線画の一部に文字を有する印刷物
【課題】 印刷物を構成する模様に制限を掛けず、画線の一部を利用した微小な文字をランダムに構成することで、肉眼では単に線画模様が構成されているように認識されるが、その情報を知っている者に限り、真正品には当該微小文字の存在が認識可能な画線の一部に文字を有した印刷物を提供する。
【解決手段】 基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、文字及び/又は記号を構成している一部が、画線によって形成されて成る印刷物である。
【解決手段】 基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、文字及び/又は記号を構成している一部が、画線によって形成されて成る印刷物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、カード等の偽造、変造を防止する必要性のある印刷物に適用される、線画の一部に線画と同一線上に設けられた文字を有する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、有価証券、各種証明書及び重要書類並びに金融カード等の印刷物において、偽造や変造防止策は極めて重要な要素であり、画線の構成による潜像のような視覚に訴える偽造防止策や、微小文字や特殊なインキを用いることによる複写防止策、貴重印刷物の使用の際に真正品であることを機械的に判別するための機械読み取り用の偽造防止策等、種々の偽造防止策を印刷物に施すことが知られている。
【0003】
このような種々の偽造防止策の中で、肉眼では画線として確認されるが、拡大して確認すると微小な文字により構成され、複写機により複製すると、複写機の再現性の限界から単なる画線として再現されるという微小文字は、近年一般的な技術として多岐にわたり使用されている技術である。
【0004】
特に微小文字を画線と連続して配置することで、肉眼ではすべてが画線として認識でき、複写するとその微小文字は再現されないため、全体が画線となって再現されるという技術もあった(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許第3392892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この微小文字については、画線と文字の形態の差から、その存在自体を完全に認識できないものではなく、画線のように見えるという程度であり、主たる目的は複写防止である。したがって、一端微小文字の存在が明確化してしまうと、近年の画像処理技術等により、偽造・変造防止策としては、以前と比較すると効果は薄れて来ている状況でもある。
【0007】
このことは、画線の一部に微小文字を施した前述の特許第3392892号にについても同様であり、画線として認識させるために微小文字を画線に連続的に施したものであるため、文字自体が肉眼では認識不可能な大きさであることから、その確認にはルーペ等の補助具を用いる必要性がある。
【0008】
そこで、本発明は印刷物を構成する模様に制限を掛けず、画線の一部を用いて形成された文字及び/又は記号をランダムに構成することで、肉眼では単に線画模様が構成されているように認識されるが、その情報を知っている者に限り、特にルーペ等の補助具を用いることもなく、真正品には当該文字及び/又は記号の存在が認識可能である印刷物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、文字及び/又は記号を構成している一部が、画線によって形成されて成る印刷物である。
【0010】
また本発明は、文字及び/又は記号が、200μm〜1,000μmの大きさであることを特徴とする印刷物である。
【0011】
また本発明は、画線と同一線上に設けられた文字及び/又は記号と、画線との間に30μm〜200μmの隙間を有することを特徴とする印刷物である。
【0012】
また本発明は、画線において、2本以上の画線が交差する交点に文字及び/又は記号が施されていることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画線の一部を共有している文字等を形成するため、印刷物を構成する各種構成要素の中に画線が使用されていればよく、模様に対する制限がほとんどない状態で鑑定要素となる技術が施せる。
【0014】
従来の微小文字は、微小文字群として構成することで、肉眼では画線として認識されるように施されているが、主たる目的は複製した際に忠実に再現されず、画線となってしまうことで、真正品との差別化が図れるものであり、群として構成されているために、念入りに肉眼で真正品を観察すると、どの箇所に施されているか確認できてしまうため、一端確認されると現在の高性能な画像処理装置等を考慮すると、その偽造防止効果は若干低くなっている。本発明によれば、文字及び/又は記号1つずつを単体でランダムに施すことが可能で、かつ、画線の一部を共有することで文字を形成しているために画線として視認されることから、その存在自体を確認することが非常に困難であり、偽造防止技術自体が施されていることも気付かれず、偽造防止効果が高く、特に鑑定要素としての効果がある。
【0015】
本発明は、画線の一部を用いて文字及び/又は記号を形成しているため、文字及び/又は記号が画線と同化して認識可能で、特に一本の画線に限らず、彩紋模様等の複数本から構成される模様において、複数本を用いて一つの文字及び/又は記号を形成することができるため、微小文字とする必要はなく、一つの文字及び/又は記号自体を大きく形成しても、その存在は設計者及びその情報を取得している者以外の者には把握することができない。したがって、微小文字のようにルーペ等の補助具を用いなくとも、真偽判別としては可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有する印刷物の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様が施された印刷物全体を示す図である。この図では、基材(1)全面に背景としての線画模様と文字及び/又は記号を有した彩紋模様(2)とが施されているが、本発明を実施するにあたっては、図1のような背景の線画模様はなくても良く、さらに文字及び/又は記号を有した彩紋模様(2)も、基材(1)の全面又は一部のどちらでも良い。したがって、本発明を実施するには、最低でも一本の画線が基材(1)のどこかに施されることで実現は可能であり、特に画線の数、模様及び施す場所、更には基材の大きさ等については限定されるものではない。
【0018】
図1は、有価証券や通行券等の大きさの印刷物を対象としており、背景及び彩紋の線画模様については、画線幅が30〜200μm、好ましくは60〜150μmによって構成している。ただし、画線幅が細い場合には、1本の画線上に文字及び/又は記号を施すと、その文字及び/又は記号が目立つため、細い画線幅を用いる場合には、文字及び/又は記号を付与する箇所は画線同士の交点を用いることが望ましい。この交点を用いる場合については、後述にて説明する。
【0019】
図2は、図1における彩紋模様(2)の一部に文字(3)が施されている状態を示す図である。図2では拡大図で示したように、近い箇所に2つの文字(3)が施されているが、文字及び/又は記号は、一つ以上であれば良く、また、施される箇所も文字同士が近くても離れても良い。一つ以上の文字を施すことにより、設計者の意図する暗号となって施すことが可能となる。さらに、文字及び/又は記号は一本の線上に二つ以上を施すことも可能である。
【0020】
文字及び/又は記号の大きさについては、図1のような有価証券や通行券等の印刷物の場合、100〜1,000μmの範囲、好ましくは300〜600μmである。100μmより小さい場合には、印刷した際に文字及び/又は記号として認識が困難となり、1,000μmより大きくなると一見して印刷物上に文字及び/又は記号が認識できてしまうからである。なお、本発明においての文字及び/又は記号の大きさとは、図4における字高(y)又は字幅(x)のことであり、字高と字幅が等しくない場合には、小さな文字及び/又は記号を設定する際、字高と字幅の小さい方が基準となり、大きな文字及び/又は記号を設定する際、字高と字幅の大きい方を基準とする。
【0021】
また、図2の拡大図に示すように、施された文字及び/又は記号と画線との間には隙間を有しているが、必ずしもこの隙間を必要とするものではなく、文字及び/又は記号の一部と画線が連続的に構成されていても良い。ただし、文字及び/又は記号として認識し易くするためには、若干の隙間を有することが望ましい。この隙間については、30〜200μmの範囲で、好ましくは50〜150μmである。
【0022】
ただし、前述の画線幅、文字及び/又は記号の大きさ、更には画線と文字及び/又は記号との隙間については、有価証券や通行券等の一般的な印刷用紙を用いた場合の範囲となっているが、対象の印刷物がポスター等の比較的大きな場合には、その大きさに適合した画線幅、文字及び/又は記号の大きさ、更には画線と文字及び/又は記号との隙間を設定すれば本発明を実施することが可能である。
【0023】
図3は、本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を施した線画模様を作成するためのフローを示すものである。まず、印刷物に施す任意の線画模様を作成する。次に、線画模様に施す任意の文字及び/又は記号を決定する。この文字及び/記号は、印刷物(製品)に応じて、設計者又は製品の発注者が決めるものである。基本的に施す文字及び/又は記号は、抜粋して並び替えるとある情報となることが望ましい。特に貴重印刷物に施す場合には、その情報が真偽判別の手段として活用することができるためである。施す文字及び/又は記号が決定した場合、その文字及び/又は記号を施す場所を画線の形状や密度、画線幅及び色などから判断して決定する。施す文字及び/又は記号と場所が決定した後、線画模様として違和感のないように、文字及び/又は記号や模様を形成する画線の変形を行う。この変形を示す図が図3及び図4である。
【0024】
図3は文字及び/又は記号の変形状態を示す図であり、元となる文字(4)(ここではアルファベットのE)を、彩紋模様(2)を構成する画線の角度や配置に併せて変形している状態である。図4は文字及び/又は記号を施す彩紋模様(2)の画線自体を施す文字(4)(ここではアルファベットのA)に併せて変形している状態である。
【0025】
文字及び/又は記号と画線(必要に応じて)の変形が完了した後、実際に文字及び/又は記号を画線の一部に施し、線画模様としての調整を行う。この調整は、最終的な色み、版立て及び他のデザインや技術(特に偽造防止技術)への影響を検討するものである。この調整によって最終的に画像として完成したデータを、実際に出力する形式に色々と調整することも含まれる。
【0026】
完成した画像を直接フィルムに出力し、そのフィルムから所望の印刷方式に合った版面を作成して印刷することで、印刷物が得られる。この印刷方式については、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等、線画模様の印刷が可能な方式であれば特に限定されるものではない。
なお、以上の作成方法については、市販の線画用ソフト(ドロー系ソフト:線を位置やデータや線種、塗りのデータとして持ち、それらの組み合せで線画を主体にしたグラフィックスを作るソフト)で可能であり、例えばAdobe IllustratorやMacromedia FREEHAND等がある。
【0027】
図6は本発明における文字及び/又は記号の例を示すものであり、ひらがな(a)、カタカナ(b)、ローマ字(c)、数字(d)及び各種記号(e)を例示しているが、線画模様に施せる文字及び/又は記号であればこれらに限らず施すことは可能である。
【0028】
(実施例1)
図2に示す彩紋模様を線画ソフト(ドロー系のAdobe Illustrator)を用いて作成した。画線幅は80μmを基本とし、大きさ500μmのカタカナの「ナ」と「ン」という文字を施した。この場合には文字と画線との間に50μmの隙間を有することとし、文字の形状から施す場所を画線同士の交点とした。彩紋模様の色については、特に限定されるものではないが、本実施例では、文字と画線との間に隙間を設けていることから、その隙間が目立たないように薄色系の黄緑色を用いて、オフセット印刷方式で印刷した。この印刷物を、文字が施されていることを知らない者が肉眼で見た場合、施された文字を認識することは不可能であったが、箇所を指定して拡大鏡で確認した場合、「ナ」と「ン」の文字がはっきりと認識可能であった。
【0029】
(実施例2)
図2に示した彩紋模様を、図7に示すような画線幅(5)及び文字(3)の大きさを用いて作成した。図7の(a)は画線幅50μm、文字はローマ字の「E」で大きさは150μmとし、画線と文字との隙間は40μmとした。また、(b)は画線幅130μm、文字はローマ字の「E」で大きさは250μmとし、画線と文字の隙間は80μmとした。図7では1本の画線上に文字(3)を施しているが、文字「E」の形状から画線との整合性を考慮して図8に示すような構成も作成してみた。画線幅は図7と同じ(a)は130μm、(b)は50μmとし、画線と文字との隙間は図2と同じ50μmとした。文字の大きさは図2と同じ500μmとした。図7に示すように文字の形状を考慮すると、1本の画線上に1文字を施すことよりも、数本、しかも画線同士の交点を利用して文字を施す方がより画線との違和感がなく表現可能となる。
【0030】
(実施例3)
図9は、彩紋模様の濃度を異ならせた場合を示す図である。(a)は濃度の薄い場合を示し、薄い黄色によって印刷したものであり、(b)は濃度の濃い場合を示し、青色によって印刷したものである。文字の種類、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様であり、使用した色のみが異なっている。なお、この色については、通常のインキを用いているが、蛍光インキを用いた場合には図10のように新たな効果が現れる。
【0031】
(実施例4)
図10は前述したとおり、彩紋模様に対して有色蛍光インキを用いたものを示す図である。文字とその文字に関連しない画線について有色蛍光インキによって印刷し、肉眼では施された文字の存在を認識することが困難であるが、紫外線(6)を照射することで、有色蛍光インキによって印刷された部分が発光し、特に文字の部分が明確に認識できることとなる。なお、文字の種類、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。また、本実施例では有色蛍光インキを用いているが、無色蛍光インキを用いても良い。
【0032】
(実施例5)
図11は図6で示した文字や記号の種別による実施例を示す図である。(a)はひらがなの「な」を示すものであり、(b)は記号の「%」を示すもので、(c)はカタカナの「モ」を示す図である。いずれの場合も文字の種類、色、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。各文字や記号が違和感のないように施されるように、施す場所はそれぞれ検討し、文字と画線は変形している。
【0033】
(実施例6)
図12は文字や記号を施す箇所の実施例を示す図である。(a)は他の実施例同様画線同士の交点に文字を施したものであり、本発明においてより効果を示す形態である。(b)は二本のほぼ平行する画線を用いて文字を施したものであり、ローマ字の「H」を施しており、(c)は一本の画線上に文字カタカナの「ト」を施したものである。文字の種類や施す箇所は異なっているが、文字の色、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様が施された印刷物を示す図
【図2】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号が施された状態を示す図
【図3】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様を作成するフローを示す図
【図4】本発明による文字及び/又は記号の変形状態を示す図
【図5】本発明による線画模様の変形を示す図
【図6】文字及び/又は記号の具体例を示す図
【図7】画線幅を変えた場合の実施例を示す図
【図8】画線幅を変えた場合の実施例について、数本の画線の交点に、文字及び/又は記号を施した図
【図9】濃度の異なる色を用いた実施例を示す図
【図10】蛍光インキを用いた実施例を示す図
【図11】種別の異なる文字又は記号を施した実施例を示す図
【図12】文字又は記号を施す場所の実施例を示す図
【符号の説明】
【0035】
1 基材
2 画線によって構成された模様
3 文字及び/記号
4 変形前の文字及び/記号
5、5’、5” 画線
6 紫外線ランプ
7 通常の画線
8 蛍光インキによる画線
x 文字及び/記号の字幅
y 文字及び/記号の字高
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、カード等の偽造、変造を防止する必要性のある印刷物に適用される、線画の一部に線画と同一線上に設けられた文字を有する印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、有価証券、各種証明書及び重要書類並びに金融カード等の印刷物において、偽造や変造防止策は極めて重要な要素であり、画線の構成による潜像のような視覚に訴える偽造防止策や、微小文字や特殊なインキを用いることによる複写防止策、貴重印刷物の使用の際に真正品であることを機械的に判別するための機械読み取り用の偽造防止策等、種々の偽造防止策を印刷物に施すことが知られている。
【0003】
このような種々の偽造防止策の中で、肉眼では画線として確認されるが、拡大して確認すると微小な文字により構成され、複写機により複製すると、複写機の再現性の限界から単なる画線として再現されるという微小文字は、近年一般的な技術として多岐にわたり使用されている技術である。
【0004】
特に微小文字を画線と連続して配置することで、肉眼ではすべてが画線として認識でき、複写するとその微小文字は再現されないため、全体が画線となって再現されるという技術もあった(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許第3392892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この微小文字については、画線と文字の形態の差から、その存在自体を完全に認識できないものではなく、画線のように見えるという程度であり、主たる目的は複写防止である。したがって、一端微小文字の存在が明確化してしまうと、近年の画像処理技術等により、偽造・変造防止策としては、以前と比較すると効果は薄れて来ている状況でもある。
【0007】
このことは、画線の一部に微小文字を施した前述の特許第3392892号にについても同様であり、画線として認識させるために微小文字を画線に連続的に施したものであるため、文字自体が肉眼では認識不可能な大きさであることから、その確認にはルーペ等の補助具を用いる必要性がある。
【0008】
そこで、本発明は印刷物を構成する模様に制限を掛けず、画線の一部を用いて形成された文字及び/又は記号をランダムに構成することで、肉眼では単に線画模様が構成されているように認識されるが、その情報を知っている者に限り、特にルーペ等の補助具を用いることもなく、真正品には当該文字及び/又は記号の存在が認識可能である印刷物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、文字及び/又は記号を構成している一部が、画線によって形成されて成る印刷物である。
【0010】
また本発明は、文字及び/又は記号が、200μm〜1,000μmの大きさであることを特徴とする印刷物である。
【0011】
また本発明は、画線と同一線上に設けられた文字及び/又は記号と、画線との間に30μm〜200μmの隙間を有することを特徴とする印刷物である。
【0012】
また本発明は、画線において、2本以上の画線が交差する交点に文字及び/又は記号が施されていることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画線の一部を共有している文字等を形成するため、印刷物を構成する各種構成要素の中に画線が使用されていればよく、模様に対する制限がほとんどない状態で鑑定要素となる技術が施せる。
【0014】
従来の微小文字は、微小文字群として構成することで、肉眼では画線として認識されるように施されているが、主たる目的は複製した際に忠実に再現されず、画線となってしまうことで、真正品との差別化が図れるものであり、群として構成されているために、念入りに肉眼で真正品を観察すると、どの箇所に施されているか確認できてしまうため、一端確認されると現在の高性能な画像処理装置等を考慮すると、その偽造防止効果は若干低くなっている。本発明によれば、文字及び/又は記号1つずつを単体でランダムに施すことが可能で、かつ、画線の一部を共有することで文字を形成しているために画線として視認されることから、その存在自体を確認することが非常に困難であり、偽造防止技術自体が施されていることも気付かれず、偽造防止効果が高く、特に鑑定要素としての効果がある。
【0015】
本発明は、画線の一部を用いて文字及び/又は記号を形成しているため、文字及び/又は記号が画線と同化して認識可能で、特に一本の画線に限らず、彩紋模様等の複数本から構成される模様において、複数本を用いて一つの文字及び/又は記号を形成することができるため、微小文字とする必要はなく、一つの文字及び/又は記号自体を大きく形成しても、その存在は設計者及びその情報を取得している者以外の者には把握することができない。したがって、微小文字のようにルーペ等の補助具を用いなくとも、真偽判別としては可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有する印刷物の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様が施された印刷物全体を示す図である。この図では、基材(1)全面に背景としての線画模様と文字及び/又は記号を有した彩紋模様(2)とが施されているが、本発明を実施するにあたっては、図1のような背景の線画模様はなくても良く、さらに文字及び/又は記号を有した彩紋模様(2)も、基材(1)の全面又は一部のどちらでも良い。したがって、本発明を実施するには、最低でも一本の画線が基材(1)のどこかに施されることで実現は可能であり、特に画線の数、模様及び施す場所、更には基材の大きさ等については限定されるものではない。
【0018】
図1は、有価証券や通行券等の大きさの印刷物を対象としており、背景及び彩紋の線画模様については、画線幅が30〜200μm、好ましくは60〜150μmによって構成している。ただし、画線幅が細い場合には、1本の画線上に文字及び/又は記号を施すと、その文字及び/又は記号が目立つため、細い画線幅を用いる場合には、文字及び/又は記号を付与する箇所は画線同士の交点を用いることが望ましい。この交点を用いる場合については、後述にて説明する。
【0019】
図2は、図1における彩紋模様(2)の一部に文字(3)が施されている状態を示す図である。図2では拡大図で示したように、近い箇所に2つの文字(3)が施されているが、文字及び/又は記号は、一つ以上であれば良く、また、施される箇所も文字同士が近くても離れても良い。一つ以上の文字を施すことにより、設計者の意図する暗号となって施すことが可能となる。さらに、文字及び/又は記号は一本の線上に二つ以上を施すことも可能である。
【0020】
文字及び/又は記号の大きさについては、図1のような有価証券や通行券等の印刷物の場合、100〜1,000μmの範囲、好ましくは300〜600μmである。100μmより小さい場合には、印刷した際に文字及び/又は記号として認識が困難となり、1,000μmより大きくなると一見して印刷物上に文字及び/又は記号が認識できてしまうからである。なお、本発明においての文字及び/又は記号の大きさとは、図4における字高(y)又は字幅(x)のことであり、字高と字幅が等しくない場合には、小さな文字及び/又は記号を設定する際、字高と字幅の小さい方が基準となり、大きな文字及び/又は記号を設定する際、字高と字幅の大きい方を基準とする。
【0021】
また、図2の拡大図に示すように、施された文字及び/又は記号と画線との間には隙間を有しているが、必ずしもこの隙間を必要とするものではなく、文字及び/又は記号の一部と画線が連続的に構成されていても良い。ただし、文字及び/又は記号として認識し易くするためには、若干の隙間を有することが望ましい。この隙間については、30〜200μmの範囲で、好ましくは50〜150μmである。
【0022】
ただし、前述の画線幅、文字及び/又は記号の大きさ、更には画線と文字及び/又は記号との隙間については、有価証券や通行券等の一般的な印刷用紙を用いた場合の範囲となっているが、対象の印刷物がポスター等の比較的大きな場合には、その大きさに適合した画線幅、文字及び/又は記号の大きさ、更には画線と文字及び/又は記号との隙間を設定すれば本発明を実施することが可能である。
【0023】
図3は、本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を施した線画模様を作成するためのフローを示すものである。まず、印刷物に施す任意の線画模様を作成する。次に、線画模様に施す任意の文字及び/又は記号を決定する。この文字及び/記号は、印刷物(製品)に応じて、設計者又は製品の発注者が決めるものである。基本的に施す文字及び/又は記号は、抜粋して並び替えるとある情報となることが望ましい。特に貴重印刷物に施す場合には、その情報が真偽判別の手段として活用することができるためである。施す文字及び/又は記号が決定した場合、その文字及び/又は記号を施す場所を画線の形状や密度、画線幅及び色などから判断して決定する。施す文字及び/又は記号と場所が決定した後、線画模様として違和感のないように、文字及び/又は記号や模様を形成する画線の変形を行う。この変形を示す図が図3及び図4である。
【0024】
図3は文字及び/又は記号の変形状態を示す図であり、元となる文字(4)(ここではアルファベットのE)を、彩紋模様(2)を構成する画線の角度や配置に併せて変形している状態である。図4は文字及び/又は記号を施す彩紋模様(2)の画線自体を施す文字(4)(ここではアルファベットのA)に併せて変形している状態である。
【0025】
文字及び/又は記号と画線(必要に応じて)の変形が完了した後、実際に文字及び/又は記号を画線の一部に施し、線画模様としての調整を行う。この調整は、最終的な色み、版立て及び他のデザインや技術(特に偽造防止技術)への影響を検討するものである。この調整によって最終的に画像として完成したデータを、実際に出力する形式に色々と調整することも含まれる。
【0026】
完成した画像を直接フィルムに出力し、そのフィルムから所望の印刷方式に合った版面を作成して印刷することで、印刷物が得られる。この印刷方式については、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等、線画模様の印刷が可能な方式であれば特に限定されるものではない。
なお、以上の作成方法については、市販の線画用ソフト(ドロー系ソフト:線を位置やデータや線種、塗りのデータとして持ち、それらの組み合せで線画を主体にしたグラフィックスを作るソフト)で可能であり、例えばAdobe IllustratorやMacromedia FREEHAND等がある。
【0027】
図6は本発明における文字及び/又は記号の例を示すものであり、ひらがな(a)、カタカナ(b)、ローマ字(c)、数字(d)及び各種記号(e)を例示しているが、線画模様に施せる文字及び/又は記号であればこれらに限らず施すことは可能である。
【0028】
(実施例1)
図2に示す彩紋模様を線画ソフト(ドロー系のAdobe Illustrator)を用いて作成した。画線幅は80μmを基本とし、大きさ500μmのカタカナの「ナ」と「ン」という文字を施した。この場合には文字と画線との間に50μmの隙間を有することとし、文字の形状から施す場所を画線同士の交点とした。彩紋模様の色については、特に限定されるものではないが、本実施例では、文字と画線との間に隙間を設けていることから、その隙間が目立たないように薄色系の黄緑色を用いて、オフセット印刷方式で印刷した。この印刷物を、文字が施されていることを知らない者が肉眼で見た場合、施された文字を認識することは不可能であったが、箇所を指定して拡大鏡で確認した場合、「ナ」と「ン」の文字がはっきりと認識可能であった。
【0029】
(実施例2)
図2に示した彩紋模様を、図7に示すような画線幅(5)及び文字(3)の大きさを用いて作成した。図7の(a)は画線幅50μm、文字はローマ字の「E」で大きさは150μmとし、画線と文字との隙間は40μmとした。また、(b)は画線幅130μm、文字はローマ字の「E」で大きさは250μmとし、画線と文字の隙間は80μmとした。図7では1本の画線上に文字(3)を施しているが、文字「E」の形状から画線との整合性を考慮して図8に示すような構成も作成してみた。画線幅は図7と同じ(a)は130μm、(b)は50μmとし、画線と文字との隙間は図2と同じ50μmとした。文字の大きさは図2と同じ500μmとした。図7に示すように文字の形状を考慮すると、1本の画線上に1文字を施すことよりも、数本、しかも画線同士の交点を利用して文字を施す方がより画線との違和感がなく表現可能となる。
【0030】
(実施例3)
図9は、彩紋模様の濃度を異ならせた場合を示す図である。(a)は濃度の薄い場合を示し、薄い黄色によって印刷したものであり、(b)は濃度の濃い場合を示し、青色によって印刷したものである。文字の種類、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様であり、使用した色のみが異なっている。なお、この色については、通常のインキを用いているが、蛍光インキを用いた場合には図10のように新たな効果が現れる。
【0031】
(実施例4)
図10は前述したとおり、彩紋模様に対して有色蛍光インキを用いたものを示す図である。文字とその文字に関連しない画線について有色蛍光インキによって印刷し、肉眼では施された文字の存在を認識することが困難であるが、紫外線(6)を照射することで、有色蛍光インキによって印刷された部分が発光し、特に文字の部分が明確に認識できることとなる。なお、文字の種類、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。また、本実施例では有色蛍光インキを用いているが、無色蛍光インキを用いても良い。
【0032】
(実施例5)
図11は図6で示した文字や記号の種別による実施例を示す図である。(a)はひらがなの「な」を示すものであり、(b)は記号の「%」を示すもので、(c)はカタカナの「モ」を示す図である。いずれの場合も文字の種類、色、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。各文字や記号が違和感のないように施されるように、施す場所はそれぞれ検討し、文字と画線は変形している。
【0033】
(実施例6)
図12は文字や記号を施す箇所の実施例を示す図である。(a)は他の実施例同様画線同士の交点に文字を施したものであり、本発明においてより効果を示す形態である。(b)は二本のほぼ平行する画線を用いて文字を施したものであり、ローマ字の「H」を施しており、(c)は一本の画線上に文字カタカナの「ト」を施したものである。文字の種類や施す箇所は異なっているが、文字の色、画線幅、文字の大きさ及び画線と文字との隙間は、図2に示したものと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様が施された印刷物を示す図
【図2】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号が施された状態を示す図
【図3】本発明における画線の一部に文字及び/又は記号を有した線画模様を作成するフローを示す図
【図4】本発明による文字及び/又は記号の変形状態を示す図
【図5】本発明による線画模様の変形を示す図
【図6】文字及び/又は記号の具体例を示す図
【図7】画線幅を変えた場合の実施例を示す図
【図8】画線幅を変えた場合の実施例について、数本の画線の交点に、文字及び/又は記号を施した図
【図9】濃度の異なる色を用いた実施例を示す図
【図10】蛍光インキを用いた実施例を示す図
【図11】種別の異なる文字又は記号を施した実施例を示す図
【図12】文字又は記号を施す場所の実施例を示す図
【符号の説明】
【0035】
1 基材
2 画線によって構成された模様
3 文字及び/記号
4 変形前の文字及び/記号
5、5’、5” 画線
6 紫外線ランプ
7 通常の画線
8 蛍光インキによる画線
x 文字及び/記号の字幅
y 文字及び/記号の字高
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、前記画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、前記文字及び/又は記号を構成している一部が、前記画線によって形成されて成る印刷物。
【請求項2】
前記文字及び/又は記号が、100μm〜1,000μmの大きさであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記画線と同一線上に設けられた前記文字及び/又は記号と、前記画線との間に30μm〜200μmの隙間を有することを特徴とする請求項1又は2記載の印刷物。
【請求項1】
基材上の少なくとも一部に画線を用いた模様が施された印刷物において、前記画線の少なくとも一部に文字及び/又は記号が施され、前記文字及び/又は記号を構成している一部が、前記画線によって形成されて成る印刷物。
【請求項2】
前記文字及び/又は記号が、100μm〜1,000μmの大きさであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記画線と同一線上に設けられた前記文字及び/又は記号と、前記画線との間に30μm〜200μmの隙間を有することを特徴とする請求項1又は2記載の印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−123270(P2006−123270A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312704(P2004−312704)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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