説明

線維性疾患のイメージング剤

線維化を特徴とする細胞および/または組織の部分をイメージングするための剤および方法、ならびに、線維性疾患を決定および/または診断するための剤および方法がここに開示される。検出可能な標識、レチノイドおよびポリマーを含み得るポリマー結合体もまたここに開示される。このポリマー結合体は、組織の部分をイメージングすることに、検出可能な標識を組織の部分または細胞に送達することに、および/または、状態もしくは疾患を診断することに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2008年9月12日に出願された米国仮特許出願第61/096,488号および2009年8月7日に出願された日本国特許出願第2009−184806号の利益を主張し、その内容の全体を本明細書に援用する。
【0002】
ここで開示されるのは、有機化学、薬品化学、生化学、分子生物学および医薬の分野に関連した組成物および方法である。特に、ここで開示される態様は、細胞および/または組織の部分、例えば線維化を特徴とする細胞および/または組織をイメージングするための剤および方法、ならびに線維性疾患を決定および/または診断するための剤および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
線維化、または体内における過剰な線維性結合組織の発生(development)は、複数の疾患および障害、例えば肝線維症、膵線維症、声帯瘢痕化および多くの形態のがんと関連づけられている。線維性疾患は、かかる線維化を特徴とする疾患群であり、肝臓をはじめとする各種組織に生じ得る。例えば、線維性疾患の1つである肝線維症は、B型もしくはC型肝炎ウイルス等に起因するウイルス性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、栄養障害糖尿病、寄生虫、結核もしくは梅毒などの感染症、心臓病などによる肝臓内のうっ血、または胆汁の通過障害などに伴う肝臓内の組織傷害などに対する創傷治癒機転の結果、肝星細胞(HSC)が活性化され、この活性化肝星細胞が過剰に産生・分泌した複数種のコラーゲン分子およびファイブロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)が間質に沈着することなどによりもたらされる。肝線維化の終末像は肝硬変であり、肝不全や肝細胞癌などを生じるおそれがある。
【0004】
器官または組織における線維化を抑制するために、種々のアプローチが試みられてきた。1つのアプローチとして、1また2以上の星細胞の活性化の抑制を挙げることができる。かかる細胞の活性化は、細胞間マトリクス(ECM)の増大した産生を特徴とする。他のアプローチは、コラーゲンの生産抑制に関連し得、これは例えば、コラーゲン分解の促進またはコラーゲン代謝の制御による。しかしながら、線維化した組織を元に戻す方法は未だ存在せず、組織の大部分が線維組織に置換され、正常な機能を果たすことができなくなった場合には、もはや移植以外にその組織を回復する手段がないのが現状である。したがって、線維性疾患を早期に検出し、線維化を抑制する処置を行うことが肝要となる。
【0005】
線維性疾患の診断は、通常、線維化が疑われる組織の生検により行うが、生検は、感染、出血、疼痛、他組織の損傷などの合併症を伴う可能性のある侵襲性の強い手法であるため、線維性疾患の非侵襲的な診断方法に関する種々の研究が行われている。例えば、拡散強調MR画像の解析値を肝硬変の有無に相関させる試み(Aube et al., J Radiol. 2004;85(3):301-6)、肝臓の形態学的な変化などの特徴をCT、MRI、超音波検査により検出して肝硬変の有無を判定する試み(Kudo et al., Intervirology. 2008;51 Suppl 1:17-26)、ヒアルロン酸やプロトロンビン指数などの生化学的指標により肝硬変の有無を判定する試み(Oberti et al., Gastroenterology. 1997;113(5):1609-16)などが報告されている。しかしながら、いずれの手法も満足できるものではなく、さらなる診断手法の開発が求められていた。
【0006】
また、特表2009−518372には、線維症の画像診断に適した診断用造影剤として、レチノイル−PEG(12)−プロピオニル−Lys−OHを合成したことが開示されているが、この物質が実際に造影剤として有効であったことは記載されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、主として線維性疾患のイメージング剤、該イメージング剤を用いた線維性疾患のイメージング法、該イメージング剤を含む線維性疾患診断剤、および、該診断剤を用いた線維性疾患の診断方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、線維性疾患の新たな診断方法を探求する中で、レチノイドと検出可能な標識とを含むイメージング剤の投与により、線維性疾患をin vivoで非侵襲的に検出できることを見出し、本発明を完成させた。ビタミンAを含む担体が、肝星細胞に薬物を送達することは知られていたが(WO 2006/068232)、レチノイドと検出可能な標識とを含むイメージング剤で線維性疾患をin vivoで非侵襲的に検出できることについてはこれまで全く知られていなかった。
【0009】
本発明は以下に関する。
(1)レチノイドと検出可能な標識とを含む、線維化を特徴とする細胞および/または組織のイメージング剤。
(2)レチノイドがレチノールを含む、上記(1)のイメージング剤。
(3)in vivoイメージング用である、上記(1)または(2)のイメージング剤。
(4)線維性疾患イメージング用である、上記(1)〜(3)のいずれかのイメージング剤。
【0010】
(5)式(I)、(II)、(III)および(IV):
【化1】

式中、
mは、独立して1または2であり、
nは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、レチノイドおよび検出可能な標識を含む基からなる群から、各々独立して選択され、
、RおよびRは、各々独立して水素またはC1〜4アルキルであり、
o、p、qおよびrは、各々独立して0、1または2以上であり、ここでo、p、qおよびrの合計は2または3以上であり、
ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは検出可能な標識を含む基であり、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはレチノイドである
から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体(conjugate)を含む、上記(1)〜(4)のいずれかのイメージング剤。
【0011】
(6)式(I)、(II)、(III)および(IV):
【化2】

式中、
mは、独立して1または2であり、
nは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、レチノイドおよび検出可能な標識を含む基からなる群から、各々独立して選択され、
、RおよびRは、各々独立して水素またはC1〜4アルキルであり、
o、p、qおよびRは、各々独立して、0、1または2以上であり、ここでo、p、qおよびrの合計は2または3以上であり、
ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは検出可能な標識を含む基であり、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはレチノイドである
から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含む、ポリマー結合体。
【0012】
(7)ポリマーが、式(V):
【化3】

式中、
sは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNR12であり、
12は、水素またはC1〜4アルキルであり、
10およびR11は、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から、各々独立して選択される
で表される少なくとも1個の繰り返し単位をさらに含む、上記(6)のポリマー結合体。
【0013】
(8)ポリマーが、式(VI):
【化4】

式中、R13は水素、アンモニウムまたはアルカリ金属である
で表される少なくとも1個の繰り返し単位をさらに含む、上記(6)または(7)のポリマー結合体。
(9)検出可能な標識が、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム111からなる群から選択される金属を含む、上記(6)〜(8)のいずれかのポリマー結合体。
(10)検出可能な標識が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)からなる群から選択される配位子を含む、上記(6)〜(9)のいずれかのポリマー結合体。
【0014】
(11)検出可能な標識が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)からなる群から選択される配位子を含む、上記(6)〜(10)のいずれかのポリマー結合体。
(12)検出可能な標識が、常磁性金属キレートである、上記(6)〜(11)のいずれかのポリマー結合体。
(13)常磁性金属キレートが、
【化5】

を含む、上記(12)のポリマー結合体。
(14)検出可能な標識が色素である、上記(6)〜(11)のいずれかのポリマー結合体。
(15)色素がテキサスレッドを含む、上記(14)のポリマー結合体。
【0015】
(16)mが1である、上記(6)〜(15)のいずれかのポリマー結合体。
(17)mが2である、上記(6)〜(15)のいずれかのポリマー結合体。
(18)nが1である、上記(6)〜(17)のいずれかのポリマー結合体。
(19)nが2である、上記(6)〜(17)のいずれかのポリマー結合体。
(20)sが1である、上記(7)〜(19)のいずれかのポリマー結合体。
(21)sが2である、上記(7)〜(19)のいずれかのポリマー結合体。
【0016】
(22)上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体を製造する方法であって、式(VII)で表される繰り返し単位および式(VIII)で表される繰り返し単位
【化6】

式中、
zは、1または2であり、
およびA10は酸素であり、および
14、R15およびR16は、各々独立して、水素、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から選択される
の少なくとも1種を含むポリマー反応物質を、溶媒に溶解または部分的に溶解し、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質を形成する工程、および
溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質と、第2の反応物質(ここで、第2の反応物質は検出可能な標識を含む基またはレチノイドを含む)とを反応させる工程、および
第3の反応物質(ここで、第3の反応物質は検出可能な標識を含む基、配位子またはレチノイドを含み、ただし、第2の反応物質が検出可能な標識を含む基または配位子を含む場合、第3の反応物質はレチノイドを含み、第2の反応物質がレチノイドを含む場合、第3の反応物質は検出可能な標識を含む基または配位子を含む)を添加する工程
を含む、前記方法。
【0017】
(23)第2の反応物質がレチノイドを含む、上記(22)の方法。
(24)第3の反応物質が検出可能な標識を含む基を含む、上記(22)または(23)の方法。
(25)第3の反応物質が配位子を含む、上記(22)または(23)の方法。
(26)配位子が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)からなる群から選択される、上記(25)の方法。
【0018】
(27)第4の反応物質(ここで、第4の反応物質は金属を含む)を添加する工程をさらに含む、上記(22)〜(26)のいずれかの方法。
(28)金属が、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム−111からなる群から選択される、上記(27)の方法。
(29)上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体を含む、線維性疾患の診断剤。
(30)上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤と、薬学的に許容し得る賦形剤、担体および希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む組成物。
【0019】
(31)検出可能な標識を組織の部分に送達する方法であって、組織の部分または細胞と、上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤および/または上記(30)の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
(32)組織の部分をイメージングする方法であって、組織の部分または細胞と、上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(30)の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
【0020】
(33)疾患または状態を診断する方法であって、組織の部分または細胞と、上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤および/または上記(30)の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
(34)組織が線維組織である、上記(31)〜(33)のいずれかの方法。
(35)線維性疾患をイメージングする方法であって、有効量の上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(30)の組成物を、それを必要とする対象に投与する工程、および投与されたイメージング剤、ポリマー結合体または組成物に含まれる標識を検出する工程を含む、前記方法。
【0021】
(36)上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤および/または上記(30)の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布を、基準シグナル強度および/または基準シグナル分布と比較する工程を含む、線維性疾患の判定方法。
【0022】
(37)第1の時点における、上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤および/または上記(30)の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、前記対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含む、線維性疾患のモニタリング方法。
【0023】
(38)第1の時点における、上記(1)〜(5)のいずれかのイメージング剤および/または上記(6)〜(21)のいずれかのポリマー結合体および/または上記(29)の診断剤および/または上記(30)の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、前記対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含み、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受ける前であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受けた後であるか、または、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置を受けた後であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置より後の第2の処置を受けた後である、線維性疾患に対する処置の効果の判定方法。
【0024】
本明細書に記載の一部の態様は、本明細書に記載の式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含み得るポリマー結合体に関する。
【0025】
本明細書に記載の他の態様は、組織の部分または細胞と、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つとを接触させる工程を含み得る、検出可能な標識を組織の部分または細胞に送達する方法に関する。
【0026】
本明細書に記載のさらに他の態様は、組織の部分または細胞と、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つとを接触させる工程を含み得る、組織の一部または細胞をイメージングする方法に関する。
【0027】
本明細書に記載のさらにまた他の態様は、組織の部分と、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つとを接触させる工程を含み得る、疾患または状態、例えば線維化を特徴とする疾患または状態などを診断する方法に関する。
【0028】
本明細書に記載の一部の態様は、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つの、検出可能な標識を組織の部分または細胞に送達するための使用に関する。
【0029】
本明細書に記載の他の態様は、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つの、組織の部分または細胞をイメージングするための使用に関する。
【0030】
本明細書に記載のさらに他の態様は、本明細書に記載のポリマー結合体の少なくとも1つの、疾患または状態、例えば線維化を特徴とする疾患または状態などを診断するための使用に関する。
【0031】
本明細書に記載の一部の態様は、検出可能な標識を組織の部分または細胞に送達するための、本明細書に記載のポリマー結合体に関する。
【0032】
本明細書に記載の他の態様は、組織の部分または細胞をイメージングするための、本明細書に記載のポリマー結合体に関する。
【0033】
本明細書に記載のさらに他の態様は、疾患または状態、例えば線維化を特徴とする疾患または状態などを診断するための、本明細書に記載のポリマー結合体に関する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のイメージング剤の正確な作用機序は未だ完全には解明されていないが、レチノイドが、活性化した星細胞などの、αSMA陽性の細胞外マトリックス産生細胞への標的化剤として機能し、標識物質を同細胞に送達することにより、同細胞が検出可能になるものと考えられる。
【0035】
本発明のイメージング剤により、線維性疾患をin vivoで、非破壊的に、好ましくは非侵襲的に検出することができるため、従来の生検による合併症が生じる恐れがなくなり、検査対象の負担を大幅に低減することが可能になるとともに、検査対象の拡大が見込まれるため、線維性疾患の早期発見が促進され、同疾患の効果的な進行の抑制が可能となるなど、ヒト医療および獣医療への貢献は極めて大きい。
【0036】
また、本発明のイメージング剤により、同一個体で線維性疾患のin vivoでの経時的かつ、非破壊的、好ましくは非侵襲的かつな観察が可能になり、より高い精度で同疾患の治療評価を行うことができる。
【0037】
これらおよび他の態様を、以下でさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、レチノイド、ポリグルタメートおよびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGA−DOTAの調製のための反応スキームを例示した図である。
【図2】図2は、レチノイド、ポリグルタメートおよびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGA−DTPAの調製のための反応スキームを例示した図である。
【図3】図3は、レチノイド、ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)およびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGGA−DOTAの調製のための反応スキームを例示した図である。
【0039】
【図4】図4は、レチノイド、ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGGA−DTPA、の調製のための反応スキームを例示した図である。
【図5】図5は、レチノイド、ポリグルタメートおよびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)Gd(III)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGA[(DOTA)Gd(III)]の調製のための反応スキームを例示した図である。
【図6】図6は、レチノイド、ポリグルタメートおよびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)Gd(III)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGA[(DTPA)Gd(III)]の調製のための反応スキームを例示した図である。
【0040】
【図7】図7は、レチノイド、ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)およびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)Gd(III)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGGA−[(DOTA)Gd(III)]の調製のための反応スキームを例示した図である。
【図8】図8は、レチノイド、ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)Gd(III)を含むポリマー結合体、レチノイド−PGGA−[(DTPA)Gd(III)]の調製のための反応スキームを例示した図である。
【図9】図9は、テキサスレッド(TR)−ポリグルタメート(PGA)−コレステロール、テキサスレッド−PGA−コレステロールと比較した、テキサスレッド(TR)−ポリグルタメート(PGA)−レチノイド、TR−PGA−レチノイドの細胞取り込みを例示したグラフである。
【0041】
【図10】図10は、線維症DMAラットモデルの経時的なMRI像を示した図である。
【図11】図11は、DMAラットモデルの肝臓におけるPGGA−[(DPTA)Gd(III)]およびレチノイド−PGGA−[(DPTA)Gd(III)]のGd(III)の相対的光学密度の経時的なプロットを示した図である。ラットの肝臓で検出されたレチノイド−PGGA−[(DPTA)Gd(III)]のGd(III)の量は、線維症DMAラットモデルの肝臓で検出されたPGGA−[(DPTA)Gd(III)]のGd(III)の量よりはるかに高かった。
【0042】
【図12】図12は、イメージング剤投与開始5分後(上)および90分後(下)の肝硬変マウス(左)および正常マウス(右)における蛍光シグナルの強度および分布を表した図である。蛍光シグナルの強度は、平均放射輝度(Avg Radiance、p/s/cm2/sr)で示してある。
【図13】図13は、イメージング剤投与開始5〜90分後の肝硬変マウス(黒丸)および正常マウス(黒四角)における肝臓(左)および腸管(右)における蛍光シグナル強度の経時変化を示したグラフである。
【0043】
【図14】図14は、VAを含む(上欄)または含まない(下欄)イメージング剤投与開始90分後の肝硬変マウス(左)および正常マウス(右)の肝組織における蛍光シグナルの局在を示した図である。
【図15】図15は、イメージング剤投与開始90分後の肝硬変マウスおよび正常マウスの肝臓における全CyTM5.5陽性面積に対するCyTM5.5/FITC両陽性面積の割合(ランダム8視野の平均)を示したグラフである。
【0044】
【図16】図16は、イメージング剤投与開始90分後の肝硬変マウスおよび正常マウスの肝臓における全CyTM5.5陽性細胞数に対するCyTM5.5/FITC両陽性細胞数の割合(ランダム8視野の平均)を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
線維症の早期診断は、適切な処置を見出すためのより大きな機会を提供することができる。現在、線維症を診断する唯一の臨床的に利用できる承認された方法は、生検である。しかし、生検は検査のために組織の摘出を必要とする。非侵襲的方法により、組織を摘出する必要性および対象の内部に異物を挿入することに関連するリスクが最小化される。かかる非侵襲的方法は、線維症を診断するための未達成の選択肢に対応するものである。
【0046】
他に定義されない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、当業者が通常理解しているものと同じ意味を有する。本明細書中で参照する全ての特許、出願、公開された出願および他の出版物は、他に記載がない限り、その全体を援用する。本明細書中の用語について複数の定義がある場合には、他に記載がない限り、本節のものが優先する。
【0047】
用語「エステル」は、本明細書においてその通常の意味で用いられ、したがって、式−(R)−COOR’(式中、RおよびR’は、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)およびヘテロアリシクリック(環炭素またはヘテロ原子を介して結合)からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学部分を含む。
【0048】
用語「アミド」は、本明細書においてその通常の意味で用いられ、したがって、式−(R)−C(O)NHR’または−(R)−NHC(O)R’(式中、RおよびR’は、独立して、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)およびヘテロアリシクリック(環炭素またはヘテロ原子を介して結合)からなる群から選択され、nは0または1である)を有する化学部分を含む。アミドは、本明細書に記載の薬物分子に付着した(attached)アミノ酸またはペプチド分子に含まれてもよく、それによってプロドラッグを形成してもよい。
【0049】
本明細書で開示される化合物上の任意のアミン、ヒドロキシまたはカルボキシル側鎖は、エステル化またはアミド化されていてもよい。この目的を達成するのに用いる手順および具体的な基は当業者に知られており、その全体を本明細書に援用するGreene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley & Sons, New York, NY, 1999などの参考文献中に容易に見出すことができる。
【0050】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は、直鎖状または分枝状炭化水素鎖の完全に飽和した(二重結合または三重結合を含まない)炭化水素基を指す。アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有し得る(本明細書に記載される場合は常に、「1〜20」などの数値範囲は所定の範囲内の各々の整数を指す。例えば、「1〜20個の炭素原子」は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個を含む20個までの炭素原子からなってもよいことを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されない用語「アルキル」の存在をもカバーする)。アルキル基はまた、1〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1〜5個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。化合物のアルキル基は、「C〜Cアルキル」または類似した表示で指定することができる。ほんの一例として、「C〜Cアルキル」は、1〜4個の炭素原子がアルキル鎖にあること、すなわち、アルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルから選択されることを示す。典型的なアルキル基は、限定されずに、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。
【0051】
アルキル基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、1個または2個以上の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えば、モノハロアルキル、ジハロアルキルおよびトリハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、モノハロアルコキシ、ジハロアルコキシおよびトリハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から個々に独立して選択される1個または2個以上の基である。置換基が「任意に置換されている」として記載されている場合、その置換基は上記の置換基の1つで置換されていてもよい。
【0052】
本明細書で用いる場合、「アリール」は完全に非局在化したパイ電子系を有する炭素環式(全て炭素)の単環式または多環式芳香環系を指す。アリール基の例は、限定されずに、ベンゼン、ナフタレンおよびアズレンを含む。本発明のアリール基は置換されていても、非置換であってもよい。置換されている場合、水素原子は、置換基を特に示さない限り、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えば、モノハロアルキル、ジハロアルキルおよびトリハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、モノハロアルコキシ、ジハロアルコキシおよびトリハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、および一および二置換アミノ基を含むアミノ、およびこれらの保護された誘導体から独立して選択される1個または2個以上の基である、1個または2個以上の置換基によって置き換えられる。
【0053】
「常磁性金属キレート」は、配位子と常磁性金属イオンとが結合した錯体である。例は、限定されずに、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111を含む。
【0054】
「レチノイド」は、ヘッド−トゥ−テイル式に連結した4個のイソプレノイド単位で構成される化合物のクラスの成員である。G. P. Moss, "Biochemical Nomenclature and Related Documents," 2nd Ed. Portland Press, pp. 247-251 (1992)参照。「ビタミンA」は、レチノールの生物学的活性を定性的に示すレチノイドに対する一般的な記述子である。本明細書で用いる場合、レチノイドは第一世代、第二世代および第三世代レチノイドを含む、天然レチノイドおよび合成レチノイドを指す。天然に存在するレチノイドの例は、限定されずに、(1)11−シス−レチナール、(2)オールトランスレチノール、(3)パルミチン酸レチニル、(4)オールトランスレチノイン酸、および、(5)13−シス−レチノイン酸を含む。さらにまた、用語「レチノイド」は、レチノール、レチナールおよびレチノイン酸を含む。
【0055】
「線維化」は、本明細書においてその通常の意味で用い、修復または反応性プロセスの一部としての、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の発生を指す。「異常な線維化」は、器官または組織における線維性瘢痕様結合組織の、当該器官または組織の機能を障害する程度の発生を指す。本明細書において線維性疾患は、組織の線維化を特徴とする任意の疾患を指し、限定されることなく、例えば、肝線維症、肝硬変、声帯瘢痕形成、声帯粘膜線維症、喉頭の線維化、肺線維症、骨髄線維症、心筋梗塞、心筋梗塞後の心筋の線維化などを含む。本発明における線維性疾患は、典型的にはαSMA陽性の細胞外マトリックス産生細胞、例えば肝星細胞などが関与するものである。
【0056】
本明細書で用いる場合、「リンカー」および「連結基」は1つの化学部分をもう1つの化学部分に接続する1または2以上の原子を指す。連結基の例は、比較的低分子量の基、例えば、アミド、エステル、炭酸塩およびエーテルなど、ならびに、高分子量連結基、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などを含む。
【0057】
1個または2個以上のキラル中心を有する本明細書に記載される任意の化合物において、絶体立体化学が明示されていない場合、各々の中心は、独立してR配置またはS配置またはこれらの複合であってもよい。したがって、本明細書で提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であっても、立体異性体の混合物であってもよい。さらに、EまたはZとして定義することができる幾何異性体を生成する1個または2個以上の二重結合を有する任意の化合物において、各々の二重結合は独立してEまたはZまたはこれらの複合であってもよいことが理解される。同様に、全ての互変異性形態もまた包含されることが意図される。
【0058】
本明細書で用いる場合、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略称は、特に明記しない限り、その一般的な用法、認められた略称、または生化学命名法に関するIUPAC−IUP委員会(Biochem. 11 :942-944 (1972)参照)に従う。
【0059】
本発明の一側面は、レチノイドと検出可能な標識とを含む、線維性疾患のイメージング剤に関する。
【0060】
本発明におけるレチノイドは、線維性疾患に関与するαSMA陽性の細胞外マトリックス産生細胞、例えば、活性化星細胞などを標的化できるものである。レチノイドαSMA陽性の細胞外マトリックス産生細胞を標的化する機構は未だ完全には解明されていないが、例えば、RBP(retinol binding protein)と特異的に結合したレチノイドが、上記細胞外マトリックス産生細胞の細胞表面上に位置するある種のレセプターを介して同細胞に結合および/または取り込まれることが考えられる。
【0061】
本発明において用いることができるレチノイドとしては、特に限定されず、例えばレチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノールと脂肪酸とのエステル、脂肪族アルコールとレチノイン酸とのエステル、エトレチナート、トレチノイン、イソトレチノイン、アダパレン、アシトレチン、タザロテン、パルミチン酸レチノールなどのレチノイド誘導体、およびフェンレチニド(4−HPR)、ベキサロテンなどのビタミンAアナログを挙げることができる。レチノイドはまた、レキシノイド、すなわちレチノイドXレセプター(RXR)に対して選択的なレチノイド化合物、例えばベキサロテンなどを含む。
【0062】
これらのうち、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レチノールと脂肪酸とのエステル(例えばレチニルアセテート、レチニルパルミテート、レチニルステアレート、およびレチニルラウレートなど)および脂肪族アルコールとレチノイン酸とのエステル(例えばエチルレチノエートなど)は、上記細胞外マトリックス産生細胞の特異的な標的化の有効性の点で好ましい。また、別の態様において、本発明におけるレチノイドはレチノイン酸および/またはレチノイン酸誘導体を含まない。したがって、この態様における好ましいレチノイドとしては、レチノール、レチナール、レチノールと脂肪酸とのエステルなどが挙げられる。
【0063】
本発明に関して、レチノイドはまた、レチノイドの全ての異性体、例えば、シス−トランス異性体をも含む。係る異性体の具体例は、限定されずに、例えば、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸を含む。レチノイドはまた、1または2以上の置換基で置換されることもある。本発明におけるレチノイドは、単離された状態のものはもちろんのこと、これを溶解または保持することができる媒体に溶解または混合した状態のレチノイドをも含む。
【0064】
本発明における検出可能な標識(または、単に「標識」と称する)には、既存の任意の検出手段により検出し得る任意の標識が含まれる。検出手段としては、限定されることなく、例えば、肉眼、光学検査装置(例えば、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、位相差顕微鏡、in vivoイメージング装置など)、X線装置(例えば、単純X線装置、CT(コンピュータ断層撮影)装置など)、MRI(磁気共鳴イメージング)装置、核医学検査装置(シンチグラフ装置、PET(positron emission tomography)装置、SPECT(single photon emission computed tomography)装置など)、超音波検査装置およびサーモグラフィー装置等が挙げられる。各検出手段に適した標識は当業者に知られており、例えば、Lecchi et al., Q J Nucl Med Mol Imaging. 2007;51(2):111-26などに記載されている。
【0065】
肉眼および光学検査装置での検出に適した標識としては、例えば、種々の蛍光標識および発光標識が挙げられる。具体的な蛍光標識としては、限定されることなく、例えば、CyTMシリーズ(例えば、CyTM2、3、5、5.5、7など)、DyLightTMシリーズ(例えば、DyLightTM 405、488、549、594、633、649、680、750、800など)、Alexa Fluor(R)シリーズ(例えば、Alexa Fluor(R) 405、488、549、594、633、647、680、750など)、HiLyte FluorTMシリーズ(例えば、HiLyte FluorTM 488、555、647、680、750など)、ATTOシリーズ(例えば、ATTO488、550、633、647N、655、740など)、FAM、FITC、テキサスレッド、GFP、RFP、Qdotなどを用いることができる。本発明においては、in vivoイメージングに適した蛍光標識は、例えば、生体透過性が高く、自家蛍光の影響を受けにくい波長、例えば、近赤外波長の蛍光を発するものや、蛍光強度の強いものである。かかる蛍光標識としては、限定することなく、例えば、CyTMシリーズ、DyLightTMシリーズ、Alexa Fluor(R)シリーズ、HiLyte FluorTMシリーズ、ATTOシリーズ、テキサスレッド、GFP、RFP、Qdotおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0066】
また、具体的な発光標識としては、限定されることなく、例えば、ルミノール、ルシフェリン、ルシゲニン、イクオリンなどを用いることができる。
X線装置での検出に適した標識としては、例えば、種々の造影剤が挙げられる。具体的な造影剤としては、限定されることなく、例えば、ヨウ素原子、ヨウ素イオン、ヨウ素含有化合物などを用いることができる。
【0067】
MRI装置での検出に適した標識としては、例えば、種々の金属原子や1種または2種以上の該金属原子を含む化合物、例えば1種または2種以上の該金属原子の錯体などが挙げられる。具体的には、限定されることなく、例えば、ガドリニウム(III)(Gd(III))、イットリウム−88(88Y)、インジウム−111(111In)、およびこれらと、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、シュウ酸塩(ox)などの配位子との錯体、超常磁性酸化鉄(SPIO)、酸化マンガン(MnO)などを用いることができる。
【0068】
常磁性金属キレートを含む基は、MRI装置による検出のための好適な標識の1つの例である。一部の態様において、常磁性金属キレートは、以下の基の1つを含み得る:
【化7】

【0069】
核医学検査装置での検出に適した標識としては、例えば、種々の放射性同位体や1種または2種以上の該放射性同位体を含む化合物、例えば1種または2種以上の該放射性同位体の錯体などが挙げられる。放射性同位体としては、限定されることなく、例えば、テクネチウム−99m(99mTc)、インジウム−111(111In)、ヨウ素−123(123I)、ヨウ素−124(124I)、ヨウ素−125(125I)、ヨウ素−131(131I)、タリウム−201(201Tl)、炭素−11(11C)、窒素−13(13C)、酸素−15(15O)、フッ素−18(18F)、銅−64(64Cu)、ガリウム−67(67Ga)、クリプトン−81m(81mKr)、キセノン−133(133Xe)、ストロンチウム−89(89Sr)、イットリウム−90(90Y)などを用いることができる。また、放射性同位体を含む化合物としては、限定されることなく、例えば、123I−IMP、99mTc−HMPAO、99mTc−ECD、99mTc−MDP、99mTc−テトロフォスミン、99mTc−MIBI、99mTcO−、99mTc−MAA、99mTc−MAG3、99mTc−DTPA、99mTc−DMSA、18F−FDG1などが挙げられる。
超音波検査装置での検出に適した標識としては、限定されることなく、例えば、ナノ粒子、リポソームなどを用いることができる。
【0070】
本発明のイメージング剤は、上記のレチノイドおよび標識のみで構成してもよいし、これら両成分を、これとは別の担体に結合または包含させることにより構成してもよい。したがって、本発明のイメージング剤は、レチノイドおよび標識以外に担体を含んでいてもよい。かかる担体としては、特に限定されずに、医薬および薬学の分野で知られる任意のものを用いることができるが、少なくともレチノイドを包含し得るか、または、これと結合し得るものが好ましい。
【0071】
このような担体としては、脂質、例えば、グリセロリン脂質などのリン脂質、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質、コレステロールなどのステロール、大豆油、ケシ油などの植物油、鉱油、卵黄レシチンなどのレシチン、ポリマー、ポリマーに限定されることはない配位子を含む担体等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、リポソームを構成し得るもの、例えば、レシチンなどの天然リン脂質、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、またはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などの半合成リン脂質、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、およびコレステロールなどが好ましい。また、配位子は、単座配位子であっても、キレートを形成可能な多座配位子であってもよい。
【0072】
特に好ましい担体としては、細網内皮系による捕捉を回避し得るもの、例えば、N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジドデシル−D−グルタメートクロリド(TMAG)、N,N’,N’’,N’’’−テトラメチル−N,N’,N’’,N’’’−テトラパルミチルスペルミン(TMTPS)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、1,2−ジミリストイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム(DMRIE)、O,O’−ジテトラデカノイル−N−(α−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド(DC−6−14)などのカチオン性脂質が挙げられる。
【0073】
担体へのレチノイドおよび/または標識の結合または包含は、化学的および/または物理的な方法によってレチノイドおよび/または標識を担体に結合させるかまたは包含させることによっても可能となる。例えば、レチノイドおよび/または標識は、担体に直接付着させることができる。一態様において、レチノイドおよび/または標識は、レチノイドおよび/または標識の酸素、硫黄、窒素および/または炭素原子を介して担体に直接付着させることができる。他の態様において、レチノイドおよび/または標識は、リンカー基をさらに含み得る。ある態様において、レチノイドおよび/または標識は、リンカー基を介して担体に付着させることができる。リンカー基は、比較的小さくてもよい。例えば、リンカー基は、アミン、アミド、エーテル、エステル、ヒドロキシル基、カルボニル基またはチオエーテル基を含んでもよい。あるいは、リンカー基は、比較的大きくてもよい。例えば、リンカー基は、アルキル基、アリール基、アリール(C1〜6アルキル)基(例えば、フェニル−(CH1〜4−)、ヘテロアリール基、またはヘテロアリール(C1〜6アルキル)基を含んでもよい。一態様において、リンカーは−NH(CH1〜4−NHであってもよい。別の態様において、リンカーは−(CH1〜4−アリール−NH−であってもよい。例として、リンカー基は、レチノイドおよび/または標識の炭素における水素の代わりに付着させることができる。リンカー基は、当業者に既知の方法を用いて担体に加えることができる。
【0074】
あるいは、担体へのレチノイドおよび/または標識の結合または包含は、本イメージング剤の作製時に、レチノイドおよび標識を、担体と混合することによっても可能となる。あるいは、担体が、ポリマーに限定されることはない配位子を含むものである場合、該配位子に、核磁気共鳴画像法または核医学検査で検出可能な標識を担持させることも可能である。
【0075】
本発明のイメージング剤におけるレチノイドの量は、好ましくは1〜10000nmol/μl、より好ましくは10〜1000nmol/μlとすることが可能である。標識の量は、当該技術分野で知られているものとすることができるが、レチノイドの量や、担体の性質などの諸条件を勘案して適宜増減してもよい。担体へのレチノイドの結合または包含は、該担体に標識を担持させる前に行ってもよいし、担体、レチノイドおよび標識を同時に混合することなどによって行ってもよいし、または、標識を既に担持した状態の担体と、レチノイドとを混合することなどによって行ってもよい。したがって、本発明はまた、既存の任意の標識製剤にレチノイドを結合させる工程を含む、線維性疾患のイメージング剤の製造方法にも関する。
【0076】
本発明のイメージング剤の形態は、標識を、標的とする細胞外マトリックス産生細胞に運搬できればいずれの形態でもよく、その例としては、限定するものではないが、高分子ミセル、リポソーム、エマルジョン、マイクロスフェア、ナノスフェアなどが挙げられる。担体がリポソームの形態である場合、レチノイドと、担体としてのリポソーム構成脂質とのモル比は、レチノイドの担体への結合または包含の効率性を考慮すると、好ましくは8:1〜1:4、より好ましくは4:1〜1:2である。
【0077】
本発明のイメージング剤の担体は、レチノイドが標的化剤として機能する態様で存在していれば、標識を内部に含んでも、外部に付着させても、また、標識と混合されていてもよい。ここで、「標的化剤として機能する」とは、レチノイドを含むイメージング剤が、これを含まないイメージング剤よりも迅速かつ/または大量に、標的細胞である細胞外マトリックス産生細胞に到達し、かつ/または取り込まれることを意味し、これは、例えば、本発明のイメージング剤を標的細胞の培養物に添加し、所定時間後に標識の存在部位を分析することにより容易に確認することができる。構造的には、例えば、レチノイドが、遅くとも標的細胞に到達するまでに、イメージング剤の外部に少なくとも部分的に露出していれば、上記要件を充足し得る。レチノイドが、イメージング剤の外部に露出しているか否かは、イメージング剤をレチノイドと特異的に結合する物質、例えば、レチノール結合タンパク質(RBP)などと接触させ、イメージング剤への結合を調査することにより評価することができる。レチノイドを、遅くとも標的細胞に到達するまでに、イメージング剤の外部に少なくとも部分的に露出させることは、例えば、レチノイドと、標識および/または任意に担体との配合比率を調節することなどにより達成することができる。
【0078】
一態様において、担体は式(V):
【化8】

式中、sは、独立して1または2であってもよく、AおよびAは、各々独立して酸素またはNR12であってもよく、R12は、水素またはC1〜4アルキルであってもよく、R10およびR11は、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から、各々独立して選択されてもよい
で表される繰り返し単位、および/または式(VI):
【化9】

式中、R13は水素、アンモニウムまたはアルカリ金属であってもよい
で表される繰り返し単位を含んでもよいポリマーである。R13基が水素である場合、式(VI)で表される繰り返し単位はグルタミン酸の繰り返し単位である。
【0079】
この態様において、レチノイドおよび検出可能な標識の両方がイメージング剤に含まれるように、R10、R11およびR13の少なくとも1つはレチノイドおよび/または検出可能な標識で置換されていてもよい。換言すると、レチノイドおよび検出可能な標識は、式(V)のAおよび/またはA、または式(VI)のC=Oに結合したO原子に結合していてもよい。しかしながら、レチノイドおよび検出可能な標識は、ポリマーの他の部分に結合していてもよい。好ましい態様において、R10、R11およびR13の少なくとも1つは検出可能な標識で置換され、かつ、R10、R11およびR13の少なくとも1つはレチノイドで置換されている。
【0080】
したがって、本発明のイメージング剤は下記に定義するポリマー結合体を含んでもよく、または、下記に定義するポリマー結合体からなってもよい。加えて、本発明の一側面は、該ポリマー結合体自体に関する。ポリマー結合体は、式(I)、(II)、(III)および(IV)
【化10】

式中、mは、独立して1または2であってもよく、nは、独立して1または2であってもよく、AおよびAは、各々独立して酸素またはNRであってもよく、AおよびAは、各々独立して酸素またはNRであってもよく、AおよびAは、各々独立して酸素またはNRであってもよく、R、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、レチノイドおよび検出可能な標識を含む基からなる群から、各々独立して選択されてもよく、R、RおよびRは、各々独立して水素またはC1〜4アルキルであってもよく、o、p、qおよびrは、各々独立して0、1または2以上であってもよく、ここでo、p、qおよびrの合計は2または3以上であり、ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは検出可能な標識を含む基であり、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはレチノイドである
から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含み得る。アルカリ金属の例は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)を含む。ある態様において、アルカリ金属はナトリウムである。
【0081】
広範な種類の繰り返し単位が、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体に含まれてもよい。一部の態様において、本明細書に記載のポリマー結合体は、式(V):
【化11】

式中、sは、独立して1または2であってもよく、AおよびAは、各々独立して酸素またはNR12であってもよく、R12は、水素またはC1〜4アルキルであってもよく、R10およびR11は、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から、各々独立して選択されてもよい
で表される繰り返し単位をさらに含み得る。
【0082】
ある態様は、式(VI):
【化12】

式中、R13は水素、アンモニウムまたはアルカリ金属であってもよい
で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい本明細書に記載のポリマー結合体を提供する。R13基が水素である場合、式(VI)で表される繰り返し単位はグルタミン酸の繰り返し単位である。
【0083】
種々の検出可能な標識が、本明細書に記載のポリマー結合体、例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体の部分であることができる。一部の態様において、検出可能な標識は金属を含み得る。例えば、金属は、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム−111から選択されてもよい。一部の態様において、検出可能な標識は配位子を含み得る。好適な配位子は、限定されずに、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)を含む。ある態様において、検出可能な標識は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)から選択される配位子を含み得る。
【0084】
常磁性金属キレートを含む基は、好適な検出可能な標識の1つの例である。一部の態様において、常磁性金属キレートは、以下の基の1つを含み得る:
【化13】

【0085】
好適な検出可能な標識の別の例は、色素、例えばテキサス−レッドまたはその誘導体などである。
【化14】

【0086】
種々のレチノイドを、本明細書に記載のポリマー結合体、例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体に用いることができる。好適なレチノイドは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、レキシノイドまたはその誘導体もしくはアナログを含む。典型的なレチノールは、ビタミンA、オールトランスレチノール、パルミチン酸レチニルおよび酢酸レチニルを含む。レチナールの1つの例は、11−シス−レチナールである。レキシノイドは、レチノイドXレセプター(RXR)に対して選択的なレチノイド化合物である。典型的なレキシノイドはレチノイドのベキサロテンである。他のレチノイド誘導体およびアナログは、エトレチネート、アシトレチン、タザロテン、ベキサロテン、アダパレンおよびフェンレチニドを含む。一部の態様において、レチノイドはレチノール、レチナール、レチノイン酸、オールトランスレチノール、オールトランスレチノイン酸、パルミチン酸レチニル、11−シス−レチナールおよび13−シス−レチノイン酸から選択することができる。ある態様において、レチノイドはビタミンAを含んでもよい。別の態様において、レチノイドはレチノールを含んでもよい。
【0087】
検出可能な標識を含む基は、多くの異なる手法でポリマーに結合させることができる。ある態様において、検出可能な標識を含む基は、ポリマーに直接付着させることができる。例えば、検出可能な標識を含む基は、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位に、直接付着させることができる。一態様において、検出可能な標識を含む基は、検出可能な標識を含む基の酸素、硫黄、窒素および/または炭素原子を介してポリマーに直接付着させることができる。他の態様において、検出可能な標識を含む基は、リンカー基をさらに含み得る。ある態様において、検出可能な標識を含む基は、リンカー基を介してポリマー、例えば、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位に付着させることができる。リンカー基は、比較的小さくてもよい。例えば、リンカー基は、アミン、アミド、エーテル、エステル、ヒドロキシル基、カルボニル基またはチオエーテル基を含んでもよい。あるいは、リンカー基は、比較的大きくてもよい。例えば、リンカー基は、アルキル基、アリール基、アリール(C1〜6アルキル)基(例えば、フェニル−(CH1〜4−)、ヘテロアリール基、またはヘテロアリール(C1〜6アルキル)基を含んでもよい。一態様において、リンカーは−NH(CH1〜4−NHであってもよい。別の態様において、リンカーは−(CH1〜4−アリール−NH−であってもよい。例として、リンカー基は、検出可能な標識を含む基の炭素における水素の代わりに付着させることができる。リンカー基は、当業者に既知の方法を用いて、ポリマー、例えば、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位に加えることができる。
【0088】
検出可能な標識を含む基と同様に、レチノイドは多くの異なる手法でポリマーに結合させることができる。ある態様において、レチノイドはポリマーに直接付着させることができる。例えば、レチノイドは、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位に、直接付着させることができる。一態様において、レチノイドはレチノイドの酸素、硫黄、窒素および/または炭素原子を介してポリマーに直接付着させることができる。レチノイドはまた、ポリマー、例えば式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位の少なくとも1つを含むポリマーに、リンカー基を介して結合させることができる。検出可能な標識を含む基に関して本明細書に記載したリンカー基は、レチノイドに対しても用いることができる。リンカー基は、当業者に既知の方法を用いて、ポリマー、例えば式(I)、(II)、(III)および/または(IV)で表される繰り返し単位の少なくとも1つを含むポリマーに加えることができる。
【0089】
一部の態様において、式(I)のmは1であってもよい。ある態様において、式(I)のmは2であってもよい。一部の態様において、式(II)のnは1であってもよい。ある態様において、式(II)のnは2であってもよい。一部の態様において、式(III)のsは1であってもよい。他の態様において、式(III)のsは2であってもよい。
【0090】
一部の態様において、本明細書に記載のポリマー結合体は、アルカリ金属、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)などを含み得る。ある態様において、アルカリ金属はナトリウムまたはカリウムであってもよい。ある態様において、アルカリ金属はナトリウムであってもよい。
【0091】
式(I)、(II)、(III)および/または(IV)の少なくとも2つの異なる繰り返し単位を含むポリマーは、コポリマーである。さらにまた、式(I)、(II)、(III)および(IV)の繰り返し単位の少なくとも1つを含むポリマーは、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)ではない他の繰り返し単位を含むコポリマーであってもよい。
【0092】
式(I)の繰り返し単位の数および式(II)の繰り返し単位の数は、各々独立して選択することができ、広範囲にわたって異なり得る。ある態様において、式(I)の繰り返し単位の数は、約50〜約5,000、より好ましくは約100〜約2,000の範囲であってもよい。同様に、一部の態様において、式(II)の繰り返し単位の数は、約50〜約5,000、より好ましくは約100〜約2,000の範囲であってもよい。
【0093】
同様に、式(III)の繰り返し単位の数および式(IV)の繰り返し単位の数は、各々独立して選択することができ、異なり得る。ある態様において、式(III)の繰り返し単位の数は、約50〜約5,000、より好ましくは約100〜約2,000の範囲であってもよい。一部の態様において、式(IV)の繰り返し単位の数は、約50〜約5,000、より好ましくは約100〜約2,000の範囲であってもよい。
【0094】
ポリマー結合体における、繰り返し単位の総数に基づく式(I)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約99モル%までの式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(I)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0095】
ポリマー結合体における、繰り返し単位の総数に基づく式(II)で表される繰り返し単位のパーセンテージも、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約99モル%までの式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(II)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0096】
ポリマー結合体における、繰り返し単位の総数に基づく式(III)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約99モル%までの式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(III)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0097】
同様に、ポリマー結合体における、繰り返し単位の総数に基づく式(IV)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約99モル%までの式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約99モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約50モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約30モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約20モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。別の態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づいて、約1モル%〜約10モル%の式(IV)で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0098】
1個または2個以上の式(V)で表される繰り返し単位がポリマー結合体に存在する場合、繰り返し単位の総数に基づく、ポリマー結合体における式(V)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。同様に、1個または2個以上の式(VI)で表される繰り返し単位がポリマー結合体に存在する場合、繰り返し単位の総数に基づく、ポリマー結合体における式(VI)で表される繰り返し単位のパーセンテージは、広範囲にわたって異なってもよい。典型的な態様を表1に示す。
【0099】
【表1】

モル百分率は、ポリマー結合体における繰り返し単位の総モルに基づく。
【0100】
ある態様において、検出可能な標識は、本明細書に記載のポリマー結合体のポリマーマトリックス内に、非共有結合的に被包(encapsulated)されていても、または部分的に被包されていてもよい。例えば、本明細書に記載のポリマー結合体は、粒子、フレーク、ロッド、ファイバー、フィルム、フォーム(foam)、(液体または気体中の)懸濁物、ゲル、固体または液体の形態を含む、種々の形態で存在し得る。これらの種々の形態のサイズおよび形状は制限されない。遊離の、結合していない1種または2種以上の検出可能な標識、例えば本明細書に記載のものを、本明細書に記載のポリマー結合体に、それがマトリックスを形成しているときに混合し、その中に非共有結合的に被包または部分的に被包することができる。同様に、レチノイドは本明細書に記載のポリマー結合体のポリマーマトリックス内に、非共有結合的に被包されていても、または部分的に被包されていてもよい。
【0101】
ポリマー結合体における検出可能な標識の量は、広範囲にわたって異なってもよい。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体に対する検出可能な標識の質量比に基づき(検出可能な標識の重量は、ポリマー結合体に含まれる)、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の検出可能な標識の総量を含み得る。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体に対する検出可能な標識の質量比に基づき(同ベース)、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の検出可能な標識の総量を含み得る。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体に対する検出可能な標識の質量比に基づき(同ベース)、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の検出可能な標識の総量を含み得る。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体に対する検出可能な標識の質量比に基づき(同ベース)、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の検出可能な標識の総量を含み得る。ある態様において、ポリマー結合体は、ポリマー結合体に対する検出可能な標識の質量比に基づき(同ベース)、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の検出可能な標識の総量を含み得る。
【0102】
ポリマー結合体中に存在するレチノイドの量も、広範囲にわたって異なってもよい。一部の態様において、レチノイドは、ポリマー結合体の全質量の約1%〜約50%(重量/重量)であってもよい(ここで、レチノイドの質量はポリマー結合体の全質量に含まれる)。他の態様において、レチノイドは、ポリマー結合体の全質量の約10%〜約30%w/wであってもよい(同ベース)。さらに他の態様において、レチノイドは、ポリマー結合体の全質量の約20%〜約40%w/wであってもよい(同ベース)。
【0103】
検出可能な標識の量、レチノイドの量および式(I)、(II)、(III)および/または(IV)の繰り返し単位のパーセンテージ量は、同じ1種または2種以上の剤の実質的に同じ量を含む相当するポリグルタミン酸結合体の溶解度より高い、ポリマー結合体の溶解度を提供するために、好ましく選択することができる。ある態様において、ポリマー結合体の溶解度は、相当するポリグルタミン酸結合体のものよりも高い。溶解度は、摂氏約22度(℃)で、少なくとも5mg/mlのポリマー結合体を0.9重量%のNaCl水溶液に含むポリマー結合体溶液を形成し、光学的透明度を決定することにより測定する。光学的透明度は、濁度測定、例えば、目視観察などにより、または、当業者に既知の適切な機器による方法により測定することができる。得られた溶解度の、同様に形成したポリグルタミン酸結合体との比較は、幅広い範囲のpH値にわたるより高い光学的透明度から明らかな、改善された溶解度を示す。したがって、約22℃で、少なくとも5mg/mlのポリマー結合体を0.9重量%のNaCl水溶液に含む、試験されたポリマー結合体溶液が、試験された相当するポリグルタミン酸結合体のものよりも高い光学的透明度を幅広い範囲のpH値にわたって有する場合、ポリマー結合体の溶解度は、実質的に同じ量の剤を含む相当するポリグルタミン酸結合体の溶解度より高い。当業者は、「相当する」ポリグルタミン酸結合体が、結合体のポリマー部分が、それに対して比較される、対象となるポリマー結合体(式(I)、(II)、(III)および/または(IV)の繰り返し単位を含む)のポリマー部分とほぼ同じ分子量を有する、対照物質であることを理解する。
【0104】
ポリマー結合体は、1個または2個以上のキラルの炭素原子を含み得る。キラル炭素(アスタリスク*によって示すことがある)は、rectus(右手型)またはsinister(左手型)構造を有することができ、したがって、繰り返し単位はラセミであっても、鏡像異性的であっても、鏡像異性的に富化されていてもよい。本明細書の他所で用いる記号「n」および「*」(キラル炭素を示す)は、特に明記しない限り、上記で特定したのと同じ意味を有する。
【0105】
式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体は、種々の手法で調製することができる。ある態様において、第1のポリマー反応物質を溶媒に溶解または部分的に溶解し、第1の溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質を形成することができる。次に、第1の溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質と、第2の反応物質とを反応させ、第2のポリマー反応物質を形成することができる。ある態様において、第2の反応物質は、検出可能な標識を含む基を含み得る。別の態様において、第2の反応物質は、レチノイドを含み得る。ある態様において、レチノイドはレチノールまたはその誘導体であってもよい。さらにまた別の態様において、第2の反応物質は、配位子、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)などを含み得る。ある態様において、第2の反応物質は、ヒドロキシおよびアミンから選択される置換基を含み得る。
【0106】
第1のポリマー反応物質は、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意の好適な物質を含んでもよい。ある態様において、ポリマー反応物質は、式(VII):
【化15】

式中、zは独立して1または2であってもよく、AおよびA10は、各々酸素であってもよく、およびR14およびR15は、各々独立して水素、アンモニウムおよびアルカリ金属から選択されてもよい
で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0107】
別の態様において、第1のポリマー反応物質は、式(VIII):
【化16】

式中、R16は水素、アンモニウムおよびアルカリ金属から選択されてもよい
で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0108】
次に、第2のポリマー反応物質と、第3の反応物質とを反応させ、中間生成物、または、一部の態様においては、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる。必要に応じて、または所望により、第2のポリマー反応物質を溶媒に溶解または部分的に溶解し、第2の溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質を形成することができる。ある態様において、第3の反応物質は、検出可能な標識を含む基を含み得る。別の態様において、第3の反応物質は、レチノイドを含み得る。ある態様において、レチノイドはレチノールまたはその誘導体であってもよい。さらにまた別の態様において、第3の反応物質は、配位子、例えば、第2の反応物質について記載したものなどを含み得る。ある態様において、第3の反応物質は、ヒドロキシおよびアミンから選択される置換基を含み得る。
【0109】
第2または第3の反応物質が配位子である場合、第4の反応物質を配位子の添加後に添加することができ、ここで第4の反応物質は金属を含む。典型的な金属は、限定されずに、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム−111を含む。
【0110】
遊離の検出可能な標識および/またはレチノイドと、本明細書に記載のポリマー結合体との混合物は、種々の手法、例えば、マトリックス(その中に検出可能な標識および/またはレチノイドの一部もしくは全部が、非共有結合的に被包されるか、または、部分的に被包される)を形成することなどで形成することができる。かかる混合物は、例えば、結合した1種または2種以上の検出可能な標識および/または1種または2種以上のレチノイドと、結合していない1種または2種以上の検出可能な標識および/または1種または2種以上のレチノイドとを含んでもよい。
【0111】
ポリマー反応物質は、これを、検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子との混合のために準備すべく、種々の溶媒に溶解または部分的に溶解することができる。ある態様において、溶媒は親水性溶媒、例えば極性溶媒などを含み得る。好適な極性溶媒は、プロトン性溶媒、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、蟻酸および酢酸などを含む。他の好適な極性溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなどを含む。ある態様において、溶媒は水性溶媒、例えば水などであってもよい。
【0112】
ポリマー反応物質の溶媒への溶解または部分的な溶解を、従来の機械的技法を用いることによりさらに補助することができる。例えば、ポリマー結合体を溶媒中で振盪または撹拌して、溶解または部分的な溶解を誘導することができる。ある態様において、ポリマーと溶媒とをソニケーションする。ソニケーションは、音響エネルギー、例えば超音波エネルギーなどを適用して、サンプル中の粒子をかき混ぜる(agitate)行為である。ソニケーションは、例えば、超音波槽または超音波プローブを用いて行うことができる。ポリマーが溶解する程度は、機械的振盪もしくは撹拌の強度および期間またはソニケーション条件を変化させることにより制御することができる。振盪、撹拌またはソニケーションは任意の継続時間行うことができる。例えば、混合物を数秒〜数時間の範囲の継続時間ソニケーションすることができる。ある態様において、ポリマー結合体は、溶媒中で約1分〜約10分の範囲の継続時間ソニケーションすることができる。ある態様において、ポリマー結合体は、溶媒中で約5分間ソニケーションすることができる。
【0113】
ある態様において、検出可能な標識を含む基および/または配位子を、ポリマー結合体溶液に添加することができる。検出可能な標識を含む基および/または配位子は、ポリマー結合体と混合する前に1種または2種以上の溶媒に溶解または部分的に溶解してもよいし、しなくともよい。検出可能な標識を含む基および/または配位子を溶媒に溶解または部分的に溶解する場合、溶媒は親水性溶媒、例えば極性溶媒などを含み得る。好適な極性溶媒は、プロトン性溶媒、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、蟻酸、酢酸およびアセトンなどを含む。他の好適な極性溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなどを含む。
【0114】
同様に、ある態様において、レチノイドをポリマー反応物質溶液に添加することができる。レチノイドは、ポリマー結合体と混合する前に1種または2種以上の溶媒に溶解または部分的に溶解してもよいし、しなくともよい。レチノイドを溶媒に溶解または部分的に溶解する場合、溶媒は親水性溶媒、例えば極性溶媒などを含み得る。好適な極性溶媒は、プロトン性溶媒、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、蟻酸、酢酸およびアセトンなどを含む。他の好適な極性溶媒は、非プロトン性溶媒、例えば、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンなどを含む。
【0115】
検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子を、ポリマー反応物質溶液に、例えばピペットを用いることなどによって添加した後に、さらなる混合を行うことができる。例えば、ポリマー反応物質と検出可能な標識を含む基とを含む溶液を、振盪または撹拌することができる。ある態様において、ポリマー結合体と検出可能な標識を含む基とを含む溶液を、ソニケーションすることができる。振盪、撹拌またはソニケーションは任意の継続時間行うことができる。例えば、混合物を数秒〜数時間の範囲の継続時間ソニケーションすることができる。
【0116】
ある態様においては、ポリマー反応物質と、検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子とを、いずれもが溶媒に溶解される前に混合する。ある態様において、溶媒または溶媒の混合物を、ポリマー反応物質と、検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子との混合物に添加することができる。溶媒または溶媒の混合物を、ポリマー反応物質、および、検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子に添加した後、ポリマー反応物質、および、検出可能な標識を含む基、レチノイドおよび/または配位子の1種または2種以上は、溶解または部分的に溶解していてもよい。溶媒または溶媒の混合物は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、蟻酸、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンの1種または2種以上を含んでもよい。ある態様において、溶媒の混合物は、アルコールと水とを含み得る。ある態様において、溶媒の混合物は、エタノールと水とを含み得る。
【0117】
任意に、検出可能な標識を含む基とレチノイドとを含むポリマー結合体を、その後、単離および/または精製することができる。当業者に既知の好適な方法を、本明細書に記載のポリマー結合体の単離および/または精製に用いることができる。ポリマー結合体は、その後、当業者に既知の任意の好適な方法にでもよって乾燥することができる。例えば、一態様において、ポリマー結合体をフリーズドライすることができる。組成物をフリーズドライする条件は様々であり得る。ある態様において、混合物は約−30℃〜約−10℃の範囲の温度でフリーズドライすることができる。ある態様において、混合物は約−20℃の温度でフリーズドライすることができる。ひとたび検出可能な標識を含む基とレチノイドとを含むポリマー結合体が任意に単離および乾燥されたら、次にこれを好適な条件で貯蔵することができる。例えば、組成物は、上記のとおりのフリーズドライに適した温度で貯蔵することができる。
【0118】
第3の反応物質との反応は、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質と第2の反応物質とを反応させる前、反応させるのとほぼ同時、または反応させた後に行うことができる。一部の態様において、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質は、第3の反応物質と反応する前に、第2の反応物質の少なくとも一部と反応させることができる。ある態様において、第2の反応物質の少なくとも一部の添加後に形成される中間化合物を、第3の反応物質を添加する前に単離することができる。別の態様において、第3の反応物質を、第2の反応物質の添加後に形成される中間化合物を単離せずに添加することができる。他の態様において、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質は、第3の反応物質との反応とほぼ同時に、第2の反応物質の少なくとも一部と反応させることができる。ある態様において、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質は、第3の反応物質と反応させた後に、第2の反応物質の少なくとも一部と反応させることができる。ある態様において、第3の反応物質の少なくとも一部の添加後に形成される中間化合物を、第2の反応物質を添加する前に単離することができる。
【0119】
金属を含む第4の反応物質を添加する場合、一部の態様において、第4の反応物質は第3および/または第2の反応物質とほぼ同時に添加することができる。ある態様において、第4の反応物質は、第3および/または第2の反応物質の後に添加することができる。ある態様において、本明細書に記載の配位子を有する中間化合物は、第4の反応物質を添加する前に単離することができる。別の態様において、第4の反応物質は、配位子を有する中間化合物に、中間化合物を単離せずに添加することができる。
【0120】
ある態様において、ポリマー結合体を製造する方法は、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質と、第2の反応物質および/または第3の反応物質とを、カップリング剤の存在下で反応させることを含み得る。任意の好適なカップリング剤を用いることができる。ある態様において、カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)、ヘキサフルオロリン酸N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムN−オキシド(HATU)、ヘキサフルオロリン酸2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウム(HBTU)、ヘキサフルオロリン酸2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウム(HCTU)、ヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム(PyBOP(R))、ヘキサフルオロリン酸ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウム(PyBroP(R))、テトラフルオロホウ酸2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウム(TBTU)およびヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウム(BOP)から選択される。
【0121】
反応が生じることを可能にする任意の好適な溶媒を用いることができる。ある態様において、溶媒は極性非プロトン性溶媒であってもよい。例えば、溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)およびN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)から選択され得る。
【0122】
別の態様において、反応は、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質を、触媒の存在下で反応させることをさらに含み得る。反応を促進する任意の触媒を用いることができる。ある態様において、触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含み得る。
【0123】
ある態様において、式(I)および式(II)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルタミン酸、およびアミノ酸、例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸などから出発して製造することができる。あるいは、別の態様において、ポリマーは、最初に出発材料のポリグルタミン酸をその塩形態に変換することによって作出してもよい。ポリグルタミン酸の塩形態は、ポリグルタミン酸と、好適な塩基、例えば、重炭酸ナトリウムなどとを反応させることにより得ることができる。アミノ酸部分を、ポリグルタミン酸のペンダントカルボン酸基に付着させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は広範囲にわたって異なってもよいが、好ましくは、約10,000〜約500,000ダルトン、より好ましくは約25,000〜約300,000ダルトンである。かかる反応は、ポリ−(ガンマ−L−アスパルチル−グルタミン)またはポリ−(ガンマ−L−グルタミル−グルタミン)を作出するのに用いることができる。
【0124】
ある態様において、アミノ酸はポリグルタミン酸への付着の前に、保護基によって保護される。この反応に適した保護されたアミノ酸部分の1つの例は、以下に示すL−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩である:
【化17】

【0125】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の好適な溶媒の存在下で行うことができる。ある態様において、溶媒は非プロトン性溶媒であってもよい。好ましい態様において、溶媒はN,N’−ジメチルホルムアミドであってもよい。
【0126】
ある態様において、カップリング剤、例えば、EDC、DCC、CDI、DSC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP(R)、PyBroP(R)、TBTUおよびBOPなどを用いることができる。他の態様において、ポリグルタミン酸とアミノ酸とは、触媒(例えばDMAPなど)を用いて反応させることができる。
【0127】
反応完了後、アミノ酸の酸素原子が保護されている場合は、保護基を既知の方法を用い、例えば好適な酸(例えばトリフルオロ酢酸など)を用いることなどによって除去することができる。所望により、ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応から得られるポリマーの塩形態を、酸形態のポリマーを好適な塩基溶液、例えば、重炭酸ナトリウム溶液などで処理することにより形成することができる。
【0128】
ポリマーは、当業者に既知の方法によって回収および/または精製することができる。例えば、溶媒は、好適な方法、例えば、回転蒸発などにより除去することができる。加えて、反応混合物を酸性の水溶液中で濾過し、沈殿を誘導することができる。得られた沈殿は、次いで濾過し、水で洗浄してもよい。
【0129】
一部の態様において、式(I)および式(II)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーはまた、上記した式(VI)の繰り返し単位をも含み得る。かかるポリマーを形成する1つの方法は、ポリグルタミン酸から出発し、これをアミノ酸、例えば、アスパラギン酸および/またはグルタミン酸と、ポリグルタミン酸ベースで1.0当量未満のアミノ酸の量で反応させることによる。例えば、一態様において、ポリグルタミン酸ベースで0.7当量未満のアミノ酸とポリグルタミン酸とを反応させ、結果として生じるポリマーの繰り返し単位の約70%がアミノ酸を含むようにすることができる。上記で論じたとおり、アミノ酸の酸素原子を、好適な保護基を用いて保護することができる。ある態様において、アミノ酸はL−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸であってよい。別の態様において、アミノ酸の酸素原子を、t−ブチル基で保護することができる。アミノ酸の酸素原子が保護されている場合、保護基は既知の方法、例えば好適な酸(例えばトリフルオロ酢酸)などを用いて除去することができる。
【0130】
一部の態様において、式(III)および式(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーは、ポリグルタミン酸から出発して製造することができる。すでに記載したとおり、式(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーはまた、式(V)の繰り返し単位をも含み得る。かかるポリマーを形成する方法は、ポリグルタミン酸および/またはその塩から出発し、1.0当量未満のアミノ酸、例えば、L−アスパラギン酸またはL−グルタミン酸を添加することによる。
【0131】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)から選択される繰り返し単位の1個または2個以上の繰り返し単位を含むポリマーは、種々の対応する出発モノマーを用い、当業者に既知の方法を用いて合成することができる。
【0132】
検出可能な標識を含む基と、ポリマー酸またはその塩形態との結合は、種々の手法で、例えば、検出可能な標識を含む基と種々のポリマーとを共有結合させることなどにより行うことができる。同様に、レチノイドとポリマー酸またはその塩とを種々の手法で結合することができる。上記の基とポリマーとを結合するための1つの方法は、熱(例えばマイクロ波法を用いた熱など)を用いることによる。あるいは、結合は室温で行ってもよい。当業者に一般的に知られた、および/または、本明細書に記載された好適な溶媒、カップリング剤、触媒、および/またはバッファーを、ポリマー結合体を形成するために用いることができる。
【0133】
一態様において、本明細書に記載のポリマー(例えば、式(I)、(II)、(III)および/または(IV)から選択される繰り返し単位を含むポリマー)と、検出可能な標識(例えば、本明細書に記載のものなど)とを結合することができる。ある態様において、検出可能な標識はテキサスレッド−NHであってもよい。
【化18】

【0134】
1つの特定の態様において、式(I)、式(II)および式(V)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーと、DCC、テキサスレッド−NH色素、ピリジンおよび4−ジメチルアミノピリジンとを反応させることができる。混合物は、マイクロ波法を用いて加熱することができる。ある態様において、反応を約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱することができる。別の態様において、材料を加熱し得る時間は、約5〜約40分の範囲である。所望により、反応混合物を室温に冷却してもよい。当業者に既知の好適な方法を用いて、ポリマー結合体を単離および/または精製することができる。例えば、反応混合物を酸性の水溶液中で濾過することができる。次いで、形成されるあらゆる沈殿を濾過し、水で洗浄することができる。任意に、沈殿を任意の好適な方法で精製することができる。例えば、沈殿をアセトン中に移し、溶解することができ、得られる溶液を重炭酸ナトリウム溶液中で再度濾過することができる。所望により、得られる反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、ポリマーを凍結乾燥および単離することができる。
【0135】
あるいは、検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドと、アミノ酸、例えば、グルタミン酸および/またはアスパラギン酸などとを反応させることができ、そこにおいて検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドと、アミノ酸とが結合される(例えば、共有結合により結合される)。次いで、アミノ酸−標識化合物および/またはアミノ酸−レチノイド化合物と、ポリグルタミン酸またはその塩とを反応させ、式(I)および式(II)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体を形成することができる。検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドはまた、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される繰り返し単位を含むポリマー結合体などのポリマー結合体の一部を形成するのに用いるモノマーに付着させることができる。その後、モノマーを当業者に既知の方法を用いて重合させ、ポリマー結合体を形成することができる。例えば、検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドを、重合の前にグルタミン酸に付着させることができる。同様に、検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドを、L−ガンマ−グルタミルグルタミンおよび/またはガンマ−L−アスパルチルグルタミンに付着させることができる。結果として生じる、検出可能な標識を含む基および/またはレチノイドが付着したモノマーを、その後当業者に既知の方法を用いて重合させ、ポリマー結合体を形成することができる。
【0136】
ポリマー結合体の形成後、ポリマーに共有結合していない剤の任意の遊離量を測定することもできる。当業者に既知の方法を用いて、遊離の検出可能な標識および/またはレチノイドの実質的な欠如を確認することができる。
【0137】
上述のポリマー結合体は、水溶液中でナノ粒子に形成することができる。ポリマー結合体(例えば式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、同様の方法でナノ粒子に形成することができる。かかるナノ粒子は、検出可能な標識を選択された組織に選択的に送達するのに用いることができる。
【0138】
本発明のイメージング剤および化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、線維性疾患を診断するのに用いることができる。したがって、本発明はさらに、本発明のイメージング剤および/または化合物を含む線維性疾患の診断剤、ならびに、有効量の本発明のイメージング剤、化合物または前記診断剤を、それを必要とする対象に投与する工程、および投与したイメージング剤、化合物または診断剤に含まれる標識を検出する工程を含む、線維性疾患を診断する方法に関する。
【0139】
ある態様は、本明細書に記載の剤(例えば、イメージング剤または診断剤)および/または化合物(例えば式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)と、薬学的に許容し得る賦形剤、担体および希釈剤から選択される少なくとも1つとを含み得る組成物を提供する。一部の態様において、本明細書に開示された化合物(例えば式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)のプロドラッグ、代謝物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形、および薬学的に許容し得る塩が提供される。
【0140】
「プロドラッグ」は、in vivoで親薬物に変換される剤を指す。プロドラッグは、一部の状況で、それらが親薬物より投与するのが容易であり得るため、しばしば有用である。それは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、親はそうでないことがある。プロドラッグはまた、医薬組成物において、親薬物より改善された溶解性を有し得る。プロドラッグの例は、限定されずに、水への溶解性が移動性において不利となる、細胞膜を横切る伝達を促進するためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、水への溶解性が有益である細胞内にひとたび入ると、活性体であるカルボン酸に代謝的に加水分解される化合物である。プロドラッグのさらなる例は、酸性基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)であることができ、ここでペプチドは代謝され、活性部分を露呈する。好適なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、その全体を本明細書に援用する、Design of Prodrugs, (ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985)に記載されている。
【0141】
用語「プロドラッグエステル」は、生理学的条件下で加水分解される任意の複数のエステル形成基の追加によって形成される、本明細書に開示される化合物の誘導体を指す。プロドラッグエステル基の例は、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニルおよびメトキシメチル、ならびに、(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基を含む、当該技術分野において既知の他のかかる基を含む。プロドラッグエステル基の他の例は、例えば、T. Higuchi and V. Stella, in "Pro-drugs as Novel Delivery Systems", Vol. 14, A.C.S. Symposium Series, American Chemical Society (1975)および"Bioreversible Carriers in Drug Design: Theory and Application", E. B. Roche編, Pergamon Press: New York, 14-21 (1987)(カルボキシル基を含む化合物のためプロドラッグとして有効なエステルの例を提供する)などで見出すことができる。上記参考文献の各々は、その全体を本明細書に援用する。
【0142】
用語「薬学的に許容し得る塩」は、それが投与される生物に顕著な刺激を生じさせず、化合物の生物的活性および特性を無効にしない、化合物の塩を指す。一部の態様において、塩は化合物の酸付加塩である。薬学的な塩は、化合物と、無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸または臭化水素酸など)、硫酸、硝酸、リン酸などとを反応させることにより得ることができる。薬学的な塩はまた、化合物と、有機酸、例えば、脂肪族または芳香族カルボン酸またはスルホン酸、例えば、酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、またはナフタレンスルホン酸などとを反応させることにより得ることができる。薬学的な塩はまた、化合物と塩基とを反応させ、塩、例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩など、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩またはマグネシウム塩など、有機塩基の塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C〜Cアルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、およびアミノ酸、例えばアルギニン、リジンなどとの塩などを形成することにより得ることができる。
【0143】
医薬製剤の製造が医薬賦形剤と塩形態の有効成分との均質な混合を伴う場合、非塩基性の医薬賦形剤、すなわち酸性または中性の賦形剤を用いるのが望ましいことがある。
【0144】
種々の態様において、本明細書に開示される剤または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、単独で、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて、または、本明細書に記載の治療領域で活性を有する1または2以上の他の剤と組み合わせて用いることができる。
【0145】
別の側面において、本開示は、1または2以上の生理学的に許容し得る界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、平滑剤、懸濁化剤、皮膜形成物質および被覆助剤またはこれらの組合わせと、本明細書に開示する剤および/または化合物(例えば式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)とを含む医薬組成物に関する。治療用の許容し得る担体または希釈剤は医薬分野でよく知られており、例えば、その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に記載されている。防腐剤、安定化剤、色素、甘味料、フレグランス、着香料などを、医薬組成物に供給してもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを、防腐剤として添加することができる。さらに、酸化防止剤および懸濁化剤を用いることができる。種々の態様において、アルコール、エステル、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いてもよく、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸塩、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いてもよく、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを平滑剤として用いてもよく、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆油を懸濁化剤または滑沢剤として用いてもよく、炭水化物(例えばセルロースまたは糖など)の誘導体としての酢酸フタル酸セルロース、またはポリビニルの誘導体としてのメチルアセテート−メタクリレートコポリマーを懸濁化剤として用いてもよく、フタル酸エステルなどの可塑剤などを懸濁化剤として用いてもよい。
【0146】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示する剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)と、他の化学成分、例えば希釈剤または担体との混合物を指す。医薬組成物は、剤および/または化合物の生体への投与を容易にする。剤および/または化合物を投与する複数の技術が当該技術分野に存在し、これは、限定されずに、経口、注射、エアゾール、非経口および局所(topical)投与を含む。医薬組成物はまた、剤および/または化合物を、無機または有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などと反応させることによって得ることができる。
【0147】
医薬組成物に関して用いる用語「担体」は、剤および/または化合物の細胞または組織への組み込みを容易にする化学物質を指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、それが生体の細胞または組織内への多くの有機化合物の取り込みを容易にすることから、一般に用いられている担体である。
【0148】
用語「希釈剤」は、水中の希釈された化学物質であって、対象とする剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)を溶解するとともに、剤および/または化合物の生物学的に活性な形態を安定化するものを指す。緩衝溶液に溶解した塩類は、当該技術分野で希釈剤として利用される。一般的に用いられている緩衝溶液の1つはリン酸緩衝生理食塩水だが、これはそれがヒト血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御することができるため、緩衝希釈剤は剤および/または化合物の生物学的活性をほとんど変更しない。
用語「生理学的に許容し得る」は、剤および/または化合物の生物学的活性および特性を無効にしない担体または希釈剤を指す。
【0149】
本発明の剤においては、レチノイドが標的化剤として機能する態様で存在する限り、標識は、イメージング剤の内部に含まれても、外部に付着して存在しても、また、これと混合されていてもよい。したがって、投与経路や薬物放出様式などに応じて、本剤を、適切な材料、例えば、腸溶性のコーティングや、時限崩壊性の材料で被覆してもよく、また、適切な薬物放出システムに組み込んでもよい。
【0150】
本明細書に記載の医薬組成物は、ヒト患者にそれ自体で、または、医薬組成物中、併用療法におけるように他の有効成分と、または好適な担体または1または2以上の賦形剤と混合して投与することができる。本出願の剤および/または化合物の製剤化および投与のための技法は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences," Mack Publishing Co., Easton, PA, 18th edition, 1990、および、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年などに見出すことができる。
【0151】
好適な投与経路は、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経皮投与、経鼻投与、耳介内投与、局所投与または腸投与、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、門脈内注射、リンパ管内注射、リンパ節内注射、骨髄内注射、髄腔内注射、直接心室内注射、脳室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、脳内注射、眼内注射を含む非経口送達、ならびに肺内投与、気道内投与、気管内投与、気管支内投与、子宮内投与または気管支内投与を包含する。一部の態様において、剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)はまた、デポ注射、浸透圧ポンプ、ピル、経皮パッチ(エレクトロトランスポートパッチを含む)などを含む、持続性または制御放出剤形で、所定の速度での、長期間および/または持続的な、パルス状の投与のために投与することができる。
【0152】
医薬組成物は、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤などが挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤などの注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。
医薬組成物は、それ自体知られた方法で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣剤作製、粉末化、乳化、カプセル化、封入または打錠処理などによって製造することができる。
【0153】
医薬組成物は、活性化合物を医薬的に用いることができる製剤に加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む、1または2以上の生理学的に許容し得る担体を用いて、従来の手法で製剤することができる。適した製剤は、選択する投与経路によって異なる。任意の周知の技法、担体および賦形剤を、当該技術分野において、例えば、上記Remington's Pharmaceutical Sciencesおよび標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年などにおいて適切なように、かつ理解されているように用いることができる。
【0154】
注射剤は、溶液または懸濁液として、注射前に液体に溶解または懸濁するのに適した固体形態として、またはエマルジョンとして、従来の形態に調製することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。さらに、注射可能な医薬組成物は、必要に応じて、少量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合するバッファーは、限定されずに、ハンクス液、リンゲル液または生理食塩水バッファーを含む。所望により、吸収増強製剤(例えばリポソーム)を利用してもよい。
【0155】
経粘膜投与のために、透過すべき障壁に適した浸透剤を製剤に用いてもよい。
【0156】
非経口投与、例えばボーラス注射または持続注入などによる非経口投与のための医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。また、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油など、または他の有機油、例えば、大豆油、グレープフルーツ油またはアーモンド油など、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなど、またはリポソームを含む。水性の注射懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどを含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、好適な安定化剤、または、化合物の溶解性を高める剤を含んでもよい。注射用製剤は、単位投与形態で、例えば、アンプルまたは多回投与容器中に、添加された保存剤とともに提供することができる。組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、製剤用物質、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含んでいてもよい。あるいは、有効成分は、使用の前に好適なビヒクル、例えば無菌のパイロジェンフリー水などによる構成のために粉末形態であってもよい。
【0157】
経口投与のために、剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、剤および/または活性体と、当該技術分野で周知の薬学的に許容し得る担体とを組み合わせることによって、容易に製剤することができる。かかる担体により、本発明の剤および/または化合物を、処置する患者による経口摂取用の錠剤、ピル、糖衣剤、カプセル、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化することが可能となる。経口用途のための医薬製剤は、剤および/または活性化合物を固形賦形剤と組合わせ、得られる混合物を任意に粉砕し、顆粒の混合物を、必要に応じて好適な助剤を添加した後に、錠剤または糖衣剤コアを得るために処理することにより得ることができる。好適な賦形剤は、特に、充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖など、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。必要に応じて、崩壊剤、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどを添加してもよい。糖衣剤のコアは、好適なコーティングを備えている。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。この目的のために、濃縮した糖液を用いることができ、これは、任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含んでもよい。染料または顔料を、識別のため、または、活性化合物用量の異なる組合わせを特徴づけるために、錠剤または糖衣剤コーティングに加えてもよい。
【0158】
経口で用いることができる製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびに、ゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトールなど)で作製されたシールされたソフトカプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、充填剤、例えば、ラクトースなど、結合剤、例えば、デンプンなど、および/または、滑沢剤、例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど、および任意に安定化剤と混合された有効成分を含み得る。ソフトカプセルにおいて、剤および/または活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの中に溶解または懸濁していてもよい。さらに、安定化剤を添加してもよい。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投薬量であるべきである。
バッカル投与のために、組成物は、従来の手法で製剤された錠剤またはロゼンジ剤の形態をとってもよい。
【0159】
吸入による投与のために、剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、加圧パック(pressurized pack)またはネブライザーから、好適なプロペラント、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の好適なガスにより、エアゾールスプレー物の形態で有利に送達することができる。加圧エアゾールの場合、投薬単位は、計量された量を放出するためのバルブを提供することにより決定することができる。吸入器またはインサフレーターに用いるカプセルおよびカートリッジ、例えばゼラチン製のものは、例えば、剤および/または化合物と好適な粉末基剤、例えばラクトースまたはデンプンなどの粉末混合物を含んだ製剤としてもよい。
【0160】
本明細書でさらに開示されるのは、眼内、鼻腔内、および耳介内送達を含む用途について医薬分野においてよく知られた種々の医薬組成物である。これらの用途のための好適な浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られている。眼内送達用の医薬組成物は、水溶性形態の、例えば点眼液状の、または、ゲランガム(Shedden et al., Clin. Ther., 23(3):440-50 (2001))もしくはヒドロゲル(Mayer et al., Ophthalmologica, 210(2):101-3 (1996))中の、剤および/または活性化合物の水性眼科用液剤、眼軟膏、眼科用懸濁液剤、例えば微粒子、液体担体媒体中に懸濁した薬物含有小ポリマー粒子(Joshi, A., J. Ocul. Pharmacol., 10(1):29-45 (1994))、脂溶性製剤(Alm et al., Prog. Clin. Biol. Res., 312:447-58 (1989))、およびマイクロスフェア(Mordenti, Toxicol. Sci., 52(1):101-6 (1999))など、および、眼球インサートを含む。全ての上記参考文献は、その全体を本明細書に援用する。かかる好適な医薬製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは、無菌、等張、かつ安定性および快適性のために緩衝された製剤として製造される。鼻腔内送達のための医薬組成物はまた、通常の線毛作用の維持を保証するために多くの点で鼻内分泌物を模するようにしばしば調製されている点鼻剤およびスプレーを含んでもよい。その全体を本明細書に援用するRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA (1990)に開示されているとおり、および、当業者に周知のとおり、好適な製剤は、ほとんどの場合、そして、好ましくは等張であり、5.5〜6.5のpHを維持するためにわずかに緩衝されており、ほとんどの場合、そして、好ましくは抗菌保存剤および適切な薬物安定化剤を含む。耳介内の送達のための医薬製剤は、耳内での局所適用のための懸濁剤および軟膏を含む。かかる耳用製剤のための一般的な溶媒は、グリセリンおよび水を含む。
【0161】
剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)はまた、直腸組成物、例えば坐剤または保持浣腸などに製剤することができ、これは、例えば、従来の坐剤基剤、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどを含む。
【0162】
前述の製剤に加えて、剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)はまた、デポ製剤として製剤化してもよい。かかる長時間作用製剤は、移植(例えば皮下もしくは筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、剤および/または化合物は、好適なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容し得る油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂とともに、または、難溶性誘導体として、例えば、難溶性塩として製剤化してもよい。
【0163】
疎水性の剤および/または化合物に関して、好適な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマーと、水相とを含む共溶媒系であってもよい。用いられる一般的な共溶媒系は、3%w/vのベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤ポリソルベート80TM、および65%w/vのポリエチレングリコール300とを含み、無水エタノールで体積を合わせた溶液である、VPD共存溶媒系である。当然ながら、共存溶媒系の比率は、その溶解性および毒性の特徴を損なうことなく、相当に多様であってもよい。さらにまた、共溶媒成分の同一性(identity)は多様であってもよい。例えば、他の低毒性非極性界面活性剤を、ポリソルベート80TMの代わりに用いてもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズは多様であってもよく、ポリエチレングリコールを他の生体適合性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンに置き換えてもよく、デキストロースを、他の糖または多糖に置換してもよい。
【0164】
あるいは、疎水性薬剤または化合物のための他の送達システムを利用してもよい。リポソームおよびエマルジョンは、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたは担体の周知の例である。ある種の有機溶媒、例えばジメチルスルホキシドなどを利用することもできるが、これは通常、より大きな毒性という代償を伴う。さらに、剤および/または化合物は、持続放出システム、例えば、治療剤を含む固体の疎水性ポリマーの半透性のマトリックスなどを用いて送達することができる。種々の持続放出材料が確立されており、当業者に周知である。持続放出カプセルは、その化学的性質に応じて、数時間または数週間から100日以上までの間、剤および/または化合物を放出することができる。治療剤の化学的性質および生物学的安定性に応じ、タンパク質安定化のためのさらなる方策を利用することができる。
【0165】
細胞内に投与されることを目的とする剤は、当業者に周知の技法を用いて投与することができる。例えば、かかる剤を、リポソームに被包することができる。リポソーム形成時に水溶液中に存在する全ての分子は、水性の内部に取り込まれる。リポソーム内容物はともに外部の微細環境から保護されており、リポソームが細胞膜と融合するため、細胞の細胞質に効率的に送達される。リポソームは、組織特異的抗体で被覆されていてもよい。リポソームは所望の器官に対して標的化され、選択的に取り込まれる。あるいは、疎水性有機小分子は、細胞内に直接投与することができる。
【0166】
さらなる治療剤または診断剤を医薬組成物に組み込むことができる。あるいは、または加えて、医薬組成物は、他の治療剤または診断剤を含む他の組成物と組み合わせることができる。
【0167】
剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)またはその医薬組成物は、患者に任意の好適な手段で投与することができる。投与方法の非限定例は、なかでも、活性化合物を生体組織と接触させるために当業者が適切と考える、(a)経口経路を介した投与(当該投与は、カプセル、錠剤、顆粒、スプレー、シロップなどの形態での投与を含む)、(b)非経口経路を介した投与、例えば、直腸投与、膣内投与、尿道内投与、眼内投与、鼻腔内投与または耳介内投与など(当該投与は、水性懸濁液もしくは油性製剤などとしての、または、滴剤、スプレー、坐薬、膏薬、軟膏などとしての投与を含む)、(c)注射、例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、眼窩内注射、嚢内注射、脊髄内注射、胸骨内注射など(注入ポンプ送達を含む)、(d)局部(locally)投与、例えば、腎臓または心臓領域における直接注射、例えば、デポ移植によるもの、ならびに(e)局所投与を含む。
【0168】
投与に適した医薬組成物は、有効成分がその意図される目的を達成するために有効な量で含まれる組成物を含む。用量として要求される本明細書に開示する化合物の有効量は、投与経路、処置する動物種(ヒトを含む)、および対象とする特定の動物の身体的特徴に依存する。用量は所望の効果を達成するように調整することができるが、重量、食事、併用薬物などの要因、および医学分野の当業者が認識する他の要因に依存する。より具体的には、有効量は、疾患の徴候を予防、緩和もしくは改善するか、処置する対象の生存を延長するのに有効な化合物の量を意味する。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0169】
当業者に直ちに明らかなように、投与すべき有用なin vivoの投薬量および投与の特定の方法は、年齢、重量および処置する哺乳動物種、用いる特定の剤および/または化合物、およびこれらの剤および/または化合物を用いる特定の用途によって異なる。有効投薬量レベル、すなわち所望の結果を達成するのに必要な投薬量レベルの決定は、当業者が通常の薬理学的方法を用いて行なうことができる。典型的には、製剤のヒト臨床適用は低い投薬量レベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量レベルを増大させる。あるいは、確立した薬理学的方法を用いた許容し得るin vitro実験を、本方法によって特定された組成物の有用な用量および投与経路を確立するのに用いることができる。
【0170】
非ヒト動物試験において、潜在的製剤の適用は高い投薬量レベルで開始し、所望の効果もはや達成されなくなるまで、または副作用が消失するまで投薬量レベルを低減させる。投薬量は、所望の効果および治療適応に応じて広い範囲に及んでもよい。典型的に、投薬量は、約10マイクログラム/kg(μg/kg)〜約100mg/体重kgの間、好ましくは約100μg/kg〜10mg/体重kgの間であってもよい。あるいは、当業者によって理解されるように、投薬量は患者の表面積に基づいて計算してもよい。
【0171】
本明細書に記載の医薬組成物のための正確な剤形、投与経路および投薬量は、個々の医師が患者の状態を考慮して選択することができる。(例えば、その全体を本明細書に援用する, in "The Pharmacological Basis of Therapeutics"におけるFingl et al. 1975、特に第1章、第1頁を参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、約0.5〜1000mg/患者体重kgであってもよい。投薬量は、患者の必要に応じて、1日または2日間以上の間に与えられる、単回のものであっても、一連の2回または3回のものであってもよい。剤および/または化合物のヒトの投薬量が少なくともいくつかの状態に対して確立されている場合、本発明は、それらと同じ投薬量、または、確立されたヒトの投薬量の約0.1%〜500%の間、より好ましくは25%〜250%の間である投薬量を用いる。ヒトの投薬量が確立されていない場合、例えば、新規に見出された医薬組成物などの場合、好適なヒトの投薬量は、ED50もしくはID50値、または、動物における毒性試験および有効性試験によって認定された、in vitroまたはin vivo試験に由来する他の適切な値から推定することができる。
【0172】
主治医が、毒性または臓器機能不全によって、どのように、および、いつ投与を終了するか、中断するか、調整するかを知っている点に留意する必要がある。逆に、主治医は、臨床効果が適切ではない(毒性を除く)場合に、処置をより高いレベルに調整することも知っている。対象となる障害の管理における投与量の程度は、処置する状態の重篤度および投与経路によって異なる。状態の重篤度は、例えば、部分的に、標準的な予後評価方法によって評価することができる。さらに、用量およびおそらく投与頻度もまた、個々の患者の年齢、体重および反応によって異なる。上記で論じたのと同等の手法を、獣医学で用いることができる。
【0173】
正確な投薬量は薬物ごとに決定するが、ほとんどの場合、投薬量に関するある程度の一般化を行なうことができる。成人ヒト患者のための1日の投薬レジメンは、例えば、0.1mg〜2000mgの間、好ましくは1mg〜500mgの間、例えば5〜200mgの間の各々の有効成分の経口用量であってもよい。他の態様において、0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mgの間、例えば1〜40mgの間の各々の有効成分の静脈内、皮下、筋肉内用量を用いる。薬学的に許容し得る塩の投与の場合、投薬量は遊離塩基として計算することができる。いくつかの態様において、組成物は1日あたり1〜4回投与される。あるいは、本発明の組成物は、静脈内持続点滴によって、好ましくは約1000mg/日までの各々の有効成分の用量で投与することができる。当業者によって理解されるように、特定の状況において、特に悪性の疾患または感染症を効果的かつアグレッシブに治療するために、本明細書に開示する剤および/または化合物を、上記の好ましい投薬量範囲を超える量、さらにはそれをはるかに超える量で投与しなければならないことがある。いくつかの態様において、剤および/または化合物は、持続治療の期間中、例えば1週間もしくはそれ以上、または数ヶ月もしくは数年にわたって投与される。
【0174】
投薬量および投薬間隔は、調節効果、または最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活発部分の血漿レベルをもたらすために、個々に調整することができる。MECは各々の剤および/または化合物について異なるが、in vitroデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投薬量は、個々の特徴および投与経路に依存する。しかしながら、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを、血漿濃度を決定するのに用いることができる。
【0175】
投薬間隔はまた、MEC値を用いて決定することができる。組成物は、10〜90%、好ましくは30〜90%、および最も好ましくは50〜90%の時間、血漿レベルをMECより上に維持するレジメンで投与すべきである。
【0176】
局部投与または選択的取り込みの場合、薬物の有効な局部濃度は、血漿濃度と関連しないことがある。
【0177】
投与する組成物の量は、処置する対象、対象の重量、苦痛の重篤度、投与の様式、および処方医の判断に依存し得る。
【0178】
本明細書に開示される剤および/または化合物(例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体)は、既知の方法を用いて、有効性および毒性について評価することができる。例えば、特定の剤および/または化合物、または、特定の化学部分を共有する剤および/または化合物のサブセットの毒性学は、細胞系、例えば哺乳動物などの細胞系、好ましくはヒト細胞系に対するin vitro毒性を決定することにより確立することができる。かかる試験の結果は、しばしば、動物、例えば哺乳動物など、またはより具体的にはヒトにおける毒性を予測するものである。あるいは、動物モデル、例えばマウス、ラット、ウサギまたはサルなどにおける特定の剤および/または化合物の毒性は、既知の方法を用いて測定することができる。特定の剤および/または化合物の有効性は、いくつかの認められた方法、例えばin vitro方法、動物モデルまたはヒト臨床試験などによって確立することができる。認められたin vitroモデルは、限定することなく、がん、心血管疾患および種々の免疫機能障害を含む、ほとんどすべての種類の状態について存在する。同様に、許容し得る動物モデルは、かかる状態を処置するための化学品の有効性を確立するのに用いることができる。有効性を決定するためにモデルを選択する場合、当業者は、従来技術に基づいて、適切なモデル、用量および投与経路、ならびにレジメンを選ぶことができる。当然ながら、ヒト臨床試験によってヒトにおける剤および/または化合物の有効性を決定することができる。
【0179】
本発明の剤または組成物は、いずれの形態で供給されてもよいが、保存安定性の観点から、用時調製可能な形態、例えば、医療の現場またはその近傍において、医師および/または薬剤師、看護士、もしくはその他のパラメディカルなどによって調製され得る形態で提供してもよい。この場合、本発明の剤または組成物は、これらに必須の構成要素の少なくとも1つを含む1個または2個以上の容器として提供され、使用の前、例えば、24時間前以内、好ましくは3時間前以内、そしてより好ましくは使用の直前に調製される。調製に際しては、調製する場所において通常入手可能な試薬、溶媒、調剤器具などを適宜使用することができる。
【0180】
したがって、本発明はまた、本明細書に開示される剤、化合物または組成物の調製キットであって、レチノイド、および/または検出可能な標識、および/または任意に担体構成物質、および/または任意に剤、化合物または組成物の調製に必要な1または2以上の他の成分を、単独でもしくは組み合わせて含む1個または2個以上の容器を含むキットに関する。本発明はまた、そのようなキットの形で提供される剤、化合物または組成物の必要構成要素にも関する。本発明のキットは、上記のほか、本発明の剤、化合物または組成物の調製方法や投与方法などに関する説明書や、CD、DVD等の電子記録媒体などを含んでいてもよい。また、本発明のキットは、本発明の剤、化合物または組成物を完成するための構成要素の全てを含んでいてもよいが、必ずしも全ての構成要素を含んでいなくてもよい。したがって、本発明のキットは、医療現場や、実験施設などで通常入手可能な試薬や溶媒、例えば、無菌水や、生理食塩水、ブドウ糖溶液などを含んでいなくてもよい。
【0181】
剤、化合物または組成物は、必要に応じて、有効成分を含む1個または2個以上の単位投薬形態を含み得るパックまたはディスペンサー装置中に提供することができる。パックは、例えば、金属またはプラスチックのホイル、例えばブリスターパックなどを含み得る。パックまたはディスペンサー装置には、投与のために指示が付属していてもよい。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬の製造、使用または販売を規制する政府機関が規定する様式の、容器に関連した通知が付属していてもよく、この通知は、ヒトまたは獣医学的な投与のための薬物形態に対する当局による承認を反映したものである。かかる通知は、例えば、米国食品医薬品局により承認された処方薬についてのラベルまたは製品説明書であってもよい。適合性のある医薬担体中に製剤化された本発明の剤および/または化合物を含む組成物もまた、調製され、好適な容器内に入れられ、指示された状態の処置のためにラベルすることができる。
【0182】
本発明の剤、化合物および組成物は、線維性疾患をin vivoで検出することに適している。したがって、これらは、線維性疾患を、非破壊的に、好ましくは非侵襲的に検出することに適している。ここで、「非破壊的に」とは、検出の対象となる組織を破壊しないことを意味し、例えば、検出の対象となる組織が肝臓であれば、開腹して肝臓を露出することや、内視鏡により肝臓表面の画像を得ることなどは含むが、肝臓を切開してその内部を探索することまでは含まない。また、「非侵襲的に」とは、生体を意図的に傷つけることなく、イメージング剤に含まれる標識を検出することを意味し、典型的には生体外からの検出を含むが、口腔、鼻腔、肛門、尿道、耳道、膣などの天然の開口部から内視鏡や超音波プローブなどの検出器を挿入して検出することも含む。
【0183】
本発明の剤、化合物、例えば、式(I)、(II)、(III)および(IV)から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマーおよびコポリマーなど、ならびに、組成物は、多くの異なる用途を有し得る。一部の態様において、本明細書に記載の剤、化合物または組成物は、検出可能な標識を組織の部分または細胞に送達するのに用いることができる。ある態様において、本明細書に記載の剤、化合物または組成物は、疾患または状態、例えば線維化を特徴とする疾患または状態などを診断するのに用いることができる。さらに別の態様において、本明細書に記載の剤、化合物または組成物は、組織の部分または細胞をイメージングするのに用いることができる。一部の態様において、組織は線維組織であってもよい。
【0184】
一態様において、本発明はさらに、本発明の剤、化合物または組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与する工程、および投与された剤、化合物または組成物に含まれる標識を検出する工程を含む、線維性疾患をイメージングする方法に関する。ここで、有効量とは、例えば、投与後の少なくとも1時点において、体内の少なくとも1つの部位で標識が検出できる量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞などを用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタなどのモデル動物における試験により適宜決定することができ、このような試験法は当業者によく知られている。かかる試験の例は、すでに上述した。また、本発明のイメージング剤、化合物または組成物に含まれるレチノイド、標識および任意に担体の用量は当業者に公知であるか、または、上記の試験等により適宜決定することができる。
【0185】
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、肺内、気道内、気管内、気管支内、経鼻、直腸内、動脈内、門脈内、心室内、骨髄内、リンパ節内、リンパ管内、脳内、髄液腔内、脳室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内および子宮内等の経路が含まれる。
【0186】
一態様において、本発明は、本発明の剤、化合物または組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、基準シグナル強度および/または基準シグナル分布とを比較する工程を含む、線維性疾患の判定方法に関する。
【0187】
ここで標識のシグナル強度は、標識から発せられる種々のシグナル、例えば、蛍光シグナル、発光シグナル、磁性シグナル、放射性シグナルなどの強さまたはこれに類する測定値を意味し、典型的には適切な検出手段で測定される。検出手段の具体例は、すでに上述した。シグナル強度は、対象の全体から得られるものであっても、対象の特定の部位または領域から得られるものであってもよい。また、シグナル強度は、測定する部位の面積または体積に対する平均値であってもよいし、積算値であってもよい。シグナル強度が経時的に変化する場合、本方法におけるシグナル強度は、ある特定の時点のものであってもよいし、ある期間について積算されたものであってもよい。
【0188】
標識のシグナル分布は、標識から発せられるシグナルの対象における位置に関する情報を意味し、これは2次元的なものであっても3次元的なものであってもよい。シグナル分布を、解剖学的な臓器の位置関係、または、CT像、MRI像、超音波像などの組織の構造的な情報と照合することにより、シグナルがどの組織から発せられているのかを特定することができる。シグナル分布が経時的に変化する場合、本方法におけるシグナル分布は、ある特定の時点のものであってもよいし、ある期間について積算されたものであってもよい。
本方法においては、シグナル強度とシグナル分布とを組み合わせて評価することも可能である。どの位置にどの程度の強度のシグナルが検出されるかを評価することにより、より精確な判定を行うことができる。
【0189】
基準シグナル強度および/またはシグナル分布は、本発明の剤、化合物または組成物を投与した、線維性疾患を有しないことが分かっている対象において測定した標識のシグナル強度および/またはシグナル分布(「陰性基準シグナル強度および/またはシグナル分布」とも称する)、または、本発明の剤、化合物または組成物を投与した、線維性疾患を有していることが分かっている対象において測定した標識のシグナル強度および/またはシグナル分布(「陽性基準シグナル強度および/またはシグナル分布」とも称する)を意味する。ここで、例えば、被験対象において検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布が陰性基準シグナル強度および/またはシグナル分布と同等(例えば、それと顕著に異ならない)であれば、線維性疾患陰性と判定し、対象のシグナル強度が陰性基準シグナル強度より顕著に高い場合、および/または、対象のシグナル分布が陰性基準シグナル分布より顕著に広い場合、線維性疾患陽性と判定することができる。また、被験対象において検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布が陽性基準シグナル強度および/またはシグナル分布と同等である(例えば、それと顕著に異ならない)場合に、線維性疾患陽性と判定することもできる。
【0190】
本発明はまた、第1の時点における、本発明の剤、化合物または組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、上記剤、化合物または組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含む、線維性疾患をモニタリングする方法に関する。例えば、ここで、第2の時点におけるシグナル強度が第1の時点におけるシグナル強度よりも低ければ、線維性疾患が改善していると判定することができ、また逆に第2の時点におけるシグナル強度が第1の時点におけるシグナル強度よりも高ければ、線維性疾患が悪化していると判定することができる。また、例えば、第2の時点におけるシグナル分布が第1の時点におけるシグナル分布よりも縮小していれば、線維性疾患が改善していると判定することができ、また逆に第2の時点におけるシグナル分布が第1の時点におけるシグナル分布よりも拡大していれば、線維性疾患が悪化していると判定することができる。
【0191】
本方法は、上記の比較する工程の前に、本発明の剤、化合物または組成物を対象に投与する工程、および/または投与された剤、化合物または組成物に含まれる標識を少なくとも2つの別々の時点で検出する工程、および/または、検出した標識のシグナル強度および/またはシグナル分布を決定する工程を含んでもよい。
【0192】
本発明はまた、第1の時点における、本発明の剤、化合物または組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、本発明の剤、化合物または組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含み、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受ける前であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受けた後であるか、または、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置を受けた後であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置より後の第2の処置を受けた後である、線維性疾患に対する処置の効果の判定方法に関する。例えば、ここで、第2の時点におけるシグナル強度が第1の時点におけるシグナル強度よりも低ければ、線維性疾患が処置により改善しており、したがって、処置が成功していると判定することができ、また逆に第2の時点におけるシグナル強度が第1の時点におけるシグナル強度よりも高ければ、線維性疾患が処置により悪化しており、処置があまり成功していないか、不成功であると判定することができる。また、例えば、第2の時点におけるシグナル分布が第1の時点におけるシグナル分布よりも縮小していれば、線維性疾患が処置により改善しており、したがって、処置が成功していると判定することができ、また逆に第2の時点におけるシグナル分布が第1の時点におけるシグナル分布よりも拡大していれば、線維性疾患が処置により悪化しており、処置があまり成功していないか、不成功であると判定することができる。
【0193】
本方法は、上記の比較する工程の前に、対象において線維性疾患を処置する工程、および/または本発明の剤、化合物または組成物を対象に投与する工程、および/または投与された剤、化合物または組成物に含まれる標識を少なくとも2つの別々の時点で検出する工程、および/または、検出した標識のシグナル強度および/またはシグナル分布を決定する工程を含んでもよい。
【0194】
本明細書に開示される本発明の方法において、用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、線維性疾患のイメージング、診断、判定またはモニタリングが企図される場合には、典型的には線維性疾患に罹患しているか、罹患している疑いのある対象を意味し、線維性疾患に対する処置の効果の判定が企図される場合には、典型的には線維性疾患に対する処置を受けているか、または受けようとしている対象を意味する。
【0195】
本明細書に開示される本発明の方法において、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、線維性疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、線維性疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
【0196】
多数の様々な改変が、本発明の精神から逸脱せずになされ得ることを当業者は理解する。したがって、本発明の形態は例示にすぎず、本発明の範囲を制限する意図がないことを明確に理解すべきである。
【実施例】
【0197】
以下の例は、本明細書に記載の態様をさらに説明する目的で提供するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0198】
例1
レチノイド−PGA−DOTAの合成
レチノイド−PGA−DOTAポリマー結合体は、図1に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。PGA(150mg)をDMF(15ml)中に溶解する。レチノール(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。混合物を24時間撹拌する。次いでpNH−Bn−DOTA(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。得られる混合物を24時間撹拌する。次いで、希HCl溶液(0.2M)を添加し、沈殿を誘導する。混合物を2分間撹拌し、10,000rpmで15分間遠心分離する。固形の沈殿を採取し、水で洗浄し、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)で再溶解する。混合物を、24時間水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGA−DOTAポリマー結合体をフリーズドライする。生成物の同一性をH−NMRによって確認する。
【0199】
例2
レチノイド−PGA−DTPAの合成
レチノイド−PGA−DTPAポリマー結合体は、図2に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。PGA(150mg)をDMF(15ml)中に溶解する。レチノール(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。混合物を24時間撹拌する。次いでpNH−Bn−DTPA(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。得られる混合物を24時間撹拌する。次いで、希HCl溶液(0.2M)を添加し、沈殿を誘導する。混合物を2分間撹拌し、10,000rpmで15分間遠心分離する。固形の沈殿を採取し、水で洗浄し、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)で再溶解する。混合物を、24時間水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGA−DTPAポリマー結合体をフリーズドライする。生成物の同一性をH−NMRによって確認する。
【0200】
例3
レチノイド−PGGA−DOTAの合成
レチノイド−PGGA−DOTAポリマー結合体は、図3に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)(PGGA、150mg)をDMF(15ml)中に溶解する。レチノール(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。混合物を24時間撹拌する。次いでpNH−Bn−DOTA(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。得られる混合物を24時間撹拌する。次いで、希HCl溶液(0.2M)を添加し、沈殿を誘導する。混合物を2分間撹拌し、10,000rpmで15分間遠心分離する。固形の沈殿を採取し、水で洗浄し、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)で再溶解する。混合物を、24時間水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGGA−DOTAポリマー結合体をフリーズドライする。生成物の同一性をH−NMRによって確認する。
【0201】
例4
レチノイド−PGGA−DTPAの合成
レチノイド−PGGA−DTPAポリマー結合体は、図4に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)(PGGA、150mg)をDMF(15ml)中に溶解する。レチノール(15mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。混合物を24時間撹拌する。次いでpNH−Bn−DTPA(10mg)、EDC(50mg)およびDMAP(50mg)を添加する。得られる混合物を24時間撹拌する。次いで、希HCl溶液(0.2M)を添加し、沈殿を誘導する。混合物を2分間撹拌し、10,000rpmで15分間遠心分離する。固形の沈殿を採取し、水で洗浄し、重炭酸ナトリウム溶液(0.5M)で再溶解する。混合物を、24時間水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGGA−DTPAポリマー結合体をフリーズドライする。生成物の同一性をH−NMRによって確認する。
【0202】
例5
レチノイド−PGA−[(DOTA)Gd(III)」]の合成
レチノイド−PGA[(DOTA)Gd(III)]ポリマー結合体は、図5に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。レチノイド−PGA−[(DOTA)](45mg)をEDTAバッファー(10ml)に溶解する。EDTA(1ml)中のGd(III)(5mg)の溶液を添加する。混合物を4時間撹拌し、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGA[(DOTA)Gd(III)]を凍結乾燥する。
【0203】
例6
レチノイド−PGA−[(DTPA)Gd(III)」]の合成
レチノイド−PGA[(DTPA)Gd(III)]ポリマー結合体は、図6に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。レチノイド−PGA−[(DTPA)](45mg)をEDTAバッファー(10ml)に溶解する。EDTA(1ml)中のGd(III)(5mg)の溶液を添加する。混合物を4時間撹拌し、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGA[(DTPA)Gd(III)]を凍結乾燥する。
【0204】
例7
レチノイド−PGGA−[(DOTA)Gd(III)」]の合成
レチノイド−PGGA[(DOTA)Gd(III)]ポリマー結合体は、図7に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製する。レチノイド−PGGA−[(DOTA)](45mg)をEDTAバッファー(10ml)に溶解する。EDTA(1ml)中のGd(III)(5mg)の溶液を添加する。混合物を4時間撹拌し、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、水中で透析する。生成物であるレチノイド−PGGA[(DOTA)Gd(III)]を凍結乾燥する。
【0205】
例8
レチノイド−PGGA−[(DTPA)Gd(III)」]の合成
レチノイド−PGGA[(DTPA)Gd(III)]ポリマー結合体は、図8に示す一般的なスキームに従い、以下のようにして調製した。レチノイド−PGGA−[(DTPA)](45mg)をEDTAバッファー(10ml)に溶解した。EDTA(1ml)中のGd(III)(5mg)の溶液を添加した。混合物を4時間撹拌し、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、水中で透析した。生成物であるレチノイド−PGGA[(DTPA)Gd(III)]を凍結乾燥した。PGGA−[(DTPA)Gd(III)]中のGd(III)の量を、ICP−MSで8%と決定した。
【0206】
PGGA−[(DTPA)Gd(III)」]の合成
PGGA−[(DTPA)](45mg)をEDTAバッファー(10ml)に溶解した。EDTA(1ml)中のGd(III)(5mg)の溶液を添加した。混合物を4時間撹拌し、重炭酸ナトリウム溶液(50ml)に注ぎ、水中で透析した。生成物であるPGGA[(DTPA)Gd(III)]を凍結乾燥した。PGGA−[(DTPA)Gd(III)]中のGd(III)の量を、誘導結合プラズマ−質量分析(ICP−MS)で3%と決定した。
【0207】
例9
テキサスレッド−ポリ(L−グルタミン酸)−レチノイド(TR−PGA−レチノイド)の合成
ポリ(L−グルタミン酸)(PGA、95.6mg)を50mlの丸底フラスコに入れた。無水DMF(15ml)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。レチノール(5.5mg)、EDC(12.7mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(1mlのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/ml DMF)およびHOBt(300μL、1mg/ml DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75ml)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60ml)に溶解した。次いで溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGA−レチノイド(93mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0208】
例10
テキサスレッド-ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)−レチノイド(TR−PGGA−レチノイド)の合成
ポリ(L−ガンマ−グルタミルグルタミン)(PGGA、95.5mg)を50mlの丸底フラスコに入れた。無水DMF(6ml)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。レチノール(5.0mg)、EDC(16.3mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(TR)(1mlのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/ml DMF)およびHOBt(300μL、1mg/ml DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75ml)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60ml)に溶解した。溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGGA−レチノイド(91mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0209】
例11
テキサスレッド−ポリ(L−グルタミン酸)−コレステロール(TR−PGA−コレステロール)の合成
ポリ(L−グルタミン酸)(PGA、99.7mg)を50mlの丸底フラスコに入れた。無水DMF(15ml)をフラスコに添加し、懸濁物を30分間撹拌した。コレステロール(5.9mg)、EDC(10.7mg)および微量のDMAPを添加した。混合物を40時間撹拌した。テキサスレッド(1mlのDMF中に1mg)、EDC(300μL、5mg/ml DMF)およびHOBt(300μL、1mg/ml DMF)を、反応混合物に添加した。混合物を15時間撹拌した。次いで反応混合物を0.2N HCl水溶液(75ml)に注いだ。得られた混合物を遠心管に移し、遠心分離した。上清を廃棄した。固形物を0.5N NaHCO水溶液(約60ml)に溶解した。溶液を脱イオン水に対して透析し、0.45μmの酢酸セルロースシリンジフィルターで濾過し、凍結乾燥した。TR−PGA−コレステロール(90mg)を得、H−NMRおよびUV−Vis分光法により特性化した。
【0210】
例12
レチノイド化合物のHSC−T6細胞への取り込み
ビタミンA結合タンパク質レセプターを発現するHSC−T6細胞を、処置の1日前に96穴プレートに播種した(1ウェルあたり培養培地100μl)。例9〜11で調製したTR−PGA−レチノイド、TR−PGGA−レチノイドおよびTR−PGA−コレステロールを水に溶解し、約2〜4mg/mlの原液を作製した。溶液を培養培地で希釈し、室温で15分間インキュベートした。15μlを細胞に添加した。細胞を溶液中でインキュベートした後に、培養培地を除去した。細胞をDPBSで一回洗浄し、新しい培養培地を添加した(1ウェルあたり培養培地100μl)。吸光度(励起波長および放出波長はそれぞれ560nmおよび590nmであった)を、BioTek FLx800 96穴プレート蛍光リーダーで読み取り、記録した。結果を図8に示す。
【0211】
図8は、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−レチノイドの細胞取り込みを、テキサスレッド−非カチオン性ポリマー担体−コレステロールの細胞取り込みと比較する。より大きな吸光度は、より大きな光学密度およびより大きな細胞取り込みを示す。したがって、図8はレチノイド組成物がコレステロール組成物より大きな細胞取り込みをもたらしたことを示す。
【0212】
例13
磁気共鳴イメージング
マウスの像は、膝コイルをプレコントラストおよびポストコントラストで用い、GE 3T MRスキャナーで取得した。以下のイメージングパラメータは、TE:minful、TR=250ms、FOV:8および24スライス/スラブ、および冠状スライス厚1.0mmである。例8で得た試験化合物のレチノイド−PGGA−[(DPTA)Gd(III)]およびPGGA−[(DPTA)Gd(III)]の注入用量は、肝線維症DMAラットモデルに対して、金属イオン0.05mmol/kgである(各化合物、各時点につきn=3)。化合物は麻酔下のマウスに尾静脈を介して注射し、コントラスト剤の注射前、および注射後5分、15分および60分に像を取得する(図9参照)。Gd(III)の相対的光学密度の平均を得、図10に示す。
【0213】
例14
肝硬変モデルマウスのin vivoイメージング
四塩化炭素誘発肝硬変モデルマウス(以下、肝硬変マウスとも記す)および正常マウスを用いて、病巣の生体外からの非侵襲観察を行った。
肝硬変マウスは、4週齢のC57BL/6J雄マウス(チャールスリバー社)にオリーブオイルで1:10に希釈したCCl(1μl/g体重)を週2回の頻度で28週間腹腔内投与して作製した。正常マウス(対照群)として、20週齢のC57BL/6J雄マウスを用いた。
マウスは、飼料由来の胃腸管自家蛍光の影響を減らすため、観察2週間前よりアルファルファフリー飼料を与えて通常飼育した。また、体毛によるシグナル低下を減らすため胸腹部および背部の脱毛処理を行った。
【0214】
生体内のシグナルを検出するための蛍光プローブとして、CyTM5.5標識スクランブルsiRNA(センス:5’−CyTM5.5−CUUACGCUGAGUACUUCGATT−3’(配列番号1)、アンチセンス:5’−CyTM5.5−UCGAAGUACUCAGCGUAAGTT−3’(配列番号2)、以下、siRNA scr−CyTM5.5とも記す)を、担体としてLipotrust SR(北海道システムサイエンス株式会社)(以下、Liposomeとも記す)を用いた。混合前溶液として、100mMのビタミンA(レチノール、Sigma社、以下、VAとも記す、ジメチルスルホキシドに溶解)、1mMのLipotrust SR(ヌクレアーゼフリー水に溶解)およびヌクレアーゼフリー水にて10μg/μlに希釈したsiRNA scr−CyTM5.5を準備した。まず、Lipotrust SRとVAとを1:1(mol/mol)にて混合し、15秒間vortexにて撹拌後、室温遮光にて5分間放置し複合体を形成させた。この複合体に10μg/μlのsiRNA scr−CyTM5.5を添加して静かに混合し、本発明のイメージング剤(VA−Lip−Cy)を得た。得られたイメージング剤の組成は、イメージング剤100μlあたり、レチノ−ル100nmol(28.6mg)、Liposome構成カチオン脂質100nmol(62.6mg)、CyTM5.5標識siRNA 10μgであった。なお、このイメージング剤は、レチノイドが、遅くとも標的細胞に到達するまでに、イメージング剤の外部に少なくとも部分的に露出するものであった。また、VAを含まないイメージング剤(Lip−Cy)を同様にして作製した。これらのイメージング剤を、マウスに、イソフルランガス麻酔下で、尾静脈より体重30gのマウス1頭あたり100μlの量で低速投与した。
【0215】
投与前および投与5分後から90分後まで、IVIS Imaging System(XENOGEN, IVIS(R)200)を用いて、経時的に蛍光部位の観察を行うとともに、蛍光シグナルを定量化した。定量は、発光強度(Counts)ではなく、Tissue Diffusion Model理論による物理量(photon/sec、以下p/sとも記す)にて測定し、平均放射輝度(Avg Radiance、p/s/cm/sr)にて数値化し、さらに励起光源補正を行いグラフ化した(平均効率(Avg Efficacy)表示)。なお、「p/s/cm/sr」は、「photons per second per square centimeter per steradian」の略であり、steradianは立体角の単位である。
また、90分後にマウスを安楽死させて肝臓を摘出し、4%パラホルムアルデヒドにて固定後、パラフィン包埋して薄切標本を作製した。これをαSMA−FITC(SIGMA社、F3777)にて染色し、siRNA scr−CyTM5.5シグナルの細胞内局在を確認した。また、全CyTM5.5陽性面積に対するCyTM5.5およびFITC両陽性面積の割合(αSMA merge/CyTM5.5 positive area)、および、全CyTM5.5陽性細胞数に対するCyTM5.5およびFITC両陽性細胞数の割合(αSMA merge/CyTM5.5 positive cells)を解析した。
【0216】
VA−Lip−Cyを投与した肝硬変マウス(Cirrhosis)および正常マウス(Normal)ともに、投与開始5分後より肝臓(Liver)にシグナルを認めたが、シグナルは肝硬変マウスにおいて顕著に強かった。一方、腸管(Intestine)におけるシグナルは、肝硬変マウスでは殆ど変化しなかったが、正常マウスでは投与開始30分後から徐々に増加した(図12および13)。
また、肝臓標本の染色結果から、VA−Lip−Cy(VA(+))を投与した肝硬変マウスにおいて、αSMA(FITC)およびsiRNA(CyTM5.5)の両方が陽性の細胞が、Lip−Cy(VA(−))を投与した肝硬変マウス、さらにはVA−Lip−Cyを投与した正常マウスのものよりも顕著に多かったことが分かる(図14〜16)。
これらの結果は、肝硬変マウスにおいて本発明のイメージング剤が、αSMA陽性の活性化星細胞を特異的に標識し、線維化病巣にとどまる一方、正常マウスにおいては、本発明のイメージング剤は肝臓に滞留することなく腸管へと移行したことを示すものである。したがって、かかる標識を生体外から観察・定量することにより、線維性疾患の有無や、その程度を非侵襲的かつ簡便に判定または診断することが可能である。また、同一個体で非侵襲的かつ経時的な観察が可能になり、より高い精度で治療評価を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチノイドと検出可能な標識とを含む、線維化を特徴とする細胞および/または組織のイメージング剤。
【請求項2】
レチノイドがレチノールを含む、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項3】
in vivoイメージング用である、請求項1または2に記載のイメージング剤。
【請求項4】
線維性疾患イメージング用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項5】
式(I)、(II)、(III)および(IV):
【化1】

式中、
mは、独立して1または2であり、
nは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、レチノイドおよび検出可能な標識を含む基からなる群から、各々独立して選択され、
、RおよびRは、各々独立して水素またはC1〜4アルキルであり、
o、p、qおよびrは、各々独立して0、1または2以上であり、ここでo、p、qおよびrの合計は2または3以上であり、
ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは検出可能な標識を含む基であり、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはレチノイドである
から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含むポリマー結合体を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項6】
式(I)、(II)、(III)および(IV):
【化2】

式中、
mは、独立して1または2であり、
nは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
およびAは、各々独立して酸素またはNRであり、
、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウム、アルカリ金属、レチノイドおよび検出可能な標識を含む基からなる群から、各々独立して選択され、
、RおよびRは、各々独立して水素またはC1〜4アルキルであり、
o、p、qおよびRは、各々独立して、0、1または2以上であり、ここでo、p、qおよびrの合計は2または3以上であり、
ただし、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは検出可能な標識を含む基であり、R、R、R、R、RおよびRの少なくとも1つはレチノイドである
から選択される少なくとも1個の繰り返し単位を含む、ポリマー結合体。
【請求項7】
ポリマーが、式(V):
【化3】

式中、
sは、独立して1または2であり、
およびAは、各々独立して酸素またはNR12であり、
12は、水素またはC1〜4アルキルであり、
10およびR11は、任意に置換されたC1〜10アルキル、任意に置換されたC6〜20アリール、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から、各々独立して選択される
で表される少なくとも1個の繰り返し単位をさらに含む、請求項6に記載のポリマー結合体。
【請求項8】
ポリマーが、式(VI):
【化4】

式中、R13は水素、アンモニウムまたはアルカリ金属である
で表される少なくとも1個の繰り返し単位をさらに含む、請求項6または7に記載のポリマー結合体。
【請求項9】
検出可能な標識が、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム111からなる群から選択される金属を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項10】
検出可能な標識が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)からなる群から選択される配位子を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項11】
検出可能な標識が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびテトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)からなる群から選択される配位子を含む、請求項6〜10のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項12】
検出可能な標識が、常磁性金属キレートである、請求項6〜11のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項13】
常磁性金属キレートが、
【化5】

を含む、請求項12に記載のポリマー結合体。
【請求項14】
検出可能な標識が色素である、請求項6〜11のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項15】
色素がテキサスレッドを含む、請求項14に記載のポリマー結合体。
【請求項16】
mが1である、請求項6〜15のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項17】
mが2である、請求項6〜15のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項18】
nが1である、請求項6〜17のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項19】
nが2である、請求項6〜17のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項20】
sが1である、請求項7〜19のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項21】
sが2である、請求項7〜19のいずれか一項に記載のポリマー結合体。
【請求項22】
請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体を製造する方法であって、式(VII)で表される繰り返し単位および式(VIII)で表される繰り返し単位
【化6】

式中、
zは、1または2であり、
およびA10は酸素であり、および
14、R15およびR16は、各々独立して、水素、アンモニウムおよびアルカリ金属からなる群から選択される
の少なくとも1種を含むポリマー反応物質を、溶媒に溶解または部分的に溶解し、溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質を形成する工程、および
溶解または部分的に溶解されたポリマー反応物質と、第2の反応物質(ここで、第2の反応物質は検出可能な標識を含む基またはレチノイドを含む)とを反応させる工程、および
第3の反応物質(ここで、第3の反応物質は検出可能な標識を含む基、配位子またはレチノイドを含み、ただし、第2の反応物質が検出可能な標識を含む基または配位子を含む場合、第3の反応物質はレチノイドを含み、第2の反応物質がレチノイドを含む場合、第3の反応物質は検出可能な標識を含む基または配位子を含む)を添加する工程
を含む、前記方法。
【請求項23】
第2の反応物質がレチノイドを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第3の反応物質が検出可能な標識を含む基を含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
第3の反応物質が配位子を含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
配位子が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、およびシュウ酸塩(ox)からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第4の反応物質(ここで、第4の反応物質は金属を含む)を添加する工程をさらに含む、請求項22〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
金属が、Gd(III)、イットリウム−88およびインジウム−111からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体を含む、線維性疾患の診断剤。
【請求項30】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤と、薬学的に許容し得る賦形剤、担体および希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む組成物。
【請求項31】
検出可能な標識を組織の部分に送達する方法であって、組織の部分または細胞と、請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤および/または請求項30に記載の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項32】
組織の部分をイメージングする方法であって、組織の部分または細胞と、請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項30に記載の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項33】
疾患または状態を診断する方法であって、組織の部分または細胞と、請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤および/または請求項30に記載の組成物の少なくとも1つとを接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項34】
組織が線維組織である、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
線維性疾患をイメージングする方法であって、有効量の請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項30に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与する工程、および投与されたイメージング剤、ポリマー結合体または組成物に含まれる標識を検出する工程を含む、前記方法。
【請求項36】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤および/または請求項30に記載の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布を、基準シグナル強度および/または基準シグナル分布と比較する工程を含む、線維性疾患の判定方法。
【請求項37】
第1の時点における、請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤および/または請求項30に記載の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、前記対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含む、線維性疾患のモニタリング方法。
【請求項38】
第1の時点における、請求項1〜5のいずれか一項に記載のイメージング剤および/または請求項6〜21のいずれか一項に記載のポリマー結合体および/または請求項29に記載の診断剤および/または請求項30に記載の組成物を投与した対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布と、第1の時点より後の第2の時点における、前記対象から検出された標識のシグナル強度および/またはシグナル分布とを比較する工程を含み、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受ける前であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する処置を受けた後であるか、または、第1の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置を受けた後であり、第2の時点が、対象が線維性疾患に対する第1の処置より後の第2の処置を受けた後である、線維性疾患に対する処置の効果の判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−501963(P2012−501963A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511909(P2011−511909)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/JP2009/004521
【国際公開番号】WO2010/029760
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】