説明

線維症用の新規造影剤

本発明は、線維症を非侵襲的に可視化できる新規な造影剤を提供する。本発明では、造影剤の製造方法、並びにこの方法で使用する前駆体も提供し、この造影剤を含む医薬組成物並びにこの医薬を製造するためのキットも提供する。さらなる態様では、インビボイメージングを行うためのこの造影剤の使用、並びにLOXが上方制御される病態を診断する薬剤の製造における造影剤の使用も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断、特に線維症の画像診断に関する。この目的に適した診断用造影剤、特に肝臓、心臓、腎臓及び肺の線維症の画像診断に適した診断用造影剤について開示する。
【背景技術】
【0002】
線維症は、細胞外マトリックス成分の過剰分泌を特徴とするプロセスである。これは、マトリックスタンパク質、特にI型及びIII型コラーゲンの合成増大と分解減少によって起こり、炎症、感染又は損傷に起因する組織損傷に対する反応として引き起こされる。簡単にいうと、線維症は瘢痕組織であり、組織の「修復」プロセス全体の一部をなす。しかし、炎症や感染の進行及び損傷の繰り返しによって、線維症の瘢痕組織が増加し、「機能性」細胞に置き換えられないので、臓器の機能に異常をきたし、ひいては臓器不全を招く。
【0003】
線維症は医学における重要で古典的な病理過程の一つである。以下に挙げるような世界中で何百万人もの人々が罹患する多くの疾患の重要な構成要素である。
a)特発性肺線維症(原因不明の肺線維症)、喘息及び慢性閉塞性肺疾患のような肺疾患、
b)強皮症:体内の結合組織(すなわち、皮膚及び内蔵)中での細胞外マトリックスの過剰蓄積を特徴とする重篤な不均質疾患、
c)移植後の手術後瘢痕、
d)糖尿病性網膜症及び加齢性黄斑変性症(目の線維性疾患で、失明の最大の原因)、
e)アテローム性動脈硬化症及び不安定プラークを始めとする循環器病、
f)糖尿病に関連した腎線維症:糖尿病性腎症及び糸球体硬化症、
g)IgA腎症(腎不全の原因であり、透析及び再移植が必要となる。)、
h)肝硬変及び胆道閉鎖症(肝線維症及び肝不全の最大の原因)、
i)関節リウマチ、
j)皮膚筋炎のような自己免疫疾患、
k)うっ血性心不全。
【0004】
線維症の臨床症状は変化に富む。肝硬変を例にとると、臨床症状は、症状の全くないものから肝不全まで様々であり、根底にある肝疾患の性状及び程度、さらには肝線維症の程度によって決まる。肝硬変の患者の40%以下は無症状で、十年以上無症状であることもあるが、ひとたび腹水、静脈瘤出血、脳症などの合併症を発症すると、進行性機能低下は避けられない。肝線維症及び肝硬変は、ウイルス、自己免疫、薬物性、コレステロール性及び代謝疾患を始めとする様々な原因に由来する慢性肝障害の持続性創傷治癒反応の結果であるといえる。肝線維症及び肝硬変の一般的原因としては、免疫媒介障害、遺伝的異常、糖尿病やメタボリックシンドローム(MS)に付随することが特に多い非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる。西欧ではメタボリックシンドローム(MS)の割合が高い。メタボリックシンドロームは通例肥満で高脂血症や高血圧の個体で起こり、II型糖尿病の発症につながることが多い。メタボリックシンドロームの肝臓での症状は、非アルコール性脂肪肝症(NAFLD)であり、米国での推定罹患率は人口の24%である。脂肪肝は、非アルコール性脂肪肝症NAFLDの一群の症状としては軽いものであるが、進行すると、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)やひいては肝硬変になる。線維症の発症はかかる進行のリスクを示し、現在では肝臓の生検によって診断されている。しかし、肝臓の生検は、相当の不快感を伴い、リスクもあり、費用もかさむ。さらに、肝線維症に関して現在利用可能な血液検査は、NAFLDにおいては信頼性に欠ける。
【0005】
コラーゲンの強度は、原繊維内及び原繊維間の各種のリジン残基の架橋によって実現されている。この架橋の最初の過程は、リジン及びヒドロキシリジン残基が、リジルオキシダーゼ酵素(LOX)によって脱アミノ化され、アルデヒド基を生じる過程である。こうして生じた高度に反応性の基が、架橋を生じる。いくつもの特許文献に、LOX結合剤を線維症の治療に利用することが記載されている。
【0006】
国際公開第96/040746号には、各種の病理学的な線維性の障害又は異常の制御又は治療に有用な抗繊維化剤が記載されている。ホモシステインチオラクトン及びその同族体は、LOXの活性をIC50値4〜25μMの範囲で阻害することが示されている。
【0007】
国際公開第03/097612号には、繊維症の治療に有用な2−フェニル−3(2H)−ピリダジノンが記載されている。この特許出願に記載された化合物は、LOXの活性を、IC50値0.005〜0.07μMの範囲で阻害することが示されている。
【0008】
米国特許第5252608号には、ハロゲン化アリルアミンを使用したコラーゲンの異常な堆積を伴う疾患の治療方法が記載されている。これらの化合物は、LOX活性を、IC50値0.0001〜1μMの範囲で阻害することが示されている。
【0009】
米国特許第4997854号には、リジルオキシダーゼの基質阻害剤類縁体として作用し、線維症の治療に利用できる一群のジアミン抗繊維化剤が記載されている。マイクロモルレベルのIC50値が、いくつかの具体的化合物について報告されている。
【特許文献1】国際公開第96/040746号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/097612号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5252608号明細書
【特許文献4】米国特許第4997854号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の先行技術文献のいずれにも、LOX結合剤を診断用の造影剤として利用することは開示されていない。そこで、線維症、特に肝線維症を検出するための非侵襲性の検査が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、線維症の非侵襲的な可視化に適した造影剤を提供する。本発明では、造影剤の製造方法、並びに該方法で用いる前駆体も提供する。本発明は、造影剤を含む医薬組成物、並びに医薬組成物の調製用キットも提供する。本発明の別の態様では、インビボイメージング並びにLOXが上方制御される病態を診断するための薬剤の製造における造影剤の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一態様では、
(i)リジルオキシダーゼ(LOX)結合剤と、
(ii)造影基と
を含む造影剤であって、造影基がLOX結合剤の一体部分であるか、或いは適当な化学基を介してLOX結合剤と結合している造影剤を提供する。
【0013】
「造影剤」という用語は、哺乳類の特定の生理又は病態生理をターゲティングするように設計された化合物であって、哺乳類の身体に投与した後でインビボで検出できる化合物を意味する。
【0014】
本発明の造影剤では、造影基はLOX結合剤の一体部分として存在していてもよく、例えば、LOX結合剤の構成原子の1つを12Cでなく11Cとすることもできる。或いは、造影基は、適当な化学基(例えば、金属イオンである造影基と錯形成できる金属キレート)を介してLOX結合剤に結合していてもよい。LOX結合剤を適当な化学基又は直接造影基自体に結合するためのリンカーが存在していてもよい。本発明の適当なリンカーは式−(L−のものである。
式中、
各Lは独立に−CO−、−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NR−、−NR′CO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NR′SO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNR′CR−、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基、アミノ酸残基、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、
nは0〜15の整数であり、
各R基は独立にH、C1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル又はC1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらに結合した原子と共に炭素環、複素環式、飽和又は不飽和環を形成したものである。
【0015】
枝分れリンカー基、つまりR″基を末端とする別のリンカー−(L−でさらに置換されたリンカー基−(L−(L、o及びR′はそれぞれL、n及びRについて定義した通りである。)も利用できる。
【0016】
かかるリンカーは、造影剤の体内分布及び/又は分泌プロファイルを操作する場合に特に有用である。例えば、ポリエチレングリコール基又はアセチル基を含むリンカーを導入すると、造影剤の血液滞留時間を改善することができる。
【0017】
「アミノ酸」という用語は、L−若しくはD−アミノ酸、アミノ酸類似体(ナフチルアラニンなど)又はアミノ酸模倣体を意味し、これらは天然のものであっても純粋な合成品であってもよく、光学的に純粋、つまり単一の鏡像異性体でキラルなものであってもよいし、鏡像異性体の混合物であってもよい。好ましくは、本発明のアミノ酸は光学的に純粋である。
【0018】
かかるリンカーは、以下で説明する本発明の他の部分についても有用である。本発明では、好ましいL基及びL基は、−CO−、−CH−、−NH−、−NHCO−、−CONH−、−CHOCH−及びアミノ酸残基である。
【0019】
「リジルオキシダーゼ(LOX)結合剤」という用語は、本発明では、インビトロで、100nM未満、好ましくは50nM未満、最も好ましくは10nM未満のKd値でLOXに結合できる化合物を意味する。好ましい実施形態では、LOX結合剤は、(例えば、国際公開第96/040746号に記載の通り)、LOXの酵素活性をインビトロで、10μM未満、好ましくは1μM未満、最も好ましくは0.1μM未満、特に好ましくは0.01μM未満のIC50値で阻害することができる。
【0020】
好ましくは、LOX結合剤は、以下の(i)〜(v)から選択される。
(i)ホモシステインラクトン、
(ii)ピリダジノン、
(iii)ハロゲン化アリルアミン、
(iv)ビシナルジアミン、及び
(v)β−アミノプロプリオンニトリル及びその誘導体。
【0021】
最も好ましくは、LOX結合剤はホモシステインラクトン、ハロゲン化アリルアミン又はビシナルジアミンである。
【0022】
LOX結合剤がホモシステインラクトンの場合、ホモシステインラクトンは好ましくは次の式Iのものである。
【0023】
【化1】

式中、
及びRは各々独立に水素、アミノ酸残基、C1−6アルキル、ハロ、C1−6ハロアルキル、ヒドロキシル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシル、C2−6アルコキシアルキル、C1−6アシル、C2−6アルカシル、C1−6カルボキシル、C2−6カルボキシアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ニトロ、シアノ及びチオールからなる群から選択され、
及びYは各々独立にS、Se及びOからなる群から選択される。
【0024】
式Iについて、好ましくは、R及びRは各々独立に水素、アミノ酸、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−6アルコキシアルキル、C2−6カルボキシアルキル、C1−6アルキルアミノからなる群から選択される。
【0025】
式Iについて、最も好ましくは、Rは水素であり、Rはアミノ酸又はC1−6アルキルアミノである。
【0026】
好適なホモシステインラクトンの例としては、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
(i)グリシルホモシステインチオラクトン、
(ii)β−アラニルホモシステインチオラクトン、
(iii)γ−アミノブチリルホモシステインチオラクトン、
(iv)ε−アミノカプロイルホモシステインチオラクトン、
(v)リジルホモシステインチオラクトン。
【0027】
上記の好適なホモシステインラクトンの合成方法は国際公開第96/040746号に記載されている。
【0028】
LOX結合剤がピリダジノンである場合、ピリダジノンは好ましくは次式のものである。
【0029】
【化2】

式中、
及びRの一方はXであり、もう一方はYであり、
は含窒素脂肪族又は芳香族五又は六員環であって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6スルホニル及びイミダゾリルから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
はフェニル基であって、C1−6アルキル、ヒドロキシル、ハロ、C1−6アミノアルキル及びC1−6アルキルアミドから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
は、メチル又はクロロである。
【0030】
式IIについて、好ましくは、Xはピロリル、イミダゾイル、ピラゾイル、ピペリジル又はピペラジルであって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6スルホニルから選択される0〜2の置換基を有するものである。
【0031】
式IIについて、最も好ましくは、Xはイミダゾイル、ピペリジル又はピペラジルであって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6スルホニルから選択される0〜2の置換基を有するものであり、Yはフェニル基であって、ヒドロキシル、フルオロ、C1−6アミノアルキル及びカルバモイルから選択される0〜2の置換基を有するものである。
【0032】
本発明の好ましいピリダジノンの例としては、以下のものが挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

上述のホモシステインラクトンの合成方法は国際公開第96/040746号に記載されている。
【0035】
上記LOX結合剤がピリダジノンの場合、LOX結合剤は好ましくは次の式IIIのものである。
【0036】
【化5】

式中、Rは、メチル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、ピペリジニル、ピロリル、チエニル、フラニル、インドリル、チアナフチレニル、ベンゾフラニル、或いはフェニル基であってC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ニトロ、C2−6アルキルカルボニル、ベンゾイル及びフェニルから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
は、水素又はC1−6アルキルであり、
Aは、式−(L−のリンカーであって、L及びpはそれぞれL及びnについて定義した通りであり、
及びYは各々独立に水素、フルオロ、クロロ及びブロモからなる群から選択される。
【0037】
式IIIについて、好ましくは、Rはフェニル基であって、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ニトロ、C2−6アルキルカルボニル、ベンゾイル及びフェニルから選択される0〜2の置換基を有するものであり、Rは水素であり、Aは−(CH−であって、qは1〜6の範囲であり、Xは水素である。
【0038】
式IIIについて、最も好ましくは、Rは、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードから選択される1〜2の置換基で適宜置換されたフェニル基であり、Aは−(CH−であって、qは1〜6の範囲であり、Xは水素であり、Yはフルオロである。
【0039】
式IIIの化合物には、二重結合が1つ又は2つ存在しているので、幾何異性の可能性もあり、すなわち、アリルアミンの二重結合と、場合によってはA基において幾何異性の可能性がある。本発明は、実質的に純粋な異性体と、異性体の混合物の両方を包含するものである。X及びYの一方がハロゲンで、もう一方が水素であるような化合物では、ハロゲンは好ましくは−A−R基に対してシスで配向する。
【0040】
本発明のハロゲン化アリルアミンの例は、次式のものである。
【0041】
【化6】

上記ハロゲン化アリルアミンの合成方法は米国特許第5252608号に記載されている。
【0042】
LOX結合剤がビシナルジアミンである場合、ビシナルジアミンは好ましくは次の式IVのものである。
【0043】
【化7】

式中、R及びRは各々独立に水素又はC1−6アルキルであるか、或いはRとRがそれらに結合した炭素と共に適宜置換された脂肪族又は芳香族六員環〜14員環の系を形成するものである。
【0044】
式IVの2つの1級アミン基が、同じ立体化学平面上に配列しているのが好ましい。したがって、ビシナルジアミンが不飽和であったり、環状構造を有する場合、分子の立体配置は、トランスではなく、シスの配向とすべきである。
【0045】
式IVのビシナルジアミンの合成方法は、Gacheru et al, 1989,J.Biol.Chem.264(22)pp.12963−9並びに米国特許第4997854号に概述されている。
【0046】
式IVの化合物については、好ましくは、RとRがそれらに結合した炭素と共に置換シクロヘキシル又は置換ジシクロヘキシルを形成しており、置換基は好ましくはC1−3アルキル及びハロから選択される。
【0047】
式IVの化合物として最も好ましいのは、以下の式IVa及びIVbの化合物である。
【0048】
【化8】

式中、Rは、メチル、メトキシ、クロロ、フルオロ又はブロモである。
「造影基」は患者の体外から検出してもよいし、或いはインビボ用に設計された検出機器、例えば血管内放射線又は光学検出機器(内視鏡など)又は術中用に設計された放射線検出機器を使用することによって検出してもよい。
【0049】
造影基は、好ましくは、以下の(i)〜(vii)から選択される。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボ光学イメージングに適したレポーター、
(vii)血管内検出に適したβ線放射体。
【0050】
造影基が放射性金属イオンつまり放射性金属である場合、好適な放射性金属は、64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Gaのような陽電子放射体、或いは99mTc、111In、113mIn又は67Gaのようなγ線放射体である。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0051】
造影基が常磁性金属イオンである場合、かかる金属イオンの好適なものとして、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)が挙げられる。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0052】
造影基がγ線放出型放射性ハロゲンである場合、放射性ハロゲンは好適には123I、131I又は77Brから選択される。125Iは、画像診断用の造影基としての使用には適していないので、特に除外してある。好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは123Iである。
【0053】
造影基が陽電子放出型放射性非金属である場合、かかる陽電子放射体の好適なものとして、11C、13N、15O、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、18F及び124Iであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0054】
造影基が過分極NMR活性核種である場合、かかるNMR活性核種はゼロ以外の核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pが挙げられる。これらのうち、13Cが好ましい。「過分極」という用語は、NMR活性核種の分極の程度がその平衡分極を超えていることを意味する。13Cの天然存在量(12Cに対して)は約1%であり、適当な13C標識化合物は過分極する前に好適には5%以上、好ましくは50%以上、最も好ましくは90%以上の存在量となるように濃縮される。本発明の造影剤の1以上の炭素原子は好適には13Cで濃縮され、これを次いで過分極させる。
【0055】
造影基がインビボ光学イメージングに適したレポーターである場合、レポーターは光学イメージング法で直接又は間接的に検出できる部分であればよい。レポーターは光散乱体(例えば着色又は未着色粒子)でも、光吸収体でも、発光体でもよい。さらに好ましくは、レポーターは発色団又は蛍光化合物のような色素である。色素は紫外乃至近赤外域の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する色素であればよい。最も好ましくはレポーターは蛍光特性を有する。
【0056】
好ましい有機発色団及び蛍光団レポーターとしては、広範な非局在化電子系を有する基、例えばシアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム色素、チアピリリウム色素、スクアリリウム色素、クロコニウム色素、アズレニウム色素、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム色素、ベンゾチアフェノチアジニウム色素、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ色素、分子内及び分子間電荷移動色素及び色素鎖体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)鎖体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)鎖体、ヨードアニリン色素、ビス(S,O−ジチオレン)鎖体が挙げられる。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び吸収/発光特性の異なるGFPの修飾体も有用である。ある種の希土類金属(例えばユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の鎖体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)と同様に、特定の状況で用いられる。
【0057】
使用し得る発色団の具体例としては、フルオレセイン、スルホローダミン101(テキサスレッド)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、マリーナブルー、パシフィックブルー、オレゴングリーン88、オレゴングリーン514、テトラメチルローダミン並びにAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700及びAlexa Fluor 750が挙げられる。
【0058】
特に好ましいのは、400nm〜3μm、特に600〜1300nmの可視又は近赤外(NIR)域に吸収極大を有する色素である。光学イメージングモダリティ及び測定法としては、特に限定されないが、発光イメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光干渉断層撮影、透過イメージング、時間分解透過イメージング、共焦点イメージング、非線形顕微鏡、光音響イメージング、音響光学イメージング、分光法、反射分光法、干渉分光法、コヒーレンス干渉法、拡散光トモグラフィー及び蛍光媒介拡散光トモグラフィー(連続波、時間領域及び周波数領域システム)、並びに光散乱、吸収、偏光、発光、蛍光寿命、量子収率及び消光の測定が挙げられる。
【0059】
造影基が血管内検出に適したβ線放射体である場合、かかるβ線放射体の好適なものとして、放射性金属の67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re又は192Ir並びに非金属の32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brが挙げられる。
【0060】
造影基が血管内検出に適したβ線放射体である場合、かかるβ線放射体の好適なものとして、放射性金属の67Cu、89Sr、90Y、153Sm、186Re、188Re又は192Ir並びに非金属の32P、33P、38S、38Cl、39Cl、82Br及び83Brが挙げられる。
【0061】
好ましい造影基は、インビボ投与後に、非侵襲的方法で外部から検出できるものである。最も好ましい造影基は、放射性、特に放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属、特にSPECT又はPETを用いたイメージングに適したものである。
【0062】
本発明の好ましい造影剤はインビボで容易に代謝されず、最も好ましくは人体で60〜240分のインビボ半減期を示す。造影剤は好ましくは腎臓経由で排泄(つまり尿中排泄)される。造影剤の好ましくは病巣で1.5以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは10以上の信号対バックグラウンド比を示す。造影剤が放射性同位体を含む場合、生体内で非特異的に結合しているか或いは遊離している造影剤のピーク値の半量のクリアランスは、好ましくは造影基の放射性同位体の放射性崩壊の半減期以下の時間で起こる。
【0063】
また、造影剤の分子量は好適には5000Da以下である。好ましくは、分子量は150〜3000Da、最も好ましくは200〜1500Daの範囲であり、300〜800Daであるのが特に好ましい。
【0064】
LOX結合剤が式Iのホモシステインラクトンである好ましい実施形態では、造影基はR又はR、好ましくはRの一体部分であり、例えば以下のものである。
【0065】
【化9】

LOX結合剤が式Iのホモシステインラクトンである別の好ましい実施形態では、造影基はR又はR、好ましくはRに直接又は安定な化学基及び/又はリンカーを介して結合しており、例えば以下のものである。
【0066】
【化10】

造影剤3及び4を得るための合成経路をそれぞれ実施例4及び5に示す。
【0067】
LOX結合剤が式IIのピリダジノンである好ましい実施形態では、造影基はR又はR、好ましくはRの一体部分であり、例えば以下のものである。
【0068】
【化11】

LOX結合剤が式IIのピリダジノンである別の好ましい実施形態では、造影基はR又はR、好ましくはRに直接又は安定な化学基及び/又はリンカーを介して結合しており、例えば以下のものである。
【0069】
【化12】

式中、Tcは99mTcである。
【0070】
LOX結合剤が式IIIのハロゲン化アリルアミンである好ましい実施形態では、造影基はR、R又はY、最も好ましくはRの一体部分であり、例えば以下のものである。
【0071】
【化13】

造影剤9の非放射性型のものの合成については、実施例11に記載した。
【0072】
LOX結合剤が式IIIのハロゲン化アリルアミンである別の好ましい実施形態では、造影基はR、R又はY、最も好ましくはRに直接又は安定な化学基及び/又はリンカーを介して結合しており、例えば以下のものである。
【0073】
【化14】

LOX結合剤が式IVのビシナルジアミンである好ましい実施形態では、造影基はR及び/又はRに結合している。
【0074】
【化15】

上記化合物を得るための合成経路を実施例10に示す。
【0075】
前駆体化合物を経る造影剤の合成については、本発明の別の態様に関連して、以下で詳しく説明する。
【0076】
別の態様では、本発明は、前駆体と適当な造影基源との反応を含む、本発明の造影剤の製造方法であって、上記前駆体が、
(i)上記で定義したLOX結合剤と、
(ii)上記造影基源と反応して本発明の造影剤を生じる化学基と
を含んでおり、上記化学基がLOX結合剤の一体部分であるか或いはLOX結合剤と結合している、方法を提供する。
【0077】
「前駆体」には、本発明のLOX結合剤の誘導体であって、適当な化学的形態の造影剤との化学反応が部位特異的に起こり、最小限の段階数(理想的には一段階)で実施でき、しかも多大な精製を行わずに(理想的にはそれ以上精製しなくても)所望の造影剤が得られるように設計されたものが包含される。かかる前駆体は合成品であり、良好な化学的純度で得ることができる。「前駆体」は、適宜、LOX結合剤の官能基に対する保護基を含んでいてもよい。
【0078】
「保護基」という用語は、不都合な化学反応は阻害又は抑制するが、分子の残りの部分を修飾しない十分穏和な条件下で当該官能基から脱離させることができる十分な反応性をもつように設計された基を意味する。脱保護後に、所望の生成物が得られる。保護基は当業者に周知であり、好適には、アミン基については、Boc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニルである。)、Fmoc(Fmocはフルオレニルメトキシカルボニルである。)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[すなわち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(すなわち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、カルボニル基については、メチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから選択される。
ヒドロキシ基に対する適当な保護基は、メチル、エチル又はtert−ブチル、アルコキシメチル又はアルコキシエチル、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)或いはテトラブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリルである。チオール基に対する適当な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。その他の保護基の使用については、‘Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts(Third Edition、John Wiley & Sons,1999)に記載されている。
【0079】
好ましくは、造影基源と反応し得る化学基は、以下の(i)〜(vi)のいずれかを含む。
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート、又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(iv)求核又は求電子置換反応用の活性化芳香族環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化を起こす官能基を有する誘導体、
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体。
【0080】
造影基が金属イオンを含む場合、前駆体は、金属イオンと錯形成して金属錯体を形成することのできる化学基を含む。「金属鎖体」という用語は、金属イオンと1以上の配位子との配位鎖体を意味する。金属鎖体は「キレート交換耐性」、つまり金属の配位部位に対する他の潜在的な競合配位子との配位子交換を容易に起こさないものであるのが極めて好ましい。潜在的な競合配位子には、LOX結合剤自体並びにインビトロ標品中の他の賦形剤(製剤に使用される例えば放射線防護剤又は抗菌保存剤)又は生体の内在性化合物(例えばグルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。
【0081】
キレート交換に耐性の金属鎖体を形成する本発明の使用に適した配位子としては、(金属ドナー原子同士が炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格で連結されて)五又は六員キレート環が形成されるように2〜6、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配列したキレート剤、又はイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドのように金属イオンに強く結合するドナー原子を含む単座配位子が挙げられる。キレート剤の一部として金属によく結合するドナー原子の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィン類は強固な金属鎖体を形成し、単座又は二座ホスフィンであっても適当な金属鎖体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの線状構造は、それらをキレート剤に導入するのが容易ではないので、通例、単座配位子として使用される。適当なイソニトリルの例としては、tert−ブチルイソニトリルのような単純なアルキルイソニトリル及びmibi(すなわち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルが挙げられる。適当なホスフィンの例としては、テトロホスミン及び単座ホスフィン類、例えばトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンが挙げられる。適当なジアゼニドの例としては、配位子のHYNIC系配位子、すなわちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0082】
キレート交換耐性の金属鎖体を形成するテクネチウム用の適当なキレート剤の例としては、特に限定されないが、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
(i)ジアミンジオキシム;
(ii)チオールトリアミドドナーセットを有するNS配位子、例えばMAG(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連配位子、又はジアミドピリジンチオールドナーセットを有するもの、例えばPica;
(iii)ジアミンジチオールドナーセットを有するN配位子、例えばBAT又はECD(すなわちエチルシステイネート二量体)又はアミドアミンジチオールドナーセットを有するもの、例えばMAMA;
(iv)テトラミン、アミドトリアミン又はジアミンジアミンドナーセットを有する開環又はマクロ環状配位子であるN配位子、例えばサイクラム、モノオキシサイクラム又はジオキシサイクラム;又は
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するN配位子。
【0083】
本発明の好ましいテクネチウム用キレート剤はジアミンジオキシム及びテトラアミンであり、それらの好ましいものについて以下で詳しく説明する。
【0084】
好ましいジアミンジオキシムは、次の式(X)のものである。
【0085】
【化16】

式中、
〜Eは各々独立にR基であり、
各RはH、C1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキル、C2−10カルボキシアルキル、又はC1−10アミノアルキルであるか、或いは2以上のR基がそれらと結合した原子と共に飽和又は不飽和炭素環又は複素環を形成するもので、1以上のR基がベクターと結合しており、
は式−(J−の架橋基であり、fは3、4、又は5であり、各Jは独立に−O−、−NR−、又は−C(R−であるが、−(J−が、−O−又は−NR−であるJ基を最大1個しか含まないことを条件とする。
【0086】
好ましいQ基は以下のものである。
=−(CH)(CHR)(CH)−、すなわちプロピレンアミンオキシムつまりPnAO誘導体、
=−(CH(CHR)(CH−、すなわちペンチレンアミンオキシムつまりPentAO誘導体、
=−(CHNR(CH−。
【0087】
〜Eは、好ましくは、C1−3アルキル、アルキルアリールアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル、アミノアルキルから選択される。最も好ましくは、各E〜E基はCHである。
【0088】
LOX結合剤は、好ましくは、EもしくはEのR基又はQ部分のR基で結合している。最も好ましくは、Q部分のR基で結合する。Q部分のR基で結合している場合、R基は好ましくは橋頭位である。この場合、Qは、好ましくは、−(CH)(CHR)(CH)−、−(CH(CHR)(CH−、又は−(CHNR(CH−であり、最も好ましくは−(CH(CHR)(CH−である。特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレート剤は、次の式(Xa)のものである。
【0089】
【化17】

〜E20は各々独立にR基であり、
はN又はCRであり、
は−(L−結合剤であり、L及びrはそれぞれ上記でL及びnについて定義した通りであり、「結合剤」は、上記で定義したLOX結合剤である。リンカー基−(L−が存在する場合、それ以外にキレートとLOX結合剤を連結する他のリンカー基は存在しない。
【0090】
式(Xa)の好ましいキレート剤は、次の式(Xb)のものである。
【0091】
【化18】

式中、Gは上記のGで定義した通りであり、好ましくはCH(=「キレートX」、その合成方法については実施例6に記載)であって、LOX結合剤が橋頭位−CHCHNH基を介して結合する。
【0092】
本発明の好ましいテトラアミンキレート剤は、次の式Zのものである。
【0093】
【化19】

式中、Qは式−(J−の架橋基であり、gは1〜8であり、各Jは独立に−O−、−NR−又は−C(R−、好ましくは−C(R−、最も好ましくは−CH−である。
【0094】
は−(L−結合剤であり、L及びsはそれぞれL及びnについて上記で定義した通りであるが、−(L−がアリール環を含んでおらず、錯体の親油性を下げるのに役立つ。「結合剤」という用語は、上記で定義したLOX結合剤である。−(L−が存在している場合、これ以外にキレートをLOX結合剤に連結するリンカーは存在しない。
【0095】
21〜E26は、上記で定義したR基である。
【0096】
最も好ましい本発明のテトラアミンキレートは、次の式Zaのものである。
【0097】
【化20】

式中、Yは上記で定義した通りである。
【0098】
本発明の特に好ましいテトラアミンキレートは、式ZaのものでYが−CO−結合剤であるものである。
【0099】
上述の配位子は、テクネチウム(例えば94mTc又は99mTc)の錯体の形成に特に適しており、Jurisson et al, Chem.Rev.,99,2205−2218(1999)に詳細に記載されている。この配位子は、銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば48V)、鉄(例えば52Fe)又はコバルト(例えば55Co)のような他の金属にも有用である。その他の適当な配位子については、インジウム、イットリウム及びガドリニウム、特に単環アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸配位子に特に適した配位子を始めとして、Sandozの国際公開第91/01144号に記載されている。かかるドナー原子を有する好適なキレート剤の例としては、1、4、7、10−テトラアザシクロデカン−1、4、7、10−テトラ酢酸(DOTA)及びジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)が挙げられる。ガドリニウムの非イオン性(すなわち中性)の金属錯体を形成する配位子は公知であり、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属がテクネチウムの場合、配位子は好ましくは四座のキレート剤である。テクネチウム用の好ましいキレート剤は、ジアミンジオキシム又は上述のN又はNSドナーセットを有するものである。
【0100】
リンカー基(−(L−又は−(L−として上述したもの)の役割は、金属の配位で得られる比較的嵩高いテクネチウム錯体を、LOX結合剤の活性部位から遠ざけることによって、例えば、基質の結合に支障をきたさないようにすることである。これは、嵩高い基が活性部位から遠ざかる自由度をもつようにするための柔軟性(例えば単純なアルキル鎖)及び/又は金属錯体を活性部位から遠ざけるシクロアルキル系もしくはアリール系スペーサーのような剛直性の組合せによって達成することができる。リンカー基の性状は、得られるコンジュゲートのテクネチウム錯体の体内分布を変更するのにも利用できる。例えばエーテル基をリンカーに導入すると、血漿タンパク質の結合を最小限に抑制するのに役立つし、ポリアルキレングリコールのようなポリマー系リンカー基、特にポリエチレングリコール(PEG)を使用すると、血液中での造影剤のインビボ寿命を延ばすのに役立つ。
【0101】
好ましいリンカー基−(L−又は−(L−は、原子数2〜10、最も好ましくは原子数2〜5の骨格鎖(つまり−(L−又は−(L−基を構成する連結原子)を含むもので、原子数2又は3のものが特に好ましい。原子数2の最短のリンカー基骨格鎖であっても、生物学的ターゲティング基からキレーターが十分に離隔して相互反応が最小限になるという利点が得られる。さらに、LOX結合剤も、金属イオンへのキレーターの配位に有効に拮抗できなくなる。こうして、LOX結合剤の生物学的ターゲティング特性とキレーターの金属錯形成能が共に保持される。なお、LOX結合剤がキレーターに、それらの結合が血中で容易に代謝されないように結合していることが強く望まれる。かかる代謝によって、標識LOX結合剤がインビボで所望の標的部位に達する前に、造影用の金属錯体が開裂してしまうからである。そこで、LOX結合剤は、好ましくは、容易には代謝されない−(L−又は−(L−リンカー基を介して本発明の金属錯体に共有結合させる。かかる好適な結合は、炭素−炭素結合、アミド結合、尿素もしくはチオ尿素結合又はエーテル結合である。
【0102】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチド系リンカー基は、連結されたLOX結合剤と有意の水素結合相互作用がないため、リンカーがLOX結合剤に巻き付くことがないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH−であり、式中、tは2〜5の整数である。好ましくは、tは2又は3である。好ましいアリーレンスペーサーは次式のものである。
【0103】
【化21】

式中、a及びbは各々独立に0、1又は2である。
【0104】
好ましいY基(Y又はY)は−CHCH−(L−であり、Lは上記でLについて定義した通りであり、uは0〜3の整数である。
【0105】
LOX結合剤がペプチドの場合、Y基は好ましくは−CHCH−(L−であり、式中、−(L−は−CO−又は−NR′−(R′は上記で定義した通り)である。式Xbについて、GがNの場合、この組合せは市販の対称中間生成物N(CHCHNHから誘導できるという追加の利点がある。
【0106】
造影用金属がテクネチウムの場合、通常のテクネチウム出発原料は過テクネチウム酸塩、すなわちTcOつまり酸化状態がTc(VII)のテクネチウムである。過テクネチウム酸塩自体は金属錯体を形成しにくいので、テクネチウム錯体の製造に際しては、テクネチウムの酸化状態を低酸化状態(Tc(I)〜Tc(V))に還元することによって錯形成を促進するための第一スズイオンのような適当な還元剤を添加する必要がある。溶媒は有機溶媒でも、無機溶媒でも、それらの混合物でもよい。溶媒が有機溶媒を含む場合、有機溶媒は好ましくはエタノール又はDMSOのような生体適合性溶媒である。好ましくは、溶媒は水性溶媒であり、最も好ましくは等張塩類溶液である。
【0107】
造影基が放射性ヨウ素である場合、好ましい前駆体は、求電子又は求核ヨウ素化或いは標識アルデヒド又はケトンとの縮合を起こすような誘導体を含むものである。前者に属するものの例としては、以下の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)トリアルキルスタンナン(例えばトリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)、トリアルキルシラン(例えばトリメチルシリル)又は有機ホウ素化合物(例えば、ボロン酸エステル又はオルガノトリフルオロボレート)のような有機金属誘導体、
(b)ハロゲン交換のための非放射性臭化アルキル、或いは求核ヨウ素化のためのアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート、
(c)求電子ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばフェノール)及び求核ヨウ素化用の活性化芳香族環(例えばアリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)。
【0108】
前駆体は、好ましくは、ヨウ化又は臭化アリールのような非放射性ハロゲン原子(放射性ヨウ素交換を可能とするため)、活性化前駆体アリール環(例えばフェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えばトリアルキルスズ、トリアルキルシリル又は有機ホウ素化合物)、トリアゼンのような有機前駆体、或いはヨードニウム塩のような求核置換反応のための良好な脱離基を含む。放射性ヨウ素化では、前駆体は好ましくは有機金属前駆体化合物を含み、最も好ましくはトリアルキルスズを含む。
【0109】
前駆体及び放射性ヨウ素を有機分子に導入する方法は、Bolton, J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。適当なボロン酸エステル有機ホウ素化合物及びその製造方法は、Kabalaka et al, Nucl.Med.Biol.,29、841−843(2002)及び30,369−373(2003)に記載されている。適当なオルガノトリフルオロホウ化物及びその製造方法は、Kabalaka et al, Nucl.Med.Biol.,31、935−938(2004)に記載されている。
【0110】
放射性ヨウ素を結合させることのできるアリール基の例としては、以下のものがある。
【0111】
【化22】

これらはいずれも、芳香族環での放射性ヨウ素置換が容易な置換基を含んでいる。放射性ヨウ素を含む他の置換基は、例えば以下のような放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化によって合成することができる。
【0112】
【化23】

飽和脂肪族系に結合したヨウ素原子はインビボで代謝され易く、放射性ヨウ素が失われ易いことが知られているので、放射性ヨウ素原子は好ましくは芳香族環(ベンゼン環など)又はビニル基に直接共有結合で結合させる。
【0113】
造影基がフッ素の放射性同位体である場合、フッ化アルキルはインビボ代謝に抵抗性であるので、放射性フッ素原子はフルオロアルキル基又はフルオロアルコキシ基の一部としてもよい。或いは、放射性フッ素原子は、芳香族環(例えばベンゼン環)に直接共有結合で結合させてもよい。放射性ハロゲン化は、臭化アルキル、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような良好な脱離基を有する前駆体の適当な化学基と18F−フッ化物との反応を用いた直接標識法で実施できる。18Fは、18F(CHOH反応体を用いたN−ハロアセチル基のアルキル化によって導入することもでき、−NH(CO)CHO(CH18F誘導体が得られる。アリール系については、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩からの18F−フッ化物求核置換が、アリール−18F誘導体への好適な経路である。
【0114】
国際公開第03/080544号に記載された放射性フッ素化の別の方法は、以下の置換基のいずれかを含む前駆体化合物を式VIの化合物と反応させて、それぞれ式(VIa)又は(VIb)の放射性フッ素化造影剤を生成させる。
【0115】
【化24】

18F−Y−SH (VI)
式中、
は式−(L−のリンカーであって、適宜1〜6のヘテロ原子を含んでいてもよく(LはLについて上記で定義した通りであり、wは1〜10である。)、
は、式−(L−のリンカーであって、適宜1〜10のヘテロ原子を含んでいてもよい(LはLについて上記で定義した通りであり、xは1〜30である。)。
【0116】
【化25】

式中、Y及びYは上記で定義した通りであり、「結合剤」は上記で定義したLOX結合剤である。
【0117】
18F−標識誘導体の合成経路についてのさらに詳しい内容は、Bolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0118】
本発明の18F−標識化合物は、18Fフルオロジアルキルアミンの形成後、18Fフルオロジアルキルアミンを、例えば塩素、P(O)Ph又は活性化エステルを含む前駆体と反応させてアミドを形成することによって得ることができる。
【0119】
本発明の前駆体の例を幾つか以下の表に示す。
【0120】
【化26】

【0121】
【化27】

前駆体1は、123Iとのヨウ素交換反応による放射性ヨウ素化で造影剤6を合成するのに適している。前駆体2、3及び4は、99mTcとの錯形成で造影剤7、8及び13を合成するのに適している。前駆体5は、フェノールでの放射性ヨウ素置換で他の造影剤を合成するのに適している。
【0122】
前駆体1、3、4及び5の合成方法は、実施例2、8、10及び12に記載されている。
【0123】
本発明の別の態様は、造影剤の製造方法に関して定義した前駆体であって、上記化学基が、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む、前駆体に関する。
【0124】
本発明は、別の態様では、上述の造影剤を生体適合性担体と共に哺乳類への投与に適した形態で含む医薬組成物を提供する。好ましい実施形態では、医薬組成物は放射性医薬組成物である。
【0125】
「生体適合性担体」とは、造影剤を懸濁又は溶解できる流体、特に液体であって、組成物が生理学的に認容できるもの、つまり毒性も耐え難い不快感も伴わずに哺乳類の身体に投与することができるようなものである。生体適合性担体は好適には注射可能な担体液であり、例えば、発熱物質を含まない注射用の滅菌水、食塩液のような水溶液(これは注射用の最終製剤が等張性又は非低張性となるように調整するのに都合がよい)、1種以上の張度調節物質(例えば血漿陽イオンと生体適合性対イオンとの塩)、糖(例えばグルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えばグリセロール)その他の非イオン性ポリオール材料(例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液である。生体適合性担体は、エタノールのような生体適合性の有機溶媒を含んでいてもよい。かかる有機溶媒は、親油性の高い化合物又は製剤の可溶化に有用である。好ましくは、生体適合性担体はパイロジェンフリーの注射用水、等張塩類溶液又はエタノール水溶液である。静脈内注射用の生体適合性担体のpHは好適には4.0〜10.5の範囲内である。
【0126】
かかる医薬品は、好適には、無菌状態を維持したまま皮下注射針で一回又は複数回穿刺するのに適したシール(例えばクリンプオン式セプタムシール蓋)を備えた容器に入れて供給される。かかる容器には、1回又は複数回分の用量を入れることができる。好ましい多用量用容器は、複数回分の用量を収容した単一バルクバイアル(例えば容積10〜30cmのもの)からなり、臨床症状に応じて製剤の有効期間中様々な時間間隔で1回分の用量を臨床グレードのシリンジに吸引することができる。プレフィルドシリンジは1回分の用量つまり「単位用量」を収容するように設計され、そのため好ましくは使い捨て又はその他臨床用に適したシリンジである。医薬組成物が放射性医薬組成物の場合、プレフィルドシリンジは、適宜、オペレーターを放射能被曝から保護するためのシリンジシールドを備えていてもよい。かかる適当な放射性医薬品シリンジシールドは当技術分野で公知であり、好ましくは鉛又はタングステンからなる。
【0127】
本発明の医薬組成物は、以下の本発明の追加の態様で説明する通り、キットから調製することもできる。或いは、医薬組成物は、所望の滅菌生成物が得られるような無菌製造条件下で製造してもよい。医薬組成物を非滅菌条件下で調製した後、例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて最終的に滅菌してもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物はキットから調製される。
【0128】
本発明の造影剤に関して上述した通り、放射性医薬組成物に対して最も好ましい本発明の放射性造影基は99mTc、123I、11C及び18Fである。
【0129】
本発明は、さらに別の態様では、本発明の医薬組成物の調製用キットを提供する。かかるキットは、本発明の適当な前駆体、好ましくは滅菌された非発熱性の形態の前駆体を含んでいて、滅菌造影基源との反応で所望の医薬組成物を最低限の操作数で生ずる。かかる配慮は、放射性医薬品、特に放射性同位体の半減期が比較的短い放射性医薬品に対して重要であり、取扱いの容易さ及び放射性医薬品の取扱者の放射線被曝量の低減という点でも重要である。したがって、かかるキットの再構成用の反応溶媒は、好ましくは上記で定義した「生体適合性担体」であり、最も好ましくは水性担体である。
【0130】
キットの容器として適しているのは、無菌健全性及び/又は放射能の安全性並びに適宜、不活性ヘッドスペースガス(例えば窒素又はアルゴン)を維持することができ、しかも、シリンジで溶液の添加及び吸引もできる密封容器である。かかる容器として好ましいのはセプタムシールバイアルであり、気密蓋をオーバーシール(通例アルミニウム製)でクリンプしたものである。かかる容器は、適宜、例えば、ヘッドスペースガスの交換又は溶液の脱気などのため、蓋が真空に耐えることができるという追加の利点も有する。
【0131】
前駆体をキットに用いる際の好ましい態様は、合成法に関して上記で説明した通りである。キットに用いられる前駆体は、望ましい無菌の非発熱性物質を生じるように無菌製造条件下で用いられる。前駆体を非無菌条件下で使用し、最後に例えばγ線照射、オートクレーブ処理、乾熱又は化学的処理(例えばエチレンオキサイドでの処理)を用いて滅菌してもよい。好ましくは、前駆体は無菌非発熱性の形態で用いられる。最も好ましくは、無菌の非発熱性の前駆体を上述の密封容器内で用いる。
【0132】
キットの前駆体は、好ましくは、合成法に関して説明した固形担体マトリックスに共有結合させた形態で供給される。
【0133】
99mTc用には、キットは好ましくは凍結乾燥したもので、99mTc放射性同位体ジェネレータからの無菌99mTc−過テクネチウム酸(TcO)で再構成すれば、それ以上操作しなくてもヒトへの投与に適した溶液が得られるように設計される。適当なキットは、上述の未錯化キレート剤を、亜ジチオン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、第一スズイオン、Fe(II)又はCu(I)のような薬学的に許容される還元剤、並びに弱有機酸と生体適合性陽イオンとの1種以上の塩と共に収容した容器(例えばセプタムシールバイアル)を備える。「生体適合性陽イオン」という用語は、イオン化し負に荷電した基と塩を形成する正に荷電した対イオンであって、該正に荷電した対イオンが無毒性で、哺乳類の身体、特に人体への投与に適しているものを意味する。好適な生体適合性陽イオンの例としては、アルカリ金属のナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。
【0134】
99mTc造影剤の調製用キットは、適宜、トランスキレーターとして機能する第二の弱有機酸又はその生体適合性陽イオンとの塩をさらに含んでいてもよい。トランスキレーターは、テクネチウムと迅速に反応して弱い錯体を形成し、次いでキットのキレート剤で置き換えられる化合物である。これは、テクネチウム錯形成と競合する過テクネチウム酸の迅速な還元に起因した還元型加水分解テクネチウム(RHT)が形成されるおそれを最小限に抑制する。かかるトランスキレーターとして適しているのは、上述の弱有機酸及びその塩であり、好ましくは、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプタン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩であり、好ましくはホスホン酸塩、特に好ましくはジホスホン酸塩である。かかる好ましいトランスキレーターは、MDP(メチレンジホスホン酸)又はその生体適合性陽イオンとの塩である。
【0135】
99mTcキットに関しては、遊離型のキレート剤の使用に代えて、キットは、適宜、キレート剤の非放射性金属錯体を含んでいてもよく、テクネチウムを添加すると、トランスメタレーション(配位子交換)によって所望の生成物を生じる。かかるトランスメタレーションに適した錯体は銅又は亜鉛錯体である。
【0136】
99mTc造影剤キットに用いられる薬学的に許容される還元剤は、好ましくは、塩化第一スズ、フッ化第一スズ又は酒石酸第一スズのような第一スズ塩であり、これらは無水塩でも水和塩でもよい。第一スズ塩は好ましくは塩化第一スズ又はフッ化第一スズである。
【0137】
キットは、適宜、放射線防護剤、抗菌保存剤、pH調節剤又は充填剤のような追加の成分をさらに含んでいてもよい。
【0138】
「放射線防護剤」という用語は、水の放射線分解で生成する含酸素フリーラジカルのような反応性の高いフリーラジカルを捕捉することによって、酸化還元過程のような分解反応を阻害する化合物をいう。本発明の放射線防護剤は、好適には、アスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(すなわち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)並びにこれらと生体適合性陽イオンとの塩から選択される。「生体適合性陽イオン」及びその好適な実施形態は上述の通りである。
【0139】
「抗菌保存剤」という用語は、細菌、酵母又はカビなどの有害微生物の増殖を阻害する薬剤を意味する。抗菌保存剤は、濃度に応じてある程度の殺菌作用を示すこともある。本発明の抗菌保存剤の主な役割は、再構成後の医薬組成物(つまり、放射性診断薬自体)での微生物の増殖を阻害することである。ただし、抗菌保存剤は、再構成前の本発明の非放射性キットの1以上の成分における有害微生物の増殖の防止にも適宜使用できる。適当な抗菌保存剤としては、パラベン類、すなわちメチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン又はこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗菌保存剤はパラベン類である。
【0140】
「pH調節剤」という用語は、再構成したキットのpHが、ヒト又は哺乳類への投与に関して許容範囲(約pH4.0〜10.5)内に収まるようにするのに有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。かかる適当なpH調節剤としては、トリシン、リン酸塩又はTRIS(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)のような薬学的に許容される緩衝剤、並びに炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物などの薬学的に許容される塩基が挙げられる。前駆体を酸塩の形態で用いる場合、キットのユーザーが多段階法の一部としてpHを調節できるようにpH調節剤を適宜別のバイアル又は容器で提供してもよい。
【0141】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥時の材料の取扱いを容易にする薬学的に許容される増量剤を意味する。適当な充填剤としては、塩化ナトリウムのような無機塩並びに水溶性糖類又は糖アルコール、例えばスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースが挙げられる。
【0142】
本発明の造影剤は、インビボイメージングに有用である。したがって、別の態様では、本発明は、インビボ診断又はイメージング法、例えばSPECT又はPETに用いる造影剤を提供する。好ましくは、この方法は、LOXが上方制御される病態のインビボイメージングに関する方法であり、肝線維症、うっ血性心不全、糸球体硬化症及び呼吸不全のように、線維症に関連した病態の診断に有用である。最も好ましい実施形態では、上記病態は肝線維症である。
【0143】
本発明のこの態様では、LOXが上方制御される病態にある対象でインビボ診断又は造影する方法であって、本発明の医薬組成物を投与する段階を含む方法を提供する。対象は好ましくは哺乳類であり、最も好ましくはヒトである。別の実施形態では、本発明のこの態様は、LOXが上方制御される病態にある対象のインビボイメージングにおける本発明の造影剤の使用であって、対象に本発明の医薬組成物を予め投与しておく使用を提供する。
【0144】
「予め投与」とは、医療従事者が関与する段階であり、患者には医薬品が投与されていること、例えば、静脈内注射が既に実施されていることを意味する。本発明のこの態様には、LOXが上方制御される病態のインビボ画像診断用の医薬品の製造における本発明の造影剤の使用も包含される。
【0145】
さらに別の態様では、本発明は、LOXが上方制御される病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、本発明の造影剤を身体に投与し、造影剤の取込を検出し、任意ではあるが好ましくは、上記投与と検出を、例えば上記薬剤による治療の前後途中のいずれかに繰り返すことを含んでなる方法を提供する。
【0146】
実施例の簡単な説明
実施例1では、ピリダジノンLOX結合剤の合成について記載する。
【0147】
実施例2では、放射性ヨウ素化に適したピリダジノン系前駆体化合物(「前駆体1」)の合成について記載する。
【0148】
実施例3では、ホモシステインラクトンの合成について記載する。
【0149】
実施例4及び5では、造影剤3及び4の非放射性型の合成について記載する。
【0150】
実施例6では、キレートXの合成について記載する。
【0151】
実施例7では、キレートXのグルタリルアミド誘導体の合成について記載する。
【0152】
実施例8では、前駆体3の合成について記載する。前駆体3は、99mTcで標識して造影剤8を形成するのに適した前駆体である。
【0153】
実施例9では、前駆体3を99mTcで標識して造影剤8を形成する方法について記載する。
【0154】
実施例10では、99mTcで標識した造影剤13の合成について記載する。
【0155】
実施例11では、非放射性造影剤9の合成について記載する。
【0156】
実施例12では、前駆体5の合成について記載する。
【実施例】
【0157】
実施例で用いた略語のリスト
Boc:t−ブトキシカルボニル
DMF:ジメチルホルムアミド
ESI−MS:エレクトロスプレーイオン化質量分析
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
LC−MS:液体クロマトグラフィー−質量分析
Lys:リジン
NMM:N−メチルモルホリン
PyAOP:(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TFA:トリフルオロ酢酸。
【0158】
実施例1:tert−ブチル4−(5−クロロ−6−オキソ−1−p−トリル−1,6−ジヒドロ−4−ピリダジニル)−ピペラジン−1−カルボン酸の合成
【0159】
【化28】

Boc−ピペラジン(Acros、0.373g、2.0mmol)を、4,5−ジクロロ−2−(4−メチルフェニル)−2,3−ジヒドロピリダジン−3−オン(Maybridge、0.255g、1.0mmol)のジクロロメタン(10ml)溶液に徐々に加え、20時間乾留させた。溶液を水酸化ナトリウム(1M)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した(シリカ、ジクロロメタン/メタノール、99:1)ところ、0.236g(収率58%)が得られた。LC−MS分析(カラム、Phenomenex Luna C18(2)3μm2.0×50mm;溶剤:A=水/0.1%TFA及びB=アセトニトリル/0.1%TFA;勾配10〜80%のB、10分間;流量、0.3ml/分;214nm及び254nmの紫外線で検出;ESI−MS;t=8.4分;m/z、405.1(MH))を行って構造を確認した。
【0160】
実施例2: 4−[5−(4′−ヨード−ビフェニル−4−イルオキシ)−6−オキソ−1−p−トリル−1,6−ジヒドロ−4−ピリダジニル]−ピペラジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル[前駆体1]の合成
【0161】
【化29】

CsCO(Fluka、0.164g、0.50mmol)の乾燥メタノール(1ml)への懸濁液に、4−ヒドロキシ−4′−ヨードフェニル(Alfa Aesar、0.299g、1.0mmol)を何度かに分けて加えた。反応は、アルゴン中で実施した。混合物を1時間撹拌し、濃縮した。残留物に、上記a)で得られた溶液(0.136g、0.336mmol)のDMF(3.5ml)溶液を加えた。混合物を、120℃で20時間撹拌した。LC−MSで分析し(カラム、Phenomenex Luna C18(2)3μm2.0×50mm;溶剤:A=水/0.1%TFA及びB=アセトニトリル/0.1%TFA;勾配、50〜95%のB、10分間;流量、0.3ml/分、214nm及び254の紫外線で検出、ESI−MS;t=8.0分;m/z、665.2(MH))生成物を確認した。
【0162】
実施例3:リジン−ホモシステインチオラクトン[H−Lys−Hcy−チオラクトン]の合成
【0163】
【化30】

Boc−Lys(Boc)−OSu(44mg)、N−メチルモルホリン(NMM)(44μL)、L−ホモシステインチオラクトンの塩酸塩(15mg)を、1mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、反応混合物を16時間撹拌した。DMFを真空中で蒸発させ、残留物を、5%の水を含む10mlのトリフルオロ酢酸(TFA)中で、30分処理した。TFAを真空中で蒸発させ、残留物を調製用HPLC(定組成:1000%のHO/0.1%のTFA、40分間、流量:10mL/min、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:14.7分)にかけたところ、36mgの純粋な生成物が得られた。この純粋な生成物を分析用HPLC(定組成:100%HO/0.1%TFA、10分間、流量:0.3mL/min、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:1.06分)で分析した。生成物を質量分析でさらに調べた。(MH計算値:246.1、MH実測値:246.1)。
【0164】
実施例4:非放射性造影剤3[H−Lys(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−Hcy−チオラクトン]の合成
【0165】
【化31】

Boc−Lys−OH(25mg)、N−スクシンイミジル3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオネート(19mg)及びNMM(22μL)を、DMF(1mL)に溶解し、混合物を3日間撹拌した。調製用HPLCで精製したところ、26mgの純粋なBoc−Lys(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−OHが得られた。Boc−Lys(3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル)−OH(26mg)、NMM(22μL)及びL−ホモシステインチオラクトンHCl塩(15mg)を、DMF(1mL)に溶解した。(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)(26mg)を加え、反応混合物を80分撹拌した。DMFを真空中で蒸発させ、5%の水を含むTFA(10mL)で残留物を30分処理した。TFAを真空中で蒸発させ、残留物を調製用HPLC(勾配:10〜40%のB、40分間、A=HO/0.1%のTFA及びB=ACN/0.1%のTFA、流量:10mL/min、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:30分)にかけたところ、22mgの純粋な生成物が得られた。この純粋な生成物を、分析用HPLC(勾配:10〜40%のB、10分、A=HO/0.1%のTFA及びB=ACN/0.1%のTFA、流量:0.3mL/min、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×2mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:5.28分)で分析した。生成物を、質量分析でさらに調べた(MH計算値:520.1、MH実測値:520.2)。
【0166】
実施例5:非放射性造影剤4[3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル−Lys−Hcy−チオラクトン]の合成
【0167】
【化32】

H−Lys(Boc)−OH(25mg)、N−スクシンイミジル3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオン酸(19mg)及びNMM(22μL)を、DMF(1mL)に溶解し、混合物を3日間撹拌した。調製用HPLCで精製したところ、26mgの純粋な3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル−Lys(Boc)−OHが得られた。3−(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)プロピオニル−Lys(Boc)−OH(26mg)、NMM(22μL)及びL−ホモシステインチオラクトンHCl塩(15mg)を、DMF(1mL)に溶解した。(PyAOP)(26mg)を加え、反応混合物を60分撹拌した。DMFを真空中で蒸発させ、5%の水を含むTFA(10mL)で残留物を30分処理した。TFAを真空中で蒸発させ、残留物を調製用HPLC(勾配:10〜40%のB、40分間、A=HO/0.1%のTFA及びB=ACN/0.1%のTFA、流量:10mL/min、カラム:Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:26分)にかけたところ、22mgの純粋な生成物が得られた。この純粋な生成物を、分析用HPLC(勾配:10〜40%のB、5分間、A=HO/0.1%のTFA及びB=ACN/0.1%のTFA、流量:0.6mL/min、カラム:Phenomenex Luna 3μ C18(2)20×2mm、検出:UV214nm、生成物の保持時間:2.62分)で分析した。生成物を、質量分析でさらに調べた(MH計算値:520.1、MH実測値:520.1)。
【0168】
実施例6:キレートX[ビス[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン]の合成
【0169】
【化33】

(工程a):トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタンの調製
3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)のメタノール(200ml)溶液を、木炭に担持させたパラジウム10%:水50%(9g)と共に、水素ガス雰囲気(3.5バール)中で30時間振盪し、溶液を珪藻土で濾過し、真空中で濃縮して、ジメチル3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸を油分として得た。収率:84.9g、94%。
NMRH(CDCl),δ2.48(6H,d,J=8Hz,3xCH),2.78(1H,六重項,J=8Hz,CH,)3.7(9H,s,3xCH)。
NMR13C(CDCl),δ28.6,CH;37.50,3xCH;51.6,3xCH;172.28,3xCOO。
【0170】
(工程b):p−メトキシ−ベンジルアミンによる、トリメチルエステルのアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。蒸留用の装置を組み、窒素流中で、120℃に24時間加熱した。反応の進行を、集まったメタノールの量で監視した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、30mlの酢酸エチルを加え、沈殿したトリアミド生成物を30分間撹拌した。トリアミドを、濾過によって単離し、フィルターケーキを十分な量の酢酸エチルで数回洗浄して、過剰なp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、4.6g(100%)の白色粉末が得られた。高度に不溶性の生成物は、それ以上精製したり解析したりすることなく、直接、次の工程に使用した。
【0171】
(工程c):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの調製
氷水浴中で冷却しておいた1000mlの3口丸底フラスコで、工程2(a)で得たトリアミド(10g、17.89mmol)を、250mlの1Mボラン溶液(3.5g、244.3mmolのボラン)に注意深く加えた。加え終わったら氷水浴を取り外し、反応混合物を徐々に60℃まで加熱した。反応混合物を60℃で20時間撹拌した。反応混合物のサンプル(1ml)を取り出し、0.5mlの5NのHClと混合し、30分間静置した。サンプルに、0.5mlの50NaOHを加え、その後、2mlの水を加え、溶液を、白色の沈殿がすべて溶解するまで撹拌しつづけた。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残留物を、1mg/mlの濃度でアセトニトリルに溶解し、質量分析を行った。質量分析スペクトルで、モノ−及びジアミドが見られる場合には(M+H/z=520及び534)、反応は完了していない。反応を完了させるために、さらに100mlのボランの1MのTHF溶液を反応混合物に加え、さらに6時間60℃にて撹拌を続けた。上記のサンプル採取につづき、さらに新たなサンプルを採取した。トリアミンへの完全な添加が完了するまで、適宜、ボランの1MのTHF溶液をさらに加えつづけた。
【0172】
反応混合物を周囲温度まで冷却し、5NのHClを徐々に加えた[注意:激しく発泡するので注意]。HClは、気体の発生が観察されなくなるまで加えた。混合物を30分間撹拌し、その後蒸発させた。ケーキをNaOH水溶液に懸濁し(20〜40%、1:2w/v)、30分間撹拌した。混合物を水(3容量)で希釈した。次に、混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶剤は使用しないこと]。次に、有機相を一緒にして、水(1x200ml)及び食塩水(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。蒸留後の収率:7.6g、84%(油分として)。
【0173】
NMRH(CDCl),δ:1.45,(6H,m,3xCH;1.54,(1H,七重項,CH);2.60(6H,t,3xCHN);3.68(6H,s,ArCH);3.78(9H,s,3xCHO);6.94(6H,d,6xAr).7.20(6H,d,6xAr)。
【0174】
NMR13C(CDCl),δ:32.17,CH;34.44,CH;47.00,CH;53.56,ArCH;55.25,CHO;113.78,Ar;129.29,Ar;132.61;Ar;158.60,Ar。
【0175】
(工程d):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0グラム、0.036mol)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)(5.0グラム)を加えた。混合物の水素添加を行い(3バール、100℃、オートクレーブ中)、5時間撹拌した。Pd(OH)を、さらに、10時間後と15時間後に2回に分けて加えた(2×5グラム) 。
【0176】
反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。有機相を一緒にして、蒸発させ、残留物を減圧下で蒸留したところ(1×10−2、110℃)、2.60グラム(50%)の1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンが得られた。
【0177】
NMRH(CDCl),δ2.72(6H,t,3xCHN),1.41(H,七重項,CH),1.39(6H,q,3xCH)。
【0178】
NMR13C(CDCl),δ39.8(CHNH),38.2(CH.),31.0(CH)。
【0179】
(工程e):キレートXの調製
トリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の乾燥エタノール(30ml)溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を、窒素雰囲気で、室温にて、激しく撹拌しながら加えた。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8mol、2当量)の溶液を、乾燥エタノール(100ml)に溶解し、75mlのこの溶液を、反応混合物に徐々に滴下して加えた。反応後、シリカでTLCを行った[ジクロロメタン、メタノール、濃縮(0.88sg)アンモニア(100/30/5)で展開させ、ニンヒドリンを吹き付けて加熱することによって、TLCプレートを現像した]。モノ−、ジ−及びトリアルキル化した生成物が観察され、RFはその順で上昇していた。分析用HPLCを、RPR逆相カラムで、アセトニトリルの3%アンモニア水溶液への7.5〜75%の勾配を用いて行った。反応生成物を真空中で濃縮して、エタノールを除去し、水(110ml)に再懸濁させた。水性のスラリーをエーテル(100ml)で抽出して、トリアルキル化化合物の一部と親油性の不純物を除去し、モノ−及び所望のジアルキル化生成物を、水相に残留させた。水溶液を、酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝化させ、クロマトグラフィーを最適化した。水溶液を4℃で一晩保存してから、自動化した調製用のHPLCで精製を行った。
収率(2.2g、6.4mmol、23%)。
【0180】
質量分析:正イオン、コーン電圧10V、実測値:344、計算値(M+H):344
NMRH(CDCl),δ1.24(6H,s,2xCH),1.3(6H,s,2xCH),1.25−1.75(7H,m,3xCH2,CH),(3H,s,2xCH),2.58(4H,m,CHN),2.88(2H,t,CH),5.0(6H,s,NH,2xNH,2xOH)。
【0181】
NMRH((CDSO),δ1.14xCH;1.29,3xCH;2.1(4H,t,2xCH);
NMR13C((CDSO),δ9.0(4xCH),25.8(2xCH),31.02xCH,34.6CH,56.82xCHN;160.3,C=N。
【0182】
HPLCの条件:流量、8ml/分、25mmのPRPカラムを使用
A=3%アンモニア水(比重=0.88)/水、B=アセトニトリル
時間 B(%)
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5。
【0183】
1回あたり3mlの水溶液を充填し、12.5〜13.5分の時間幅で採取すること。
【0184】
実施例7:キレートXのグルタリルイミド誘導体[bis[(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−(グルタリルイミド)エチル)メタン]の合成
【0185】
【化34】

キレートX(0.5g、1.45mmol)を乾燥アセトニトリル(50ml)及びトリエチルアミン(150mg、1.45mmol)に窒素雰囲気中で溶解し、氷浴で0Cまで冷却した。撹拌しながら、グルタル酸無水物(165mg、1.45mmol)を反応系に加え、室温まで戻し、一晩撹拌した。一晩で生成した沈殿を濾過で集め、真空中で乾燥して、標記化合物の不純なサンプル(267mg、0.583mmol、40%)を得た。濾液を真空中で濃縮して得た無色のガラスを、集めておいた沈殿と一緒にして、5%のアンモニア水(比重0.880)(50ml)に再度溶解し、自動化調製用HPLCで精製した。
HPLCの条件:流量8ml/分、150mm×25mmのPRPカラムを使用、サンプルは、1回に溶液2mlを充填
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水
B=アセトニトリル
時間 B(%)
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
31 7.5。
【0186】
所望の生成物は、15.25〜16.5分で溶出した。生成物の溶液を真空中で蒸発させたところ、無色のガラス状の発泡体(304mg、0.68mmol、47%)(融点、54.8℃)が得られた。生成物を、TLCと分析用HPLCで、ワンスポットで分析した。
【0187】
NMRH(DMSO),0.7(12H,s,4xCH),0.85(4H,m,2xCH),1.0(1H,m,CH),1.3(6H,s,2xCH),1.3(4H,m,2xCH),1.6(2H,m,CH),1.75(6,m,3xCH),2.6(2,m,,2xOH)3.2(2H,t,NH)7.3(1H,t,NH)。
【0188】
NMR13C(CDSO)8.97,20.51,20.91,25.09,25.60,31.06,33.41,33.86,56.89,66.99160.07,1712.34,174.35174.56。
【0189】
M/S:C2243,M+H=457計測値457.6。
【0190】
実施例8:前駆体3[5−{4−[1−(4−クロロ−フェニル)−5−(4′−フルオロ−ビフェニル−4−イルオキシ)−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−ピリダジン−4−イル]−ピペラジン−1−イル}−5−オキソペンタン酸{5−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)−3−[2−(2−ヒドロキシイミノ−1,1−ジメチル−プロピルアミノ)エチル]ペンチル}アミド]の合成
【0191】
【化35】

キレートXのグルタリルアミド誘導体(300mg、0.66mmol)のDMF(2mL)溶液に、HATU(249mg、0.66mmol)及びNMM(132μL、1.32mmol)を加えた。混合物を5分間撹拌し、テトラフルオロチオフェノール(0.66mmol、119mg)を加えた。10分間撹拌後、反応混合物を20%のアセトニトリル/水(8mL)で希釈し、生成物を逆相HPLCで精製したところ、収量110mgの所望の生成物が凍結乾燥後に得られた。
【0192】
2−(4−クロロ−フェニル)−4−(4′−フルオロビフェニル−4−イルオキシ)−5−ピペラジン−1−イル−2H−ピリダジン−3−オン(0.5mmol、国際公開第03/097612号に記載された方法で合成)のDMF(5ml)溶液に、N−メチルモルホリン(1mmol)及び上述のペンタフルオロフェニルエステル(0.55mmol)を加えた。反応混合物を1時間撹拌し、真空中で濃縮した。残留物を、0.1%のTFAを含む水とアセトニトリルの混合物に加え、適当な水/アセトニトリル(0.1%のTFA)勾配を用いて、逆相クロマトグラフィーで精製した。
【0193】
実施例9:前駆体3の99mTc標識による造影剤8の形成[予測例]
【0194】
【化36】

16μgの無水塩化第一スズ、25μgのメチレンジホスホン酸、4500μgの炭酸水素ナトリウム、600μgの炭酸ナトリウム、200μgのp−アミノ安息香酸ナトリウムを、50μgの前駆体3の水溶液に加える。1ml(約500MBq)の99mTcO4−を加え、得られた溶液を、室温で30分間静置し、その後、HPLC及び/又はTLCで、以下の条件を用いて分析する。
HPLC
カラム:PhenomenexGemini、5u、4.6×150mm
紫外線:220nm
流量:1ml/分
溶出剤A:0.2%アンモニア水溶液(0.88アンモニアを用いて調製)
溶出剤B:アセトニトリル
勾配:10〜60%のB、10分間。
TLC
1)シリカゲルストリップ、塩類溶液中で実施
2)シリカゲルストリップ、50:50の0.1MのNHOAc:MeOH中で実施。
【0195】
実施例10:造影剤13の合成[予測例]
【0196】
【化37】

(i)N−(カルボキシメチル)−N−(2−ピリジニルメチル)グリシンt−ブチルエステル(Tc99m(COのキレート剤)の合成
この化合物の合成は、Stichelberger et al, Nuclear Medicine and Biology(2003)30(5)465]で対応するメチルエステルについて記載されている方法を、ブロモ酢酸メチルのかわりにt−ブチルを用いることによって僅かに改変して実施する。
【0197】
(ii)工程(i)で得られたキレート剤の1,2−ジアミノシクロヘキサンとの結合
1,2−ジアミノシクロヘキサン(0.50mmol、合成方法は、Gacheruら(J.Biol.Chem.1989 264(22)12963−9)に記載)、工程(i)で得られたキレート剤(0.55mmol)、PyAOP(0.55mmol)のDMF(5ml)溶液に、N−メチルモルホリン(1.1mmol)を加える。反応の進行を、適当な水/アセトニトリル(0.1%のTFA)の勾配を用いた逆相HPLCで監視する。出発材料が完全に転化したら、溶液を真空中で濃縮し、残留物を逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0198】
(iii)工程(ii)で得られたコンジュゲートの脱保護
工程(ii)で得られた化合物のTFA/水(95:5)混合物溶液を、Boc基が完全に開裂するまで撹拌し、HPLCで分析を行って、t−ブチルエステルを確認する。反応混合物を真空中で濃縮し、残留物を、適当な水/アセトニトリル(0.1%のTFA)の勾配を用いて調製用逆相クロマトグラフィーで精製する。
【0199】
(iv)工程(iii)で得られた前駆体の放射標識
99mTc(HO)(CO)をPsimadas et al, Applied Radiation and Isotopes(2006)64、151]に記載の通り用いて、放射標識を実施する。適当な水/メタノール(0.1%TFA)の勾配を用いた逆相HPLCで、放射化学分析を行う。
【0200】
実施例11:非放射性造影剤9の合成
【0201】
【化38】

(i)化合物2の調製
エピクロロヒドリン(3.85g、0.0417mmol、1当量)を、市販のグリニャール塩1(0.0375mmol、0.9当量)の0.25MのTHF溶液に徐々に加えた。溶液を35℃で約2時間撹拌したところ、反応が完了した(TLC:酢酸エチル/石油エーテル、2:8)。反応混合物に水を徐々に加えた。沈殿したマグネシウム塩を濾別し、濾液を減圧下で濃縮して、THFを除去した。残った水溶液をDCMで洗浄した(x3)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別し、溶剤を減圧下で留去した。その後、粗生成物を、クロマトグラフィーで精製した(10〜20%酢酸エチル/石油エーテル)。収率:70%。
【0202】
(ii)化合物3の調製
化合物2(1g、0.005mol、1当量)をDMF(25ml)に溶解し、アジ化ナトリウム(1.6g、0.025mol、5当量)を加えた。反応混合物を120℃で一晩撹拌した(TLC:酢酸エチル/石油エーテル、2:8)。水を加え、溶液をジエチルエーテルで抽出した(x2)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別し、溶剤を減圧下で蒸発させて、容積を約20mlとした。その後、酢酸エチルを加え、溶液を約5mlまで再度濃縮した。その後、この残留物を、クロマトグラフィーによって精製した。(5〜20%の酢酸エチル/石油エーテル)。収率:90%。
【0203】
(iii)化合物4の調製
3(1.035g、0.005mmol)のメタノール溶液に、木炭に担持させた10%のパラジウム(200mg)を加えた。その後、Parr装置を用いて、混合物の水素付加を行い、触媒を濾別して、濾液を減圧下で乾燥するまで蒸発させたところ、黄色の油が得られた。H−NMRを行ったところ、この油分は、所望のアミン4であることが確認された。収率:95%。
【0204】
(iv)化合物5の調製
4(1.078g、5.89mmol、1当量)のTHF溶液に、Boc無水物(1.414g、6.48mmol、1.1当量)を0℃で加えた。溶液を、一晩撹拌した。THFを蒸発させ、残留物を水に加えた。水を酢酸エチルで抽出した(x3)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別し、溶剤を減圧下で乾燥するまで蒸発させたところ、黄色の油分が得られた。この油分を、クロマトグラフィー(20〜70%の酢酸エチル/石油エーテル)で精製した。収率:50%。
【0205】
(v)化合物6の調製
アルコール5(1.3g、4.6mmol、1当量)のDCM溶液(0℃)を、ピリジン(820μl、10.12mmol、2.2当量)で処理し、その後、デス・マーチン・ペルヨージナン(3.90g、9.2mmol、2当量)を加えた。反応系を、室温で撹拌しつづけた(TLC:石油エーテル/酢酸エチル、3:7)。約3時間後に、数滴の水を加え、反応を飽和重炭酸ナトリウム水溶液と飽和亜硫酸ナトリウムで、クエンチさせ、DCMで抽出した(x3)。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別し、溶剤を減圧下で蒸発させたところ、ゴム状物が得られた。ゴム状物を、クロマトグラフィー(20〜50%の酢酸エチル/石油エーテル)で精製した。収率:40%。
【0206】
(vi)化合物7の調製
フルオロメチルフェニルスルホン(297mg、1.708mmol、2当量)とクロロリン酸ジエチル(247μl、1.708mmol、2当量)のTHF溶液に、窒素中で−60℃にて、LiHDMSの1.0MのTHF溶液(3.42ml、3.416mmol、4当量)を加えた。溶液を約30分撹拌しつづけ、THFに溶解したケトンを加えた。反応系を室温にて12時間撹拌しつづけた(TLC:酢酸エチル/石油エーテル、3:7)。反応混合物を、クロマトグラフィー(5〜40%酢酸エチル/石油エーテル)で精製した。NMRによって、主生成物が所望の化合物7であることを確認した。収率:71.4%。
【0207】
(vii)化合物8の調製
化合物7(267mg、0.61mmol、1当量)、トリブチルスズ水和物(533mg、1.83mmol、3当量)、ACN(15mg、0.061mmol、0.1当量)を、ベンゼンに溶解し、混合物を一晩還流した(TLC:酢酸エチル/石油エーテル、1:9)。ベンゼンを減圧下で蒸発させ、粗生成物をNMRで分析したところ、所望の生成物が主成分であることが示された。次に、この混合物を、1〜30%の酢酸エチル・石油エーテルを用いてクロマトグラフィーで精製した。収率:54%。
【0208】
(viii)化合物の9の調製
化合物8のTHF溶液に、NaOMeの0.5Mメタノール溶液を徐々に加え、反応混合物を60℃に12時間加熱した(TLC:酢酸エチル/石油エーテル、1:9.)。溶剤を減圧下で除去し、粗生成物を、10〜30%の酢酸エチル/石油エーテルを用いたクロマトグラフィーで精製した。収率:72%。
【0209】
(ix)化合物10[非放射性造影剤9]の調製
化合物9(70mg、0.236mmol、1当量)を、4MのHClのジオキサン溶液(1ml、約4当量)に溶解した。反応混合物を、室温で一晩撹拌した。溶剤を減圧下で除去した。ジエチルエーテルを透明の油分に加えたところ、生成物が、白色固体として沈殿した。純粋な化合物をH−NMR及びNOE実験で調べたところ、10が所望の化合物及び所望の異性体(フッ素はアミンに対してトランス)であることが確認された。
【0210】
実施例12:5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−4−(4′−ヒドロキシ−ビフェニル−4−イルオキシ)−2−p−トリル−2H−ピリダジン−3−オン[前駆体5]の合成
【0211】
【化39】

反応は、マイクロ波によって反応させる都合上、ガラス製バイアル中で実施した。4、4′−ジヒドロキシビフェニル(Fluka、11mg、0.060mmol)を、炭酸セシウム(Fluka、39mg、0.12 mmol)の乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(Rathburn、2mL)への懸濁液に、アルゴン中で加えた。1時間後、この混合物を、4−クロロ−5−(4−エチル−ピペラジン−1−イル)−2−p−トリル−2H−ピリダジン−3−オン(20mg、0.060mmol)に加えた。マイクロ波を照射することによって混合物を130℃に9時間加熱した。減圧下でN,N−ジメチルホルムアミドを蒸発させ、反応混合物を逆相HPLC(カラム、Phenomenex Luna C18(2)5μ21.2×250mm、溶剤:A=水/0.1%のTFA及びB=アセトニトリル/0.1%のTFA;勾配、2〜40%のB、60分間;流量、10ml/分、214nm及び254nmの紫外線で検出)を用いて精製したところ、1.4mgの純粋な化合物が得られた。HPLCによる分析(カラム、Phenomenex Luna C18(2)5μ4.6×250mm、溶剤:A=水/0.1%のTFA及びB=アセトニトリル/0.1%のTFA;勾配、20〜40%のB、20分間;流量、1.0ml/分、214nm及び254nmの紫外線で検出、t=19.8分)、並びにLC−MSによる分析(カラム、Phenomenex Luna C18(2)3μm2.0×20mm;溶剤:A=水/0.1%のTFA及びB=アセトニトリル/0.1%のTFA;勾配、10〜80%のB、5分間;流量、0.6ml/分、214nm及び254nmの紫外線で検出、ESI−MS;t=2.5分、m/z、483.3(MH))によって、生成物を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)リジルオキシダーゼ(LOX)6結合剤と、
(ii)造影基と
を含む造影剤であって、造影基がLOX結合剤の一体部分であるか、或いは適当な化学基を介してLOX結合剤と結合している造影剤。
【請求項2】
LOX結合剤が以下の(i)〜(iv)から選択される、請求項1記載の造影剤。
(i)ホモシステインラクトン、
(ii)ピリダジノン、
(iii)ハロゲン化アリルアミン、及び
(iv)ビシナルジアミン。
【請求項3】
LOX結合剤がホモシステインラクトンであって、次の式Iのものである、請求項2記載の造影剤。
【化1】

式中、
及びRは各々独立に水素、アミノ酸残基、C1−6アルキル、ハロ、C1−6ハロアルキル、ヒドロキシル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6アルコキシル、C2−6アルコキシアルキル、C1−6アシル、C2−6アルカシル、C1−6カルボキシル、C2−6カルボキシアルキル、アミノ、C1−6アルキルアミノ、ニトロ、シアノ及びチオールからなる群から選択され、
及びYは各々独立にS、Se及びOからなる群から選択される。
【請求項4】
及びRが各々独立に水素、アミノ酸残基、C1−6アルキル、C1−6ハロアルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C2−6アルコキシアルキル、C2−6カルボキシアルキル及びC1−6アルキルアミノからなる群から選択される、請求項3記載の造影剤。
【請求項5】
が水素であり、Rがアミノ酸残基又はC1−6アルキルアミノである、請求項3又は請求項4記載の造影剤。
【請求項6】
ホモシステインラクトンが以下の(i)〜(v)から選択される、請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の造影剤。
(i)グリシルホモシステインチオラクトン、
(ii)β−アラニルホモシステインチオラクトン、
(iii)γ−アミノブチリルホモシステインチオラクトン、
(iv)ε−アミノカプロイルホモシステインチオラクトン、
(v)リジルホモシステインチオラクトン。
【請求項7】
上記LOX結合剤がピリダジノンであって次式のものである、請求項2記載の造影剤。
【化2】

式中、
及びRの一方はXであり、もう一方がYであり、
は含窒素脂肪族又は芳香族五又は六員環であって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル、C1−6スルホニル及びイミダゾリルから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
はフェニル基であって、C1−6アルキル、ヒドロキシル、ハロ、C1−6アミノアルキル及びC1−6アルキルアミドから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
はメチル又はクロロである。
【請求項8】
が、ピロリル、イミダゾイル、ピラゾイル、2−ピペリジル又はピペラジルであって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6スルホニルから選択される0〜2の置換基を有するものである、請求項7記載の造影剤。
【請求項9】
がイミダゾイル、2−ピペリジル又はピペラジルであって、C1−6アルキル、C1−6ヒドロキシアルキル及びC1−6スルホニルから選択される0〜2の置換基を有するものであり、Yがフェニル基であって、ヒドロキシル、フルオロ、C1−6アミノアルキル及びカルバモイルから選択される0〜2の置換基を有するものである、請求項7又は請求項8記載の造影剤。
【請求項10】
ピリダジノンが次式の化合物から選択される、請求項7乃至請求項9のいずれか1項記載の造影剤。
【化3】

【化4】

【請求項11】
LOX結合剤がハロゲン化アリルアミンであって、次の式IIIのものである、請求項2記載の造影剤。
【化5】

式中、
はメチル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、ピペリジニル、ピロリル、チエニル、フラニル、インドリル、チアナフチレニル、ベンゾフラニル、或いはフェニル基であってC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ニトロ、C2−6アルキルカルボニル、ベンゾイル及びフェニルから選択される0〜4の置換基を有するものであり、
は水素又はC1−6アルキルであり、
Aは式−(L−のリンカーであり、各Lは独立に−CO−、−CR′−、−CR′=CR′−、−C≡C−、−CR′CO−、−COCR′−、−NR′−、−NR′CO−、−CONR′−、−NR′(C=O)NR′−、−NR′(C=S)NR′−、−SONR′−、−NR′SO−、−CR′OCR′−、−CR′SCR′−、−CR′NR′CR′−、C4−8シクロヘテロアルキレン基、C4−8シクロアルキレン基、C5−12アリーレン基、C3−12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、ポリアルキレングリコール、ポリ乳酸又はポリグリコール酸部分であり、
pは0〜10の整数であり、
各R′基は独立にH又はC1−10アルキル、C3−10アルキルアリール、C2−10アルコキシアルキル、C1−10ヒドロキシアルキル、C1−10フルオロアルキルであるか、或いは2以上のR′基がそれらと結合した原子と共に炭素環、複素環式、飽和又は不飽和環を形成するものであり、
及びYは各々独立に水素、フルオロ、クロロ及びブロモからなる群から選択される。
【請求項12】
がフェニル基であって、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ヒドロキシル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロメチル、ニトロ、C2−6アルキルカルボニル、ベンゾイル及びフェニルから選択される0〜2の置換基を有するものであり、Rが水素であり、Aが−(CH−であり、qが1〜6の整数であり、Xが水素である、請求項11記載の造影剤。
【請求項13】
が、クロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードから選択される1〜2の置換基で適宜置換されたフェニル基であり、Aが−(CH−であり、qが1〜6の整数であり、Xが水素であり、Yがフルオロである、請求項11又は請求項12記載の造影剤。
【請求項14】
ハロゲン化アリルアミンが次の式のものである、請求項11乃至請求項13のいずれか1項記載の造影剤。
【化6】

【請求項15】
ビシナルジアミンが次の式IVのものである、請求項2記載の造影剤。
【化7】

式中、
及びRは各々独立に水素又はC1−6アルキルであるか、或いはRとRがそれらに結合した炭素と共に適宜置換された六〜十四員脂肪族又は芳香族環系を形成するものである。
【請求項16】
式IVの複数の第一アミンが同一の立体化学平面上に配列されている、請求項15記載の造影剤。
【請求項17】
及びRがそれらに結合した炭素と共に適宜C1−3アルキル及びハロから選択される1〜3の置換基で置換されたシクロヘキシル又はジシクロヘキシル環を形成している、請求項15又は請求項16記載の造影剤。
【請求項18】
造影基が以下(i)〜(vii)から選択される、請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載の造影剤。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボ光学イメージングに適したレポーター、及び
(vii)血管内検出に適したβ線放射体。
【請求項19】
造影基が放射性金属イオンである、請求項18記載の造影剤。
【請求項20】
放射性金属イオンが99mTcである請求項19記載の造影剤。
【請求項21】
造影基がγ線放出型放射性ハロゲンである、請求項18記載の造影剤。
【請求項22】
γ線放出型放射性ハロゲンが123I及び131Iから選択される、請求項21記載の造影剤。
【請求項23】
造影基が陽電子放出型放射性非金属である、請求項18記載の造影剤。
【請求項24】
前記陽電子放出型放射性非金属が18Fである、請求項23記載の造影剤。
【請求項25】
前駆体と請求項1又は請求項18乃至請求項24のいずれか1項記載の適当な造影基源との反応を含む、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の造影剤の製造方法であって、上記前駆体が、
(i)請求項1乃至請求項17のいずれか1項記載のLOX結合剤と、
(ii)造影基源と反応し得る化学基であって、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の造影剤を生成じる化学基と
を含んでおり、上記化学基がLOX結合剤の一体部分であるか或いはLOX結合剤と結合している、方法。
【請求項26】
化学基が、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、
(iv)求核又は求電子置換反応用の活性化芳香族環を含む誘導体、
(v)容易にアルキル化を起こす官能基を有する誘導体、又は
(vi)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前駆体が無菌の非発熱性の形態である、請求項25又は請求項26記載の方法。
【請求項28】
前駆体が固相と結合している、請求項25乃至請求項27のいずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項25乃至請求項28のいずれか1項記載の方法に定義された前駆体であって、化学基が、
(i)金属造影基と錯形成し得るキレート剤、
(ii)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシランのような有機金属誘導体、
(iii)求核置換反応のためのアルキルハライド、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含有する誘導体、又は
(iv)チオール含有化合物とのアルキル化によってチオエーテル含有生成物を生じる誘導体
を含む、前駆体。
【請求項30】
請求項1乃至請求項24のいずれかの造影剤を生体適合性担体と共にヒトへの投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項31】
造影剤が放射性造影基を含む、請求項30記載の医薬組成物。
【請求項32】
一人の患者に適した放射性用量を有していて適当なシリンジ又は容器で供給され、る請求項31記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項30乃至請求項32のいずれか1項記載の医薬組成物の製造用キットであって、請求項29記載の前駆体を含むキット。
【請求項34】
インビボ診断又はイメージング法法に用いられる請求項1乃至請求項24記載の造影剤。
【請求項35】
前記方法がLOXが上方制御される病態のインビボイメージングに関する、請求項34記載の造影剤。
【請求項36】
LOXが上方制御される病態が線維症に関連した、病態である請求項35記載の造影剤。
【請求項37】
前記線維症に関連した病態が、肝線維症、うっ血性心不全、糸球体硬化症又は呼吸不全である、請求項36記載の造影剤。
【請求項38】
前記線維症に関連した病態が肝線維症である、請求項37記載の造影剤。
【請求項39】
LOXが上方制御される病態にある対象でインビボ診断又はイメージングを行う方法であって、請求項30乃至請求項32の医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項40】
LOXが上方制御される病態にある対象のインビボイメージングにおける請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の造影剤の使用であって、対象に請求項30乃至請求項32記載の医薬組成物を予め投与しておく使用。
【請求項41】
LOXが上方制御される病態のインビボイメージング用の医薬品の製造における請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の造影剤の使用。
【請求項42】
LOXが上方制御される病態に対処するための薬剤によるヒト又は動物の身体の治療効果をモニタリングする方法であって、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の造影剤を身体に投与し、造影剤の取込を検出することを含んでなる方法。

【公表番号】特表2009−518373(P2009−518373A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543900(P2008−543900)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004579
【国際公開番号】WO2007/066119
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】