説明

線条体収束機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法

【課題】複数本の電線等の線条体を径の大小に係わらず回転ドラムの中央に簡単な構造で容易に、振れなく配置する。
【解決手段】回転ドラム6の切欠部8内に複数の線条体33を粘着テープ17と共に挿入して収束させる線条体収束機構18で、切欠部内に線条体を弾性的に且つ湾曲面で支持するバンド25を設けた。バンド自体が弾性を有する。バンド25をスライダ21に固定し、スライダを切欠部内にスライド自在に設け、スライダを弾性部材22で切欠部の開口方向に付勢した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープを複数の電線等の線条体に巻回させる際に線条体を回転ドラムの中心に配置する線条体収束機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の電線収束機構を備えたテープ巻き装置の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
このテープ巻き装置65はハンディタイプのものであり、複数本の電線(図示せず)を束状に挿入する切欠部66を有する回転ドラム67と、切欠部67の内幅をスライド式に漸次変化させる電線収束機構としての位置決め板68と、位置決め板68をローラで支持する揺動板69と、揺動板69の軸部70に配置されるテープリール(粘着テープをリール状に巻いたもの)71とを備えている。
【0004】
位置決め板68はL字状の電線支持面68aを有し、切欠部66の支持面66aとで長方形状の電線支持面を形成する。電線を切欠部66内に挿入し、位置決め板68を電線径に合わせて移動させ、モータで回転ドラム67を回転させることで、電線の外周に粘着テープが巻回される。
【0005】
図6の例の他に、一対の対称な位置決め板(図示せず)に円弧状の支持面を形成し、各位置決め板を対称にスライド移動させて、回転ドラムの中央で電線を支持させるようにしたものも、引用文献1に記載されている。
【0006】
図7(a)(b)は、従来の電線収束機構を備えたテープ巻き装置の他の形態を示すものである(特許文献2参照)。
【0007】
このテープ巻き装置50は据え付けタイプのものであり、複数本の電線63を束状に挿入する切欠部61を有する回転ドラム57と、切欠部61内に設けられた電線収束機構として一対のブラシ62と、回転ドラム57を歯車58を介して駆動するモータ(図示せず)と、回転ドラム57の切欠部61の開口61a側に合成樹脂製の粘着テープ54を供給する各ローラ52,55及びガイド板56と、ローラ62を駆動する歯車53と、回転ドラム57の手前で粘着テープ54を切断する可動刃59と固定刃60とを備えている。
【0008】
電線63は両ブラシ62の間に粘着テープ54と共に挿入保持され、回転ドラム57の矢印方向の回転で電線63の外周に粘着テープ54が巻回されて、電線63がばらけなく結束される。
【0009】
上記以外のものとして、図8(a)(b)に示すような電線収束機構を備えるハンディタイプのテープ巻き装置が周知である。
【0010】
この電線収束機構は、回転ドラム73の切欠部74内で矩形状のスライダ75をコイルばね76で進退自在に支持したものである。
【0011】
図8(a)の如く、テープ巻き始め時に、複数本の電線77がばらけた状態でスライダ75で回転ドラム73のほぼ中央に支持されつつ、粘着テープ78の先端部78aが折返し部78bに接着し、次いで図8(b)の如く、回転ドラム73がほぼ一回転して電線77が粘着テープ78で一次巻きされ、さらに回転ドラム73が同方向に回転して、粘着テープ78が電線77の外周に複数周に二次巻きされる(図示せず)。
【特許文献1】特開平7−215599号公報(図9)
【特許文献2】特開平9−183413号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の図6の位置決め板68やそれに類する位置決め板(図示せず)を用いた電線収束機構にあっては、位置決め板68を電線束径に合わせてスライド移動させたり固定したりする作業が面倒であるという問題や、構造が複雑化するという問題があった。
【0013】
また、上記従来の図7のブラシ62を用いた電線収束機構にあっては、一対のブラシ間の隙間に対して電線束63の外径が小さ過ぎると保持できずに電線63の振れを生じ、大き過ぎるとブラシ62が潰れてテープ巻きが上手く行われないという問題があった。
【0014】
また、上記従来の図8のスライダ75を用いた電線収束機構にあっては、図8(c)に示す如く、回転ドラム73がほぼ一回転した際に、一次テープ巻き電線77がスライダ75の平坦な受け面75aに沿って切欠部74の幅内を移動し、この状態で回転ドラム73を回転することで、電線77が振れて二次テープ巻きが綺麗に行われ難いという問題があった。
【0015】
これらの問題は、電線63に代えて、電線63を覆うコルゲートチューブ(ハーネス保護チューブ)や、電線以外の線条体を被結束体として用いた場合でも同様に生じ得るものである。
【0016】
本発明は、上記した点に鑑み、複数本の電線等といった線条体を径の大小に係わらず回転ドラムの中央に簡単な構造で容易に、振れなく配置することのできる線条体収束機構とそれを備えたテープ巻き装置及びテープ巻き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る線条体収束機構は、回転ドラムの切欠部内に複数の線条体を粘着テープと共に挿入して収束させる線条体収束機構であって、該切欠部内に該線条体を弾性的に且つ湾曲面で支持するバンドが設けられたことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、複数本の線条体を粘着テープと共に切欠部内に挿入した際に、各線条体がバンドの湾曲面に沿ってバンド中央すなわち回転ドラムの中央に収束される。切欠部は回転ドラムの中心線上に位置するのは勿論である。バンドは線条体を弾性的に支持するので、線条体を粘着テープと共にバンドに押し付けた際に、バンドが撓んで小径に屈曲し、その小径な湾曲面に沿って各線条体がドラム中央に寄せられる。この点が、撓まない硬質な湾曲面に線条体を押し付けた場合との相違である。線条体がドラム中央に配置されることで、ドラム回転時に線条体の振れが防止される。バンドは弾性体であることが好ましいが、バンドを湾曲状の非弾性の可撓体とした場合は、バンドを支持する部分に弾性を付与することで、バンドで線条体を弾性的に支持させる。
【0019】
請求項2に係る線条体収束機構は、請求項1記載の線条体収束機構において、前記バンド自体が弾性を有することを特徴とする。
【0020】
上記構成により、複数本の線条体を粘着テープと共に切欠部内に挿入した際に、バンド自体が線条体挿入方向に弾性的に伸びつつ小径な湾曲状に屈曲し、その湾曲面に沿って各線条体がバンド中央すなわち回転ドラムの中央に案内される。
【0021】
請求項3に係る線条体収束機構は、請求項1又は2記載の線条体収束機構において、前記バンドがスライダに固定され、該スライダが前記切欠部内にスライド自在に設けられ、該スライダが弾性部材で該切欠部の開口方向に付勢されたことを特徴とする。
【0022】
上記構成により、複数本の線条体を粘着テープと共に切欠部内に挿入した際に、線条体がバンドを小径に撓ませつつ、バンドを介してスライダを弾性部材の付勢力に抗して線条体挿入方向に押し動かすことで、線条体が回転ドラムの中央に配置される。バンドのみを用いる場合よりもスライダを併用することで、バンドの撓み量や長さを小さく設定できる。
【0023】
請求項4に係る線条体収束機構を備えるテープ巻き装置は、請求項1〜3の何れかに記載の線条体収束機構を備えるテープ巻き装置であって、前記線条体が前記バンドに沿って前記回転ドラムの中央に位置した状態で、該回転ドラムの回転で該線条体に前記粘着テープが巻回されることを特徴とする。
【0024】
上記構成により、請求項1〜3の何れかに記載の発明と同じ作用効果が奏せられると共に、各線条体が回転ドラムの中央に各線条体間の隙間なく寄せられて、テープ巻きがしわ等なく綺麗に行われる。
【0025】
請求項5に係るテープ巻き方法は、請求項1〜3の何れかに記載の線条体収束機構を用いたテープ巻き方法であって、前記線条体を前記バンドに沿って前記回転ドラムの中央に配置した状態で、該回転ドラムの回転で該線条体に前記粘着テープを巻回することを特徴とする。
【0026】
上記構成により、請求項1〜3の何れかに記載の発明と同じ作用効果が奏せられると共に、各線条体が回転ドラムの中央に各線条体間の隙間なく寄せられて、テープ巻きがしわ等なく綺麗に行われる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、複数の線条体をバンドに押し付けてバンドを撓ませつつ湾曲状にすることで、複数の線条体をバンドの中央すなわち回転ドラムの中央に収束することができる。これにより、回転ドラムの回転時に線条体の振れが起こらず、粘着テープが綺麗に且つ確実に巻回される。また、バンドを用いた簡単な構造により、回転ドラム内の構造が簡素化・低コスト化される。また、バンドを撓ませるという簡単な操作で線条体の位置決めを作業性良く行うことができる。また、複数の線条体の全体径は切欠部の内幅寸法まで許容されるから、種々の太さや本数の線条体に対応できる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、バンドが線条体に押されて伸びつつ小径な湾曲状に屈曲することで、バンド中央すなわちドラム中央への線条体の収束が一層確実に行われる。また、バンド自体が弾性を有するから、他の弾性体が不要で構造が簡素化・低コスト化される。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、バンドの撓み動作とスライダのスライド動作とで線条体の中央寄せを正確に行うことができ、回転ドラムの回転時に線条体の振れを一層確実に防止することができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、バンドに沿って各線条体を回転ドラムの中央に各線条体間の隙間なく寄せることができるから、回転ドラムの回転でテープ巻きをしわ等なく綺麗に行うことができ、例えば線条体として電線を用いた場合のテープ巻き電線(ワイヤハーネス)の仕上がりが高品質に行われる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、バンドに沿って各線条体を回転ドラムの中央に各線条体間の隙間なく寄せることができるから、回転ドラムの回転でテープ巻きをしわ等なく綺麗に行うことができ、例えば線条体として電線を用いた場合のテープ巻き電線(ワイヤハーネス)の仕上がりが高品質に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1(a)(b)は、本発明に係る線条体収束機構を備えたテープ巻き装置の一実施形態、図2(a)(b)は、同じく線条体収束機構とそれを用いたテープ巻き方法の一実施形態をそれぞれ示すものである。
【0033】
図1(a)(b)の如く、このテープ巻き装置1は、ケース2の前側にテープ巻き部3としての回転ドラム6とその内側の電線(線条体)収束機構18とを有し、ケース2の中間部に駆動部4を有し、後側に粘着テープ繰り出し機構5を有したものである。テープ巻き装置1は据え付け式で用いられるが、小型軽量化すればハンディタイプとすることも可能である。
【0034】
テープ巻き部3は、切欠部8を有する回転ドラム6と、回転ドラム6の外周面に沿って配置された固定式の環状帯35と、環状帯35の外周面に沿って進退自在に配置された円弧状のテープ切断帯7と、回転ドラム6の中央の片側又は両側に配置された電線チャック(図示せず)とを備えている。
【0035】
切欠部8をはさんで切断帯7は上側先端にテープ押し部7aを有し、環状帯35は下側先端に固定刃35aを有している。切断帯7はモータで駆動されて切欠部8の開口8aに沿って下降し、先端のテープ押し部7aを押し下げることにより、固定刃35aにより粘着テープ17を剪断する。
【0036】
粘着テープ17は後方の粘着テープリール16から図示しないガイド板やガイドローラを経て回転ドラム6側に供給され、切欠部8の開口8aに沿って垂れ下げられる。粘着テープ17の垂れ下げ部17aが鎖線の如く複数本の電線(線条体)33と共に切欠部8内に挿入される。
【0037】
図2にも示す如く、回転ドラム6の切欠部8内には合成樹脂製のスライダ21が圧縮コイルばね(弾性部材)22の付勢のもとで切欠部8の長手方向に移動自在に設けられている。コイルばね22はスライダ21を切欠部8の開口8aに向けて付勢している。
【0038】
切欠部8は従来よりも後方に長く延長され、切欠部8からその延長空間40にかけてスライダ21がスライド自在に配置され、延長空間40の後端面にコイルばね22の基端が当接又は固定され、スライダ21の後端面にコイルばね22の先端が当接又は固定されている。切欠部8は回転ドラム6の中央を通ってドラム径方向に切欠形成されている(切欠部8の中心線は回転ドラム6の中心を通る)。
【0039】
図3にも示す如く、スライダ21にはゴムバンド(バンド)25が湾曲状に設けられ、湾曲状のゴムバンド25で複数本の電線33を粘着テープ17と共に受けるようになっている。スライダ21とコイルばね22とゴムバンド25とで電線収束機構18が構成されている。
【0040】
スライダ21は矩形状のブロック部32と、ブロック部32の上下において前方へ平行に突出した一対の対向する板状の壁部34とで構成され、上下の壁部34の先端側にゴムバンド25の各端が固定されている。
【0041】
上下の壁部23とブロック部の平坦な前端面32aとで囲まれて矩形状の空間(撓み空間)37が形成され、空間37はゴムバンド25の撓みスペースとして作用する。平坦な前端面32aに代えて鎖線の如く湾曲面(ベース湾曲面)36を形成し、湾曲面36を上下の壁部34に連続させることが好ましい。湾曲面36はゴムバンド25の最大撓み時の受け面として作用し、ゴムバンド25が湾曲面36に当接して正確な円弧状の湾曲面となり、後述の図3(b)の電線収束作用を促進する。
【0042】
スライダ21の移動とゴムバンド25の伸縮性で束状の電線33の外径の大小の差を吸収すると共に、図3(b)の如く、湾曲状のゴムバンド25の外側の湾曲面に沿って、粘着テープ17の内側の複数本の電線33を矢印の如く上下から中央に向けて収束する。ゴムバンド25の湾曲面は電線33を中央に案内する経路として作用する。ゴムバンド25は図3(a)の初期状態に較べて図3(b)において後方に伸長しつつ小径に湾曲している。
【0043】
ゴムバンド25は図3(a)の如く初期状態で少し湾曲していることが好ましいが、湾曲せずにほぼ真直に張られた場合でも、ゴムバンド25は上下両端を固定(両持ち支持)されているから、電線束(33)を押し付けることで湾曲状に撓んでその湾曲面に沿って図3(b)の電線収束作用を行うことができる。
【0044】
図2(a)において電線33の本数が多かったり、各電線33の径が太くて電線束(33)の外径が大きな場合は、電線束(33)の外径が小さな場合に較べてスライダ21の後退量が大きく、コイルばね22が大きなストロークで圧縮される。
【0045】
スライダ21は自由状態(電線束33をセットしない状態)において、回転ドラム6の中心ないしそれよりも前方にゴムバンド25が位置するように、コイルばね22の付勢で前進していることが好ましい。その状態から電線束(33)を粘着テープ17と共に押し込むことで、スライダ6が後退しつつコイルばね22が圧縮される。なお、本例で「前側」とは、切欠部8が水平に停止した初期状態で切欠部8の開口8aの位置する方向を言う。
【0046】
図2(a)において、複数本の電線33がややばらけた束状の状態で粘着テープ17と共に矢印の如く切欠部8内に挿入され(押し込まれ)、各電線33が粘着テープ17の上からゴムバンド25を鎖線の如く後方に強く押し、図3(b)の如く湾曲状のゴムバンド25に沿って高さ方向中央に寄せられつつ、コイルばね22を圧縮してスライダ21を後退させ、ゴムバンド25の弾性(復元性)とコイルばね22の弾性(復元性)とで回転ドラム6の中央に位置する。電線束(33)は作業者が手で持っていてもよいが、回転ドラム6の左右両側のチャック(図示せず)で把持固定されることが好ましい。
【0047】
ゴムバンド25の初期撓みに要する力はコイルばね22の力よりも小さく、ゴムバンド25を強く押して大きく後方に撓ませた際に、あるいはゴムバンド25がスライダ21のブロック前端面32a(図3)に当接した際に、コイルばね22が圧縮されてスライダ21が後退することが好ましい。
【0048】
図2の状態で粘着テープ17の先端部17a’の粘着面が対向する上側の粘着面に接着し、その状態から図2(b)の如く回転ドラム6を矢印方向(反時計回り)に略一回転ないし半回転することで、各電線33が束状に隙間なく一次巻きされる。図2(b)では各電線33が隙間なく近接して電線束径が図2(a)の状態よりも小さくなるから、これに追従してスライダ21がコイルばね22の復元力で前進し、電線束(33)は常に回転ドラム6の中央に位置する。
【0049】
図2(b)の状態で、図4(a)の如く切断帯7が前方に反時計回りに回動して、環状帯35の下側の固定刃35aと切断帯7の先端側のテープ押し部7aとで粘着テープ17が剪断される。図4(a)では図2(b)で回転ドラム6が半回転した場合の状態を示している。次いで図4(b)の如く回転ドラム6を矢印の如くさらに回転させることで、粘着テープ17が電線束(33)の外周に二次巻きされて、テープ巻き電線38が形成される。図4(b)の回転中においても電線束(33)はゴムバンド25とスライダ21の作用で常に回転ドラム6の中央に位置する。なお、テープ押し部7aに代えて可動刃を形成し、固定刃35aに代えてテープ押し部を形成することも可能である。
【0050】
図2,図4において電線束(33)が常に回転ドラム6の中央に配置されるから、電線束(33)の振れが防止され、粘着テープ17の巻回がスムーズ且つ確実に且つ規定のテープ長さでテープしわの発生等なく綺麗に行われる。テープしわは電線33間に隙間がある場合に生じやすいが、図2(a)において電線束(33)が回転ドラム6の中央に配置されつつ、図3(b)の如く湾曲状のゴムバンド25に沿って中央に寄せられることで、電線間の隙間がなくなり、テープしわの発生が防止される。
【0051】
図1のテープ巻き装置1において、駆動部4は、回転ドラム6を駆動する手段と、切断帯7を駆動する手段と、粘着テープ繰り出し機構5を駆動する手段とを備えている。以下に説明する駆動部4の構造はあくまでも一例であり、駆動部4の構造は必要に応じて適宜設定される。
【0052】
回転ドラム6に一体に歯車9が設けられ、歯車9の上下に駆動用の一対の歯車10,11が歯合し、一対の歯車10,11はベルト12等を介してモータ13で同方向に回動され、何れか一方の歯車(10又は11)が回転ドラム6の切欠部8の位置に関係なく常時回転ドラム6を図1で反時計回りに駆動する。
【0053】
切断帯7は一体にギヤ(図示しない円弧状ラック)を有し、ギヤに歯車14が歯合し、歯車14はモータ15で反時計回りに例えば90゜程度駆動される。各モータ13,15はケース2に固定されている。
【0054】
粘着テープ繰り出し機構5は、粘着テープリール16を保持する大径の軸部27と、軸部27を貫通してテープリール16と共に回動自在に支持する小径の中心軸1(図示せず)と、中心軸を貫通固定した円形の回転板19と、回転板19の外周側に突設されたローラ柱状の一方向(ワンウェイ)ベアリング20及び複数の小径のピン状のガイドローラ(図示せず)と、一方向ベアリング20の軸部に設けられた小歯車23と、小歯車23に歯合する大径のリング状の内歯車(固定歯車)24とを備えている。
【0055】
なお、図2〜図3に示す電線収束機構18は図1のテープ巻き装置1に限らず、従来例で説明したハンディタイプのテープ巻き装置や据え付け式のテープ巻き装置等にも適用可能なものである。
【0056】
また、図3の例ではスライダ21の上下一対の壁部34を高剛性で撓み不能に形成し、ゴムバンド25を撓ませたが、これとは逆に、合成樹脂製のスライダ(21)の上下一対の壁部(34)を可撓性とし、ゴムバンド25に代えて非弾性で可撓性の湾曲状の樹脂バンド(25)を用いることも可能である。この場合、図2(a)で電線束(33)で樹脂バンド(25)を後方に押すことで、図3の如く湾曲状の樹脂バンド(25)に沿って各電線33が高さ方向中央に寄せられつつ、上下の壁部(34)が内向きに撓んで樹脂バンド(25)の後方への撓み(小径な屈曲)を許容する。
【0057】
また、スライダ21の付勢手段であるコイルばね22に代えて、板ばねや捩り巻きばねやゴム材等(図示せず)の弾性部材を用いることも可能である。
【0058】
また、スライダ21を廃除して回転ドラム6の切欠部8内にゴムバンド25を配設することも可能である。この場合はスライダ21による大きな位置ずれ吸収作用はなくなるが、ゴムバンド25による小さな位置ずれ吸収作用やゴムバンド25の湾曲面に沿う電線33の中央寄せ作用は変わらずに発揮される。この場合もゴムバンド25に代えて樹脂バンドを用い、樹脂バンドを回転ドラム側の可撓性の壁部やアーム等で支持することが可能である。
【0059】
図5は、本発明に係る線条体収束機構の他の実施形態を示すものである。線条体収束機構以外の構成は例えば図1のテープ巻き装置1と同様である。
【0060】
この電線(線条体)収束機構18’は、回転ドラム6’の切欠部8’の終端(後端)側にゴムバンド(バンド)25’を一体的に固定して設けたものである。切欠部8’の終端面8bは湾曲面(円弧面)であり、本例では終端面8bに沿って湾曲状(円弧状)の硬質の板部材39を固着し、板部材39の上下端にゴムバンド25’の上下端を巻き込みや接着等で固定している。板部材39とゴムバンド25’との間にバンド撓み空間37’が形成されている。
【0061】
板部材39の湾曲面(符号39で代用)が図3の例のスライダ21の湾曲面36と同様にベース湾曲面として作用する。ゴムバンド25’は初期的にさほど湾曲したものではなく(少し湾曲している)、電線束(33(図1))の押し付けで湾曲しつつ撓んでその湾曲面に沿って各電線33を回転ドラム6’の中央に寄せる作用をする。
【0062】
板部材25’に代えてリング状のゴムバンド(図示せず)の一部周壁を終端面8bに貼り付けて固定することも可能である。また、回転ドラム6’に鎖線の如くスライダ21’を設けてもよく、その場合スライダ21’は延長空間40’内のコイルばね(22)等の弾性部材でゴムバンド25’の方向へ付勢される。このスライダ21’は前端の湾曲面(8b)にゴムバンド25’を設けたものとなる。
【0063】
スライダ21’がない場合は、自由状態のゴムバンド25’の前端面の位置を回転ドラム6’のほぼ中央ないし中央よりやや手前に位置させ、電線束(33)の押し付けでゴムバンド25’が後方に撓んで、電線束(33)が回転ドラム6’の中央に支持されるようにすることが好ましい。スライダ21’がある場合は、ゴムバンド25’とコイルばね(22)との弾性力の兼ね合いを考慮し、電線束(33)がゴムバンド25’を後方に撓ませつつスライダ21’を後退させるように設定することが好ましい。これは図2の実施形態においても同様である。
【0064】
図5において、回転ドラム6’の厚み方向両側に装置ケース2が配置され、ケース2の切欠部41に対して回転ドラム6’が略半回転した状態を示している。ケース2と回転ドラム6’との各切欠部41,8’が位置整合した状態で電線束(33)が切欠部8’内に挿入される。
【0065】
なお、上記各実施形態においては、線条体として電線33を用いたが、電線33に代えて細径のホースや非通電用のケーブル等を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る電線収束機構を備えたテープ巻き装置の一実施形態を示す、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図2】(a)(b)は回転ドラム内の電線収束機構とそれを用いたテープ巻き方法の一実施形態を電線束のセットとテープ一次巻きの順にそれぞれ示す正面図である。
【図3】(a)(b)は同じく電線収束機構を初期状態と電線収束作用の順にそれぞれ示す正面図である。
【図4】(a)(b)は回転ドラムの作用をテープ切断と二次巻きの順に示す正面図である。
【図5】本発明に係る電線収束機構の他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】従来の電線収束機構を備えたテープ巻き装置の一形態を示す正面図である。
【図7】(a)は従来の電線収束機構を備えたテープ巻き装置の他の形態を示す正面図、(b)はその電線収束機構を示す正面図である。
【図8】(a)〜(c)は従来のその他の電線収束機構をテープ巻き作用順に示す正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 テープ巻き装置
6,6’ 回転ドラム
8,8’ 切欠部
8a 開口
17 粘着テープ
18,18’ 電線(線条体)収束機構
21,21’ スライダ
22 コイルばね(弾性部材)
25,25’ ゴムバンド(バンド)
33 電線(線条体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転ドラムの切欠部内に複数の線条体を粘着テープと共に挿入して収束させる線条体収束機構であって、該切欠部内に該線条体を弾性的に且つ湾曲面で支持するバンドが設けられたことを特徴とする線条体収束機構。
【請求項2】
前記バンド自体が弾性を有することを特徴とする請求項1記載の線条体収束機構。
【請求項3】
前記バンドがスライダに固定され、該スライダが前記切欠部内にスライド自在に設けられ、該スライダが弾性部材で該切欠部の開口方向に付勢されたことを特徴とする請求項1又は2記載の線条体収束機構。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の線条体収束機構を備えるテープ巻き装置であって、前記線条体が前記バンドに沿って前記回転ドラムの中央に位置した状態で、該回転ドラムの回転で該線条体に前記粘着テープが巻回されることを特徴とする線条体収束機構を備えるテープ巻き装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の線条体収束機構を用いたテープ巻き方法であって、前記線条体を前記バンドに沿って前記回転ドラムの中央に配置した状態で、該回転ドラムの回転で該線条体に前記粘着テープを巻回することを特徴とするテープ巻き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−169003(P2008−169003A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4143(P2007−4143)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)