説明

締着具

【課題】いわばワンタッチで、履物装着のための足の締着を行える締着具を提供する。
【解決手段】履物3の足の左右位置で、二つのラダーベルト11が設けられる。ラダーベルト11は、基端が回動可能で、先端が自由端となる。各ラダーベルト11に沿ってスライドするラチェット具15により、左右を保持された当て具13が、足に当てられる。ラチェット具15に設けられる解除レバー17は、ラダーベルト11の略自由端方向へ引かれることで、ラダーベルト11との係止を解除する。両ラチェット具の両解除レバーを連結するハンドル19が設けられ、ラダーベルト11の自由端方向向きに、略U字状になる。以上の構成により、当て具13を下肢の足首に向かって押し付けるだけで、いわばワンタッチで、締着を行える。また、ハンドル19をつかんで引くだけで、いわばワンタッチで、締着が解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、履物、例えば下肢装具に設けられて、足を締着するための締着具に関する。
【背景技術】
【0002】
履物、例えば下肢装具、スキー靴、特殊靴などには、足を締着するための締着具が設けられるものがある。
下記特許文献1の締着具は、下肢装具に設けられた左右のベルト状のストラップが、面ファスナーによって連結され、締着を行なう。
下記特許文献2の締着具は、下肢装具に設けられた左右のベルト状のストラップが、ラチェット機能により、相互に連結されて、締着を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−158715
【特許文献2】特表2008−515490
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、たとえば肢体不自由な方が、履物を履くには、左右のベルト状のストラップを面ファスナーによって連結し締着を行なう作業でさえも、時間がかかり、困難な場合がある。
また、下記特許文献1のラチェット機能の連結によって締着を行なう作業は、一方のストラップを、他方のストラップに形成されたスリットへ通すことで、一方のストラップに形成された歯が、他方のストラップのスリットの縁に係止して、ラチェット機能を果たす。このため、ストラップをスリットへ通す等の作業に時間がかかり、困難な場合がある。
【0005】
この発明は、以上の問題点を解決するために、たとえ肢体不自由な方であっても、短時間で容易に、いわばワンタッチで、履物装着のための足の締着を行える締着具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、第一発明は、履物の足の左右位置で基端が回動可能に設けられ先端が自由端となったラダーベルトと、各ラダーベルトに沿ってスライドするラチェット具と、両ラチェット具に左右を保持され足に当てられる当て具と、前記ラチェット具に設けられ前記ラダーベルトの略前記自由端方向へ引かれることで前記ラダーベルトとの係止を解除する解除レバーと、両ラチェット具の両前記解除レバーを連結して略前記自由端方向向きに略U字状に設けられるハンドルと、を有することを特徴とする締着具である。
【0007】
第二発明は、さらに、前記履物は、靴べら型短下肢装具であり、前記ラダーベルトは、履物の足首部位の左右位置で設けられ、前記当て具は、足首に当てられることを特徴とする締着具である。
【発明の効果】
【0008】
第一、又は第二発明によれば、履物を装着する際には、使用者は、両ラダーベルトを回動して前方に倒す。次に、使用者の下肢を履物に載せ、その後に、両ラダーベルトを回動して略上方に立てる。そして、当て具を下肢の足首に向かって押し付けると、この当て具の左右を保持する両ラチェット具が、両ラダーベルトに沿って基端方向へスライドし、このスライドが完了した位置で、ラチェット具はラダーベルトに係止し、当て具は固定される。これにより、当て具による足首の締着が行なわれる。
【0009】
このようにして、両ラダーベルトを回動して略上方に立てた後は、当て具を下肢の足首に向かって押し付けるだけでよいので、いわばワンタッチで、締着を行える。
次に、履物を外す際には、使用者は、略U字状のハンドルをつかんでラダーベルトの略自由端方向へ引く。すると、解除レバーが略自由端方向へ引かれ、ラチェット具はラダーベルトとの係止を解除し、そして、ラダーベルトに沿って略自由端方向へスライドする。これにより、当て具は足首から離れ締着が解除される。
【0010】
このようにして、ハンドルをつかんで引くだけでよいので、いわばワンタッチで、締着が解除される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態に係る締着具を備えた靴べら型短下肢装具を、非装着状態で示す斜視図である。
【図2】図1の機能を、装着状態で示す斜視図である。
【図3】図2のラチェット具を示す断面図である。
【図4】図1のラチェット具を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施形態に係る締着具を、図1から図4に示す。
[全体概略]
図1に示すように、この実施形態に係る締着具1は、履物3としての靴べら型短下肢装具5に設けられるものであり、足首の締着に用いられる。
靴べら型短下肢装具5は、靴べら、すなわちシューホーンの形状を思わせる緩やかな形状が、足の裏側、つまり、ふくらはぎから踵、足裏を覆う。また、足の表側、つまり脛や足首前面、足の甲は、開放された形状になっている。
【0013】
図2に示すように、この開放された形状を閉じるようにして、二つの締着具1が設けられる。一つは、足首を締着する第一の締着具7であり、この実施形態に係るものである。他は、脛の部分を締着する第二の締着具9である。
そして、第一の足首の締着具1においては、ラダーベルト11が、靴べら型短下肢装具5の足首部位の左右位置で、開放形状の縁部に、2本が設けられる。当て具13は、足首に当てられる。
【0014】
ラダーベルト11は、足首部位の左右位置で、基端が回動可能に設けられ、先端が自由端となっている。各ラダーベルト11に沿ってラチェット具15がスライド可能に設けられる。両ラチェット具に左右を保持される当て具13が、スライドにより足に当てられる。ラチェット具15に設けられる解除レバー17は、ラダーベルト11の略自由端方向へ引かれることで、ラダーベルト11との係止を解除する。両ラチェット具の両解除レバーを連結してハンドル19が設けられ、略自由端方向向きにU字状に曲げられている。
【0015】
[ラダーベルト11]
ラダーベルト11は、基端が回動可能に設けられ、先端が自由端となっている。ラダーベルト11は、通常のラチェット機構に備えられるように、片面に多数の歯21を有し、長手方向の断面は、図3や図4に示すように、一つの歯21は、小さな三角形の断面を有する。この三角形は、長い斜辺23と、短い垂直に近い短辺25を有し、うち斜辺23は、自由端方向すなわち前方を向いている。自由端の先端には、ラチェット具15が前方へスライドして、抜けてしまわないように、抜け止27が取付けられる。
【0016】
[当て具13]
当て具13は、両ラチェット具に左右を保持される。ラチェット具15の基端方向へのスライドにより、足に当てられる。当て具13の内側には、クッション材29が設けられ、このクッション材29は、足首の表面にフィットするように、円筒形状が半分に分割された如き、内面形状をなす。
【0017】
[ラチェット具15]
ラチェット具15は、ラダーベルト11に沿ってスライド可能に設けられる。ラチェット具15を構成するスライドベース金具31が、ラダーベルト11の歯21が形成される面とは反対面33に、配置される。このスライドベース金具31の左右縁部には、フランジ部35が形成される。この両フランジ部に対し、回動可能に、係止爪37が設けられる。この係止爪37は、図中左回りに回動して、先端がラダーベルト11の歯21に係止する。図中右回りに回動して、係止が解除される。
【0018】
この係止爪37の後方に隣接して解除レバー17が設けられ、この解除レバー17により係止爪37の左右回りが制御される。
係止爪37や解除レバー17を覆うカバー38が、図示しないコイルスプリングにより、図中左回りに回動可能に設けれる。
【0019】
[解除レバー17]
図3に示すように、解除レバー17は、係止爪37の後方に隣接して設けられ、図示しないコイルスプリングにより図中右回りに付勢される。この右回りの付勢により、解除レバー17の底部に形成された第一テコ39が、係止爪37の後端に形成された突起41を押し上げることで、係止爪37を左回りに付勢し、係止爪37の先端がラダーベルト11の歯21に係止した状態を維持する。
【0020】
図4に示すように、解除レバー17を引いて、コイルスプリングの付勢力に抗し、図中左回りに回動すると、解除レバー17の底部に形成され第一テコ39と係止爪37の突起41を挟んで反対側に設けられて第二テコ43が、係止爪37の突起41を押し下げることになり、係止爪37を右回りに回動し、係止爪37の先端38がダーベルトの歯21から外れ、係止が解除される。
【0021】
[ハンドル19]
ハンドル19は、両端が、両ラチェット具の両解除レバーを連結している。そして、ラダーベルト11の自由端方向向きにU字状に曲げられている。ハンドル19は、柔らかいチューブ材45の中に心材47が通されたもので、この心材47が、解除レバー17の先端に形成された孔を通して固定される。
【0022】
[第二の締着具9]
図1,図2に示すように、脛の部分を締着する第二の締着具9は、靴べら型短下肢装具5の脛の部位にベルト49が設けられる。ベルト49の一端が、靴べら型短下肢装具5の開放形状の一方の縁部に、回動可能に設けられる。このベルト49の中央には、当て材51が設けられ、脛に当てられる。ベルト49の他端は、面ファスナー53により、靴べら型短下肢装具5の開放形状の他方の縁部に、固定される。
【0023】
「実施形態の効果」
図1に示すように、靴べら型短下肢装具5を装着する際には、使用者は、まず、ハンドル19をつかんで両ラダーベルトを回動して前方に倒す。次に、使用者の下肢を靴べら型短下肢装具5の開放された形状の中に載せる。その後に、ハンドル19をつかんで両ラダーベルトを回動して略上方に立てる。そして、図2に示すように、当て具13を下肢の足首に向かって押し付けると、この当て具13の左右を保持する両ラチェット具が、両ラダーベルトに沿って基端方向へスライドする。当て具13が足首に当たることで、このスライドが完了する。その位置で、ラチェット具15は、図3に示すコイルスプリングの働きにより、ラダーベルト11に係止し、当て具13は固定される。これにより、当て具13による足首の締着が行なわれる。
【0024】
このようにして、両ラダーベルトを回動して略上方に立てた後は、当て具13を下肢の足首に向かって押し付けるだけでよいので、いわばワンタッチで、締着を行える。
次に、靴べら型短下肢装具5を外す際には、使用者は、U字状のハンドル19をつかんで、ラダーベルト11の略自由端方向へ引く。すると、図4に示すように、解除レバー17が略自由端方向へ引かれることになり、ラチェット具15はラダーベルト11との係止を解除する。さらにハンドル19を引き続けることで、ラチェット具15は、ラダーベルト11に沿って略自由端方向へスライドする。これにより、当て具13は足首から離れ締着が解除される。
【0025】
このようにして、ハンドル19をつかんで引くだけでよいので、いわばワンタッチで、締着が解除される。
【0026】
「他の実施形態」
以上の実施形態では、ハンドル19は完全なU字状であったが、他の実施形態では、四角形や円に近い不完全なU字状であっても構わない。
以上の実施形態では、履物3は、靴べら型短下肢装具5であったが、他の実施形態では、他の型の下肢装具、あるいはスキー靴、または特殊靴など、他の種類の履物3であっても、本発明を実施することは可能である。
以上の実施形態では、解除レバー17は、係止爪37の後方に隣接して設けられ、テコや突起41の働きで、係止爪37を制御する形態であったが、他の実施形態では、そのようなテコや突起による形態に限らない。また、解除レバーと係止爪が別体ではなく、一体であってもかまわない。すなわち、解除レバーがラチェット具に設けられ引かれることでラダーベルトとの係止を解除するラチェット具であれば、この発明に使用できる。
【符号の説明】
【0027】
1…締着具、3…履物、5…靴べら型短下肢装具、7…第一の締着具、9…第二の締着具、11…ラダーベルト、13…当て具、15…ラチェット具、17…解除レバー、19…ハンドル、21…歯、23…斜辺、25…短辺、27…抜け止、29…クッション材、31…スライドベース金具、33…反対面、35…フランジ部、37…係止爪、39…第一テコ、41…突起、43…第二テコ、45…チューブ材、47…心材、49…ベルト、51…当て材、53…面ファスナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の足の左右位置で基端が回動可能に設けられ先端が自由端となったラダーベルトと、各ラダーベルトに沿ってスライドするラチェット具と、両ラチェット具に左右を保持され足に当てられる当て具と、前記ラチェット具に設けられ前記ラダーベルトの略前記自由端方向へ引かれることで前記ラダーベルトとの係止を解除する解除レバーと、両ラチェット具の両前記解除レバーを連結して略前記自由端方向向きに略U字状に設けられるハンドルと、を有することを特徴とする締着具。
【請求項2】
前記履物は、靴べら型短下肢装具であり、前記ラダーベルトは、履物の足首部位の左右位置で設けられ、前記当て具は、足首に当てられることを特徴とする請求項1に記載の締着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63125(P2013−63125A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202469(P2011−202469)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000181826)社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団 (4)
【Fターム(参考)】