説明

線維筋痛症候群の長期治療のためのミルナシプラン

【課題】本発明は、線維筋痛症候群(FMS)の患者に二重再取り込み阻害剤を投与することによる、FMSの長期治療を提供する方法である。
【解決手段】本発明は、FMSの患者にノルエピネフリン-セロトニン再取り込み阻害剤(NSRI)を投与することによる、FMSの長期治療である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線維筋痛症に罹患している患者に二重ノルエピネフリンセロトニン再取り込み阻害剤を投与することによる、線維筋痛症およびその症状の長期治療に関する。より詳しくは、本発明は、セロトニンの再取り込みを阻害するのと同等またはそれ以上の程度にノルエピネフリンの再取り込みを阻害する、二重ノルエピネフリンセロトニン再取り込み阻害剤を線維筋痛症に罹患している患者に投与することによる、線維筋痛症およびその症状の長期治療に関する。
【背景技術】
【0002】
線維筋痛症候群(FMS)としても知られている線維筋痛症は、人口の2%から4%が罹患すると推定されている一般的な全身性リウマチ性疾患であり、リウマチ性疾患の中で変形性関節症に次いで第2番目に患者数が多い。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990; 33 (2) : 160-172; Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1995; 38 (1): 19-28。線維筋痛症は、疼痛閾値の低下に関連しており、一般に全身にわたる圧迫に対する感受性が増加することにより特定され、しばしば、疲労、睡眠障害、および朝のこわばりを伴う。他の一般的な症状には、頭痛、偏頭痛、変わりやすい排便習慣、びまん性腹痛、および頻尿が含まれる。線維筋痛症の診断基準は、広範囲の疼痛の既応のみならず、理学的診断における圧痛(圧痛点)所見を要求する。1990年に米国リウマチ学会(ACR)によって確立された線維筋痛症の基準を満たすために、個人は、体および体軸骨格の4つの象限全てに関与している広範囲の痛みと、検査おいて18のうち11の圧痛点の存在との両方が必要である。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990;33 (2):160-172.
【0003】
線維筋痛症候群(FMS)としても知られている線維筋痛症は、人口の2%から4%が罹患すると推定されている一般的な全身性リウマチ性疾患であり、リウマチ性疾患の中で変形性関節症に次いで第2番目に患者数が多い。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990; 33 (2) : 160-172; Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1995; 38 (1): 19-28。線維筋痛症は、疼痛閾値の低下に関連しており、一般に全身にわたる圧迫に対する感受性が増加することにより特定され、しばしば、疲労、睡眠障害、および朝のこわばりを伴う。他の一般的な症状には、頭痛、偏頭痛、変わりやすい排便習慣、びまん性腹痛、および頻尿が含まれる。線維筋痛症の診断基準は、広範囲の疼痛の既応のみならず、理学的診断における圧痛(圧痛点)所見を要求する。1990年に米国リウマチ学会(ACR)によって確立された線維筋痛症の基準を満たすために、個人は、体および体軸骨格の4つの象限全てに関与している広範囲の痛みと、検査おいて18のうち11の圧痛点の存在との両方が必要である。Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990;33 (2):160-172.
【0004】
線維筋痛症を有する個人は、高頻度の再発性非心臓性胸痛、胸焼け、動悸、および過敏性腸症候群を含むいくつかの他の症状に罹患している。Wolfe, et al., Arthritis Rheum. 1990;33(2):160-172; Mukerji et al., Angiology 1995;46(5):425-430。これらの症状の生理学的基礎はまだ不明であるが、線維筋痛症および関連疾患において自律神経系の機能不全が一般的であるということを示唆する証拠が増加している。Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997;4(3):134-153; Freeman R and Komaroff AL, Am J Med. 1997;102(4):357-364。無作為に選択された線維筋痛症の個人を対象としたプロスペクティブ試験では、いくつかの内臓の機能不全の客観的証拠が見つけられており、発症率75%の心エコーの検査による僧帽弁逸脱、40〜70%の食道運動不全、および肺機能検査による静的吸気および呼気圧の低下が含まれる。Lurie et al., Scand J Rehab Med. 1990;22(3):151-155; Pellegrino et al., Arch Phys Med Rehab. 1989;70(7):541-543。神経系が介在する低血圧および失神もまた線維筋痛症の個人でより頻繁に起こるように思われる。Rowe et al., Lancet 1995;345(8950):623-624。線維筋痛症はまた、対照と比べて、高い身体障害の割合、健康診療の利用の増加、精神科医による治療頻度の上昇、および生涯の精神科診断数の増加に関連している。
【0005】
線維筋痛症の研究は、最近では、他の慢性疼痛状態の研究と別の調査の重要な領域として現れている。かなりの数の文献がすでに、FMSのために三環系抗うつ剤の使用を支持しており、他の治療薬の効果も評価したいくつかの他の対照比較試験がある。しかしながら、試験データの解釈は、関節リウマチなどの他のリウマチ学的疾患の試験には現在一般的に用いられている「応答者」対「非応答者」の受け入れられた2元定義がないことなどの要素によって複雑化している。Felson et al., Arthritis Rheum. 1993;36(6):729-740; Felson DT, J Rheumatol. 1993;20(3):581-534。さらに、適切なエンドポイントの指定を含む試験設計の多くの点に関して意見が一致していない。それにもかかわらず、患者の痛みの測定と特徴付けは、FMSにおける薬の有効性の決定において非常に重要であるということには一般的な同意がある。疲労、睡眠、うつ、身体的機能性、および健康全般の評価は、薬の全体的有効性をさらに明らかにするのに役立つ。
【0006】
幅広い数々の薬剤が、FMS患者に「認可外」で用いられ様々な度合いの成功をおさめている。Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858; Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000:113:32-36。抗うつ剤は、多くの治療パラダイムの基礎である一方で、抗けいれん誘発薬、抗痙性剤、抗不安剤、鎮静剤、およびアヘン剤などの他の薬剤が使用されている。末梢性炎症が示されてなく(Clauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997;4(3):134-153)、多くの研究ではFMSにおける鎮痛剤としての有効性を確認することができていないにもかかわらず、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)およびアセトアミノフェンもまた多くの患者に使用されている(Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1997;40(9):1571-1579)。Goldenberg et al., Arthritis Rheum. 1986;29(11):1371-1377; Yunus et al., I Rheumatol. 1989;16(4):527-532; Wolfe et al., Arthritis Rheum. 2000;43(2):378-385; Russell et al., Arthritis Rheum. 1991;34(5):552-560; Quijada-Carrera et al., Pain 1996;65(2-3):221-225。しかしながら、これらの薬剤は変形性関節症などの他の末梢性疼痛誘発源に対して保護する要素を提供する。
【0007】
すべての種類の抗うつ剤は、FMSを含む多くの慢性疼痛状態の治療の一般的な形態である。Sindrup SH and Jensen TS, Pain 1999;83(3):389-400; Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858; Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000;113:32-36; Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79.92。入手可能な抗うつ剤の大部分は、直接的および/または間接的にCNS中の5-HTおよび/またはNEのレベルを増加させる。モノアミン作動性物質のレベルは、シナプス間隙に放出された後の(輸送タンパク質の阻害による)再取り込みの阻害または(モノアミン酸化酵素の阻害による)モノアミンの分解の妨害により増加する。
【0008】
<三環系抗うつ剤(TCA)>
FMSの治療において最も一般的に用いられるTCAには、アミトリプチリン、ドキセピン、およびシクロベンザプリンが含まれる。Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999;13(3):479-485; Lautenschlager J, Scared J Rheumatol Suppl. 2000;113:32-36; Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92。シクロベンザプリンは一般に、抗うつ剤ではなく筋弛緩剤として分類されるが、構造および薬理学的にはTCAと類似しており、しかし、その鎮静の質は他の適用における有用性を圧倒している。Kobayashi et al., Eur J Pharmacol. 1996;311(l):29-35。TCAは5-HTおよびNEの両方の再取り込みをブロックするが、NEの再取り込みブロックの方に好都合であり、TCAの効果は、鎮痛作用において最重要なNEアゴニズムを支持すると解釈されうる。しかしながら、TCAの更なる抗コリン作用性、抗ヒスタミン作用性、およびα-アドレナリン受容体封鎖活性は、幅広い種類の忍容性や臨床的受容を損なうことが多い望ましくない副作用をを与える。Kent JM, Lancet 2000;355(9207):911-918。
【0009】
TCAは、ヘルペス後の神経痛および痛みのある糖尿病性神経障害などの神経障害性疼痛状態の治療において、中等度の効果を示している。Max et al., Neurology 1988; 38(9): 1427-1432; Max et al., N Eng J Med. 1992;326(19):1250-1256; Watson et al., Neurology 1982;32(6):671-673; Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36。FMSの治療における多くのTCAの研究は、この症候群に対するその使用も支持し、TCAはしばしば新規薬剤を比較する陽性対照として用いられてきた。Max et al., N Eng J Med. 1992;326 (19): 1250-1256; Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36; Hannonen et al., Br J Rheumatol. 1998; 37 (12):1279-1286; Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859。
【0010】
<選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)>
SSRIは、より選択的な再取り込み阻害により改善された副作用プロファイルによって、うつ治療を根本的に変えてきている。SSRI剤であるフルオキセチン、セルトラリン、およびシタロプラムは、FMSにおける無作為化プラセボ対照比較試験でそれぞれ評価されている。Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859; Wolfe et al., Scand J Rheum. 1994;23(5):255-259; Anderberg et al., Eur J Pain 2000;4(1):27-35; Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449。しかしながら、それらの試験結果は若干一貫性がなく、SSRIの、特にTCAと比較した、相対的な有効性については議論の余地がある。
【0011】
FMS患者における、SSRIの最も5-HT特異的であるシタロプラムの2つのプラセボ対照比較試験は、両方とも否定的であると思われた。Anderberg et al., Eur J Pain, 2000;4(1):27-35; Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449。これはセロトニン作動性の増強だけでは、慢性疼痛の環境において鎮痛を与えるのには十分ではないことを示唆している。実際、今まで集められた証拠を基に、SSRIは、1つのクラスとして、いくつか例外はあるが(Saper et al., Headache 2001;41(5):465-474)、一般に慢性疼痛の状態においてTCAよりも効果が低い(Max et al., N Engl J Med. 1992;326(19):1250-1256; Ansari A, Harv Rev Psych. 2000;7(5):257-277; Atkinson et al., Pain 1999;83(2):137-145; Jung et al., J Gen Intern Med. 1997;12(6):384-389)。
【0012】
<二重再取り込み阻害剤>
二重再取り込み阻害剤(DRI)は、薬理学的にTCA(例えばアミトリプチリンおよびドキセピン)と似ており、5-HTの再取り込みおよびNEの再取り込みの両方に対して活性を示す。Sanchez C and Hytell J, Cell Mol Neurobiol. 1999;19(4):467-489。幸運にも、これらの新規薬剤は、一般に、他の受容体系では重要な活性を欠いており、結果として、TCAと比較して、副作用が減少し、忍容性が増強する。したがって、このクラスの抗うつ剤は、FMSおよび/または他の慢性疼痛状態の治療に対して重要な潜在能力があるかもしれない。米国で市販されているDRIには、ベンラファキシンおよびデュロキセチンが含まれる。いくつかのDRIが臨床開発中であり、これらには、ミルナシプラン、ビシファジン(bicifadine)、ビロキサジン、LY-113821、SEP-227162、AD-337、およびコハク酸デスベンラファキシン(DVS-233)が含まれる。
【0013】
15人のFMS患者における、ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))の非盲検試験が開示されている。Dwight et al., Psychosomatics 1998;39(1):14-17。この試験を完了した11人の患者のうち、6人がベンラファキシンに対して、全体的な痛みの2つの異なる測定において、50%以上の改善が見られたとして定義された陽性の反応を示した。不眠症が報告された最も一般的な副作用であり、11人の完了した患者のうち3人において補助的な薬物療法を必要とした。
【0014】
米国特許第6602911号は、FMSおよびその症状の治療のためにミルナシプランを用いることを示しており、その全開示が参照により本明細書に取り込まれている。
【0015】
<オピオイド>
アヘン剤は、上行性および下行性の痛み経路の両方において様々に位置で抗侵害受容効果を発揮する。Duale et al., Neuroreport 2001;12(10):2091-2096; Besse et al., Brain Res. 1990;521(1-2):15-22; Fields et al., Nature 1983;306(5944):684-686; Yaksh et al., Proc Natl Acad Sci USA 1999;96(14):7680-7686。慢性疼痛状態に対するオピオイドの使用に関し、広く議論や論議が行われている。Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92。しかしながら、オピオイドはFMSの臨床管理において一部で用いられており、特に、他の鎮痛剤が十分な緩和を与えることに役に立たないときに用いられる。Bennett RM, Mayo Clin Proc. 1999;74(4):385-398。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6602911号
【特許文献2】米国特許出願第10/678767号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1990; 33 (2) : 160-172
【非特許文献2】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1995; 38 (1): 19-28
【非特許文献3】CIauw DJ and Chrousos GP, Neuroimmunomodulation 1997; 4 (3) :134-153
【非特許文献4】Yunas MB, J Rheumatol. 1992;19(6):846-850
【非特許文献5】Bradley et al., Curr Rheumatol Rep. 2000;2(2):141-148
【非特許文献6】Simms RW, Am J Med Sci. 1998;315(6):346-350
【非特許文献7】Mountz et al., Arthritis & Rheumatism 1995;38(7):926-938
【非特許文献8】Arroyo JF and Cohen ML, J Rheunatol. 1993; 20(11):1925-1931
【非特許文献9】Sindrup SH and TS Jensen, Pain 1999;83(3):389-400
【非特許文献10】Woolf CJ, Nature 1983;306(5944):686-688
【非特許文献11】Woolf CJ and RJ Mannion, Lancet 1999;353(9168):1959-1964
【非特許文献12】Mukerji et al., Angiology 1995;46(5):425-430
【非特許文献13】Freeman R and Komaroff AL, Am J Med. 1997;102(4):357-364
【非特許文献14】Lurie et al., Scand J Rehab Med. 1990;22(3):151-155
【非特許文献15】Pellegrino et al., Arch Phys Med Rehab. 1989;70(7):541-543
【非特許文献16】Rowe et al., Lancet 1995;345(8950):623-624.
【非特許文献17】Felson et al., Arthritis Rheum. 1993;36(6):729-740
【非特許文献18】Felson DT, J Rheumatol. 1993;20(3):581-534.
【非特許文献19】Buskila D, Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol. 1999; 13 (3):479-485
【非特許文献20】Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858
【非特許文献21】Lautenschlager J, Scand J Rheumatol Suppl. 2000:113:32-36.
【非特許文献22】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 1997;40(9):1571-1579
【非特許文献23】Goldenberg et al., Arthritis Rheum. 1986;29(11):1371-1377
【非特許文献24】Yunus et al., I Rheumatol. 1989;16(4):527-532
【非特許文献25】Wolfe et al., Arthritis Rheum. 2000;43(2):378-385
【非特許文献26】Russell et al., Arthritis Rheum. 1991;34(5):552-560
【非特許文献27】Quijada-Carrera et al., Pain 1996;65(2-3):221-225
【非特許文献28】Leventhal LJ, Ann Intern Med. 1999;131(11):850-858
【非特許文献29】Bennett RM, J Functional Syndromes 2001;1(1):79-92
【非特許文献30】Kobayashi et al., Eur J Pharmacol. 1996;311(l):29-35
【非特許文献31】Kent JM, Lancet 2000;355(9207):911-918
【非特許文献32】Max et al., Neurology 1988;38(9):1427-1432
【非特許文献33】Max et al., N Eng J Med. 1992;326(19):1250-1256
【非特許文献34】Watson et al., Neurology 1982;32(6):671-673
【非特許文献35】Watson et al., Pain 1992;48(1):29-36
【非特許文献36】Hannonen et al., Br J Rheumatol. 1998;37(12):1279-1286
【非特許文献37】Goldenberg et al., Arthritis & Rheumatism 1996;39(11):1852-1859
【非特許文献38】Wolfe et al., Scand J Rheum. 1994;23(5):255-259
【非特許文献39】Anderberg et al., Eur J Pain 2000;4(1):27-35
【非特許文献40】Norregaard et al., Pain 1995;61(3):445-449
【非特許文献41】Saper et al., Headache 2001;41(5):465-474
【非特許文献42】Ansari A, Harv Rev Psych. 2000;7(5):257-277
【非特許文献43】Atkinson et al., Pain 1999;83(2):137-145
【非特許文献44】Jung et al., J Gen Intern Med. 1997;12(6):384-389
【非特許文献45】Sanchez C and Hytell J, Cell Mol Neurobiol. 1999;19(4):467-489
【非特許文献46】Dwight et al., Psychosomatics 1998;39(1):14-17
【非特許文献47】Duale et al., Neuroreport 2001;12(10):2091-2096
【非特許文献48】Besse et al., Brain Res. 1990;521(1-2):15-22
【非特許文献49】Fields et al., Nature 1983;306(5944):684-686
【非特許文献50】Yaksh et al., Proc Natl Acad Sci USA 1999;96(14):7680-7686
【非特許文献51】Bennett RM, Mayo Clin Proc. 1999;74(4):385-398
【非特許文献52】Carette et al., Arthritis & Rheumatism 1994;37(1):32-40, 32-33, 39
【非特許文献53】Grard et al., 2000, Electrophoresis 2000 21:3028-3034
【非特許文献54】Zeltser et al., 2000, Pain 89:19-24
【非特許文献55】Bennett et al., 1988, Pain 33:87-107
【非特許文献56】Seltzer et al., 1990, Pain 43:205-218
【非特許文献57】Kim et al., 1992, Pain 50:355-363
【非特許文献58】Decosterd et al., 2000, Pain 87:149-158
【非特許文献59】Jasmin et al., 1998, Pain 75:367-382
【非特許文献60】Quintero et al., 2000, Pharmacology, Biochemistry and Behavior 67:449-458
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
線維筋痛症候群の患者の大多数は、何年もの間その症状のままである(Carette et al., Arthritis & Rheumatism 1994;37(1):32-40, 32-33, 39)。Carette等は、アミトリプチリン(三環系抗うつ剤)、シクロベンザプリン(三環系抗うつ剤に構造が似ている筋弛緩剤)、およびプラセボを、線維筋痛症候群に罹患している対象に投与した臨床試験の結果を報告した(Carette et al., Arthritis & Rheumatism 1994;37(1):32-40)。1ヶ月後、アミトリプチリン対象の21%、シクロベンザプリン対象の12%、およびプラセボ対象の0%で有意な臨床的改善が認められた。3ヶ月後、各処置群とプラセボの間に差はなかった。6ヶ月後、予想よりもより高いプラセボ反応のため、即ちプラセボで19%の改善のために、長期の有効性は実証されなかった。
【0019】
このように、線維筋痛症候群およびその症状の効果的な長期治療の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
線維筋痛症およびその症状の短期(急性)の治療に有益ではあるが、効果的な長期治療を提供する持続的な効果を提供する化合物は認められていない。驚いたことに、本発明の方法によると、二重ノルエピネフリン-セロトニン再取り込み阻害剤(DRI)を線維筋痛症候群に罹患している患者に投与すると、効果的な線維筋痛症候群およびその症状の長期治療が提供される。
【0021】
以下の実施例1において本明細書において初めて報告する二重盲検無作為プラセボ対照比較臨床試験は、DRIを、線維筋痛症に罹患している患者において線維筋痛症およびその症状の効果的な長期(例えば少なくとも3ヶ月)治療を提供するために用いることができることを予想外に示した。さらに、この臨床試験の結果は、驚いたことに、DRIが少なくとも6ヶ月の間、FMSおよびその症状の効果的な長期治療を提供するために用いることができることを示した。
【0022】
したがって、本発明は、DRIを線維筋痛症候群の治療を必要とする患者に少なくとも3ヶ月間、線維筋痛症候群の治療を必要とする患者における線維筋痛症候群の治療に投与することを含む、線維筋痛症候群の長期治療のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、DRIはセロトニン再取り込み(NSRI)よりも多くまたは同等にノルエピネフリン再取り込みを阻害する化合物である。代表的な実施形態において、NSRIはミルナシプランである。
【0023】
例えば、本発明の方法によると、FMSおよびその症状の長期治療は、FMSに罹患している患者に1日当たり25mgから1日当たり400mgのミルナシプランを投与することによって提供することができる。代表的な実施形態において、ミルナシプランはFMSに罹患している患者にFMSおよびその症状の長期治療のために、1日当たり100mgの用量で投与することができる。他の代表的な実施形態において、ミルナシプランは、FMSに罹患している患者にFMSおよびその症状の長期治療のために、1日当たり200mgの用量で投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に記載された臨床試験の時系列を示す図である。
【図2】実施例1に記載された、プラセボ、ミルナシプラン100mg/日、およびミルナシプラン200mg/日の群における、3ヶ月および6ヶ月での応答者の割合を説明する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書で用いられている用語「対象」または「患者」は、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含む。
【0026】
本明細書で用いられている、「治療」または「効果的な治療」は、少なくとも1つの線維筋痛症の症状を、緩和する、軽減する、遅延する、減少する、逆転する、改良する、または予妨することを意味する。
【0027】
用語「二重再取り込み阻害剤」は、ノルエピネフリンおよびセロトニンの両方の再取り込みを選択的に阻害する、抗うつ剤化合物のよく認識されたクラスを意味する。「ノルエピネフリン-セロトニン再取り込み阻害剤」(NSRI)および「セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤」(SNRI)は、DRIのサブクラスを意味する。ノルエピネフリンの再取り込みを優先的に阻害するDRI化合物は、NSRIと呼ばれる。一方で、セロトニンの再取り込みを優先的に阻害する化合物は、SNRIと呼ばれる。一般的なDRI化合物には、それらに限定されないが、SNRIはベンラファキシンおよびデュロキセチン、NSRIはビシファジンおよびミルナシプランが含まれる。
【0028】
NSRI化合物は、米国特許第6602911号に詳細に記載されており、その全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0029】
いくつかの実施形態によると、本発明は、DRIを少なくとも3ヶ月の間、治療の必要のある患者に投与することを含む、線維筋痛症候群の長期治療の方法を提供する。代表的な実施形態において、DRI化合物はNSRIである。
【0030】
他の代表的な実施形態において、NSRIはミルナシプランである。いくつかの実施形態において、ミルナシプランは塩酸塩;Z-2-アミノメチル-1-フェニル-N,N-ジエチルシクロプロパンカルボキサミド塩酸塩(化学式C15H23ClN2O)として投与することも可能である。他の実施形態において、ミルナシプランは右旋性および左旋性エナンチオマーの混合物として、例えば、1つのエナンチオマーよりも多く含む混合物またはラセミ混合物として投与することも可能である。いくつかの実施形態において、ミルナシプランは、鏡像異性的に純粋な形態(例えば、右旋性エナンチオマーまたは左旋性エナンチオマーとして)投与することも可能である。別段の示唆がない限り、ミルナシプランは全ての立体異性体、立体異性体の混合物、ジアステレオマー、およびそれらの薬理学的に許容できる塩を含むことができ、ミルナシプランの鏡像異性的に純粋な形、およびミルナシプランのエナンチオマーの混合物の両方を含む。ミルナシプランおよび他のNE 5-HT SNRI化合物の右旋性および左旋性エナンチオマーを分離および単離する方法は、良く知られている(例えばGrard et al., 2000, Electrophoresis 2000 21:3028-3034を参照)。
【0031】
本発明において用いるのに適した医薬組成物は、活性成分が、治療有効量にまたは予防有効量、即ちFMSおよびその症状の長期治療において、治療的にまたは予防的に利益を得るのに十分な量を含む組成物である。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内であり、特に明細書に開示の観点内である。DRI化合物の典型的な治療量は、1日当たり約1μgから1日当たり1mgの範囲である。本発明の方法を実施するために投与されるDRI化合物の量は、当然のことながらDRI、治療する対象、苦痛の重症度、および投与方法に依存するであろう。例えば、米国特許出願第10/678767号を参照されたい。その全内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0032】
例えば、治療有効量は、うつ治療に用いられるDRI化合物のヒトのデータから決定することができる。治療有効量は、うつ治療に投与されるのと同量が可能であり、またはうつ治療に投与される量よりも多いまたは少ない量が可能である。例えば、うつ治療に投与されるミルナシプランの量は、1日当たり約50mgから1日当たり約400mgの範囲が可能である。したがって、1日当たり約50mgから1日当たり約400mgのミルナシプランを、FMSおよびその症状の長期治療に用いることができる。50mg/日よりも少ない用量のミルナシプランをFMSおよびその症状の長期治療に用いることもまた可能である。例えば、FMS、CFS、または痛みの治療のためのミルナシプラン用量の範囲は、典型的には1日当たり25mgから1日当たり400mgであり、より典型的には1日当たり100mgから1日当たり250mgである。その用量は、1日1回の投与が可能であり、または1日当たり数回または複数回の投与が可能である。
【0033】
ヒトに使用する治療有効量はまた、動物モデルから決定することができる。例えば、ヒトに対する1日用量は、動物において有効であることが分かった血中濃度を成し遂げるように処方することができる。痛みに有用な動物モデルは当業者に公知である。例えば、神経因性疼痛のモデルは、Zeltser et al., 2000, Pain 89:19-24; Bennett et al., 1988, Pain 33:87-107; Seltzer et al., 1990, Pain 43:205-218; Kim et al., 1992, Pain 50:355-363;およびDecosterd et al., 2000, Pain 87:149-158に記載されている。完全フロインドアジュバントを用いた炎症性疼痛の動物モデルはJasmin et al., 1998, Pain 75:367-382に記載されている。Quintero et al., 2000, Pharmacology, Biochemistry and Behavior 67:449-458に記載されている、ストレス誘発性痛覚過敏症モデルは、FMSおよびCFSの動物モデルとして用いることができる。
【0034】
本発明の医薬組成物の投与経路は、例えば、経口、腸内、静脈内、および経粘膜(例えば直腸内)が可能である。好ましい投与経路は経口投与である。経口投与に適した医薬組成物は、錠剤、カプセル、ピル、トローチ剤、粉末または顆粒、あるいは、溶液または懸濁液の液体の形態が可能である。それぞれの形態は、活性成分としての規定量の本発明の化合物を含む。組成物は錠剤として、その目的のために当業者に公知で、通常固形の医薬組成物の調製に用いられる任意の医薬賦形剤を用いて調製することができる。そのような賦形剤の例には、それらに限定されないが、でんぷん、ラクトース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムを含む。ポリビニルピロリドンなどの結合剤もまた本発明の組成物に用いることができる。さらに、活性化合物は、親水性または疎水性のマトリクスを含む錠剤など、放出制御製剤として処方することもできる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、通常の手順、例えば、活性成分と賦形剤の混合物を硬質ゼラチンカプセルの中に取り込むことにより、製剤化したカプセルの形態が可能である。あるいは、活性成分と高分子量のポリエチレングリコールの半固体マトリクスを形成し、硬質ゼラチンカプセルに注入するか、軟質ゼラチンカプセルをポリエチレングリコールまたは食用油の中に分散した活性化合物の溶液で満たすことができる。使用前に再構成する粉末形態(例えば凍結乾燥粉末)もまた検討される。あるいは、注射製剤として使用可能な油性媒体も同様に使用可能である。
【0036】
非経口投与のための液体形態は、注射または持続注入による投与のために処方されうる。注射による投与の受け入れられる経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、および皮下である。静脈内注射のための典型的な組成物は、無菌の等張水溶液または分散液であり、例えば、活性化合物とブドウ糖または塩化ナトリウムとを含む。適する賦形剤の他の例は、注射用ラクトリンゲル液、ブドウ糖を含む注射用ラクトリンゲル液、ブドウ糖を含むNormosol-M、注射用アシル化リンゲル液である。注射製剤には、任意により共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール)、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、安定化剤(例えば、シクロデキストリン)、および/または抗酸化剤(例えば、ピロ硫酸ナトリウム)を含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態によると、DRIは線維筋痛症候群の長期治療のために、他の活性成分と共に補助的に投与することも可能である。例えば、投与可能である活性化合物には、抗うつ剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、食欲減退薬、興奮剤、抗てんかん薬、βブロッカー、および鎮静剤/睡眠薬が含まれる。DRIと併用投与することが可能である化合物のいくつかの例には、それらに限定されないが、モダフィニル、ガバペンチン、プレガバリン、XP13512、プラミペキソール、l-DOPA、アンフェタミン、チザニジン、クロニジン、トラマドール、モルヒネ、三環系抗うつ剤、コデイン、カルバマゼピン、シブトラミン、バリウム、トラゾドン、カフェイン、ニセルゴリン、ビフェメラン、プロプラノロール、アテノロール、およびそれらの組み合わせが含まれる。代表的な実施形態において、DRIはミルナシプランが可能であり、例えばプレガバリンのようなα-2-デルタリガンドと併用が可能である。
【0038】
本明細書に用いられる併用投与には、同じ剤形での化合物の同時投与、別々の剤形での同時投与、および化合物の別々の投与が含まれる。例えば、ミルナシプランはバリウムと同時投与が可能であり、ミルナシプランとバリウムの両方は、同じ錠剤で一緒に処方される。あるいは、ミルナシプランはバリウムと同時投与されるが、ミルナシプランとバリウムの両方が2つの別々の錠剤で存在する。代替法では、ミルナシプランを最初に投与して、次いでバリウムを投与することが可能であり、また逆も可能である。
【0039】
線維筋痛症の治療のためのミルナシプランの単剤治療は、すでに125人の線維筋痛症患者での第2相試験に記載されている。例えば、米国特許出願第10/678767号を参照されたい(その全内容が参照により本明細書に組み込まれている)。この試験において、ミルナシプランは、1日1回または2回、投与量漸増レジメンで最大200mg/日投与した。この試験では、ミルナシプランが、FMSの症状において効果的な急性(短期)の治療を提供することを示した。特に、ミルナシプランの1日2回(BID)および1日1回(QD)投与は、疲労、気分、全体的な健康、および機能において、およそ同等に効果的であった。1日2回投与の方がQD投与よりも忍容性が高く、QD投与よりも痛みの治療においてより効果的であった。患者の全般的印象の変化(PGIC)の結果判定法では、両方のミルナシプラン治療群において、完了した人の70%を超える人が全体的な状態において改善したと報告した一方で、わずか10%が悪くなったと報告した。対照的に、その試験を完了したプラセボ患者の40%が、エンドポイントにおいて同様に悪いと評価した。PGICにおけるプラセボとミルナシプランの間の差は、平均エンドポイントスコアの比較および2値的な改善/非改善の基準の両方において統計的に有意であった。
【0040】
ミルナシプランは、この第2相試験において忍容性が良好であった。ミルナシプランの治療に関連した死亡または重大な有害事象(AE)はなく、報告されたAEの大部分は、重症度が軽度または中等度と評価された。最も多く報告されたAEは悪心であり、ミルナシプラン処置患者の33%において(1回または複数回)報告された。他のすべてのAEは、ミルナシプラン処置患者の9%未満で報告された。200mgQD処置群において、悪心、腹痛、頭痛および他のAEの発現率がより高いことは、より大量を1日1回投与することは、より少量の分割投与量を1日2回投与することと比べて忍容性が低いことを示唆している。めまい、起立性めまい、のぼせ(および顔面紅潮)、および動悸の報告も、QD処置群においてより多く、このことはある有害作用の発生において最高薬物濃度が重要な要素であるかもしれないことを示唆している。
【0041】
以前の試験結果と一貫して、ビリルビンまたはアルカリホスファターゼの増加を伴うことなく、ALTおよび/またはASTの軽度の増加(≦通常の上限の2倍)を7%の患者が経験した。肝酵素の増加がミルナシプラン処置患者のわずか2%において有害事象の結果となった(すなわち酵素の増加がみられた7人の患者のうち2人が「SGOTの増加」または「SGPTの増加」の有害事象と報告された。)。
【0042】
平均心拍数において、1分間に4から8拍の増加がミルナシプラン処置患者で指摘され、これは以前のミルナシプランの試験結果と一貫していた。ミルナシプラン処置群の平均最高血圧と最低血圧はわずかな増加を示すのみだった。仰臥位最高血圧は1.5から3.4mmHgの範囲(プラセボ群では-1.1から2.7mmHg)であり、仰臥位最低血圧は2.6から3.7mmHgの範囲(プラセボ群では-3.5から1.2mmHg)であった。2人(2%)のミルナシプランBID処置患者が高血圧の悪化を報告した。両方の患者はもともと高血圧であり、血圧降下剤治療を受けていた。1人の患者は、早い段階で高血圧の悪化のためにこの試験をやめた。
【0043】
処置に関連する起立性作用における可能性は、以前の試験の間にもまた実証されており、FMS試験の間に6人(6%)のミルナシプラン処置患者が起立性/体位性めまいの有害事象を報告し、1人の患者は、早い段階で中等度の体位性めまいのために継続できなかった。バイタルサインのデータは、プラセボ患者の4%とミルナシプランの患者の7%で1分間の直立のあとに最高血圧が20mmHg以上の低下を1度または複数回経験したことを示した。
【0044】
このようにして、第2相試験は、ミルナシプランを用いた治療はFMSの痛みの症状に対して効果的な急性(短期)の治療法であることを示した。さらに、1日1回または2回のミルナシプラン投与は、疲労(FIQにおいて測定)、痛み(多重測定)、生活の質(多重測定)、および潜在的には気分(Beck測定)を含むFMSの症状の幅広い範囲において、かなり重要であり有益な効果を有した。
【0045】
ミルナシプラン、または他の任意の活性薬剤が、FMSおよびその症状の長期(3ヶ月よりも長い)治療に効果的であることはこれまで示されていない。以下の実施例1に記載の臨床試験では、初めて、そして驚くことに、NSRIを用いたFMSの効果的な長期治療の報告を提供する。
【0046】
次の実施例は単に本発明の例証であり、多くの変化形としてあらゆる手段において本発明の範囲を限定して構成しているものではなく、本発明により包含される同等のものは、当業者において本開示を読むことにより明らかとなるであろう。
【実施例】
【0047】
<実施例1 線維筋痛症の治療のためのミルナシプランの多施設協同二重盲目無作為プラセボ対照比較試験>
この試験の第一の目的は、線維筋痛症候群の治療における、ミルナシプランの安全性および有効性を臨床的および統計的の両方で実証することであった。第一の結果は、第14週および第15週で応答率を評価する複合応答分析であり、第2の分析は第26週および第27週での応答率を評価することであった。
【0048】
この試験の他の目的は、
1.複合応答分析のぞれぞれの構成要素、および疲労、睡眠、気分および認識を含む複数の更なる第2のエンドポイントを基にした、線維筋痛症候群の治療における、100mg/日および200mg/日のミルナシプランの有効性を統計的および臨床的に比較すること、および
2.FMSの患者に対して、1日当たり100および1日当たり200mgのミルナシプランの安全性プロファイルを確立し、比較すること
であった。
【0049】
<方法>
これは、多施設協同無作為二重盲目プラセボ対照比較第3群試験であり、線維筋痛症候群の1990ACR基準とプロトコールに概説したより詳細な組入れ基準を満たす888人の患者を登録した。
【0050】
患者は抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、および測定の有効性を妨害する可能性がありうる他の薬物を洗い流した後、最初の2週間、基準の症状を記録した。
【0051】
患者はプラセボ、100mg/日のミルナシプラン、または200mg/日のミルナシプランを1:1:2の比で投与するよう無作為化した。全ての無作為化した薬剤(プラセボおよびミルナシプラン)は、分割した用量(BID)の形態で投与した。その用量は、以下の概要に示す用量漸増レジメンで投与した。
ステップ1 12.5mg 1日(12.5mg午後)
ステップ2 25mg 2日(12.5mg午前、12.5mg午後)
ステップ3 50mg 4日(25mg午前、25mg午後)
ステップ4 100mg 7日(50mg午前、50mg午後)
ステップ5 200mg 7日(100mg午前、100mg午後)
【0052】
全患者は、全体で27週間のミルナシプランまたはプラセボの曝露のために、3週間の用量増加段階の後、全体で24週間のミルナシプランまたはプラセボの曝露を受ける計画だった。
【0053】
患者は試験評価スケジュールに詳述したように電子日記とさらに紙での評価を記入することを要求された。
【0054】
試験評価スケジュールに詳述したように、有害事象、理学的診断、併用薬、バイタルサイン、および臨床試験データを収集した。
【0055】
この二重盲目試験を成功裏に終了した患者は、さらに15から28週間、治療の非盲検試験への参加適格者であった。
【0056】
この試験の時系列を[図1]に提供する。
【0057】
<評価>
安全性:
ミルナシプランの安全性は、この試験期間の間に収集された、有害事象、バイタルサインの変化、および理学的診断と臨床試験データの変化の頻度および強度を分析することにより評価した。
【0058】
有効性:
独自の患者の電子日記を毎日完結することに加え、次の評価が得られた:
a.主要な変量:患者の大規模な印象の変化(PGIC)および線維筋痛症効果の質問(FIQ)、
b.基準における心理的スクリーニング:M.I.N.I.、
c.多岐にわたる状態の評価:定期的に、評価スケジュールに記載の通り、BDI、睡眠の質のスケール、およびそのASEX、および
d.FMS状態の評価:患者の痛み24時間と7日の想起VAS、SF-36、多角的な能力の自己報告質問(Multiple Ability Self-report Questionnaire) (MASQ、認知機能)、多次元の健康評価の質問(Multidimensional Health Assessment Questionnaire) (MDHAQ)、および多次元の疲労一覧(Multi-dimensional Fatigue Inventory) (MFI)。日々の評価には、現在の痛み(朝、任意の日中、および晩の報告)、日々の想起痛み(朝の報告)、摂取薬物(晩の報告)、この1週間の全体的な痛み(週に一度の報告)、先週の全体的な疲労(週に一度の報告)、およびその痛みのためにその患者が自身のケアが出来ない痛みの程度(週に一度の報告)、が含まれる。
【0059】
この試験の主要エンドポイントは、第一の分析として第24週での評価、第二の分析として第12週での評価を行う、対象の3つの領域での分析を実行する複合応答分析であった。測定される領域は、
1)痛み(1週間の平均のスコアを測定するために、一日の想起痛みスコアとして電子日記によって測定される)、
2)患者全体的(PGIC、1-7のスケールで測定される)、および
3)理学的診察(FIQ-PFにより測定される)。
【0060】
第一の分析のために、痛み領域スコアは第14週と第15週の治療の平均を2つの基準週と比較した計算により測定された。そして第二の分析のためには第26週と第27週の治療を対基準週として計算して測定された。第14週と第15週(または第26/27週)のいずれにおいても、基準値と比較するための患者自身が報告する痛みスコアが手に入れることができない場合、最後の観察が繰り越された。
【0061】
この試験において、プラセボの(複合エンドポイントを基準とした)2元的な応答率は、10から13%の範囲であることが期待されており、ミルナシプラン応答率は、ITT/LOCF基準における活性治療群において27から29%が期待された。これらの応答率の仮定を基にして、治療群毎に無作為化した患者125人(高用量群は250人)は、必要とされる最大のサンプルサイズ(90%パワー)として計算された。第二の分析には、痛み強度の曲線の下の総面積、および臨床診察時に患者が報告した1週間の痛み想起、同様にFMS状態の評価、さらにQOLの測定を含んだ。
【0062】
結果:
応答者は、痛みが基準から30%を超える減少を経験し、PGICの改善を経験した患者として定義された。
【0063】
3ヶ月での応答者の割合は、プラセボ群において35.44%(56/158)、ミルナシプラン100mg/日群において53.33%(72/135)(p=0.001)、およびミルナシプラン200mg/日群において55.00%(143/260) (p<0.001)であった。6ヶ月での応答者の割合は、プラセボ群において32.86%(46/140)、ミルナシプラン100mg/日群において49.59%(60/121) (p=0.002)、およびミルナシプラン200mg/日群において51.74%(119/230) (p<0.001)であった。包括解析集団における結果の要約については[表1]を参照し、Last Observation Carried Forward (LOCF)法、Baseline Observation Carried Forward (BOCF)法および試験完了者の(OC)集団の要約については[表2]を参照。LOCFは、観察が、脱落した患者に対し最後のポイントに繰り越される分析である。LOCF分析は繰り越されたデータを最後の地点で観察されたデータとして扱う。BOCFは、患者に対して応答の評価をするために試験において活性状態でとどまることを要求する分析である。もし患者が如何なる理由でもその試験から脱落したら、その患者は脱落時の痛みやグローバルスコアに関係なく、非応答者として分類される。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
これらの結果は驚くことに、ミルナシプランを線維筋痛症に罹患している対象に連続投与(例えば少なくとも3ヶ月の連日投与)することは、線維筋痛症およびその症状を長期間(少なくとも3ヶ月)緩和することを提供することを確立した。さらに、これらの結果は驚くことに、低用量のミルナシプラン(例えば100mg/日)の連続投与は、長期間の線維筋痛症およびその症状の治療において高用量のミルナシプラン(例えば200mg/日)の連続投与とほぼ同じ効果を示すことを確立した。[図2]
【0067】
本発明は参照により本発明の代表的な実施形態を表現し、描写されている。そのような参照は本発明を限定することを意味するのではなく、そのような如何なる限定も暗示していない。本発明は、この開示の利益を有する関係のある分野において通常の知識を有するものが思いつくように、形態および機能において少なからぬ修正、変更をなされたものおよび同等なものに対して可能である。本発明の表現されたおよび描写された実施形態は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を網羅しているのではない。したがって、本発明は付随する請求項の精神と範囲によってのみ、限定されるように意図されており、全ての点で同等なものであると完全に認められる。本明細書に引用されている全ての引例は、参照により本明細書に完全に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維筋痛症候群の長期治療を必要とする患者に、二重再取り込み阻害剤(DRI)を少なくとも3ヶ月間投与することを含む、線維筋痛症候群の長期治療を必要とする患者に線維筋痛症候群の長期治療を提供する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193216(P2012−193216A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159397(P2012−159397)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2008−533575(P2008−533575)の分割
【原出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(508093344)サイプレス・バイオサイエンス・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】