説明

線状体用梱包箱

【課題】 線状体を巻いたボビンを収納したまま、ボビンからの線状体の繰り出し用の装置として利用でき、しかも、繰り出し前の変形等を回避でき、円滑な繰り出し作業を確実に実現できる線状体用梱包箱の提供。
【解決手段】 四角枠状の箱本体部2の相対する一対の側壁部2a、2cに、支持棒を通す軸受け孔を形成するためのミシン目6が形成され、ミシン目6を破って形成した軸受け孔に通して複数本設けた支持棒上に、線状体を巻いたボビン12を回転可能に支持でき、線状体の繰り出しに用いることができる線状体用梱包箱1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、光ファイバ、電線などといった線状体を巻いたボビンを収納する梱包箱に係り、特に、線状体を繰り出すための繰り出し装置としての機能を持つ線状体用梱包箱に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ心線や光ファイバコード、電線等の線状体は、プラスチックあるいは発泡スチロールなどといった材料で形成されたボビンに巻かれ、ダンボール製の梱包箱に梱包して、布設業者などへ供給される。布設業者は、線状体が巻かれたボビンをダンボールから取り出し、繰り出し用の繰り出し装置101(図9)などを用いて、現場で繰り出し作業を行う。図9において、符号102は線状体、103はボビンである。
繰り出し装置が無い場合は、ボビンを手で持って繰り出し作業を行うこともある。
なお、巻いた状態の線状体を収納する梱包箱としては、例えば特許文献1、2のものが知られている。また、線状体の繰り出しに用いられる繰り出し装置としては、例えば特許文献3のものが知られている。
【特許文献1】登録実用新案第3038095号公報
【特許文献2】米国特許第5267705号明細書
【特許文献3】特開平8−231124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のように梱包箱からボビンを取り出して線状体の繰り出し作業を行うのでは、現場などで梱包箱からボビンを取り出す作業に手間が掛かる(特に、梱包箱にボビンが複数収納されている場合など)といった問題があった。また、繰り出し装置が無い場合、手でボビンを持ちながら作業を行うとなると、労力を要する。
【0004】
上記問題に鑑みて、繰り出し装置としての機能も兼ね備える梱包箱も提案されている。
特許文献1に開示された梱包箱は、箱内部に設けられた軸受けで、ボビンの回転軸を支持した状態で、ボビンを収納する構造になっている。この梱包箱は、梱包箱自体を、線状体の繰り出し装置として機能させることができるため、線状体の繰り出し時に、梱包箱からボビンを取り出す手間を解消できる。しかしながら、この梱包箱は、ボビンを回転できる状態で収納するため、運送時などに線状体の巻き緩みが発生することがあり、この巻き緩みによる線状体の落ち込みで、線状体の繰り出しが困難になるといった問題がある。また、ボビンを収納したまま長期保管されたり、運送時などに長時間にわたって振動が与えられたりすると、回転軸を支持するために梱包箱内に設けたダンボール板が、線状体を巻いたボビンの重みで変形して、回転軸の傾斜などが生じ、線状体の繰り出し作業に支障を来すといった問題もある。補強のためにダンボール板を2枚重ねて使用する案もあるが、今度は、ボビンの回転抵抗が増大して、ボビンが回転しにくくなってしまう。
【0005】
特許文献2に開示された梱包箱は、線状体を繰り出すための繰り出し装置としての機能を兼ねる。しかしながら、コイル状に巻いた線状体を、ダンボール製の箱内に設置したローラで支持した構造であるため、線状体を収納したまま長期保管されたり、運送時などに長時間にわたって振動が与えられたりすると、ローラが取り付けられている梱包箱の側壁部が、線状体の重みで変形して、ローラの傾斜などが生じ、線状体の繰り出し作業に支障を来すといった問題がある。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、
(a)線状体の繰り出しが必要となったときに、線状体を巻いたボビンを内部に収納したまま取り出すことなく、ボビンを支持棒で回転可能に支持することができる、
(b)しかも、巻き緩みによる線状体の落ち込みや、線状体の繰り出し前の箱の変形等といった不都合を回避でき、線状体の円滑な繰り出しを確実に実現できる、
線状体用梱包箱の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、線状体を巻いたボビンを収納する線状体用梱包箱において、側壁部の複数箇所に、前記ボビンを載せる支持棒が通される軸受け孔を形成するためのミシン目が設けられ、前記支持棒は、少なくとも前記ボビンが当接される部分に、前記ボビンとの従動回転が可能な従動回転部を具備し、前記ミシン目を破ることで前記側壁部に形成される前記軸受け孔に通して箱内に複数本配設される前記支持棒上に、前記ボビンを回転可能に支持できることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の線状体用梱包箱において、前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための円形の切断線を形成していることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の線状体用梱包箱において、前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための多角形の切断線を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、側壁部のミシン目を破って形成した軸受け孔にボビンの支持棒を通すことで、ボビンを回転可能に支持できる。これにより、この線状体用梱包箱を、線状体を繰り出すための繰り出し装置として機能させることができる。
ミシン目を破って軸受け孔を形成する作業は線状体用梱包箱の外から行うことができる。そして、線状体用梱包箱の外から、支持棒を軸受け孔に通し、箱内に配設した複数本の支持棒上にボビンを載せて回転可能に支持すれば、線状体用梱包箱を、線状体を繰り出すための繰り出し装置として機能させることができる。したがって、線状体の繰り出しのためにボビンを回転可能に支持する作業を、線状体用梱包箱からボビンを取り出すことなく行うことができる。
また、この線状体用梱包箱の内部にボビンを収納(格納)した状態では、ボビンを支持棒で支持している訳では無いため、箱内でボビンが回転しにくい。このため、運送時のボビンの回転による線状体の巻き緩みといった不都合を生じにくい。
また、ボビンを回転可能な状態で収納する梱包箱のように、ボビンを支持する軸が取り付けられている梱包箱の側壁部が、線状体の繰り出し作業を行う前に、線状体を巻いたボビンの重みで変形して、線状体の繰り出し作業に支障を来すといった不都合も生じにくい。このため、線状体の円滑な繰り出しを確実に実現できる。
線状体を巻いたボビンの重みを、複数本の支持棒によって分散支持するため、支持棒の要求強度を低くできる。また、支持棒を支持する線状体用梱包箱(特に側壁部)の要求強度も低くできるといった利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る線状体用梱包箱1を示す全体斜視図、図2は前記線状体用梱包箱1を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、図3は線状体用梱包箱1の箱本体部2に形成した軸受け孔3に、線状体11を巻いたボビン12を回転可能に支持するための支持棒13を通す作業を示す斜視図、図4は線状体用梱包箱1を用いて組み立てた繰り出し装置21を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図、図5は図4の繰り出し装置21を示す斜視図である。
【0010】
まず、図1〜図3を参照して、前記線状体用梱包箱1の構成を説明する。
なお、図1〜図3において、上側を上、下側を下として説明する。また、図2(a)における左右を前後、図2(b)における左右を左右として説明する。
【0011】
図1〜図3に示すように、線状体用梱包箱1はダンボール製であり、4つの側壁部2a、2b、2c、2dからなる四角枠状の箱本体部2と、この箱本体部2の上下の開口部(図3の符号2eを参照)を塞ぐ蓋部4とを具備している。
【0012】
図1、図2(a)、(b)は、線状体用梱包箱1の内部に、線状体11を巻いたボビン12を収納した状態を示す。以下、線状体11を巻いたボビン12を線状体用梱包箱1の内部に収納(格納)した状態のものを、貯線ユニット(符号1Aを付す)と称する場合がある。
【0013】
箱本体部2を構成する各側壁部2a、2b、2c、2dの上下両端からは、箱上下の蓋部4を構成する蓋板(符号4a、4b、4c、4d参照)がそれぞれ延出されている。なお、図1〜図3において、箱下側の蓋板の図示は省略している。
線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cから延びる蓋板4a、4c(図3参照)と、線状体用梱包箱1の左右の側壁部2b、2dから延びる蓋板4b、4c(図3参照)とを、箱本体部2の開口部2eに折り込んで、開口部2eを塞ぐことで、蓋板4a、4cと蓋板4b、4dとが重ね合わされた板状の蓋部4が構成される(図1、図2(a)、(b)参照)。蓋板4a、4b、4c、4dを開くと、開口部2eを開放できる。箱本体部2の開口部2eは、蓋板4a、4b、4c、4dによって開閉できる。
【0014】
線状体用梱包箱1の内部空間は、線状体11が巻かれたボビン12を収納する収納空間5として機能する。ボビン12は、上下が蓋部4によって閉じられた線状体用梱包箱1の内部に収納した状態(貯線ユニット1Aの状態。図1、図2(a)、(b)の状態)で運送することができる。
【0015】
線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cには、前記ボビン12を回転可能に支持するための支持棒13を通す軸受け孔3の形成用のミシン目6が設けられている。ミシン目6を破ると、箱本体部2の前後の側壁部2a、2cに軸受け孔3を開口させることができる。
この線状体用梱包箱1では、図4、図5に示すように、箱本体部2において相対する一対の側壁部2a、2cに形成した軸受け孔3に通すことで一対の側壁部2a、2cに支持して横架した2本の支持棒13の上に、線状体11を巻いたボビン12を載せて、回転可能に支持するようになっている。2本の支持棒13は、ボビン12の直径よりも少しだけ狭い間隔を確保して、横並びに並列配置される。側壁部2a、2cにおけるミシン目6の形成位置は、支持棒13の設置位置に対応させた位置である。側壁部2a、2cにおいて、軸受け孔3を形成するためのミシン目6は、ボビン12の直径よりも少しだけ狭い間隔(配列ピッチ)を確保して、横並びに並列に形成される。
【0016】
前記ミシン目6の形成位置は、線状体11の繰り出し時(つまり、線状体用梱包箱1を繰り出し装置として機能させるとき。図4、図5参照。)に下側に配置される蓋部4(本発明に係る「箱底壁」。以下、繰り出し時底壁、とも言う)に、該ミシン目6によって形成される軸受け孔3に通して横架した2本の支持棒13上に載せたボビン12の最下部が接触しないように、繰り出し時底壁41からの距離h1(図4(a)参照)を確保する。これにより、繰り出し時に、ボビン12が繰り出し時底壁41に接触しなくなり、軽い力で円滑に回転できる。
繰り出し時底壁41からミシン目6までの「距離h1」とは、詳しくは、繰り出し時底壁41から、ミシン目6を破って形成した軸受け孔3に通される支持棒13の断面中心までの距離を指す。
【0017】
また、図示例では、ミシン目6の形成位置は、側壁部2a、2cの下部、すなわち、側壁部2a、2cの中央よりも繰り出し時底壁41に近い所になっているが、これに限定されない。但し、ミシン目6の形成位置を側壁部2a、2cの下部にし、線状体用梱包箱1を繰り出し装置として機能させたときに、2本の支持棒13上に載せたボビン12の出来るだけ多くの部分が線状体用梱包箱1(詳細には箱本体部2)内に収納されるようにしてあれば、例えば、線状体11の繰り出し作業中に線状体用梱包箱1に加わった振動等により、2本の支持棒13上から脱落したボビン12が線状体用梱包箱1の外に飛び出ることを防止できる、等の利点がある。
【0018】
なお、図示例の線状体用梱包箱1は、平面視長方形の外観六面体であり、上下の蓋部4は、長方形板状である。箱本体部2の4つの側壁部2a、2b、2c、2dの内、前後の側壁部2a、2cは、長方形板状の蓋部4の一対の長辺に対応する位置に設けられ、左右の側壁部2b、2dは、蓋部4の一対の短辺に対応する位置に設けられている。
軸受け孔3を形成するためのミシン目6は、線状体用梱包箱1の箱本体部2の相対する一対の側壁部に設けられていれば良く、形成位置が、左右の側壁部2b、2dであっても良い。
また、本発明に係る線状体用梱包箱は、箱本体部に、軸受け孔3用のミシン目6を形成するための相対する一対の側壁部を有するものであれば良く、必ずしも、平面視長方形の外観六面体である必要は無い。この点、例えば、箱本体部2の4つの側壁部2a、2b、2c、2dと上下の蓋部4とが同じサイズになっている外観立方体のものや、箱本体部の4つの側壁部の内、軸受け孔3用のミシン目6が形成される一対の側壁部以外が、湾曲板状になっているもの等であっても良い。
【0019】
軸受け孔3は、例えば、前後の側壁部2a、2cに開口する円形の開口部であるが、これに限定されず、様々な形状を採用できる。前後の側壁部2a、2cに開口する開口部である軸受け孔3の形状としては、例えば、六角形(図7(a)参照)、菱形(図7(b)参照)、五角形(図7(c)参照)などの多角形も採用できる。
【0020】
前記ミシン目6は、前後の側壁部2a、2cに軸受け孔3を形成するために、箱本体部2(詳細には側壁部2a、2c)の一部を切り取るための切断線として機能する。ミシン目6によって形成される切断線は、例えば、形成する軸受け孔3の形状(外周)に対応する形状で設けられる。例えば、軸受け孔3が円形であれば切断線を円形に形成し、軸受け孔3が六角形等の多角形であれば切断線を多角形に形成する。
【0021】
図2(a)、(b)に示すように、箱本体部2は、ボビン12のサイズよりも若干大きく形成されており、線状体用梱包箱1内に収納したボビン12と箱本体部2内面との間にクリアランスを確保できる。軸受け孔3のためのミシン目6の形成位置は、詳細には、前述の距離h1を確保でき、しかも、ミシン目6を破って形成した軸受け孔3に通した2本の支持棒13上に載せたボビン12と箱本体部2の内面との間に、ボビン12に収納空間5内での微動を許容する若干のクリアランスを確保できる位置である。
軸受け孔3に通した支持棒13上に回転可能に支持したボビン12は、微動しても、前記クリアランスによって、箱本体部2に圧接されることは無いため、常に、軽い力で円滑に回転できる。
図2(a)、(b)では、ボビン12と箱本体部2内面との間に確保されるクリアランスを誇張して大きく図示しているが、本発明では、前記クリアランスを小さくして、運送時などにボビン12が繰り出し時底壁41上を転動することを防止する。これにより、運送等でのボビン12の回転による線状体11の巻き緩みを防止できる。
【0022】
なお、線状体用梱包箱1には、線状体11の繰り出し時の上下(天地)の向きを示す目印を設けておくことが好ましい。
繰り出し時底壁41を構成する蓋部4は、線状体用梱包箱1を用いて繰り出し装置21を組み立てる作業において開く必要が無いため、必ずしも、4枚の蓋板4a〜4dで開閉可能な構造とする必要は無い。繰り出し時底壁41は、例えば、箱本体部2から連続するダンボール板、箱本体部2に別途固定した一枚のダンボール板などによって構成しても良い。
【0023】
前後の側壁部2a、2cに形成される軸受け孔3の位置は、収納空間5を介して対称であり、繰り出し時底壁41から軸受け孔3までの「距離h1」も同じである。ボビン12を回転可能に支持するための複数本の支持棒13は、軸受け孔3に通して側壁部2a、2c間に横架することで、繰り出し時底壁41と平行に支持される。複数本の支持棒13の上に載せられるボビン12は、支持棒13と平行な回転中心を以て、支持棒13上に回転可能に支持される。
【0024】
支持棒13は、棒状の部材であり、ボビン12とは別体になっている。
支持棒13の形成材料としては、例えば、紙、プラスチック、金属等を採用できる。但し、紙製の支持棒13の場合は、樹脂の表面塗布、含浸等によって、回転抵抗の軽減や強度確保を図ることが好ましい。
線状体用梱包箱1にボビン12を回転可能に支持する場合、線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cに開口した軸受け孔3に、線状体用梱包箱1の外から、支持棒13を通し、支持棒13の両端を側壁部2a、2cに支持させれば良い。
支持棒13の両端は、側壁部2a、2cの軸受け孔3に嵌め込まれる。
【0025】
支持棒13としては、一本の丸棒からなるものの他、例えば、図8(a)、(b)に示すように、複数部品で構成されたもの等を採用できる。
一本の丸棒からなる支持棒13は、両端を、側壁部2a、2cの軸受け孔3に回転可能に収納して、全体を、ボビン12との従動回転が可能な従動回転部として機能させる。これにより、ボビン12を軽い力で円滑に回転させることができる。この場合、図7(a)〜(c)に例示した、六角形(図7(a)参照)、菱形(図7(b)参照)、五角形(図7(c)参照)などの多角形の軸受け孔3を採用すれば、円形の軸受け孔に比べて、支持棒13の両端と側壁部2a、2cとの接触部分を少なくすることができ、支持棒13を回転しやすい状態に支持できる。また、多角形の複数の角部の内の一つが軸受け孔3の最下端に配置されるようにすれば(一例として、図7(a)、(b)、(c)において、「最下端の角部」に、符号31を付した)、この角部を、支持棒13を位置決めするV溝として利用することができる。
【0026】
図8(a)に例示した支持棒13(区別のため、符号131を付す)は、主軸部131aと、この主軸部131aに外挿して回転自在に設けられたスリーブ状の従動回転部131bとを具備する。従動回転部131bは、主軸部131aの両端に設けられた抜け止めリング131cの間に配置されている。この支持棒131は、主軸部131aの両端の抜け止めリング131cを軸受け孔3に嵌め込んで箱本体部2に取り付けられる。ボビン12は、従動回転部131b上に載せられる。従動回転部131bはボビン12に従動回転できる。このため、ボビン12は軽い力で円滑に回転できる。
【0027】
図8(b)に例示した支持棒13(区別のため、符号132を付す)は、主軸部132aと、この主軸部132aの両端に外挿して回転自在に設けられたスリーブ状の端部リング132bとを具備する。端部リング132bは、図示略の抜け止め部によって、主軸部132aに抜け止めされている。この支持棒132は、主軸部132aの両端の端部リング132bを軸受け孔3に嵌め込んで箱本体部2に取り付けられる。ボビン12は、主軸部132a上に載せられる。主軸部132aはボビン12に従動回転できる。このため、ボビン12は軽い力で円滑に回転できる。主軸部132aは、従動回転部として機能する。
【0028】
図8(a)、(b)に例示した支持棒131、132は、軸受け孔3に嵌め込む部分は、回転可能である必要が無い。このため、線状体11の繰り出し作業中に、線状体用梱包箱1(詳細には側壁部2a、2c)を傷めにくい。
【0029】
線状体11は、ここでは、光ファイバ心線あるいは光ファイバコードあるいは光ファイバケーブルである。線状体11としては、これに限定されず、例えば、電線等であっても良い。但し、線状体11としては、ダンボール製の線状体用梱包箱1の強度等に鑑みて、例えば電力ケーブル等の重量の大きいものは排除される。ここで採用し得る線状体11としては、比較的重量の軽いものである。
線状体11の繰り出し時に線状体用梱包箱1に支持するボビン12の重量(ボビン12自体の重量と、ボビン12に巻いた線状体11の重量との合計)は、線状体用梱包箱1に繰り出し作業の支障となるような破壊や変形を生じさせないために、重すぎるものは排除される。
【0030】
ボビン12は、貫通孔である軸挿入孔12aを有するリング状に形成されている。但し、本発明に係る線状体用梱包箱1に適用されるボビンとしては、軸挿入孔12aを有していないものも採用可能である。ボビン12の形成材料は、例えばプラスチック、発泡スチロールなどを採用できるが、木や紙などであっても良い。
【0031】
次に、ボビン12から線状体11を繰り出すため、線状体用梱包箱1を利用して繰り出し装置21を組み立てる手順の一例を説明する。
まず、線状体11を巻いたボビン12を内部に収納した状態で(貯線ユニット1A)、線状体用梱包箱1を、線状体11を使用する現場に搬入する。
次に、以下の(1)〜(3)に記載のことを行う。但し、(1)、(2)、(3)の順序は任意である。
(1)線状体用梱包箱1は、上下の蓋部4の内、繰り出し時底壁41が下となる向きにする(図1、図2の状態)。
(2)前後の側壁部2a、2cのミシン目6を破って、側壁部2a、2cに軸受け孔3を形成する。
(3)上側の蓋部4を開いて、箱本体部2の開口部2eを開放する(図3参照)。
【0032】
次に、収納空間5内のボビン12を少し持ち上げ、側壁部2a、2cの軸受け孔3に、支持棒13を通して、側壁部2a、2c間に2本の支持棒13を横架し、この支持棒13上にボビン12を載せる(図4(a)、(b)、図5参照)。支持棒13は、線状体用梱包箱1の外側から、線状体用梱包箱1の前後の側壁部2a、2cの軸受け孔3に通して、両端を、前後の側壁部2a、2cの軸受け孔3に支持させる。
ボビン12を支持棒13上に載せて回転可能に支持する作業にあたり、ボビン12を線状体用梱包箱1から取り出す必要は無い。
なお、図3では、線状体用梱包箱1の構造を示すため、ボビン12が、線状体用梱包箱1から外に出された状態に図示したが、ボビン12を支持棒13上に載せる作業にあたり、ボビン12を線状体用梱包箱1から取り出すことを示すものでは無い。
【0033】
以上により、繰り出し装置21の組み立てが完了する(図4、図5の状態)。
線状体11は、繰り出し装置21の上側の開口部2e(詳細には、箱本体部2の開口部2e)から引き出すようにして、繰り出すことができる。
【0034】
なお、線状体用梱包箱1の箱本体部2に、線状体11の引き出し用の引出口を設けても良い。箱本体部2に、引出口用のミシン目を形成しても良い。
【0035】
前記線状体用梱包箱1によれば、ボビン12を支持棒13上に支持する作業を、ボビン12を該線状体用梱包箱1から取り出すことなく行える。
【0036】
また、この線状体用梱包箱1の内部にボビン12を収納した状態(貯線ユニット1Aの状態)では、ボビン12を支持棒13で回転可能に支持している訳では無いため、箱内でのボビン12の回転が生じにくい。このため、運送時のボビン12の回転による線状体11の巻き緩みといった不都合を生じにくい。箱内に、ボビン12の回転を規制するための特別な手段を設けるといった必要性も無い。
また、特許文献1、2記載の技術のように、軸を取り付けた梱包箱の側壁部が、線状体の重みあるいは線状体を巻いたボビンの重みで変形して、線状体の繰り出し作業に支障を来す、といった不都合が生じることを回避できる。
【0037】
この線状体用梱包箱1では、繰り出し装置21を組み立てたときに、線状体11を巻いたボビン12の重みが、複数本の支持棒13によって分散支持される。このため、支持棒13の要求強度を低くできる。また、線状体用梱包箱1の側壁部2a、2cが、軸受け孔3に通された支持棒13から作用する重みで変形するといった不都合も容易に回避することができる。このため、線状体用梱包箱1(特に側壁部2a、2c)の要求強度を低くできるといった利点がある。線状体11の繰り出し作業の継続によって、線状体用梱包箱1が変形してしまうといった不都合も生じにくい。
また、ボビン12の重みが複数本の支持棒13によって分散支持されることで、単純な丸棒状の支持棒13を採用した場合に、線状体用梱包箱1の側壁部2a、2cにおける軸受け孔3の付近が、支持棒13から作用する重みで変形(潰れ等)するなどして、支持棒13が回転しにくくなってしまうといった不都合が生じにくく、支持棒13が円滑に回転できる状態を安定に保てるようになる、といった利点もある。
【0038】
また、この線状体用梱包箱1は、図6に示すように、繰り出し時底壁41が上となる向きで、側壁部2a、2cのミシン目6を破って軸受け孔3を形成する作業と、支持棒13を軸受け孔3に通して線状体用梱包箱1に取り付ける作業とを行っても良い。
支持棒13を軸受け孔3に通して線状体用梱包箱1に取り付けた後、線状体用梱包箱1を上下反転すれば、図4(b)に示す状態となる。つまり、線状体用梱包箱1に取り付けた2本の支持棒13の上に、ボビン12が回転可能に支持される。
【0039】
この場合、ボビン12を、支持棒13上に載せるにあたり、ボビン12を持ち上げる必要が無い。支持棒13上にボビン12を載せる作業の作業性を向上できる。
【0040】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、各種変更が可能である。
一つのボビンを回転可能に支持するための支持棒の本数は、3本以上であっても良い。
上述の実施形態では、線状体を巻いたボビンを一つのみ収納する構造の線状体用梱包箱を例示したが、本発明に係る線状体用梱包箱はこれに限定されず、線状体を巻いたボビンを複数収納できるものであっても良い。
収納する各ボビンの回転中心が直列に配列されるようにして、複数のボビンを収納する線状体用梱包箱にあっては、相対する一対の側壁部に、それぞれ、軸受け孔用のミシン目を複数形成すれば良い。
収納する各ボビンの回転中心が横並びに並列されるようにして、複数のボビンを収納する線状体用梱包箱にあっては、相対する一対の側壁部に、ボビンの支持位置に対応して複数の軸受け孔を形成できるように、ミシン目を複数形成する。
【0041】
支持棒は、ボビンとともに線状体用梱包箱内に収納しておき、繰り出し装置の組み立て時に、線状体用梱包箱から取り出すようにしても良い。また、支持棒は線状体用梱包箱に外付けしても良い。
【0042】
箱本体部の上下の蓋部の内、繰り出し装置の組み立て時に上側となる蓋部、すなわち、繰り出し時底壁とは反対の側に位置する蓋部は、線状体の繰り出し時に、箱本体部の開口部を開放できる構造であれば良く、4つの蓋板からなる構造に限定されない。例えば、箱本体部の開口部を閉塞できる大きさの1枚の蓋板からなるもの等、様々な構造を採用できる。
【0043】
線状体用梱包箱の形成材料はダンボールに限定されない。例えば、ダンボール以外の紙製板状材料等、様々なものを採用できる。
但し、線状体の繰り出すための繰り出し装置の組み立て時に、ミシン目を破ることで、簡単に軸受け孔を形成することが可能なものを採用することは言うまでも無い。
ダンボール等の紙製の梱包箱であれば、廃棄処分を低コストかつ低公害で行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態の線状体用梱包箱を示す全体斜視図である。
【図2】図1の線状体用梱包箱を示す図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】図1の線状体用梱包箱の箱本体部に形成した軸受け孔に、線状体を巻いたボビンを軸支するための支持棒を通す作業を示す斜視図である。
【図4】図1の線状体用梱包箱を用いて組み立てた繰り出し装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図5】図4の繰り出し装置を示す斜視図である。
【図6】繰り出し時底壁を上にした状態で、軸受け孔に支持棒を通す作業を行う場合を示す正面図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明に係る線状体用梱包箱に形成する軸受け孔の形状の例を示す図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明に係る線状体用梱包箱に適用される支持棒の例を示す図である。
【図9】梱包箱から取り出したボビンから線状体を繰り出す作業に用いられる繰り出し装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1…線状体用梱包箱、2…箱本体部、2a〜2d…側壁部、3…軸受け孔、4…蓋部、41…箱底壁(繰り出し時底壁)、5…収納空間、6…ミシン目、11…線状体、12…ボビン、13、131、132…支持棒、131b…従動回転部、132a…従動回転部(主軸部)、21…繰り出し装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を巻いたボビンを収納する線状体用梱包箱において、
側壁部の複数箇所に、前記ボビンを載せる支持棒が通される軸受け孔を形成するためのミシン目が設けられ、
前記支持棒は、少なくとも前記ボビンが当接される部分に、前記ボビンとの従動回転が可能な従動回転部を具備し、
前記ミシン目を破ることで前記側壁部に形成される前記軸受け孔に通して箱内に複数本配設される前記支持棒上に、前記ボビンを回転可能に支持できることを特徴とする線状体用梱包箱。
【請求項2】
前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための円形の切断線を形成していることを特徴とする請求項1記載の線状体用梱包箱。
【請求項3】
前記ミシン目が、前記側壁部に、前記軸受け孔を形成するための多角形の切断線を形成していることを特徴とする請求項1記載の線状体用梱包箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−248720(P2006−248720A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69193(P2005−69193)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】