説明

線維症疾患を処置するための併用療法

本発明は、線維性または線維増殖性障害を治療するための改善された方法に関するものである。1つ以上の線維細胞抑制薬および1つ以上の線維化誘導因子拮抗薬または抗線維症剤の組み合せを含む併用療法が提供される。一局面において、本発明の方法は、血清アミロイドP(SAP)、IL−12、ラミニン−1、FcγRを架橋することができる抗FcγR抗体、凝集IgG、架橋IgGおよび/またはその組み合せなどの線維細胞抑制薬を使用して実施できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
創傷治癒の一部としての組織修復過程は、2つの段階を含む。第1段階は、損傷した細胞が同じ種類の細胞によって置き換えられる再生段階である。第2段階は、結合組織が正常な実質組織に取って代わる、線維増殖または線維症とも呼ばれる線維組織の形成である。線維症の段階が抑制されないまま継続する場合、組織修復過程は病因となり、広範囲にわたる組織再構築と永久瘢痕組織の形成につながる。
【0002】
米国における死亡の最大45%が、多くの組織や臓器系に影響を及ぼす可能性のある線維増殖性疾患に起因しうることが推定されている。主な臓器線維性疾患としては、肺の炎症と線維症を特徴とする、間質性肺疾患(ILD)が挙げられる。ILDは、サルコイドージス、珪肺症、膠原病、および全身性強皮症などの、いくつかの原因を有することが公知である。しかしILDの一般的なタイプである特発性肺線維症は、原因が不明である。他の臓器線維性疾患としては、肝硬変、慢性B型またはC型肝炎感染から生じる肝線維症、腎疾患、心疾患、黄斑変性症ならびに網膜および硝子体網膜症を含む眼疾患が挙げられる。線維増殖性障害としては、全身性および局所性強皮症、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化、および再狭窄も挙げられる。さらなる線維増殖性疾患としては、外科手術から生じる過剰な瘢痕化、化学療法薬によって誘発された線維症、放射線誘発線維症、ならびに損傷および火傷が挙げられる。
【0003】
現在、コルチコステロイドなどの全身的免疫抑制薬を含む線維症性障害の治療、および他の抗炎症治療が利用できる。しかし線維症の調節に関与する機構は、炎症の機構とは異なるように思われ、抗炎症療法は線維症を低減または予防するのに必ずしも有効というわけではない。したがって線維症を低減および予防して、線維症性障害を制御する治療を開発する必要性が残されている。
【0004】
創傷治癒および線維症につながる調節不全のイベントはどちらも、線維芽細胞の増殖および分化と、細胞外基質の沈着を含む。このような線維芽細胞が局所的に得られるのか、または循環する前駆体集合によるのかは不明である。線維細胞は、末梢血単球に由来する線維芽細胞様細胞の独特な集合であり、組織損傷部位に進入して血管新生や創傷治癒を促進する。最近、血清または血漿の非存在下で培養されたCD14[+]末梢血単球は72時間以内に線維細胞に分化するが、血清アミロイドP(SAP)が、血漿中に見出されるレベルと同様のレベルでは線維細胞の分化を阻害できたことが報告されている。これに対して、SAPを枯渇させると、血漿が線維細胞分化を阻害する能力が低下する。健常者および関節リウマチ患者からの血清と比較すると、2つの全身性線維性疾患である強皮症および混合結合組織病の患者からの血清は、試験管内での線維細胞分化をあまり阻害することができず、それに従ってより低いSAP血清レベルを有していた。このような結果は、低レベルのSAPがそれゆえ病理過程を増強して、線維症をもたらすかもしれないことを示唆している。これらのデータは、慢性炎症条件下で線維症を阻害する、または反対に創傷治癒を促進する機構も示唆している。
【0005】
SAPは免疫グロブリンのFc受容体に結合するので(IgG;FcR)、FcR活性化は次に、線維細胞分化の阻害シグナルであることが証明された。FcRは凝集IgGによって活性化され、凝集しているが、モノマー性ではないヒトIgGがヒト線維細胞分化を阻害することが示されてきた。FcRI(CD64)またはFcRII(CD32)に結合するモノクローナル抗体も、線維細胞分化を阻害する。Fcドメインが欠損した凝集IgGあるいは凝集IgA、IgE、またはIgMは、線維細胞分化を阻害しない。SAPなどの凝集IgGによる単球のインキュベーションは、線維細胞分化を阻害する。タンパク質キナーゼ酵素の阻害薬を使用すると、SykおよびSrc関連チロシンキナーゼが線維細胞分化の阻害に関与することも示されている。このような観察結果は、炎症の回復段階などの、SAPおよび凝集IgGのレベルが低い状況で、線維細胞分化が発生可能であることを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、線維細胞形成を抑制する薬剤(「線維細胞抑制薬」)と、線維芽細胞、筋線維芽細胞、または筋線維細胞などの常在コラーゲン産生細胞の活性化を阻害する薬剤、たとえばTGF−βおよび他の線維化誘導因子(profibrotic factor)の拮抗薬(集合的に「線維化誘導因子拮抗薬」)との組み合せを投与するステップを含む、線維性および線維増殖性障害を治療する併用療法の使用に関するものである。
【0007】
ある実施形態において、主題の方法および組成物は、血清アミロイドP(SAP)、IL−12、ラミニン−1、FcγRを架橋することができる抗FcγR抗体、凝集IgG、架橋IgGおよび/またはその組み合せなどの線維細胞抑制薬を使用して実施できる。「SAP」、「IL−12」、「ラミニン−1」、IgGおよび抗FcγR抗体の名称は本明細書で使用するように、このようなタンパク質の機能性フラグメントも指し、ただしこのようなフラグメントが所与の状況での使用から除外されることが明らかである場合を除く。ある実施形態において、線維芽細胞抑制薬は、単球のアポトーシスを誘発する薬剤、たとえばIL−15拮抗薬である。
【0008】
ある実施形態において、線維化誘導因子拮抗薬は、ペプチド成長因子、サイトカイン、ケモカインなどの拮抗薬から選択される。主題の線維化誘導因子拮抗薬によって拮抗されうるこのような因子の例としては、形質転換成長因子ベータ型(TGF−β)、VEGF、EGF、PDGF、IGF、RANTES、インターロイキンファミリのメンバー(たとえばIL−1、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8およびIL−13)、腫瘍壊死因子アルファ型(TNF−α)血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、単球化学誘引物質タンパク質1型(MCP−1)、マクロファージ炎症性タンパク質(たとえばMIP−1α、MIP−2)、結合組織成長因子(CTGF)、エンドセリン−1、アンギオテンシン−II、レプチン、ケモカイン(たとえばCCL2、CCL12、CXCL12、CXCR4、CCR3、CCR5、CCR7、SLC/CCL21)、インテグリン(たとえばα1β1、α2β1、αvβ6、αvβ3)、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織性阻害物質(たとえばTIMP−1、TIMP−2)および線維性組織の形成、成長、または維持を促進する、あるいは線維性組織の形成、成長、または維持に関連することが公知である他の因子が挙げられる。
【0009】
ある実施形態において、線維化誘導因子拮抗薬は、抗線維化効果そのものを有するサイトカイン、たとえばIFN−γ、BMP−7、HGFまたはIL−10によって置き換えまたは増強することが可能である。
【0010】
併用治療のこのような成分は、単一の調合物の一部として標的位置に送達することが可能であり、単一の調合物は両方のイベントを標的にする成分を含む。本発明の他の選択された実施形態において、成分は別個の調合物として投与することができる。
【0011】
線維細胞分化ならびに線維性組織の形成および維持の両方の低減または抑制は、多くの線維化性疾患または線維症によって引き起こされる他の障害の症状を軽減することができる。たとえば、この低減または抑制により、肝臓、腎臓、肺、心臓および心膜、眼、皮膚、口、膵臓、消化管、脳、乳房、骨髄、骨、尿生殖路、腫瘍、または創傷における線維症を治療することができる。
【0012】
本発明は、組織での線維芽細胞蓄積およびコラーゲン沈着を調節する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ラット腎臓一側尿管結紮水腎症(UUO)損傷モデルにおけるトリクローム染色の程度を示す
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.概要
線維症を引き起こすイベントの制御には、少なくとも2つの主要なイベントが含まれる。1つは線維細胞の増殖および分化である。線維細胞は、末梢血単球に由来する線維芽細胞様細胞の独特な集合であり、通常、組織損傷部位に進入して血管新生や創傷治癒を促進する。線維細胞はCD14+末梢血単球から分化して、他のPBMC細胞から分化することができる。SAP、IL−12、ラミニン−1、抗FcγR抗体、架橋IgGおよび/または凝集IgGの存在は、本プロセスを阻害する、または少なくとも部分的に遅延させることがある。
【0015】
第2の主要なイベントは、線維性組織の形成および維持である。線維性組織は、線維芽細胞の動員および増殖、新たな細胞外基質の形成、ならびに新たな血管組織の成長によって形成および維持することができる。たとえば慢性炎症、損傷などの後の病的線維症、または特発性線維症において、組織損傷および破壊を引き起こす可能性があるのは、この過剰な線維性組織である。
【0016】
線維症には上述のイベントの両者が必要であるため、本発明の治療は、これらのイベントが標的とされる併用組成物および方法を含む。選択した実施形態において、本発明は、線維細胞分化の阻害または遅延に適切である少なくとも1つの組成物、または標的位置へのその投与、および線維化誘導因子の阻害または拮抗に適切である少なくとも1つの成分、または標的位置へのその投与を含む。選択した実施形態において、これらの成分は、併用組成物として調合または投与することができるか、あるいは標的位置へ別個におよび/または独立して投与することができる。
【0017】
本発明は、線維性および線維増殖性障害を治療する方法を提供する。本発明は一般に、線維化誘導因子拮抗薬の有効量と組み合された線維細胞抑制薬の有効量を投与することを含む。該方法は、肺、肝臓、心臓、腎臓および眼に影響を及ぼす線維性疾患を含む、線維性疾患の治療を提供する。さらに例証するために、主題の方法を使用して、糸球体腎炎(GN)などの線維増殖性疾患;糖尿病性腎症;間質性腎線維症;薬物暴露の合併症から生じる腎線維症;HIV関連腎症;移植壊疽;あらゆる病因による肝硬変;胆樹の障害;感染に起因する肝障害;肺線維症;成人呼吸促進症候群(ARDS);慢性閉塞性肺疾患(COPD);特発性肺線維症(IPF);急性肺損傷(ALI); 感染性因子または毒性因子による肺線維症;鬱血性心不全;拡張型心筋症;心筋炎;血管狭窄症;進行性全身性硬化症;多発性筋炎;強皮症;グレーヴズ病;皮膚筋炎;筋膜炎(fascists);レイノー症候群、関節リウマチ;増殖性硝子体網膜症;眼科手術に関連する線維症;急性黄斑変性、および外傷または手術創から生じた創傷治癒中に発生する過度または肥厚性瘢痕あるいはケロイド形成を治療することができる。主題の併用療法によって治療可能である、なお他の例示的な線維症性障害は下でさらに詳細に述べる。病因は、毒性因子、代謝因子、遺伝因子および感染性因子を含む、いずれかの急性または慢性傷害によるものかもしれない。
【0018】
一部の実施形態において、線維細胞抑制薬の有効量および線維化誘導因子拮抗薬の有効量は、併用療法で投与されるときに、併用療法による治療前の個体における線維症の程度と比較して、線維症を少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、あるいはなお少なくとも約50%またはそれ以上低減させるのに有効である量である。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の相乗的組み合せを投与することを含む方法を提供する。本明細書で使用するように、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の「相乗的組み合せ」は、治療的または予防的治療において、(i)単剤療法と同じ投薬量で投与されたときの線維細胞抑制剤の治療的または予防的利点および(ii)単剤療法と同じ投薬量で投与されたときの線維化誘導サイトカイン拮抗薬の治療的または予防的利点の単なる相加的組み合せから予測または予想できる治療結果の漸進的な改善よりも効果的である併用投薬量である。
【0020】
II.定義
本明細書で使用するように、「治療」、「治療すること」などは所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。効果は、障害またはその症状を完全または部分的に予防するという点で予防的でありうる、および/または線維性または線維増殖性障害および/または該障害に起因する悪影響の完全または部分的な治癒という点で治療的でありうる。「治療」は本明細書で使用するように、哺乳類、特にヒトでの疾患のいずれの治療も対象として、(a)生存期間を延長することと;(b)疾患による死のリスクを低下させることと;(c)疾患にかかりやすいかもしれないが、疾患を有するとしてまだ診断されていない対象において、疾患が発生するのを防止することと;(d)疾患を抑制すること、すなわちその発症を抑止すること(たとえば疾患進行速度を低下させること)と;(e)疾患を軽減すること、すなわち疾患の退行を引き起こすことと;を含む。
【0021】
本明細書で使用するように、「対象」という用語は、ヒトを含む哺乳類を含む動物を指す。「哺乳類」という用語としては、霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットを含む、飼い慣らされた動物、動物園の動物などの捕獲動物、および野生動物が挙げられる。本明細書で使用するように、「組織」という用語は、臓器または一連の特殊化した細胞、たとえば皮膚組織、肺組織、腎組織、および他の種類の細胞を指す。
【0022】
「治療的有効量」という用語は、所望の治療効果を促進するのに有効である、線維細胞抑制薬または線維化誘導因子拮抗薬の量、またはこのような治療剤の送達速度を意味する。正確な所望の治療効果は、治療される線維性または線維増殖性状態、投与される調合物、および当業者によって認識される各種の他の因子によって変化するであろう。
【0023】
本明細書で使用するように、「線維増殖性障害」および「線維症性障害」という用語は、1つ以上の組織に線維症を含む状態を指す。本明細書で使用するように、「線維症」という用語は、臓器または組織の正常な構成要素としてではなく、修復または反応過程としての線維組織の形成を指す。線維症は、いずれか特定の組織における正常な沈着を上回る、線維芽細胞蓄積およびコラーゲン沈着を特徴とする。本明細書で使用するように、「線維症」という用語は、「線維芽細胞蓄積およびコラーゲン沈着」と同じ意味で使用される。線維芽細胞は、結合組織細胞であり、全身で結合組織に分散されている。線維芽細胞は、I型および/またはIII型コラーゲンを含有する非剛性細胞外基質を分泌する。組織への損傷に応答して、付近の線維芽細胞が創傷中へ移動して、増殖し、大量のコラーゲン性細胞外基質を産生する。コラーゲンは、細胞外基質および結合組織、軟骨ならびに骨の主要な構成成分である、グリシンおよびプロリンが豊富な線維性タンパク質である。コラーゲン分子は、α鎖と呼ばれる三重らせん構造であり、相互に巻き付いてロープ様らせんとなっている。コラーゲンは、いくつかの形または種類が存在する;これらのうち、最も一般的なI型は、皮膚、腱、および骨に見出される;III型は、皮膚、血管、および内部臓器に見出される。
【0024】
線維症性障害としては、これに限定されるわけではないが、全身性および局所性強皮症、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化、再狭窄(restinosis)、肺炎症および線維症、特発性肺線維症、肝硬変、慢性B型またはC型肝炎感染から生じる肝線維症、腎疾患、瘢痕組織から生じる心疾患、黄斑変性症ならびに網膜および硝子体網膜症などの眼疾患が挙げられる。さらなる線維性疾患としては、化学療法薬から生じる線維症、放射線誘発線維症、ならびに損傷および火傷が挙げられる。
【0025】
「強皮症」は、皮膚および他の臓器における線維芽細胞による新たなコラーゲンの過剰産生によって引き起こされた皮膚の肥厚または硬結を特徴とする線維症性障害である。強皮症は、局所性または全身性疾患として発生しうる。全身性強皮症は、いくつかの臓器を冒すことがある。全身性硬化症は、ヒアリン化および肥厚したコラーゲン性線維組織の形成を特徴として、皮膚の肥厚ならびに特に手および顔の下層組織への付着を伴う。該疾患は、食道の蠕動減少および粘膜下線維症による嚥下障害、肺線維症、心筋線維症、および腎血管変化による呼吸困難も特徴とすることがある。肺線維症は、30〜70%の強皮症患者を冒し、拘束性肺疾患を引き起こすことが多い。
【0026】
「特発性肺線維症」は、慢性、進行性、そして通常は致死性の肺障害であり、慢性炎症過程の結果と考えられる。
【0027】
本明細書で使用するように、「線維化誘導因子」という用語は、各種の細胞において線維芽細胞の蓄積およびコラーゲンの沈着を促進することが観察されているサイトカイン、成長因子またはケモカインを指す。いくつかのサイトカインおよび成長因子が組織の再構築および線維症の制御に関与することが報告されている。これらは、「線維化誘導サイトカイン」、たとえば形質転換成長因子ベータ(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、およびインターロイキン−13(IL−13)を含み、線維性組織におけるコラーゲン合成および線維症を刺激することが示されている(Letterioら、Ann Rev.Immunol.16,137−161(1998),Fertinら、Cell Mol.Biol.37,823−829(1991),Doucetら、J.Clin.Invest.101,2129−2139(1998)。インターロイキン−9(IL−9)は、マウス肺において気道線維症を誘発することが示されている(Zhuら、J.Clin.Invest.103,779−788(1999))。TGF−βに加えて、線維症障害特発性肺線維症(IPF)において線維症を増加させることが報告されている他のサイトカインまたは成長因子としては、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、および結合組織成長因子(CTGF)が挙げられる(Kellyら、Curr Pharmaceutical Pes 9:39−49(2003))。強皮症で発生する肺線維症の促進に関与することが報告されたサイトカインおよび成長因子としては、TGF−β、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来成長因子(PDGF)、2型サイトカインIL−4およびIL−13、IL−9、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCL18/PARC)が挙げられる(Atamasら、Cyto Growth Fact Rev 14:537−550(2003))。
【0028】
本明細書に使用するように、「抗体(antibody)」および「(複数の)抗体(antibodies)」という用語は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体、単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、および細胞内抗体を指す。加えて、別途指摘しない限り(凝集IgGの場合など)、該用語は、上のいずれのエピトープ結合フラグメントも含む。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子、および、免疫グロブリン分子すなわち抗原結合部位を含有する分子の免疫活性フラグメントが挙げられる。免疫グロブリン分子は、いずれの種類(たとえばIgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラスまたはサブクラスでもよい。
【0029】
本明細書で使用するように、「単鎖Fv」または「scFv」という用語は、抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体フラグメントを指し、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvに抗原結合のための所望の構造を形成させることができるVHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。詳細な実施形態において、scFvはヒト化scFvを含む。
【0030】
本明細書で使用するように、「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である非ヒト(たとえばマウス)抗体の形を指す。主として、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域によって置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見出されない残基を含むことがある。これらの修飾は、抗体の性能をさらに高めるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、通例は2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、そこでは超可変領域のすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンの超可変領域に対応して、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のFRに対応する。ヒト化抗体は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加(すなわち突然変異)の導入によって改変された免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。一部の実施形態において、ヒト化抗体は誘導体である。このようなヒト化抗体は、1つ以上の非ヒトCDRにおけるアミノ酸残基の置換、欠失または付加を含む。ヒト化抗体誘導体は、非誘導体ヒト化抗体と比較したときに、実質的に同じ結合、より良好な結合、またはより悪い結合を有することができる。詳細な実施形態において、CDRの1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加(すなわち突然変異)されている。
【0031】
III.例示的な実施形態
A.線維細胞の増殖および分化の抑制薬
本発明の併用療法の1つの成分は、線維細胞形成を抑制する薬剤である。これらの線維細胞抑制薬は、それらが本明細書で総称的に呼ばれるように、線維細胞の形成を抑制するか(たとえば分化または増殖を阻害する)、または他の実施形態において、単球の除去(細胞死)を引き起こすかのどちらかの方式で、CD14[+]末梢血単球に作用しうる薬剤である。
【0032】
ある実施形態において、線維細胞抑制薬は、単球におけるSykおよびSrc関連チロシンキナーゼのFcγR依存性活性化を引き起こす薬剤である。他の実施形態において、線維細胞抑制剤は、FcγR複合体の下流で作用する薬剤であり、線維細胞形成を抑制する方式で単球におけるSykおよびSrc関連チロシンキナーゼのFcγR非依存性活性化を引き起こす。sykキナーゼの各種の小型細胞活性化薬、たとえばホスホ−ITAMペプチドおよびそのペプチドミメティック(peptidomimetic)はこの目的のために有用でありうる。
【0033】
他の例示的な線維細胞抑制薬が挙げられる:
(i)血清アミロイドP
線維細胞がCD14+末梢血単球から分化することが可能であり、ヒト血清の存在が本過程を劇的に遅延させることが先に確認されている。線維細胞分化を阻害するヒト血清中の因子は、血清アミロイドP(SAP)である。SAPは、C反応性タンパク質(CRP)を含むタンパク質のペントラキシンファミリーのメンバーであり、肝臓によって産生されて、血中に分泌され、安定な五量体として血中を循環する。SAPは1分子当たり5つの考えられるFcγR結合部位を持つ五量体タンパク質であるため、SAPは、各種の細胞でIgG抗体のFc部分の受容体(FcγR)に結合して、さらにタンパク質を用いずにFcγRを効果的に架橋することができる。SAPがFcγRに結合すると、FcγR活性化と整合性のある細胞内シグナル伝達イベントが開始される。
本発明の詳細な実施形態において、SAPを含有する組成物は、標的位置でのSAP濃度を少なくとも約0.5μg/mlまで上昇させるように操作可能である。ヒトでは、先にI125放射性標識SAPを投与して、アミドイローシス患者を調査した。治療では、SAP約600μgをヒト成人に投与した。したがって、ヒト成人へのSAP約600μgの全身投与は安全である。より多い投薬量も適切な条件下では安全であるかもしれない。
【0034】
本発明のある組成物で供給されるSAPは、SAPタンパク質全体またはその一部、好ましくは線維細胞形成の抑制で機能する部分を含むことが可能である。一実施形態において、SAPの機能性部分は、CRPと配列相同性を共有しない領域より選択され、このことは線維細胞形成に影響を及ぼさない。たとえばSAPのアミノ酸65−89(KERVGEYSLYIGRHKVTPKVIEKFP−配列番号:1)は、CRPと相同でない。アミノ酸170−181(ILSAYAYQGTPLPA−配列番号:2)および192−205(IRGYVIIKPLV−配列番号:3)も相同でない。さらに2つのタンパク質間での単一アミノ酸の相違の数は公知であり、機能の相違を引き起こすことがある。
【0035】
(ii)IL−12
IL−12は、先に線維症および線維化性疾患に関与してきたが、大半の研究は、Th1免疫応答を促進することにおける、またはインターフェロン−γの産生を誘発することによる、IL−12の役割に焦点を合わせてきた。
【0036】
IL−12を含有する組成物は、標的位置でのIL−12濃度を約0.1〜10ng/mlまで上昇させるように操作可能である。
【0037】
(iii)ラミニン−1
ラミニンは、単球の循環から組織中への移動に関与する細胞外基質タンパク質である。白血球は、組織に進入するために、内皮細胞と、血管壁の周囲基底膜を通過しなければならない。本過程は、白血球の内皮細胞での係留、回転および停止を含む。内皮細胞への付着後に、白血球は次に内皮細胞の間、血管壁を介して、組織中へ通過する。血管壁を通じた細胞の血管外遊走過程は、その表現型と機能を改変する。
【0038】
これらのイベントは、インテグリンを含む一連の細胞表面付着受容体によって制御される。インテグリンは、細胞外基質タンパク質(ECM)、たとえばフィブロネクチン、ビトロネクチン、コラーゲンおよびラミニンを含む、多種多様のリガンドに結合する。基質タンパク質は、ラミニンを含めて、血管壁の基底内に存在する。ラミニンは、α、βおよびγ鎖のヘテロ三量体構造を持つ、糖タンパク質の大規模なファミリである。各種のα、βおよびγ鎖の使用は、少なくとも12の異なるラミニンアイソフォームの発現を引き起こす。各種のラミニンは、発生の各種の段階および体内の各種の部位で発現される。
【0039】
ラミニン−1を含有する組成物は、標的位置でのラミニン−1濃度を約1〜10μg/mlまで上昇させるように操作可能である。
【0040】
(iv)抗FcγR抗体
抗FcγR抗体が末梢血単球の線維細胞への分化を防止できることも確認されている。抗FcγR抗体は、IgG抗体のFc部分の受容体(FcγR)に結合するIgG抗体である。抗FcγR抗体は、その定常(Fc)領域を介してではなく、その可変領域を介して結合する。しかし適切な源からのIgG(たとえばヒト受容体へのヒトIgG)は通常、そのFc領域を介してFcγRに結合できる。FcγRは各種の造血細胞表面に見出される。FcγRには4つの別個のクラスがある。FcγRI(CD64)は、末梢血単球によって発現され、モノマーIgGに高い親和性で結合する。FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)は、IgGの低親和性受容体であり、凝集IgGのみに効率的に結合する。FcγRIIは末梢血B細胞および単球によって発現されるが、FcγRIIIはNK細胞および単球亜群によって発現される。RcγRIVは、最近、マウスで同定され、マウス末梢血単球および好中球、マクロファージおよび樹状細胞に存在して、マウスIgG2aおよびIgG2b抗体に効率的に結合する。推定ヒトFcγRIV遺伝子があるが、そのタンパク質の生物学的機能、たとえばリガンド特異性および細胞発現は今のところ知られていない。
【0041】
末梢血単球はFcγRIおよびFcγRIIの両方を発現する(単球亜群はFcγRIIIを発現する)のに対して、組織マクロファージは3つすべての古典的なFcγRを発現する。IgGによる単球でのFcγRのクラスター化は、病原体に結合するか、または免疫複合体の一部として、多種多様の生物化学的イベントを開始する。
【0042】
FcγR活性化および細胞内シグナル経路の誘導は、複数のFcγRが架橋または凝集しているときに起こりうる。このFcγR活性化は、2つの主要なキナーゼによって開始されるシグナル伝達イベントのカスケードをもたらす。FcγR活性化の後の開始イベントは、FcγRIIの細胞質側末端またはFcγRIおよびFcγRIIIと結合したFcγ鎖に存在する細胞内免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)の、Src関連チロシンキナーゼ(SRTK)によるホスホリル化を含む。単球では、FcγRIおよびFcγRIIと結合した主なSrcキナーゼは、hckおよびlynである。ホスホリル化ITAMは次に細胞質SH2含有キナーゼ、特にSykをITAMに動員して、Sykは次に一連の下流シグナル伝達分子を活性化する。
【0043】
FcγRI(抗FcγRI)およびFcγRII(抗FcγRII)の抗FcγR抗体は、FcγRIまたはFcγRIIのどちらかにそれぞれ結合することができる。これらのFcγRは次に、さらなる抗体の結合または他の手段によって架橋することができる。このプロセスは、FcγR活性化と一致する細胞内シグナル伝達イベントを開始する。
【0044】
抗FcγRI抗体および/または抗FcγRII抗体、ならびに/あるいはFc領域を介してFcγRに結合可能な架橋または凝集IgGを含有する組成物を使用して、不適切な位置での、特に線維化性障害および慢性炎症状態における線維細胞の分化を抑制することができる。
【0045】
詳細な実施形態において、約1μg/mlの抗FcγR抗体を含有する組成物は、線維細胞分化を約50%阻害するのに有効でありうる。別の実施形態において、組成物は約1μg/mlの抗FcγR抗体を標的組織へ送達するのに十分な量を含有することができる。他の詳細な実施形態において、組成物はわずか0.1μgmlの架橋または凝集IgGを含有することができる。
【0046】
抗FcγR抗体は、約1.0μg/mLの用量で、1μg/mlの抗FcγR抗体を標的組織へ送達するのに十分な量で、または患者において望ましくない量の細胞死を引き起こさずに線維細胞分化を阻害するのに十分な別の用量で投与することができる。凝集または架橋IgGは、少なくとも0.1μg/mlを標的組織に送達するのに十分な量で、または患者において望ましくない量の細胞死を引き起こさずに線維細胞分化を阻害するのに十分な別の用量で投与することができる。
【0047】
本開示の実施例で使用する抗FcγR抗体としては、抗FcγRI抗体および抗FcγRII抗体を含む。
【0048】
抗FcγR抗体は、抗体のいずれのアイソタイプも含むことができる。
【0049】
(v)凝集FcドメインおよびFc含有抗体
架橋または凝集IgGは、少なくとも2つのこのようなIgG抗体が相互に物理的に結合されているという条件で、そのFc領域を介して標的FcγRに結合可能であるいずれのIgGも含みうる。
【0050】
どちらのタイプの抗体も全抗体またはその部分を、好ましくは線維細胞分化の抑制で機能する部分を含むことができる。たとえば、抗体は、FcγRを架橋できるいずれの抗体部分も含むことができる。これは凝集または架橋抗体またはそのフラグメント、たとえば凝集または架橋全抗体、F(ab’)断片、および考えられるFcフラグメントさえ含むことができる。
【0051】
抗体の凝集または架橋は、熱または化学凝集などのいずれの公知の方法によっても達成できる。いずれのレベルの凝集または架橋も十分であるが、凝集の向上は線維細胞抑制の向上を引き起こすことがある。抗体はポリクローナルまたはモノクローナル、たとえばハイブリドーマ細胞から産生された抗体でもよい。組成物および方法は、抗体の混合物、たとえば複数のモノクローナル抗体の混合物を利用することが可能であり、抗体の混合物は同じまたは別の抗体に架橋または凝集することができる。
【0052】
(vi)インターロイキン−15拮抗薬
本発明に含まれるIL−15拮抗薬としては、これに限定されるわけではないが、抗IL−15抗体、抗IL−i5R抗体、可溶性IL−15R、IL−15ムテイン、抗IL−15小型分子および抗IL−15R小型分子を含む、IL−15活性を拮抗または阻害する(すなわちIL−15媒介抗アポトーシス)多種多様の分子が挙げられる。IL−15活性を阻害することができる他の拮抗薬、たとえば結合タンパク質およびペプチドミメティックスも含まれる。詳細な実施形態において、拮抗薬はIL−15Rα、β、およびγサブユニットの構築を妨害することが可能であり、たとえば拮抗薬は、IL−15のβまたはγ鎖相互作用ドメインに位置するエピトープに結合する。別の実施形態において、拮抗薬はIL−15ムテイン、たとえばIL−15Rαへの結合は可能であるが、IL−15Rのβ−および/またはγ−サブユニットの片方または両方に結合することはできず、したがってシグナル伝達を引き起こすことができないIL−15変異体である。
【0053】
B.線維化誘導因子拮抗薬
主題の併用療法の別の成分は、線維化誘導因子を阻害または拮抗する薬剤、たとえば線維性組織の形成および維持に関与する1つ以上の成長因子またはサイトカインを拮抗する薬剤である。この方法で、本発明の組成物および方法は、併用治療の一部として線維細胞分化ならびに線維性組織の形成および維持の両方を目的としている。
【0054】
本発明の療法の一部として拮抗薬によって標的にされうる線維化誘導因子としては、これに限定されるわけではないが、成長因子ベータ型(TGF−β、TGF−β1−5を含む)、VEGF、EGF、PDGF、IGF、RANTES、インターロイキンファミリのメンバー(たとえばIL−1、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8およびIL−13)、腫瘍壊死因子アルファ型(TNF−α)、血小板由来成長因子(PDGF)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、単球化学誘引物質タンパク質1型(MCP−1)、マクロファージ炎症性タンパク質(たとえばMIP−1α、MIP−2)、結合組織成長因子(CTGF)、エンドセリン−1、アンギオテンシン−II、レプチン、ケモカイン(たとえばCCL2、CCL12、CXCL12、CXCR4、CCR3、CCR5、CCR7、SLC/CCL21)、インテグリン(たとえばα1β1、α2β1、αvβ6、αvβ3)、マトリックスメタロプロテイナーゼの組織性阻害物質(たとえばTIMP−1、TIMP−2)および線維性組織の形成、成長、または維持を促進する、あるいは線維性組織の形成、成長、または維持に関連することが公知である他の因子が挙げられる。本発明は、上述の因子およびサイトカインの1つ以上を標的とする組成物または方法を含むことができる。
【0055】
ある実施形態において、組成物の適切な成分は、線維化誘導因子の1つ以上に指向した抗体を含むことができる。このような抗体は精製すること、精製しないこと、または部分的に精製することが可能である。抗体は、マウス、ウサギ、ネズミ、ヒト、ウマ、ヤギ、ウシなどのいずれかの適切な動物源に由来するポリクローナルまたはモノクローナル抗体でありうる。このような抗体としては、抗体フラグメント、単鎖抗体、重合抗体および/または抗体フラグメントなどが挙げられる。
【0056】
ある実施形態において、適切な組成物としては、線維化誘導因子の1つ以上の対応する受容体の拮抗薬が挙げられる。このような拮抗薬としては、線維化誘導因子および/またはサイトカインの1つ以上の不活性形、たとえばそのフラグメントが挙げられる。適切な濃度のこのような形は、その対応する線維化誘導因子および/またはサイトカインと、その受容体への結合で競合することが可能である。同様に、受容体に対するある抗体を使用して、対応する線維化誘導因子および/またはサイトカインの受容体に対する結合を妨害または防止することができる。
【0057】
他の選択された実施形態において、本発明の組成物は、線維化誘導因子および/またはサイトカインの1つ以上の受容体の可溶形を含むことが可能であり、可溶性受容体は標的リガンドに対するその対応する未変性細胞受容体と競合する。
【0058】
他の選択された実施形態において、組成物の適切な成分としては、線維化誘導因子および/またはサイトカインの1つ以上とその受容体との結合と競合するか、そうでなければ結合を妨害する化合物が挙げられる。たとえばプロテオグリカンデコリンは、TGF−βと結合して、それによりその受容体への結合でのその可用性を低下させることが公知である。マンノース−6−ホスフェートもTGF−βと、その対応する受容体との結合で競合することが公知である。TGF−βの他の公知の結合阻害薬としては、潜在性形質転換成長因子−β結合タンパク質(LTBP)および潜伏関連ペプチド(LAP)が挙げられ、そのどちらも本来、TGF−βの細胞内前駆物質に結合する。
【0059】
ある実施形態において、組成物の適切な成分としては、線維化誘導因子および/またはサイトカインの1つ以上とアンチセンスである少なくとも1つ以上の配列を含有する、1つ以上のオリゴヌクレオチドが挙げられる。このような成分としては、アンチセンス配列を生じる適切な転写調節配列を有する1つ以上の発現プラスミドも挙げられる。本発明の他の選択された実施形態において、適切な成分としては、線維化誘導因子および/またはサイトカインの1つ以上の転写物をRNA介在干渉によって分解するのに適切である、1つ以上の2本鎖オリゴヌクレチオチド、またはそれをコードする発現プラスミドが挙げられる。
【0060】
組成物の適切な線維化誘導因子拮抗薬としては、その対応する受容体への結合時に、線維化誘導因子の1つ以上によって活性化された細胞内シグナル経路の1つ以上の成分を阻害、減弱または干渉することが公知である成分が挙げられる。
【0061】
たとえば本発明の組成物としては、SMADファミリメンバーおよびSARAなどの下流シグナル経路分子を阻害または減弱する成分が挙げられる。
【0062】
組成物の適切な成分としては、線維症に必要な細胞接着を阻害または妨害するのに適切である1つ以上の分子が挙げられる。たとえば、適切な成分としては、ICAM−1および/またはCD11分子、細胞外基質および/またはα1β1インテグリン、細胞外基質および/またはα2β1インテグリンに対する妨害抗体が挙げられ、それによりその間の接着相互作用を妨害する。
【0063】
他の選択された実施形態において、適切な線維化誘導因子拮抗薬としては、コラーゲン合成の阻害薬、たとえばコラーゲン前駆物質の翻訳後プロセシングを妨害するプロリン類似体が挙げられる。たとえばパーフェニドンは、コラーゲン合成を阻害して、複数のサイトカイン産生をダウンレギュレートし、線維芽細胞増殖を遮断することができる経口活性小型分子薬である。
【0064】
a.TGF−β阻害薬
形質転換成長因子(TGF)ベータファミリのサイトカインは、創傷治癒や組織修復で中心的な役割を果たし、すべての組織で見出される。TGF−βは、多くの実質細胞タイプはもちろんのこと、リンパ球、単球/マクロファージ、および血小板などの浸潤細胞によっても産生される。創傷形成または炎症の後に、このような細胞は潜在的なTGF−β源である。一般に、TGF−βは各種の細胞外基質タンパク質の産生を刺激して、これらの基質タンパク質の分解を阻害し、組織線維症を促進し、このことすべてが罹患組織の修復と再建に寄与する。多くの疾患において、過剰なTGF−βは、正常な臓器機能を損なうことがある病的に過剰な線維症の原因となる。
【0065】
「TGF−β」という用語としては、本明細書で使用するように、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4およびTGF−β5が挙げられる。同様の特性を備えた他の関連タンパク質も含まれる。
【0066】
本明細書で使用するように、「TGF−β拮抗薬」は、細胞内または生理系内のどちらかで、TGF−βの量または活性を低減することができるいずれかの分子である。好ましくは、TGF−β拮抗薬は、TGF−β1、2、または3の量または活性を低減するように作用する。たとえば、TGF−β拮抗薬は、TGF−βの発現を、転写、翻訳、プロセシング、または輸送のレベルで阻害する分子でありうる;TGF−β拮抗薬は、TGF−βの安定性または前駆体分子の活性成熟形への変換に影響を及ぼすことができる;TGF−β拮抗薬は、TGF−βが1つ以上の細胞受容体(たとえばI、IIまたはIII型)に結合する能力に影響を及ぼすことができる;またはTGF−β拮抗薬は、TGF−βシグナル伝達を妨害することができる。
【0067】
各種のTGF−β拮抗薬およびその産生方法が当分野で公知であり、より多くが現在開発中である。利用される具体的なTGF−β拮抗薬は制限的な特徴ではない;本明細書で定義するいずれの有効なTGF−β拮抗薬も、本発明の方法および組成物で有用でありうる。好ましくは、TGF−β拮抗薬は、TGF−β1、TGF−β2、またはTGF−β3拮抗薬である。最も好ましくは、拮抗薬はTGF−β1拮抗薬である。
【0068】
TGF−β拮抗薬の例としては、これに限定されるわけではないが:TGF−βの1つ以上のアイソフォームに指向したモノクローナルおよびポリクローナル抗体(Daschら、U.S.Pat.No.5,571,714;WO 97/13844およびWO 00/66631も参照されたい);TGF−β受容体、このような受容体の可溶形(好ましくは、可溶性TGF−βIII型受容体)、またはTGF−β受容体に指向した抗体(Segariniら、U.S.Pat.No.5,693,607;Linら、U.S. Pat.No.6,001,969、U.S.Pat.No.6,010,872、U.S.Pat.No.6,086,867、U.S.Pat.No.6,201,108;WO 98/48024;WO 95/10610;WO 93/09228;WO 92/00330);潜伏関連ペプチド(WO 91/08291);大型潜在性TGF−β(WO 94/09812);フェチュイン(U.S.Pat.No.5,821,227);デコリンおよび他のプロテオグリカン、たとえばバイグリカン、フィブロモジュリン、ルミカンおよびエンドグリン(WO 91/10727;Ruoslahtiら、U.S. Pat.No.5,654,270、U.S.Pat.No.5,705,609、U.S.Pat.No.5,726,149;Border,U.S.Pat.No.5,824,655;WO 91/04748;Letarteら、U.S.Pat.No.5,830,847、U.S.Pat.No.6,015,693;WO 91/10727;WO 93/09800;およびWO 94/10187);ソマトスタチン(WO 98/08529);マンノース−6−ホスフェートまたはマンノース−1−ホスフェート(Ferguson,U.S.Pat.No.5,520,926);プロラクチン(WO 97/40848);インスリン様成長因子II(WO 98/17304);IP−10(WO 97/00691);arg−gly−asp含有ペプチド(Pfeffer,U.S. Pat.No.5,958,411;WO 93/10808);植物、真菌および細菌の抽出物(EP−A−813 875;JP 8119984;およびMatsunaga ら、U.S.Pat.No.5,693,610);アンチセンスオリゴヌクレオチド(Chung,U.S.Pat.No.5,683,988;Fakhraiら、U.S.Pat.No.5,772,995;Dzau,U.S.Pat.No.5,821,234、U.S.Pat.No.5,869,462;およびWO 94/25588);SMADおよびMADを含む、TGF−βシグナル伝達に関与するタンパク質(EP−A−874 046;WO 97/31020;WO 97/38729;WO 98/03663;WO 98/07735;WO 98/07849;WO 98/45467;WO 98/53068;WO 98/55512;WO 98/56913;WO 98/53830;WO 99/50296;Falb,U.S.Pat.No.5,834,248;Falbら、U.S.Pat.No.5,807,708;およびGimeno ら、U.S.Pat.No.5,948,639)、SkiおよびSno(Vogel,1999,Science,286:665;およびStroscheinら、1999,Science,286:771−774);ならびにTGF−βの活性を阻害する能力を保持する、上述の分子のいずれかの変異体、フラグメントまたは誘導体が挙げられる。
【0069】
ある好ましい実施形態において、TGF−β阻害薬は、TGFβがその受容体に結合するのを遮断するヒトまたはヒト化モノクローナル抗体(あるいはそのフラグメント、たとえばF(ab)フラグメント、Fvフラグメント、単鎖抗体およびTGF−βに結合する能力を保持する抗体の他の形またはフラグメントである。好ましいモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ1D11.16(Daschら、U.S.Pat.No.5,783,185に記載された、ATCCアクセション番号HB9849)より得たマウスモノクローナル抗体のヒトまたはヒト化形である。
【0070】
TGF−β受容体およびTGF−β受容体のTGF−β結合フラグメント、特に可溶形フラグメントは、本発明の方法の有用なTGF−β拮抗薬である。ある実施形態において、TGF−β機能の好ましい阻害薬は、可溶性TGF−β受容体、特に、たとえばTGFβIIRまたはTGFβIIIRの細胞外ドメインを含むTGF−βII型受容体(TGFβIIR)またはTGF−βIII型受容体(TGFβIIIR、またはベータグリカン)、最も好ましくは、組み換え可溶性TGF−β受容体(rsTGFβIIRまたはTGFβIIIR)である。TGF−β受容体およびTGF−β受容体のTGF−β結合フラグメント、特に可溶形フラグメントは、本発明の方法の有用なTGF−β拮抗薬である。TGF−β受容体およびTGF−β受容体をコードする核酸は、当分野で周知である。TGF−β 1型受容体は、GENBankアクセション番号L15436およびDonahoeらのU.S.Pat.No.5,538,892に開示されている。TGF−β 2型受容体の核酸配列は、GENBankアクセション番号AW236001;AI35790;AI279872;AI074706;およびAA808255で公的に入手できる。TGF−β3型受容体の核酸配列は、GENBankアクセション番号NM003243;AI887852;AI817295;およびAI681599で公的に入手できる。
【0071】
本明細書で使用するための適切なTGF−β拮抗薬としては、そのTGF−β量または活性を阻害する能力が保持される限り、上のTGF−β拮抗薬の機能性突然変異体、変異体、誘導体および類似体も挙げられるであろう。本明細書で使用するように、「突然変異体、変異体、誘導体および類似体」は、親化合物に似た形状または構造を持ち、TGF−β拮抗薬として作用する能力を保持する分子を指す。たとえば本明細書で開示したTGF−β拮抗薬のいずれも結晶化することが可能であり、有用な類似体は、活性部位の形状に関与する座標に基づいて合理的に設計できる。あるいは当業者は、過度の実験をすることなく、公知の拮抗薬の官能基を修飾して、このような修飾された分子を向上した活性、半減期、生物可用性または他の所望の特徴についてスクリーニングできる。TGF−β拮抗薬がポリペプチドである場合、ポリペプチドのフラグメントおよび修飾物を産生させて送達容易性、活性、半減期を向上させることができる(たとえば上述したような、ヒト化抗体または機能性抗体フラグメント)。合成および組み換え産生の当分野の技術のレベルを考えると、このような修飾は過度の実験を行わずに達成することができる。当業者は、本明細書に記載したTGF−β阻害薬の活性部位の結晶構造および/または知識に基づいて新規な阻害薬を設計することも可能である。
【0072】
ポリペプチド阻害薬、たとえば可溶性TGF−β受容体も、遺伝子移入によって効果的に導入できる。したがって本方法のある実施形態は、TGF−β受容体または結合パートナー、好ましくは可溶性受容体または結合パートナーの発現に適したベクターの使用を含む。ある好ましい実施形態において、可溶性TGF−β拮抗薬の投与は、可溶性拮抗薬をコードするcDNAを、最も好ましくはTGF−β II型(rsTGFBIIR)またはIII型受容体(rsTGFBIIIR)の細胞外ドメインをコードするcDNAを含むベクターを使用する遺伝子移入によって行うことが可能であり、ベクターは好ましくは局所的にドナー臓器に投与されて、ベクターが形質移入された臓器の細胞内で可溶性TGF−β阻害薬をインサイチュー発現させる。このようなインサイチュー発現は、TGF−βの活性を阻害して、TGF−β介在線維形成を抑制する。いずれの適切なベクターも使用できる。好ましいベクターとしては、アデノウイルス、レンチウイルス、エプスタインバーウイルス(EBV)、アデノ関連ウイルス(AAV)、および遺伝子移入のために開発されているレトロウイルスベクターが挙げられる。遺伝子移入の他の非ベクター方法、たとえば脂質/DNA複合体、タンパク質/DNAコンジュゲート、裸のDNA移入なども使用できる。
【0073】
アデノウイルス遺伝子移入による送達のために開発されたさらなる適切なTGF−β拮抗薬としては、これに限定されるわけではないが:IgFcドメインに融合したTGF−βII型受容体の細胞外ドメインをコードするキメラcDNA(Isakaら、1999,Kidney Int.,55:465−475)、TGF−βII型受容体のドミナントネガティブ突然変異体のアデノウイルス遺伝子移入ベクター(Zhaoら、1998,Mech.Dev.,72:89−100)、およびTGF−β結合プロテオグリカンであるデコリンのアデノウイルス遺伝子移入ベクター(Zhaoら、1999,Am.J.Physiol.,277:L412−L422)が挙げられる。アデノウイルス介在遺伝子移入は、他の遺伝子送達様式と比較して非常に高い効率である。
【0074】
C.抗線維症剤(anti−fibrotic agent)
ある実施形態において、線維化誘導因子拮抗薬は、抗線維化効果を有するサイトカイン、たとえばIFN−γ、BMP−7、HGFまたはIL−10によって置き換えまたは増強することが可能である。
【0075】
IFN−γポリペプチドをコードする核酸配列は、公的データベース、たとえばGenbank、雑誌公開などからアクセスできる。各種の哺乳類IFN−γポリペプチドが興味深いが、ヒト疾患の治療では、一般にヒトタンパク質が使用されるであろう。ヒトINF−γコード配列は、Genbank、アクセション番号X13274;V00543;およびNM000619で見出すことができる。対応するゲノム配列は、Genbank、アクセション番号J00219;M37265;およびV00536で見出すことができる。たとえばGrayら(1982)Nature 295:501(Genbank X13274);およびRinderknechtら(1984)J.Biol.Chem.259:6790を参照されたい。
【0076】
IFN−γ1b(アクティミューン(商標);ヒトインターフェロン)は、140アミノ酸の単鎖ポリペプチドである。アクティミューンは大腸菌で組み換え作製され、非グリコシル化される。Rinderknechtら(1984)J.Biol.Chem.259:6790−6797。
【0077】
本発明の組成物で使用されるIFN−γは、天然IFN−γ、組み換えIFN−γおよびその誘導体のいずれかから、それらがIFN−γ活性、特にヒトIFN−γ活性を有する限り、作製することができる。IFN−γは上で与えたような配列に基づいているが、タンパク質の産生およびタンパク質分解プロセシングは、そのプロセシング変異体を生じることができる。Grayら、上掲によって与えられた未プロセシング配列は、166アミノ酸(aa)より成る。大腸菌中で産生された組み換えIFN−γは当初、146アミノ酸(アミノ酸20から開始)であると考えられたが、未変性ヒトIFN−γは残基23の後で切断され、143aaタンパク質、または細菌中での発現で要求されるように、末端メチオニンが存在する場合には144aaタンパク質を産生することが引き続いて見出された。精製の間、成熟タンパク質はC末端の残基162の後でさらに切断することが可能であり(Grayらの配列を参照されたい)、139アミノ酸の、またはたとえば細菌発現で必要な場合に最初のメチオニンが存在する場合には140アミノ酸のタンパク質を生じる。N末端メチオニンは、大腸菌発現の特別な場合にプロセスによって除去されないmRNA翻訳「開始」シグナルAUGによってコードされるアーチファクトである。他の微生物系または真核生物発現系では、メチオニンは除去することができる。
【0078】
主題の方法での使用のために、抗線維化活性を有する、未変性IFN−γペプチド、その修飾物および変異体のいずれか、あるいは1つ以上のペプチドの組み合せを使用することができる。興味のあるIFN−γペプチドは、フラグメントを含み、完全配列に対してカルボキシ末端にて多様に切断することができる。このようなフラグメントは、アミノ酸24〜約149(未プロセスポリペプチドの残基からナンバリング)が存在する限り、ヒトガンマインターフェロンの特徴的な特性を引き続き示す。外来配列は、活性を失うことなく、アミノ酸155の後のアミノ酸配列の代わりに使用することができる。たとえば、参照により本明細書に組み入れられているU.S.Pat.No.5,690,925を参照されたい。未変性IFN―γ部分としては、アミノ酸残基24−150;24−151、24−152;24−153、24−155;および24−157から多様に拡張する分子が挙げられる。これらの変異体、および、当分野で公知であり、IFN−γ活性を有する他の変異体のいずれも、本明細書で使用できる。
【0079】
IFN−γポリペプチドの配列は、当分野で公知の各種の方法で改変して、配列内で標的変化を産生することができる。変異体ポリペプチドは通常、本明細書で提供される配列と実質的に同様であろう、すなわち少なくとも1個のアミノ酸が異なり、少なくとも2個の、しかし10個以下のアミノ酸が異なるかもしれない。配列変化は、置換、挿入または欠失でありうる。アラニン、または他の残基を系統的に導入する突然変異体の走査を使用して、重要なアミノ酸を決定することができる。興味のある特異的アミノ酸置換としては、保存的および非保存的変化が挙げられる。保存的アミノ酸置換としては通例、次の基:(グリシン、アラニン);(バリン、イソロイシン、ロイシン);(アスパラギン酸、グルタミン酸);(アスパラギン、グルタミン);(セリン、トレオニン);(リジン、アルギニン);または(フェニルアラニン、チロシン)内での置換が挙げられる。
【0080】
一次アミノ酸配列を改変する、または改変しない興味のある修飾としては、ポリペプチドの化学誘導体化、たとえばアセチル化、またはカルボキシル化;グリコシル化部位を導入または除去するアミノ酸配列における変化;タンパク質にPEG化を受けやすくするアミノ酸配列における変化;などが挙げられる。一実施形態において、本発明は、International Patent Publication No.WO01/36001に記載されたIFN−γポリペプチド変異体などの、血清クリアランスの低下したグリコシルおよび/またはPEG誘導体化ポリペプチドを提供するよう組み換えられる、1個以上の非天然型グリコシル化および/またはペグ化部位を持つIFN−γ変異体の使用を検討する。グリコシル化の修飾、たとえばポリペプチドのグリコシル化パターンを、ポリペプチド合成中に修飾して、プロセシングすることによって、またはさらなるプロセシングステップにおいて;たとえばポリペプチドを、グリコシル化に影響する酵素、たとえば哺乳類グリコシル化または脱グリコシル化酵素に露出することによって作製される修飾も含まれる。ホスホリル化アミノ酸残基、たとえばホスホチロシン、ホスホセリン、またはホスホトレオニンを有する配列も含まれる。
【0081】
他の実施形態において、抗線維症剤はHGF作用薬でもよい。例としては、これに限定されるわけではないが、レファナリン(Refanalin)(Angion Biomedica)が挙げられる。
【0082】
なお他の実施形態において、抗線維症剤は、カルシウムチャネル遮断薬、たとえばベラパミルでもよい。このような薬剤は、コラーゲンI型の合成を低減させるその能力のためだけでなく、コラーゲンI型線維の分解を刺激する結果としても、抗線維化効果を有する。線維芽細胞の試験管内研究によって、コラーゲンの細胞外輸送がカルシウムの存在に左右されることが示されている。カルシウムチャネル遮断薬のベラパミルは、細胞内でカルシウム濃度を低下させて、コラーゲン活性を向上させる。ベラパミルは線維芽細胞の増殖も阻害する。
【0083】
なお他の実施形態において、抗線維症剤は、ACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬、たとえばアラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、セラナプリル、デラプリル、エナラプリル、エナラプリラト、フォシノプリル、フォシノプリラト、イミダプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペリンドプリル、ペリンドプリラト、キナプリル、キナプリラト、ラミプリル、酢酸サララシン、スピラプリル、テモカプリル、トランドラプリル、ファシドトリラト(fasidotrilat)、プロピオン酸ベクロメタゾン、FPL−66564、イドラプリル、MDL−100240、およびS−5590でもよい。
【0084】
他の実施形態において、抗線維症剤はアンギオテンシン受容体拮抗薬、たとえばカンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、またはエプロサルタンでありうる。
【0085】
他の実施形態において、抗線維症剤はVEGFシグナル経路の阻害薬でありうる。例示的なVEGF受容体拮抗薬としては、VEGFの阻害薬(たとえばVEGF−A、−B、または−C)、VEGF発現の調節因子(たとえばINGN−241、経口テトラチオモリブダート、2−メトキシエストラジオール、2−メトキシエストラジオールナノ結晶分散物、ベバシラニブナトリウム、PTC−299、ベグリン(Veglin))、VEGF受容体の阻害薬(たとえばKDRまたはVEGF受容体III(Flt4)、たとえば抗KDR抗体、VEGFR2抗体、たとえばCDP−791、IMC−1121B)、VEGFR3 抗体、たとえばImclone SystemsからのmF4−31Cl、VEGFR発現の調節因子(たとえばVEGFR1発現調節因子Sirna−027)またはVEGF受容体下流シグナル伝達の阻害薬が挙げられる。
【0086】
VEGFの例示的な阻害薬としては、ベバシズマブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ネオバスタット(商標)、AE−941、VEGFトラップ、およびPI−88が挙げられる。
【0087】
例示的なVEGF受容体拮抗薬としては、VEGF受容体チロシンキナーゼ活性の阻害薬が挙げられる。4−[4−(1−アミノ−1−メチルエチル)フェニル]−2−[4−(2−モルホリン−4−イル−エチル)フェニルアミノ]ピリミジン−5−カルボニトリル(JNJ−17029259)は、血管内皮成長因子受容体−2(VEGF−R2)の経口的に利用可能な選択的ナノモル阻害薬である5−シアノピリミジンの構造クラスの1つである。さらなる例としては:PTK−787/ZK222584(Astra−Zeneca)、SU5416、SU11248(Pfizer)、およびZD6474([N−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)−6−メトキシ−7−[(1−メチルピペリジン−4−イル)メトキシ−]キナゾリン−4−アミン])、バンデタニブ、セディラニブ、AG−013958、CP−547632、E−7080、XL−184、L−21649、およびZK−304709が挙げられる。他のVEGF拮抗薬は、広範な特異性のチロシンキナーゼ阻害薬、たとえばSU6668(たとえばBergers,B.ら、2003 J.Clin.Invest.111:1287−95を参照されたい)、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、バタラニブ、AEE−788、AMG−706、アキシチニブ、BIBF−1120、SU−14813、XL−647、XL−999、ABT−869、BAY−57−9352、BAY−73−4506、BMS−582664、CEP−7055、CHIR−265、OSI−930、およびTKI−258である。細胞表面のVEGF受容体をダウンレギュレートする薬剤、たとえばフェンレチニド、およびVEGF受容体下流シグナル伝達を阻害する薬剤、たとえばスクアラミンも有用である。
【0088】
他の実施形態において、抗線維症剤はキナーゼ阻害薬でもよい。MEK阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、PD325901、ARRY−142886、ARRY−438162およびPD98059が挙げられる。EGFR阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、イレッサ(商標)(ゲフィチニブ、AstraZeneca)、タルセバ(商標)(エルロチニブまたはOSI−774、OSI Pharmaceuticals Inc.)、エルビタックス(商標)(セツキシマブ、Imclone Pharmaceuticals,Inc.)、EMD−7200(Merck AG)、ABX−EGF(Amgen Inc.およびAbgenix Inc.)、HR3(Cuban Government)、IgA抗体(University of Erlangen−Nuremberg)、TP−38(IVAX)、EGFR融合タンパク質、EGF−ワクチン、抗−EGFr免疫リポソーム(Hermes Biosciences Inc.)およびその組み合せが挙げられる。ErbB2受容体の例としては、これに限定されるわけではないが、CP−724−714、CI−1033(カネルチニブ)、ヘルセプチン(商標)(トラスツズマブ)、オムニターグ(商標)(2C4、ペルツマブ(petuzumab))、TAK−165、GW−572016(イオナファーニブ(Ionafarnib))、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2(HER2ワクチン)、APC8024(HER2ワクチン)、抗HER/2neu二重特異性抗体、B7.her2IgG3、AS HER2三官能性二重特異性抗体、mAB AR−209およびmAB 2B−1が挙げられる。本発明で使用できる特異的IGF1R抗体としては、参照によりその全体が本明細書に組み入れられているInternational Patent Application No.WO 2002/053596に記載された抗体が挙げられる。PDGFR阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、SU9518、CP−673,451およびCP−868596が挙げられる。AXL阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、SGI−AXL−277(SuperGen)はもちろんのこと、U.S.Pat.Pub.20050186571に開示された阻害薬も挙げられる。FGFR阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、PD17034、PD166866、およびSU5402が挙げられる。TIE2阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、Kissau,L.ら、J Med Chem,46:2917−2931(2003)に記載されている阻害薬が挙げられる。
【0089】
キナーゼ阻害薬は、複数の標的を持つ阻害薬も含む。Pan ERBB受容体としては、これに限定されるわけではないが、GW572016、CI−1033、EKB−569、およびオムニターグが挙げられる。MP371(SuperGen)は、c−Kit、Ret、PDGFR、およびLckの阻害薬であるのはもちろんのこと、非受容体チロシンキナーゼc−srcの阻害薬でもある。MP470(SuperGen)は、c−Kit、PDGFR、およびc−Metの阻害薬である。イマチニブ(グリーベック(商標))は、c−Kit、PDGFR、およびRORの阻害薬であるのはもちろんのこと、非受容体チロシンキナーゼbcl/ablの阻害薬でもある。ラパチニブ(タイケルブ(商標))は、上皮成長因子受容体(EGFR)およびERBB2(Her2/neu)二重チロシンキナーゼ阻害薬である。PDGFRおよびVEGFRの阻害薬としては、これに限定されるわけではないが、ネクサバール(商標)(ソラフェニブ、BAY43−9006)、スーテント(商標)(スニチニブ、SU11248)、およびABT−869が挙げられる。ザクティマ(商標)(バンデタニブ、ZD−6474)は、VEGFRおよびEGFRの阻害薬である。他の実施形態において、抗線維症剤は抗酸化剤でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、ヘプタックス(Hawaii Biotech)、N−アセチルシステイン(Pierre Fabre)、トコフェロール、シリマリンおよびSho−saiko−To(H−09)が挙げられる。
【0090】
他の実施形態において、抗線維症剤はコラーゲン発現の阻害薬が挙げられる。例としては、これに限定されるわけではないが、ピルフェニドン(InterMune)、ハロフギノン(Collgard)およびF351(Shanghai Genomics)が挙げられる。
【0091】
他の実施形態において、抗線維症剤はペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)ガンマ作用薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、ファルグリタザル(GSK)、ピオグリタゾン(Takeda)、ロシグリタゾン(GSK)が挙げられる。
【0092】
他の実施形態において、抗線維症剤はファルネソイドX受容体作用薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、INT−747(Intercept Pharmaceuticals)が挙げられる。
【0093】
他の実施形態において、抗線維症剤はカスパーゼ阻害薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、PF−3491390(Pfizer、正式にはIDN−6556)、およびLB84318(LG Life Sciences)が挙げられる。
【0094】
他の実施形態において、抗線維症剤は、終末糖化産物(AGE)またはその受容体、たとえばRAGEの阻害薬でありうる。AGE阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、ピリドキサミン(Biostratum)が挙げられる。RAGE阻害薬の例としては、これに限定されるわけではないが、TTP−488(Transtech Pharma)およびTTP−4000(Transtech Pharma)が挙げられる。
【0095】
他の実施形態において、抗線維症剤は、LMWヘパリンまたはヘパリン類似体でありうる。 例としては、これに限定されるわけではないが、スロデキシド(Keryx)が挙げられる。
【0096】
他の実施形態において、抗線維症剤はタンパク質キナーゼC(PKC)阻害薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、メシル酸ルボキシストーリン水和物(Lilly)が挙げられる。
【0097】
他の実施形態において、抗線維症剤はADAM−10阻害薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、XL−784(Exelixis)が挙げられる。
【0098】
他の実施形態において、抗線維症剤は銅キレート剤でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、トリエンチン(Protemix)、コプレキサ(Coprexa)(Pipex)が挙げられる。
【0099】
他の実施形態において、抗線維症剤はrhoキナーゼ阻害薬でありうる。例としては、これに限定されるわけではないが、SLx−2119およびSLx−3060(Surface Logix)が挙げられる。
【0100】
D.治療の例示的条件
線維症は一般に、コラーゲン性結合組織の病的または過剰蓄積を特徴とする。主題の方法による治療を適用できる線維症性障害としては、これに限定されるわけではないが、コラーゲン疾患、間質性肺疾患、ヒト線維性肺疾患(たとえば閉塞性細気管支炎、特発性肺線維症、公知の病因による肺線維症、肺疾患における腫瘍間質、肺に影響を及ぼす全身性強皮症、ヘルマンスキー−パドラック症候群、炭坑作業員塵肺症、石綿沈着症、珪肺症、慢性肺高血圧症、AIDS関連肺高血圧症、サルコイドージスなど)、線維性血管疾患、動脈硬化、アテローム性動脈硬化、静脈瘤、心筋梗塞、脳梗塞、心筋線維症、筋骨格線維症、術後癒着、ヒト腎臓疾患(たとえば腎炎症候群、アルポート症候群、HIV関連腎症、多発性嚢胞腎、ファブリー病、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、全身性狼瘡に関連する腎炎など)、皮膚ケロイド形成、全身性進行性硬化症(PSS)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、肝線維症、肝硬変、腎線維症、肺線維症、嚢胞性線維症、慢性移植片対宿主病、強皮症(局所性および全身性)、グレーヴス眼症、糖尿病性網膜症、緑内障、ペイロニー病、陰茎線維症、膀胱鏡を使用する検査後の尿道狭窄症、術後内部癒着、瘢痕化、骨髄線維症、特発性後腹膜線維症、公知の病因による腹膜線維症、薬物誘発麦角中毒、良性または悪性癌から起こる線維症、微生物感染(たとえばウイルス性、細菌性、寄生虫性、真菌性など)から起こる線維症、アルツハイマー病、炎症性腸疾患から起こる線維症(クローン病および顕微鏡的大腸炎での狭窄形成)、化学的または環境的傷害(たとえば癌化学療法、殺虫剤、放射線(たとえば癌放射線療法)など)に誘発される線維症などが挙げられる。
【0101】
組成物は局所的または全身的に利用できる。組成物は組み合せて、または補因子とともに供給することもできる。組成物が通常、標的位置に存在する場合は、組成物を正常レベルを回復するのに十分な量で投与することができるか、または組成物を標的位置での正常レベルを超えてレベルを上昇させる量で投与することができる。
【0102】
本発明の組成物は、外来源から標的位置に供給することができるか、または標的位置の細胞または標的位置と同じ生物の細胞によって生体内で産生することができる。
【0103】
本発明の組成物は、いずれの生理学的に適切な調合物中にあってもよい。組成物は生物への注射によって、局所的に、吸入によって、経口的に、または他のいずれかの有効な手段によって投与することができる。
【0104】
過剰な線維症の形成および維持を抑制または阻害するための上述の同じ組成物および方法は、不適切な線維症形成を抑制または阻害するためにも使用できる。たとえば、組成物および方法は、肝臓、腎臓、肺、心臓および心膜、眼、皮膚、口、膵臓、消化管、脳、乳房、骨髄、骨、尿生殖路、腫瘍、または創傷における症状を治療または防止することができる。
【0105】
一般に、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、関節リウマチ、狼瘡、病原性線維症、線維化性疾患、線維性病変、たとえば日本住血吸虫感染後に形成された線維性病変、放射線損傷、自己免疫疾患、ライム病、化学療法誘発線維症、HIVまたは感染誘発巣状硬化症、腰椎術後疼痛症候群(failed back syndrome due to spinal surgery scarring)、腹部癒着術後瘢痕化、および線維性嚢胞形成を含む状態から生じる線維症を治療または防止することができる。
【0106】
詳細には、肝臓において、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、アルコール、薬物、および/または化学的に誘発された肝硬変、虚血再灌流障害、肝移植後傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、および原発性硬化性胆管炎を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0107】
腎臓に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎症、腎尿細管間質性線維症、および巣状分節性糸球体硬化症を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0108】
肺に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、肺間質性線維症、薬物誘発サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞損傷疾患、肺高血圧症、新生児気管支肺形成異常、慢性喘息、および気腫を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0109】
心臓および/または心膜に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、心筋線維症、アテローム性動脈硬化、冠動脈再狭窄、うっ血性心筋症、心不全、および他の虚血後状態を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0110】
眼に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、グレーヴズ病の眼球突出、増殖性硝子体網膜症、前嚢白内障、急性黄斑変性、角膜線維症、手術による角膜瘢痕化、柵状織切除術誘発線維症、および他の眼線維症を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0111】
皮膚に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、デュピュイトラン拘縮、強皮症、ケロイド瘢痕化、乾癬、火傷による肥厚性瘢痕化、アテローム性動脈硬化、再狭窄、および脊髄損傷によって引き起こされた偽性強皮症を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0112】
口に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、歯周病瘢痕化および薬物に続く歯肉肥厚を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0113】
膵臓に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、膵臓線維症、間質リモデリング膵炎、および間質性線維症を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0114】
消化管に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、コラーゲン蓄積大腸炎、絨毛萎縮、陰窩過形成(cryp hyperplasia)、ポリープ形成、クローン病の線維症、および胃潰瘍治癒(healing gastric ulcer)を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0115】
脳に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、グリア性瘢痕組織を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0116】
乳房に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、線維嚢胞性疾患および乳癌に対する線維形成反応を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0117】
骨髄に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、骨髄形成異常および腫瘍性疾患における線維症を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0118】
骨に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、リウマチ様パンヌス形成を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0119】
泌尿生殖系に関連して、組成物および方法は、これに限定されるわけではないが、子宮内膜症、子宮筋腫、および卵巣フィブロイド(ovarian fibroid)を含む状態から生じる線維症を治療または予防することができる。
【0120】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態を示すために含まれている。当業者によって、続く実施例に開示されている技法が、本発明の実施に際して十分に機能することが本発明者らによって見出された技法を示すことが認識されるであろう。しかし当業者は、本開示に照らして、開示され、なお同様または類似の結果を得る具体的な実施形態において、本発明の精神および範囲から逸脱せずに多くの変更を行えることを認識するであろう。
【0121】
(i)特発性肺線維症の治療方法
本発明は、特発性肺線維症(IPF)の治療方法を提供する。該方法は一般に、IPFを有する個体に線維細胞抑制薬の有効量および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の有効量の組み合せを投与するステップを含む。
【0122】
一部の実施形態において、治療の投薬および有効性は、外科生検によって得た肺組織の組織病理学的評価での通常型間質性肺炎の逆転または緩徐化によって監視できる。IPFの診断基準は公知である。Ryuら(1998)Mayo Clin.Proc.73:1085−1101。
【0123】
他の実施形態において、IPFの診断は、高分解能コンピュータ断層撮影(HRCT)によって行われた確定または可能性IPFである。HRCTによる診断では、次の特徴の存在に注目する:(1)基底部および末梢部主体の網状異常および/または牽引性気管支拡張の存在;(2)基底部および末梢部主体の蜂窩の存在;ならびに(3)微小結節、気管支血管周囲小結節、硬化、孤立性(非蜂窩状)嚢胞、すりガラス様陰影(または存在する場合は、網状陰影よりも広範ではない)および縦隔リンパ節腫脹(または存在する場合は、胸部x線で目視できるほど広範ではない)の不存在。確定IPFの診断は、特徴(1)、(2)、および(3)が満足される場合に行われる。可能性IPFの診断は、特徴(1)および(3)が満足される場合に行われる。
【0124】
ある好ましい実施形態において、主題の併用療法は、肺機能の向上、たとえば統計的に有意な向上をもたらす。肺機能値は当分野で周知である。以下は、使用できる肺機能値の例である。他の肺機能値、またはその組み合せは、本発明の範囲内にあることを意図する。値は、これに限定されるわけではないが、FEV(強制呼気量)、FVC(強制肺活量)、FEF(強制呼気流量)、Vmax(最大流量)、PEFR(最大呼気速度)、FRC(機能的残気量)、RV(残気量)、TLC(全肺気量)が挙げられる。FEVは、完全吸気直後の強制呼気によって所定の期間に吐き出された空気の体積を測定する。FVCは、完全吸気直後に吐き出された空気の全体積を測定する。強制呼気流量は、時間(秒)で割った、FVCの間に吐き出された空気の体積を測定する。Vmaxは、FVCの間に測定された最大流量である。PEFRは、完全吸気から開始する強制呼気中の最大流速を測定する。RVは、完全呼気後に肺に残存する空気の体積である。
【0125】
(ii)肝線維症の治療方法
本発明は、臨床肝線維症を減少させることと、肝線維症が発生する可能性を低下させることと、肝線維症に関連するパラメータを低下させることとを含む、肝線維症を治療する方法を提供する。多くの実施形態で特に興味深いのは、ヒトの治療である。
【0126】
肝線維症は、肝硬変に関連する合併症、たとえば門脈圧亢進症、進行性肝不全、および肝細胞癌の前兆である。そのため肝線維症の減少は、このような合併症の発生率を低下させる。したがって本発明は、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の投与を含む併用療法によって、個体が肝硬変に関連する合併症を発症する可能性を低下させる方法をさらに提供する。
【0127】
線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の組み合せによる治療が肝線維症を減少させるのに有効か否かは、肝線維症および肝機能を測定するためのいくつかの確立された技法によって判定される。肝線維症が減少されるか否かは、肝生検サンプルを分析することによって判定される。肝生検の分析は、2つの主要な構成成分:重症度および進行中の疾患活性の尺度としての「グレード」によって評価される壊死炎症と、長期疾患進行を反映しているとして「ステージ」によって評価される線維症の病変および実質または血管再構築との評価を含む。たとえばBrunt(2000)Hepatol.31:241−246;およびMETAVIR(1994)Hepatology 20:15−20を参照されたい。肝生検の分析に基づいて、スコアが割り当てられる。線維症の程度および重症度の定量的評価を与える、いくつかの標準化スコアリングシステムが存在する。これらとしては、METAVIR、Knodell、Scheuer、Ludwig、およびIshakスコアリングシステムが挙げられる。
【0128】
METAVIRスコアリングシステムは、線維症(門脈線維症、小葉中心線維症、および肝硬変);壊死(ピースミールおよび小葉壊死、好酸性退縮(acidophilic retraction)、および気球状変性);炎症(門脈管炎症、門脈リンパ球凝集、および門脈炎症の分布);胆管変化;ならびにKnodell指数(門脈周囲の壊死、小葉性壊死、門脈炎症、線維症、および全疾患活性のスコア)を含む肝生検の各種の特徴の分析に基づいている。METAVIRシステムの各ステージの定義は、以下の通りである:スコア:0、線維症なし;スコア:1、門脈管の星状の拡張があるが、隔膜形成はなし;スコア:2、門脈管拡張あり、隔膜形成はほとんどない;スコア:3、多数の隔膜あり、肝硬変はなし;スコア:4、肝硬変。
【0129】
肝炎活性指数とも呼ばれるKnodellスコアリングシステムによって、試料はスコアに基づいて4つのカテゴリーの組織学的特徴に分類される:I.門脈周囲および/または架橋壊死;II.小葉内変性および巣状壊死;III.門脈炎症;ならびにIV.線維症。Knodell病期分類システムでは、スコアは以下の通りである:スコア:0、線維症なし;スコア:1、軽度の線維症(線維性門脈拡張);スコア:2、中程度の線維症;スコア:3、重度の線維症(架橋線維症);およびスコア:4、肝硬変。スコアが高いほど、肝臓組織の損傷はより重症である。Knodell(1981)Hepatol.1:431。
【0130】
Scheuerスコアリングシステムのスコアでは、以下の通りである:スコア:0、線維症なし;スコア:1、線維性門脈管の拡張あり;スコア:2、門脈周囲または門脈間隔膜があるが、構造は無傷;スコア:3、構造の変形を伴う線維症があるが、明確な肝硬変なし;スコア:4、可能性または確定肝硬変。Scheuer(1991)J.Hepatol.13:372。
【0131】
Ishakスコアリングシステムは、Ishak(1995)J.Hepatol.22:696−699に記載されている。ステージ0、線維症なし;ステージ1、短線維隔膜を有するまたは有さない、一部の門脈域の線維性拡張;ステージ2、短線維隔膜を有するまたは有さない、最大門脈域の線維性拡張;ステージ3、所々に門脈間(P−P)架橋を有する、最大門脈域の線維性拡張;ステージ4、著しい架橋(P−P)はもちろんのこと、門脈中心(P−C)も有する門脈域の線維性拡張;ステージ5、所々に小結節を有する著しい架橋(P−Pおよび/またはP−C)(不完全肝硬変);ステージ6、可能性または確定肝硬変。抗線維症治療の利益は、血清ビリルビンレベルの異常、血清アルブミンレベル、プロトロンビン時間、腹水の存在および重症度、ならびに脳疾患の存在および重症度に基づく多成分ポイントシステムを含むChild−Pughスコアリングシステムを用いて測定および評価することも可能である。これらのパラメータの異常の存在および重症度に基づいて、臨床疾患の重症度が上昇する3つのカテゴリー:A、B、またはCの1つに患者を配置することができる。
【0132】
(iii)腎線維症の治療方法
腎線維症は、細胞外基質(ECM)成分の過剰な蓄積を特徴とする。TGF−βの過剰産生は、ECMの過乗な沈着によって引き起こされる組織線維症の根底にあり、疾患を生じると考えられる。TGF−βの線維形成作用は、基質タンパク質合成の同時刺激、基質変性の阻害、およびECM構築を促進する増強されたインテグリン発現から生ずる。
【0133】
本発明は、腎線維症の治療方法を提供する。本方法は一般に、腎線維症を有する個体に線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の組み合せを投与することを含む。本明細書で使用するように、線維化誘導サイトカイン拮抗薬の「有効量」と組み合された線維細胞抑制薬の「有効量」は、腎線維症を減少させるのに有効である;および/または個体が腎線維症を発症するであろう可能性を低下させるのに有効である;および/または腎線維症に関連するパラメータを低下させるのに有効である;および/または腎臓の線維症に関連する障害を減少させるのに有効である;組み合せ投薬量である。
【0134】
一実施形態において、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の有効な組み合せは、本発明の併用療法による治療前の個体での腎線維症の程度と比較して、腎線維症を少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%減少させるのに十分である組み合せである。
【0135】
腎臓で線維症が減少したか否かは、いずれの公知の方法を使用しても判定される。たとえば、ECM沈着および/または線維症の程度について腎生検サンプルの組織化学的分析を実施する。他の方法も当分野で公知である。たとえばMasseroliら(1998)Lab.Invest.78:511−522;U.S.Pat.No.6,214,542を参照されたい。
【0136】
一部の実施形態において、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の有効な組み合せは、本発明の併用療法による治療前の個体での腎機能の基底レベルと比較して、腎機能を少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%向上させるのに有効である組み合せである。
【0137】
一部の実施形態において、線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の有効な組み合せは、本発明の併用療法による治療の非存在下で起こるであろう腎機能の低下と比較して、腎機能の低下を少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%遅らせるのに有効である組み合せである。
【0138】
腎機能は、これに限定されるわけではないが、血奬クレアチニンレベル(正常レベルが一般的に約0.6〜約1.2mg/dLの範囲である場合);クレアチニンクリアランス(クレアチニンクリアランスの正常範囲が、男性で約97〜約137mL/分であり、女性で約88〜約128mL/分である場合);糸球体濾過速度(イヌリンクリアランスまたは他の方法から計算または取得される)、血中尿素窒素(正常範囲が約7〜約20mg/dLである場合);および尿タンパク質レベルを含む、いずれかの公知のアッセイを使用して測定することができる。
【0139】
本発明は、線維細胞抑制薬または線維化誘導サイトカイン拮抗薬の有効量のみでの治療から最初に生じる1つ以上の副作用の発生または重症度を低減させながら、個体における腎線維症の予防または治療に有効である線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬の組み合せを個体に投与すること、たとえば血清クレアチニンレベルの倍加までの時間を延長すること、腎臓代償療法(たとえば透析または移植)を必要とする末期腎不全までの時間を延長すること、生存率を上昇させること、死亡リスクを低下させること、疾患負荷を緩和することまたは個体における疾患の進行を遅くすることを含む、個体の腎線維症の治療方法も提供する。
【0140】
(iv)例示的な薬物用量
【0141】
【表1】

E.薬剤組み合せの試験のための例示的なモデル系
(i)ブレオマイシン誘発肺線維症
体重が200〜250グラムのオスのSprague Dawleyラットに肺線維症を発生させる。第0日に、0.9%塩化ナトリウムに溶解させたブレオマイシン2.5〜6.67U/kgの気管内用量を(経口経路で)1.5mL/kgの量で投与する。試験の第1、3、5、7および9日に、処置群のラットに尾静脈を介してSAP 1.6mg/kgを1.3mL/kgの用量で静脈内に投薬する。未処置ラットには生理食塩水1.3mL/kgを投薬する。第14日に血中酸素飽和度(パルスオキシメトリー)および/またはPO(血液ガス測定装置)を測定することによって、肺機能を評価する。次に動物を屠殺して、左肺を総コラーゲン含有量(Sircolアッセイ)について処理して、右肺を10%ホルマリンで固定し、切片にして、シリウスレッドならびにヘマトキシリンおよびエオシンで染色して、コラーゲン沈着を評価する。(Cortijoら、Attenuation by oral N−acetylcystein of bleomycin−induced lung injury in rats.Eur Respir J 17:1228−1235,2001を参照されたい)。
【0142】
併用治療研究において、C57BL/6マウス(6〜8週齢)にPBS(約1.7U/kg)に溶解させたブレオマイシン(ブレノキサン、滅菌硫酸ブレオマイシン;Bristol−Meyers Pharmaceuticals,エバンズビル、インディアナ州)0.05Uの外科的気管内注入によって肺線維症を誘発させて、第0日と呼ぶ。ブレオマイシン注入後の第21日に、群を屠殺して、肺組織を分析する。対照マウスには気管内PBSが投与されるであろう。IFNgおよび抗IL13研究の両方で、マウスにhSAPを投薬スケジュールで投与する(5または20mg/kg、腹腔内、第11に開始して1日おきに5回投薬)。
【0143】
IFNg組み合せ研究では、マウスに、第0日にブレオマイシンを、第−1、1および2日にはIFNgを投与する(筋肉内10,000U/マウス;表2を参照されたい)。IFNgを投与されないが、hSAPを投与されたマウス(第4および5群)には、第−1、1および2日に生理食塩水を筋肉内投与した。
【0144】
hSAP/抗IL13研究では、第14、16、18および20日のみに、マウスに抗IL13(UMich試薬、200ug/用量、pAb、腹腔内;表3を参照されたい)を投与する。
【0145】
マウスを麻酔薬過量で屠殺する;血液を心臓穿刺によって取り出し、血漿の処理に備えてEDTA含有管に収集する。肺は、インサイチューで左心室を介して滅菌PBS(十分な灌流まで約2〜3mL)を灌流させて、次に一塊として取り出し、タンパク質分析用に処理するまで急速凍結させる。肺ホモジネート中の総可溶性コラーゲンは、ヒドロキシプロリンアッセイを使用して測定し、Massonトリクローム染色を使用して組織学的に分析した。表2:メスC57B1/6マウスにおけるhSAP/IFNg組み合せ研究の研究計画
【0146】
【表2】

表3:オスC57B1/6マウスにおけるhSAP/抗IL13組み合せ研究の研究計画
【0147】
【表3】

(ii)肝線維症、四塩化炭素投与
体重が200〜225グラムのオスのウイスターラットに肝線維症を発生させる。第0日に、ラットにオリーブ油中のCCl(0.08mLのCCl/mLオリーブ油;初回量412mg CCl/kg)またはオリーブ油単独(対照)の胃内投薬を与える。ラットに研究期間中にわたって週2回、CClを投薬し、体重変化に基づいて毎週投薬量を調整して死亡率を低下させる。処置ラットには、第1日から開始して1日おきに1.6mg/kgのSAPを腹腔内投薬する;対照ラットには同量のビヒクルを投薬する。第24日にラットを屠殺して、体および肝臓の重量を評価し、分析のために肝組織を採取する。総コラーゲン含有量をSircolアッセイで測定して、コラーゲン沈着をMasson三色およびシリウスレッド染色によって測定する。筋線維芽細胞活性化は、α−SMAの免疫染色によって決定する。(Parsons CJら、Antifibrotic effects of a tissue inhibitor of metalloprotein−ase−1 antibody on established liver fibrosis in rats.Hepatology 40:1106−1115,200およびRivera CAら、Attenuation of CCL−induced hepatic fibrosis by GdCl treatment or dietary glycine.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 281:G200−G207,2001を参照されたい)。
【0148】
(iii)肝線維症、胆管結紮
第0日に、オス成ラットにて総胆管の結紮により、肝損傷を誘発させる。処置ラットには、第1日から開始して1日おきに1.6mg/kgのSAPを腹腔内投薬する;対照ラットには同量のビヒクルを投薬する。第14日にラットを屠殺して、体および肝臓の重量を評価し、分析のために肝組織を採取する。総コラーゲン含有量をSircolアッセイで測定して、コラーゲン沈着をMassonトリクロームおよびシリウスレッド染色によって測定する。筋線維芽細胞活性化は、α−SMAの免疫染色によって決定する(Kisseleva T.ら、Bone marrow−derived fibrocytes participate in pathogenesis of liver fibrosis.J Hepatology 45:429−438,2006; Hellerbrand C.ら、Expression of intracellular adhesion molecule 1 by activated hepatic stellate cells.Hepatology 24:670−676,1996;and Tramas EG,Symeonidis A.Morphologic and functional changes in the livers of rats after ligation and excision of the common bile duct.Am J Pathol 33:13−27,1957を参照されたい)。
【0149】
(iv)UUO誘発腎線維症
ラットの一側尿管結紮水腎症(UUO)は、腎線維症の適切なモデルである。体重が200〜250グラムのSprague Dawleyラットで腎線維症を誘発させた。ラットは、ケタミン(100mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)で麻酔した。すべての外科処置は無菌技法を使用して実施した。
【0150】
左腎臓、腎動脈および静脈を露出させて、縫合糸を使用して尿管を閉塞させた。次に外科部位を縫合して閉止した。
【0151】
表4に詳説されているように、PBS中のヒト血清アルブミン(第1群)またはPBS中のhSAP(第2〜5群)を静脈内(iv)注射によって、第0日から第12日まで1日におきに動物に投与した。第2、5、および6群の動物の飲用水へのエナラプリルの添加を研究日から開始して、屠殺(第14日)まで継続した。
【0152】
第14日に動物を屠殺して、左の閉塞した腎臓と右の対側の対照腎臓を両方とも切除した。
【0153】
表4.UUO誘発腎線維症の研究計画
【0154】
【表4】

(M.El Chaarら、Am J Physiol Renal Physiol 292, F1291(Apr,2007)およびM.D.Burdickら、Am J Respir Crit Care Med 171,261(Feb 1,2005)を参照されたい)。
【0155】
14日間のUUOによって誘発された線維症の程度を判定するために、動物のすべての群からの腎層切片にMassonトリクロームを行って、画像解析を使用してトリクローム陽性の程度を判定した(図1を参照されたい)。未損傷腎臓では約5%のコラーゲン沈着があったのに対して、UUOが介在した損傷はHSA対照処置動物の腎臓でのコラーゲン沈着の増加を引き起こした(約22%のトリクローム染色)。エナラプリル単独(約15%)または2mg/kg hSAP単独(約25%)のどちらも、コラーゲン沈着の増加を有意に阻害しなかった。しかしエナラプリルおよびhSAPの組み合せで処置した動物におけるトリクローム染色の有意な阻害が見られた(p<0.05;約10%)。その上、エナラプリルおよびhSAPの組み合せで処置した動物におけるコラーゲン沈着の程度は、hSAP単独と比較して有意に減弱された(p<0.01)。これらのデータは、総合すれば、エナラプリル+hSAPの組み合せがUUO誘発腎線維症のラットモデルでのエナラプリル単独またはhSAP単独のどちらかと比較して、より高い治療活性を与えることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の線維症性障害または線維増殖性障害を治療する方法であって、該障害に罹患している、または該障害を発症するリスクに瀕しているヒトまたは獣医の患者に1つ以上の線維細胞抑制薬および1つ以上の線維化誘導因子拮抗薬または抗線維症剤の組み合せを投与するステップを含む、方法。
【請求項2】
個体の線維症性障害または線維増殖性障害の治療を提供するキットであって:
(i)ヒトまたは獣医の患者への投与に適切な形の、線維細胞抑制薬の有効量と;
(ii)ヒトまたは獣医の患者への投与に適切な形の、線維化誘導因子拮抗薬の有効量とを含み、該線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬が共に投与されるように調合されている;キット。
【請求項3】
前記線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬が同時調合される、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬が同時に投与される、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項5】
前記線維細胞抑制薬および線維化誘導サイトカイン拮抗薬が、相互に患者内で重複治療濃度を生成する時間内に投与される、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項6】
前記線維細胞抑制薬がSAP、SAP類似体、IL−12、ラミニン−1、抗FcγR抗体、凝集IgG抗体、架橋IgG抗体、およびその組み合せから成る群より選択される、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項7】
前記線維細胞抑制薬が、単球におけるSykおよびSrc関連チロシンキナーゼのFcγR依存性活性化を引き起こす、または線維細胞形成を抑制する方式で単球におけるSykおよびSrc関連チロシンキナーゼのFcγR非依存性活性化を引き起こす薬剤(たとえばホスホ−ITAMペプチドおよびそのペプチドミメティック)である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項8】
前記線維細胞抑制薬が、単球におけるFcγRの凝集および/または架橋を引き起こす薬剤である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項9】
前記線維細胞抑制薬が、線維芽細胞前駆体、たとえばCD14+単球のアポトーシスを誘発する、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項10】
前記線維細胞抑制薬がIL−15拮抗薬である、請求項9に記載の方法またはキット。
【請求項11】
前記線維化誘導サイトカイン拮抗薬が、TGF−β、VEGF、EGF、RANTES、線維化誘導インターロイキン、TNF−α、PDGF、IGF、bFGF、MCP−1、マクロファージ炎症性タンパク質(たとえばMIP−1α、MIP−2)、CTGF、エンドセリン−1、アンギオテンシン−II、レプチン、線維化誘導ケモカインおよびSLC/CCL21から成る群より選択されるペプチド成長因子またはサイトカインの拮抗薬である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項12】
前記線維化誘導サイトカイン拮抗薬が、IL−1、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、およびIL−13の1つ以上の拮抗薬である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項13】
前記線維化誘導サイトカイン拮抗薬が、CCL2、CCL12、CXCL12、CXCR4、CCR3、CCR5またはCCR7の1つ以上の拮抗薬である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項14】
前記線維化誘導サイトカイン拮抗薬がTGF−β拮抗薬である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載のキット。
【請求項15】
前記TGF−β拮抗薬が:TGF−βの1つ以上のアイソフォームに指向した抗体;TGF−β受容体;1つ以上のTGF−β受容体に指向した抗体;潜伏関連ペプチド;大型潜在性TGF−β、TGF−β阻害プロテオグリカン;ソマトスタチン;マンノース−6−ホスフェート;マンノース−1−ホスフェート;プロラクチン;インスリン様成長因子II;IP−10;arg−gly−asp含有ペプチド;植物、真菌および細菌の抽出物;アンチセンスオリゴヌクレオチド;およびTGF−βシグナル伝達に関与するタンパク質から成る群より選択される、請求項14に記載の方法またはキット。
【請求項16】
前記TGF−β阻害プロテオグリカンがフェチュイン;デコリン;バイグリカン;フィブロモジュリン;ルミカンおよびエンドグリンから成る群より選択される、請求項15に記載の方法またはキット。
【請求項17】
前記患者が以下の:関節リウマチ、狼瘡、病原性線維症、線維化性疾患、線維性病変、放射線損傷、自己免疫疾患、ライム病、化学療法誘発線維症、HIV、感染誘発巣状硬化症、腰椎術後疼痛症候群、腹部癒着術後瘢痕化、および線維性嚢胞形成の1つから生じる状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記患者が肝臓に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がアルコール、薬物、および/または化学的に誘発された肝硬変、虚血再灌流、肝移植後傷害、壊死性肝炎、B型肝炎、C型肝炎、原発性胆汁性肝硬変、および原発性硬化性胆管炎から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が腎臓に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、腎性線維化性皮膚症、糖尿病性腎症、腎尿細管間質性線維症、および巣状分節性糸球体硬化症から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が肺に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が肺間質性線維症、薬物誘発サルコイドーシス、肺線維症、特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、びまん性肺胞損傷疾患、肺高血圧症、新生児気管支肺形成異常、慢性喘息、および気腫から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記患者が心臓に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が心筋線維症、アテローム性動脈硬化、冠動脈再狭窄、うっ血性心筋症、および心不全から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記患者が眼に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がグレーヴズ病の眼球突出、増殖性硝子体網膜症、前嚢白内障、角膜線維症、手術による角膜瘢痕化、および柵状織切除術誘発線維症から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記患者が皮膚に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がデュピュイトラン拘縮、強皮症、ケロイド瘢痕化、乾癬、肥厚性瘢痕化、アテローム性動脈硬化、再狭窄、および偽性強皮症から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記患者が口に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が歯周病瘢痕化および歯肉肥厚から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記患者が膵臓に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が膵臓線維症、間質リモデリング膵炎、および間質性線維症から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記患者が消化管に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がコラーゲン蓄積大腸炎、絨毛萎縮、陰窩過形成、ポリープ形成、クローン病の線維症、および胃潰瘍治癒から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が脳に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がグリア性瘢痕組織である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記患者が乳房に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が線維嚢胞性疾患および乳癌に対する線維形成反応から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記患者が骨髄に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が骨髄形成異常および腫瘍性疾患から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が骨に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患がリウマチ様パンヌス形成である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が泌尿生殖系に関連する線維化性疾患から生じる状態を有し、該線維化性疾患が子宮内膜症、子宮筋腫、および卵巣フィブロイドから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記抗線維症剤が抗線維化効果を有することが公知であるサイトカイン、たとえばHGF、BMP−7またはIL−10である、請求項1に記載の方法および請求項2に記載のキット。
【請求項33】
前記抗線維症剤がカルシウムチャネル遮断薬である、請求項1に記載の方法および請求項2に記載のキット。
【請求項34】
前記抗線維症剤がACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬である、請求項1に記載の方法および請求項2に記載のキット。
【請求項35】
前記ACE阻害薬がエナラプリルである、請求項1に記載の方法および請求項2に記載のキット。
【請求項36】
前記抗線維症剤が抗酸化薬、PPARガンマ作用薬、インテグリン拮抗薬、TIMP−1またはTIMP−2阻害薬、ファルネソイドX受容体作用薬、カスパーゼ阻害薬、AGE阻害薬、RAGE阻害薬、LMWヘパリン、PKC阻害薬、ADAM−10阻害薬、銅キレート剤、およびrhoキナーゼ阻害薬より選択される、請求項1に記載の方法および請求項2に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2010−511712(P2010−511712A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540275(P2009−540275)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/024907
【国際公開番号】WO2008/070117
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(509156170)プロメディオール, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】