、シール材に植物忌避剤を含有させる場合には用途が限定され、また、後加工により植物忌避剤を付着させた場合には、植物忌避資材が屋外で使用されることが前提であるため、設置中に風雨にさらされ、また、乾燥や過熱によって、剥離や摩耗等による植物忌避剤の欠落が生じて植物忌避効果が低下する欠点があり、結局、耐候性が乏しいものであった。
【0012】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、資材としての汎用性があり、また、耐候性に優れた植物忌避用線材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる線材は、合成樹脂と植物忌避剤とを含有する混合樹脂を含むものである。
【0014】
なお、上記線材は、その断面において、鞘部が前記混合樹脂であり、芯部が線状支持体である複合線材をであってもよい。
【0015】
また、本発明にかかる線材構造物は、前記の線材又は複合線材からなる。この線材構造物は、その空隙率が30%〜99%であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明にかかる植物忌避用フェンスは、前記の線状支持体が金属線である前記複合線材からなる。
【0017】
さらにまた、本発明にかかる植物忌避用ネットは、前記の線材又は前記の複合線材からなる。
【0018】
また、本発明にかかる植物忌避用立体網状体は、前記の線材により形成される立体網状体であって、前記線材は、不規則なループをなして相互に交差し、かつ前記線材同士の交差点において接着されてなり、空隙率が60%〜99%である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に植物忌避用線材は、汎用性があり、かつ、耐候性に優れたものであり、蔓植物の這い上がりを防止するのに最適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1に係る植物忌避用線材であって、図中の(a)は部分正面図、(b)は断面図である。
【図2】実施例1に係る植物忌避用線材を使用して作成したフェンス用の金網の部分拡大図付斜視図である
【図3】実施例4に係る植物忌避用線材の部分正面図である。
【図4】実施例4に係る植物忌避用線材を使用して作成したネットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、蔓植物の巻き付き、張り付きや這い上がりを防止する目的で、当初、従来から知られる防根シートを用いることを考えた。しかし、従来より知られる、例えば、不織布に防根剤を含浸させた防根シートは、屋外フェンスに併設して用いると、視野が遮断されてしまい、透視性が失われることになった。また、この防根シートは、屋外で使用すると、風などの影響により、翻ったり、靡いたりするという問題もあった。
【0022】
従来の防根シートは、土中の根の成長を抑制することを目的にしており、根が防根シートを突き破らないようにするため、空隙の小さいものが検討されてきた。このような事情から、視界を妨げない程度の空隙を有する防根シートは未だ知られていない。
【0023】
そこで、本発明者らは、植物忌避用シートの形状、特に空隙率に着目し、防根剤を線材形状にすると、視野が遮られることなく、蔓植物の巻き付きを抑制できるのではないかとの着想を得た。
【0024】
即ち、本発明は、合成樹脂と植物忌避剤とを含有する混合樹脂を含む線材である。以下、本発明を説明する。
【0025】
(植物忌避剤)
植物忌避剤は、植物の根、茎、葉、蔓などの伸長方向を抑制し、これらの成長を他の方向へ向けさせる効果を有する剤である。前記植物忌避剤は、例えばフェノキシ系化合物、ウレア系化合物、有機リン系化合物、ジフェニルエーテル系化合物、トリアジン系化合物等の公知の忌避剤を用いることができる。なかでも、植物忌避剤は、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルであることが好ましい。かかる植物忌避剤は、熱安定温度が高く、植物忌避効果も優れる。
【0026】
本発明の線材は、蔓植物の巻き付きや張り付きを防止する用途に、特に好適に利用することができる。この場合、植物忌避剤は、好ましくは植物根忌避剤である。植物根忌避剤であると、蔓植物が壁などに張り付くときに必要な付着根や吸着根の張り付きを防止することができるので、一般に蔓植物等が巻き付きやすい線状体、ネット又は網状体等の形状であっても、蔓植物の這い上がりを防止することができる。
【0027】
植物忌避剤は、熱安定温度が200℃以上であることが好ましく、熱安定温度が220℃以上であることが好ましい。好ましい上限は、1000℃である。ここで、熱安定温度とは、その温度に達しても、植物忌避の効果を失わない温度をいう。例えば、熱安定温度において、気化、分解、引火、又は発火しないことをいう。植物忌避剤の熱安定温度が200℃以上であると、熱可塑性樹脂と混合して用いる場合に、熱可塑性樹脂を加熱して軟化させても熱的に安定であり、植物忌避効果が失われることがない。
【0028】
(合成樹脂)
合成樹脂は、線材形状に加工できるものであればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、又は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂のうちから1又は2以上を選択して用いることができる。
【0029】
なかでも、合成樹脂は熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂は、加熱することにより軟化するので、容易に線材形状に加工することができる。また、耐候性に優れた構成を得る観点から、合成樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンであることがさらに好ましい。
【0030】
(混合樹脂)
混合樹脂は、合成樹脂と植物忌避剤とを含んでなる。好ましくは、植物忌避剤は合成樹脂中に分散されてなる。かかる構成であると、植物忌避剤が脱落したり、劣化したりし難いため、長期にわたり、植物忌避効果を発揮することができる。例えば、このような構成は、合成樹脂中に植物忌避剤を練り込むことにより得ることができる。
【0031】
混合樹脂中の植物忌避剤の含有率は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.3質量%〜10質量%であることが好ましい。混合樹脂中に植物忌避剤を0.1質量%以上含むと、屋外・屋内を問わず、植物忌避効果を発揮することができ、20質量%以下であると、過剰に植物忌避剤を用いることがないので、経済的である。
【0032】
混合樹脂は、合成樹脂及び植物忌避剤以外の他の成分を20質量%以下の範囲で含んでよい。他の成分は、例えば、着色剤、耐候性向上剤、抗菌剤、難燃剤、結晶化剤等あらゆるものを用いて良い。
【0033】
(線材)
線材は、合成樹脂と植物忌避剤とを含有する混合樹脂を含む。線材は、混合樹脂のみからなってよく、又は、混合樹脂と混合樹脂以外の他の物質との複合体であってよい。ここで、線材とは、その断面直径よりも長手方向の長さが長い材料をいう。例えば、繊維、モノフィラメント、紡績糸、撚糸、紐、ロープ、チューブなどである。なかでも、線材は、直線状或いは曲線状に連続した形状の材料であることが好ましい。
【0034】
線材は、その断面において、中実又は中空形状であってよく、その断面形状は、円形、楕円形、又は三角形、四角形、五角形などの多角形等どのような断面であってもよい。なかでも、断面形状は、円形であることが好ましい。円形断面の線材は製造工程を容易にする。
【0035】
線材は、その断面における直径が0.01mm〜20mmであることが好ましく、0.1mm〜10mmであることがより好ましい。直径が0.01mm以上であると、線材の強度を高くすることができ、20mm以下であると、質量あたりの表面積が大きくなり、効率よく植物忌避効果を得ることができる。なお、線材の断面形状が円形でない場合は、線材の断面積を同じ面積の円とみなしたときの直径として取り扱う。
【0036】
線材が繊維又はモノフィラメントである場合には、線材の断面は、複合形状であってよい。例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型などの複合繊維であってよい。
【0037】
(複合線材)
線材は、その断面において、鞘部が前記混合樹脂であり、芯部が線状支持体である複合線材であってよい。このような複合線材は、鞘部により植物忌避効果を得ることができ、芯部により線材に強度を得ることができる。複合線材は、例えば、上記の芯鞘型複合繊維であってよく、又は、線状支持体の表面を混合樹脂で被覆したものであってよい。
【0038】
この場合、鞘部の厚みは、特に限定されないが、0.05mm〜10mmであることが好ましく、0.1mm〜5mmであることがより好ましい。鞘部の混合樹脂の厚みが0.05mm以上であると、鞘部が芯部から剥離し難く、10mm以下であると、経済的である。
【0039】
線状支持体は、特に限定されないが、例えば、繊維、フィラメント、紡績糸、撚糸、紐、ロープなどの樹脂加工品、又は鉄線、真鍮線、ステンレス線、ワイヤー、コイルなどの金属線等であってよく、或いは、これらの中から選ばれる1又は2以上の線状支持体から構成された構造物であってもよい。例えば、漁網などのネット、フェンスなどであってよい。
【0040】
(線材構造物)
本発明はまた、線材又は複合線材からなる線材構造物であってよい。線材構造物とは、1又は2以上の線材或いは複合線材を含み構成された二次元或いは三次元の構造物である。例えば、線材構造物は、線材又は複合線材を用いて形成されてよい。或いは、線材構造物は、市販の紐や金属線などの線状支持体を用いて、ネット、フェンスなどの構造物を作製し、この構造物を構成する線状支持体の表面を混合樹脂で被覆することにより形成されてよい。なお、上記構造物は市販のネットや市販のフェンスなどを用いることもできる。線材構造物は、例えば、不織布、織編物、ネット、メッシュ、網、柵、フェンス、立体網状体などである。このような線材構造物は、それぞれ公知の方法で製造されてよい。
【0041】
線材構造物は、その空隙率が30%〜99%であることが好ましく、50%〜95%であることが好ましい。空隙率が30%以上であると、透視性が良好となる。また、空隙率が99%以下であると、植物がその空隙を通過して成長することが少ない又はない。このような線材構造物は、屋外に立設して用いることができ、このような場合であっても、視界を遮ることがない。また、強い風を受けても翻ったり、靡いたりすることが少ない又はない。このような線材構造物は、フェンスや柵などに併設して利用することができる。なお、空隙率は後述の方法により算出する。
【0042】
線状構造物が、ネット、メッシュ、網である場合、目合いは5mm〜100mmであることが好ましく、10mm〜50mmであることがより好ましい。ここで、目合いとは、有結節の場合は結節間距離をいい、無結節の場合は線材同士の接着点間距離をいう。目合いが5mm以上であると、透視性が良好であり、線状構造物を通して反対側を見ることができ、目合いが100mm以下であると、植物が網目を通り抜け難い。
【0043】
線材構造物は、線材構造物と線状支持体とが一体化された線材複合構造物であってよい。このような構成であると、線状支持体が、線材構造物に優れた強度を与える。また、自立可能な線状支持体と一体化することにより線材複合構造物を立設して利用することもできる。
【0044】
線材構造物と線状支持体との一体化は、線材構造物と線状支持体とを、接着剤、粘着剤などを用いて又は熱接着して一体化してよい。或いは、線状支持体に線材を交絡させて一体化してよい。
【0045】
以下に、線材構造物の具体例を挙げて説明する。
【0046】
(フェンス)
第1の具体例として、線材構造物がフェンスである場合について説明する。植物忌避用フェンスは、線状支持体が金属線である複合線材により形成される。即ち、かかるフェンスは、複合線材の鞘部を混合樹脂で構成し、芯部を金属線で構成してなる線材構造物である。このようなフェンスは、剛性が高く、形状安定性が高いという点で優れる。
【0047】
植物忌避用フェンスは、金属線に混合樹脂が被覆された複合線材を編むことにより、又は、金属線を格子状に重ねて溶接することにより、菱形金網、溶接金網、或いは亀甲金網とすることができる。もしくは、鋼板に切れ目を入れて引き伸ばしたエキスパンドメタルの表面を混合樹脂で被覆してもよい。
【0048】
植物忌避用フェンスは、線材の直径が1mm〜6mmであることが好ましい。かかる構成であると、フェンスとして十分な強度を得やすい。
【0049】
植物忌避用フェンスの具体例について説明する。
【0050】
図1に示す複合線材Aは、線状支持体として金属線1を芯にし、鞘部2を混合樹脂で形成したものである。混合樹脂は合成樹脂であるポリエチレンにクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを混合したものである。
【0051】
例えば、金属線1の直径が0.5mm〜5mmである場合、金属線1に対する鞘部2の厚みは0.1mm〜0.5mmであってよい。鞘部2の厚みが0.5mm未満の場合には、金属線1を保護する鞘部が剥離する場合があり、5mmを超える場合には、コスト高になる。混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率は0.5質量%〜10質量%であってよい。混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率が0.5質量%未満の場合には、植物忌避効果が低下し、10質量%を超える場合には、植物忌避効果は向上するが、コスト高になる。
【0052】
図2は、前記複合線材Aを使用して作製した金網フェンスA1であり、このような使用方法以外に、表面を混合樹脂でコーティングした金属線として種々の使用が可能である上に、植物忌避効果を要する箇所、例えば擁壁やガードレールなどの屋外構築物に適宜取り付けることが可能である。
【0053】
(ネット)
第2の具体例として、線材構造物がネットである場合について説明する。植物忌避用ネットは、線材又は複合線材により形成される。例えば、合成樹脂に植物忌避材を練り込んだ混合樹脂からなるモノフィラメントや撚糸を用いて、ネットを形成することができる。このようなネットは、ネットが存在する間は忌避効果を発揮するため、耐久性に優れる。
【0054】
植物忌避用ネットは、線材又は複合線材を織る又は編むことにより形成してよい。或いは、混合樹脂を板状に成形した後、これに切れ目を入れて延伸してネット状にした樹脂ネットであってよい。
【0055】
或いは、市販品のネットを混合樹脂に含浸させ、その後、過剰な混合樹脂を除去することにより、芯部が線状支持体としてのネットであり、鞘部が混合樹脂である複合線材からなる植物忌避用ネットを得てよい。このようなネットは、混合樹脂に色加工などの他の加工を施すことができる。
【0056】
植物忌避用ネットは、線材の直径が1mm〜10mmであることが好ましい。かかる構成であると、ネットとして十分な強度を得やすい。
【0057】
植物忌避用ネットの具体例について説明する。
【0058】
上記のモノフィラメントとして、合成樹脂であるポリエチレンテレフタレートにクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを混合した混合樹脂から製造したモノフィラメントを使用してよい。
【0059】
該モノフィラメントは、直径が0.2mm〜1mmであることが好ましい。直径が1mmを超える場合には、重くなりすぎて取り扱い性が低下する場合がある。該モノフィラメントの直径が、0.2mm未満の場合には、引張強度等において耐久性が乏しく、破れやすくなる場合がある。混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率は0.5質量%〜10質量%であってよい。混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率が0.5質量%未満の場合には、植物忌避効果が低下し、10質量%を超える場合には、植物忌避効果は向上するが、コスト高になる。
【0060】
このモノフィラメントをそのまま前記構築物に取り付ける紐体として使用するか、又は、ネットを形成する材料として使用することにより、このような紐及びネットの設置が植物忌避対策となる。
【0061】
植物忌避用ネットの他の具体例について説明する。
【0062】
図3に示す植物忌避用線材Bは、ポリエチレンから製造した100dtex〜800dtexのマルチフィラメントを5〜2000本撚り合わせて構成した糸に、合成樹脂であるポリエチレンにクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを混合した混合樹脂を含浸させた糸であってよい。
【0063】
該マルチフィラメントの太さは、100dtex未満の場合には、引張強度等において耐久性が乏しくなる場合がある。該マルチフィラメントの太さが、800dtexを超える場合には、撚りがかかりにくくなる場合がある。
【0064】
前記撚り合わせて構成した糸は、その直径が0.5mm〜10mmであることが好ましく、0.8mm〜4mmであることがより好ましい。撚り合わせて構成した糸の直径が0.5mm未満の場合には、十分な引張強度が得られない場合があり、糸の直径が10mmを超えると、重くなりすぎて取り扱い性が低下する場合がある。
【0065】
混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率は0.5質量%〜10質量%であってよい。混合樹脂中のクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルの配合率が0.5質量%未満の場合には、植物忌避効果が低下し、10質量%を超える場合には、植物忌避効果は向上するが、コスト高になる。
【0066】
図4は、前記植物忌避用線材Bを使用して作成したネットB1であり、このような使用方法以外に、植物忌避用線材Bを紐体としてそのまま植物忌避効果を要する箇所、例えば擁壁やガードレールなどの屋外構築物に適宜取り付けて使用することが可能である。
【0067】
なお、市販のモノフィラメントやマルチフィラメントから構成されたネット、又は市販のネットの表面を混合樹脂で被覆することにより、植物忌避用ネットを得ることもできる。
【0068】
また、混合樹脂からモノフィラメントやマルチフィラメントを作製し、これを紐体やネットにする場合には、引張強度や剪断強度の向上、耐候性の向上、耐腐食性の向上等の品質の向上を目的として植物忌避剤を混合していない樹脂フィラメント又は金属フィラメントを一部混合して紐体やネットとしてもよい。
【0069】
(立体網状体)
第3の具体例として、線材構造物が立体網状体である場合について説明する。立体網状体は、線材が不規則なループをなして相互に交差し、かつ線材は線材同士の交差点において接着されてなり、空隙率が60%〜99%である立体網状体を形成することができる。このような立体網状体は、空隙を植物が通過し難く、植物忌避効果を良好に発揮することができる。これは、立体網状体が、厚み方向に線材を有することに起因して、比較的大きい空隙率であっても、植物の伸長方向を妨げることができるためである。
【0070】
立体網状体は、その空隙率が70%〜99%であることが好ましく、80%〜99%であることがより好ましい。かかる構成であると、立体網状体が軽量になり、取り扱い性が良好となる。また、空隙率を大きくすると、通気性に優れた構成となる。
【0071】
立体網状体は、その厚さ方向の平行光線透過率が20%〜70%であることが好ましい。平行光線透過率が20%以上であると、視界を遮ることがなく、平行光線透過率が70%以下であると、空隙を通過して植物が伸長することを阻害することができる。
【0072】
立体網状体は、その見掛け厚みが3mm〜100mmであることが好ましく、5mm〜50mmであることが好ましい。見掛け厚みが3mm以上であると、厚さ方向に線材を有する構成を得ることが容易になる。また、見掛け厚みが100mm以下であると、経済的である。
【0073】
立体網状体は、その目付が100g/m〜3000g/mであることが好ましく、500g/m〜2500g/mあることが好ましい。目付が100g/m以上であると、十分な強度が得られない場合があり、目付が3000g/m以下であると、立体網状体が軽量になり、取り扱い性が良好となる。
【0074】
立体網状体は、その表面において、多数の山部と谷部が形成されていてよい。山部は独立して存在していてよく、又は畝状の山部であってもよい。また、谷部も独立して存在していてよく、又は溝状の谷部であってもよい。
【0075】
立体網状体は、線状支持体と一体化された複合立体網状体とすることもできる。例えば、線状支持体として、ネットや金網などを用いて、これらの線状支持体の網目空間に混合樹脂から成る多数の連続線条を絡ませ、線材が硬化する接合力により、線材と線状支持体とを一体化することができる。このような複合立体網状体は、後工程で線状支持体と立体網状体を一体化する工程を省略することができ、かつ線状支持体と立体網状体とが強固に一体化されているため、これらが容易に分離することがない。
【0076】
本発明において、見掛け厚み、目付、空隙率、平行光線透過率はそれぞれ下記の方法により算出する。
【0077】
見掛け厚みは、立体網状体を平板上に置き、立体網状体の上にさらに他の平板を置き、立体網状体を0.3N/mmで加重した状態で2枚の平板間の距離を測定し、見掛け厚みとした。
【0078】
目付は、立体網状体から10cm×10cmの大きさのサンプルを作製し、このサンプルの質量W(g)を測定し、100×W(g/m)により算出し、目付とした。
【0079】
空隙率は、線材構造物から10cm×10cmの大きさのサンプルを作製し、このサンプルの質量W(g)を測定し、見掛け厚みT(cm)、構成成分の密度ρ(g/cm)を用いて、{1−W/(100×T×ρ)}×100(%)により算出し、空隙率とした。
【0080】
平行光線透過率は、立体網状体から10cm×10cmの大きさのサンプルを作製し、このサンプルを透明なガラス板上に置き、ガラス板の裏面から平行光線を照射しながら、ガラス板の上部に設置したCCDカメラより画像を取り込み、電算機により明暗を2値化して、全体に占める明部の面積を算出し、平行光線透過率とした。
【0081】
(実施例)
合成樹脂として、ポリプロピレン樹脂を準備した。
【0082】
植物忌避剤として、2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)−プロピオン酸ポリグリコールエステルを準備した。
【0083】
合成樹脂99質量%、及び植物忌避剤1質量%をブレンドして混合樹脂を作製した。
【0084】
作製した混合樹脂を280℃で加熱溶融し、溶融紡糸機から押し出して、直径0.6mmの多数の連続糸条を不規則なループをなして相互に交差させながら、その交差点において、それぞれを自己の融着力により接着させて立体網状体を得た。なお、立体網状体の見掛け厚みは30mmであり、目付は450g/mであり、空隙率は98%であり、平行光線透過率は85%であった。
【0085】
実施例で得た立体網状体を屋外フェンスの一部分に取り付け、周囲にクズを植生した。3カ月後、クズは、立体網状体を取り付けた部分には巻き付いておらず、立体網状体を取り付けていない箇所には巻き付いていた。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係る植物忌避用線材は、紐体としてそのまま使用することも可能であり、また、当該植物忌避用線材は、ネット状やシート状等の種々の形態の植物忌避用資材の材料として利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
A・・・・植物忌避用線材
1・・・・金属線
2・・・・混合樹脂によるコーティング層
B・・・・植物忌避用線材
b・・・・モノフィラメント
A1・・・金網フェンス
B1・・・ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂と植物忌避剤とを含有する混合樹脂を含む線材。
【請求項2】
請求項1に記載の線材は、断面において、鞘部が前記混合樹脂であり、芯部が線状支持体である複合線材。
【請求項3】
請求項1に記載の線材又は請求項2に記載の複合線材からなる線材構造物。
【請求項4】
空隙率が30%〜99%である請求項3に記載の線材構造物。
【請求項5】
前記線状支持体が金属線である請求項2に記載の複合線材からなる植物忌避用フェンス。
【請求項6】
請求項1に記載の線材又は請求項2に記載の複合線材からなる植物忌避用ネット。
【請求項7】
請求項1に記載の線材からなる立体網状体であって、前記線材は、不規則なループをなして相互に交差し、かつ前記線材同士の交差点において接着されてなり、空隙率が60%〜99%である植物忌避用立体網状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−217363(P2012−217363A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84353(P2011−84353)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(390039114)株式会社田中 (21)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(306024090)ダイワボウプログレス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】