説明

線維症の処置のためのCCR2アンタゴニスト

例えば、限定されるものでないがコラーゲンマトリックス沈着および肺胞虚脱を包含する線維性過程と関連する前線維性マーカーの調節のためのMCP−1/CCR2アンタゴニスト療法を挙げることができる、線維症関連疾患の制御若しくは逆転に、抗MCP−1/CCR2アンタゴニスト療法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺線維症、とりわけ通常型間質性肺炎の予防および処置のためのCCR2へのCCL2結合の使用方法および抗CCL2抗体のようなアンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
通常型間質性肺炎(UIP)は肺内の蜂窩形成(honeycombing)の存在を特徴としかつそれにより慣例に診断される慢性の消耗性の間質性肺疾患である。蜂窩形成はコラーゲン沈着の増大により生じ、従って肺内の弾性を低下させかつ正常な肺胞構造の収縮および究極的な虚脱を引き起こす。蜂窩形成および線維症の程度は肺内で非常に不均一であり、過剰なコラーゲンの密な領域はしばしば正常な肺実質若しくは単球肺浸潤の豊富な間質組織に隣接する。大部分の患者は診断の時点で中程度ないし進行した臨床疾患を有し、そして処置にもかかわらず悪化する。
【0003】
CXCケモカインファミリーは、多様な白血球の輸送の促進、血管新生および血管リモデリングの調節、ならびに、肺線維症で間葉前駆細胞(線維細胞としてもまた知られる)を循環している線維細胞のような間葉前駆細胞の動員および輸送の促進に関与するサイトカインの多面的ファミリーである。
【0004】
正常な肺内で、常在性線維芽細胞の大型プールが継続的にコラーゲンを生成かつ分解し、それにより肺が感染、炎症若しくは他の病態生理後に、および傷害後に再構築することを可能にする。線維芽細胞はTGFb1のような多様な増殖因子に応答してコラーゲンを生成する。さらに、TGFb1は、UIPの肺組織で一般に見出される筋線維芽細胞への線維芽細胞分化を誘導する。筋線維芽細胞は、コラーゲンを生成し、ならびにα−平滑筋アクチンおよび従って収縮特性を有することが可能な分化した細胞である。筋線維芽細胞は従って潜在的に肺胞虚脱に寄与しうる。創傷治癒の正常な経過において、線維芽細胞は創傷閉鎖を指図するためにコラーゲンおよび増殖因子を生成する。組織構造が一旦復帰されれば、線維芽細胞のコラーゲン生成が減少しかつ該細胞がアポトーシスを受け、従って過剰な瘢痕形成を予防する。UIP患者の肺で見出される顕著な線維芽細胞増殖が存在する。従って、UIPの線維芽細胞は線維症の部位に存続し、異常な過剰コラーゲン沈着に継続的に追加する。UIP患者は肺移植の一般的なレシピエントの1種であり、そしてこれらの患者で移植片は最終的に線維性となりうる。
【0005】
以前の研究は、非線維性組織から単離した線維芽細胞に比較して線維症の部位から単離した線維芽細胞での表現型の差違を示した。例えば、UIP患者の肺から単離した線維芽細胞はIL−13受容体サブユニットの増大された発現を有する。CCR2は肺線維細胞上で発現され、そしてCCR2は呼吸傷害後のこれらの細胞の動員および活性化の双方を調節する。受容体ノックアウトマウス若しくはリガンド中和いずれかによるin vivoでのCCR2シグナル伝達の阻害は、線維症の複数の動物モデルにおけるより少ないコラーゲン沈着をもたらす。CCL2(CC−ケモカインリガンド2、単球走化性タンパク質1、MCP1)はCCR2に結合する。CCR2は主として単球、上皮細胞および内皮細胞上で発現される。増大されたレベルのMCP1がUIPを伴う患者で記述されている。マウスにおけるCCR2受容体のリガンドはCCL2(JE若しくは単球走化性タンパク質1[MCP]−1としてもまた知られる)、CCL7(MCP−3)およびCCL12(MCP−5)を包含し、従って、マウスモデルデータに基づく仮定は、ケモカインおよびケモカイン受容体分布に関してヒトの肺環境を正確に反映しないかもしれない。
【0006】
76アミノ酸残基を含有する8.6kDaのタンパク質、単球走化性タンパク質1(M
CP−1、CCL2、CCR2のリガンド、GenBank NP_002973)は、サイトカインのケモカイン−β(若しくはC−C)ファミリーのメンバーである。MCP−1は、単球、血管内皮細胞、平滑筋細胞、糸球体メサンギウム細胞、骨芽細胞およびヒト肺2型様(pulmonary type−2−like)内皮細胞を包含する多様な細胞型により発現される。MCP−1は、単球流入および組織中のその後の活性化を促進することにより炎症性疾患の開始および進行において活発な役割を演じていると考えられる。MCP−1は単球に対し走化性であるがしかし好中球に対してはそうでない。それは、IL−2により活性化される細胞に類似であるCHAK(CC−ケモカイン活性化型キラー)として知られるキラー細胞の増殖および活性化を誘導し得る。それは、細胞表面抗原(CD11c、CD11b)の発現ならびにサイトカインIL1およびIL6の発現を調節する。MCP−1はヒト好塩基球の強力な活性化因子であり、脱顆粒およびヒスタミンの放出を誘導する。
【0007】
従って、UIPとして知られる肺不全に至る病態生理の特質を表す患者についてのモニターおよび管理方法、ならびに肺移植に対する必要性を回避しかつ少なくとも異種移植片利用における安全性および生存を高めることを可能にする方法、ならびにその中でのMCP−1の病理学的作用の理解および治療方法に対する、医学分野における必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
[発明の要約]
本発明は、本明細書で定義されるところの受容体を発現する細胞においてCCR2、CCR2A若しくはCCR2Bを包含するそのアイソフォーム若しくはバリアントと関連する生物学的機能若しくは生物活性を予防する最低1種の単離されたCCR2アンタゴニスト、あるいは、MCP−1/CCL2若しくはCCR2を結合するかまたはその同族のリガンド(1種若しくは複数)とのCCR2の結合を予防しかつそれにより哺乳動物被験体の細胞、組織、器官におけるCCR2の生物学的機能を阻害するアンタゴニストの有効量を含んでなる組成物を接触若しくは投与することを含んでなる、被験体における線維症の予防、遅延若しくは逆転方法を提供する。本発明の方法の一局面において、被験体は間質性特発性肺炎に関する間質の病状および肺胞線維症を有する患者であり、より具体的には、患者は通常型間質性肺炎と診断されている。
【0009】
本発明の方法は、本明細書で定義されるところの受容体を発現する細胞においてCCR2、CCR2A若しくはCCR2Bを包含するそのアイソフォーム若しくはバリアントと関連する生物学的機能若しくは生物活性を予防するCCR2アンタゴニストを用いて実施しうる。本発明の一局面において、CCR2アンタゴニストは、MCP−1/CCL2若しくはCCR2を結合するかまたはその同族のリガンド(1種若しくは複数)とのCCR2の結合を予防しかつそれによりCCR2の生物学的機能を阻害する抗体、合成若しくは天然の配列のペプチドおよび小分子アンタゴニストを包含する。
【0010】
を含んでなる、細胞、組織、器官若しくは動物における間質性特発性肺炎に関するMCP−1関連の間質の病状および肺胞線維症の診断方法もまた提供される。
【0011】
一態様において、該抗体のリガンド結合部分は配列番号27および28を含んでなる。一局面において、本発明は、配列番号27若しくは28を含んでなる最低1種の可変領域を含んでなる最低1種の単離された哺乳動物抗MCP−1抗体を提供する。
【0012】
別の局面において、本発明は、(i)配列番号6、7および9のH鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部;若しくは(ii)配列番号13、14および16のL鎖CDRアミノ酸配列の全部のいずれかを含んでなる最低1種の単離された哺乳動物抗MCP−1抗体を提供する。
【0013】
本発明はさらに、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書に記述されるところの、細胞、組織、器官、動物若しくは患者において、および/またはMCP−1関連状態の前、後若しくは間に最低1種の関連状態を調節若しくは処置するための治療上有効な量を投与するための最低1種の抗MCP−1抗体の方法若しくは組成物を提供する。別の局面において、本発明は、(i)配列番号6、7および8若しくは9のH鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部;または(ii)配列番号13、14および15若しくは16のL鎖CDRアミノ酸配列の全部のいずれかを含んでなる最低1種の単離された哺乳動物抗MCP−1抗体を提供する。
【0014】
本発明は、本発明の最低1種の抗MCP−1抗体の治療上若しくは予防上有効な量の最低1種の組成物、装置および/若しくは送達方法もまた提供する。
【0015】
本発明は本明細書に記述されるいかなる発明もさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】非線維性肺組織から単離された線維芽細胞と比較した(1という値に対し正規化した)UIP線維芽細胞中の線維症と関連する遺伝子、すなわちaSMA:PCOL1;PCOL3;CTGF;TGFβ−1;TGFβR1;TGFβR2;IL13Ra1;IL13Ra2の発現の倍数増大(fold increase)を各棒が表す棒グラフを示す。
【図2】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるaSMA発現に対するTGFβ1、PDGFおよびCCL2の影響を示す棒グラフである。
【図3】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるプロコラーゲンI(A)およびプロコラーゲンIII(B)遺伝子発現に対するTGFβ1、PDGFおよびCCL2の影響を示す2個の棒グラフである。
【図4】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるTGFb1遺伝子発現に対するTGFβ1、PDGFおよびCCL2の影響を示す棒グラフである。
【図5】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるCTGF遺伝子発現に対するTGFβ1、PDGFおよびCCL2の影響を示す棒グラフである。
【図6】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるTGFβRI(A)およびTGFβRII(B)遺伝子発現に対するTGFβ1、PDGFおよびCCL2の影響を示す2個の棒グラフである。
【図7】非線維性および線維性肺組織由来の線維芽細胞によるIL13Ra1(A)およびIL13Ra2(B)遺伝子発現に対するTGFb1、PDGFおよびCCL2の影響を示す2個の棒グラフである。
【0017】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の詳細な記述]
略語
Ab 抗体、ポリクローナル若しくはモノクローナル;Ig 免疫グロブリン;Mab
モノクローナル抗体;V 抗体の可変ドメイン;C 抗体の定常ドメイン;H 抗体のH鎖;L 抗体のL鎖;HRCT 高解像度コンピュータ断層撮影法;PDGF−AB 血小板由来増殖因子α/β;CTGF:結合組織増殖因子;CXC CXCサブクラスのケモカイン;aSMA α−平滑筋アクチン;PCOL1 プロコラーゲンI;PCOL3:プロコラーゲンIII;TGFβ1 トランスフォーミング増殖因子β−1;TGFβR1 TGFβ受容体I型;TGFβR2:TGFβ受容体II型;IL13Ra1;インターロイキン−13受容体α1サブユニット;IL13Ra2:インターロイキン−13受容体α2サブユニット。
【0019】
定義
本明細書の「抗体」という用語は最も広範な意味で使用される。本明細書で使用されるところの「抗体」は、抗体全体およびそれらのいずれかの抗原結合フラグメント若しくは一本鎖を包含する。従って、抗体は、限定されるものでないがH若しくはL鎖の最低1個の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、H鎖若しくはL鎖可変領域、H鎖若しくはL鎖定常領域、枠組み(FR)領域あるいはそれらのいずれかの部分、あるいは、本発明の抗体に組み込み得る結合タンパク質の少なくとも一部分を挙げることができる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含んでなるいかなるタンパク質若しくはペプチド含有分子も包含する。「抗体」という用語は、抗体模倣物を包含する、あるいは一本鎖抗体およびそれらのフラグメントを包含する抗体またはその指定されるフラグメント若しくは部分の構造および/若しくは機能を模倣する抗体の部分を含んでなる、抗体、消化フラグメント、それらの指定される部分およびバリアントを包含することをさらに意図している。機能的フラグメントは予め選択された標的に対する抗原結合フラグメントを包含する。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、すなわちVL、VH、CLおよびCHドメインよりなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2個のFabフラグメントを含んでなる二価フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインよりなるFdフラググメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインよりなるFvフラグメント、(v)VHドメインよりなるdAbフラグメント(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);ならびに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を包含する。さらに、Fvフラグメントの2ドメイン、VLおよびVHが別個の遺伝子によりコードされるとは言え、それらは、組換え法を使用して、VLおよびVH領域が対形成して一価分子を形成する単一タンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら 1988 Science 242:423−426、およびHustonら 1988 Proc.Natl.Acad Sci.USA 85:5879−5883を参照されたい)としてそれらが作成されることを可能にする合成リンカーにより結合し得る。こうした一本鎖抗体もまた抗体の「抗原結合部分」という用語内に包括されることを意図している。抗体フラグメントは、当業者に既知の慣習的技術を使用して得られ、そして該フラグメントを無傷の抗体がそうであると同一の様式で利用性についてスクリーニングする。
【0020】
「CCR2」により、ヒトCCR2A(MCP−1RA、NP_000638)および/若しくはヒトCCR2B(MCP−1RB、NP_000639)、ならびに天然に存在するすなわち内因性の対応する哺乳動物CCR2タンパク質のものと同一であるアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば組換えタンパク質)を意味している。CCR2AすなわちアイソフォームAは、フレームシフトをもたらすコーディング領域中の代替スプライシングおよび下流の終止コドンの使用によりCCR2BすなわちアイソフォームBと異なるC末端を有しかつそれより14アミノ酸より長い(Charoら 1994.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91(7):2752−2756)。本明細書で定義されるところのCCR2は、哺乳動物CCR2の成熟受容体タンパク質、多形若しくは対立遺伝子バリアントおよびアイソフォーム(例えば代替スプライシング若しくは他の細胞過程により産生される)、ならびに前述の改変若しくは未改変形態(例えばグリコシル化、未グリコシル化)を包含する。こうしたタンパク質は、例えば哺乳動物CCR2を天然に産生する供給源から回収若しくは単離し得る。
【0021】
「CCR2アンタゴニスト」は、本明細書で定義されるところのCCR2A若しくはCCR2Bまたは他のアイソフォーム若しくはバリアントを表示する細胞でCCR2A若しくはCCR2Bと関連する生物学的機能若しくは生物活性を予防する。本発明の範囲内に包含されるアンタゴニストは、MCP−1/CCL2若しくはCCR2を結合するかまたはCCR2のその同族のリガンド(1種若しくは複数)との結合を予防しそしてそれによりCCR2の生物学的機能を阻害する抗体、合成若しくは天然の配列のペプチドおよび小分子アンタゴニストを包含する。従って、阻害剤は、受容体を結合するアンタゴニスト(例えば抗体、天然のリガンドの変異体、小分子量有機分子、リガンド結合の他の競合的阻害剤)、およびそれに結合することなく受容体機能を阻害する物質(例えば抗イディオタイプ抗体)を包含する物質を指す。
【0022】
「通常型間質性肺炎」若しくは「UIP」により、「特発性肺線維症」若しくは「IPF」および「特発性線維性肺胞炎」として臨床上および組織学的にもまた既知である。それは特発性間質性肺炎(IIP)の6種の組織学的サブタイプの最も一般的なものである。他のIIPは:非特異的間質性肺炎(NSIP)、閉塞性細気管支炎性器質化肺炎(BOOP);呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(ILD);剥離性間質性肺炎;および急性間質性肺炎(AIP)である。
【0023】
「MCP−1」により、NCBI記録受託番号NP_002973に参照されかつMCP(単球走化性タンパク質)、SMC−CF(平滑筋細胞走化性因子)、LDCF(リンパ球由来走化性因子)、GDCF(神経膠腫由来単球走化性因子)、TDCF(腫瘍由来走化性因子)、HC11(ヒトサイトカイン11)、MCAF(単球走化活性化因子(monocyte chemotactic and activating factor))として多様に知られる76アミノ酸配列を意味している。遺伝子記号はSCYA2、ヒト第17染色体上のJE遺伝子であり、そして新たな呼称はCCL2である(Zlotnik、Yoshie 2000.Immunity 12:121−127)。JEはヒトMCP−1/CCL2のマウスホモログである。
【0024】
MCP−1アンタゴニスト小分子は、MCP−1活性を阻害しかつ潜在的治療薬を使用し得るいかなる適する化合物も指す。PCT公開第WO 9905279号(1999)、同第WO 9916876号(1999)、同第WO 9912968号、同第WO 9934818号、同第WO 9909178号、同第WO 9907351号、同第WO 9907678号、同第WO 9940913号、同第WO 9940914号、同第WO 0046195号、同第WO 0046196号、同第WO 0046197号、同第WO 0046198号、同第WO 0046199号、同第WO 9925686号、同第WO 0069815号、同第WO 0069432号、同第WO 9932468号、同第WO 9806703号、同第WO 9904770号、同第WO 99045791号明細書(それらのそれぞれは引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)に開示されるところの、CCR2BへのCCL2結合を阻害する能力および/またはCCR1若しくはCCL2それ自身の阻害を伴う、インドール誘導体、環状アミン誘導体、ウレイド誘導体、複素環、アニリドおよび機能的ピロールのようなこうした化合物は当該技術分野で既知である。
【0025】
本明細書で使用されるところの、本発明で使用されるところの「処置すること」は、慢性拒絶の機能的若しくは組織学的徴候を「制御すること」および「逆転すること」を含んでなる双方の処置を意味している。
【0026】
本発明で処置しうる哺乳動物は、乳牛、ウマなどのような家畜哺乳動物(livestock mammals)、イヌ、ネコ、ラットのような家畜(domestic animal)、およびヒト、好ましくはヒトを包含する。
【0027】
引用
本明細書に引用される全部の刊行物若しくは特許は、それらが本発明の時点での従来技術を示すため、かつ/若しくは本発明の記述および実施可能性(enablement)を提供するために引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる。刊行物は、いかなる学術若しくは特許刊行物、または全部の記録、電子若しくは印刷形式を包含するいずれかの媒体形式で利用可能のいかなる他の情報も指す。以下の参考文献は引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる:Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク(1987−2006;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);HarlowとLane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1989);Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク(1994−2006;Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク(1997−2006。
【0028】
本発明の通常型間質性肺炎(UIP)および特発性肺線維症化合物
MCP−1はケモカイン受容体CCR2を結合しかつそれを通じてシグナルを発することが既知である。CCR2は、単球、T細胞、B細胞および好塩基球を包含する多くの細胞で発現される7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体である。2種のMCP−1特異的受容体CCR2AおよびCCR2Bがクローン化されており、それらはナノモル(nM)濃度のMCP−1に応答してシグナルを発する。CCR2A(CC−CKR2A)およびC
CR2B(CC−CKR2A)は、代替スプライスされたカルボキシル尾部をもつ2種のMCP−1特異的受容体をコードする2種のcDNAを表す。MCP−1は高親和性で双方のアイソフォームに結合する。MCP−1は、CCR2Bを発現する細胞中のカルシウム流動を誘導するがしかしCCR2Aを発現する細胞ではしない。5倍より少ないMCP−1は、CCR2Aを発現する細胞と比較してCCR2Bを発現する細胞で走化性を誘導する。
【0029】
ヒトMCP−1に対するある種の機能および配列の相同性をもつ他のタンパク質が既知である。MCP−1(GenBank NP_002973)にとりわけ類似であるのはMCP−2(GenBank NP_005614)およびエオタキシン(GenBank P_51671)であり;MCP−2はMCP−1に対する61.8パーセントおよびエオタキシン−1は63.2パーセントの配列同一性を有する。ヒトの恒常性機構および病理におけるこれらのタンパク質の活性の範囲および関与の範囲はMCP−1のホモログについてほど良好に理解されていない。例えば、MCP−2(CCL8と改名された)はMCP−1およびMCP−3(CCL7と改名された、Genbank NP_006264)に緊密に関係し、そしてその機能的受容体としてCCR1ならびにCCR2B双方を使用する。MCP−3はD6と呼称される受容体に結合する。MCP−3はCCR10およびCCR1にもまた結合する。MCP−3タンパク質(97アミノ酸)の配列はMCP−1と74パーセントの同一性およびMCP−2と58パーセントの相同性を示す。分泌型MCP−3はN−グリコシル化されることにおいてMCP−1と異なる。MCP−4(CCL13と改名された、Genbank NP_005399)は、3種の既知の単球走化性タンパク質と56〜61パーセントの配列同一性を共有し、そしてエオタキシン−1と60パーセント同一である。MCP−4の機能はMCP−3およびエオタキシンのものに高度に類似であるようである。MCP−3と同様、MCP−4は単球およびTリンパ球に対する強力な化学誘引物質である。それは好中球に対し不活性である。単球上で、MCP−4は、MCP−1、MCP−3、RANTES(CCL5)およびエオタキシンを認識する受容体すなわちCCR1およびCCR3受容体に結合し、そしてエオタキシン−1で完全な交差脱感作を示す。MCP−5はマウスCCケモカインでありかつヒトMCP−1に最も緊密に関係する(66%アミノ酸同一性)。MCP−5の遺伝子記号はSCYA12である(CCL12と改名された)。ケモカイン受容体CCR2でトランスフェクトした細胞はMCP−5に応答することが示されている。サイトカインおよびケモカインに関する一般的情報は、世界的インターネットでおよび現在の分類体系について入手可能である。Zlotnik A.、Yoshie O.2000.Chemokines:a new classification system and their role in immunity.Immunity 12:121−127。
【0030】
前述の論考は、アンタゴニストがCCR2若しくはそのリガンドCCL2、CCL7、CCL8の1種に対するいずれかの直接の作用によりCCR2結合の生物学的機能を予防しうることを強調するようにはたらく。本発明の一態様において、該アンタゴニストはMCP−1/CCL2に結合しかつCCR2に結合するその能力を中和する。
【0031】
抗CCR2抗体は米国特許第US6084075号、同第US6458353号および同第US6696550号明細書に開示されている。本発明の方法の一態様において、哺乳動物CCR2を有する細胞のケモカインとの生物学的相互作用の阻害方法は、有効量の抗体またはCCR2若しくは前記受容体の一部分に結合するその機能的フラグメントと前記細胞を接触させることを含んでなる。一態様において、該抗体は、モノクローナル抗体(mAb)LS132.1D9(1D9)すなわちヒトCCR2若しくはヒトCCR2の一部分への結合について1D9と競合し得る抗体である。前述の抗体の機能的フラグメントもまた予見される。
【0032】
MCP−1を結合することが可能な抗体が報告されている。すなわち、日本国特許第JP9067399号明細書は単離された血液細胞から得られる抗体を開示し、また、同第JP05276986号明細書はIgM抗ヒトMCP−1を分泌するハイブリドーマを開示する。より最近、MCP−1を包含する複数のβ−ケモカインを結合することが可能な抗体(第WO03048083号明細書)およびエオタキシンもまた結合するMCP−1結合抗体(第US20040047860号明細書)が開示された。ヒトMCP−1/CCL2のマウスホモログ若しくはヒトMCP−1/CCL2を選択的に結合かつ中和する抗体が出願すなわち同時継続中の米国特許出願第11/170,453号および同第60/682,654号明細書(それらの内容および教示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0033】
本発明の一態様において、CCR2アンタゴニストは、出願すなわち同時継続中の米国特許出願第11/170,453号明細書に開示されるところのC1142と呼称される細胞株により産生され得るC775と呼称される抗ヒトMCP−1/CCL2抗体、本明細書で定義されるところのそのヒト化若しくは再構成(reshaped)形態、切断型、または結合フラグメントのようなバリアントである。別の態様において、CCR2アンタゴニストは、本明細書で定義されかつ出願すなわち同時係属中の特許出願第WO2006125202号明細書(その内容および教示は引用することにより本明細書に組み込まれる)に開示されるところのCNTO888と呼称される抗ヒトMCP−1/CCL2抗体、そのバリアント、切断型若しくは結合フラグメントである。
【0034】
一態様において、配列番号27および28を含んでなるH鎖およびL鎖双方の可変領域を含んでなるMCP−1抗体。該抗体は最低1種のH鎖可変領域および最低1種のL鎖可変領域を含み得、前記抗体は、配列番号6、7、9、13、14および16のH鎖およびL鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部を含んでなる。該抗体は、最低1種のH鎖および最低1種のL鎖を含んでなる最低1種の可変領域を含んでなり、前記MCP−1抗体は配列番号27および28を含んでなるH鎖およびL鎖双方の可変領域を含んでなる。該抗体は、最低1種のH鎖可変領域および最低1種のL鎖可変領域を含み得、前記抗体は配列番号6、7、9、13、14および16のH鎖およびL鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部を含んでなる。該抗体は、配列番号6、7、9、13、14および16の最低1種のアミノ酸配列を有する最低1個のH鎖若しくはL鎖CDRを含み得る。該抗体は、あるいは、配列番号6〜26よりなる群から選択されるH若しくはL鎖の相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分をさらに含んでなり;ならびに、場合によってはヒト免疫グロブリンの少なくともCH1、ヒンジ、CH2若しくはCH3をさらに場合によっては含んでなる枠組み領域と機能上関連する、配列番号2〜5の最低1種のH鎖若しくはL鎖可変領域を含み得る。
【0035】
CCR2を結合しかつ拮抗活性を有する能力を有するMCP−1/CCL2の切断(truncation)、バリアント、変異体タンパク質すなわち「ムテイン」もまた本発明の方法を実施するのに使用しうる。第WO05037305A1号明細書で教示されるところの、in vitroで受容体に結合しかつアゴニスト特性を有するがしかしin
vivoで天然のサイトカインを拮抗し得かつ抗炎症活性を有する絶対単量体(obligate monomer)をもたらすように水素結合のパターンを変える二量体界面の単一アミノ酸置換を有するCCL2のようなホモ二量体形成ケモカインのバリアントは、本発明の実施において有用なバリアントの1つである。MCP 1のペプチドアンタゴニストは、関節炎のマウスモデルで疾患の発症を予防することおよび疾患の症状を低下させることの双方を示した切断型MCP−1(9−76)である(Jiang−Hong Gongら、J.Exp.Med.1997、186:131)。
【0036】
CCR2/CCL2発現の調節
CCR2のそのリガンドとの相互作用の代替の一拮抗方法は、例えばRNAサイレンシングの方法を使用してCCR2若しくはそのリガンド、具体的にはMCP−1/CCL2の発現をノックダウンすることによる。従って、別の態様において、本発明の方法の実施において有用な化合物は、MCP−1配列を標的としかつMCP−1遺伝子発現を妨害するか若しくはCCR2を標的としかつCCR2遺伝子発現を妨害する、センス若しくはアンチセンスの向きのオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド、ならびに一本鎖若しくは二本鎖核酸分子(例えばsiRNA)を包含する核酸である。
【0037】
遺伝子発現は、siRNA、shRNA、アンチセンス分子およびDNAザイム(DNAzyme)の使用によるを包含するいくつかの異なる方法で調節し得る。siRNAおよびshRNA双方はRNAi経路を介して作動し、そして遺伝子の発現を抑制するのに成功裏に使用されている。RNAiは最初に虫で発見され、そしてdsRNAに関する遺伝子サイレンシングの現象はFireとMello(Fireら、1998.Nature 391:806)により植物で最初に報告され、そして植物細胞がRNAウイルスへの感染と闘うための一方法であると考えられている。この経路では、長いdsRNAウイルス産物がダイサー様酵素により長さ21〜25bpのより小さいフラグメントにプロセシングされ、そしてその後二本鎖分子がほどかれ、そしてRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に負荷される。遺伝子特異的でなくかつ細胞中のタンパク質合成の全体的停止に至るいわゆるインターフェロン応答の誘導を回避するためにdsRNA分子が長さ30bpより短くなければならないという顕著な差違を伴い、哺乳動物細胞で類似の経路が同定された。
【0038】
合成siRNAは1遺伝子を特異的に標的とするように設計し得、そしてそれらはin
vitro若しくはin vivoで細胞に容易に送達され得る。shRNAはsiRNA分子のDNA同等物であり、そして細胞のゲノムに取り込まれかつその後すべての分裂周期の間に複製されるという利点を有する。
【0039】
DNAザイムもまた遺伝子発現を調節するのに使用されている。DNAザイムは一本鎖RNAを切断する触媒的DNA分子である。それらは標的RNA配列に高度に選択的であり、そしてそれ自体、メッセンジャーRNAのターゲッティングにより特定の遺伝子を下方制御するのに使用し得る。
【0040】
RNA干渉は小分子干渉RNA(siRNA)により媒介される動物における配列特異的翻訳後遺伝子サイレンシングの過程を指す(Zamoreら、2000、Cell、101、25−33;Fireら、1998、Nature、391、806;Hamiltonら、1999、Science、286、950−951;Linら、1999、Nature、402、128−129;Sharp、1999、Genes & Dev.、13:139−141;およびStrauss、1999、Science、286、886)。細胞中のdsRNAの存在は、未だ完全に特徴付けられてなければならない機構によりRNAi応答を誘発する。この機構は、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断をもたらすタンパク質キナーゼPKRおよび2’,5’−オリゴアデニル酸合成酵素のdsRNA媒介性の活性化から生じるインターフェロン応答のような二本鎖RNA特異的リボヌクレアーゼを必要とする他の既知の機構と異なると思われる(例えば米国特許第6,107,094号;同第5,898,031号明細書;Clemensら、1997、J.Interferon & Cytokine Res.、17、503−524;Adahら、2001、Curr.Med.Chem.、8、1189を参照されたい)。
【0041】
細胞中の長いdsRNAの存在は、ダイサーと称されるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する(Bass、2000、Cell、101、235;Zamoreら、2
000、Cell、101、25−33;Hammondら、2000、Nature、404、293)。ダイサーは、小分子干渉RNA(siRNA)として知られるdsRNAの短い片へのdsRNAのプロセシングに関与する(Zamoreら、2000、Cell、101、25−33;Bass、2000、Cell、101、235;Bersteinら、2001、Nature、409、363)。ダイサー活性由来の小分子干渉RNAは、典型的に長さ約21ないし約23ヌクレオチドであり、そして約19塩基対二重鎖を含んでなる(Zamoreら、2000、Cell、101、25−33;Elbashirら、2001、Genes Dev.、15、188)。ダイサーは、翻訳制御に関係する保存された構造の前駆体RNAからの21および22ヌクレオチドの小分子RNA(stRNA)の除去にもまた関係する(Hutvagnerら、2001、Science、293、834)。RNAi応答はまた、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNAの切断を媒介するRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)と一般に称されるエンドヌクレアーゼ複合体も特徴とする。標的RNAの切断はsiRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる(Elbashirら、2001、Genes Dev.、15、188)。
【0042】
siRNAは標的配列およびその相補物を包含する二本鎖RNAである。2個のウリジン残基がRNAの3’端に付加される(Elbashirら 2001 Nature 411:494−498)。
【0043】
RNA干渉(RNAi)は現在、特定の遺伝子の発現を低下することの機能的結果を研究するために哺乳動物細胞で慣例に使用されている。RNAiは、目的の遺伝子に相補的である、2ntの3’オーバーハングをもつ長さ約21ntの二本鎖RNA分子(Elbashirら 2001 上記)若しくはヘアピンを形成する45〜50mer(shRNA)分子(Paddison,PJら、2002.Genes & Development 16:948−958)を含んでなる小分子干渉RNA(siRNA)をトランスフェクトすることにより誘導する。哺乳動物細胞にトランスフェクトされる場合、siRNA発現プラスミドならびに内因性および外因性双方の遺伝子産物のレベルを低下させることが示されている。それらは化学合成若しくはin vitroで転写したsiRNAより製造するためのより大きな努力を必要とするとは言え、siRNAベクターは選択可能なマーカーと共発現される場合に標的遺伝子発現のより長期の低下を提供し得る(Brummelkamp,TRら、2002.Science 296:550−553)。
【0044】
非タンパク質非オリゴ核酸アンタゴニスト
小分子薬物およびペプチド模倣物もまたCCR2のアンタゴニストであり得る。例えば、第WO04069809号、同第WO04069810号、同第WO05118574号、同第WO06015986号明細書はCCR2受容体アンタゴニストとしてのメルカプトイミダゾールを教示する。所望の生物学的特性を表す他の小分子は、本明細書に記述されるもののような方法を使用するスクリーニングにより選択し得、そして慢性拒絶を予防しかつ移植片生存を延長するという特性を有することができる。
【0045】
抗体の作成方法
本発明のCCR2アンタゴニスト抗体は、場合によっては、KohlerとMilstein(1975)Nature 256:495の標準的体細胞ハイブリダイゼーション技術(ハイブリドーマ法)を包含する多様な技術により製造し得る。ハイブリドーマ法において、マウスまたはハムスター若しくはマカクザルのような他の適切な宿主動物を本明細書に記述されるとおり免疫して、免疫化に使用されるタンパク質に特異的に結合することができる抗体を産生する若しくは産生することが可能であるリンパ球を導き出す。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫しうる。リンパ球をその後、ポリエチレング
リコールのような適する融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合してハイブリドーマ細胞を形成する(Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、pp.59−103(Academic Press、1986))。
【0046】
CCR2アンタゴニスト抗体は、場合によっては、本明細書に記述されかつ/若しくは当該技術分野で既知のところのヒト抗体のレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス、ラット、ハムスター、ヒト以外の霊長類など)の免疫化によってもまた生成し得る。例えばヒト抗MCP−1抗体を産生する細胞をこうした動物から単離し得、そして本明細書に記述される方法のような適する方法を使用して不死化し得る。
【0047】
それらの生殖系列配置(germline configuration)にヒト免疫グロブリン(Ig)遺伝子座を有するトランスジェニックマウスの使用は、正常なヒト免疫系が寛容であるヒト自己抗原を包含する多様な標的に向けられる高親和性の完全にヒトのモノクローナル抗体の単離を提供する(Lonberg,N.ら、第US5569825号、同第US6300129号明細書および1994、Nature 368:856−9;Green,L.ら、1994、Nature Genet.7:13−21;Green,L.とJakobovits、1998、Exp.Med.188:483−95;Lonberg,NとHuszar,D.、1995、Int.Rev.Immunol.13:65−93;Kucherlapatiら 第US6713610号明細書;Bruggemann,M.ら、1991、Eur.J.Immunol.21:1323−1326;Fishwild,D.ら、1996、Nat.Biotechnol.14:845−851;Mendez,M.ら、1997、Nat.Genet.15:146−156;Green,L.、1999、J.Immunol.Methods 231:11−23;Yang,X.ら、1999、Cancer Res.59:1236−1243;Brueggemann,M.とTaussig,M J.、Curr.Opin.Biotechnol.8:455−458、1997;Tomizukaら 第WO02043478号明細書)。こうしたマウス中の内因性免疫グロブリン遺伝子座は、内因性遺伝子によりコードされる抗体を産生する該動物の能力を排除するように破壊若しくは欠失し得る。加えて、Abgenix,Inc.(カリフォルニア州フリーモント)およびMedarex(カリフォルニア州サンノゼ)のような会社を、上述されたところの技術を使用する選択された抗原に向けられるヒト抗体を提供するのに従事させ得る。
【0048】
免疫原性抗原の製造およびモノクローナル抗体製造は、組換えタンパク質製造のようないずれかの適する技術を使用して実施し得る。免疫原性抗原は、精製されたタンパク質、あるいは全細胞または細胞若しくは組織抽出物を包含するタンパク質混合物の形態で動物に投与し得るか、あるいは、抗原は前記抗原若しくはその一部分をコードする核酸から動物の体内で新たに形成し得る。抗原での免疫化は、場合によってはフロイントの完全アジュバントのようなアジュバントの添加により達成し得る。免疫応答を免疫化プロトコルの経過にわたりモニターし得、血漿サンプルを後眼窩出血により得る。血漿をELISA(下述されるところの)によりスクリーニングし得、そして抗MCP−1免疫グロブリンの十分な力価を伴うマウスを融合に使用し得る。マウスを屠殺および脾の除去3日前に抗原で静脈内に追加免疫し得る。各抗原について2〜3種の融合が実施されることを必要としうることが期待される。数匹のマウスを各抗原について免疫化することができる。
【0049】
モノクローナルCCR2アンタゴニスト抗体を産生するハイブリドーマを生成するため、免疫したマウスからの脾細胞およびリンパ節細胞を単離し得、そしてマウス骨髄腫細胞株のような適切な不死化細胞株に融合し得る。生じるハイブリドーマを抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングし得る。
【0050】
免疫グロブリン鎖を産生することが不可能な適する不死細胞株、例えば、限定されるものでないがSp2/0および誘導体細胞株、NS1および誘導体、とりわけGS−NSOのようなNSO工作したNSO株、AE−1、L.5、P3X63Ag8.653、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA−1、JURKAT、WEHI、K−562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL−60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A、CHO、PerC.6、YB2/Oなど、若しくは異種骨髄腫(heteromyelomas)、それらの融合生成物またはそれら由来のいずれかの細胞若しくは融合細胞、あるいは当該技術分野で既知のところのいずれかの他の適する細胞株(Birchら 1994.Biologics 22:127−133)を挙げることができる骨髄腫細胞株を融合パートナーとして選択する。融合された細胞(ハイブリドーマ)若しくは組換え細胞を、選択的培養条件若しくは他の適する既知の方法を使用して単離し得、そして制限希釈若しくは細胞分取または他の既知の方法によりクローン化し得る。所望の特異性を持つ抗体を産生する細胞を適するアッセイ(例えばELISA)により検出し得、そして操作のため選択し得る。
【0051】
限定されるものでないが、ペプチド若しくはタンパク質ライブラリー(例えばCambridge antibody Technologies、英国ケンブリッジシャー;MorphoSys、独国マルティンスライト/プラネック;Biovation、英国スコットランド・アバディーン;BioInvent、スウェーデン・ルント;Dyax
Corp.、Enzon、Affymax/Biosite;Xoma、カリフォルニア州バークレー;Ixsysから入手可能なところの、例えば、限定されるものでないがバクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNAなどのディスプレイライブラリーから組換え抗体を選択する方法を挙げることができる、必須の特異性の抗体の他の適する生成若しくは単離方法を使用し得る。例えば、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書に記述されるところのヒト抗体のレパートリーを産生することが可能である、欧州特許第EP 368,684号、第PCT/GB91/01134号;第PCT/GB92/01755号;第PCT/GB92/002240号;第PCT/GB92/00883号;第PCT/GB93/00605号;米国特許第US 08/350260号(5/12/94);第PCT/GB94/01422号;第PCT/GB94/02662号;第PCT/GB97/01835号;(CAT/MRC);第WO90/14443号;第WO90/14424号;第WO90/14430号;第PCT/US94/1234号;第WO92/18619号;第WO96/07754号;(Scripps);第EP 614 989号(MorphoSys);第WO95/16027号(BioInvent);第WO88/06630号;第WO90/3809号(Dyax);米国特許第US 4,704,692号(Enzon);第PCT/US91/02989号(Affymax);第WO89/06283号;欧州特許第EP 371 998号;同第EP 550 400号;(Xoma);同第EP 229 046号;第PCT/US91/07149号(Ixsys);または化学量論的に生成されたペプチド若しくはタンパク質−米国特許第US 5723323号、同第5763192号、同第5814476号、同第5817483号、同第5824514号、同第5976862号、第WO 86/05803号、欧州特許第EP 590689号明細書(Ixsys、現在Applied Molecular Evolution(AME)(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。こうした技術は、限定されるものでないが、リボソームディスプレイ(Hanesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:4937−4942(1997年5月);Hanesら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:14130−14135(1998年11月));単一細胞抗体産生技術(例えば選択リンパ球抗体法(selected lymphocyte antibody method)(「SLAM」)(米国特許第5,627,052号明細書、Wenら、J.Immunol.17:887−892(1987);Babcookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:7843−7848(1996));ゲル微小液滴およびフローサイトメトリー(Powellら、Biotechnol.8:333−337(1990);One Cell Systems、マサチューセッツ州ケンブリッジ;Grayら、J.Imm.Meth.182:155−163(1995);Kennyら、Bio/Technol.13:787−790(1995));B細胞選択(Steenbakkersら、Molec.Biol.Reports 19:125−134(1994);Jonakら、Progress Biotech、Vol.5、In Vitro Immunization in Hybridoma Technology、Borrebaeck編、Elsevier Science Publishers B.V.、オランダ・アムステルダム(1988))を挙げることができる。
【0052】
類似のタンパク質若しくはフラグメントへの特異的結合について抗体をスクリーニングすることもまた、ペプチドディスプレイライブラリーを使用して便宜的に達成し得る。この方法は、所望の機能若しくは構造を有する個々のメンバーについてのペプチドの大きな集合物のスクリーニングを必要とする。ペプチドディスプレイライブラリーを使用する抗体スクリーニングは当該技術分野で公知である。表示されるペプチド配列は長さ3から5000若しくはそれ以上までのアミノ酸、頻繁に5〜100アミノ酸長から、およびしばしば約8から25アミノ酸長までであり得る。ペプチドディスプレイライブラリー、ベクターおよびスクリーニングキットは、Invitrogen(カリフォルニア州カールズバッド)およびCambridge antibody Technologies(英国ケンブリッジシャー)のような供給元から商業的に入手可能である。例えば、Enzonに譲渡された米国特許第4704692号、同第4939666号、同第4946778号、同第5260203号、同第5455030号、同第5518889号、同第5534621号、同第5656730号、同第5763733号、同第5767260号、同第5856456号;Dyaxに譲渡された同第5223409号、同第5403484号、同第5571698号、同第5837500号、Affymaxに譲渡された同第5427908号、同第5580717号;Cambridge antibody Technologiesに譲渡された同第5885793号;Genentechに譲渡された同第5750373号、Xomaに譲渡された同第5618920号、同第5595898号、同第5576195号、同第5698435号、同第5693493号、同第5698417号明細書、Colligan、上記;Ausubel、上記;若しくはSambrook、上記(上の特許および刊行物のそれぞれは引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。
【0053】
抗体フラグメント
抗体フラグメントは無傷の抗体のタンパク質分解性消化を介して派生し得る(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992);およびBrennanら、Science、229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらのフラグメントは今や組換え宿主細胞により直接製造し得る。F(ab’)2、Fab、FvおよびScFv抗体フラグメントは全部、哺乳動物宿主細胞若しくは大腸菌(E.coli)中で発現され得かつそれらから分泌され得、かように大量のこれらのフラグメントの容易な製造を可能にする。抗体フラグメントは上で論考された抗体ファージライブラリーから単離し得る。あるいは、Fab’−SHフラグメントは大腸菌(E.coli)から直接回収しかつ化学的に結合してF(ab’)2フラグメントを形成し得る(Carterら、Bio/Technology 10:163−167(1992))。
【0054】
他の態様において、の抗体は一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。第WO 93/16185号;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458号明細書を参照されたい。FvおよびsFvは定常領域を欠く無傷の結合部位すなわちVHおよびVLドメインをもつ種である。典型的に、VHおよびVLドメインをクローン化しかつ単一ポリペプチド内に存するように再工作し、そして該単一ポリペプチド内での該2ドメインの相互作用を可能にするのに十分に長いフレキシブルリンカーにより結合する。あるいは、融合タンパク質は、sFvのアミノ若しくはカルボキシいずれかの末端でのエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築しうる。Antibody Engineering、1995.Borrebaeck編を参照されたい。
【0055】
アンタゴニストの同定方法
CCR2の生物学的活性のアンタゴニストは、下に例示されるところの適するin vitroアッセイおよびin vivoモデルを使用して同定し得る。
【0056】
結合阻害アッセイを使用して、CCR2を結合しかつCCR2若しくは機能的バリアントへのリガンドのような別の化合物(例えばMCP−1、MCP−2、MCP−3および/若しくはMCP−4)の結合を阻害する抗体若しくはそのフラグメントを同定し得る。例えば、抗体の非存在下でのリガンドの結合に比較して(該抗体の存在下での)CCR2のリガンドの結合の低下を検出若しくは測定する結合アッセイを実施し得る。単離されたかつ/若しくは組換えの哺乳動物CCR2若しくはその機能的バリアントを含んでなる組成物を、リガンドおよび抗体と同時に若しくはいずれかの順序で一方の後に他方と接触し得る。抗体の存在下でのリガンドの結合の程度の低下は該抗体による結合の阻害を示す。例えばリガンドの結合が低下若しくは廃止され得る。
【0057】
一態様において、哺乳動物CCR2若しくはそのバリアントへのリガンド(例えばMCP−1/CCL2のようなケモカイン)の結合の抗体若しくはフラグメントによる直接阻害をモニターする。例えば、哺乳動物CCR2への125I標識MCP−1、125I標識MCP−2、125I標識MCP−3若しくは125I標識MCP−4の結合を阻害する抗体の能力をモニターし得る。こうしたアッセイは、例えば、単離された血液細胞(例えばT細胞、PBMC)若しくはCCR2を天然に発現する適する細胞株のようなCCR2若しくはその機能的バリアントを有する適する細胞、または哺乳動物CCR2をコードする核酸を含有する細胞株、あるいは前記細胞からの膜画分を使用して実施し得る。
【0058】
他の適する結合アッセイ、またはシグナル伝達機能および/若しくは細胞応答の刺激(例えば白血球輸送)を包含する受容体結合により誘発される事象をモニターする方法のような、CCR2を結合する抗体の存在の他の同定方法が利用可能である。
【0059】
本発明の抗体の阻害効果を結合阻害アッセイで評価し得ることが理解されるであろう。受容体結合についての抗体間の競合もまた該方法で評価し得る。この様式で同定される抗体をさらに評価して、それらが結合後にCCR2の他の機能を阻害するように作用するかどうかを決定しかつ/若しくはそれらの治療的利用性を評価し得る。
【0060】
シグナル伝達アッセイ
CCR2へのリガンド若しくはアゴニストのような促進因子(promoter)の結合はこのGタンパク質共役型受容体によるシグナル伝達をもたらし得、そしてGタンパク質ならびに他の細胞内シグナル伝達分子の活性が刺激される。化合物(例えば抗体若しくはそのフラグメント)によるシグナル伝達機能の誘導をいずれかの適する方法を使用してモニターし得る。こうしたアッセイを使用してCCR2の抗体アゴニストを同定し得る。抗体若しくはその機能的フラグメントまたは他のCCR2アンタゴニスト化合物候補の阻
害活性は、該アッセイでリガンド若しくは促進因子を使用し、およびリガンド若しくは促進因子により誘導される活性を阻害する該抗体の能力を評価して決定し得る。
【0061】
GTPのGDPへの加水分解のようなGタンパク質活性、若しくは細胞内(サイトゾルの)遊離カルシウム[Ca2+]Iの濃度の迅速かつ一過性の増大の誘導のような受容体結合により誘発される後のシグナル伝達事象は、当該技術分野で既知の方法若しくは他の適する方法により評価し得る(例えば、Neote,K.ら、Cell、72:415−425 1993);Van Riperら、J.Exp.Med.、177:851−856(1993);Dahinden,C.A.ら、J.Exp.Med.、179:751−756(1994)を参照されたい)。
【0062】
例えば、ハイブリッドのGタンパク質共役型受容体を使用するSledziewskiらの機能的アッセイを使用して、受容体を結合しかつGタンパク質を活性化するリガンド若しくは促進因子の能力をモニターし得る(Sledziewskiら、米国特許第5,284,746号明細書(その教示は引用することにより本明細書に組み込まれる))。
【0063】
こうしたアッセイは評価されるべき抗体若しくはそのフラグメントの存在下で実施し得、そしてリガンド若しくは促進因子により誘導される活性を阻害する該抗体若しくはフラグメントの能力を、既知の方法および/若しくは本明細書に記述される方法を使用して決定する。
【0064】
走化性および細胞刺激のアッセイ
走化性アッセイは、CCR2のアンタゴニストとして作用する抗体若しくはその機能的フラグメントの能力を評価するのにもまた使用し得る。哺乳動物CCR2若しくはその機能的バリアントへのリガンドの結合を阻害しかつ受容体への該リガンドの結合と関連する機能として走化性を阻害する、抗体若しくはその機能的フラグメントまたは他のCCR2アンタゴニスト化合物候補の阻害活性は、その点に関して有用である。これらのアッセイは化合物、この場合はCCL2若しくはCCR2を活性化することが可能な別のリガンドのいずれかにより誘導されるin vitro若しくはin vivoでの細胞の機能的遊走に基づく。走化性は、例えば96ウェル走化性プレートを利用するアッセイで、若しくは走化性の他の技術に認識された評価方法を使用して評価し得る。例えば、in vitro経内皮走化性アッセイの使用がSpringerら(Springerら、1994年9月15日に公開された第WO 94/20142号明細書(その教示は引用することにより本明細書に組み込まれる);Bermanら、Immunol.Invest.17:625−677(1988)もまた参照されたい)により記述されている。内皮を横断してコラーゲンゲル中への遊走もまた記述されている(Kavanaughら、J.Immunol.、146:4149−4156(1991))。例えば、マウスIL−2プレB細胞若しくは走化性が可能な他の適する宿主細胞の安定なトランスフェクタントを走化性アッセイで使用し得る。
【0065】
一般に、走化性アッセイは、障壁の第一の表面から相対する第二の表面への化合物の増大された濃度に向かって障壁(例えば内皮、フィルター)中へ若しくはそれらを通る適する細胞(白血球(例えばリンパ球、好酸球、好塩基球)のような)の方向性の動きすなわち遊走をモニターする。膜若しくはフィルターは便宜的な障壁を提供し、その結果、フィルターの第一の表面からフィルターの相対する第二の表面への化合物の増大された濃度に向かうフィルター中へ若しくはそれを通る適する細胞の方向性の動きすなわち遊走がモニターされる。いくつかのアッセイでは、膜をICAM−1、フィブロネクチン若しくはコラーゲンのような接着を助長するための物質で被覆する。こうしたアッセイは白血球の「ホーミング」のin vitroの近似を提供する。
【0066】
例えば、試験されるべき抗体を含有しかつ膜により第一の室から分割されている第二の室中への多孔質膜中への若しくはそれを通る第一の室からの適する容器(含有手段)中の細胞の遊走の阻害を検出若しくは測定し得る。例えばニトロセルロース、ポリカーボネートを包含する、化合物に応答しての特定の遊走をモニターするのに適する孔径を有する適する膜を選択する。例えば、約3〜8ミクロン、および好ましくは約5〜8ミクロンの孔径を使用し得る。孔径はフィルター上で均一若しくは適する孔径の範囲内にあることができる。
【0067】
フィルター中への遊走および遊走の阻害、遊走の距離を評価するため、フィルターの第二の表面に付着したまま留まるフィルターを横断する細胞の数、および/若しくは第二の室中に蓄積する細胞の数を、標準的技術(例えば顕微鏡検査)を使用して決定し得る。一態様において、細胞を検出可能な標識(例えば放射性同位体、蛍光標識、抗原若しくはエピトープ標識)で標識し、そして、適切な方法を使用して(例えば放射活性、蛍光を検出すること、イムノアッセイにより)膜に付着しかつ/若しくは第二の室中に存在する標識の存在を決定することにより、抗体若しくはフラグメントの存在および非存在下で遊走を評価し得る。抗体アゴニストにより誘導される遊走の程度を適する対照に関して(例えば、抗体の非存在下で測定されるバックグラウンドの遊走に比較して、第二の化合物(すなわち標準)により誘導される遊走の程度に比較して、抗体により誘導されるトランスフェクトされない細胞の遊走と比較して)決定し得る。
【0068】
とりわけT細胞、単球若しくは哺乳動物CCR2を発現する細胞についての一態様において、経内皮遊走をモニターし得る。この態様において、内皮細胞層を通る遊出を評価する。細胞層を調製するため、内皮細胞を、場合によっては内皮細胞の接着を助長するためにコラーゲン、フィブロネクチン、若しくは他の細胞外マトリックスタンパク質のような物質で被覆した微孔性フィルター若しくは膜上で培養し得る。好ましくはコンフルエントな単層が形成されるまで内皮細胞を培養する。例えば静脈、動脈若しくはヒト臍帯静脈内皮細胞(Clonetics Corp、カリフォルニア州サンディエゴ)のような微小血管内皮細胞を包含する多様な哺乳動物内皮細胞が単層形成に利用可能であり得る。特定の哺乳動物受容体に応答しての走化性をアッセイするためには同一哺乳動物の内皮細胞が好ましいが;しかしながら異種哺乳動物種若しくは属からの内皮細胞もまた使用し得る。
【0069】
一般に、該アッセイは、フィルターの第一の表面からフィルターの相対する第二の表面への化合物の増大された濃度への方向で膜若しくはフィルター中への若しくはそれらを通る細胞の方向性の遊走を検出することにより実施し、該フィルターは第一の表面上に内皮細胞層を含有する。方向性の遊走は、第一の表面に隣接する領域から膜中へ若しくはそれを通り該フィルターの相対する側に置かれた化合物に向かって起こる。第二の表面に隣接する領域に存在する化合物の濃度は、第一の表面に隣接する領域のものより大きい。
【0070】
抗体阻害剤について試験するのに使用される一態様において、遊走および哺乳動物CCR2受容体を発現することが可能な細胞を含んでなる組成物を第一の室に置くことができる。第一の室中の細胞の走化性を誘導することが可能な1種若しくはそれ以上のリガンド若しくは促進因子(化学誘引物質機能を有する)を含んでなる組成物を第二の室に置く。好ましくは細胞を第一の室に置く直前に、若しくは細胞と同時に、試験されるべき抗体を含んでなる組成物を好ましくは第一の室に置く。本アッセイにおいて哺乳動物CCR2を発現する細胞の受容体に結合し得かつリガンド若しくは促進因子による走化性の誘導を阻害し得る抗体若しくはその機能的フラグメントは、受容体機能の阻害剤(例えば刺激機能の阻害剤)である。該抗体若しくはフラグメントの存在下でのリガンド若しくは促進因子により誘導される遊走の程度の低下は阻害活性を示す。別個の結合試験(上を参照されたい)を実施して、阻害が受容体への抗体の結合の結果であるか若しくは異なる機構を介して発生するかどちらかを決定し得る。
【0071】
組織中の化合物(例えばケモカイン若しくは抗体)の注入に応答しての組織の白血球浸潤をモニターするin vivoアッセイはin vivoホーミングのモデルであり、そして、炎症の部位への遊走および走化性によりリガンド若しくは促進因子に応答しかつこの遊走を阻害する抗体若しくはそのフラグメントの能力を評価する細胞の能力を測定する。
【0072】
記述される方法に加え、CCR2の刺激機能に対する抗体若しくはフラグメントの効果は、受容体を含有する適する宿主細胞を使用して、活性の受容体により誘導される細胞応答をモニターすることにより評価し得る。
【0073】
哺乳動物のCCR2機能の付加的なリガンドおよび阻害剤の同定
本発明の抗体およびフラグメントの結合および機能を評価するのに使用し得る上述されたアッセイは、哺乳動物CCR2若しくはその機能的バリアントを結合する付加的なリガンド若しくは他の物質、ならびに哺乳動物のCCR2機能の阻害剤および/若しくは促進因子を同定するように適合し得る。例えば、本発明の抗体若しくはその機能的部分の結合特異性と同一若しくは類似の結合特異性を有する剤を、前記抗体若しくはその部分との競合アッセイにより同定し得る。従って、本発明は、哺乳動物CCR2タンパク質を結合する受容体のリガンド若しくは他の物質ならびに受容体機能の阻害剤(例えばアンタゴニスト)若しくは促進因子(例えばアゴニスト)の同定方法もまた包含する。一態様において、哺乳動物CCR2タンパク質若しくはその機能的バリアントを持つ細胞(例えば、前記細胞に導入された核酸によりコードされる哺乳動物CCR2タンパク質若しくは機能的バリアントを発現するように工作された白血球、細胞株若しくは適する宿主細胞)を、受容体機能の阻害剤若しくは促進因子を包含する受容体を結合するリガンド若しくは他の物質を同定しかつその有効性を評価するためのアッセイで使用する。こうした細胞は発現される受容体タンパク質若しくはポリペプチドの機能の評価においてもまた有用である。
【0074】
本発明により、受容体を結合するリガンドおよび他の物質、受容体機能の阻害剤および促進因子を適するアッセイで同定し得、そして治療効果についてさらに評価し得る。受容体機能の阻害剤は受容体活性を阻害(低下若しくは予防)するのに使用し得、ならびにリガンドおよび/若しくは促進因子は、示される場合に正常な受容体機能を誘導(誘発若しくは増強)するのに使用し得る。従って、本発明は、受容体機能の阻害剤を個体(例えば哺乳動物)に投与することを含んでなる移植片拒絶の処置方法を提供する。
【0075】
CCR2アンタゴニストを含んでなる製薬学的組成物
本発明は、CCR2の転写、発現若しくは活性を調節するための製薬学的組成物の製造方法を包含する。こうした方法は、CCR2の発現若しくは活性を調節する剤とともに製薬学的に許容できる担体を処方することを含んでなる。こうした組成物は付加的な有効成分をさらに包含し得る。従って、本発明は、CCR2の発現若しくは活性を調節する1剤および1種若しくはそれ以上の付加的な有効成分とともに製薬学的に許容できる担体を処方することによる製薬学的組成物の製造方法をさらに包含し得る。
【0076】
使用される投薬量および濃度でそれに曝露される細胞若しくは哺乳動物に対し非毒性である製薬学的に許容できる担体、賦形剤若しくは安定剤。しばしば、生理学的に許容できる担体は水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容できる担体の例は、リン酸、クエン酸および他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸を包含する抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン若しくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水ポリマー;グリシン、グルタミン、ヒスタジン(histadine)、アスパラギン、アルギニン若しくはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース若しくはデキストリンを包含する単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;マンニトール若しくはソルビトールのような糖アルコール;ナトリウムのような塩を形成する対イオン;ならびに/またはTWEEN(R)、ポリエチレングリコール(PEG)、PLURONICS(R)およびヒアルロン酸(HA)のような非イオン性界面活性剤を包含する。
【0077】
製剤はCCR2アンタゴニストの安定性を最適化するか、若しくは、加えて血流への有効成分の徐放(sustained release)すなわち長時間放出(extended release)を見込むように設計しうる。CCR2アンタゴニストの型のそれぞれに適する製剤および投与経路は、例えば”Remington:The Science and Practice of Pharmacy”、A.Gennaro編、第20版、Lippincott, Williams & Wilkins、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2000に見出しうる。
【0078】
製剤がin vivo投与に使用されるために、それらは無菌でなければならない。該製剤は、凍結乾燥および再構成の前若しくは後に滅菌濾過膜を通る濾過により無菌にしうる。本明細書の治療的組成物は一般に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針により貫通可能な栓を有する静脈内溶液袋若しくはバイアルに入れる。治療的組成物は当該技術分野で既知の医療機器を用いて投与し得る。
【0079】
処置方法
被験体における線維症の本発明の処置方法は器官特異的線維症若しくは全身性線維症を包含する。器官特異的線維症は、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症若しくは他の線維症の最低1種を伴い得る。肺線維症は、特発性肺線維症、薬物誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス若しくは慢性閉塞性肺疾患の最低1種を伴い得る。肝線維症は肝硬変、住血吸虫症(schistomasomiasis)若しくは胆管炎の最低1種を伴い得る。肝硬変はアルコール性肝硬変、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変から選択され得る。胆管炎は硬化性胆管炎である。腎線維症は糖尿病性腎症若しくはループス糸球体硬化症(lupus glomeruloschelerosis)の最低1種を伴い得る。心線維症は最低1型の心筋梗塞を伴い得る。血管線維症は血管形成術後動脈再狭窄若しくはアテローム硬化症の最低1種を伴い得る。皮膚線維症は火傷瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド若しくは腎性線維化性皮膚症の最低1種を伴い得る。眼線維症は後眼窩線維症、白内障後手術若しくは増殖性硝子体網膜症の最低1種を伴い得る。骨髄線維症は特発性骨髄線維症若しくは薬物誘発性骨髄線維症の最低1種を伴い得る。他の線維症は、ペーロニー病、デュピュイトラン拘縮若しくは皮膚筋炎から選択され得る。全身性線維症は全身性硬化症および移植片対宿主病から選択され得る。
【0080】
患者評価
間質性肺疾患(ILD)は、類似の臨床、X線検査、生理学的若しくは病理学的症状発現により一緒に分類される多彩な線維性障害を包含する。より正確な用語、びまん性実質性肺疾患は、これらの障害の大部分が終末細気管支、間質および肺胞を冒すためにより少なく誤解されやすい。
【0081】
IPFは「肺炎」と呼ばれるとは言え、炎症は比較的小さい役割を演じていると思われる。環境、遺伝若しくは他の未知の要因が肺胞上皮細胞傷害を最初に誘発すると考えられるが、しかし、自己永続性かつ異常な間質線維芽細胞および間葉細胞増殖(コラーゲン沈着および線維症を伴う)が臨床疾患の発症の原因であると考えられる。重要な組織学的所見は、正常肺組織の領域と交互の(不均一性)線維芽細胞増殖(線維芽細胞病巣)および密な瘢痕形成の部位を伴う胸膜下線維症である。散在性の間質の炎症はリンパ球、プラズマ細胞および組織球浸潤で起こる。末梢肺胞の嚢胞性拡張(蜂窩形成)が全患者で見出され、そして進行した疾患とともに増大する。Merck Manual of Diagnosis ant Therapy(第18版)、Section:Pulmonar
y Disorders、Subject:Interstitial Lung Diseases、Topic:Idiopathic Interstitial Pneumonias.2006を参照されたい。
【0082】
慢性閉塞性肺疾患および肺高血圧症のようなびまん性肺疾患はILD分類から除外される。進行したILDを伴う患者は顕著な呼吸困難に苦しみ、そして最終的に呼吸不全のため死亡する。間質性肺疾患は、大きな数の患者で呼吸不全および死亡に至る不均一な障害群を包含する。肺移植は選択された候補における治療の選択肢である。一般集団におけるILDの正確な発生率および罹患率は未知のままである。ILDは以前に報告されていた(人口100000あたり5症例)よりはるかに高頻度であると考えられている。ニューメキシコ州ベルナリージョ郡からの集団に基づく研究は男性で100000あたり80.9症例および女性で100000あたり67.2症例の罹患率を報告した。特発性肺線維症(IPF)はこの研究の全症例の約45%を構成するもっとも一般的な形態のILDである。呼吸不全をもたらしうる他のびまん性肺疾患はサルコイドーシス、リンパ脈管筋腫症、ランゲルハン(Langerhan)細胞組織球増殖症若しくは好酸球性肉芽腫、剥離性間質性肺炎(DIP)、非特異的間質性肺炎(NSIP)および結合組織疾患関連の肺線維症を包含する。
【0083】
抗CCR2療法の必要性についての間質性特発性肺線維症患者(UIP/IPF若しくはNSIP患者)の評価は、疾患の症状提示の前、同時にもしくはその後のいずれの時点でも当業者に既知の方法を使用して実施し得る。一般に、肺疾患を診断するのに使用される方法は、重症度、例えば機械的換気に対する必要性;症状、例えば咳、呼吸困難、発熱、喀血;発症の型すなわち漸進的、急性若しくは亜急性;根底にある疾患すなわち免疫不全、コラーゲン血管疾患、血管炎;環境的曝露すなわちアスベスト、トリ抗原、毒性煙霧;投薬歴すなわちコルチコステロイド、細胞傷害剤、抗生物質;臨床検査異常すなわち貧血、上昇された血清好酸球数、抗好中球細胞質抗体、アスペルギルス(Aspergillus)に対する血清沈降素、リウマチ因子;X線検査所見すなわち正常、びまん性若しくは局所性陰影、結節性若しくは斑状硬化、気腔若しくは間質、上若しくは下葉優勢;ならびにX線検査(HRCT)により発見可能な胸水、すりガラス陰影、気管支拡張症、気道疾患の証拠、下葉、胸膜下、小嚢胞若しくは蜂窩変化、両側上葉の嚢胞および結節、両側のびまん性嚢胞性変化を包含する。最後に、病態生理が閉塞性、拘束性、混合された閉塞性若しくは拘束性、または正常であるかどうかを決定するために患者を肺機能試験にかける。
【0084】
IPF(UIP)患者での組織学的所見は不規則な直線的陰影(網状パターン)を包含する。しかしながらこの観察結果はコラーゲン血管疾患、アスベスト症および慢性過敏性肺炎で発生しうる。遠位肺実質はUIPにおいて蜂窩状パターンを伴う線維症を有することができる。他の形態の間質線維症は、リンパ球性間質性肺炎、コラーゲン血管疾患、薬物反応、塵肺症(アスベスト症、ベリリウム症、珪肺症、超硬合金塵肺症、他者)、サルコイドーシス、ランゲルハンス細胞組織球増殖症(好酸球性肉芽腫)、慢性肉芽腫性感染症、慢性吸引、慢性過敏性肺炎、器質化慢性好酸球性肺炎、器質化されたおよび器質化するびまん性肺胞損傷、慢性間質性肺水腫/受動性うっ血、放射(慢性)、治癒した感染性肺炎の結果発生しうる。UIPの典型的HRCTパターンは、蜂窩形成および拘縮性気管支拡張を伴う両底部の(bibasilar)末梢網状構造を包含する。すりガラス陰影は該疾患の特徴でなく、そして存在する場合は通常非常にわずかに存在し、それらのいくつかは実際に線維症によることがある。IPFについて最も特徴的であることが示されている2特徴は、IPFの診断について5.36というオッズ比を有する下葉蜂窩形成、およびIPFについて6.28というオッズ比を伴ういわゆる「上葉不規則線」である(Hunninghake 2003.Chest.124:1215−1223)。
【0085】
筋線維芽細胞は非線維性組織に比較的存在しない。筋線維芽細胞は、創傷を閉鎖するようにはたらく収縮性表現型をこれらの細胞に与える平滑筋アクチン線維を含有する。α−平滑筋アクチン(aSMA)は筋線維芽細胞のマーカーである。TGFb1はaSMA発現を誘導することが以前に示されている原型の前線維性(profibrotic)増殖因子である(Desmouliereら 1995 Exp Nephrol 3(2):134−9)。UIP患者からの培養線維芽細胞および非線維性肺からの線維芽細胞を使用して、発明者は、TGFb1が非線維性および線維性双方の線維芽細胞中でaSMAを誘導することを発見したが、しかしながら誘導の大きさは線維性線維芽細胞でより大きい。PDGFでの線維芽細胞の刺激はaSMA発現のわずかな増大(10倍未満)をしかし線維性線維芽細胞中のみで誘導した。これら3種のうち、発明者のデータはCCL2のみが線維性線維芽細胞中のaSMA発現の10倍以上の増大を誘導したことを示した。
【0086】
コラーゲン沈着は線維症に重要な特質であり、そして2種の遺伝子プロコラーゲンIおよびプロコラーゲンIIIがUIPと関連していることが以前に示されている。プロコラーゲンIおよびIIIタンパク質は肺でおよび全身での双方のUIPサンプル中で上昇されていることが示された(Lowら 1992 Am Rev Respir Dis 146(3):701−6;Strieterら 2004 Am J Respir Crit Care Med 170(2):133−40;Bensadounら 1996.Am J Respir Crit Care Med 154(6 Pt 1):1819−28。)。発明者は、CCL2がUIPの線維芽細胞中でプロコラーゲンIおよびプロコラーゲンIII双方を誘導することを示した。さらに、CCL2による遺伝子誘導の大きさは2種の前線維性サイトカインTGFβ1およびPDGF−ABにより生じられるものに匹敵する。
【0087】
TGFβ1の前線維性の役割は多様な組織および器官で十分に記述されている。TGFβ1の効果はオートクリン機構によりさらに増幅される。発明者は、TGFβ1で刺激した非線維性および線維性双方の肺線維芽細胞でのこの増幅機構が、双方の細胞型と同じ程度まで、TGFβ1の存在下で増大されたTGFβ1を表したことを観察した。CCL2はTGFβ1遺伝子発現を高めることもまた見出され、そしてTGFβ1でのように、CCL2によるTGFβ1遺伝子誘導の程度は線維性線維芽細胞中でより大きかった。TGFβ受容体は、強皮症患者からの皮膚線維芽細胞中で上昇されることが以前に見出されている(Kuboら 2002J Rheumatol 29(12):2558−64;Kawakami 1998.J Invest Dermatol110(1):47−51)。UIPの線維芽細胞をTGFβ1とインキュベートした際に、PDGFおよびCCL2は非線維性線維芽細胞でのものを上回る分析したTGFβ受容体サブユニットの双方の増大を有し、TGFβ1は主にTGFβRIを増大し、そしてCCL2は双方のサブユニットを誘導し、該効果がCCL2によるTGFβ1誘導のみによらないかもしれないことを示す。
【0088】
結合組織増殖因子(CTGF)はコラーゲン産生を包含するTGFβ1の効果の多くを媒介することが示されている。TGFb1は線維性および非線維性双方の線維芽細胞でCTGF遺伝子発現の増大を誘導した。さらに、PDGFおよびCCL2はUIPの線維芽細胞でCTGF遺伝子発現の増大を誘導した。
【0089】
発明者のデータは、TGFβ1、PDGFおよびCCL2がUIPの線維芽細胞でIL13Ra1発現を上昇したことを示した。IL−13はUIP患者の肺で上昇されたレベルで見出されるTh2型サイトカインである。IL−13はin vitroおよびin
vivoモデルで前線維性である。IL−13はコラーゲン生成および線維芽細胞の増殖を誘導する(Saito 2003.Int Arch Allergy Immunol 2003;132(2):168−76;Ingram2004 Faseb J
18(10):1132−4)。多様なマウス肺線維症モデルのデータは、IL13およびIL13Ra2によるシグナル伝達が前線維性でありかつTGFβ1の誘導によってもまた作用しうることを示す(Fichtner−Feigl 2006.Nat Med 12(1):99−106)。従って、TGFβ1、PDGF−ABおよびCCL2が全部IL13Ra2発現において上方制御したことを示す発明者のデータは、CCL2が直接若しくは間接的にIL−13媒介性応答に対し線維芽細胞をより感受性にしうることを示す。
【0090】
全体として、発明者は、CCL2に対するUIPの線維芽細胞による前線維性応答の特質を初めて示し、そしてUIPの線維芽細胞の応答を非線維性の肺からのものと識別した。以前の研究は、CCR2が強皮症患者の皮膚の筋線維芽細胞様細胞上で発現されることを示し(Carulli 2005 Arthritis Rheum 52(12):3772−82)、また、肺線維症の動物モデルは、線維性のTh2型環境から単離された線維芽細胞上でのCCR2の上方制御、およびCCR2リガンドに対するこれらの細胞の増大された機能性を示した(Hogaboam 1999.J Immunol 1999;163(4):2193−201.)。しかしながら、これは疾患に罹った肺の線維芽細胞上のCCL2の前線維性の機能的役割を示す最初の知られた研究である。
【0091】
CCR2−CCL2の阻害は線維症の有益なin vivoモデルであることが示されている。機械的に、動物モデルでの線維症の阻害は、低下された線維細胞動員および減弱された炎症に帰され、それらはヒト疾患に変わることも若しくは変わらないこともある。本発明は、CCR2リガンドCCL2が前線維性応答を駆動し得かつUIPの線維芽細胞がCCL2に対し過剰応答性であることを示すためのヒト線維芽細胞の発明者の使用に基づく。従って、該データは、疾患に罹ったヒト肺線維芽細胞に対するCCL2の直接の前線維性の影響を発明者が確立したため、とりわけCCR2へのCCL2結合の拮抗作用によるCCR2の生物活性の遮断、阻害、下方制御若しくは拮抗方法が、肺機能の喪失をもたらす間質肺組織に対する迅速かつ現在不可逆的な損傷の改善において有効であろうことを示す。
【0092】
本発明の方法において、限定されるものでないがCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFを挙げることができる、本明細書に開示されるところの選択可能なマーカーUIPの発生の時点でCCR2アンタゴニストを投与し得る。
【0093】
IID、とりわけIPFの診断および管理に関する当該分野の現在の知識は、細胞病理学がそうであるように、線維症に至る原因および開始事象が多様であることを示す(Chapman 2004 J Clin Invest 113(2):148−157)。診断された患者のどのサブセットが抗CCL2療法により助けられうるかを決定するため、CCL2媒介性疾患と関連するバイオマーカーの同定が重要であるとみられる。IPF組織からの研究は、MMP−7の上方制御の差別的調節を遺伝子発現レベルで示し、また、KL−6、ENA−78、IP−10、CCL7、IL−2、IL−8、IL−10およびIL−12(p40)を包含する数種のタンパク質が、気管支肺胞洗浄液および/若しくは血清中で上方制御されていることが示された。しかしながら、これらのタンパク質とCCL2減弱の間の相関は今日まで存在しない。IL−1、PDGF、オステオポンチン、TNF、TGF、CCL3、CXCL8、CXCL5、CXCL12、CXCL9、CXCL10、CXCL11のようなCCL2の他の数種のサイトカインがIPFの病因に関与していることが示されている。しかしながらCCL2との関係は不明なままであり、そしてIPF患者からの線維芽細胞の遺伝子発現分析はこれまでのところ異なる実験室から異なる結果を生じている(概要に関してStuderら 2007.Proc Amer Thoracic Soc.4(1):p.85−9を参照されたい)。
【0094】
培養線維芽細胞は検出可能な基礎レベルのCCL2を有し、そして外因性に添加したCCL2がIL−6産生を調節することが最近示された(Liu,X.ら 207 Amer J Respir Cell Molec Biol.37(1):121−8)。従って、CCL2は中心的調節物質として挙動し、そしてIPFの線維芽細胞の環境中のCCL2の中和が他の遺伝子および/若しくはタンパク質の発現を調節することができる。
【0095】
発明者は、線維症患者からの単離した常在性線維芽細胞を使用して、IPF患者からの肺線維芽細胞が、非線維性線維芽細胞より高レベルのCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFを発現したことを決定した。発明者はまた、中和CCL2抗体、CNTO 888が最高レベルを発現する細胞中でこれらのタンパク質の産生を遮断することが可能であったことも決定した。
【0096】
IPFの正確な診断は、異常な間質性肺炎について肺組織の生検および組織学的分析を必要とする。この処置の侵襲性により、疾患の進行を初期診断後に慣例にモニターすることは実際的でないとみられる。他の非侵襲性診断が利用可能であるがしかし変動性にさらされる。従って比較的非侵襲的な定量的診断ツールが必要とされる。血清若しくは気管支肺胞洗浄液のような組織液は外科的生検より少なく侵襲的にサンプリングし得る。収集した細胞からの可溶性タンパク質および細胞表面マーカー若しくは遺伝子発現を、全部疾患の進行を診断かつモニターするための既存の技術を用いて定量化し得る。これらの遺伝子および/若しくはタンパク質について組織をモニターすることを使用して、CNTO 888によるCCL2中和の程度を決定し得る。従って、到達可能な末梢組織からのCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFの遺伝子および/若しくはタンパク質の測定は、疾患および標的の中和の新規かつ比較的非侵襲的な生体マーカーを提供するであろう。
【0097】
患者を評価するための一態様において、5ml若しくはそれ以上の患者血液を、PAXgene血液RNAチューブ(SystemPreAnalytiX)のような核酸分析のため設計されたチューブに抜き出し得、そして全RNAを単離し得、そして、CXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFの最低1種に特異的な特異的プローブを包含する当該技術分野で既知のいずれかの方法によるように遺伝子発現について分析し得る。該遺伝子のいずれか若しくは全部が、患者、若しくは特発性間質性肺炎を伴う患者の症状を表さない正常被験体からの年齢および性別をマッチさせた試料の2倍以上高い発現レベルを有する場合に、患者を治療に選択しうる。別の態様において、治療のため選択した患者についての用量選択は、年齢および性別をマッチさせた正常志願者のと比較して該遺伝子のいずれか若しくは全部の2倍若しくはそれ以上の発現の変化に基づき調節し得る。本発明の方法の別の態様において、治療に対する応答を、年齢および性別をマッチさせた正常志願者に比較して該遺伝子のいずれか若しくは全部の遺伝子発現の2倍若しくはそれ以上の変化に基づきモニターし得る。
【0098】
別の態様において、5若しくはmlの血液を、特発性間質性肺炎の症状を表す患者から血清収集チューブに収集し得る。血清を、商業的に入手可能な多重若しくはELISAキットを使用してCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFのいずれか若しくは全部について試験し得る。該タンパク質のいずれか若しくは全部が年齢および性別をマッチさせた正常志願者の2倍以上の発現レベルを有する場合に、患者を治療のため選択しうる。別の局面において、治療のため選択した患者についての用量選択は、年齢および性別をマッチさせた正常志願者のと比較してCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFのいずれか若しくは全部の2倍若しくはそれ以上の発現の変化に基づき調節し得る。さらなる一局面において、治療に対する応答を、年齢および性別をマッチさせた正常志願者と比較してCXCL5、IL−6、CCL2、IL13RA2、VEGF、IL−8およびG−CSFのいずれか若しくは全部の2倍若しくはそれ以上の発現の変化に基づきモニターし得る。
【0099】
投与経路
投与経路は、既知のおよび許容される方法、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内による、肝門脈を介する注入(injection)若しくは注入(infusion);徐放(sustained release)すなわち長時間放出(extended−release)手段による局所投与;経粘膜若しくは経皮送達による皮下注入、局所塗布、鼻スプレー、坐剤などによるに従うか、または経口で投与しうる。
【0100】
本発明の別の局面において、該投与することは、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、気管支内、腹腔内(intraabdominal)、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液包内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病変内、ボーラス、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内若しくは経皮から選択される最低1様式によることができる。
【0101】
投薬量
それの必要な患者における慢性拒絶の進行を予防、改善、逆転若しくは停止するために適切な抗CCR2アンタゴニストの用量は経験的に見出されることができ、そして、有効成分の効力、製剤の濃度およびレシピエントの体内の投与後の該剤の有効濃度の持続期間に依存することができる。
【0102】
処置の経過は、当初の治療効果(活性)を長期間維持するように急性様式と対照的に連続様式の慢性すなわち連続投与でありうる。あるいは、患者の体内で急性のアンタゴニスト活性の期間、次いでより低い若しくはアンタゴニスト活性のない期間を提供するために、処置は性質が間歇的若しくは周期的でありうる。従って、抗体がいずれかの数の週の間、週あたり1、2、3回若しくはそれ以上投与されるような投薬スケジュールを変動し得るか、または、抗体は週1回、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10週ごとに1回発生する投与で1回以上(例えば2、3、4、5、6、7回)投与される。
【0103】
CCR2の生物活性のモノクローナル抗体アンタゴニストの場合、該剤は一般に、受領者の体重に基づく量、例えば治療の経過あたり0.1と100mg/kgの間で投与されることができる。本発明の方法により投与される抗体の治療上若しくは予防上有効な量の例示的な制限しない一範囲は、0.1〜20mg/kg、より好ましくは1〜10mg/kgである。一態様において、抗CCR2若しくは抗CCL2抗体は、約1ないし500mg/m2、好ましくは約10ないし400mg/m2、約18ないし350mg/m2、およびより好ましくは約250〜280mg/m2の用量に達するため、10mg/分未満、好ましくは5mg/分未満若しくはそれに等しい速度の静脈内注入により投与し得る。抗CCR2若しくは抗CCL2抗体は単回用量若しくは複数用量で投与し得る。
【0104】
併用療法
処置
いずれの特定の処置もIPFに有効と判明していない。支持療法は低酸素症に対するO2および肺炎に対する抗生物質よりなる。終末期疾患は肺移植のための選択された患者を適格としうる。コルチコステロイド、およびシクロホスファミド(CYTOXAN)、アザチオプリン(IMURAN)のような細胞傷害性薬物が、経験的に炎症の進行を停止させる試みにおいてIPF患者に伝統的に与えられているが、しかし制限されたデータがそ
れらの有効性を裏付ける。にもかかわらず、シクロホスファミド若しくはアザチオプリン(1ないし2mg/kg po1日1回)と組合せたプレドニゾン(例えばDELTASONE)(0.5ないし1.0mg/kg po1日1回3か月間、次の3ないし6か月にわたり0.25mg/kg1日1回に漸減される)で処置を試みることが一般的実務である。3か月ごとに1年間、臨床、X線検査および生理学的応答を評価し、そして薬物用量を相応して増大若しくは減少する。治療は客観的応答が存在しない場合に停止する。
【0105】
抗線維症薬ピルフェニドン(pirfenidone)が肺機能を安定化しかつ増悪を低下させうる。コラーゲン合成(リラキシン)、前線維性増殖因子(スラミン)およびエンドセリン−1(アンジオテンシン受容体阻害剤)を阻害する抗線維症薬はin vitroで有効と示されたのみである。
【0106】
インターフェロン−γ−1bは患者の小グループでプレドニゾンと併用される場合に有望と示されたが、しかしより大きな二重盲検多施設共同無作為化試験は、無増悪生存期間、肺機能若しくは生活の質に対する影響を見出さなかった。
【0107】
本発明を一般的な用語で記述した一方、本発明の態様は以下の実施例にさらに開示されるであろう。
【実施例】
【0108】
[実施例1]
線維性および非線維性の線維芽細胞
UIP患者からの線維芽細胞の固有の特性を組織病理学的に非線維性の肺組織からのものと比較して特徴付けるため、1種若しくは他の型の組織からの初代線維芽細胞を、未刺激状態で、ならびに線維症の病理学の既知のメディエーター、例えばTGFβ、PDGF−ABおよびCCL2に応答してのマーカーについて評価する。
【0109】
線維芽細胞の単離および精製
細胞株はミシガン大学のCory Hogaboam博士により提供された。初代線維
芽細胞株の全部を以前に記述したとおり(Hogaboamら 1999 J Immunol 163(4):2193−201)単離した。肺線維芽細胞をUIP患者から採取した肺生検から単離し(n=4)、そしてこれらを「線維性線維芽細胞」と称する。線維芽細胞は肺腫瘍切除の間に採取した肺組織からもまた単離し(n=5)、そしてこれらのサンプルは組織学的分析により非線維性であることを確認した。これらの非線維性組織由来線維芽細胞は「非線維性線維芽細胞」と称する。
【0110】
線維芽細胞遺伝子発現
ヒト肺線維芽細胞を100,000細胞/ウェルで24ウェルプレート(Costar、Corning、ニューヨーク)にプレーティングしかつ8時間接着させた。細胞をその後PBSで洗浄し、そして無血清培地(l−グルタミン、Pen/Strepを含むDMEM)中で一夜培養した。細胞をその後、TGFb−1(1若しくは10ng/mL)、PDGF−AB(20若しくは200ng/mL)またはCCL2(1若しくは10ng/mL)の存在若しくは非存在下で24時間刺激した。TGFb1、PDGF−ABおよびCCL2はR&D Systemsから購入した。上清を除去し、そしてRNeasy Plusミニキット(QIAGEN、カリフォルニア州バレンシア)を製造元の説明書に従って使用してRNAをその後単離し、そしてTaqMana逆転写試薬(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用してRNAをcDNAに逆転写した。前線維性遺伝子発現を、製造元の説明書に従ってTaqmanaユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)およびpre−developed Taqmana遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems)を使用するリアルタイムPCRにより測定した。
【0111】
定量的遺伝子発現は、遺伝子発現が最初に検出される閾値周期数としてCT値を決定する比較CT法を使用して計算した。目的の遺伝子の遺伝子発現の倍数変化(fold change)を最初にハウスキーピング遺伝子18Sに対し正規化してΔCT値を生じた。線維性および非線維性の線維芽細胞の間の発現の倍数変化を、ΔCT(非線維性)−ΔCT(線維性)=ΔΔCTとして計算し、ここで非線維性遺伝子発現がキャリブレーターとしてはたらいた。in vitro刺激による遺伝子発現の倍数変化はΔΔCT=ΔCT(未刺激)−ΔCT(刺激)により計算し、ここで未刺激サンプルがキャリブレーターとしてはたらいた。計算2−ΔΔCTはその後、キャリブレーターと比較する場合に最終の倍数変化の相対値を与える。
【0112】
前線維性遺伝子発現の基礎発現が非線維性(n=4)線維芽細胞に比較してUIPの線維芽細胞(n=3)で異なったかどうかを決定するため、遺伝子発現を患者の双方のコホートからの未刺激細胞間で比較した。図1に示されるとおり、UIP患者由来の線維芽細胞は分析した遺伝子の全部でより大きい基礎の線維性遺伝子発現を有する。
【0113】
非線維性および線維性線維芽細胞中のTGFb1誘導性aSMAは、しかしながら誘導の大きさが線維性線維芽細胞でより大きかった(図2)。PDGFはaSMA発現および線維性線維芽細胞でのみわずかな増大を誘導した。CCL2もまた線維性線維芽細胞中のaSMA発現の増大のみ誘導した。
【0114】
UIPの線維芽細胞が高められたレベルのコラーゲン遺伝子発現を表すかどうかを決定するため、細胞をCCL2で刺激した。図3AおよびBは、CCL2がUIPの線維芽細胞中のプロコラーゲンIおよびプロコラーゲンIII双方を誘導することを示す。さらに、CCL2による遺伝子誘導の程度はTGFb1およびPDGF−ABいずれかにより産生されるものに匹敵する。
【0115】
TGFb1の前線維性の役割は十分に記述されている。TGFb1、PDGFおよびC
CL2誘導性のTGFb1遺伝子発現(図4)。オートクリンループによるTGFb1誘導は既知であり、そして非線維性および線維性双方の線維芽細胞での本データにより裏付けられる。この実験は、CCL2がTGFb1遺伝子発現もまた高めることをさらに示す。TGFb1でのように、CCL2によるTGFb1遺伝子誘導の程度は線維性線維芽細胞でより大きかった。
【0116】
TGFb1、PDGFおよびCCL2誘導性のCTGF遺伝子発現(図5)。TGFb1は線維性および非線維性双方の線維芽細胞中のCTGF遺伝子発現の増大を誘導した。さらに、低用量のPDGFおよびCCL2はUIPの線維芽細胞でCTGF遺伝子発現の増大を誘導した。
【0117】
TGFb1、PDGFおよびCCL−2誘導性のTGFbRIおよびTGFbRII双方のサブユニット遺伝子発現を図6AおよびBに示す。TGFb1はTGFbRIに対するより大きい影響を有した一方、CCL2はTGFbRIIのいくぶんより大きな増大を伴い双方を誘導した。
【0118】
TGFb1、PDGFおよびCCL2誘導性のIL13Ra1およびIL13Ra2遺伝子発現を図7AおよびBに示す。TGFb1、PDGFおよびCCL2はUIPの線維芽細胞でのIL13Ra1発現を上方制御した。IL13Ra2によるシグナル伝達は最近、TGFb1の誘導により前線維性であることが示された。全3種のメディエーターはIL13Ra2発現の上方制御を誘導し、それにより潜在的にこれらの細胞をIL−13媒介性の応答に対しより感受性にした。
【0119】
[実施例2]
IPFおよび非線維症患者からの肺組織を刻み、そして20mlの培地(15%FCS、1%PSAおよびL−グルタミンを含むDMEM)を含むT75cm組織培養フラスコに入れた。細胞コロニーが生じるまで培地を週2回交換した。細胞を剥離しかつ継代した。実験は継代数5後に実施した。
【0120】
RNA単離
線維芽細胞は、24ウェルプレートのウェルあたり500μl中1×105細胞でDMEM 15%FCS 1%Glutamax、1%ペニシリン ストレプトマイシン中で一夜培養した。血清を含まないDMEM中で細胞を24時間培養した。ヒト血清アルブミンを補充したDMEMに培地を変更し、そして培養物を24および/若しくは48時間インキュベートした。RNAを収集するため、製造元の説明書に従ってRNeasyミニキット(Qiagen,Inc.カリフォルニア州バレンシア)を使用して培養細胞を溶解した。RNAの質および量を2100 BioAnalyzer(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)で測定した。
【0121】
RT−PCR
逆転写反応は、TaqMan(R)試薬(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用するプロトコルに従って、25℃10分間、48℃30分間、95℃5分間で実施した。リアルタイムPCRは、ABI Prism(R)7900配列検出装置とともに特注ABI低密度アレイ(複製のAssays−on−Demandプライマーおよびプローブ)を使用して実施した。AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)の存在下で、反応を500Cで2分間次いで95℃で10分インキュベートした。その後、反応を周期あたり15秒、950Cおよび1分、600Cで40周期行った。内因性対照GAPDHを使用して、DCT相対定量化方法を使用してサンプルを正規化した。
【0122】
免疫検出
線維芽細胞を上述されたとおり一夜培養した。LINCOplexヒトサイトカイン/ケモカイン30plexパネル(Millipore)、ENA−78 Quantikineキット、およびIL−13RA2 ELISAキット(R&D Systems)を使用する試験のため上清を分注した。
【0123】
結果:
7種のIPF肺線維芽細胞株および5種の非線維性肺線維芽細胞株からのcDNAを、CXCL5、CCL2、IL13ra2およびIL−6の相対的発現についてRT−PCRにより24時間に評価した。表1は、非線維性株の平均dCt(標的Ct−GAPDHCt)に対する各IPF株の相対倍数発現(relative fold expression)を示す。
【0124】
IPF細胞株126はCXCL5、IL13ra2およびIL−6について最高の発現を有した。CCL2発現は、7細胞株のうち6種について非線維性細胞でよりも2倍以上若しくは2倍に等しくより高かった。CXCL5およびIL6発現レベルは、5細胞株について非線維性細胞でよりも2倍以上若しくは2倍に等しくより高く、また、IL13ra2発現は4細胞株について非線維性細胞についてよりも2倍以上若しくは2倍に等しくより高かった。
【0125】
【表2】

【0126】
タンパク質分析
5種のUIP株および5種の非線維性株からの上清をIL−6、IL−8、CCL2、CXCL5、G−CSFおよびVEGFのタンパク質発現についてELISA若しくはmultiplexにより試験した。表2および3は試験した全細胞株のタンパク質レベルをpg/mlで示す。線維性細胞株148はIL−6、IL−8、G−CSF、CCL2およびVEGFについて最高の発現レベルを有した。細胞株126はCXCL5について最高であった(16430pg/ml)。IL−8発現は、全5細胞株について非線維性の発現の中央値の2倍以上若しくは2倍に等しかった。CCL2およびIL−6発現は、5細胞株のうち4種について非線維性の発現の中央値の2倍以上若しくは2倍に等しかった。G−CSF発現は2細胞株について非線維性の発現の中央値の2倍以上若しくは2倍に等しかった。VEGF発現は3細胞株について非線維性の発現の中央値の2倍以上若しくは2倍に等しかった。CXCL5発現は2細胞株について非線維性の発現の中央値(0より上の値について)の2倍以上若しくは2倍に等しかった。線維性および非線維性細胞株についての中央値を比較することは、線維性および非線維性の細胞の間の中央値の差違の相対的大きさがIL8>IL6≧CCL2>VEGFであることを示す。
【0127】
【表3】

【0128】
【表4】

【0129】
これらのメディエーター間の関係をさらに検査するため、線維性細胞株126を、それぞれ配列番号27および28により示されるHおよびL鎖可変領域から構成されるCCL2中和抗体CNTO888、若しくは無関係のアイソタイプをマッチさせた抗体で処理し、そして遺伝子およびタンパク質発現レベルを抗体が存在しない同一細胞株と比較した。遺伝子発現の結果を表4に、およびタンパク質発現の結果を表5に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
【表6】

【0132】
CCL2は抗CCL2抗体(CNTO888)の存在下で正確に測定し得ないとは言え、抗CCL2の存在は治療の間にモニターしうる。CNTO 888でのタンパク質の最高の倍数低下はG−CSF(6803倍)であった。最低の倍数はVEGFでであった(4倍)。すなわちG−CSF>IL6=CXCL5>IL8>VEGF
複数の時間点での肺生検により疾患の進行をモニターすることは実際的でないとみられる。CCL2により減弱される前線維性マーカーの一団が同定されており、そしてCCL2活性を評価するためにex vivoで測定し得る。同定されたマーカーを代理物として使用することは、用量およびタイミングのような処置の選択肢を決定するのに役立つための治療の間の抗体活性のモニタリングを可能にするとみられる。第二に、われわれは、抗CCL2療法に潜在的に応答性の患者のサブセットを示しうる前線維性遺伝子/タンパク質のプロファイルに関して、IPF肺線維芽細胞の集団内の大きな大きさの変動性を決定した。疾患の代理マーカーとして遺伝子/タンパク質の前線維性の一団を使用することは、疾患の進行の定量的かつ比較的非侵襲的な測定を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単球走化性タンパク質−1(MCP−1)を阻害する有効量の最低1種のMCP−1アンタゴニストを投与することを含んでなる、最低1種のMCP−1アンタゴニストを使用する、最低1形態の線維症を有する患者における最低1種のヒトMCP−1を阻害する方法。
【請求項2】
前記MCP−1アンタゴニストが小分子およびタンパク質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記小分子が、CCR2BへのCCL2結合を阻害する能力、またはCCR1若しくはCCL2自身の阻害を伴う、インドール誘導体、環状アミン誘導体、ウレイド誘導体、複素環、アニリド、若しくは機能的ピロールから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質が、可溶性受容体、抗体、ペプチド、それらのフラグメント若しくはそれらの融合タンパク質から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が、前記タンパク質の血清半減期を増大させる化合物若しくはタンパク質をさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、最低1種のH鎖可変領域および最低1種のL鎖を含んでなる最低1種の可変領域を含んでなり、前記MCP−1抗体が配列番号27および28を含んでなるH鎖およびL鎖双方の可変領域を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が最低1種のH可変領域および最低1種のL鎖可変領域を含んでなり、前記抗体が、配列番号6、7、9、13、14および16のH鎖およびL鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が最低1種のH鎖および最低1種のL鎖を含んでなる最低1種の可変領域を含んでなり、前記MCP−1抗体が配列番号27および28を含んでなるH鎖およびL鎖双方の可変領域を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が最低1種のH鎖可変領域および最低1種のL鎖可変領域を含んでなり、前記抗体が配列番号6、7、9、13、14および16のH鎖およびL鎖相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列の全部を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、配列番号6、7、9、13、14および16の最低1種のアミノ酸配列を有する最低1個のH鎖若しくはL鎖CDRを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号6〜26よりなる群から選択されるH若しくはL鎖の相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分をさらに含んでなり;および、場合によっては、ヒト免疫グロブリンの少なくともCH1、ヒンジ、CH2若しくはCH3をさらに場合によっては含んでなる枠組み領域と機能的に関連する、配列番号2〜5の最低1種のH鎖若しくはL鎖可変領域を含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、最低10−9M、最低10−10M、最低10−11M若しくは最低10−12Mから選択される最低1種の親和性でMCP−1と結合する、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体が、最低1種のMCP−1ポリペプチドの最低1種の活性を実質的に調節する
、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記小分子若しくはタンパク質が、最低1種の製薬学的に許容できる担体若しくは希釈剤をさらに含んでなる組成物として提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、検出可能な標識若しくはレポーター、TNFアンタゴニスト、抗感染薬、心血管(CV)系薬、中枢神経系(CNS)薬、自律神経系(ANS)薬、気道薬、胃腸(GI)管薬、ホルモン薬、液体若しくは電解質バランスのための薬物、血液製剤、抗腫瘍薬、免疫調節薬、眼、耳若しくは鼻の薬物、局所薬、栄養製品、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニストの最低1種から選択される最低1種の化合物若しくはポリペプチドを投与することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記阻害する有効量が前記細胞、組織、器官若しくは動物1キログラムあたり0.001〜50mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記投与することが、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、気管支内、腹腔内(intraabdominal)、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑液胞内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病変内、ボーラス、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内若しくは経皮から選択される最低1様式による、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記線維症が器官特異的線維症若しくは全身性線維症である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記器官特異的線維症が、肺線維症、肝線維症、腎線維症、心線維症、血管線維症、皮膚線維症、眼線維症、骨髄線維症若しくは他の線維症の最低1種を伴う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記肺線維症が、薬物誘発性肺線維症、喘息、サルコイドーシス若しくは慢性閉塞性肺疾患の最低1種を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記肝線維症が肝硬変、住血吸虫症若しくは胆管炎の最低1種を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記肝硬変が、C型肝炎後肝硬変、原発性胆汁性肝硬変から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記胆管炎が硬化性胆管炎である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記腎線維症がループス糸球体硬化症を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記心線維症が少なくとも1つの型の心筋梗塞を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記血管線維症が、血管形成術後動脈再狭窄若しくはアテローム硬化症の最低1種を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記皮膚線維症が、ケロイド若しくは腎性線維化性皮膚症の最低1種を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記眼線維症が、後眼窩線維症、白内障後手術若しくは増殖性硝子体網膜症の最低1種
を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記骨髄線維症が、特発性骨髄線維症若しくは薬物誘発性骨髄線維症の最低1種を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記他の線維症が、ペーロニー病、デュピュイトラン拘縮若しくは皮膚筋炎から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記全身性線維症が全身性硬化症および移植片対宿主病から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
本明細書に記述されるいずれかの発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−505878(P2010−505878A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531622(P2009−531622)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/080542
【国際公開番号】WO2008/060783
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】