説明

線維芽細胞増殖因子産生促進剤、血管内皮細胞増殖因子産生促進剤、及び毛髪化粧料

【課題】毛髪の成長に関与する線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生促進剤を含み、脱毛及び薄毛の予防、改善、並びに髪のツヤ、コシの低下を改善する毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖因子−7及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生促進剤、並びにこれらの剤を含む毛髪化粧料。ナリルチンを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤、及び当該剤を含む毛髪化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な安全性の高い線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤、及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤、並びにこれらの剤を有効成分とする毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢、ストレス、紫外線等の様々な要因により、男性だけでなく女性も毛髪のトラブルを抱える人が増加しており、これに対応して様々な毛髪化粧料が提案されている。従来、毛髪のトラブルとして、男性型脱毛症(壮年性脱毛症)や女性型脱毛症(女性に生じた男性型脱毛症)の研究が行われ、これらの脱毛症に男性ホルモンが関与していることが明らかとなり、毛髪トラブルの改善剤として様々な抗男性ホルモン剤等が提案されている。
【0003】
さらに、最近の研究により、毛髪本数の減少だけでなく、毛髪の成長のサイクル(毛周期)において毛髪の成長時期が短縮し、これにより、毛髪の径(太さ)が細くなることで、薄毛状態や、髪の「ハリ・コシの低下」が生じることも明らかになってきた。毛髪は、休止期、成長期、退行期からなる周期的なヘアサイク(毛周期)に従って成長し、そのサイクルは様々な因子によって調整されている。よって、休止期から成長期へ移行させる因子や成長期の維持に関与する因子の合成を促進することで、毛髪を太く長く成長させることができる。その結果、脱毛、薄毛の予防・改善、さらに、髪のツヤ、コシの低下を改善することができる。ここで、上記休止期から成長期へ移行させる因子及び成長期の維持に関与する因子としては、毛乳頭細胞等で産生される線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インシュリン様成長因子−1(IGF−1)、肝細胞増殖因子(HGF)、又は上皮成長因子(EGF)等が挙げられる。
【0004】
また、毛髪の太さを決める要因の一つとして、毛根の先端にある毛球部内の毛乳頭の大きさが挙げられ、上記因子のうち、VEGFは、毛乳頭細胞の周辺の血管を新生して毛髪の成長を促進させる他、毛乳頭細胞を増殖させることから、このVEFGの産生を促進することで、毛髪を太く長く成長させることが知られている。
【0005】
従来、上述のFGF−7、VEGF等の因子を促進する成分としてミノキシジルやアデノシンが知られており、これらの成分を配合した毛髪化粧料が提案されている(特許文献1,2)。しかし、上記成分は、育毛・養毛効果が不充分であり、又皮膚刺激等の副作用を引き起こすことがあり、十分に効果がありかつ安全性の高いFGF−7及びVEGFの産生促進成分の開発が求められている。
【特許文献1】米国特許第4139619号
【特許文献2】国際公開番号WO2005/044205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、温州ミカンの未成熟時期の果皮及び/又は果実に、すぐれたFGF−7及びVEGFの産生促進作用を奏することを見出して、本発明を完成するに至った。
さらに、本発明者らは、未成熟時期の温州ミカンに特に多く含まれ、成熟に至る過程に於いて減少するフラボノイドであるナリルチンがすぐれたVEGFの産生促進作用を有することも見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
従来、温州ミカンの抽出液がVEGFの産生促進作用を有することについて報告されている(特許文献3)。また、未成熟の温州ミカンの抽出物を有効成分とする育毛剤も報告されている(特許文献4)。しかし、特許文献3には、温州ミカンの果皮がVEGFの産生促進作用を有することのみが開示され、未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物が成熟時期のものと比較してすぐれたFGF−7及びVEGFの産生促進作用を奏することについては何ら開示されていない。また、特許文献4には未成熟の温州ミカンのエキスを含有する育毛剤について開示されているが、その根拠となる育毛効果を示す実施例及び試験例については何ら開示されていない。
また、従来、ナリルチンは温州ミカン等の柑橘類に含まれ、副腎肥大の抑制効果等を奏することについては知られていているが(特許文献5)、ナリルチンがVEGFの産生促進作用を有し、当該作用に基づくすぐれた育毛、養毛効果を奏することについては何ら知られていなかった。
【特許文献3】特開2006−282597号公報
【特許文献4】特開2007−153740号公報
【特許文献5】特開2009−234926号公報
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第一の発明は未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤である。
また、本願の第二の発明はナリルチンを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤である。
また、本願の第三の発明は、柑橘類の未成熟果皮及び/又は果実を圧搾又は抽出処理して得られるナリルチン含有搾汁液又は抽出物を有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤である。
また、本願の第四の発明は、上記第一〜第三の剤を含む毛髪化粧料である。
なお、本明細書において化粧料なる文言は、所謂化粧料のほかに医薬部外品までも含む広義で用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤であって、当該剤が奏する格段にすぐれたFGF−7産生促進作用及びVEGFの産生促進作用により、格段にすぐれた育毛、養毛効果を奏する毛髪化粧料を提供することができる。
また、本発明は、柑橘類の未成熟果皮及び/又は果実を圧搾又は抽出処理して得られるナリルチン含有搾汁液又は抽出物を有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤であって、当該剤が奏する格段にすぐれたVEGFの産生促進作用により、格段にすぐれた育毛、養毛効果を奏する毛髪化粧料を提供することができる。
また、本発明はナリルチンを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤であって、当該剤が奏する格段にすぐれたVEGFの産生促進作用により、格段にすぐれた育毛、養毛効果を奏する毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物を有効成分として含む線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)産生促進剤及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤、並びにこれらの剤を含む毛髪化粧料である。また、本発明は、未成熟時期の温州ミカンに特に多く含まれることが知られているナリルチンを有効成分とするVEGFの産生促進剤、及び当該剤を含む毛髪化粧料である。
【0011】
本発明に於いて、未成熟の温州ミカンとは、一般に果実の着果後の生長過程において、果皮が黄変する以前の段階のものを意味し、着果後2ヶ月ないし3ヶ月を経過した横径が約1.0 cm〜約6.5cmのものを指し、特に、1.0cm〜3.0cmのものが好ましい。また、本発明に於いて用いる温州ミカンの部位は、果皮又は果実が好ましいが、種子やじょうのう膜を含むものを用いても良い。
【0012】
抽出物の調製は、未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実を、必要ならば予め水洗して異物を除いた後、そのまま又は乾燥した上、必要に応じて細切又は粉砕し、浸漬法、向流抽出法、又は超臨界抽出法等の常法に従って抽出溶媒と接触させることで行うことが可能である。
【0013】
抽出溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;エチルエーテル、イソプロピルエーテルなどのエーテル類;n−ヘキサン、トルエン、クロロホルムなどの炭化水素系溶媒などが挙げられ、それらは単独で又は二種以上混合して用いられる。
【0014】
それら抽出溶媒のうちでも、得られる抽出物のFGF−7及びVEGFの産生促進作用の観点から、また毛髪化粧料への幅広い適用が可能であるという点からも、本発明においては水、低級アルコール類又は多価アルコール類などの親水性溶媒が好適である。この親水性溶媒を用いる場合の好ましい例としては、例えば、水、低級アルコール類(特にエタノール)、多価アルコール(特に1,3−ブチレングリコール)の単独使用、水と低級アルコール類(特にエタノール)との混合溶媒、又は水と多価アルコール類(特に1,3−ブチレングリコールもしくはプロピレングリコール)との混合溶媒の使用等が挙げられるが、なかでも1,3−ブチレングリコールの単独使用か、水と1,3−ブチレングリコールの混合溶媒が好ましい。
【0015】
混合溶媒を用いる場合の混合比は、例えば水とエタノールとの混合溶媒であれば、容量比(以下同じ)で1:1〜25:1、水とグリセリンとの混合溶媒であれば1:1〜20:1、水と1,3−ブチレングリコールとの混合溶媒であれば、1:1〜20:1の範囲とすることが好ましい。
【0016】
抽出物の調製に際して、抽出物のpHに特に限定はないが、一般には4〜8の範囲とすることが好ましい。かかる意味で、必要であれば前記抽出溶媒に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性調整剤を配合し、所望のpHとなるように調整してもよい。
【0017】
抽出温度、抽出時間等の抽出条件は、用いる溶媒の種類やpHによっても異なるが、例えば水を抽出溶媒とする場合であれば、抽出温度は40〜90℃の範囲が好ましく、また、抽出時間は、1〜4時間の範囲が好ましい。
【0018】
上記条件により得られる抽出物は、一般にはpHを4〜8に調整した上、これをそのまま化粧料配合剤として使用しても、減圧濃縮等により所望の濃度として使用しても良い。
【0019】
また、本発明に於いて使用されるナリルチンはフラボノイドであり、化合物の市販品でも、化学合成により製造されたものでも、又柑橘類等の天然素材から抽出、精製されたものあっても良い。例えば、ナリルチンを含む柑橘類としては、温州ミカン(Citrus unshiu)、ジャバラ(Citrus jabara)、ユズ(Citrus junos)スダチ(Citrus sudachi)、カボス(Citrus sphaerocarpa)等が挙げられる。
【0020】
柑橘類からナリルチンを抽出、精製する方法としては公知の方法を用いれば良く、例えば、上述した柑橘類の果皮及び/又は果実、或いはそれらの乾燥物を粉砕した後、溶媒(精製水、エタノール溶液、1.3−ブチレングリコール溶液等)で抽出し、その抽出物をHP−20及びシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する方法等が挙げられるが、必ずしも当該方法に限るものではない。
【0021】
本発明で使用するナリルチンは、必ずしも高度に精製されている必要はなく、原料物質や調製の過程で共存するその他の成分との未分離組成物としての形態であっても良い。また、天然素材からナリルチンを抽出する場合は、ナリルチンを多く含む素材自体をそのまま本発明の有効成分としても良い。例えば、ナリルチンを多く含む柑橘類(未成熟の温州ミカン等)の果皮や果実の抽出物或いは搾汁液それ自体をそのまま本発明の有効成分としても良い。
【0022】
本発明の未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実抽出物、或いはナリルチンを有効成分とする毛髪化粧料の剤形としては、例えばトニック、ローション、シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアークリーム等が挙げられる。毛髪化粧料中に於ける上記抽出物又はナリルチンの配合量は、当該毛髪化粧料全体に対して、固形分として、一般に0.001〜1.5重量%の範囲であり、好ましくは0.01〜1.0重量%の範囲である。
【0023】
本発明の毛髪化粧料には、必須成分たる未成熟の温州ミカンの果皮及び/又は果実の抽出物、或いはナリルチンのほかに、毛髪化粧料に用いられる他の活性成分を組み合わせ配合するようにしてもよく、これによって相乗的な育毛効果や脱毛防止効果を期待することもできる。
【0024】
例えば、毛母細胞賦活剤として、ペンタデカン酸グリセリド、ヒノキチオール、感光素、パントテン酸及びその誘導体、マイマイ花エキスなどが、血行促進剤としてセンブリエキス、ゲンチアナエキス、カミツレエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、ニコチン酸誘導体、塩化カルプロニウムなどが、抗男性ホルモン剤として女性ホルモン類(エチニルエストラジオール、エストロンなど)、チョウジエキス、アマモエキス、黒大豆エキスなどが、抗菌・消炎剤としてサリチル酸、グリチルリチン酸カリウム(カンゾウエキス)、ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、メントールなどが挙げられ、その他塩酸ピリドキシン(ビタミンE6)、チオキソロンなどの皮脂分泌抑制剤、オランダカラシエキス、カンファーなどの頭皮刺激剤、サリチル酸、レゾルシンなどの角質溶解剤、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイドなどの毛髪保護剤、ミツイシコンブ等の毛周期の成長維持剤、エルカ酸(cis−13−ドコセン酸)、ゴンドイン酸(cis−11−エイコセン酸)等の高級モノエン酸、さらにはアミノ酸類、ビタミン類などを配合してもよい。
【0025】
本発明の毛髪化粧料には、通常育毛料に用いられる配合成分、例えば油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐・殺菌剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、色素、香料、生理活性物質等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
ここで、油性成分としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、ヒマシ油、大豆油、米油、米胚芽油、ヤシ油、パーム油、カカオ油、メドウフォーム油、シアーバター、ティーツリー油、アボガド油、マカデミアナッツ油、植物由来スクワランなどの植物由来の油脂類;ミンク油、タートル油などの動物由来の油脂類;ミツロウ、カルナウバロウ、ライスワックス、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワランなどの炭化水素類;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、エルカ酸、ゴンドイン酸などの脂肪酸類;ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、2−エチルヘキシルグリセライド、高級脂肪酸オクチルドデシル(ステアリン酸オクチルドデシル等)などの合成エステル類及び合成トリグリセライド類等が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては,例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α−スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級〜第三級脂肪アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N−ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N−アシルアミドプロピル−N′,N′−ジメチル−N′−β−ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤等を使用することができる。
【0028】
乳化剤乃至乳化助剤としては、酵素処理ステビアなどのステビア誘導体、レシチン及びその誘導体、乳酸菌醗酵米、乳酸菌醗酵発芽米、乳酸菌醗酵穀類(麦類、豆類、雑穀など)、ジュアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物等を使用することもできる。
【0029】
保湿剤としては、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等があり、さらにトレハロース等の糖類、乳酸菌醗酵米、ムコ多糖類(例えば、ヒアルロン酸及びその誘導体、コンドロイチン及びその誘導体、ヘパリン及びその誘導体など)、エラスチン及びその誘導体、コラーゲン及びその誘導体、NMF関連物質、乳酸、尿素、高級脂肪酸オクチルドデシル、海藻抽出物、ビャッキュウ抽出物、魚介類由来コラーゲン及びその誘導体、各種アミノ酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0030】
増粘剤としては、例えばアルギン酸、寒天、カラギーナン、フコイダン等の褐藻、緑藻或いは紅藻由来成分、ビャッキュウ抽出物、ペクチン、ローカストビーンガム、アロエ多糖体等の多糖類、キサンタンガム、トラガントガム、グアーガム等のガム類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸共重合体等の合成高分子類;ヒアルロン酸及びその誘導体、ポリグルタミン酸及びその誘導体、グルコシルトレハロースと加水分解水添デンプンを主体とする糖化合物等が挙げられる。
【0031】
防腐・殺菌剤としては、例えば尿素;パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなどのパラオキシ安息香酸エステル類;フェノキシエタノール、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、サリチル酸、エタノール、ウンデシレン酸、フェノール類、ジャマール(イミダゾデイニールウレア)、1,2−ペンタンジオール、各種精油類、樹皮乾留物等がある。
【0032】
紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸エチル、パラジメチルアミノ安息香酸エチルヘキシル、サリチル酸アミル及びその誘導体、パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル、桂皮酸オクチル、オキシベンゾン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−ターシャリーブチル−4−メトキシベンゾイルメタン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、アロエ抽出物等がある。
【0033】
抗酸化剤としては、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、ビタミンE及びその誘導体、イネ抽出物、白芥子加水分解抽出物等がある。
【0034】
また、生理活性成分として、ムラサキシキブ抽出物、ハス種子発酵物、ローヤルゼリー発酵物、カミツレ抽出物(商品名:カモミラET)、コンブ等の海藻の抽出物、アマモ等の海草の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリポソーム化リノール酸など)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸誘導体、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t−シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α−ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ−アミノ−β−ヒドロキシ酪酸、タマサキツヅラフジから得られるビス型アルカロイド、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、米抽出物加水分解物、米糠抽出物、米糠抽出物加水分解物、米醗酵エキス、アナアオサ抽出物、ソウハクヒエキス、ジョアゼイロ(Zizyphus joazeiro)抽出物等がある。
【0035】
次に、実施例(製造例)、処方例、及び試験例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、以下に於いて、部はすべて重量部を、また%はすべて重量%を意味する。
【0036】
製造例1.未成熟の温州ミカンの果皮抽出物
未成熟の温州ミカンの果皮(果実も一部含まれる)の乾燥物50gに250gの30%1,3−ブチレングリコールを加え、60℃で2時間攪拌し、さらに、80℃で1時間攪拌した後、ろ過し、褐色透明の抽出物溶液495gを得た(pH5.2,固形分濃度0.8%)。
【0037】
製造例2.未成熟の温州ミカンの果皮抽出物
未成熟の温州ミカンの果皮(果実も一部含まれる)の乾燥物50gに250gの50%1,3−ブチレングリコールを加え、60℃で2時間攪拌し、さらに、80℃で1時間攪拌した後、ろ過し、褐色透明の抽出物溶液370gを得た(pH5.1,固形分濃度0.8%)。
【0038】
処方例1.育毛料
[成分] 部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
モノニトログアヤコールナトリウム 0.02
塩酸ピリドキシン 0.03
l−メントール 0.8
カモミラエキス 0.3
チョウジエキス 0.3
クララエキス 0.3
オランダカラシエキス 0.3
フルーツリンクルプロテクトエッセンス(注)
0.5
ゲンチアナエキス 2.0
製造例1で得られた抽出物溶液 3.5
トリメチルグリシン 0.5
乳酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 10.0
フェノキシエタノール 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.4
L−アルギニン 適量
エタノール 20
精製水 全量が100部となる量
(注)サンザシエキス、タイソウエキス、グレープフルーツエキス、リンゴ エキス、オレンジ果汁、レモン果汁及びライム果汁の混合液
上記の成分を十分攪拌混合して育毛料を得た。
【0039】
処方例2.育毛料
処方例1の成分中、製造例1で得られた抽出物溶液に代えて製造例2で得られた抽出物溶液を用いるほかは処方例1と同様にして育毛料を得た。
【0040】
処方例3.育毛料
処方例1の成分中、製造例1で得られた抽出物溶液に代えてナリルチンを用いるほかは処方例1と同様にして育毛料を得た。
【0041】
処方例4.育毛料
処方例1の成分中、製造例1で得られた抽出物溶液に代えてナリルチン含有温州ミカン搾汁液を用いるほかは処方例1と同様にして育毛料を得た。
【0042】
処方例5.ヘアートニック
[成分] 部
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
モノニトログアヤコールナトリウム 0.02
塩酸ピリドキシン 0.03
l−メントール 0.8
カモミラエキス 0.3
チョウジエキス 0.3
クララエキス 0.3
オランダカラシエキス 0.3
フルーツリンクルプロテクトエッセンス(注)
0.5
ゲンチアナエキス 2.0
製造例1で得られた抽出物溶液 3.5
トリメチルグリシン 0.5
乳酸 0.2
1,3−ブチレングリコール 2.0
フェノキシエタノール 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.4
L−アルギニン 適量
エタノール 60
精製水 全量が100部となる量
上記の成分を十分攪拌混合してヘアートニックを得た。
【0043】
処方例6.ヘアートニック
[成分] 部
製造例1で得られた抽出物溶液 60.0
コメ抽出物加水分解液(注) 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1
l−メントール 0.05
セファランチン 0.002
エタノール 全量が100部となる量
(注)株式会社テクノーブル製、商品名「オリゼノーブル」
上記の成分を十分攪拌混合してヘアートニックを得た。
【0044】
処方例7.ヘアーフォーム
[原液成分] 部
カチオン化セルロース 3.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 適量
シリコーン油 5.0
ジプロピレングリコール 7.0
エタノール 15.0
防腐剤 0.1
製造例1で得られた抽出物溶液 10.0
精製水 全量が100部となる量
[充填成分] 部
原液 90.0
液化石油ガス 10.0
シリコーン油をジプロピレングリコールとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の溶解物に添加し、ホモミキサーで均一に乳化した後、これを他の成分の混合溶液に添加して原液を得た。この原液を缶に充填し、バルブを装着後ガスを充填した。
【0045】
処方例8.ヘアーフォーム
処方例7の成分中、製造例1で得られた抽出物溶液に代えてナリルチンを用いるほかは処方例1と同様にしてヘアーフォームを得た。
【0046】
処方例9.ヘアークリーム
[A成分] 部
流動パラフィン 15.0
ワセリン 15.0
サラシミツロウ 2.0
防腐剤 0.1
香料 0.1
[B成分]
製造例1で得られた抽出物溶液 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.1
キサンタンガム 0.1
グリセリン 5.0
1、3−ブチレングリコール 2.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
キレート剤 0.1
色素 0.01
精製水 全量が100部となる量 [C成分]
苛性ソーダ 0.05 上記のA成分とB成分をそれぞれ80℃以上に加熱溶解した後、攪拌しながらA成分をB成分に加え、ホモジナイザーを用いて乳化した。これを30℃まで冷却した後、C成分を加えてさらに攪拌混合して乳液を得た。
【0047】
試験例1.製造例1の抽出物溶液のFGF−7及びVEFGの産生促進効果
[試験方法]
ヒト由来毛乳頭細胞ACBRI3047を、無血清CSC培地(DSファーマバイオメディカル)を用いて96穴マイクロプレートに1×10 個/穴播種し、37℃、5.0%COの条件下に1日間プレ培養した後、製造例1の抽出物溶液(試料溶液)を1.0%、2.0%の濃度(当該濃度は溶液としての濃度であり、固形分は1.0%の場合で0.008%,2.0%の場合で0.016%)となるように培地に添加し、同条件でさらに4日間培養した。培養終了後、培養上清の一部(0.1mL)を採取し、FGF−7測定キット(R&D Systems、USA)またはVEGF測定キット(invitrogen、USA)を用いて培養上清中のそれぞれの育毛因子について定量を行った。試料溶液に代えて30%1,3−ブチレングリコール溶液を添加した試料無添加の場合(対照)についても上記と同様の操作を行い、ここに得られたFGF−7合成量またはVEGF合成量に対する各試料添加時のFGF−7合成量またはVEGF合成量の相対値を求め、それぞれの因子の合成率(%)とした。また、試験系が正常に機能しているかを確認するために、試料溶液の代わりに陽性対照として200μMのミノキシジルを添加した場合についても、同様の試験を行った。
【0048】
上記試験例1の結果を以下の表1に示す。
[表1]

【0049】
表1に示す通り、製造例1の抽出物溶液は、格段にすぐれたFGF−7及びVEFGの産生促進効果を奏することが明らかとなった。なお、成熟した温州ミカンの果皮の抽出物についても同様の試験を行ったが、本発明の未成熟の温州ミカンの果皮の抽出物とは異なり、これらの因子のいずれの産生促進効果も示さなかった。なお、陽性対照として用いたミノキシジルも同様に、FGF−7及びVEFG産生促進効果を示したことから、本試験系が正常に行われたことは明らかである。
【0050】
試験例2.ナリルチン及びヘスペリジンのVEFGの産生促進効果試験
また、製造例1の抽出物溶液に代えてナリルチン(EXTRA SYNTHESE社製品)を50%1,3−ブチレングリコール溶液に溶解したものを試料溶液として用いて、上記試験例1と同様の方法によりVEGF合成量を測定した。ここで、製造例1の抽出物溶液にはナリルチンが185mg/100g含まれていることが確認されたことから、製造例1の抽出物溶液の1.0%,2.0%,4.0%濃度(溶液として)のものに含まれるそれぞれ0.00185%、0.0037%,0.0074%の濃度のナリルチンについて、VEGF合成量を測定した。さらに、比較対照として、ナリルチンと同様に未成熟の温州ミカンの果皮及び果実に多く含まれることが知られているヘスペリジンを50%1,3−ブチレングリコール溶液に溶解したものについても同様方法にてVEGF合成量を測定した。製造例1の抽出物溶液にはヘスペリジンが63mg/100g含まれることが確認されたことから、製造例1の抽出物溶液の1.0%,2.0%,4.0%濃度(溶液として)のものに含まれる0.00063%、0.00126%,0.00252%の濃度のヘスペリジン(「和光純薬」製品)について、VEGF合成量を測定した。
【0051】
上記試験例2の結果を表2に示す。
[表2]

【0052】
表2に示す通り、ナリルチンはVEGFの産生促進効果を示した一方、ヘスペリジンは全くVEGFの産生促進効果を示さなかった。なお、陽性対照として用いたミノキシジルも同様に、VEFG産生促進効果を示したことから、本試験系が正常に行われたことは明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
未成熟の温州ミカン(Citrus
unshiu)の果皮及び/又は果実の抽出物を有効成分とする線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)及び血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生促進剤。
【請求項2】
ナリルチンを有効成分とする血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤
【請求項3】
柑橘類の未成熟果皮及び/又は果実を圧搾或いは抽出処理して得られるナリルチン含有搾汁液或いは抽出物を有効成分とする請求項2に記載の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤。
【請求項4】
柑橘類が温州ミカン(Citrus
unshiu)である請求項3に記載の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤。
【請求項5】
請求項1に記載の線維芽細胞増殖因子−7(FGF−7)及び血管内細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤を有効成分として含有する毛髪化粧料。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載の血管内細胞増殖因子(VEGF)産生促進剤を有効成分として含有する毛髪化粧料。
【請求項7】
育毛、養毛料である請求項5又は6に記載の毛髪化粧料。


【公開番号】特開2012−236774(P2012−236774A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104654(P2011−104654)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000162021)共栄化学工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】