説明

線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤及びしわ改善剤

【課題】優れた線維芽細胞増殖促進作用を有する線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤を提供する。
【解決手段】オウギヤシ(学名:Borassus flabellifer L.)、オオイタビ(学名:Ficus pumila Linn.)、ツルムラサキ(学名:Basella alba L.)、マンゴ(学名:Mangifera indica Linn.cv.Iven)の葉又は枝、ツワブキ(学名:Farfugium japonicum Kitam.)、イヌバンレイシ(学名:Annona glabra Linn.)、ザボン(学名:Citrus grandis (Linn.)Osbeck)及びヤマモモ(学名:Myrica rubra S.& Z.)の植物体又はその抽出物を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線維芽細胞増殖促進作用を有する線維芽細胞増殖剤、抗老化剤およびしわ改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は身体の表面を被う被膜であって身体最大の器官であり、体の保護作用、体温調節機能、分泌・排出作用、感覚作用など種々の重要な生理機能を担っている。皮膚は、表層を形成する表皮、それを裏打ちする真皮、そして皮下組織および付属器から構成される。皮膚を構成する真皮は、真皮胎生期の中胚葉に由来する結合組織である。この真皮には、主として、コラーゲンやエラスチン等の線維成分、ムコ多糖体や糖タンパク複合体等の基質、線維芽細胞や肥満細胞等の細胞成分が含まれている。
【0003】
このうち、真皮に含まれる線維芽細胞は、コラーゲンやエラスチン等の線維成分およびムコ多糖体や糖タンパク複合体等の基質の産生に深く関与する。そして、線維芽細胞の増殖機能が維持されることによって、皮膚の水分量、柔軟性、弾力性等が良好な状態に保たれ、そしてこれによって多くの人が望む美しく健康的な皮膚(肌)の状態が維持される。
【0004】
一方で、この線維芽細胞の増殖機能は、紫外線、乾燥、過度の皮膚洗浄、加齢、ストレス、睡眠不足、食生活の乱れ、生活習慣の乱れ、女性ホルモンの減少、血流量の減少等により低下することも知られている。そして、線維芽細胞の増殖機能が低下することによって、上記した線維成分および基質の産生量が減少する。これは、皮膚の表面性状および物理的性状に変化を及ぼす要因となり、皮膚のかさつき、肌荒れ、しわ、たるみ等が現れることとなる。
【0005】
このような知見に基づき、線維芽細胞を増殖させることによって、皮膚機能の維持や老化現象の遅延又は改善を図ることを目的として、線維芽細胞増殖促進作用を有する種々の成分および抽出物が提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、布渣葉(シナノキ科に属する落葉高木である破布樹の葉部)からの抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖促進剤が記載され、皮膚の老化症状を効果的に予防・改善できるとされている。特許文献2には、クロレラの水抽出物とアロエベラ抽出物を含む線維芽細胞増殖促進剤が記載され、皮膚老化防止や創傷治癒促進に有効であるとされている。特許文献3には、サフランの雌しべより得られる抽出物を有効成分とする真皮線維芽細胞賦活剤が記載されている。
特許文献4には、ガガイモ科キジョラン属植物の抽出物を有効成分とする真皮線維芽細胞賦活剤が記載され、特許文献5には、ゲンクワニンを有効成分として含有するコラーゲン合成促進剤が記載されている。特許文献6には、ゼラニウム水抽出物、ホウセンカ水抽出物、サンザシ水抽出物から選択される真皮線維芽細胞賦活用組成物が記載され、特許文献7には、ゴマ、サンヤク、トウガラシ、トウキ、ドクダミ、バクモンドウから選ばれる植物抽出物を含有する線維芽細胞増殖促進剤が記載され、特許文献8には、アムラ抽出物を含む線維芽細胞増殖促進剤が記載され、老化現象の遅延・改善に有効であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−45092号公報
【特許文献2】特開平10−36283号公報
【特許文献3】特開2005−41812号公報
【特許文献4】特開2004−217478号公報
【特許文献5】特開2004−137217号公報
【特許文献6】特開2003−342153号公報
【特許文献7】特開平10−45615号公報
【特許文献8】特開2008−24615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、線維芽細胞増殖促進作用を有するものとして従来より植物由来の抽出物が、その安全性や皮膚への刺激の穏やかさを期待して種々開発されているが、今までに該効果を奏することが見出されていなかった新しい植物で新たな線維芽細胞増殖促進効果を奏する植物のさらなる開発が求められている。
本発明はこのような従来の事情に対処してなされたもので、新しい植物由来の線維芽細胞増殖剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、このような現状に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の植物抽出物に優れた線維芽細胞増殖促進作用があり線維芽細胞増殖促進剤として有用であること、また特定の植物抽出物が線維芽細胞増殖促進作用に基づく抗老化剤、しわ改善剤としても有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、オウギヤシ、オオイタビ、ツルムラサキ、マンゴの葉又は枝、ツワブキ、イヌバンレイシ、ザボン及びヤマモモの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする線維芽細胞増殖促進剤である。
【0011】
本発明は、ツルムラサキ又はツワブキの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする抗老化剤である。
【0012】
本発明は、ツルムラサキの植物体又はその抽出物を含むことを特徴とするしわ改善剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤およびしわ改善剤は、線維芽細胞の増殖を促進させてコラーゲン、エラスチンなどの細胞外マトリックスの産生を促し、しわを含む皮膚老化を防止・抑制したり、皮膚損傷を修復することができるものである。また、天然物由来の成分を用いていることから、人又は動物に対して内服又は外用しても安全なものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤およびしわ改善剤は、優れた線維芽細胞増殖促進能を有している。よって、本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤およびしわ改善剤は、医薬品(例えば皮膚外用剤,内服薬),医薬部外品,および化粧料の材料として好適である。また、飲食品(例えばサプリメント,飲料)にも適用することができる。
【0015】
本発明で用いられるオウギヤシ(学名:Borassus flabellifer L.)は、ヤシ科オウギヤシ属の植物である。
オウギヤシは、インドネシアでは雌花をKayu Lanangと称し、強精薬とすることが知られている(世界有用植物事典)。特開2001−220313ではオウギヤシの熱水抽出物がハリ・つやの改善作用があるとされ、特開平10−29928では抗老化剤、コラーゲン産生促進剤に用いられている。
【0016】
本発明で用いられるオオイタビ(学名:Ficus pumila Linn.)は、クワ科イチジク属の植物である。
オオイタビは、リウマチによるしびれと痛み、下痢、淋病、打撲症を治すことが知られている(牧野和漢薬草大図鑑)。特開平11−60496ではヒアルロン酸産生能増強剤として用いられ、WO 07/94312ではビタミンCトランスポーター産生促進剤として用いられている。
【0017】
本発明で用いられるツルムラサキ(学名:Basella alba L.)は、ツルムラサキ科ツルムラサキ属の植物である。
ツルムラサキは、全草を解熱、利尿などの民間薬として用いることがある(世界有用植物事典)。特許第3968729号、特開2008−127379ではムチンを含むアトピー性皮膚炎にツルムラサキが用いられている。
【0018】
本発明で用いられるマンゴ(学名:Mangifera indica Linn.cv.Iven)は、ウルシ科マンゴー属の植物である。
マンゴの果実には清熱する、食滞を消す、利尿する、の効能がある。また、宿食内停、小便赤熱を直すことが知られている(中薬大辞典)。特開2001−39823には、組合せによる保湿性植物抽出物を含有する化粧料組成物として用いられ、特開2008−297215には美肌用組成物として、特開2004−99564CoQ10等との組合せ保湿化粧料として、特開2001−226249には植物水蒸気蒸留水含有化粧料組成物として、特開2006−249051には果実抽出物による線維芽細胞賦活剤として、特開2006−298813にはしわ・たるみ抑制剤及びヒアルロニダーゼ活性阻害剤として用いられている。
【0019】
本発明で用いられるツワブキ(学名:Farfugium japonicum Kitam.)は、キク科ツワブキ属の植物である。
ツワブキの葉に含有されるヘキセナールには強い抗菌作用があることが知られ、根茎は健胃、食中毒、下痢などに用いられる(牧野和漢薬草大図鑑)。中国では全草を風邪、のどの痛みなどに用い、日本では生葉を魚肉中毒に、あぶった葉を化膿や湿疹の治療に用いる(世界有用植物事典)。特公平6−69478には消臭剤の記載がある。
【0020】
本発明で用いられるイヌバンレイシ(学名:Annona glabra Linn.)は、バンレイシ科バンレイシ属の植物である。
イヌバンレイシが含むカウレン類は特開2002−37716では養毛剤に用いられ、毛包上皮系細胞増殖促進効果があるとされている。また特開2004−250445ではグリケーション阻害剤に用いられている。
【0021】
本発明で用いられるザボン(学名:Citrus grandis (Linn.)Osbeck)は、ミカン科ミカン属の植物である。
ザボンの未熟な果実の果皮外層は、痰を化す、気を理える、健胃する、食を消す、の効能がある。また成熟果実は、妊婦の食少ならびに口淡(食欲不振)を治し、胃中の悪気を去る効能がある。さらに、食を消化し、腸胃の気を去り、酒毒を解き、飲酒の人の口臭を治すとされている(中薬大辞典)。特開2001−213719にはザボンを含むミカン科カンキツ属植物水蒸気蒸留水含有化粧料組成物が肌のツヤ・張り改善作用があること、特開2003−12530および特開2003−313136には血管内皮細胞増殖因子産生促進作用やVEGF産生促進作用、しわ改善作用などがあること、特開2004−331567には血管新生阻害作用、しわ改善作用などがあること、特開2007−238464には抗炎症作用があることが記載されている。またWO 06/73181では細胞賦活剤、細胞死抑制剤、および細胞死促進剤として、WO 07/94312ではビタミンCトランスポーター産生促進剤として用いられている。
【0022】
本発明で用いられるヤマモモ(学名:Myrica rubra S.& Z.)は、ヤマモモ科ヤマモモ属の植物である。
ヤマモモの樹皮は収斂および利尿作用があり、下痢、打撲傷に内用し、また単独で用いた煎湯はヒ素の中毒を中和し、火傷、疥癬などの皮膚病に外用して効果がある。中国でも薬用にし、果実は吐き気を抑え、下痢や腹痛の薬とされる(世界有用植物事典)。特許第3926711号では表皮の扁平化を予防、防止、改善する皮膚老化防止用組成物に用いられ、特許第4190216号では紫外線誘発突然変異抑制剤および紫外線誘発突然変異抑制用皮膚外用剤にヤマモモに含まれる化学物質が配合されている。特開平8−104628にはヤマモモに含まれるフラボン類、アントシアニジンにマトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用があるとされ、特開平11−180885では抗アレルギー性皮膚外用剤に用いられ、特開2007−56035では正常ヒト表皮角化細胞の分化抑制剤に用いられ、特開2002−241299ではメイラード反応修復剤に用いられている。
【0023】
上記したように、本発明の各植物の植物体または植物抽出物に線維芽細胞増殖促進作用があるという報告はこれまでになく、本発明者らによって初めて見出されたものである。
また、ツルムラサキ、ツワブキについては、これらの植物の植物体または植物抽出物に抗老化作用、しわ改善作用があることについても知られていないものである。
【0024】
尚、本発明で使用する各植物の植物体又はその抽出物とは、各々の植物体の各種部位(花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子又は全草など)をそのまま又は乾燥したものを粉砕して乾燥粉末としたもの、又は、そのまま或いは乾燥・粉砕後、溶媒で抽出したものである。ただし、マンゴについては、使用部位は葉または枝に限る。
【0025】
抽出物の場合、抽出に用いられる抽出溶媒は通常抽出に用いられる溶媒であれば何でもよく、特にメタノール、エタノールあるいは1,3−ブチレングリコール等のアルコール類、含水アルコール類、アセトン、酢酸エチルエステル等の有機溶媒を単独あるいは組み合わせて用いることができ、このうち特に、アルコール類、含水アルコール類が好ましく、特にメタノール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、含水エタノールまたは含水1,3−ブチレングリコールが好ましい。また前記溶媒は、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で用いることが好ましい。
【0026】
抽出方法は特に制限されるものはないが、通常、常温から、常圧下での溶媒の沸点の範囲であれば良く、抽出後は濾過又はイオン交換樹脂を用い、吸着・脱色・精製して溶液状、ペースト状、ゲル状、粉末状とすれば良い。更に多くの場合は、そのままの状態で利用できるが、必要ならば、その効果に影響のない範囲で更に脱臭、脱色等の精製処理を加えても良く、脱臭・脱色等の精製処理手段としては、活性炭カラム等を用いれば良く、抽出物質により一般的に適用される通常の手段を任意に選択して行えば良い。
【0027】
前記植物体の抽出部位としては、オウギヤシについては葉、オオイタビについては葉、枝または実、ツルムラサキについては葉または茎、マンゴについては葉または枝、ツワブキについては葉または枝、イヌバンレイシについては葉または枝、ザボンについては葉または枝、ヤマモモについては葉または枝が好ましいが、それぞれ他の部位の抽出物も用いることが出来る。ただし、マンゴについては、使用部位は葉または枝に限る。
【0028】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤は前記各植物体又はその抽出物の一種又は二種以上からなるものであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲において他の種々の成分を含有することが出来る。
【0029】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤は、皮膚外用剤に配合してヒトおよび動物に用いることができる他、各種飲食品、飼料(ペットフード等)に配合して摂取させることができる。また医薬製剤としてヒトおよび動物に投与することができる。この際、皮膚外用剤、飲食品などの剤型・形態により乾燥、濃縮又は希釈などを任意に行い調整すれば良い。
【0030】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤を皮膚外用剤に配合する場合、各植物体の抽出物が好ましく、その配合量(乾燥質量)は外用剤全量中、概ね0.0001〜10質量%が好ましい。
【0031】
本発明を皮膚外用剤に適用する場合、上記成分に加えて、さらに必要により、本発明の効果を損なわない範囲内で、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば酸化防止剤、油分、紫外線防御剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0032】
さらに、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属イオン封鎖剤、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸等の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0033】
またこの皮膚外用剤は、外皮に適用される化粧料、医薬部外品等、特に好適には化粧料に広く適用することが可能であり、その剤型も、皮膚に適用できるものであればいずれでもよく、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、軟膏、化粧水、ゲル、エアゾール等、任意の剤型が適用される。
【0034】
使用形態も任意であり、例えば化粧水、乳液、クリーム、パック等のフェーシャル化粧料やファンデーション、口紅、アイシャドウ等のメーキャップ化粧料、芳香化粧料、浴用剤等に用いることができる。
【0035】
また、メーキャップ化粧品であれば、ファンデーション等、トイレタリー製品としてはボディーソープ、石けん等の形態に広く適用可能である。さらに、医薬部外品であれば、各種の軟膏剤等の形態に広く適用が可能である。そして、これらの剤型および形態に、本発明の線維芽細胞増殖促進剤および抗老化剤の採り得る形態が限定されるものではない。
【0036】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤を飲食品や飼料等に配合する場合、植物体またはその抽出物の配合量(乾燥質量)は、それらの種類、目的、形態、利用方法などに応じて、適宜決めることができ、例えば、飲食品全量中に錠剤やカプセル剤等の場合は1〜90質量%が好ましく、その他の飲食品では0.001〜50質量%が好ましい。成人一日当たり植物またはその抽出物の摂取量が約1〜1,000mg程度になるように調製することが好ましい。特に、保健用飲食品等として利用する場合には、本発明の有効成分を所定の効果が十分発揮されるような量で含有させることが好ましい。
【0037】
飲食品や飼料の形態としては、例えば、顆粒状、粒状、ペースト状、ゲル状、固形状、または、液体状に任意に成形することができる。これらには、飲食品等に含有することが認められている公知の各種物質、例えば、結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調製剤などの賦形剤を適宜含有させることができる。
【0038】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤を医薬製剤として用いる場合、該製剤は経口的にあるいは非経口的(静脈投与、腹腔内投与、等)に適宜に使用される。剤型も任意で、例えば錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等の経口用固形製剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤、または、注射剤などの非経口用液体製剤など、いずれの形態にも公知の方法により適宜調製することができる。これらの医薬製剤には、通常用いられる結合剤、崩壊剤、増粘剤、分散剤、再吸収促進剤、矯味剤、緩衝剤、界面活性剤、溶解補助剤、保存剤、乳化剤、等張化剤、安定化剤やpH調整剤などの賦形剤を適宜使用してもよい。
【0039】
本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤を、皮膚外用剤、飲食品、医薬製剤等として用いる場合、線維芽細胞の増殖機能が低下することによって生じる皮膚老化を防止・抑制して皮膚のたるみ・しわ、ハリ・弾力の低下などの症状や疾病の予防・治療等に好適に用いられる。食品に添加した場合には、かかる食品を摂取することで、抗老化効果、線維芽細胞増殖促進効果を内から発揮することが期待される。また、線維芽細胞の増殖が促進されることにより皮膚損傷を修復に役立つものである。
また上記症状や病態等の治療、予防、改善等の生理機能をコンセプトとして、その旨を表示した皮膚外用剤、機能性飲食品、特定保健用食品等に応用することができる。
【0040】
尚、本発明の線維芽細胞増殖促進剤、抗老化剤および、しわ改善剤の皮膚外用剤又は飲食品などへの添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0041】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り質量%で示す。
最初に、本実施例で用いた植物抽出物の調製方法、線維芽細胞増殖効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0042】
1.試料の調製
試料はすべて沖縄県で生育し、沖縄県の有限会社東南植物楽園より入手した。
以下の試料を調製し、被験試料とした。
(1)オウギヤシ抽出物
オウギヤシの葉乾燥物10.34gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、オウギヤシメタノール抽出物1120.2mg(収率:10.8%)を得た。
(2)オオイタビ抽出物
オオイタビの葉、枝および実乾燥物10.3gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、オオイタビメタノール抽出物753.1mg(収率:10.1%)を得た。
【0043】
(3)ツルムラサキ抽出物
ツルムラサキの葉および茎乾燥物10.3gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ツルムラサキメタノール抽出物715.1mg(収率:6.9%)を得た。
(4)マンゴ抽出物
マンゴの葉および枝乾燥物10.7gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、マンゴメタノール抽出物780.2mg(収率:7.3%)を得た。
【0044】
(5)ツワブキ抽出物
ツワブキの葉および枝乾燥物10.67gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ツワブキメタノール抽出物1039.6mg(収率:9.7%)を得た。
(6)イヌバンレイシ抽出物
イヌバンレイシの葉および枝乾燥物10.16gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、イヌバンレイシメタノール抽出物1968.7mg(収率:19.4%)を得た。
【0045】
(7)ザボン抽出物
ザボンの葉および枝乾燥物10.91gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ザボンメタノール抽出物927.6mg(収率:8.5%)を得た。
(8)ヤマモモ抽出物
ヤマモモの葉および枝乾燥物10.87gを室温で1週間80mLのメタノールに浸漬した。次いで、ろ紙ろ過により得た抽出液より溶媒を留去し、ヤマモモメタノール抽出物1417.6mg(収率:13.0%)を得た。
【0046】
2.線維芽細胞増殖効果試験方法およびその結果
上記1.で得られた各植物抽出物を試験試料として用い、次の方法で線維芽細胞増殖効果を測定・評価した。
【0047】
(1)線維芽細胞増殖の試験方法
ヒト0才児包皮由来真皮線維芽細胞を24ウェルプレートに60000細胞/ウェルで播種した。0.5%FBS添加DMEM培地1mlで一晩培養後、試験物質溶液(溶媒:DMSO)を添加した。試験物質溶液添加から2日後に培地を吸引除去した後、0.5%FBS添加DMEM培地1mlで洗浄し、10%AlamarBlue(Biosource International, Inc製)添加の同培地0.5mlに置換し、蛍光の初期値を測定した。3時間培養後、蛍光を再度測定し、細胞増殖率を算出した。植物抽出物の濃度は、0.001質量%および0.003質量%で測定した。
【0048】
(2)線維芽細胞増殖の試験結果
上記の方法による細胞増殖率について、コントロールを100とした時の相対値を算定し、表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、本発明の植物抽出物は、優れた線維芽細胞増殖促進効果を有しており、線維芽細胞増殖促進剤や抗老化剤として有用である。
このため本発明の線維芽細胞増殖促進剤を配合することで、線維芽細胞増殖促進効果を有する皮膚外用剤、経口用組成物(例えば機能剤、飲食品など)、医薬製剤等を提供することができ、線維芽細胞増殖機能の低下に伴う種々の症状や疾病、病態等の予防、防止、改善、治療等に役立つ。
具体的適用例としては、皮膚のたるみ・しわ、ハリ・弾力の低下などの皮膚老化を予防、改善、治療したり、皮膚損傷を修復することが挙げられる。ただしこれら例示に適用が限定されるものでない。
【0051】
以下に、種々の剤型の本発明による線維芽細胞増殖促進剤の配合例を処方例として説明する。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0052】
[配合処方例1:キャンディー]
砂糖 2000mg
水飴 1926mg
線維芽細胞増殖促進剤:オウギヤシ熱水抽出物(乾燥質量) 20mg
コラーゲンペプチド 10mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 2mg
香料 40mg
(合計)4000mg
【0053】
[配合処方例2:錠剤]
ショ糖エステル 70mg
結晶セルロース 74mg
メチルセルロース 36mg
グリセリン 25mg
シカクマメ抽出物 300mg
線維芽細胞増殖促進剤:オオイタビ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 120mg
コラーゲンペプチド 60mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 10mg
N−アセチルグルコサミン 180mg
ヒアルロン酸 150mg
ビタミンE 30mg
ビタミンB6 20mg
ビタミンB2 10mg
α−リポ酸 20mg
コエンザイムQ10 40mg
セラミド(コンニャク抽出物) 55mg
L−プロリン 300mg
(合計)1500mg
【0054】
[配合処方例3:ソフトカプセルA]
食用大豆油 528mg
線維芽細胞増殖促進剤:ツルムラサキ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 90mg
コラーゲンペプチド 45mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 8mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 16mg
ローヤルゼリー 70mg
マカ 60mg
GABA(γ−アミノ酪酸) 30mg
ミツロウ 60mg
ゼラチン 375mg
グリセリン 113mg
グリセリン脂肪酸エステル 105mg
(合計)1500mg
【0055】
[配合処方例4:ソフトカプセルB]
玄米胚芽油 650mg
線維芽細胞増殖促進剤:マンゴの葉・枝熱水抽出物(乾燥質量) 300mg
コラーゲンペプチド 255mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 50mg
レスベラトロール 5mg
エラスチン 180mg
DNA 30mg
葉酸 30mg
(合計)1500mg
【0056】
[配合処方例5:顆粒]
線維芽細胞増殖促進剤:ツワブキ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 140mg
コラーゲンペプチド 70mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 20mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 40mg
ビタミンC 150mg
大豆イソフラボン 270mg
還元乳糖 360mg
大豆オリゴ糖 36mg
エリスリトール 36mg
デキストリン 30mg
香料 24mg
クエン酸 24mg
(合計)1200mg
【0057】
[配合処方例6:ドリンク剤(50mL中)]
線維芽細胞増殖促進剤:イヌバンレイシ熱水抽出物(乾燥質量) 10mg
コラーゲンペプチド 5mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
還元麦芽糖水飴 28mg
エリスリトール 8mg
クエン酸 2mg
香料 1.3mg
N−アセチルグルコサミン 1mg
ヒアルロン酸 0.5mg
ビタミンE 0.3mg
α−リポ酸 0.2mg
コエンザイムQ10 1.2mg
セラミド(コンニャク抽出物) 0.4mg
L−プロリン 2mg
水 残余
【0058】
[配合処方例7:軟膏]
(配合成分) (質量%)
線維芽細胞増殖促進剤:ザボンメタノール抽出物(乾燥質量) 1.0
ステアリルアルコール 18.0
モクロウ 20.0
ポリオキシエチレン(20)モノオレイン酸エステル 0.25
グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
ワセリン 40.0
精製水 残余
【0059】
[配合処方例8:美容液]
(配合成分) (質量%)
(A相)
95%エチルアルコール 10.0
ポリオキシエチレン(20)オクチルドデカノール 1.0
パントテニルエチルエーテル 0.1
線維芽細胞増殖促進剤:ヤマモモ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 1.5
メチルパラベン 0.15
(B相)
水酸化カリウム 0.1
(C相)
グリセリン 5.0
ジプロピレリングリコール 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
カルボキシビニルポリマー 0.2
精製水 残余
【0060】
[配合処方例9:パック]
(配合成分) (質量%)
(A相)
ジプロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 5.0
(B相)
線維芽細胞増殖促進剤:オウギヤシメタノール抽出物(乾燥質量) 0.01
オリーブ油 5.0
酢酸トコフェロール 0.2
エチルパラベン 0.2
香料 0.2
(C相)
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
ポリビニルアルコール(ケン化度90、重合度2000) 13.0
エタノール 7.0
精製水 残余
【0061】
[配合処方例10:乳液]
(配合成分) (質量%)
マイクロクリスタリンワックス 1.0
ミツロウ 2.0
ラノリン 20.0
流動パラフィン 10.0
スクワラン 5.0
ソルビタンセスキオレイン酸エステル 4.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0
プロピレングリコール 7.0
線維芽細胞増殖促進剤:オオイタビ熱水抽出物(乾燥質量) 10.0
亜硫酸水素ナトリウム 0.01
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【0062】
[配合処方例11:クリーム]
(配合成分) (質量%)
固形パラフィン 5.0
ミツロウ 10.0
ワセリン 15.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 2.0
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル 3.0
石けん粉末 0.1
硼砂 0.2
線維芽細胞増殖促進剤:ツルムラサキメタノール抽出物(乾燥質量) 0.05
亜硫酸水素ナトリウム 0.03
エチルパラベン 0.3
香料 適量
精製水 残余
【0063】
[配合処方例12:ドリンク剤(50mL中)]
線維芽細胞増殖促進剤:マンゴの葉・枝熱水抽出物(乾燥質量) 5mg
線維芽細胞増殖促進剤:ツワブキ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 5mg
コラーゲンペプチド 5mg
ハトムギ抽出物(乾燥質量) 2mg
還元麦芽糖水飴 28mg
エリスリトール 8mg
クエン酸 2mg
香料 1.3mg
ヒアルロン酸 0.5mg
ビタミンE 0.3mg
コエンザイムQ10 1.2mg
セラミド(コンニャク抽出物) 0.4mg
L−プロリン 2mg
水 残余
【0064】
[配合処方例13:錠剤]
ショ糖エステル 70mg
結晶セルロース 74mg
メチルセルロース 36mg
グリセリン 25mg
シカクマメ抽出物 300mg
線維芽細胞増殖促進剤:イヌバンレイシ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 40mg
線維芽細胞増殖促進剤:ザボン含水エタノール抽出物(乾燥質量) 50mg
コラーゲンペプチド 60mg
N−アセチルグルコサミン 180mg
ヒアルロン酸 150mg
α−リポ酸 20mg
セラミド(コンニャク抽出物) 55mg
(合計)1060mg
【0065】
[配合処方例14:ソフトカプセルC]
食用大豆油 528mg
線維芽細胞増殖促進剤:ヤマモモ含水エタノール抽出物(乾燥質量) 50mg
線維芽細胞増殖促進剤:オウギヤシ熱水抽出物(乾燥質量) 80mg
コラーゲンペプチド 43mg
ハス胚芽抽出物(乾燥質量) 16mg
ローヤルゼリー 70mg
マカ 60mg
ミツロウ 60mg
ゼラチン 375mg
グリセリン 113mg
グリセリン脂肪酸エステル 105mg
(合計)1500mg

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オウギヤシ、オオイタビ、ツルムラサキ、マンゴの葉又は枝、ツワブキ、イヌバンレイシ、ザボン及びヤマモモの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする線維芽細胞増殖促進剤。
【請求項2】
ツルムラサキ又はツワブキの植物体又はその抽出物から選ばれる一種又は二種以上を含むことを特徴とする抗老化剤。
【請求項3】
ツルムラサキの植物体又はその抽出物を含むことを特徴とするしわ改善剤。

【公開番号】特開2011−195502(P2011−195502A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63995(P2010−63995)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】