線状照明装置および画像読取装置
【課題】点光源を列状に配置した光源アレイを用いて、長手方向に均一な照度分布の線状光を照射する線状照明装置およびこれを備えた画像読取装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る線状照明装置は、光源アレイと、光源アレイの全長にわたって延在する導光レンズを具備する。導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、導光レンズの出光面は、第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、第2の入光面で屈折し、かつ側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成される。導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されている。
【解決手段】本発明に係る線状照明装置は、光源アレイと、光源アレイの全長にわたって延在する導光レンズを具備する。導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、導光レンズの出光面は、第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、第2の入光面で屈折し、かつ側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成される。導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状の照明光を提供する照明装置、およびかかる照明装置を光源として具備した画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、スキャナその他の光学式画像読取装置においては、画像情報を含む対象物に対して、光を照射し、その反射光を検出することによって、画像情報の認識が行われる。
【0003】
近年、この光照射に用いられる光源として、寿命が長く、消費電力が低い発光ダイオード(LED)が注目を集めている。例えば点光源であるLEDをアレイ状に並置して疑似的に線状の照明光を提供するというものが知られているが、長手方向に明暗のムラが生じる、光の利用効率が低い等種々の問題があった。
【0004】
特許文献1は、LEDアレイに平行して延在する集光レンズを用いて、LEDから放射状に放出される光を被照射面に集光する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−253477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、集光レンズが被照射面上の一点に集光するように設計された集光レンズを用いており、被照射面全体にわたって所望の照射光を得るために精緻な位置合せが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、次の構成を採用する。
【0008】
つまり、本発明に係る線状照明装置は、間隔をおいて線状に並置された複数の点光源を備えた光源アレイと、前記光源アレイの出光側において光源アレイの全長にわたって延在し、前記光源アレイからの光が通過する入光面および出光面、並びに入射光を反射する側部反射面を有する導光レンズと、を具備し、前記導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、前記導光レンズの出光面は、前記第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、前記第2の入光面で屈折し、かつ前記側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成され、前記導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ当該線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像読取装置は、画像情報を含む被照射物に対して方向づけされた上記線状照明装置と、被照射物で反射された光を検出可能な検出手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LED等の点光源を用いて線状照明装置を構成した場合であっても、被照射面に対して所望な照度分布の光を確実に得ることができる。
【0011】
また、本発明によれば、各構成部品の製造時およびこれらの取付時に発生するバラツキの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る線状照明装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】本発明に係る導光レンズの断面形状を説明する側断面図。
【図3】第1の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図4】第2の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図5】第2の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図6】本発明に係る線状照明装置と比較例について、長手方向の照度分布を示す図。
【図7】本発明に係る線状照明装置と比較例について、短手方向の照度分布を示す図。
【図8】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をX方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図9】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図10】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図11】比較例に係る導光レンズの形態を示す図。
【図12】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をX方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図13】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図14】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図15】本発明に係る画像読取装置の構成例について説明する図。
【図16】本発明に係る導光レンズの他の実施形態について説明する図。
【図17】本発明に係る導光レンズの他の実施形態について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書に添付した図面を参照して本発明の実施形態について詳説する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施形態の構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態において、複数の発光ダイオード(LED)41を列状に実装したLEDアレイ4と、各LED41の出射光を導光する導光レンズ10をそれぞれ示す分解斜視図である。図2は、導光レンズ10の断面形状を説明するための側断面図である。
【0015】
LEDアレイ4は、アルミニウム(Al)等の金属または窒化アルミニウム(AlN)等の良好な熱伝導率を有するセラミックス等から形成された長尺の基板42と、基板42上に所定の間隔をおいて実装された複数のLED41から構成される。
【0016】
LED41の間隔は、特定の範囲に限定されるものではなく、LED41の出力、LED41と所望の被照射面25(図3参照)との距離、および用途に応じて要求される均斉度等の種々の要因を考慮して決定される。しかし、LED41の間隔を小さくするとLEDの使用数が多くなりコストが増大し、一方で間隔を大きくすると隣接するLEDの出射光との混合が困難になりLEDアレイ4の長手方向に沿って明暗の縞が現れるので、一般にこの間隔は、実験やシミュレーションを通じて最適な範囲に定められる。
【0017】
導光レンズ10は、凹状に形成された入光部12がLED41の表面を包囲するように配設され、ネジ止めその他公知の手段を用いて組み付けられる。導光レンズ10を固定する支持部材を別途設けてもよい。導光レンズ10は、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)またはPC(ポリカーボネート)等の透明な樹脂材料から形成され、少なくともLEDアレイ4と同程度の長さをもつように形成される。
【0018】
導光レンズ10は、図2の側断面図から明らかなように、LEDアレイ4の基板42(図2では図示省略)の法線に対して左右対称となるように形成され、長手方向に沿って一様な断面を有する。導光レンズ10は、射出成型など公知の手段によって一体成形され、その外廓は、主として入光面12a,12b,12c、側部反射面14b,14c、出光面16a,16b,16cから構成される。
【0019】
凹状に窪んだ形状の入光部12は、LED41の光軸(図2紙面の上下方向)と交わる入光面12a(第1の入光面)と、入光面12aの両端からそれぞれ下方に向かって延在する入光面12b,12c(第2の入光面)とから構成される。
一般にLED41は、光軸を中心として放射状に広がりをもって発光するいわゆるランバーシャン配光分布を有する。したがって、光軸を中心として狭角(例えば光軸に対して±40度未満)に放出された光は、入光面12aを通過し、他方、光軸に対して広角に放出された光は、入光面12bまたは入光面12cを通って導光レンズ10に入射する。
【0020】
入光面12aは、所定の曲率半径(例えばR=4mm)を有する凸状の曲面である。入光面12aの反対側には凸状に形成された、非球面の多項式で表現される出光面16a(第1の出光面)が形成される。例えば出光面16aは、曲率半径R=8mm、コーニック定数K=7のコーニック面とすることができる。また、出光面16aの幅は、入光面12aの幅よりも大きく形成されている。
【0021】
入光面12bおよび入光面12cは、それぞれLED41の光軸に対して、例えば約5度傾斜した略平面からなる。上述したように、入光面12bおよび入光面12cは、主に広角、例えば光軸に対して±35〜90度の方向に放出された光が通過するように位置決めされる。
【0022】
出光面12aの左右両側には、入光面12bおよび入光面12cから入射した光が通過する出光面16b,16c(第2の出光面)が形成される。出光面16b,出光面16cは、後述するように、通過する光が照射対象に対してそれぞれ到達するように、LED41の光軸に対して約40〜50度の角度傾斜して延在する。
【0023】
入光面12bと出光面16bの間、および入光面12cと出光面16cの間に、側部反射面14b,14cが形成される。側部反射面14b,14cは、例えば曲率半径R=2.3mm、コーニック定数K=−1.3のコーニック面等からなる非球面である。
【0024】
足部18bは、入光面12bと側部反射面14bの端部とからそれぞれ下方に延在する。足部18cは、足部18bと対称に形成され、入光面12cと側部反射面12cの端部からそれぞれ下方に延在している。入光面12bまたは入光面12cを含む導光レンズ10の導光に寄与する部分と、足部18b,18cとの境界は明確である必要はなく、LED41の出射光が実質的に直接到達し得ない部分を本明細書では足部18b,18cと称する。したがって、足部18b,18cは、光学的特性からは特定の形状に限定されるものではない。ただし、足部の高さについては、LED41と導光レンズ10の距離が光学的要件を満足する範囲を考慮して設計する必要がある。
【0025】
次に、LED41の出射光が、導光レンズ10内を通過する経路について図3〜図5を参照して説明する。
【0026】
図3は、入光面12aおよび出光面16aを通過する光の経路を示した図である。なお、分かりやすいように、入光面12b,12cに入射する光は省略してある。出射光は、まず入光面12aと周囲の雰囲気(空気)との屈折率の差によりその境界で屈折する。図示したように、入光面12aを凸状に形成したため、入光面12aを通過した光は、光幅方向に集光される。
【0027】
入射光は、導光レンズ10内部を略直進し、出光面16aに到達する。出光面16aで、光は再び屈折し、被照射面25に向かってさらに集光される。図示したように、入光面12aおよび出光面16aを通って導出された光は、被照射面25の全体をカバーする照射光となる。
【0028】
次に、図4を参照し、入光面12bおよび出光面16bを通過する光の経路を説明する。
図4では簡単のために入光面12a,12cを通る光は省略する。LEDアレイ4の出射光は、入光面12bで屈折し、側面反射面14bに到達する。光は、側部反射面14bで全反射し、出光面16bでさらに屈折して外部に放出される。図示したように、入光面12bを通過して導光レンズ10を出た光は、被照射面25の全体をカバーする照射光となる。
【0029】
入光面12b、側部反射面14bおよび出光面16bの形状は、上述した具体例に限定されない。例えば、入光面12bと側部反射面14bは、入光面12bで屈折された光が側部反射面に対して少なくとも臨界角を超える角度で到達するように調整すればよい。すなわち、LEDアレイ4の出射光が、入光面12bでの屈折、側部反射面14bでの全反射、出光面16bでの屈折を通じて、被照射面25の全体をカバーするように光学設計されたものであれば、本発明に適用することができる。
【0030】
図5は、入光面12cを通って導光レンズ10に導かれる光の経路について説明する概念図である。本実施形態においては、導光レンズ10をLED41の光軸方向について対称のものを用いるため、入光面12cを通る光は、入光面12bを通る光と同様に説明することができる。つまり、LED41の光軸から広角に放出された光は、入光面12cにおける屈折、側部反射面14cにおける全反射、出光面16cを経て、被反射面25の全体をカバーする光として導光レンズ10から導出される。
【0031】
次に、図6および図7を参照して、本発明に係る線状照明装置1の光学的特性について説明する。
図6は、本実施形態に係る導光レンズ10を装着した線状照明装置1と、かかる導光レンズを具備しない線状照明装置とにおいて、線状照明装置の長手方向についてその照度分布をそれぞれ示す。また、図7は、図6と同じ条件で各々の線状照明装置について短手方向の照度分布を示す。
【0032】
図6および図7において、図中の横軸は、線状照明装置1の長手方向について、その計測位置を表し、縦軸は、導光レンズ10を用いない条件(図中の破線)におけるLEDアレイ4の最大照度の値を1とした線状照明装置1の相対照度を表す。なお、本明細書に添付したデータは、いずれもORA社(Optical Research Associates)製の光学シミュレーションソフトLightTools(登録商標)を用いて得られたシミュレーションの結果である。
【0033】
LEDアレイ4は、出力7.1lmのLEDを18個、それぞれ9mmの等間隔で一列に配置した。入光面12aには光軸に対して±37.5度未満の範囲の光線が入射するものとし、入光面12b,12cは、±約37.5〜90度の範囲の光線が入射するものとした。入光面12aの頂部からLED41の表面までの距離は1.5mmに設定した。出光面16aの凸部から測定点である被照射面25までの距離は8mmに設定した。また、線状照明装置1の長手方向の長さは約160mmとした。一方、導光レンズ10を具備しない比較例は、LED表面から8mmの位置に測定点を設けた。
【0034】
図6から明らかなように、導光レンズ10を具備しない比較例では、LEDアレイを構成するLEDが直下に位置する測定点において、照度が相対的に大きく現れた。その結果、LEDアレイの長手方向に凹凸のパターン、いわゆるリップルが発生し、均斉度が低い線状光となってしまう。リップルの発生を抑えるために、LEDの間隔を狭めて暗部の出現を抑える手法およびLEDアレイと被照射面との距離を離すことで隣り合うLEDどうしの出射光の混合を促す手法とが知られている。しかし、前者の場合、LEDの使用数増に伴うコスト、消費電力の増大が問題となり、後者の場合、線状照明装置の厚みが増し、設計の自由度が損なわれる。
【0035】
これに対し、本発明に係る導光レンズを用いた線状照明装置1の場合、線状照明装置1の長手方向に沿って略一定の照度分布が得られる。さらに、図7から明らかなように、本発明に係る線状照明装置の場合、被照射面上の必要な幅に集光することが可能であるため、全体として照度を高めることができる。
【0036】
このように本発明に係る導光レンズ10を使用することによって、線状光の均斉度の向上に加え、全体の照度も格段に増大させることができる。より具体的には、本実施形態によれば、被照射面の有効幅を短手方向に5mm(図中±2.5mmの範囲)と設定した場合、0.9以上の均斉度が達成できることが確認された。
【0037】
これは、導光レンズ10を具備しない場合において、広角の光線が被照射面に到達せずに迷光となっていたのに対し、本発明に係る線状照明装置1では、広角の光線が導光レンズ10によって屈折・反射して被照射面に導かれるだけでなく、被照射面全体をカバーするように幅のある光として導かれるため、単に照度が増すだけでなく、均斉度も向上すると考えられる。
【0038】
なお、このシミュレーションは、線状照明装置の長手方向の長さを変えても同様の結果が得られる。したがって、本発明は、多くの画像読取装置で採用されている300〜360mmの長さの線状照明装置にも適用できる。
【0039】
続いて、図8〜図14を参照して、製造時のバラツキに起因する位置ずれの影響について説明する。図8〜図10は、本発明に係る導光レンズ10を用いた実施形態について、位置ずれの影響を示すシミュレーション結果である。図12〜図14は、図11に示した比較例に係る導光レンズ94を用いた場合のシミュレーション結果である。
【0040】
図8は、光源であるLED41を+X方向(図3参照)に0.1mmと0.2mmだけそれぞれ変位させた条件で計算した結果である。変位0mmmの場合(実線)である設計条件と比較しても、0.1mm(破線)、0.2mm(一点鎖線)ずらした場合の照度分布は略同じ外形を有しており、必要な被照射面上での照度は略均一であって、位置ずれの影響はほとんどないと考えられる。
【0041】
図9および図10は、それぞれ+Y方向と−Y方向に0.1mm、0.2mmだけ変位させた結果であるが、多少照度が全体的に増減するものの、中央付近で略均一の照度を有する傾向には影響が見られない。
【0042】
次に、比較例として、図11に示した導光レンズ94を具備した線状照明装置90をモデルとしてシミュレーションを行った。導光レンズ94は、本発明と同様に、広角の光線を側部反射面で反射させて利用効率を高めるタイプのものである。しかし、この比較例では、本発明とは異なり、光軸方向に出射された光線が被照射面の中央部分に照射され、広角に出射されて側部反射面で反射された光線が、被照射面の両端近傍に照射されるように構成されている。
【0043】
導光レンズ94を具備した線状照明装置90において、被照射面95上の照度分布を計算したシミュレーション結果を図12〜図14に示す。
【0044】
図12は、変位0mmの設計条件の場合(実線)、+X方向に0.1mm変位させた場合(破線)、および+X方向に0.2mm変位させた場合(一点鎖線)のそれぞれについて、短手方向の相対照度を比較したものである。
【0045】
変位0mmのとき、本発明の導光レンズ10には若干劣るが、概ね均一な照度分布の線状光が得られている。しかし、0.1mmまたは0.2mm変位させた場合は、照度分布が顕著に変化した。
【0046】
図13および図14は、上記比較例に係る線状照明装置90について同様の条件で、+Y方向、−Y方向にそれぞれ0.1mm、0.2mm変位させた場合の影響を示す。
【0047】
このときも同様に、変位0mmのときに良好な照度分布が得られているにもかかわらず、0.1mmまたは0.2mm変位させた場合には、照度のばらつきが顕著である。
【0048】
以上のとおり、本発明に係る導光レンズ10は、点光源であるLED41ないしはLEDアレイ4との位置関係について許容誤差を大きくとることができる。このことは、単に製造コストの低廉化につながるだけでなく、LED41の発熱によって導光レンズ10の変形した場合であっても光学的な影響を最小限に抑えることができる利点がある。
【0049】
図15は、本発明の線状照明装置1を採用し得る画像読取装置の構成例を示す図であり、いわゆる縮小光学系のタイプの画像読取装置80を概念的に説明するための図である。
【0050】
画像読取装置80は、原稿台30を備えた筐体82から構成され、筐体82内には、光源装置40が収容されている。画像読取装置80を動作させると、線状照明装置1から、原稿台30に載置された読取用紙に対して光が照射される。線状照明装置の出射光は、図中に示した破線の経路に従って、ミラー41,43,45,47,49で反射され、レンズ50を通って撮像素子60(検出手段)に入光する。光源装置40が図中の矢印方向に移動しながらこの動作を連続的に行うことで、読取用紙に描かれた画像情報が検出される。
【0051】
このように、本発明に係る線状照明装置1は、例えば従来の画像読取装置で採用されていた外面電極蛍光ランプ等の長尺なランプをそのまま置き換える形で使用することができる。
【0052】
図16および図17は、本発明に係る他の実施形態を示す図である。導光レンズ10の他の例について、出光面12aおよび即部反射面14bなどは上述した具体例に限定されないことは既に述べたとおりである。ここでは、足部18の変形例を含む導光レンズ100,101を説明する。
【0053】
図16に示した導光レンズ100は、足部18を省略して、側部反射面140b,140cを入光面120b,120cと交わるまで延伸した形態である。この形態では、側部反射面と不連続であり、光学的に必ずしも必要ではない足部18b,18cが存在しないため、迷光が生じにくくなり、効率の向上が期待できる。
【0054】
図17に示した導光レンズ101は、足部181b,181cを左右方向に延伸した形態である。この形態の場合、足部181b,181cが十分に大きいのでネジ止め等の作業が容易になる。
【0055】
(他の実施形態)
他の実施形態として、LEDアレイのLED間の距離を10mmにした場合の導光レンズの設計例を説明する。この条件で光学設計を最適化すると、光軸に対して±約37.5度以下の範囲の光が入射する入光面(第1の入光面)が曲率半径R=4.4mmの凸面、入射光が通る出光面(第1の出光面)が曲率半径R=8.8mm、コーニック定数K=7のコーニック面となった。±約37.5度〜90度の範囲の光が入射する入光面(第2の入光面)は、約5度傾斜した平面となり、側部反射面は、曲率半径R=2.3mm、コーニック定数K=−1.4のコーニック面となった。側部反射面で反射された光が通る出光面(第2の出光面)は、約46度に傾斜した面となった。そして、第1の入光面とLEDまでの距離は2.1mmとなり、上述した実施形態と比べて0.6mm離れていることになった。図示しないが、この実施形態の導光レンズについて照度分布を調べても同様の良好な結果が得られることが確認できた。
【0056】
上述した実施形態では、比較的広角な放射光を放出するLEDを例に説明したが、本発明は、被照射面の大きさに比べて十分に小さく、実質的に点光源とみなし得る他の微小な光源(例えば半導体レーザ等)をアレイ状に並べて用いる場合にも、レンズ形状または光源のピッチ等の諸要素を変更することで同様に適用することができる。また、本発明の光源として利用するLEDは、黄色の蛍光体を励起して白色光を出射するタイプのLEDでも、RGB各色を微細領域に実装してなるマルチチップのLEDを採用してもよいことはいうまでもない。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、LEDを一列に並べた一列のLEDアレイを例に説明したが、LEDを2つ並置した2列のLEDアレイを採用してもよい。つまり、2列のLEDに対して単一の導光レンズを組み合わせてもよい。またその際、2列のLEDは、互い違いになるように、千鳥状に配置することもできる。
【0058】
本発明に係る導光レンズは、必ずしもどの断面でも同一の形状である必要はない。例えば、LEDと対向する箇所と、LEDが配置されていない箇所とで、入光面および出光面の形状を異ならしめることもできる。
【0059】
また、本発明に係る導光レンズは、必ずしも上述した実施形態のように断面が左右対称である必要はない。例えばLEDの配光分布に応じて非対称のものであってもよいし、その他の要求に応じて非対称とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 線状照明装置
4 LEDアレイ
41 発光ダイオード(LED)
10 導光レンズ
12a 第1の入光面
12b 第2の入光面
12c 第2の入光面
16a 第1の出光面
16b 第2の出光面
16c 第2の出光面
14b 側部反射面
14c 側部反射面
25 被照射面
80 画像読取装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状の照明光を提供する照明装置、およびかかる照明装置を光源として具備した画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、スキャナその他の光学式画像読取装置においては、画像情報を含む対象物に対して、光を照射し、その反射光を検出することによって、画像情報の認識が行われる。
【0003】
近年、この光照射に用いられる光源として、寿命が長く、消費電力が低い発光ダイオード(LED)が注目を集めている。例えば点光源であるLEDをアレイ状に並置して疑似的に線状の照明光を提供するというものが知られているが、長手方向に明暗のムラが生じる、光の利用効率が低い等種々の問題があった。
【0004】
特許文献1は、LEDアレイに平行して延在する集光レンズを用いて、LEDから放射状に放出される光を被照射面に集光する発明を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−253477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、集光レンズが被照射面上の一点に集光するように設計された集光レンズを用いており、被照射面全体にわたって所望の照射光を得るために精緻な位置合せが必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、次の構成を採用する。
【0008】
つまり、本発明に係る線状照明装置は、間隔をおいて線状に並置された複数の点光源を備えた光源アレイと、前記光源アレイの出光側において光源アレイの全長にわたって延在し、前記光源アレイからの光が通過する入光面および出光面、並びに入射光を反射する側部反射面を有する導光レンズと、を具備し、前記導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、前記導光レンズの出光面は、前記第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、前記第2の入光面で屈折し、かつ前記側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成され、前記導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ当該線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像読取装置は、画像情報を含む被照射物に対して方向づけされた上記線状照明装置と、被照射物で反射された光を検出可能な検出手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LED等の点光源を用いて線状照明装置を構成した場合であっても、被照射面に対して所望な照度分布の光を確実に得ることができる。
【0011】
また、本発明によれば、各構成部品の製造時およびこれらの取付時に発生するバラツキの影響を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る線状照明装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】本発明に係る導光レンズの断面形状を説明する側断面図。
【図3】第1の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図4】第2の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図5】第2の入光面を通る光の経路を示す概念図。
【図6】本発明に係る線状照明装置と比較例について、長手方向の照度分布を示す図。
【図7】本発明に係る線状照明装置と比較例について、短手方向の照度分布を示す図。
【図8】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をX方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図9】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図10】本発明に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図11】比較例に係る導光レンズの形態を示す図。
【図12】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をX方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図13】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図14】比較例に係る線状照明装置において、LEDの取付け位置をY方向にずらした状態での短手方向の照度分布を示す図。
【図15】本発明に係る画像読取装置の構成例について説明する図。
【図16】本発明に係る導光レンズの他の実施形態について説明する図。
【図17】本発明に係る導光レンズの他の実施形態について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本明細書に添付した図面を参照して本発明の実施形態について詳説する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施形態の構成について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態において、複数の発光ダイオード(LED)41を列状に実装したLEDアレイ4と、各LED41の出射光を導光する導光レンズ10をそれぞれ示す分解斜視図である。図2は、導光レンズ10の断面形状を説明するための側断面図である。
【0015】
LEDアレイ4は、アルミニウム(Al)等の金属または窒化アルミニウム(AlN)等の良好な熱伝導率を有するセラミックス等から形成された長尺の基板42と、基板42上に所定の間隔をおいて実装された複数のLED41から構成される。
【0016】
LED41の間隔は、特定の範囲に限定されるものではなく、LED41の出力、LED41と所望の被照射面25(図3参照)との距離、および用途に応じて要求される均斉度等の種々の要因を考慮して決定される。しかし、LED41の間隔を小さくするとLEDの使用数が多くなりコストが増大し、一方で間隔を大きくすると隣接するLEDの出射光との混合が困難になりLEDアレイ4の長手方向に沿って明暗の縞が現れるので、一般にこの間隔は、実験やシミュレーションを通じて最適な範囲に定められる。
【0017】
導光レンズ10は、凹状に形成された入光部12がLED41の表面を包囲するように配設され、ネジ止めその他公知の手段を用いて組み付けられる。導光レンズ10を固定する支持部材を別途設けてもよい。導光レンズ10は、例えばPMMA(ポリメタクリル酸メチル)またはPC(ポリカーボネート)等の透明な樹脂材料から形成され、少なくともLEDアレイ4と同程度の長さをもつように形成される。
【0018】
導光レンズ10は、図2の側断面図から明らかなように、LEDアレイ4の基板42(図2では図示省略)の法線に対して左右対称となるように形成され、長手方向に沿って一様な断面を有する。導光レンズ10は、射出成型など公知の手段によって一体成形され、その外廓は、主として入光面12a,12b,12c、側部反射面14b,14c、出光面16a,16b,16cから構成される。
【0019】
凹状に窪んだ形状の入光部12は、LED41の光軸(図2紙面の上下方向)と交わる入光面12a(第1の入光面)と、入光面12aの両端からそれぞれ下方に向かって延在する入光面12b,12c(第2の入光面)とから構成される。
一般にLED41は、光軸を中心として放射状に広がりをもって発光するいわゆるランバーシャン配光分布を有する。したがって、光軸を中心として狭角(例えば光軸に対して±40度未満)に放出された光は、入光面12aを通過し、他方、光軸に対して広角に放出された光は、入光面12bまたは入光面12cを通って導光レンズ10に入射する。
【0020】
入光面12aは、所定の曲率半径(例えばR=4mm)を有する凸状の曲面である。入光面12aの反対側には凸状に形成された、非球面の多項式で表現される出光面16a(第1の出光面)が形成される。例えば出光面16aは、曲率半径R=8mm、コーニック定数K=7のコーニック面とすることができる。また、出光面16aの幅は、入光面12aの幅よりも大きく形成されている。
【0021】
入光面12bおよび入光面12cは、それぞれLED41の光軸に対して、例えば約5度傾斜した略平面からなる。上述したように、入光面12bおよび入光面12cは、主に広角、例えば光軸に対して±35〜90度の方向に放出された光が通過するように位置決めされる。
【0022】
出光面12aの左右両側には、入光面12bおよび入光面12cから入射した光が通過する出光面16b,16c(第2の出光面)が形成される。出光面16b,出光面16cは、後述するように、通過する光が照射対象に対してそれぞれ到達するように、LED41の光軸に対して約40〜50度の角度傾斜して延在する。
【0023】
入光面12bと出光面16bの間、および入光面12cと出光面16cの間に、側部反射面14b,14cが形成される。側部反射面14b,14cは、例えば曲率半径R=2.3mm、コーニック定数K=−1.3のコーニック面等からなる非球面である。
【0024】
足部18bは、入光面12bと側部反射面14bの端部とからそれぞれ下方に延在する。足部18cは、足部18bと対称に形成され、入光面12cと側部反射面12cの端部からそれぞれ下方に延在している。入光面12bまたは入光面12cを含む導光レンズ10の導光に寄与する部分と、足部18b,18cとの境界は明確である必要はなく、LED41の出射光が実質的に直接到達し得ない部分を本明細書では足部18b,18cと称する。したがって、足部18b,18cは、光学的特性からは特定の形状に限定されるものではない。ただし、足部の高さについては、LED41と導光レンズ10の距離が光学的要件を満足する範囲を考慮して設計する必要がある。
【0025】
次に、LED41の出射光が、導光レンズ10内を通過する経路について図3〜図5を参照して説明する。
【0026】
図3は、入光面12aおよび出光面16aを通過する光の経路を示した図である。なお、分かりやすいように、入光面12b,12cに入射する光は省略してある。出射光は、まず入光面12aと周囲の雰囲気(空気)との屈折率の差によりその境界で屈折する。図示したように、入光面12aを凸状に形成したため、入光面12aを通過した光は、光幅方向に集光される。
【0027】
入射光は、導光レンズ10内部を略直進し、出光面16aに到達する。出光面16aで、光は再び屈折し、被照射面25に向かってさらに集光される。図示したように、入光面12aおよび出光面16aを通って導出された光は、被照射面25の全体をカバーする照射光となる。
【0028】
次に、図4を参照し、入光面12bおよび出光面16bを通過する光の経路を説明する。
図4では簡単のために入光面12a,12cを通る光は省略する。LEDアレイ4の出射光は、入光面12bで屈折し、側面反射面14bに到達する。光は、側部反射面14bで全反射し、出光面16bでさらに屈折して外部に放出される。図示したように、入光面12bを通過して導光レンズ10を出た光は、被照射面25の全体をカバーする照射光となる。
【0029】
入光面12b、側部反射面14bおよび出光面16bの形状は、上述した具体例に限定されない。例えば、入光面12bと側部反射面14bは、入光面12bで屈折された光が側部反射面に対して少なくとも臨界角を超える角度で到達するように調整すればよい。すなわち、LEDアレイ4の出射光が、入光面12bでの屈折、側部反射面14bでの全反射、出光面16bでの屈折を通じて、被照射面25の全体をカバーするように光学設計されたものであれば、本発明に適用することができる。
【0030】
図5は、入光面12cを通って導光レンズ10に導かれる光の経路について説明する概念図である。本実施形態においては、導光レンズ10をLED41の光軸方向について対称のものを用いるため、入光面12cを通る光は、入光面12bを通る光と同様に説明することができる。つまり、LED41の光軸から広角に放出された光は、入光面12cにおける屈折、側部反射面14cにおける全反射、出光面16cを経て、被反射面25の全体をカバーする光として導光レンズ10から導出される。
【0031】
次に、図6および図7を参照して、本発明に係る線状照明装置1の光学的特性について説明する。
図6は、本実施形態に係る導光レンズ10を装着した線状照明装置1と、かかる導光レンズを具備しない線状照明装置とにおいて、線状照明装置の長手方向についてその照度分布をそれぞれ示す。また、図7は、図6と同じ条件で各々の線状照明装置について短手方向の照度分布を示す。
【0032】
図6および図7において、図中の横軸は、線状照明装置1の長手方向について、その計測位置を表し、縦軸は、導光レンズ10を用いない条件(図中の破線)におけるLEDアレイ4の最大照度の値を1とした線状照明装置1の相対照度を表す。なお、本明細書に添付したデータは、いずれもORA社(Optical Research Associates)製の光学シミュレーションソフトLightTools(登録商標)を用いて得られたシミュレーションの結果である。
【0033】
LEDアレイ4は、出力7.1lmのLEDを18個、それぞれ9mmの等間隔で一列に配置した。入光面12aには光軸に対して±37.5度未満の範囲の光線が入射するものとし、入光面12b,12cは、±約37.5〜90度の範囲の光線が入射するものとした。入光面12aの頂部からLED41の表面までの距離は1.5mmに設定した。出光面16aの凸部から測定点である被照射面25までの距離は8mmに設定した。また、線状照明装置1の長手方向の長さは約160mmとした。一方、導光レンズ10を具備しない比較例は、LED表面から8mmの位置に測定点を設けた。
【0034】
図6から明らかなように、導光レンズ10を具備しない比較例では、LEDアレイを構成するLEDが直下に位置する測定点において、照度が相対的に大きく現れた。その結果、LEDアレイの長手方向に凹凸のパターン、いわゆるリップルが発生し、均斉度が低い線状光となってしまう。リップルの発生を抑えるために、LEDの間隔を狭めて暗部の出現を抑える手法およびLEDアレイと被照射面との距離を離すことで隣り合うLEDどうしの出射光の混合を促す手法とが知られている。しかし、前者の場合、LEDの使用数増に伴うコスト、消費電力の増大が問題となり、後者の場合、線状照明装置の厚みが増し、設計の自由度が損なわれる。
【0035】
これに対し、本発明に係る導光レンズを用いた線状照明装置1の場合、線状照明装置1の長手方向に沿って略一定の照度分布が得られる。さらに、図7から明らかなように、本発明に係る線状照明装置の場合、被照射面上の必要な幅に集光することが可能であるため、全体として照度を高めることができる。
【0036】
このように本発明に係る導光レンズ10を使用することによって、線状光の均斉度の向上に加え、全体の照度も格段に増大させることができる。より具体的には、本実施形態によれば、被照射面の有効幅を短手方向に5mm(図中±2.5mmの範囲)と設定した場合、0.9以上の均斉度が達成できることが確認された。
【0037】
これは、導光レンズ10を具備しない場合において、広角の光線が被照射面に到達せずに迷光となっていたのに対し、本発明に係る線状照明装置1では、広角の光線が導光レンズ10によって屈折・反射して被照射面に導かれるだけでなく、被照射面全体をカバーするように幅のある光として導かれるため、単に照度が増すだけでなく、均斉度も向上すると考えられる。
【0038】
なお、このシミュレーションは、線状照明装置の長手方向の長さを変えても同様の結果が得られる。したがって、本発明は、多くの画像読取装置で採用されている300〜360mmの長さの線状照明装置にも適用できる。
【0039】
続いて、図8〜図14を参照して、製造時のバラツキに起因する位置ずれの影響について説明する。図8〜図10は、本発明に係る導光レンズ10を用いた実施形態について、位置ずれの影響を示すシミュレーション結果である。図12〜図14は、図11に示した比較例に係る導光レンズ94を用いた場合のシミュレーション結果である。
【0040】
図8は、光源であるLED41を+X方向(図3参照)に0.1mmと0.2mmだけそれぞれ変位させた条件で計算した結果である。変位0mmmの場合(実線)である設計条件と比較しても、0.1mm(破線)、0.2mm(一点鎖線)ずらした場合の照度分布は略同じ外形を有しており、必要な被照射面上での照度は略均一であって、位置ずれの影響はほとんどないと考えられる。
【0041】
図9および図10は、それぞれ+Y方向と−Y方向に0.1mm、0.2mmだけ変位させた結果であるが、多少照度が全体的に増減するものの、中央付近で略均一の照度を有する傾向には影響が見られない。
【0042】
次に、比較例として、図11に示した導光レンズ94を具備した線状照明装置90をモデルとしてシミュレーションを行った。導光レンズ94は、本発明と同様に、広角の光線を側部反射面で反射させて利用効率を高めるタイプのものである。しかし、この比較例では、本発明とは異なり、光軸方向に出射された光線が被照射面の中央部分に照射され、広角に出射されて側部反射面で反射された光線が、被照射面の両端近傍に照射されるように構成されている。
【0043】
導光レンズ94を具備した線状照明装置90において、被照射面95上の照度分布を計算したシミュレーション結果を図12〜図14に示す。
【0044】
図12は、変位0mmの設計条件の場合(実線)、+X方向に0.1mm変位させた場合(破線)、および+X方向に0.2mm変位させた場合(一点鎖線)のそれぞれについて、短手方向の相対照度を比較したものである。
【0045】
変位0mmのとき、本発明の導光レンズ10には若干劣るが、概ね均一な照度分布の線状光が得られている。しかし、0.1mmまたは0.2mm変位させた場合は、照度分布が顕著に変化した。
【0046】
図13および図14は、上記比較例に係る線状照明装置90について同様の条件で、+Y方向、−Y方向にそれぞれ0.1mm、0.2mm変位させた場合の影響を示す。
【0047】
このときも同様に、変位0mmのときに良好な照度分布が得られているにもかかわらず、0.1mmまたは0.2mm変位させた場合には、照度のばらつきが顕著である。
【0048】
以上のとおり、本発明に係る導光レンズ10は、点光源であるLED41ないしはLEDアレイ4との位置関係について許容誤差を大きくとることができる。このことは、単に製造コストの低廉化につながるだけでなく、LED41の発熱によって導光レンズ10の変形した場合であっても光学的な影響を最小限に抑えることができる利点がある。
【0049】
図15は、本発明の線状照明装置1を採用し得る画像読取装置の構成例を示す図であり、いわゆる縮小光学系のタイプの画像読取装置80を概念的に説明するための図である。
【0050】
画像読取装置80は、原稿台30を備えた筐体82から構成され、筐体82内には、光源装置40が収容されている。画像読取装置80を動作させると、線状照明装置1から、原稿台30に載置された読取用紙に対して光が照射される。線状照明装置の出射光は、図中に示した破線の経路に従って、ミラー41,43,45,47,49で反射され、レンズ50を通って撮像素子60(検出手段)に入光する。光源装置40が図中の矢印方向に移動しながらこの動作を連続的に行うことで、読取用紙に描かれた画像情報が検出される。
【0051】
このように、本発明に係る線状照明装置1は、例えば従来の画像読取装置で採用されていた外面電極蛍光ランプ等の長尺なランプをそのまま置き換える形で使用することができる。
【0052】
図16および図17は、本発明に係る他の実施形態を示す図である。導光レンズ10の他の例について、出光面12aおよび即部反射面14bなどは上述した具体例に限定されないことは既に述べたとおりである。ここでは、足部18の変形例を含む導光レンズ100,101を説明する。
【0053】
図16に示した導光レンズ100は、足部18を省略して、側部反射面140b,140cを入光面120b,120cと交わるまで延伸した形態である。この形態では、側部反射面と不連続であり、光学的に必ずしも必要ではない足部18b,18cが存在しないため、迷光が生じにくくなり、効率の向上が期待できる。
【0054】
図17に示した導光レンズ101は、足部181b,181cを左右方向に延伸した形態である。この形態の場合、足部181b,181cが十分に大きいのでネジ止め等の作業が容易になる。
【0055】
(他の実施形態)
他の実施形態として、LEDアレイのLED間の距離を10mmにした場合の導光レンズの設計例を説明する。この条件で光学設計を最適化すると、光軸に対して±約37.5度以下の範囲の光が入射する入光面(第1の入光面)が曲率半径R=4.4mmの凸面、入射光が通る出光面(第1の出光面)が曲率半径R=8.8mm、コーニック定数K=7のコーニック面となった。±約37.5度〜90度の範囲の光が入射する入光面(第2の入光面)は、約5度傾斜した平面となり、側部反射面は、曲率半径R=2.3mm、コーニック定数K=−1.4のコーニック面となった。側部反射面で反射された光が通る出光面(第2の出光面)は、約46度に傾斜した面となった。そして、第1の入光面とLEDまでの距離は2.1mmとなり、上述した実施形態と比べて0.6mm離れていることになった。図示しないが、この実施形態の導光レンズについて照度分布を調べても同様の良好な結果が得られることが確認できた。
【0056】
上述した実施形態では、比較的広角な放射光を放出するLEDを例に説明したが、本発明は、被照射面の大きさに比べて十分に小さく、実質的に点光源とみなし得る他の微小な光源(例えば半導体レーザ等)をアレイ状に並べて用いる場合にも、レンズ形状または光源のピッチ等の諸要素を変更することで同様に適用することができる。また、本発明の光源として利用するLEDは、黄色の蛍光体を励起して白色光を出射するタイプのLEDでも、RGB各色を微細領域に実装してなるマルチチップのLEDを採用してもよいことはいうまでもない。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、LEDを一列に並べた一列のLEDアレイを例に説明したが、LEDを2つ並置した2列のLEDアレイを採用してもよい。つまり、2列のLEDに対して単一の導光レンズを組み合わせてもよい。またその際、2列のLEDは、互い違いになるように、千鳥状に配置することもできる。
【0058】
本発明に係る導光レンズは、必ずしもどの断面でも同一の形状である必要はない。例えば、LEDと対向する箇所と、LEDが配置されていない箇所とで、入光面および出光面の形状を異ならしめることもできる。
【0059】
また、本発明に係る導光レンズは、必ずしも上述した実施形態のように断面が左右対称である必要はない。例えばLEDの配光分布に応じて非対称のものであってもよいし、その他の要求に応じて非対称とすることもできる。
【符号の説明】
【0060】
1 線状照明装置
4 LEDアレイ
41 発光ダイオード(LED)
10 導光レンズ
12a 第1の入光面
12b 第2の入光面
12c 第2の入光面
16a 第1の出光面
16b 第2の出光面
16c 第2の出光面
14b 側部反射面
14c 側部反射面
25 被照射面
80 画像読取装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて線状に並置された複数の点光源を備えた光源アレイと、
前記光源アレイの出光側において光源アレイの全長にわたって延在し、前記光源アレイからの光が通過する入光面および出光面、並びに入射光を反射する側部反射面を有する導光レンズと、を具備する線状照明装置であって、
前記導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、
前記導光レンズの出光面は、前記第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、前記第2の入光面で屈折し、かつ前記側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成され、
前記導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ当該線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されたことを特徴とする、線状照明装置。
【請求項2】
導光レンズの第1の入光面および第1の出光面が、光源アレイを構成する点光源の光軸と交わる位置に延在し、第2の入光面が第1の入光面の両側に、第2の出光面が第1の出光面の両側に、それぞれ設けられてなることを特徴とする、請求項1に記載の線状照明装置。
【請求項3】
光源アレイを構成する点光源が、それぞれ放射状に発光する発光ダイオードであることを特徴とする、請求項1または2に記載の線状照明装置。
【請求項4】
画像読取装置であって、
画像情報を含む被照射物に対して方向づけられた請求項1〜3のいずれかに記載の線状照明装置と、
被照射物で反射された光を検出可能な検出手段と、
を具備する、画像読取装置。
【請求項1】
間隔をおいて線状に並置された複数の点光源を備えた光源アレイと、
前記光源アレイの出光側において光源アレイの全長にわたって延在し、前記光源アレイからの光が通過する入光面および出光面、並びに入射光を反射する側部反射面を有する導光レンズと、を具備する線状照明装置であって、
前記導光レンズの入光面は、第1の入光面と第2の入光面から構成され、
前記導光レンズの出光面は、前記第1の入光面で屈折した光が通過する第1の出光面と、前記第2の入光面で屈折し、かつ前記側部反射面で反射した光が通る第2の出光面とから構成され、
前記導光レンズは、第1および第2の出光面を通過して出射された光が、それぞれ当該線状照明装置から所定の距離離間した被照射面を重畳照射するように構成されたことを特徴とする、線状照明装置。
【請求項2】
導光レンズの第1の入光面および第1の出光面が、光源アレイを構成する点光源の光軸と交わる位置に延在し、第2の入光面が第1の入光面の両側に、第2の出光面が第1の出光面の両側に、それぞれ設けられてなることを特徴とする、請求項1に記載の線状照明装置。
【請求項3】
光源アレイを構成する点光源が、それぞれ放射状に発光する発光ダイオードであることを特徴とする、請求項1または2に記載の線状照明装置。
【請求項4】
画像読取装置であって、
画像情報を含む被照射物に対して方向づけられた請求項1〜3のいずれかに記載の線状照明装置と、
被照射物で反射された光を検出可能な検出手段と、
を具備する、画像読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−199576(P2011−199576A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63850(P2010−63850)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]