説明

線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬

【課題】グリチルリチンを用いて、従来の治療薬とは異なる、治療効果が高くかつ副作用の少ない、新規な線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬を提供する。
【解決手段】グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬。薬学上許容される塩として、グリチルリチンアンモニウム塩、またはグリチルリチンナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、あるいはグリチルリチンコリン塩等が好適であり、さらに、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器疾患は、症状が重篤になると全身的な症状悪化を伴うだけでなく、呼吸が自由に行えなくなることにより、特に大きな苦痛を罹患者にもたらすものである。
例えば、肺は呼吸した空気から酸素を血液中に取り込み、二酸化炭素を体外に放出するガス交換を行う臓器であり、数億個にも及ぶ肺胞でこのガス交換を行っている。そして、線維化肺疾患を発症し、その発症部位が広範囲に渡ると、先に述べたガス交換が十分行えなくなるので、血液中の酸素濃度が慢性的に低下して呼吸不全をきたし、しばしば死に至る。ここで線維化肺疾患とは、炎症性肺疾患の終末的病態の一つとして広く見られるものであり、例えば、代表的なものとして肺線維症を挙げることができるが、慢性気管支炎などにおいても肺の線維化を伴うことがある。
【0003】
肺の炎症は主に、気腔を主たる炎症の場とする肺胞性肺炎と、肺胞上皮を含む肺胞壁を主たる炎症の場とする間質性肺炎とに大別される。例えば、肺線維症とは、肺胞壁や細気管支周囲などに線維性結合組織の増殖が起こり、硬く萎縮してしまうものである。これは、炎症部位においてコラーゲンの過剰産生と分解抑制が起こることで、コラーゲンの産生および分解のバランスが崩れた結果であると考えられている。また、肺胞性肺炎、間質性肺炎以外にも、肺結核、珪肺その他の塵肺症の際に見られる瘢痕性肉芽腫から移行することが知られており、活性酸素、薬剤投与も危険因子と成り得ることが判明している。
【0004】
肺線維症をはじめとする線維化肺疾患の治療には、危険因子を取り除くと共に、炎症を抑制する目的でステロイド剤、免疫抑制剤などの投与が行われることが一般的である。しかし、対症療法が主たるものであり効果も十分ではなく、用いられる治療薬は副作用も強いため長期連用には向いておらず、有効な治療薬は未だ無いのが現状である。
【0005】
一方、呼吸系の気道は外気に直接曝されているために、大気中の塵埃、微生物などの異物による侵襲を受け易い。そこで気道には、粘液分泌、粘液繊毛輸送および咳嗽などの生体防御機構が発達している。これらの防御機構の破綻は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を始めとする各種呼吸器疾患の発症、慢性化および難治化と密接に関与している。
例えば、気道の炎症により粘液分泌が過剰になり、進行性の気道塞栓を引き起こすことがある。粘液は杯細胞および粘膜下腺細胞により産生され、脱顆粒後に気道の内腔へと分泌される。なかでも杯細胞は、気道上皮に存在する粘液分泌細胞であり、気道疾患に罹患すると中枢気道および末梢気道で杯細胞の過形成が生じ、粘液の過剰分泌が生じることが知られている。そして末梢気道においては、狭い気道上皮に数多くの杯細胞が存在するため、特に気道塞栓を生じ易い。また、過剰分泌された粘液は、それ自体のクリアランスの減少という問題を生じさせ、例えば、粘液内における細菌コロニーの発生により、肺感染症の原因となることもある。
【0006】
このような粘液の過剰分泌に伴う気道塞栓は、例えば、慢性気管支炎、急性喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症および慢性閉塞性肺疾患等の各種呼吸器疾患において見られる。その治療には、過去に急性呼吸器疾患の治療を目的として開発されたステロイド性抗炎症薬、抗生物質、去痰薬並びに気管支拡張剤等が一般的に用いられている。
【0007】
しかし、ステロイド性抗炎症薬は、長期投与によって免疫不全症の発生等の無視できない副作用の問題がある。また、抗生物質は慢性呼吸器疾患に対しては耐性菌の出現や日和見感染の問題がある。一方、現行の去痰薬の有効性は、患者と医師の双方が満足するにはほど遠いのが現状である。また、気管支拡張剤も治療目的に投与されているが、去痰薬と同様に満足する治療効果は得られていない。
即ち、効果が確実で副作用が少ないことを治療薬の理想とするならば、ステロイド性抗炎症薬や抗生物質は副作用の点で、一方、現行の去痰薬や気管支拡張剤は有効性の点で、治療薬として十分とは言い難い。
【0008】
以上のような観点から、これら従来の治療薬に代わる、副作用が少なくかつ治療効果の高い新規な上記疾患の治療薬の開発が、強く望まれている。
例えば、グリチルリチンは、すでに長年に渡り、肝臓病治療薬あるいは抗アレルギー疾患薬として用いられてきているものである(非特許文献1〜4参照)。
【0009】
また、グリチルリチンは、その長年に渡る豊富な使用実績から、副作用の少ない治療薬であることが確認されており、その安全性に定評のあるものとなっている。投与時に認められる数少ない副作用として、おもに低カリウム血症が挙げられるが、抗アルドステロン薬スピロノラクトンとの併用等により、比較的抑制しやすいことが知られている。
そこで、このように使用実績が豊富で、副作用が少ないことが確認されている安全性の高い薬剤を、上記疾患の治療薬として用いることができれば、非常に有用である。
【非特許文献1】鈴木宏ほか:強力ネオミノファーゲンCの慢性肝炎に対する治療効果について、医学のあゆみ、第102巻、562(1977)
【非特許文献2】矢野右人ほか:慢性肝炎に対するグリチロン錠二号の二重盲検法による治療効果の検討、臨牀と研究、第66巻、2629(1989)
【非特許文献3】強ミノC臨床研究班:薬疹・中毒疹、蕁麻疹に対する強力ネオミノファーゲンシーの臨床的検討、西日本皮膚科、第56巻、603(1994)
【非特許文献4】皆見紀久男:皮膚科領域におけるグリチロン錠使用経験、臨牀と研究、第78巻、187(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、グリチルリチンは、線維化肺疾患治療薬としての検討が、これまでに全くなされていなかった。
また、気道に存在する粘液分泌細胞に対するグリチルリチンの作用については、これまで検討されておらず、グリチルリチンの気道塞栓の治療薬としての検討も、これまでになされていなかった。
したがって、本発明の課題とするところは、グリチルリチンを用いて、従来の治療薬とは異なる、治療効果が高くかつ副作用の少ない、新規な線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、副作用が少なく安全性が高いことが知られているグリチルリチンが、全く意外にも、肺線維症をはじめとする線維化肺疾患の治療に極めて有効であり、さらに、杯細胞の過形成を抑制し、気道塞栓を緩和することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第一の発明は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する線維化肺疾患治療薬である。
本発明の第二の発明は、前記線維化肺疾患が、肺線維症、並びに肺気腫を併発しているかまたは併発していない慢性気管支炎のいずれかである第一の発明に記載の線維化肺疾患治療薬である。
本発明の第三の発明は、前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である第一または第二の発明に記載の線維化肺疾患治療薬である。
また、本発明の第四の発明は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する気道粘液分泌細胞過形成抑制剤である。
本発明の第五の発明は、前記気道粘液分泌細胞が杯細胞である第四の発明に記載の気道粘液分泌細胞過形成抑制剤である。
本発明の第六の発明は、前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である第四または第五の発明に記載の気道粘液分泌細胞過形成抑制剤である。
また、本発明の第七の発明は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する気道塞栓治療薬である。
本発明の第八の発明は、前記気道塞栓が、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、副鼻腔炎および慢性閉塞性肺疾患のいずれかに由来するものである第七の発明に記載の気道塞栓治療薬である。
本発明の第九の発明は、前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である第七または第八の発明に記載の気道塞栓治療薬である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、線維化肺疾患に対して、副作用が少なくかつ有効な治療効果を示す。また、本発明は、副作用が少なく、かつ気道粘液分泌細胞過の過形成を抑制し、気道塞栓に対して有効な治療効果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、線維化肺疾患とは、例えば、肺線維症、及び肺の線維化を伴う炎症性肺疾患等を指す。具体的に肺線維症以外であれば、例えば、慢性気管支炎を挙げることができるが、肺気腫を併発している慢性気管支炎に対しても本発明の治療薬は有効である。なかでも、特に肺線維症に対して、本発明の治療薬は有効である。
【0015】
本発明において、気道塞栓とは、主に粘液の過剰分泌により生じるものを指し、具体的には、例えば、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、副鼻腔炎および慢性閉塞性肺疾患のいずれかに由来するものを挙げることができる。
【0016】
本発明の線維化肺疾患治療薬は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する。そして、本発明の線維化肺疾患治療薬は、コラーゲンmRNAの発現量を抑制することで、肺実質中におけるコラーゲンの産生を低減し、肺の線維化を抑制するものである。
また、本発明の気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬は、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する。そして本発明は、気道に存在する杯細胞等の粘液分泌細胞の過形成を抑制することで、粘液の過剰分泌を抑制するものであり、気道塞栓を緩和する作用を有する。
【0017】
本発明で用いるグリチルリチンは、例えば、甘草から抽出することにより得られるが、市販されているものを用いることもできる。
また、その薬学上許容される塩としては、グリチルリチンと無機あるいは有機塩基とを、一定のモル比で作用させて得られるものであり、好ましいものとして、グリチルリチンモノアンモニウム塩、グリチルリチンジアンモニウム塩;グリチルリチンモノナトリウム塩、グリチルリチンジナトリウム塩、グリチルリチンモノカリウム塩、グリチルリチンジカリウム塩等のアルカリ金属塩;あるいは、グリチルリチンコリン塩等を挙げることができる。さらにこれら以外にも、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等も用いることができる。これらの中でも、グリチルリチンモノアンモニウム塩が特に好ましい。
また、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて併用しても良い。
【0018】
本発明の治療薬の製剤形態は、特に限定されないが、一般に、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、細粒剤、水薬等の経口剤、吸入剤、座剤あるいは注射剤等の非経口剤とすることができる。
これらは、従来公知の方法により製造できる。
【0019】
経口剤としては前記のように、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、細粒剤、液剤等とすることができる。これらの製剤は、これらの製剤の製造に通常用いられる賦形剤、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、安定剤、矯味剤、着色剤、香料、緩衝剤等を配合し、常法にしたがって製造することができる。
【0020】
賦形剤としては、例えば、乳糖、ブドウ糖、D−マンニトール、果糖、デキストリン、デンプン、食塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、無水ケイ酸、およびカオリン等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、トウモロコシデンプンおよびマクロゴール等が挙げられる。
また、結合剤としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、セルロースエステルおよびポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0021】
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、グリセリン類、トリアセチン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アセチルグリセリン脂肪酸エステルおよびクエン酸トリエチル等が挙げられる。
結合剤としては、水飴、甘草エキス、トラガント、単シロップ、ゼラチン等が挙げられる。
【0022】
崩壊剤としては、デンプン、カンテン、カルメロ−スカルシウム、カルメロ−ス、結晶セルロ−ス等が挙げられる。
湿潤剤としては、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロ−ス、カルメロ−スナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロ−ス等が挙げられる。
【0023】
矯味剤としては、例えば、白糖、ハチミツ、サッカリンナトリウム、ハッカ、ユ−カリ油、ケイヒ油等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化鉄、β−カロチン、クロロフィルおよび水溶性食用夕−ル色素等が挙げられる。
香料としては、例えば、レモン油、オレンジ油、dl−またはl−メント−ル等が挙げられる。
【0024】
また、吸入剤あるいは注射剤等の非経口剤として用いる場合は、溶媒として注射用蒸留水または無菌の非水性溶媒、または懸濁剤が挙げられる。非水性の溶媒または懸濁剤の基剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、オリーブ油、コーン油、オレイン酸エチル等を用いることが好ましい。
また、これらに加え、本発明による効果を妨げない範囲内で、薬学上許容される任意成分として、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤等を必要に応じて適宜添加することもできる。
【0025】
投与方法としては、経口、非経口のいずれも選択できる。
線維化肺疾患治療薬としては、投与量は、患者の年齢、症状等により適宜異なるが、経口投与の場合、成人一人一日あたり、グリチルリチンあるいはその塩の量として、好ましくは25〜1000mg/人、さらに好ましくは150〜225mg/人である。かかる範囲のグリチルリチンを1日に1回または複数回に分けて投与することができる。また、非経口の場合の投与量は、成人一人一日あたり、グリチルリチンあるいはその塩の量として25〜1000mg/人が好ましい。かかる範囲のグリチルリチンを1日に1回または複数回に分けて投与することができる。
【0026】
気道粘液分泌細胞過形成抑制剤または気道塞栓治療薬としては、投与量は、患者の年齢、症状等により適宜異なるが、経口投与の場合、成人一人一日あたり、グリチルリチンあるいはその塩の量として、好ましくは25〜1000mg/人、さらに好ましくは150〜225mg/人である。かかる範囲のグリチルリチンを1日に1回または複数回に分けて投与することができる。また、非経口の場合の投与量は、成人一人一日あたり、グリチルリチンあるいはその塩の量として25〜1000mg/人が好ましい。かかる範囲のグリチルリチンを1日に1回または複数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0027】
以下、具体的に実施例を挙げ、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
◎線維化肺疾患治療薬
<材料および手順>
まず、本実施例で用いた材料および実験手順を以下に示す。
(実験動物)
本実施例においては、病理組織学的所見がヒトの肺線維症と非常に似ていることから、ラットのブレオマイシン誘発肺線維症モデルを用いた。
ラットとしては、SD系雄性ラット8週齢(250〜280g)(日本チャールズリバー社製)を用いた。馴化および試験期間中、これらの動物は、室温25℃の環境下で固形飼料および飲料水を自由摂取させて飼育した.
【0028】
(使用薬剤)
本発明の、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する線維化肺疾患治療薬として、皮下注射剤であるグリチロン注一号(登録商標、株式会社ミノファーゲン製薬製、以下、GLと略記する)を用いた。なお、グリチロン注一号の1アンプル(2ml)中の成分は、以下に示す通りである。
【0029】
◎グリチロン注一号
グリチルリチンモノアンモニウム塩 40mg(グリチルリチン換算)
アンモニア 適量
塩化ナトリウム 適量
【0030】
本実施例においては、比較対象の薬剤として、ステロイド性抗炎症薬であるデキサメタゾン21−リン酸(Sigma社製、以下、DEXと略記する)を用いた。
また、ラットに肺線維症を誘発する薬剤であるブレオマイシンとして、ブレオ(日本化薬株式会社製、以下、BLMと略記する)を用いた。その他の薬品はすべて市販の特級試薬を用いた。
【0031】
(BLM誘発肺線維症モデルの作製)
ラットを塩酸ケタミン(100mg/kg;腹腔内投与)麻酔により不動化し、正中切開後により気管を露出させた後、マイクロシリンジにてBLM(4mg/0.5mL/kg)を気管内へ注入した。そして、切開部を縫合した後、ラットを処理日まで自由摂餌・飲水にて飼育し、BLM誘発肺線維症モデルを作製した。
【0032】
(薬剤投与)
作製したBLM誘発肺線維症モデルに対して、GLまたはDEXを投与して肺線維症の抑制効果を比較検討した。この時、さらにコントロールとして、これら薬剤に代わり生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)(6.75mL/kg)を投与した群(以下、BLM単独投与群と略記する)も設けた。投与は、以下に示す2通りの方法(投与方法1および2)で行った。
【0033】
(投与方法1)
GLの1回の投与量を15、45および135mg/kg(皮下投与)、DEXの1回の投与量を1mg/kg(皮下投与)、生理食塩水の1回の投与量を6.75mL/kgとした。そしてこれらを、BLM投与直後から4週間、1日1回、皮下投与により連日投与するスケジュールで投与し、4週間後に試料を採取して、病理組織学的および生化学的に検討した。なお、この時のGL投与群を投与量に応じてGL(15)4W群、GL(45)4W群およびGL4W(135)群、さらにこれらをまとめてGL4W群、またDEX投与群をDEX4W群と、以下においてはそれぞれ略記する。また、投与を行ったBLM誘発肺線維症モデルは、GL(15)4W群では5匹、GL(45)4W群では5匹、GL4W(135)群では5匹、DEX4W群では6匹、BLM単独投与群では5匹であった。
【0034】
(投与方法2)
GLの1回の投与量を135mg/kg(皮下投与)、DEXの1回の投与量を1mg/kg(皮下投与)、生理食塩水の1回の投与量を6.75mL/kgとした。そしてこれらを、BLM投与2週間後から2週間、1日1回、皮下投与により連日投与するスケジュールで投与し、2週間後に試料を採取して、病理組織学的および生化学的に検討した。なお、この時のGL投与群をGL2−4W群、DEX投与群をDEX2−4W群と、以下においてはそれぞれ略記する。また、投与を行ったBLM誘発肺線維症モデルは、GL2−4W群では5匹、DEX2−4W群では5匹、BLM単独投与群は5匹であった。
【0035】
(試料の採取)
薬剤投与終了後、ラットは麻酔下にて開腹し、腹部大動脈より放血致死させ、気管カニューレを通じて気管支肺胞洗浄を行い、洗浄液(以下、BALFと記載する)を採取した。また、洗浄後の肺を摘出し、左葉は、10%中性緩衝ホルマリン溶液(pH7.8)にて固定してパラフィン包埋し、ミクロトームで厚さ5μmの切片として、ヘマトキシリン・エオジン染色を行った後、光学顕微鏡下にて観察した。一方、右葉、上葉および中葉から、TRIzol reagent(Invitrogen社製)を用いて、総RNAの抽出および精製を行った.
【0036】
(BALF成分の生化学的解析)
炎症の指標として、BALF中の炎症性細胞数およびタンパク質の濃度を測定した。タンパク質の濃度は、Protein Assay Dye Reagent(Bio−Rad社製)を用いて測定した。なお、ウシ血清アルブミン溶液(0〜250μg/mL、以下、BSAと略記する)のタンパク質の濃度を同様の方法で測定し、得られた吸光度の値から検量線を作成して、BSA換算量として定量した。
【0037】
(肺実質中のコラーゲンタイプ1mRNAの測定)
肺右葉より抽出した総RNA1μgを鋳型として、従来公知の方法に従って逆転写を行い、cDNAを合成した。得られたcDNAを、iTaq SYBER Green Supermix with ROX (Bio−Rad社製)を用いたリアルタイムPCR法により増幅し、コラーゲンタイプ1mRNAの量を測定した。この時、同時にGAPDHのmRNAを増幅し、内部標準として用いた。
【0038】
(肺実質中のコラーゲン量の測定)
肺右下葉を細切し、得られた切片の一部を分取して、1% プロテアーゼインヒビターカクテルを含む0.5M酢酸溶液を加え、4℃にて24時間撹拌を行った。次いで、15000×gで60分間遠心処理を行い、上清を採取してコラーゲン量を測定した。測定には、Sircol Soluble Collagen Assay kit(Biocolor社製)を用いた。なお、コラーゲン量は総タンパク質量で補正した。
【0039】
(統計処理)
データは平均値±標準誤差(mean±S.E.M.)として示した。統計学的解析には、ANOVA(Student−Newman−Keuls社製)を用い、p<0.05を以って有意とみなした。
【0040】
<結果>
結果を以下に示す。
(BLM単独投与群)
気管内にBLMを注入したラットの肺は、注入後1週間で、血管の周辺にマクロファージ、好中球およびリンパ球が数多く観察され、明らかに炎症が惹起されたと考えられた。注入後2週間では、血管や細気管支周辺の肺胞壁に線維芽細胞によると考えられる肥厚すなわち線維化が見られ、その後時間経過と共にこの線維化は顕著となり、4週間後では広範囲にわたって線維化が観察された。
【0041】
BALF中の炎症性細胞数は、BLM注入後1、2、3および4週間のいずれの時点でも、健常ラットに対して2〜4倍と有意に増加していたが、1週間後では、好中球の浸潤およびBALF中のタンパク質量の増加が顕著であった。これに対し、肺実質中のコラーゲン量は、BLM投与後3および4週目で顕著となり、線維化に先行して急性の気道炎症が生じていると考えられた。
【0042】
(投与方法1〜BLM誘発肺線維症に対するGLの作用1)
投与方法1において、試料を採取して、病理組織学的および生化学的に検討した。
肺組織を病理組織学的に検討すると、BLM単独投与群では広範囲に線維化と考えられる組織の肥厚およびマクロファージの浸潤が見られた。また、DEX4W群では、血管周辺を中心に炎症性細胞の浸潤や、間質の肥厚が見られたが、その程度はBLM単独投与群に比べて軽度であった。これらに対して、GL(15)4W群では、炎症性細胞は細気管支、毛細血管周辺を中心に浸潤が見られたが、間質の肥厚は僅かであった。さらに、GL(45)4W群およびGL(135)4W群では、血管周辺に炎症性細胞の僅かな浸潤が見られたものの、間質の肥厚はほとんど見られず、健常ラットと同程度であった。
【0043】
炎症の指標として測定したBALF中の炎症性細胞数およびタンパク質濃度の測定結果を図1に示す。図1(a)はBALF中の炎症性細胞数、図1(b)はBALF中のタンパク質濃度をそれぞれ示すグラフである。なお、図1中、「※」は健常ラットに対して有意な差を有することを示し、「*」はBLM単独投与群に対して有意な差を有することを示す。
図1(a)より、以下のことが確認された。すなわち、BLM単独投与群では、総炎症性細胞数は健常ラットの約3倍に増加した。DEX4W群では、炎症性細胞数の顕著な作減少は見られなかった。これらに対しGL4W群では、投与量に依存して炎症性細胞数が減少し、GL(135)4W群では、BLM単独投与群の約45%にまで減少した。細胞数を白血球種ごとに調べると、GL4W群では全ての細胞種が減少したのに対して、DEX4W群では、リンパ球数の減少だけが顕著であり、その他の細胞数には影響がなかった。
【0044】
また、図1(b)より、以下のことが確認された。すなわち、BLM単独投与群では、BALF中のタンパク質濃度は健常ラットの約2倍に増加し、DEX4W群では、該タンパク質濃度の明らかな減少は見られなかった。これらに対しGL4W群では、いずれの投与量であっても該タンパク質濃度の明らかな減少が見られた。
【0045】
コラーゲン産生に対する作用は、肺実質中のコラーゲン量により調べた。その結果を図2に示す。なお、図2中、「※」は健常ラットに対して有意な差を有することを示す。
BLM単独投与群のコラーゲン量は、健常ラットに比べ軽度ではあったが有意に増加した。一方、DEX4W群あるいはGL4W群では、健常ラットとの間の有意差はなかった。また、GLによるコラーゼン産生の抑制作用は、投与量に依存する傾向が認められた。
なお、DEX4W群では、ラットの体重増加の顕著な抑制が認められたが、GL4W群では、いずれの投与量でもこのような体重増加の抑制は認められなかった。
【0046】
(投与方法2〜BLM誘発肺線維症に対するGLの作用2)
上記結果より、GL4W群では特にGL(135)4W群で、BLMによる肺線維化の顕著な抑制効果が認められた。しかし、該抑制効果は、GLがBLMによる初期炎症を抑制した結果得られたものであるのか、あるいは初期炎症に続いて生じる線維化を抑制した結果得られたものであるのかは不明であった。そこで、ラットにBLMを投与して初期炎症を生じさせてから薬剤を投与する前記投与方法2を、前記投与方法1と並行して行い、結果を比較した。ただし、投与方法1では、GLはGL(135)4W群のみとした。
【0047】
試料を採取して、病理組織学的および生化学的に検討した。
血管周辺への炎症性細胞の浸潤は、GL(135)4W群では顕著に抑制され、前述の結果が再現された。一方、GL2−4W群では、血管周辺への炎症性細胞の浸潤が認められたが、その程度はBLM単独投与群に比べて軽度であった。また、間質肥厚は、GL2−4W群ではわずかに見られたが、GL(135)4W群ではほとんど生じなかった。DEX2−4W群およびDEX4W群でも、BLM単独投与群に比べて血管周辺への炎症性細胞の浸潤や間質の肥厚は減少していた。
【0048】
一方、BALF中の炎症性細胞数およびタンパク質濃度に対する作用を確認したところ、図3に示すような結果が得られた。図3(a)はBALF中の炎症性細胞数、図3(b)はBALF中のタンパク質濃度をそれぞれ示すグラフである。なお、図3中、「※」は健常ラットに対して有意な差を有することを示し、「*」はBLM単独投与群に対して有意な差を有することを示す。すなわち、GL(135)4W群およびGL2−4W群のいずれにおいても、総白血球数、マクロファージ数、好中球数、およびタンパク質濃度の増加の顕著な抑制が見られた。
一方、DEX2−4W群およびDEX4W群では、いずれも炎症性細胞数増加の顕著な抑制が見られたものの、タンパク質濃度はBLM単独投与群よりさらに増加していた。
【0049】
また、肺実質中のコラーゲンmRNAをリアルタイムPCR法により増幅し、その発現量を測定した。結果を図4に示す。なお図4中のグラフの縦軸は、先に述べた通り、内部標準であるGAPDHのmRNA発現量に対するコラーゲンのmRNA発現量比を示す。
BLM単独投与群では、コラーゲンmRNA発現量は、健常ラットの約13倍と顕著に増加していた。これに対して、GL2−4W群およびGL(135)4W群のいずれにおいても、mRNA発現量が健常ラットと同程度であった。すなわち、GLはコラーゲンの産生mRNAレベルで抑制することが確認された。DEX2−4W群およびDEX4W群も同様であった。
【0050】
以上のように、BALF中のタンパク質濃度および好中球数は、BLMの気管内への注入から1週間後に顕著に増加しその後減少すること、一方、間質肥厚は、BLM注入から2週間後に局所的に見られ、4週間後には広範囲で著明に見られることが確認された。すなわち、BLM投与後、1〜2週間で生じる初期炎症と、それに続く肺の線維化という二つの相によって病態が形成されると考えられる。これに対して、GL4W群、GL2−4W群のいずれにおいても、気道炎症の指標であるBALF中のタンパク質濃度および炎症性細胞数の増加が顕著に抑制されると共に、肺実質中におけるコラーゲンの産生がmRNAレベルで顕著に抑制されることが確認された。すなわちGLは、少なくともBLMによる初期炎症に続いて生じる線維化を抑制することが確認された。
このようにGLは、優れた肺線維症の抑制作用を有するにもかかわらず、従来の治療薬とは異なり、投与時に重篤な副作用を伴わないことから、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩は、線維化肺疾患治療薬として極めて有効であることが示唆された。
【0051】
[実施例2]
◎気道粘液分泌細胞過形成抑制剤、気道塞栓治療薬
<材料および手順>
まず、本実施例で用いた材料および実験手順を以下に示す。
(実験動物)
本実施例においては、マウスのLPS誘発急性気管支炎病態モデルを用いた。
マウスとしては、ICR系雄性ラット8週齢(日本チャールズリバー社製)を用いた。馴化および試験期間中、これらの動物は、室温25℃の環境下で固形飼料および飲料水を自由摂取させて飼育した.
【0052】
(使用薬剤)
本発明の、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する気道粘液分泌細胞過形成抑制剤、気道塞栓治療薬として、皮下注射剤であるグリチロン注一号(登録商標、株式会社ミノファーゲン製薬製、以下、GLと略記する)を用いた。なお、グリチロン注一号の1アンプル(2ml)中の成分は、以下に示す通りである。
【0053】
◎グリチロン注一号
グリチルリチンモノアンモニウム塩 40mg(グリチルリチン換算)
アンモニア 適量
塩化ナトリウム 適量
【0054】
本実施例においては、比較対象の薬剤として、去痰薬カルボシステイン(Sigma社製、以下、s−CMCと略記する)およびステロイド性抗炎症薬デキサメタゾン21−リン酸(Sigma社製、以下、DEXと略記する)を用いた。
また、マウスに杯細胞を過形成させて急性気管支炎を誘発するものとして、大腸菌由来Lipopolysaccaride(Sigma社製、以下、LPSと略記する)を用いた。その他の薬品はすべて市販の特級試薬を用いた。
【0055】
(LPS誘発急性気管支炎病態モデルの作製)
マウスをペントバルビタール(50mg/kg,腹腔内投与)麻酔下に固定し、口腔より気管内へ2mg/mlのLPSを100μg/animal、マイクロシリンジにて投与した。そして、マウスを処理日まで自由摂餌・飲水にて飼育し、LPS誘発急性気管支炎病態モデルを作製した。
【0056】
(薬剤の投与方法)
LPS投与前後のマウスに対して、s−CMC、DEXまたはGLを投与して、杯細胞形成の抑制効果を比較検討した。具体的には、s−CMC、DEXおよびGLの投与は、LPSの投与直前およびLPS投与の翌日以降毎日、1日1回行った。s−CMCの1回の投与量は100および500mg/kg(po)、DEXの1回の投与量は1mg/kg(皮下投与)、GLの1回の投与量は135mg/kg(皮下投与)とした。この時、さらにコントロールとして、これら薬剤に代わり生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)(6.75mL/kg)を投与した群(以下、LPS単独投与群と略記する)、LPSおよび薬剤をいずれも投与していない群(以下、健常マウスと略記する)も設けた。
そして、LPS投与後7日目に気管を摘出して、病理組織学的および生化学的に検討した。
【0057】
なお、この時のs−CMC投与群を、投与量に応じてs−CMC(100)投与群およびs−CMC(500)投与群と、以下においてはそれぞれ略記する。
また、投与を行ったLPS誘発急性気管支炎病態モデルは、s−CMC(100)投与群、s−CMC(500)投与群、DEX投与群、GL投与群およびLPS単独投与群のいずれにおいても4匹であった。
【0058】
(マウス気管の病理組織学的検討)
マウスを、ペントバルビタール(50mg/kg,腹腔内投与)麻酔下に放血致死させ、気管を摘出した。摘出した気管を10%中性ホルマリンに1晩浸漬して固定および脱水し、パラフィン包埋した。そして組織を、ミクロトーム(Leica社製)を用いて厚さ6μmの薄切切片とした。得られた切片は、脱パラフィン後、AB−PAS染色を施し、顕微鏡下にて観察した。杯細胞数の定量的解析にあたっては、各気管の甲状軟骨から尾側方向へおおよそ2〜5mmの、長さ約3mmの輪状軟骨側の上皮断片に観察された、細胞全体あるいは細胞の一部が青紫色を呈したAB−PAS染色陽性細胞数を計測した。そして得られたデータは、計測された総細胞数を切片の長さで減じ、杯細胞数/ nm として表した。
【0059】
(統計処理)
データは平均値±標準誤差(mean±S.E.M.)として示した。統計学的解析には、ANOVA(Student−Newman−Keuls社製)を用い、p<0.05を以って有意とみなした。
【0060】
<結果>
結果を以下に示す。
(LPS単独投与群)
LPS投与後の気管内の杯細胞数を経日的に測定した。結果を図5に示す。杯細胞数は、LPS投与後のマウスの飼育日数に依存して増加し、5〜9日の間でほぼプラトーとなった。一方、LPSを投与せずに同様に飼育した健常マウスでは、気管内の杯細胞数は増加していなかった。なお、図5中、「※」は投与後0日に対して有意な差を有することを示す。
【0061】
(薬剤投与群)
図6に示すように、s−CMC(100)投与群では、杯細胞数の増加を抑制する顕著な効果は見られず、s−CMC(500)投与群で、LPS単独投与群に対して約15%の減少と、軽度ではあるが有意な杯細胞数の増加抑制効果が認められた.
これらに対して、DEX投与群およびGL投与群では、顕著な杯細胞数の増加抑制効果が見られ、LPS単独投与群の約1/2にまで杯細胞数が減少した。なお、図6において「*」はLPS単独投与群に対して有意な差を有することを示す。
【0062】
s−CMCでは、有意な杯細胞数の増加抑制効果が確認されたが、極めて高用量であり、その効果も十分とは言えないものであった。これに対しGLは、DEXに匹敵する顕著な杯細胞数の増加抑制効果を示した。この場合GLは高用量ではあるが、副作用がほとんど見られない点で有利である。
このように、グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩は、杯細胞の過形成抑制に極めて有効であり、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤として、あるいは気道塞栓治療薬として有効であることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、線維化肺疾患治療薬、気道粘液分泌細胞過形成抑制剤および気道塞栓治療薬として医療分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1の投与方法1における、炎症に対する薬剤投与の効果を示すグラフであり、(a)はBALF中の炎症性細胞数、(b)はBALF中のタンパク質濃度をそれぞれ示すグラフである。
【図2】実施例1の投与方法1における、炎症に対する薬剤投与の効果を示すグラフであり、肺実質中のコラーゲン量を示すグラフである。
【図3】実施例1の投与方法2における、炎症に対する薬剤投与の効果を示すグラフであり、(a)はBALF中の炎症性細胞数、(b)はBALF中のタンパク質濃度をそれぞれ示すグラフである。
【図4】実施例1の投与方法2における、炎症に対する薬剤投与の効果を示すグラフであり、肺実質中のコラーゲンmRNA発現量を示すグラフである。
【図5】実施例2におけるLPS投与後のマウス気管内の杯細胞数の変化を示すグラフである。
【図6】実施例2における薬剤投与の効果を示すグラフであり、LPS投与後7日目のマウス気管内の杯細胞数を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する線維化肺疾患治療薬。
【請求項2】
前記線維化肺疾患が、肺線維症、並びに肺気腫を併発しているかまたは併発していない慢性気管支炎のいずれかである請求項1に記載の線維化肺疾患治療薬。
【請求項3】
前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である請求項1または2に記載の線維化肺疾患治療薬。
【請求項4】
グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する気道粘液分泌細胞過形成抑制剤。
【請求項5】
前記気道粘液分泌細胞が杯細胞である請求項4に記載の気道粘液分泌細胞過形成抑制剤。
【請求項6】
前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である請求項4または5に記載の気道粘液分泌細胞過形成抑制剤。
【請求項7】
グリチルリチンおよび/またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有する気道塞栓治療薬。
【請求項8】
前記気道塞栓が、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、副鼻腔炎および慢性閉塞性肺疾患のいずれかに由来するものである請求項7に記載の気道塞栓治療薬。
【請求項9】
前記薬学上許容される塩が、モノアンモニウム塩である請求項7または8に記載の気道塞栓治療薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−222682(P2008−222682A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67274(P2007−67274)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(000170358)株式会社ミノファーゲン製薬 (16)
【Fターム(参考)】