説明

線維症用の新規造影剤

本発明は、線維症の非侵襲的な可視化に適した新規な造影剤を提供する。本発明では、造影剤の製造方法、並びに、この方法で使用する前駆体も提供する。本発明は、この造影剤を含む医薬組成物、並びにこの医薬組成物の製造に用いるキットも提供する。さらに別の態様では、インビボイメージングを行う際の造影剤の使用及びマンノース−6−リン酸塩受容体が上方制御される病態を診断するための薬剤を造影するにあたっての造影剤の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断、特に線維症の画像診断に関する。この目的に適した診断用造影剤、特に肝臓、心臓、腎臓及び肺の線維症の画像診断に適した診断用造影剤について開示する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、細胞外マトリックス成分の過剰分泌を特徴とするプロセスである。これは、マトリックスタンパク質、特にI型及びIII型コラーゲンの合成増大と分解減少によって起こり、炎症、感染又は損傷に起因する組織損傷に対する反応として引き起こされる。簡単にいうと、線維症は瘢痕組織であり、組織の「修復」プロセス全体の一部をなす。しかし、炎症や感染の進行及び損傷の繰り返しによって、線維症の瘢痕組織が増加し、「機能性」細胞に置き換えられないので、臓器の機能に異常をきたし、ひいては臓器不全を招く。
【0003】
線維症は医学における重要で古典的な病理過程の一つである。以下に挙げるような世界中で何百万人もの人々が罹患する多くの疾患の重要な構成要素である。
a)特発性肺線維症(原因不明の肺線維症)、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような肺疾患、
b)強皮症:体内の結合組織(すなわち、皮膚及び内蔵)中での細胞外マトリックスの過剰蓄積を特徴とする重篤な不均質疾患、
c)移植後の手術後瘢痕、
d)糖尿病性網膜症及び加齢性黄斑変性症(目の線維性疾患で、失明の最大の原因)、
e)アテローム性動脈硬化症及び不安定プラークを始めとする循環器病、
f)糖尿病に関連した腎線維症:糖尿病性腎症及び糸球体硬化症、
g)IgA腎症(腎不全の原因であり、透析及び再移植が必要となる。)、
h)肝硬変及び胆道閉鎖症(肝線維症及び肝不全の最大の原因)、
i)関節リウマチ、
j)皮膚筋炎のような自己免疫疾患、
k)うっ血性心不全。
【0004】
線維症の臨床症状は変化に富む。肝硬変を例にとると、臨床症状は、症状の全くないものから肝不全まで様々であり、根底にある肝疾患の性状及び程度、さらには肝線維症の程度によって決まる。肝硬変の患者の40%以下は無症状で、十年以上無症状であることもあるが、ひとたび腹水、静脈瘤出血、脳症などの合併症を発症すると、進行性機能低下は避けられない。肝線維症及び肝硬変は、ウイルス、自己免疫、薬物性、コレステロール性及び代謝疾患を始めとする様々な原因に由来する慢性肝障害の持続性創傷治癒反応の結果であるといえる。肝線維症及び肝硬変の一般的原因としては、免疫媒介障害、遺伝的異常、糖尿病やメタボリックシンドローム(MS)に付随することが特に多い非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。西欧ではメタボリックシンドローム(MS)の割合が高い。メタボリックシンドロームは通例肥満で高脂血症や高血圧の個体で起こり、II型糖尿病の発症につながることが多い。メタボリックシンドロームの肝臓での症状は、非アルコール性脂肪肝症(NAFLD)であり、米国での推定罹患率は人口の24%である。脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝症NAFLDの一群の症状としては軽いものであるが、進行すると、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やひいては肝硬変になる。線維症の発症はかかる進行のリスクを示し、現在では肝臓の生検によって診断されている。しかし、肝臓の生検は、相当の不快感を伴い、リスクもあり、費用もかさむ。さらに、肝線維症に関して現在利用可能な血液検査は、NAFLDにおいては信頼性に欠ける。
【0005】
国際公開第00/23113号には、肝星細胞(HSC)を標的とするペプチドと担体分子とを含む化合物が開示されている。標的受容体の例は、HSCに対して特異的なもの、又は疾患(例えば線維症)時にHSCで上方制御される受容体、例えば血小板由来増殖因子受容体、コラーゲンVI受容体、トランスフォーミング増殖因子β受容体、インターロイキン−1β受容体、腫瘍壊死因子α受容体である。国際公開第00/23113号の別の態様では、標的受容体は、肝線維症での過剰発現が報告されている陽イオン非依存性のマンノース−6−リン酸塩(M6P)受容体である。適当な担体の例は、ヒト血清アルブミン、タンパク質、ポリマー担体及びリポソームである。これらの開示された化合物は主に薬剤担体であり、あらゆる種類の治療薬のターゲティングに利用できる。担体は好適には5000Da超であると開示されている。また、担体は診断のためのHSCの可視化にも利用でき、化合物は別の診断マーカーをさらに含んでもよいと記載されている。しかし、診断マーカーをどのようにして開示された化合物に結合させるかについては記載されていない。
【0006】
欧州特許出願公開第1495769号には、アンチセンス法、特にインビボアンチセンス法に用いるための配糖体−化合物コンジュゲートが開示されている。このコンジュゲートは、化合物に結合した配糖体を含んでおり、配糖体は、筋細胞のマンノース−6−リン酸塩受容体と結合し得るリガンドである。インビボ又はインビトロ診断のため、蛍光、放射性、酵素又は分子マーカーを含むように「マーカー」を付したコンジュゲートが挙げられているが、マーカーを付した化合物をどのようにして得るかについては記載されていない。
【特許文献1】国際公開第00/23113号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1495769号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、線維症、特に肝線維症を検出するための代替的な非侵襲性検査に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、線維症の非侵襲的な可視化に適した造影剤を提供する。本発明では、造影剤の製造方法、並びに該方法で用いる前駆体も提供する。本発明は、造影剤を含む医薬組成物、並びに医薬組成物の調製用キットも提供する。本発明の別の態様では、インビボイメージング並びにマンノース−6−リン酸塩受容体が上方制御される病態を診断するための薬剤の製造における造影剤の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一態様では、
(i)マンノース−6−リン酸塩(M6P)受容体に対する親和性を有するベクターと、
(ii)造影基と
を含む造影剤であって、造影基がベクターの一体部分として存在しているか、或いは造影基が適当な化学基を介してベクターと結合している造影剤を提供する。
【0010】
本発明に関して、「M6P受容体」という用語は、具体的には陽イオン非依存性のM6P受容体の細胞外ドメインに関する。
【0011】
「造影剤」という用語は、哺乳類の特定の生理又は病態生理をターゲティングするように設計された化合物であって、哺乳類の身体に投与した後でインビボで検出できる化合物を意味する。
【0012】
上述の通り、本発明の造影剤において、造影基はベクターの一体部分として存在していてもよく、例えば、ベクターの構成原子の1つを12Cでなく11Cとすることもできる。或いは、造影基は、適当な化学基(例えば、金属イオンである造影基と錯形成できる金属キレート)を介してベクターに結合していてもよい。ベクターを適当な化学基又は直接造影基自体に結合するためのリンカーが存在していてもよい。本発明の適当なリンカーは式−(L−のものである。
式中、
各Lは独立に−CO−、−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NRSO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNRCR−、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基、アミノ酸残基、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、
nは0〜20の整数であり、
各R基は独立にH、C1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル又はC1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に飽和又は不飽和炭素環又は複素環を形成したものである。
【0013】
枝分れリンカー基、つまり別のリンカー−(L−R′でさらに置換されたリンカー基−(L−(L、o及びR′はそれぞれL、n及びRについて定義した通りである。)も利用できる。
【0014】
かかるリンカーは、造影剤の体内分布及び/又は分泌プロファイルを操作する場合に特に有用である。例えば、ポリエチレングリコール基又はアセチル基を含むリンカーを導入すると、造影剤の血液滞留時間を改善することができる。
【0015】
「アミノ酸」という用語は、L−若しくはD−アミノ酸、アミノ酸類似体(ナフチルアラニンなど)又はアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のものであっても純粋な合成品であってもよく、光学的に純粋、つまり単一の鏡像異性体でキラルなものであってもよいし、鏡像異性体の混合物であってもよい。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋である。
【0016】
かかるリンカーは、以下で説明する本発明の他の部分についても有用である。本発明では、好ましいL基及びL基は、−CO−、−CH−、−NH−、−NHCO−、−CONH−、−CHOCH−及びアミノ酸残基である。
【0017】
本発明に関して、「親和性」という用語は、インビトロでM6P受容体に対して100nM未満、好ましくは50nM未満、最も好ましくは10nM未満のKd値で結合することを意味する。別法として、親和性は、インビトロでのM6P受容体へのβ−ガラクトシダーゼの結合を阻害する能力としても定義でき(Distler et al,1991,J. Biol. Chem. 266(32)21687−92に記載)、IC50値は10μM未満、好ましくは1μM未満、さらに好ましくは0.1μM未満、最も好ましくは0.01μM未満である。親和性は、インビトロでのM6P受容体へのインシュリン様増殖因子II(IGF−II)の結合を阻害する能力として定義することもでき(Marron P.G. et al,1998,J. Biol. Chem. 273(35)、22358−22366)、IC50値は10μM未満、好ましくは1μM未満、さらに好ましくは0.1μM未満、最も好ましくは0.01μM未満である。
【0018】
本発明の造影剤は、好ましくは、オリゴヌクレオチド、RNA、DNA、ペプチド核酸、増殖因子、ワクチン、ビタミン又は抗体がM6Pベクターに結合していないものである。最も好ましくは、本発明の造影剤は、M6Pベクターに造影基しか結合していないものであり、それ以外のものがM6Pに結合していないものである。
【0019】
M6P受容体用のベクターは、好ましくは、以下の(i)〜(iv)の1種以上を含む。
【0020】
(i)67アミノ酸IGF−II配列又はその断片もしくは類似体、
(ii)M6P、
(iii)二リン酸化糖ペプチド、又は
(iv)レチノイン酸又はその誘導体。
【0021】
IGF−IIは、M6P受容体に高い親和性(pH7.4でKd0.3〜14nM)で結合し、本発明のベクターとしての使用に適している。IGF−IIは、配列番号1に示す通り、67のアミノ酸残基からなる非グリコシル化一本鎖である。好ましくは、67のアミノ酸からなる配列のペプチド断片又はペプチド類似体を使用し得る。
【0022】
「ペプチド断片」という用語は、本発明では、67のアミノ酸からなるIGF−II配列の一部分を含んでいてM6P受容体に対する親和性を保持している天然又は合成ペプチドを意味する。IGF−II配列のペプチド断片は、5〜60のアミノ酸残基、好ましくは8〜60のアミノ酸残基からなる。好ましいペプチド断片は合成ペプチドである。
【0023】
「ペプチド類似体」という用語は、本発明では、67のアミノ酸からなるIGF−II配列の全長又は一部を含む天然又は合成ペプチドであって、1以上のアミノ酸残基が代替アミノ酸残基で置換されていてM6P受容体に対する親和性が保持されている天然又は合成ペプチドを意味する。好ましいペプチド類似体は合成ペプチドである。ペプチドの変化を最小限にとどめるため、わずかなアミノ酸残基だけを置換し、保存的置換のみを行うのが慣行である。以下の表に、保存的とみなされる置換の概要をまとめた。
【0024】
【表1】

ただし、M6P受容体に対する親和性が保持される限り、どのようなアミノ酸置換も適している。また、好ましいアミノ酸置換は、インシュリン様増殖因子−I(IGF−I)受容体よりも、M6P受容体に対して向上した特異性を有するペプチド類似体を与える置換である。例えば、LeuによるTyr27の非保存的置換は、IGF−I受容体に対する親和性は低下するものの、M6P受容体に対する親和性は保たれる。
【0025】
以下に、67アミノ酸IGF−II配列の最も好ましいペプチド断片及びペプチド類似体の例を挙げる。
(i)アミノ酸残基48〜55(配列番号2)を含むペプチド又はそのペプチド類似体、
(ii)アミノ酸残基8〜28(配列番号3)と41〜61(配列番号4)とが直接又は式−(L−のリンカーを介して結合しているペプチド又はそのペプチド類似体、
(iii)アミノ酸残基8〜67(配列番号5)を含むペプチド又はそのペプチド類似体、
(iv)以下の各種のアミノ酸残基の置換体:Phe26Ser(配列番号6)、Phe19Ser(配列番号7)、Glu12Lys(配列番号8)、Tyr27Leu(配列番号9)
式中、Lは上記のLについて定義した通りであり、pは1〜30である。
【0026】
本発明の好ましいIGF−II断片の例は、以下のIGF化合物1である。
【0027】
【化1】

これらのペプチドは従来の固相合成で得ることができる。固相ペプチド合成の方法論について最新の概説については、Albericio, Curr.Opinion Cell Biol.20048 211−21を参照されたい。
【0028】
2以上のIGF−IIのペプチド断片を、適宜、1以上のリンカー基−(L−で結合してもよい。IGF−IIの2つのペプチド断片を結合する場合には、L基がアミノ酸及び/又はPEGであるリンカーが好ましい。リンカーがPEGリンカーのときは、1〜30のエチレングリコール単位からなるものが好ましい。
【0029】
IGF−IIペプチド及びその断片又は類似体について、造影基の適当な位置としては、ペプチドのアミノ末端及びカルボキシ末端がある。その他の適当な位置は、ペプチドを構成するアミノ酸の側鎖である。好ましくは、IGF−II又はその断片もしくペプチド類似体を造影基と連結するリンカーが存在する。例えば、上述のIGF化合物1の場合、造影剤は好ましくはリンカーの末端のアミノ基に位置する。
【0030】
M6Pを有する数多くの化合物が、本発明の造影剤のベクターとしての使用に適している。かかる化合物の例としては、M6P、M6P修飾ヒト血清アルブミン(HSA)及びM6P含有オリゴマンノシド、例えば以下のようなDistler et al, J.Biol.Chem.1991 266(32)21687−92に記載されたものが挙げられる(式中、Manはマンノースである。)。
(i)M6P(α1,2)−Man−O(CHCOMe(α1,2結合ジマンノシド)
(ii)M6P(α1,3)−Man−O(CHCOMe(α1,3結合ジマンノシド)
(iii)M6P(α1,6)−Man−O(CHCOMe(α1,6結合ジマンノシド)
(iv)M6P(α1,2)−Man(α1,2)−Man−O(CHCOMe(α1,2結合トリマンノシド)
(v)次式の二分岐オリゴマンノシド
【0031】
【化2】

上述の化合物(i)〜(v)を、本明細書では、それぞれ「M6P化合物1」〜「M6P化合物5」という。上記オリゴ糖化合物の合成は、Distler et al, J.Biol.Chem1991 266(32)21687−92及びSrivastava et al, J.Org.Chem.1987 52 2869−75に記載されている。
【0032】
M6P含有化合物がベクターである場合には、造影基は好適には、M6P受容体との結合に関与しないベクターの置換基を介して連結させる。好ましくは、M6P含有化合物はM6P化合物1〜6のいずれかであり、造影基がM6P化合物1〜5のカルボキシメチル基を介して又はM6P化合物6のリジン残基のアミンを介して結合している。
【0033】
別の好ましい実施形態では、M6P含有化合物は上述の化合物のいずれかであるが、リン酸塩基の1以上がホスホン酸基で置換された化合物であってもよい。
【0034】
本発明の造影剤におけるベクターとしての使用に適した他の化合物は、二リン酸化糖ペプチドである。国際公開第95/014036号には、かかる化合物でM6P受容体に結合するものが開示されており、これらは炎症その他の疾患の治療に有用であり、それらの合成はChristensenら(J.Chem.Soc.Perkin Trans.1994 1299−1310)に記載されている。これらの化合物はいずれも本発明のベクターに適している。これらは次の式Iで表すことができる。
【0035】
【化3】

式中、
及びRは各々独立に(i)グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラマノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミニル、フルクトース及びN−アセチルノイラミン酸から選択される天然L又はD単糖又はそれらのリン酸化物もしくは硫酸化物並びに(ii)上記の(i)から選択される単糖からなるオリゴ糖から選択され、
及びAは各々独立に−H、−OH、−NH、−アセチル、D又はLアミノ酸、ペプチド、糖ペプチド、ペプチド類縁体及びオリゴヌクレオチドから選択され、
及びAは各々独立にD又はL−ヒドロキシアミノ酸、例えば、Ser、Thr、Hyl、Hyp、Tyr、或いはD又はLカルボキシアミドアミノ酸、例えばAsn及びGlnであり、
は、遺伝的コード又は非コードD又はL型アミノ酸又はペプチド模倣体又はヌクレオチドからなる群から選択され、
mは1〜30の整数であり、
線状配列A〜Aのいずれかの残基が共有結合して環状化合物を形成していてもよい。
【0036】
好ましくは、R及びRはM6P基であり、Aはアセチル基であり、Aは−NHであり、A及びAはThrであり、Aは1〜5アミノ酸残基の鎖である。
【0037】
最も好ましくは、本発明の二リン酸化糖ペプチドは以下の(i)又は(ii)である。
(i)Ac−Thr[α−D−M6P−(1、2)−α−D−マンノース]−Lys(アミノベンズアミド)−Thr[α−D−M6P−(1、2)−α−D−マンノース]−NH(「糖ペプチド化合物1」)
(ii)Ac−Thr[α−D−M6P]−Gly−Lys−Gly−Thr[α−D−M6P]−NH2(「糖ペプチド化合物2」)。
【0038】
二リン酸化糖ペプチドが、M6P受容体に対する親和性を有するベクターである場合、造影基は好ましくは基(Aに存在するアミノ酸の一つを介して結合する。
【0039】
別の好ましい実施形態では、二リン酸化糖ペプチドは上述の化合物のいずれかであるが、リン酸塩基の1以上がホスホン酸基で置換された化合物であってもよい。
【0040】
レチノイン酸はM6P受容体にIGF−II結合部位とは異なる部位で、高い親和性(Kd、2.4nM)で結合する。レチノイン酸及びその誘導体は、本発明の造影剤のベクターとして適している。レチノイン酸の構造を以下に示す。
【0041】
【化4】

本発明で好適なレチノイン酸の誘導体としては、式−(L−R″(式中、L、q及びR″は、L、n及びRについて定義した通りである)の付加によって修飾されたレチノイン酸が挙げられる。R″は好ましくはアミノ、カルボキシ又はヒドロキシルであり、Lは好ましくはアミノ酸又はPEGである。リンカーがPEGリンカーの場合には、リンカーは好ましくは1〜20のエチレングリコール単位からなり、さらに好ましくは1〜15のエチレングリコール単位からなり、最も好ましくは1〜12のエチレングリコール単位からなる。
【0042】
この種の好ましいレチノイン酸誘導体としては、PEGリンカーと1以上のアミノ酸残基を含むものがある。PEGリンカーは、得られる造影剤の体内分布及び/又は分泌を調製する手段として1以上の荷電アミノ酸基を含んでいてもよい。
【0043】
M6P受容体用のベクターがレチノイン酸又はその類似体である場合、造影基は好ましくはレチノイン酸のカルボキシ基を介して又はレチノイン酸類似体に存在する反応性基(例えば上述のレチノイン酸化合物1のアミノ又はカルボキシ基)を介してベクターに結合する。
【0044】
さらに、ベクターは、上述の2種以上のベクターを組み合わせた多価ターゲティングベクターであってもよい。かかるベクターを含む造影剤は、M6P受容体が各々のベクターについて独立した結合部位を有しているので、M6P受容体に対して向上した親和性を呈すると予想される。かかる多価ベクターの例を以下に示す。
【0045】
【化5】

2つのM6P基を含む多価ベクターについては、好ましくは上述の枝分れPEGリンカー基で結合される。上記に示したリンカーは式−(L−のものである(式中、LはLについて定義したのと同じであり、rは10〜50である。)。理想的には、リンカーは個々のベクター部分が離隔するように作用して、それらがM6P受容体のそれぞれの結合部位で最適に結合するように配置されるようにする。アミノ酸及び/又はPEGを含むリンカーが好ましい。
【0046】
造影剤の投与後、「造影基」は患者の体外から検出してもよいし、或いはインビボ用に設計された検出機器、例えば血管内放射線又は光学検出機器(内視鏡など)又は術中用に設計された放射線検出機器を使用することによって検出してもよい。
【0047】
造影基は、好ましくは、以下の(i)〜(vii)から選択される。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボ光学イメージングに適したレポーター、
(vii)血管内検出に適したβ線放射体。
【0048】
造影基が放射性金属イオンつまり放射性金属である場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、或いは99mTc、111In、113mIn又は67Gaのようなγ線放射体である。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0049】
造影基が常磁性金属イオンである場合、かかる金属イオンの好適なものとして、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)が挙げられる。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0050】
造影基がγ線放出型放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは好適には123I、131I又は77Brから選択される。125Iは、画像診断用の造影基としての使用には適していないので、特に除外してある。好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0051】
造影基が陽電子放出型放射性非金属である場合、かかる陽電子放射体の好適なものとして、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0052】
造影基が過分極NMR活性核種である場合、かかるNMR活性核種はゼロ以外の核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pが挙げられる。これらのうち、13Cが好ましい。「過分極」という用語は、NMR活性核種の分極の程度がその平衡分極を超えていることを意味する。13Cの天然存在量(12Cに対して)は約1%であり、適当な13C標識化合物は過分極する前に好適には5%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは90%以上の存在量となるように濃縮される。本発明の造影剤の1以上の炭素原子は好適には13Cで濃縮され、これを次いで過分極させる。
【0053】
造影基がインビボ光学イメージングに適したレポーターである場合、レポーターは光学イメージング法で直接又は間接的に検出できる部分であればよい。レポーターは光散乱体(例えば着色又は未着色粒子)でも、光吸収体でも、発光体でもよい。さらに好ましくは、レポーターは発色団又は蛍光化合物のような色素である。色素は紫外乃至近赤外域の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する色素であればよい。最も好ましくはレポーターは蛍光特性を有する。
【0054】
好ましい有機発色団及び蛍光団レポーターとしては、広範な非局在化電子系を有する基、例えばシアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素鎖体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)鎖体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)鎖体、ヨードアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)鎖体が挙げられる。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び吸収/発光特性の異なるGFPの修飾体も有用である。ある種の希土類金属(例えばユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の鎖体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)と同様に、特定の状況で用いられる。
【0055】
使用し得る発色団の具体例としては、フルオレセイン、スルホローダミン101(テキサスレッド)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、マリーナブルー、パシフィックブルー、オレゴングリーン88、オレゴングリーン514、テトラメチルローダミン並びにAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750が挙げられる。
【0056】
特に好ましいのは、400nm〜3μm、特に600〜1300nmの可視又は近赤外(NIR)域に吸収極大を有する色素である。光学イメージングモダリティ及び測定法としては、特に限定されないが、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層撮影、透過イメージング、時間分解透過イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光法、干渉分光法、コヒーレンス干渉法、拡散光トモグラフィー及び蛍光媒介拡散光トモグラフィー(連続波、時間領域及び周波数領域システム)、並びに光散乱、吸収、偏光、発光、蛍光寿命、量子収率及び消光の測定が挙げられる。
【0057】
造影基が血管内検出に適したβ線放射体である場合、かかるβ線放射体の好適なものとして、放射性金属の67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re又は192Ir並びに非金属の32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brが挙げられる。
【0058】
好ましい造影基は、インビボ投与後に、非侵襲的方法で外部から検出できるものである。最も好ましい造影基は、放射性、特に放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属、特にSPECT又はPETを用いたイメージングに適したものである。造影基を各種のベクターに導入することができる様々な手段については、以下の本発明の別の態様についての説明で概説する。
【0059】
本発明の好ましい造影剤はインビボで容易に代謝されず、最も好ましくは人体で60〜240分のインビボ半減期を示す。造影剤は好ましくは腎臓経由で排泄(つまり尿中排泄)される。造影剤の好ましくは病巣で1.5以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上の信号対バックグラウンド比を示す。造影剤が放射性同位体を含む場合、生体内で非特異的に結合しているか或いは遊離している造影剤のピーク値の半量のクリアランスは、好ましくは造影基の放射性同位体の放射性崩壊の半減期以下の時間で起こる。
【0060】
また、造影剤の分子量は好適には5000Da以下である。好ましくは、分子量は150〜3000Da、最も好ましくは200〜1500Daの範囲であり、300〜800Daであるのが特に好ましい。
【0061】
本発明の造影剤の例を以下に例示する。
【0062】
【化6】

【0063】
【化7】

上記化合物を得るための合成経路はそれぞれ実施例4、7、8、10に記載されている。
【0064】
本発明のこの態様の造影剤は前駆体化合物から製造されるが、前駆体化合物は本発明の別の態様をなすものであり、以下でさらに詳しく説明する。
【0065】
別の態様では、本発明は、前駆体と適当な造影基源との反応を含む、本発明の造影剤の製造方法であって、上記前駆体が、
(i)M6P受容体に対して親和性を有するベクターと、
(ii)上記造影基源と反応し得る化学基であって、造影基が化合物と結合して造影剤を生じる化学基と
を含んでおり、上記化学基がベクターの一体部分であるか或いはベクターと結合している、方法を提供する。
【0066】
「前駆体」には、ベクターの誘導体であって、適当な化学的形態の造影剤との化学反応が部位特異的に起こり、最小限の段階数(理想的には一段階)で実施でき、しかも多大な精製を行わずに(理想的にはそれ以上精製しなくても)所望の造影剤が得られるように設計されたものが包含される。かかる前駆体は合成品であり、良好な化学的純度で得ることができる。「前駆体」は、適宜、M6P受容体に対する親和性を有するベクターの官能基に対する保護基を含んでいてもよい。
【0067】
「保護基」という用語は、不都合な化学反応は阻害又は抑制するが、分子の残りの部分を修飾しない十分穏和な条件下で当該官能基から脱離させることができる十分な反応性をもつように設計された基を意味する。脱保護後に、所望の生成物が得られる。保護基は当業者に周知であり、好適には、アミン基については、Boc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[すなわち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(すなわち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、カルボニル基については、メチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから選択される。
ヒドロキシ基に対する適当な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)或いはテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に対する適当な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。その他の保護基の使用については、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition、John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
【0068】
好ましくは、造影基源と反応し得る化学基は、以下の(i)〜(vi)のいずれかを含む。
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート、又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(iv)求核又は求電子置換反応用の活性化芳香族環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化を起こす官能基を有する誘導体、
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体。
【0069】
造影基が金属イオンを含む場合、前駆体は、金属イオンと錯形成して金属錯体を形成することのできる化学基を含む。「金属鎖体」という用語は、金属イオンと1以上の配位子との配位鎖体を意味する。金属鎖体は「キレート交換耐性」、つまり金属の配位部位に対する他の潜在的な競合配位子との配位子交換を容易に起こさないものであるのが極めて好ましい。潜在的な競合配位子には、M6P受容体用のベクター自体並びにインビトロ標品中の他の賦形剤(製剤に使用される例えば放射線防護剤又は抗菌保存剤)又は生体の内在性化合物(例えばグルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。
【0070】
キレート交換に耐性の金属鎖体を形成する本発明の使用に適した配位子としては、(金属ドナー原子同士が炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格で連結されて)五又は六員キレート環が形成されるように2〜6、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配列したキレート剤、又はイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドのように金属イオンに強く結合するドナー原子を含む単座配位子が挙げられる。キレート剤の一部として金属によく結合するドナー原子の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィン類は強固な金属鎖体を形成し、単座又は二座ホスフィンであっても適当な金属鎖体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの線状構造は、それらをキレート剤に導入するのが容易ではないので、通例、単座配位子として使用される。適当なイソニトリルの例としては、tert−ブチルイソニトリルのような単純なアルキルイソニトリル及びmibi(すなわち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルが挙げられる。適当なホスフィンの例としては、テトロホスミン及び単座ホスフィン類、例えばトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンが挙げられる。適当なジアゼニドの例としては、配位子のHYNIC系配位子、すなわちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0071】
キレート交換耐性の金属鎖体を形成するテクネチウム用の適当なキレート剤の例としては、特に限定されないが、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
(i)ジアミンジオキシム;
(ii)チオールトリアミドドナーセットを有するNS配位子、例えばMAG(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連配位子、又はジアミドピリジンチオールドナーセットを有するもの、例えばPica;
(iii)ジアミンジチオールドナーセットを有するN配位子、例えばBAT又はECD(すなわちエチルシステイネート二量体)又はアミドアミンジチオールドナーセットを有するもの、例えばMAMA;
(iv)テトラミン、アミドトリアミン又はジアミンジアミンドナーセットを有する開環又はマクロ環状配位子であるN配位子、例えばサイクラム、モノオキシサイクラム又はジオキシサイクラム;又は
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN配位子。
【0072】
本発明の好ましいテクネチウム用キレート剤はジアミンジオキシム及びテトラアミンであり、それらの好ましいものについて以下で詳しく説明する。
【0073】
好ましいジアミンジオキシムは、次の式(X)のものである。
【0074】
【化8】

式中、
〜Eは各々独立にR基であり、
各RはH、C1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキル、C2−10カルボキシアルキル、又はC1−10アミノアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらと結合した原子と共に飽和又は不飽和炭素環又は複素環を形成するもので、1以上のR基がベクターと結合しており、
は式−(J−の架橋基であり、fは3、4、又は5であり、各Jは独立に−O−、−NR−、又は−C(R−であるが、−(J−が、−O−又は−NR−であるJ基を最大1個しか含まないことを条件とする。
【0075】
好ましいQ基は以下のものである。
=−(CH)(CHR)(CH)−、すなわちプロピレンアミンオキシムつまりPnAO誘導体、
=−(CH(CHR)(CH−、すなわちペンチレンアミンオキシムつまりPentAO誘導体、
=−(CHNR(CH−。
【0076】
〜Eは、好ましくは、C1−3アルキル、アルキルアリールアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル、アミノアルキルから選択される。最も好ましくは、各E〜E基はCHである。
【0077】
M6P受容体のベクターは、好ましくは、EもしくはEのR基又はQ部分のR基で結合している。最も好ましくは、Q部分のR基で結合する。Q部分のR基で結合している場合、R基は好ましくは橋頭位である。この場合、Qは、好ましくは、−(CH)(CHR)(CH)−、−(CH(CHR)(CH−、又は−(CHNR(CH−であり、最も好ましくは−(CH(CHR)(CH−である。特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレート剤は、次の式(Xa)のものである。
【0078】
【化9】

式中、
〜E20は各々独立に上記で定義したR基であり、
はN又はCRであり、
は−(L−ベクターであり、L及びsはそれぞれ上記でL及びnについて定義した通りであり、「ベクター」は、上記で定義したM6P受容体に対する親和性を示すベクターである。リンカー基−(L−が存在する場合、それ以外にキレートとベクターを連結する他のリンカー基は存在しない。
【0079】
式(Xa)の好ましいキレート剤は、次の式(Xb)のものである。
【0080】
【化10】

式中、Gは上記のGで定義した通りであり、好ましくはCH(=「キレートX」、その合成方法については実施例5に記載)であって、M6P受容体のベクターが橋頭位−CHCHNH基を介して結合する。
【0081】
本発明の好ましいテトラアミンキレート剤は、次の式Zのものである。
【0082】
【化11】

式中、Qは式−(J−の架橋基であり、gは1〜8であり、各Jは独立に−O−、−NR−又は−C(R−、好ましくは−C(R−、最も好ましくは−CH−であり、Rは上記で定義した通りである。
【0083】
は−(L−ベクター基であり、L及びtはそれぞれL及びnについて上記で定義した通りである。リンカー−(L−が存在している場合、これ以外にキレートをベクターに連結するリンカーは存在しない。かかるテトラアミンキレートでは、好ましくはリンカーはアリール環を含まない。こうすると、錯体の親油性を下げるのに役立つ。
【0084】
21〜E26は、上記で定義したR基である。
【0085】
最も好ましい本発明のテトラアミンキレートは、次の式Zaのものである。
【0086】
【化12】

式中、Yは上記でYについて定義した通りである。
【0087】
本発明の特に好ましいテトラアミンキレートは、式ZaのものでYが−CO−であるものである(「キレートZ」、ベクターの結合していないキレートの合成については実施例2に記載)。
【0088】
上述の配位子は、テクネチウム(例えば94mTc又は99mTc)の錯体の形成に特に適しており、Jurisson et al, Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)に詳細に記載されている。この配位子は、銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば48V)、鉄(例えば52Fe)又はコバルト(例えば55Co)のような他の金属にも有用である。その他の適当な配位子については、インジウム、イットリウム及びガドリニウム、特に単環アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸配位子に特に適した配位子を始めとして、Sandozの国際公開第91/01144号に記載されている。この種の適当なキレート剤の例としては、1、4、7、10−テトラアザシクロデカン−1、4、7、10−テトラ酢酸(DOTA)及びジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)が挙げられる。ガドリニウムの非イオン性(すなわち中性)の金属錯体を形成する配位子は公知であり、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属がテクネチウムの場合、配位子は好ましくは四座のキレート剤である。テクネチウム用の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム又は上述のN又はNSドナーセットを有するものである。
【0089】
リンカー基(−(L−又は−(L−として上述したもの)の役割は、金属の配位で得られる比較的嵩高い金属錯体を、M6P受容体のベクターの活性部位から遠ざけることによって、例えば、受容体の結合がに支障をきたさないようにすることである。これは、嵩高い基が活性部位から遠ざかる自由度をもつようにするための柔軟性(例えば単純なアルキル鎖)及び/又は金属錯体を活性部位から遠ざけるシクロアルキル系もしくはアリール系スペーサーのような剛直性の組合せによって達成することができる。リンカー基の性状は、得られるコンジュゲートの金属錯体の体内分布又は分泌特性を変更するのにも利用できる。例えばエーテル基をリンカーに導入すると、血漿タンパク質の結合を最小限に抑制するのに役立つし、ポリアルキレングリコールのようなポリマー系リンカー基、特にPEG(ポリエチレングリコール)を使用すると、血液中での造影剤のインビボ寿命を延ばすのに役立つ。
【0090】
好ましいリンカー基−(L−又は−(L−は、原子数2〜10、最も好ましくは原子数2〜5の骨格鎖を含むもので、原子数2又は3の物が特に好ましい。原子数2の最短のリンカー基骨格鎖であっても、生物学的ターゲティング基からキレーターが十分に離隔して相互反応が最小限になるという利点が得られる。さらに、ベクターも、金属イオンへのキレーターの配位に有効に拮抗できなくなる。こうして、ベクターの生物学的ターゲティング特性とキレーターの金属錯形成能が共に保持される。なお、M6P受容体のベクターがキレーターに、それらの結合が血中で容易に代謝されないように結合していることが強く望まれる。かかる代謝によって、標識した受容体ベクターがインビボで所望の標的部位に達する前に、造影用の金属錯体が開裂してしまうからである。そこで、M6P受容体のベクターは、好ましくは、容易には代謝されないリンカー基を介して本発明の金属錯体に共有結合させる。かかる好適な結合は、炭素−炭素結合、アミド結合、尿素もしくはチオ尿素結合又はエーテル結合である。
【0091】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチド系リンカー基は、連結されたM6P受容体ベクターと有意の水素結合相互作用がないため、リンカーがベクターに巻き付くことがないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH−であり、式中、uは2〜5の整数である。好ましくは、qは2又は3である。好ましいアリーレンスペーサーは次式のものである。
【0092】
【化13】

式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0093】
好ましいY−Y基は−CHCH−(L−であり、vは0〜3の整数である。
【0094】
ベクターがペプチドの場合、Y−Yは好ましくは−CHCH−(L−であり、式中、Lは−CO−又は−NR'''−(R'''はRについて上記で定義した通り)であり、wは0〜3である。G又はGのいずれかがNであり、−(L−が−NH−である場合、この組合せは市販の対称中間生成物N(CHCHNHから誘導できるという追加の利点がある。
【0095】
造影用金属がテクネチウムの場合、通常のテクネチウム出発原料は過テクネチウム酸塩、すなわちTcOつまり酸化状態がTc(VII)のテクネチウムである。過テクネチウム酸塩自体は金属錯体を形成しにくいので、テクネチウム錯体の製造に際しては、テクネチウムの酸化状態を低酸化状態(Tc(I)〜Tc(V))に還元することによって錯形成を促進するための第一スズイオンのような適当な還元剤を添加する必要がある。溶媒は有機溶媒でも、無機溶媒でも、それらの混合物でもよい。溶媒が有機溶媒を含む場合、有機溶媒は好ましくはエタノール又はDMSOのような生体適合性溶媒である。好ましくは、溶媒は水性溶媒であり、最も好ましくは等張塩類溶液である。
【0096】
造影基が放射性ヨウ素である場合、好ましい前駆体は、求電子又は求核ヨウ素化或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を起こすような誘導体を含むものである。前者に属するものの例としては、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)トリアルキルスタンナン(例えばトリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えばトリメチルシリル)又は有機ホウ素化合物(例えば、ボロン酸エステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体、
(b)ハロゲン交換のための非放射性臭化アルキル、或いは求核ヨウ素化のためのアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート、
(c)求電子ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばフェノール)及び求核ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばアリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0097】
前駆体は、好ましくは、ヨウ化又は臭化アリールのような非放射性ハロゲン原子(放射性ヨウ素交換を可能とするため)、活性化前駆体アリール環(例えばフェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えばトリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、トリアゼンのような有機前駆体、或いはヨードニウム塩のような求核置換反応のための良好な脱離基を含む。放射性ヨウ素化では、前駆体は好ましくは有機金属前駆体化合物を含み、最も好ましくはトリアルキルスズを含む。
【0098】
前駆体及び放射性ヨウ素を有機分子に導入する方法は、Bolton, J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。前駆体及び放射性ヨウ素をタンパク質に導入する方法は、Wilbur, Bioconj.Chem.,3(6)、433−470(1992)に記載されている。適当なボロン酸エステル有機ホウ素化合物及びその製造方法は、Kabalaka et al, Nucl.Med.Biol.,29、841−843(2002)及び30,369−373(2003)に記載されている。適当なオルガノトリフルオロホウ化物及びその製造方法は、Kabalaka et al, Nucl.Med.Biol.,31、935−938(2004)に記載されている。
【0099】
放射性ヨウ素を結合させることのできるアリール基の例としては、以下ののものがある。
【0100】
【化14】

これらはいずれも、芳香族環での放射性ヨウ素置換が容易な置換基を含んでいる。放射性ヨウ素を含む他の置換基は、例えば以下のような放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化によって合成することができる。
【0101】
【化15】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボで代謝され易く、放射性ヨウ素が失われ易いことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくは芳香族環(ベンゼン環など)又はビニル基に直接共有結合で結合させる。
【0102】
造影基がフッ素の放射性同位体である場合、フッ化アルキルはインビボ代謝に抵抗性であるので、放射性フッ素原子はフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基の一部としてもよい。或いは、放射性フッ素原子は、芳香族環(例えばベンゼン環)に直接共有結合で結合させてもよい。放射性ハロゲン化は、臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような良好な脱離基を有する前駆体の適当な化学基と18F−フッ化物との反応を用いた直接標識法で実施できる。18Fは、18F(CHOH反応体を用いたN−ハロアセチル基のアルキル化によって導入することもでき、−NH(CO)CHO(CH18F誘導体が得られる。アリール系については、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0103】
国際公開第03/080544号に記載された放射性フッ素化の別の方法は、以下の置換基のいずれかを含む前駆体化合物を式Vの化合物と反応させて、それぞれ式(Va)又は(Vb)の放射性フッ素化造影剤を生成させる。
【0104】
【化16】

18F−Y−SH(V)
式中、Yは式−(L10−のリンカーであって、適宜1〜6のヘテロ原子を含んでいてもよく(L10はLについて上記で定義した通りであり、xは1〜10である。)、
は式−(L11−のリンカーであって、適宜1〜10のヘテロ原子を含んでいてもよい(式中11はLについて上記で定義した通りであり、yは1〜30である。)。
【0105】
【化17】

式中、Yは上記で定義した通りであり、「ベクター」は、本発明の造影剤について上記で定義した通りM6P受容体に対して親和性を有するベクターである。
【0106】
18F−標識誘導体の合成経路についてのさらに詳しい内容は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0107】
本発明の18F−標識化合物は、18Fフルオロジアルキルアミンの形成後、18Fフルオロジアルキルアミンを、例えば塩素、P(O)Ph又は活性化エステルを含む前駆体と反応させてアミドを形成することによって得ることができる。
【0108】
ベクターがIGF−II又はその断片もしくは類似体である場合、そのアミノ又はカルボキシ末端を介して造影基を導入することができる。リンカーが存在する場合、造影基はリンカーの反応性基を介して導入することができる。例えば、IGF−IIのアミノ酸48〜55のアミノ末端にリンカーを付加し、次いで造影基の導入に適した化学基を付加すれば、以下に示すような前駆体化合物を得ることができる。
【0109】
【化18】

ベクターがM6Pを含む場合、上述の好ましい化合物のカルボキシメチル基の誘導体化によって造影基を導入すれば、以下に示すような前駆体化合物を得ることができる。
【0110】
【化19】

ベクターがジリン酸化糖ペプチドである場合、例えばM6P単位のペプチド結合に存在するいずれかのアミノ酸残基を介して造影基を導入すれば、以下に示すような前駆体化合物を得ることができる。
【0111】
(iii) Ac−Thr[α−D−M6P−(1,2)−α−D−マンノース]−Lys(キレート)−Thr[α−D−M6P−(1,2)−α−D−マンノース]−NH(「糖ペプチド前駆体1」)
(iv)Ac−Thr[α−D−M6P]−Gly−Lys−(キレート)−Gly−Thr[α−D−M6P]−NH2(「糖ペプチド前駆体2」)
ベクターがレチノイン酸又はその誘導体である場合、造影基は直接又はリンカーを介して間接的にカルボキシル基に導入することができる。カルボキシル基は、M6P受容体との結合には必要とされないので、造影基を導入するのに最も好ましい部位である。造影基源と反応し得る化学基とリンカーとを有するレチノイン酸前駆体化合物の例としては、以下のものがある。
【0112】
【化20】

レチノイン酸は親油性化合物であり、金属錯形成キレートと結合させて前駆体化合物を形成する際は、テトラミンのような親水性金属錯化キレートと結合させるべきである。
【0113】
複数のベクターを組み合わせる場合、上記の構成要素を、上述の通り、前駆体を形成するための誘導体化に利用できる適当な基を介して誘導体化すればよい。
【0114】
好ましい実施形態では、本発明の前駆体は、滅菌された非発熱性の形態である。したがって、前駆体は医薬組成物の製造に使用することができ、医薬組成物の調製用キットの構成成分としてキットに含めるのにも適している。これらの態様については、本発明の追加の態様に関連して、以下で詳しく説明する。
【0115】
別の好ましい実施形態では、本発明の前駆体は固相に結合している。前駆体は好ましくは固形担体マトリックスに共有結合した形で供給され、標識反応で標識と同時に固相からの開裂が起こるようにする。したがって、所望の造影剤生成物は溶液中で形成され、出発材料及び不純物は固相に結合したまま残る。かかる系の例として、国際公開第03/002489号には18F−フッ化物による固相求電子フッ素化のための前駆体が記載されており、国際公開第03/002157号には18F−フッ化物による固相求核フッ素化のための前駆体が記載されている。適切に適合させた自動化合成装置に挿入できるカートリッジを、好ましくはキットの一部として用意してもよい。カートリッジは、固相担体に結合した前駆体とは別個に、不要フッ化物イオンを除去するためのカラム、及び反応混合物を蒸発させて、生成物を適宜製剤化できるようにカラムに接続した容器を含んでいてもよい。
【0116】
本発明の別の態様は、造影剤の製造方法に関して定義した前駆体であり、上記化学基は、好ましくは、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む。
【0117】
本発明は、別の態様では、上述の造影剤を生体適合性担体と共に哺乳類への投与に適した形態で含む医薬組成物を提供する。好ましくは、医薬組成物は放射性医薬組成物である。
【0118】
「生体適合性担体」とは、造影剤を懸濁又は溶解できる流体、特に液体であって、組成物が生理学的に認容できるもの、つまり毒性も耐え難い不快感も伴わずに哺乳類の身体に投与することができるようなものである。生体適合性担体は好適には注射可能な担体液であり、例えば、発熱物質を含まない注射用の滅菌水、食塩液のような水溶液(これは注射用の最終製剤が等張性又は非低張性となるように調整するのに都合がよい)、1種以上の張度調節物質(例えば血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えばグルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えばグリセロール)その他の非イオン性ポリオール材料(例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。生体適合性担体は、エタノールのような生体適合性の有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は製剤の可溶化に有用である。好ましくは、生体適合性担体はパイロジェンフリーの注射用水、等張塩類溶液又はエタノール水溶液である。静脈内注射用の生体適合性担体のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内である。
【0119】
かかる医薬品は、好適には、無菌状態を維持したまま皮下注射針で一回又は複数回穿刺するのに適したシール(例えばクリンプオン式セプタムシール蓋)を備えた容器に入れて供給される。かかる容器には、1回又は複数回分の用量を入れることができる。好ましい多用量用容器は、複数回分の用量を収容した単一バルクバイアル(例えば容積10〜30cmのもの)からなり、臨床症状に応じて製剤の有効期間中様々な時間間隔で1回分の用量を臨床グレードのシリンジに吸引することができる。プレフィルドシリンジは1回分の用量つまり「単位用量」を収容するように設計され、そのため好ましくは使い捨て又はその他臨床用に適したシリンジである。医薬組成物が放射性医薬組成物の場合、プレフィルドシリンジは、適宜、オペレーターを放射能被曝から保護するためのシリンジシールドを備えていてもよい。かかる適当な放射性医薬品シリンジシールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなる。
【0120】
本発明の医薬組成物は、以下の本発明の追加の態様で説明する通り、キットから調製することもできる。或いは、医薬組成物は、所望の滅菌生成物が得られるような無菌製造条件下で製造してもよい。医薬組成物を非滅菌条件下で調製した後、例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて最終的に滅菌してもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物はキットから調製される。
【0121】
本発明の造影剤に関して上述した通り、放射性医薬組成物に対して最も好ましい本発明の放射性造影基は99mTc、123I及び18Fである。
【0122】
本発明は、さらに別の態様では、本発明の医薬組成物の調製用キットを提供する。かかるキットは、本発明の適当な前駆体、好ましくは滅菌された非発熱性の形態の前駆体を含んでいて、滅菌造影基源との反応で所望の医薬組成物を最低限の操作数で生ずる。かかる配慮は、放射性医薬品、特に放射性同位体の半減期が比較的短い放射性医薬品に対して重要であり、取扱いの容易さ及び放射性医薬品の取扱者の放射線被曝量の低減という点でも重要である。したがって、かかるキットの再構成用の反応溶媒は、好ましくは上記で定義した「生体適合性担体」であり、最も好ましくは水性担体である。
【0123】
キットの容器として適しているのは、無菌健全性及び/又は放射能の安全性並びに適宜、不活性ヘッドスペースガス(例えば窒素又はアルゴン)を維持することができ、しかも、シリンジで溶液の添加及び吸引もできる密封容器である。かかる容器として好ましいのはセプタムシールバイアルであり、気密蓋をオーバーシール(通例アルミニウム製)でクリンプしたものである。かかる容器は、適宜、例えば、ヘッドスペースガスの交換又は溶液の脱気などのため、蓋が真空に耐えることができるという追加の利点も有する。
【0124】
前駆体をキットに用いる際の好ましい態様は、本発明の造影剤の合成法に関して上記で説明した通りである。キットに用いられる前駆体は、望ましい無菌の非発熱性物質を生じるように無菌製造条件下で用いられる。前駆体を非無菌条件下で使用し、最後に例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて滅菌してもよい。好ましくは、前駆体は無菌非発熱性の形態で用いられる。最も好ましくは、無菌の非発熱性の前駆体を上述の密封容器内で用いる。
【0125】
キットの前駆体は、好ましくは、本発明の造影剤の合成法に関して説明した固形担体マトリックスに共有結合させた形態で供給される。
【0126】
99mTc用には、キットは好ましくは凍結乾燥したもので、99mTc放射性同位体ジェネレータからの無菌99mTc−過テクネチウム酸(TcO)で再構成すれば、それ以上操作しなくてもヒトへの投与に適した溶液が得られるように設計される。適当なキットは、上述の未錯化キレート剤を、亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第一スズイオン、Fe(II)又はCu(I)のような薬学的に許容される還元剤、並びに弱有機酸と生体適合性陽イオンとの1種以上の塩と共に収容した容器(例えばセプタムシールバイアル)を備える。「生体適合性陽イオン」という用語は、イオン化し負に荷電した基と塩を形成する正に荷電した対イオンであって、該正に荷電した対イオンが無毒性で、哺乳類の身体、特に人体への投与に適しているものを意味する。好適な生体適合性陽イオンの例としては、アルカリ金属のナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0127】
99mTc造影剤の調製用キットは、適宜、トランスキレーターとして機能する第二の弱有機酸又はその生体適合性陽イオンとの塩をさらに含んでいてもよい。トランスキレーターは、テクネチウムと迅速に反応して弱い錯体を形成し、次いでキットのキレート剤で置き換えられる化合物である。これは、テクネチウム錯形成と競合する過テクネチウム酸の迅速な還元に起因した還元型加水分解テクネチウム(RHT)が形成されるおそれを最小限に抑制する。かかるトランスキレーターとして適しているのは、上述の弱有機酸及びその塩であり、好ましくは、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩であり、好ましくはホスホン酸塩、特に好ましくはジホスホン酸塩である。かかる好ましいトランスキレーターは、MDP(メチレンジホスホン酸)又はその生体適合性陽イオンとの塩である。
【0128】
遊離型のキレート剤の使用に代えて、99mTc造影剤の調製用キットは、適宜、キレート剤の非放射性金属錯体を含んでいてもよく、テクネチウムを添加すると、トランスメタレーション(配位子交換)によって所望の生成物を生じる。かかるトランスメタレーションに適した錯体は銅又は亜鉛錯体である。
【0129】
キットに用いられる薬学的に許容される還元剤は、好ましくは、塩化第一スズ、フッ化第一スズ又は酒石酸第一スズのような第一スズ塩であり、これらは無水塩でも水和塩でもよい。第一スズ塩は好ましくは塩化第一スズ又はフッ化第一スズである。
【0130】
キットは、適宜、放射線防護剤、抗菌保存剤、pH調節剤又は充填剤のような追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0131】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解で生成する含酸素フリーラジカルのような反応性の高いフリーラジカルを捕捉することによって、酸化還元過程のような分解反応を阻害する化合物をいう。本発明の放射線防護剤は、好適には、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(すなわち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)並びにこれらと生体適合性陽イオンとの塩から選択される。「生体適合性陽イオン」及びその好適な実施形態は上述の通りである。
【0132】
「抗菌保存剤」という用語は、細菌、酵母又はカビなどの有害微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌保存剤は、濃度に応じてある程度の殺菌作用を示すこともある。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、再構成後の医薬組成物(つまり、造影剤自体)での微生物の増殖を阻害することである。ただし、抗菌保存剤は、再構成前のキットの1以上の成分における有害微生物の増殖の防止にも適宜使用できる。適当な抗菌保存剤としては、パラベン類、すなわちメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン又はこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗菌保存剤はパラベン類である。
【0133】
「pH調節剤」という用語は、再構成したキットのpHが、ヒト又は哺乳類への投与に関して許容範囲(約pH4.0〜10.5)内に収まるようにするのに有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。かかる適当なpH調節剤としては、トリシン、リン酸塩又はTRIS(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)のような薬学的に許容される緩衝剤、並びに炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物などの薬学的に許容される塩基が挙げられる。コンジュゲートを酸塩の形態で用いる場合、キットのユーザーが多段階法の一部としてpHを調節できるようにpH調節剤を適宜別のバイアル又は容器で提供してもよい。
【0134】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥時の材料の取扱いを容易にする薬学的に許容される増量剤を意味する。適当な充填剤としては、塩化ナトリウムのような無機塩並びに水溶性糖類又は糖アルコール、例えばスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースが挙げられる。
【0135】
本発明の造影剤は、インビボイメージングに有用である。したがって、別の態様では、本発明は、インビボ診断又はイメージング法、例えばSPECT又はPETに用いる造影剤を提供する。好ましくは、この方法は、M6P受容体が上方制御される病態のインビボイメージングに関する方法であり、肝線維症、うっ血性心不全、糸球体硬化症及び呼吸不全のように、線維症に関連した病態の診断に有用である。最も好ましい実施形態では、上記病態は、HSC及び肝実質細胞でM6P受容体が上方制御されることが知られている肝線維症である。
【0136】
本発明のこの態様では、M6P受容体が上方制御される病態にある対象でインビボ診断又は造影する方法であって、上述の本発明の医薬組成物を投与する段階を含む方法を提供する。対象は好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。別の実施形態では、本発明のこの態様は、M6P受容体が上方制御される病態にある対象のインビボイメージングにおける本発明の造影剤の使用であって、対象に本発明の医薬組成物を予め投与しておく使用を提供する。「予め投与」とは、医療従事者が関与する段階であり、患者には医薬品が投与されていること、例えば、静脈内注射が既に実施されていることを意味する。
【0137】
本発明のこの態様には、M6P受容体が上方制御される病態のインビボ画像診断用の医薬品の製造における本発明の造影剤の使用も包含される。
【0138】
さらに別の態様では、本発明は、M6P受容体が上方制御される病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、本発明の造影剤を身体に投与し、造影剤の取込を検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中のいずれかに繰り返すことを含んでなる方法を提供する。
【0139】
実施例の簡単な説明
実施例1では、PEGリンカーに連結したIGF−IIのアミノ酸48〜55のペプチド断片(IGF化合物1)の合成について記載する。
【0140】
実施例2では、保護テトラアミンキレート化合物であるテトラ−Boc−テトラアミンNHSエステル(保護キレートZ)の合成について記載する。
【0141】
実施例3では、PEGリンカーに連結したIGF−IIのアミノ酸48〜55のペプチド断片にキレートZを結合させて、99mTc標識に適した本発明の前駆体(IGF前駆体1)を製造するのに必要な段階について記載する。
【0142】
実施例4では、IGF前駆体1を99mTcで標識してIGF造影剤1を形成する方法について記載する。
【0143】
実施例5では、ジアミンジオキシムキレートであるキレートX(すなわち式XbでG=Cのもの)の合成について記載する。
【0144】
実施例6では、PEGリンカーに連結したIGF−IIのアミノ酸48〜55のペプチド断片にキレートXを結合させて、99mTc標識に適した本発明の前駆体(IGF前駆体2)を製造するのに必要な段階について記載する。
【0145】
実施例7では、IGF前駆体2を99mTcで標識してIGF造影剤2を形成する方法について記載する。
【0146】
実施例8では、PEGリンカーに連結したIGF−IIのアミノ酸48〜55のペプチド断片にヨウ素化ボルトン−ハンター基を結合させて、本発明の放射性ヨウ素化造影剤(非放射性IGF造影剤3)の非放射性型を製造するのに必要な段階について記載する。
【0147】
実施例9では、レチノイン酸誘導体レチノイル−PEG−Lys(レチノイン酸前駆体1)の合成について記載する。
【0148】
実施例10では、レチノイン酸誘導体レチノイル−PEG−Lysにヨウ素化ボルトン−ハンター基を結合させて、本発明の放射性ヨウ素化造影剤(非放射性レチノイン酸造影剤1)の非放射性型を製造するのに必要な段階について記載する。
【0149】
実施例11では、123I標識糖ペプチド造影剤1の合成について記載する。
【実施例】
【0150】
実施例で用いた略語のリスト
AcOH:酢酸
C18:炭素原子数18の炭素鎖
DCM:ジクロロメタン
Dde:ジクロロジフェニルジクロロエチレン
DMF:ジメチルホルムアミド
EMS:エチルメチルスルフィド
FMoc:9−フルオレニルメトキシカルボニル
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU:O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
MBHA:4−メチルベンズヒドリルアミン
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
NMM:N−メチルモルホリン
OtBu:t−ブチルエステル
PEG:ポリエチレングリコール
Pmc:2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル
tBu:t−ブチル
TFA:トリフルオロ酢酸
TFE:テトラフルオロエチレン
TIS:トリイソプロピルシラン。
【0151】
実施例1:IGF化合物1[H−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg−Ser−Met−Asp−Leu−Ala−Leu−NH]の合成
Fmoc/tBu法を用いて、0.25mmolのFmoc−RinkアミドMBHA樹脂から出発して、Applied Biosystems 433Aペプチド合成装置でペプチジル樹脂H−Phe−Arg(Pmc)−Ser(tBu)−Met−Asp(OtBu)−Leu−Ala−Leu−Rを合成した。カップリング段階では、HBTUを用いて予め活性化しておいたアミノ酸を過剰の1mmol用いた。
【0152】
Fmoc−アミノPEGジグリコール酸(1mmol)、HATU(1mmol)、N−メチルモルホリン(2mmol)をDMFに溶解して5分間放置した。この混合物を、上記ペプチジル樹脂に加えて一晩反応させた。最後のFmocの脱保護は、DMF中20%ピペリジンを用いて行った。
【0153】
ペプチジル樹脂(0.05mmol)を、TFA(10mL)中の2.5%水、2.5%EMS及び2.5%TISで2時間処理した。樹脂を濾過で除き、濾液を減圧蒸発させた。残渣にジエチルエーテルを加えた。得られた沈殿をエーテルで洗浄し風乾した。
【0154】
粗製物の分取用HPLC(勾配:10〜40%のB、40分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:31.5分)による精製で、6mgの精製標品を得た。精製標品を分析用HPLC(勾配:10〜40%のB、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:0.3mL/分,カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:7.89分)で分析した。さらに質量分析で生成物のキャラクタリゼーションを行った(MH計算値:1241.7,MH実測値:1247.7)。
【0155】
実施例2:(8−アミノ−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−カルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−オクチル)−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(保護キレートZ)の合成
段階(a):2−(6−クロロ−ヘキシルオキシ)テトラヒドロピラン
6−クロロヘキサノール(6.85g、10mmol)及びp−トルエンスルホン酸(500mg)を乾燥エーテル(75ml)に溶解し、氷浴中で0〜5℃まで冷却した。攪拌しながら、乾燥エーテル(25ml)中のジヒドロピラン(4.3g、10mmol)を30分間滴下した。添加完了後、冷却浴を取り除き、16時間攪拌した。溶液を水で抽出し(50ml×2)、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を減圧蒸発したところ、薄黄色油状物が得られた。この油状物は、13C−NMR分光分析で十分に純粋であり、それ以上精製しなくてもその後の反応に使用できることが判明した。収量10.1g(91%)。
【0156】
H−NMR(CDCl):δ1.30−1.71(14H,m,CH×7),3.24−3.32(1H3.41−3.48(3H,m CH and CH),3.60−3.67(1H,m,CH),3.72−3.82(1H,bm,CH),4.44−4.49(1H,bm,OCHO)。
【0157】
段階(b):2−[6−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−ヘキシル]−マロン酸ジエチルエステル
乾燥窒素ブランケット中、撹拌しながら、乾燥エタノール(100ml)に少量のナトリウム(1.13g、49mmol)を溶解した。マロン酸ジエチル(8.0g、50mmol)を一度に加え、溶液を60℃で1時間加熱した。2−(6−クロロ−ヘキシルオキシ)−テトラヒドロピラン(9.3g、42.2mmol)を一度に加え、温度を75〜80℃に上げて、この温度に24時間保った。冷却後、無機固形物を濾過で除き、濾液から溶媒を蒸発させた。残留物をCHCl(50ml)に溶解し、水で抽出し(30ml×2)、乾燥させ(MgSO)、濾過し、揮発分を除去して、薄黄色油状物を得た。この油状物を、溶出液として石油エーテル40:60/エーテル(200:40)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。所要生成物はr=0.15で溶出し、無色油状物として単離した。収量8.7g、(60%)。
【0158】
H−NMR(CDCl):δ1.10−1.25(14H,m,CH×2,CH×4),1.36−1.50(6H,bm,CH×3),1.70−1.81(2H,bm,CH),3.17−3.28(2H,m,CH),3,56−3.66(1H,m,CH),3.70−3.80(1H,m,OCH),4.04−4.16(4H,m,OCH×2),4.03−4.08(1H,m,OCHO)。
【0159】
段階(c):N,N′−ビス−(2−アミノ−エチル)−2−[6−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−ヘキシル]−マロンアミド
2−[6−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−ヘキシル]−マロン酸ジエチルエステル(5.1g、14.8mmol)を、1,2−ジアミノエタン(10g、167mmol)に溶解し、室温で16時間撹拌した。揮発分を真空中(40〜50℃、0.01mmHg)で除去して、薄緑色の粘稠残渣を得て、これをカラムクロマトグラフィーにかけてCHCl/MeOH/NHOH(50:50:5)で溶出したところ、標記化合物がr=0.2で薄緑色の粘稠油状物として溶出した。これを放置すると固化した(収量:3.9g、71%)。
【0160】
H−NMR(CDCl):δ1.15−1.28(6H,bs,CH×3),1.39−1.44(6H,bm,CH×3),1.69−1.74(4H,bm,CH×2),2.64(4H,bs,NH×2),2.734H,t,J=6Hz,CH×2),3.08−3.29(6H,m,CH×3),3.35−3.41(1H,m,CH),3.55−3.63(1H,m,CH),3.70−3.78(1H,m,CH),4.43(1H,bt,J=4Hz,OCHO),7.78(2H,bt,J=5Hz,OCNH×2)。
【0161】
IR(薄膜)cm−1:−3417,3082,2936,2862,1663,1558,1439,1354,1323,1261,1200,1189,1076,1026,956,907,867,810。
【0162】
段階(d):N,N′−ビス(2−アミノエチル)−2−(6−ヒドロキシ−ヘキシル)−マロンアミド
N,N′−ビス(2−アミノエチル)−2−[6−(テトラヒドロ−ピラン−2−イルオキシ)−ヘキシル]−マロンアミド(3.9g、10.6mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(8.5g、3mmol)及びエタノール(50ml)を70〜75℃で16時間加熱還流した。冷却後、pH9の状態に達するまで濃水酸化アンモニウム(.880)を滴下した。沈殿した白色固体をセライトで濾別し、フィルターケークをエタノール(30ml)で洗浄した。エタノールを減圧下(15mmHg、40℃)で除去して、半固形ワックスを得た。この残留物を、シリカゲルクロマトグラフィーにかけて、CHCl/MeOH/NHOH(100:50:10)で溶出したところ、標記化合物のrは0.2であった。この生成物を集め、エタノール(100ml×3)で共蒸留して、残留水分を完全に蒸発させた。薄緑色の粘稠残渣が得られ、これを放置すると固化した(収量2.1g、69%)。
【0163】
H−NMR(CDOD):δ1.28−1.38(6H,bs,CH×3),1.46−1.55(2H,bm,CH),1.79−1.87(2H,bm,CH),2.73(4H,t,J=6Hz,HNCH×2),3.13(1H,t,J=7Hz,CH),3.27(4H,dt,J=6及び2Hz,HNCH×2),3.53(2Ht,J=7Hz,OCH)。
【0164】
質量分析(Fabs)m/e:C1329(M+H)の計算値:289、実測値:289。
【0165】
段階(e): (2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−8−ヒドロキシ−オクチル)−炭酸tert−ブチルエステル
乾燥窒素ブランケット中で、ボラン−ジメチルスルフィド付加物(ニート)(15ml,150mmol)を、N,N′−ビス(2−アミノエチル)−2−(6−ヒドロキシヘキシル)マロンアミド(2.1g、7.3mmol)とジオキサン(50ml)の混合物に、撹拌しながら、シリンジで滴下した。添加終了後、混合物を110℃で5日間穏やかに加熱還流した。この間に、ある程度の白色固形分が残った。冷却後に、揮発分を減圧下で除去すると白色固形分が残り、これにメタノール(50ml)を滴下して無色溶液を得た。この溶液を、3時間加熱還流し、冷却し、濃HCl(5ml)を加え、70〜75℃で48時間加熱還流を続けた。溶媒を除去して、粘稠緑色の残留物を得て、これをメタノール(100ml×3)と共に蒸発させて、薄緑色固形物を得た。この固形物を乾燥メタノールに再度溶解し、無水炭酸カリウム(4.0g、30mmol)、次いでジ−tert−ブチルジカーボネート(7.0g、32mmol)を加えた。混合物を室温で48時間撹拌した。無機固形物をセライトによる濾過で除き、濾液から溶媒を蒸発させて粘稠残渣を得た。この残渣を水(50ml)と混合し、CHCl(50ml×3)で抽出した。有機画分を一緒にし、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させて、淡黄色残留物を得た。
【0166】
注:この時点では、13C−NMRで反応を監視するのがよい。
【0167】
残留物を、シリカゲルクロマトグラフィーにかけて、溶出液としてCHCl/MeOH(95:5)を用いて溶出したところ、標記化合物はr=0.41で溶出し、無色粘稠油状物として単離された(収量2.5g、52%)。
【0168】
13C−NMR(CDCl):δ25.6(CH),26.4(CH),28.4(CH×12),29.8(CH×2),32.6(CH),36.5(very broad,CH),39.2(NCH×2,adjacent CH),46.9(broad singlet,HNCH×2),50.0(broad singlet,NCH×2),62.4(HOCH),79.0(OC×2),79.9(OC×2),156.4(broad singlet C=O×4)。
【0169】
H−NMR(CDCl):δ1.05−1.18(8H,bs,CH×4),1.27(18h,s,CH×6,t−butyl),1.31(18H,s,CH×6,t−butyl),1.41(2H,m,CH),1.81(1H,bs,CH),2.63(1H,bs,OH),2.98(4H,bs,NCH×2),3.11(8H,bs,NCH×4),3.44(2H,t,J=8Hz,CHO),5.2(2H,bs,NH×2)。
【0170】
質量分析(Fabs)m/e:C3365(M+H)の計算値:661、実測値:661。
【0171】
段階(f):トルエン−4−スルホン酸8−[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル−アミノ]−7−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−オクチルエステル
(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノ]−メチル}−8−ヒドロキシオクチル)炭酸tert−ブチルエステル(2.52g、3.82mmol)、p−トルエンスルホニルクロリド(1.0g、5.2mmol)、トリエチルアミン(1.3g、12.8mmol)、CHCl(30ml)を室温で撹拌し、溶媒をゆっくりと蒸発させた。反応を炭素NMRで監視したところ、3日間後の時点で、少量の出発原料が残存していた。反応体積をCHClで30mlとし、水で抽出し(50ml×3)、乾燥し(MgSO)、濾過し、溶媒を蒸発させると、褐色残留物が残った。この残留物を、溶出液としてCHCl/MeOH(100:5)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。最初に溶出した化合物は未反応トシルクロリドで、r=0.95で溶出した。標記化合物はr=0.2で溶出し、淡黄色の粘稠油状物として単離された。収量(1.20g、39%)。
【0172】
H−NMR(CDCl):δ1.16(8H,bs,CH×4),1.35(18H,s,CH×6),1.39(18H,s,CH×6),1.88(1H,bs,CH),2.38(3H,s,CHトシル),3.10−3.12(4H,bs,NCH×2),3.19(8H,bs,NCH×4),3.93(2H,t,J=7Hz,CHOTs),5.0(1H,bs,NH),5.08(1H,bs,NH),7.29(2H,d,J=8Hz,CH×2,Ar),7.72(2H,d,J=8Hz,CH×2,Ar)。
【0173】
質量分析(Fabs)m/e:C407111S(M+H)の計算値:815、実測値:815。
【0174】
段階(g):(8−アジド−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−カルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−オクチル)−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル
トルエン−4−スルホン酸8−[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノエチル−アミノ]−7−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノエチル)アミノ]メチル}−オクチルエステル(1.105g、1.36mmol)、アジ化ナトリウム(350mg、5.4mmol)及びメタノール(10ml)を、70〜75℃で16時間加熱還流した。冷却後、メタノールを、室温で減圧下にて除去したところ、約1〜2mlが残った。この残留物を水(25ml)で希釈し、CHCl(25ml×4)で抽出した。有機抽出物を一緒にして、乾燥し(MgSO)、濾過し、揮発成分を室温で蒸発させたところ(注:アジド類は、爆発の危険性があるので、この段階は安全防護シールド内で行うべきである。)、淡黄色の粘稠残渣が残存し、この残留物は純粋な所望化合物であった(収量:820mg、88%)。
【0175】
H−NMR(CDCl):δ1.16(8H,bs,CH×4),1.29(18H,s,CH×6),1.33(18H,s,CH×6),1.47(2H,bt,J=6.5Hz,CH adjacent CH),1.86(1H,bs,CH),2.95−3.05(4H,bs,NCH×2),3.05−3.20(10H,bs,NCH×4及びCH),5.09(2H,bs,NH×2)。
【0176】
IR(薄膜)cm−1:−3350,2974,2932,2860,2097(強いバンドN),1694,1520,1470,1418,1391,1366,1250,1167,1069,870,777。
【0177】
段階(h):(8−アミノ−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−カルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−オクチル)−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(化合物2)
(8−アジド−2−{[tert−ブトキシカルボニル−(2−tert−カルボニルアミノ−エチル)−アミノ]−メチル}−オクチル)−(2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(820mg、1.20mmol)、木炭担持10%パラジウム(100mg)及びメタノール(10ml)を、30気圧の圧力及び室温で16時間処理した。固形分をセライトによる濾過によって濾別し、フィルターケークをメタノール(50ml)で洗浄した。揮発成分を濾液から除去すると、粘稠油状物が得られたが、この油状物は純粋な所望物質であった(収量:700mg、89%)。
【0178】
H−NMR(CDCl):δ1.08(8H,bs,CH×4),1.23(18H,s,CH×6),1.27(20H,bs,CH×6及びCH),1.77(1H,bs,CH),2.40(2H,bs,NH),2.50(2H,t,J=7Hz,CHNH),2.97(4H,bm,NCH×2),3.00−3.16(8H,bm,NCH×4),5.21(1H,bs,NH),5.30(1H,bs,NH)。
【0179】
質量分析(Fabs)m/e:C3366(M+H)の計算値:660、実測値:660。
【0180】
実施例3:IGF前駆体1[テトラアミン−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg−Ser−Met−Asp−Leu−Ala−Leu−NH]の合成
ペプチジル樹脂H−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg(Pmc)−Ser(tBu)−Met−Asp(OtBu)−Leu−Ala−Leu−R(0.05mmol)を、DMF(5mL)中のtetra−Boc−テトラアミンNHSエステル(0.05mmol)及びNMM(0.2mmol)で3日間処理した。反応試薬を濾過によって濾別し、樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。
【0181】
ペプチジル樹脂(0.05mmol)を、TFA(10mL)中の2.5%水、2.5%EMS及び2.5%TISで2時間処理した。樹脂を濾過で除き、濾液を減圧蒸発させた。残渣にジエチルエーテルを加えた。得られた沈殿をエーテルで洗浄し、空気で乾燥させた。
【0182】
粗製物の分取用HPLC(勾配:10〜40%のB、40分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:25分)による精製で、38mgの精製標品を得た。精製標品を分析用HPLC(勾配:10〜40%のB、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:7.05分)で分析した。さらに質量分析で生成物のキャラクタリゼーションを行った(MH計算値:1441.8、MH実測値:1441.7)。
【0183】
実施例4:IGF前駆体1の99mTcによる放射性標識の付与(IGF造影剤1の製造)
窒素パージしたP46バイアルに、以下のものを加えて、99mTc錯体を製造した。
【0184】
100μgのIGF前駆体1又は2のMeOH溶液、
0.5mlのNaCO/NaHCO緩衝液(pH9.2)、
0.5mlの、99mTcジェネレータから得たTcO
0.1mlのSnCl/MDP溶液(10.2mgのSnClと101mgのメチレンジホスホン酸との100mlのNパージした生理食塩水溶液)。
【0185】
ITLC(インスタント薄層クロマトグラフィー)を用いてRCPを測定した。IGF前駆体Iについては、SGプレートと移動相(MeOH/NHOAc(0.1M)1:1)で、RHT(還元加水分解Tc)は起点に、過テクネチウム酸は溶媒先端に、テクネチウム錯体は中間のRfにみられた。
【0186】
反応混合物を逆相HPLC(XterraカラムRP18、3.5μg、150mm×4.6mm)で分析した。IGF前駆体IについてのHPLC条件は以下の通りであった。
【0187】
溶媒A:0.07%アンモニア水溶液
溶媒B:MeCN
0分:90%溶媒A、10%溶媒B
10分:40%溶媒A、60%溶媒B
15分:40%溶媒A、60%溶媒B
17分:90%溶媒A、10%溶媒B
20分:90%溶媒A、10%溶媒B。
【0188】
実施例5:キレートX[bis[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン]の合成
(段階a):トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタンの調製
メタノール(200ml)中の3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)を(10%パラジウム担持木炭:水50%)(9g)と共に水素ガス雰囲気下(3.5bar)で30時間振盪した。溶液を、珪藻土で濾過し、真空濃縮して3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを油状物として得た、収量(84.9g、94%)。
【0189】
NMR H(CDCl),δ2.48(6H,d,J=8Hz,3×CH),2.78(1H,hextet,J=8Hz,CH,)3.7(9H,s,3×CH)。
【0190】
(段階b):トリメチルエステルのp−メトキシ−ベンジルアミンとのアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。蒸留用の装置を組み立て、窒素気流下120℃で24時間加熱した。反応の進行は回収メタノール量によって監視した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、酢酸エチル30mlを加え、次いで沈殿したトリアミド生成物を30分間攪拌した。トリアミドを濾過で単離し、フィルターケークを十分量の酢酸エチルで数回洗浄して過剰のp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、4.6g、100%の白色粉末を得た。この高度に不溶性の生成物は、それ以上精製もキャラクタリゼーションもせずに、そのまま次の段階に使用した。
【0191】
(段階c):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの調製
氷水浴中で冷却しておいた1000mlの三口丸底フラスコに、段階2(a)で得たトリアミド(10g、17.89mmol)を、250mlの1Mボラン溶液(3.5g、244.3mmolのボラン)に注意深く加える。添加後、氷水浴を取り外し、反応混合物を60℃までゆっくりと加熱する。反応混合物を60℃で20時間撹拌する。反応混合物のサンプル(1ml)を採取し、0.5mlの5N HClと混合し、30分間静置した。サンプルに、0.5mlの50NaOHを加え、次いで2mlの水を加え、白色沈殿が完全に溶解するまで溶液を撹拌した。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残留物をアセトニトリルに1mg/ml濃度で溶解し、MSで分析した。MSスペクトルにモノアミン及びジアミン(M+H/z=520及び534)が見られる場合は、反応は完結していない。反応を完結させるには、さらに1MボランTHF溶液100mlを加え、反応混合物を60℃でさらに6時間攪拌し、上述のサンプリング法で新たなサンプルを抽出する。トリアミンへの転化が完結するまで、必要に応じて1MボランTHF溶液の追加を続ける。
【0192】
反応混合物を周囲温度まで冷却し、5NのHClをゆっくりと加える[注意:活発な発泡が起こる]。HClは、気体の発生が観察されなくなるまで加えた。混合物を30分間撹拌し、次いで蒸発させた。ケークをNaOH水溶液に懸濁し(20〜40%、1:2w/v)、30分間撹拌した。混合物を水(3倍容)で希釈した。次に、混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶媒は使用しないこと]。次に、有機相を一緒にして、水(1×200ml)及び食塩水(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸発後の収量:7.6g、84%(油状物)。
【0193】
NMR H(CDCl),δ:1.45,(6H,m,3×CH;1.54,(1H,septet,CH);2.60(6H,t,3×CHN);3.68(6H,s,ArCH);3.78(9H,s,3×CHO);6.94(6H,d,6×Ar).7.20(6H,d,6×Ar)。
【0194】
(段階d):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0g、0.036mol)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)(5.0g)を加えた。混合物の水素添加を行い(3bar、100℃、オートクレーブ中)、5時間撹拌した。Pd(OH)を、さらに、10時間後と15時間後に2回に分けて加えた(2×5g)。
【0195】
反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。有機相を一緒にして蒸発させ、残留物を減圧蒸留(1×10−2、110℃)して、2.60g(50%)の1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンを得た。
【0196】
NMR H(CDCl),δ2.72(6H,t,3×CHN),1.41(H,septet,CH),1.39(6H,q,3×CH)。
【0197】
NMR 13C(CDCl),δ39.8(CHNH),38.2(CH.),31.0(CH)。
【0198】
(段階e):キレートX(すなわち、式ZaでG=Cのもの)の調製
トリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の乾燥エタノール(30ml)溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を、窒素雰囲気中室温で激しく撹拌しながら加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを反応混合物にゆっくりと滴下した。反応はシリカプレート上のTLCで追跡した[ジクロロメタン、メタノール、濃(比重0.88)アンモニア、100/30/5で展開、TLCプレートはニンヒドリンをスプレーして加熱することによって発色させた]。モノ−、ジ−及びトリアルキル化生成物が観察され、RFはその順で上昇していた。分析用HPLCは、RPR逆相カラムを使用して3%アンモニア水中7.5〜75%アセトニトリルの勾配で行った。反応生成物を真空濃縮してエタノールを除去し、水(110ml)に再懸濁した。水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出して、トリアルキル化化合物の一部及び親油性不純物を除去し、モノ及び所望のジアルキル化生成物を水層に残した。良好なクロマトグラフィーを確保するため、水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝化した。水溶液を4℃で一晩保存してから、自動化分取HPLCで精製を行った。
【0199】
収量(2.2g、6.4mmol、23%)。
【0200】
質量分析:正イオン10Vコーン電圧、実測値:344、計算値(M+H)=344。
【0201】
NMR H(CDCl),δ1.24(6H,s,2×CH),1.3(6H,s,2×CH),1.25−1.75(7H,m,3×CH2,CH),(3H,s,2×CH),2.58(4H,m,CHN),2.88(2H,t,CH),5.0(6H,s,NH,2×NH,2×OH)。
【0202】
NMR 13C((CDSO),δ9.0(4×CH),25.8(2×CH),31.0,2×CH,34.6,CH,56.8,2×CHN;160.3,C=N。
【0203】
HPLC条件:流速8ml/分、25mmPRPカラムを使用
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水、B=アセトニトリル
時間 B(%)
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5
1回のラン当り3mlの水溶液をロードし、12.5〜13.5分の時間枠で回収する。
【0204】
実施例6:IGF前駆体2[キレートX−グルタリル−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg−Ser−Met−Asp−Leu−Ala−Leu−NH]の合成
ペプチジル樹脂H−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg(Pmc)−Ser(tBu)−Met−Asp(OtBu)−Leu−Ala−Leu−R(0.05mmol)を、キレートX−グルタリルテトラフルオロチオフェノールエステル(0.1mmol)とNMM(0.2mmol)のDMF(5mL)溶液で三日間処理した。反応試薬を濾過によって濾別し、樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。
【0205】
ペプチジル樹脂(0.05mmol)をTFA(10mL)中の2.5%水、2.5%EMS及び2.5%TISで2時間処理した。樹脂を濾過で除き、濾液を減圧蒸発させた。残渣にジエチルエーテルを加えた。得られた沈殿をエーテルで洗浄し、風乾させた。
【0206】
粗製物の分取用HPLC(勾配:20〜40%のB、60分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:13分)による精製で、35mgの純粋標品を得た。この純粋標品を、分析用HPLC(勾配:10〜50%B、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:5.60分)で分析した。生成物を質量分析によってさらに調べた(MH計算値:1681.0、MH実測値:1681.1)。
【0207】
実施例7:IGF前駆体2の放射性標識(IGF造影剤2の形成)
上記実施例4に記載した方法を、以下のHPLC及びTLCを用いて、99mTcによる標識を実施した。
【0208】
HPLC
溶媒A:TFAの0.1%水溶液
溶媒B:TFAの0.1%MeCN溶液
0分:90%溶媒A、10%溶媒B
10分:60%溶媒A、40%溶媒B
15分:60%溶媒A、40%溶媒B
17分:90%溶媒A、10%溶媒B
20分:90%溶媒A、10%溶媒B。
【0209】
TLC SGプレート及び生理食塩水の移動相では、過テクネチウム酸は溶媒先端で観察され、ワットマン1プレートとMeCN:HO、1:1の移動相では、RHTは起点で観察された。
【0210】
実施例8:非放射性IGF造影剤3[3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオネート−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg−Ser−Met−Asp−Leu−Ala−Leu−NH]の合成
ペプチジル樹脂H−PEG(4)−ジグリコロイル−Phe−Arg(Pmc)−Ser(tBu)−Met−Asp(OtBu)−Leu−Ala−Leu−R(0.05mmol)を、N−スクシンイミジル−3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオネート(0.1mmol)及びNMM(0.2mmol)のDMF(5mL)溶液で3日かけて処理した。反応試薬を濾過によって濾別し、樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。
【0211】
ペプチジル樹脂(0.05mmol)を、TFA(10mL)中の2.5%水、2.5%EMS及び2.5%TISで2時間処理した。樹脂を濾過で除き、濾液を減圧蒸発させた。残渣にジエチルエーテルを加えた。得られた沈殿をエーテルで洗浄し、空気で乾燥させた。
【0212】
粗製物の分取用HPLC(勾配:10〜50%のB、60分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:27分)による精製で、5mgの精製標品を得た。精製標品を分析用HPLC(勾配:10〜50%のB、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:0.3mL/分,カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:7.03分)で分析した。さらに質量分析で生成物のキャラクタリゼーションを行った(MH計算値:1515.6,MH実測値:1515.8)。
【0213】
実施例9:レチノイン酸前駆体1[レチノイル−PEG(12)−プロピオニル−Lys−OH]の合成
Fmoc−Lys(Dde)−OH(Novabiochem、0.4mmol)を、乾燥ジクロロメタン中で、標準的な方法によって、ジイソプロピルエチルアミン(1.4mmol)を塩基として用いて、過剰の2−クロロトリチルクロリド樹脂(Novabiochem)に結合させた。樹脂を、ジクロロメタン/メタノール/ジイソプロピルエチルアミン(17:2:1)混合物、ジクロロメタン及びDMFで洗浄した。Fmoc基を、標準的なピペリジンによる処理で脱離させ、Fmoc−アミノPEG(12)−プロピオン酸(Polypure AS、0.6mmol)を、HATU(0.6mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(1.2mmol)を用いてカップリングした。反応が完了したことを、標準的なカイザー法(Kaiser test)で確認した。Fmoc基の脱離後、レチノイン酸(Fluka、0.6mmol)を、同じカップリング条件を使用してカップリングさせた。Dde保護基を、DMF中で2%ヒドラジン水和物で処理することにより除去した(3×2分)。
【0214】
得られた樹脂(0.05mmol)を、AcOH/TFE/DCM(2:2:6、10mL)溶液で45分間処理した。樹脂を濾過で除き、ヘキサン(200mL)を濾液に加え、混合物を減圧蒸発させた。
【0215】
粗製物の分取用HPLC(勾配:30〜80%B、40分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/分、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:33分)による精製で、17mgの純粋標品を得た。この純粋標品を、分析用(勾配:30〜80%B、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:7.11分)で分析した。生成物を質量分析によってさらに分析した(MH計算値:1028.7、MH実測値:1028.7)。
【0216】
実施例10:非放射性レチノイン酸造影剤1[レチノイル−PEG(12)−プロピオニル−Lys(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−OH)]の合成
樹脂レチノイル−PEG(12)−プロピオニル−Lys−R(0.05mmol)を、N−スクシンイミジル−3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオネート(0.1mmol)とNMM(0.2mmol)のDMF(5mL)溶液で、20時間処理した。反応試薬を濾過で除き、樹脂をDMF及びDCMによって洗浄した。
【0217】
上記の樹脂(0.05mmol)を、AcOH/TFE/DCM(2:2:6、10mL)溶液で2時間処理した。樹脂を濾過で除去し、ヘキサン(200mL)を濾液に加え、混合物を減圧蒸発させた。
【0218】
粗製物の分取用HPLC(勾配:50〜100%のB、40分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%TFA、流速:10mL/min、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物保持時間:31分)による精製で、17mgの純粋標品を得た。この純粋標品を、分析用HPLC(勾配:50〜95%のB、10分間、A=HO/0.1%TFA、B=ACN/0.1%のTFA、流速:0.3mL/分、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:214nm、生成物保持時間:5.24分)で分析した。生成物を質量分析によってさらに分析した(MH計算値:1302.6、MH実測値:1302.6)。
【0219】
実施例11:123I標識糖ペプチド造影剤1の合成
【0220】
【化21】

上記の糖ペプチド造影剤1の前駆体を以下の通り放射性標識した。
【0221】
10μlの127NaI(15mg/0.01MのNaOH100ml)溶液(1×10−8molの127NaIを含有)を、まず、マイクロ遠心管中の200μlの酢酸アンモニウム緩衝液(0.2M、pH4)に加えた。次に、127NaI/NHOAc溶液を、123I−NaIの0.05MのNaOH溶液(GE Healthcare社製)(活性、10mCi(364mCi/ml))に加え、溶液をよく混合した。5μlの過酢酸(36〜40wt%酢酸溶液)を5mlのHOに加え、よく混合し、10μlの希釈溶液を123127I−NaI反応混合物に加えた。
【0222】
100μlの前駆体(0.74mMの水溶液)を反応混合物に加え、ピペットで混合し、5分後に反応を分析した。生成物を、Phenomenex Lunaカラム5μ、C18(2)100A、150×4.6mmを用いたHPLCで分析又は精製した。
【0223】
溶媒A:TFAの0.1%水溶液
溶媒B:TFAの0.1%アセトニトリル溶液
2分:100%溶媒A、0%溶媒B
20分:50%溶媒A、50%溶媒B
25分:10%溶媒A、90%溶媒B
35分:10%溶媒A、90%溶媒B
36分:100%溶媒A、0%溶媒B
43分:100%溶媒A、0%溶媒B。
【0224】
かかる条件でのM6P造影剤1の保持時間は9.9分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)マンノース−6−リン酸塩(M6P)受容体に対する親和性を有するベクターと、
(ii)造影基と
を含む造影剤であって、造影基がベクターの一体部分として存在しているか、或いは造影基が適当な化学基を介してベクターと結合している造影剤。
【請求項2】
前記ベクターが、以下の(i)〜(iv)の少なくとも1種を含む、請求項1記載の造影剤。
(i)67アミノ酸IGF−II配列又はその断片もしくは類似体、
(ii)マンノース6−リン酸(M6P)、
(iii)二リン酸化糖ペプチド、又は
(iv)レチノイン酸又はその誘導体。
【請求項3】
前記ベクターが、67アミノ酸IGF−II配列であるか、或いは以下の(i)〜(iv)から選択される8〜60アミノ酸の断片又はそのペプチド類似体である、請求項2記載の造影剤。
(i)アミノ酸残基48〜55(配列番号2)を含むペプチド又はそのペプチド類似体、
(ii)アミノ酸残基8〜28(配列番号3)とアミノ酸残基41〜61(配列番号4)とが直接又は式−(L−のリンカーを介して結合しているペプチド又はそのペプチド類似体、
(iii)アミノ酸残基8〜67(配列番号5)を含むペプチド又はそのペプチド類似体、及び
(iv)Phe26Ser(配列番号6)、Phe19Ser(配列番号7)、Glu12Lys(配列番号8)、Tyr27Leu(配列番号9)のアミノ酸残基の置換体。
ただし、−(L−に関して、各Lは独立に−CO−、−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NRSO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNRCR−、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基、アミノ酸残基、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、
pは0〜30の整数であり、
各R基は独立にH、C1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル又はC1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に飽和又は不飽和炭素環又は複素環を形成する。
【請求項4】
前記ベクターがM6Pを含んでいて、以下の(i)〜(v)から選択される、請求項2記載の造影剤。
(i)M6P(α1,2)−Man−O(CHCOMe(α1,2結合ジマンノシド)
(ii)M6P(α1,3)−Man−O(CHCOMe(α1,3結合ジマンノシド)
(iii)M6P(α1,6)−Man−O(CHCOMe(α1,6結合ジマンノシド)
(iv)M6P(α1,2)−Man(α1,2)−Man−O(CHCOMe(α1,2結合トリマンノシド)
(v)次式の二分岐オリゴマンノシド。
【化1】

式中、Manはマンノースである。
【請求項5】
前記ベクターが二リン酸化糖ペプチドであって、次の式Iのものである、請求項2記載の造影剤。
【化2】

式中、
及びRは各々独立に以下の(i)〜(ii):
(i)グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラマノース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミニル、フルクトース及びN−アセチルノイラミン酸から選択される天然L又はD単糖、又はそれらのリン酸化物もしくは硫酸化物、及び
(ii)(i)から選択される複数の単糖からなるオリゴ糖
から選択され、
及びAは各々独立に−H、−OH、−NH、−アセチル、D又はLアミノ酸、ペプチド、糖ペプチド、ペプチド模倣体及びオリゴヌクレオチドから選択され、
及びAは各々独立にD又はL−ヒドロキシアミノ酸、例えばSer、Thr、Hyl、Hyp、Tyr、或いはD又はLカルボキシアミドアミノ酸、例えばAsn及びGlnであり、
は、D又はL型の遺伝的コード又は非コードアミノ酸或いはペプチド模倣体又はヌクレオチドからなる群から選択され、
mは1〜30の整数であり、
線状配列A〜Aのいずれかの残基が共有結合して環状化合物を形成していてもよい。
【請求項6】
前記二リン酸化糖ペプチドが以下の(i)又は(ii)である請求項5記載の造影剤。
(i)Ac−Thr[α−D−M6P−(1,2)−α−D−マンノース]−Lys(アミノベンズアミド)−Thr[α−D−M6P−(1,2)−α−D−マンノース]−NH、又は
(ii)Ac−Thr[α−D−M6P]−Gly−Lys−Gly−Thr[α−D−M6P]−NH
【請求項7】
前記ベクターがレチノイン酸又は次の式IIのレチノイン酸類似体である、請求項2記載の造影剤。
【化3】

式中、L、q及びR″はそれぞれ請求項3でL、p及びRについて定義した通りである。
【請求項8】
前記ベクターが、請求項2乃至請求項8の2種以上のベクターを組み合わせた多価ターゲティングベクターである、請求項2記載の造影剤。
【請求項9】
前記造影基が以下の(i)〜(vii)から選択される、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の造影剤。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボ光学イメージングに適したレポーター、及び
(vii)血管内検出に適したβ線放射体。
【請求項10】
前記造影基が放射性金属イオンである、請求項9記載の造影剤。
【請求項11】
前記放射性金属イオンが99mTcである、請求項10記載の造影剤。
【請求項12】
前記造影基がγ線放出型放射性ハロゲンである、請求項9記載の造影剤。
【請求項13】
前記γ線放出型放射性ハロゲンが123I及び131Iから選択される、請求項12記載の造影剤。
【請求項14】
前記造影基が陽電子放出型放射性非金属である、請求項9記載の造影剤。
【請求項15】
前記陽電子放出型放射性非金属が18Fである、請求項14記載の造影剤。
【請求項16】
前駆体と適当な造影基源との反応を含む、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤の製造方法であって、上記前駆体が、
(i)請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載のM6P受容体に対して親和性を有するベクターと、
(ii)上記造影基源と反応し得る化学基であって、造影基が化合物と結合して造影剤を生じる化学基と
を含んでおり、上記化学基がベクターの一体部分であるか或いはベクターと結合している、方法。
【請求項17】
前記化学基が、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(iv)求核又は求電子置換反応用の活性化芳香族環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化を起こす官能基を有する誘導体、又は
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記前駆体が無菌の非発熱性の形態である、請求項16又は請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記前駆体が固相と結合している、請求項16乃至請求項18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項16乃至請求項19のいずれか1項記載の方法で定義された前駆体であって、前記化学基が、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、又は
(iv)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む、前駆体。
【請求項21】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤を生体適合性担体と共に哺乳類への投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項22】
前記造影剤が放射性造影基を含む、請求項21記載の医薬組成物。
【請求項23】
一人の患者に適した放射性用量を有していて適当なシリンジ又は容器で供給される、請求項22記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項21乃至請求項23のいずれか1項記載の医薬組成物の製造用キット。
【請求項25】
インビボ診断又はイメージング法に用いられる請求項1乃至請求項15記載の造影剤。
【請求項26】
上記方法が、M6P受容体が上方制御される病態のインビボイメージングに関する、請求項25記載の造影剤。
【請求項27】
前記受容体が上方制御される病態が線維症に関連した病態である、請求項26記載の造影剤。
【請求項28】
前記線維症に関連した病態が、肝線維症、うっ血性心不全、糸球体硬化症又は呼吸不全である、請求項27記載の造影剤。
【請求項29】
前記線維症に関連した病態が肝線維症である、請求項28記載の造影剤。
【請求項30】
M6P受容体が肝実質細胞上で上方制御される、請求項29記載の造影剤。
【請求項31】
M6P受容体が上方制御される病態にある対象でインビボ診断又はイメージングを行う方法であって、請求項21乃至請求項23の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項32】
M6P受容体が上方制御される病態にある対象のインビボイメージングにおける請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤の使用であって、対象に請求項21乃至請求項23記載の医薬組成物を予め投与しておく使用。
【請求項33】
M6P受容体が上方制御される病態のインビボイメージング用の医薬品の製造における請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤の使用。
【請求項34】
M6P受容体が上方制御される病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤を身体に投与し、造影剤の取込を検出することを含んでなる方法。

【公表番号】特表2009−518372(P2009−518372A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543898(P2008−543898)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004575
【国際公開番号】WO2007/066115
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】