説明

締付工具

【課題】操作性に優れた締付工具を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る締付工具1は、駆動装置22を有する本体部2と、本体部2に設けられたグリップ部3と、を備え、グリップ部3の端部が吊り下げ支持される締付工具であって、駆動装置22の操作部22aは、グリップ部3の本体部2との連結部からグリップ部3の端部側に離間した位置に配置されている。このとき、離間距離Lは、少なくとも使用者が順手でグリップ部3を握ることが可能な距離であること、が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付工具に関し、特に生産工場等において吊り下げ支持される締付工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から生産工場等における組立作業において、電源ライン等に吊り下げ支持された締付工具が用いられている。このような締付工具は、一般的に所謂ガンタイプの形状とされている。つまり、例えば特許文献1に開示されている電動工具と略同様の構成とされており、駆動装置を有する本体部と、当該本体部から略直角に設けられたグリップ部と、を備えている。そして、本体部とグリップ部との連結部分近傍に、駆動装置の操作部(トリガー)が配置されており、使用者がグリップ部を握りつつ、人差指でトリガーを操作することで、駆動装置を動作させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−221781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源ライン等に吊り下げ支持された締付工具を使用する場合、使用者は、上下方向を反転させてから、使用する必要があり、使用が煩雑である。
【0005】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、操作性に優れた締付工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る締付工具は、駆動装置を有する本体部と、前記本体部に設けられたグリップ部と、を備え、前記グリップ部の端部が吊り下げ支持される締付工具であって、前記駆動装置の操作部は、前記グリップ部の前記本体部との連結部から前記グリップ部の端部側に離間した位置に配置されている。
【0007】
上記締付工具において、前記離間距離は、少なくとも使用者が順手で前記グリップ部を握ることが可能な距離であること、が好ましい。
【0008】
上記締付工具において、前記グリップ部は、前記本体部に対して前方又は後方に傾斜して設けられていること、が好ましい。
【0009】
上記締付工具において、前記グリップ部は、前記本体部に対して前方又は後方に角度調整可能に設けられていること、が好ましい。
【0010】
上記締付工具において、前記グリップ部は、前記操作部が配置された位置から延在する延在部を備えること、が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明したように、本発明によると、操作性に優れた締付工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施の形態1の締付工具を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の締付工具を概略的に示す側面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態2の締付工具を概略的に示す側面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態3の締付工具を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
<実施の形態1>
本実施の形態に係る締付工具を説明する。締付工具1は、図1及び2に示すように、本体部2、グリップ部3を備えている。本体部2は、ケーシング21、駆動装置22を備えている。ケーシング21は、駆動装置22を保持する。例えばケーシング21は、グリップ部3と一体構造とされており、左右方向に分割可能な構成とされている。このような分割片で左右から駆動装置22を挟み込むことで、駆動装置22を保持している。このとき、ケーシング21は、前後方向に貫通する貫通穴21aを備えており、当該貫通穴21aから駆動装置22の少なくとも前方側の端部が露出する。
【0015】
駆動装置22は、ケーシング21に保持されている。駆動装置22は、操作部22a、電動モータ22b、減速機22c、チャック部22d等を備えている。チャック部22dは、ケーシング21の前方側の貫通穴21aから露出している。このような駆動装置22は、使用者の操作部22aの操作に基づいて、電動モータ22bが制御される。そして、電動モータ22bの駆動力が減速機22cで増幅され、チャック部22dに伝達される。チャック部22dには、図示を省略したが、例えばボルトやナット等を締め付けるためのソケットやエクステンション等が嵌め込まれる。
【0016】
グリップ部3は、本体部2のケーシング21に設けられている。本実施の形態のグリップ部3は、ケーシング21と一体構造とされており、左右方向に分割可能な構成とされている。グリップ部3の端部(ケーシング21との連結部側と逆側の端部)に電動モータ22bに電源を供給するための電源ライン4(図1)が接続されている。電源ライン4から供給される電源は、グリップ部3及び本体部2のケーシング21内の配線を介して電動モータ22bに供給される。
【0017】
このような構成の締付工具1は、図1及び2に示す上下方向の姿勢で、電源ライン4によって吊り下げ支持される。つまり、一般的な締付工具の使用形態に対して上下方向に逆の姿勢で支持されることになる。
【0018】
そこで、本実施の形態の操作部22aは、グリップ部3における本体部2のケーシング21との連結部から当該グリップ部3の端部側に離間した位置に配置されている。このとき、当該離間距離Lは、少なくとも使用者が順手でグリップ部3を握りつつ、人差指で操作部22aを操作可能な距離に設定されることが好ましい。
【0019】
このような構成により、一般的な締付工具のように、一旦締付工具の上下方向を反転させなくても、図2に示すように、締付工具1が吊り下げられた状態の姿勢で、使用者が順手でグリップ部3を握りつつ、人差指で操作部22aを操作することができる。そのため、締付工具を上下方向に反転させる必要が無く、締付工具1の使用性が優れている。
【0020】
しかも、一般的な締付工具では、一旦締付工具の上下方向を反転させた状態で、低い位置の締付作業を行う場合、手首や腰等を曲げる量が多く負担が掛るが、本実施の形態の締付工具は、手首や腰等を曲げる量が少なくて済み負担を軽減できる。
【0021】
また、使用者の腰下部位での作業性を向上させることができる。そのため、例えばエンジン等の組立体の組立作業において、作業台の昇降装置や回転機構等を省略することができ、組立作業における設備の簡便化を図ることができ、しいてはコストの軽減を図ることができる。
【0022】
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、ケーシング21に対するグリップ部3の角度について特に言及していないが、図3に示すように、ケーシング21に対してグリップ部3が前方又は後方に傾斜して設けられていることが好ましい。つまり、締付作業の高さ位置に応じてケーシング21に対するグリップ部3の角度θを設定し、グリップ部3を前方に傾斜させた形態や、後方に傾斜させた形態とすることが好ましい。
【0023】
このような構成により、手首や腰を曲げる量を一層少なくすることができ、操作性を向上させることができる。このとき、操作部22aとチャック部22dとが近くなるように当該角度θを設定すると、締付作業を行う際に締付工具100の端部(即ち、チャック部22d近傍)の位置を把握し易くなり、操作性を向上させることができる。
【0024】
また、グリップ部3が前後方向(即ち矢印方向)に回転可能な構成でケーシング21に連結されていると、締付工具100を汎用性に優れた構成とすることができる。なお、グリップ部3の回転可能な構成は、特に限定されず、例えばラチェット機構等を用いることができる。
【0025】
<実施の形態3>
上記実施の形態1及び2のグリップ部3は、少なくとも使用者が順手でグリップ部3を握ることができる程度の長さに設定されているが、この限りでない。図4に示す締付工具101のように、操作部22aが配置された位置から延在する延在部31を備えていても良い。
【0026】
このような構成により、低所での締付作業において使用者の負担を一層軽減することができる。このとき、延在部31を握って作業を行う場合は、図4に示すように、使用者が延在部31を握りつつ、小指で操作部22aを操作すると良い。但し、操作部22aを操作する指は任意である。
【0027】
ここで、延在部31がグリップ部3に対して取り外し可能な構成とされていることが好ましい。これにより、締付作業の高さ位置に応じて使用者が延在部31を用いるか否かを任意に選択することができる。
【0028】
以上、本発明に係る締付工具の実施の形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【0029】
例えば上記実施の形態では、電源を用いて駆動装置が駆動しているが、動力源は特に限定されず空気などでも良い。
【0030】
例えば上記実施の形態では、ケーシング21とグリップ部3とを一体構造としているが、別構造でも良い。また、ケーシング21は、駆動装置22を保持できる構成であれば良い。
【符号の説明】
【0031】
1、100、101 締付工具
2 本体部
3 グリップ部、31 延在部
4 電源ライン
21 ケーシング、21a 貫通穴
22 駆動装置、22a 操作部、22b 電動モータ、22c 減速機、22d チャック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置を有する本体部と、前記本体部に設けられたグリップ部と、を備え、前記グリップ部の端部が吊り下げ支持される締付工具であって、
前記駆動装置の操作部は、前記グリップ部の前記本体部との連結部から前記グリップ部の端部側に離間した位置に配置されている締付工具。
【請求項2】
前記離間距離は、少なくとも使用者が順手で前記グリップ部を握ることが可能な距離である請求項1に記載の締付工具。
【請求項3】
前記グリップ部は、前記本体部に対して前方又は後方に傾斜して設けられている請求項1又は2に記載の締付工具。
【請求項4】
前記グリップ部は、前記本体部に対して前方又は後方に角度調整可能に設けられている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の締付工具。
【請求項5】
前記グリップ部は、前記操作部が配置された位置から延在する延在部を備える請求項1乃至4のいずれか1項に記載の締付工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82014(P2013−82014A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221599(P2011−221599)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)