説明

締結ボルト

【課題】被締結部材の圧縮強度が低い場合であっても、過大な締め付けを回避すると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結を実現することができる締結ボルトを得る。
【解決手段】締結ボルト10では、フランジ部16の外周に離型剤18を介して樹脂部20が設けられている。樹脂パネル40を締結した締結状態においては、フランジ部16からの締結力によってフランジ部16外周の樹脂部20が樹脂パネル40に圧着する。したがって、樹脂パネル40の圧縮強度がたとえ低い場合であっても、「割れ」の発生を抑えた締結状態とすることができる。またしかも、樹脂部20は、フランジ部16の表面に塗布された離型剤18を介してフランジ部16の外周に設けられているため、締結時における樹脂パネル40との間の摩擦力によって発生する樹脂部20の捻り変形を大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において所定の被締結部材を締結するための締結ボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、近年、CFRPボデーを採用したものがある。この種のCFRPボデーにおいて、例えば二枚の被締結部材(樹脂パネル材と金属パネル材)を締結する場合に、一般的なボルト&ナットによってこれらのパネル材を挟み込んで高荷重で圧着させて締結すると、所謂「へたり」や「クリープ」を引き起こす可能性がある。このため、締結可能箇所が荷重のあまり掛からない部位に限定され、高荷重部位への適用を制限する必要があった。また、樹脂パネル材をボルトによって直締めにする構造であるため(所謂、メタルタッチではないため)、ネジ部の緩み発生が顕著であった。
【0003】
そこで、このような強度の低い樹脂パネル材であっても適用できるように、所謂「段付ボルト」を適用して締結するように構成した締結構造が提案されている(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0004】
前記特許文献に示すような「段付ボルト」を用いた構造とすることで、樹脂パネル材のような強度の低い被締結部材であっても適用することが可能となる。
【0005】
しかしながら、このような「段付ボルト」を用いた従来の締結構造では、ある程度は荷重の制限を解消して適用の範囲を拡大することができるものの、圧縮強度がかなり低い被締結部材を締結する場合には依然として「割れ」の発生を抑えた確実な締結を実現することができず、また過大な締め付けを回避することもできないという欠点が残存しており、このための更なる対策が望まれていた。
【特許文献1】特開2003−181938号公報
【特許文献2】特開2007−161047号公報
【特許文献3】特開平10−184633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、被締結部材を締結するに際し、当該被締結部材の圧縮強度が低い場合であっても、過大な締め付けを回避すると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結を実現することができる締結ボルトを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の締結ボルトは、ナットに螺合するネジ部と、前記ネジ部と一体に設けられ、前記ネジ部がナットに螺合した締結状態において前記ナットに直接に圧接する段付部と、前記段付部の頭頂部分に前記段付部よりも大径に一体に設けられ、前記締結状態において被締結部材を前記ナットとの間で挟持するフランジ部と、前記フランジ部の表面に塗布された離型剤と、弾性を有し、前記離型剤を介して前記フランジ部の外周に一体的に設けられ、前記締結状態において前記フランジ部からの締結力によって被締結部材に圧着する樹脂部と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項1記載の締結ボルトでは、フランジ部の外周(ボルト頭部)に離型剤を介して樹脂部が設けられている。
【0009】
締結ボルトのネジ部がナットに螺合して被締結部材(例えば、樹脂パネル材)を締結した締結状態においては、締結ボルトのフランジ部とナットとの間で被締結部材が挟持され、しかも、フランジ部と被締結部材との間に樹脂部が介在して樹脂部が被締結部材に圧着した状態で被締結部材が挟持される。すなわち、フランジ部は直接には被締結部材に接することなく、フランジ部からの締結力によってフランジ部外周の樹脂部が被締結部材に圧着する。
【0010】
したがって、樹脂部の弾性力をボルト軸方向に沿って被締結部材へ十分に付与することができ、被締結部材の圧縮強度がかなり低い場合であっても、「割れ」の発生を抑えた締結状態とすることができる。またしかも、弾性を有した樹脂部が被締結部材に圧着して締結するため、過大な締め付けを回避することができ、「クリープ」を規制しながら締結することができる。このため、例えば樹脂パネル材のような強度の低い被締結部材であっても適用することが可能となり、荷重の制限が解消されて適用の範囲を拡大することができる。
【0011】
さらに、樹脂部が被締結部材に圧着して締結するため、被締結部材との間のシール性を確保すると共に電食をも防止することができる。
【0012】
またここで、締結ボルトの樹脂部は、フランジ部の表面に塗布された離型剤を介してフランジ部の外周に設けられているため、締結時における被締結部材との間の摩擦力によって発生する樹脂部の捻り変形を大幅に低減することができる。
【0013】
さらに、弾性を有した樹脂部が被締結部材に圧着して締結するため、樹脂部の弾性変形範囲内において被締結部材の板厚許容レンジを有することになり、被締結部材の板厚のバラツキの影響を受け難く、ガタツキを低減することができる。
【0014】
またしかも、この締結状態においては、段付部がナット(ナットと一体化した実質的な固定部分を含む)に直接に圧接して所謂「メタルタッチ」締結状態となる。したがって、ボルト軸力を十分に確保することができ、緩みが防止される。
【0015】
このように、請求項1記載の締結ボルトでは、シール性を確保すると共に緩みを防止できるに留まらず、被締結部材の圧縮強度が低い場合であっても過大な締め付けを回避できると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結状態とすることができ、しかも、樹脂部はフランジ部の表面に塗布された離型剤を介してフランジ部の外周に設けられているため、締結時における被締結部材との間の摩擦力によって発生する樹脂部の捻り変形を大幅に低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明の締結ボルトは、シール性を確保すると共に緩みを防止できるに留まらず、被締結部材の圧縮強度が低い場合であっても過大な締め付けを回避できると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結状態とすることができ、適用の範囲が拡大し、しかも、締結時における樹脂部の捻り変形を大幅に低減することができるという優れた効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1乃至図5を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1には、本発明の第1実施形態に係る締結ボルト10の構成が、締結前の状態で断面図にて示されている。また、図2には、この締結ボルト10の構成が、締結後の状態で断面図にて示されている。
【0019】
締結ボルト10は、被締結部材としての樹脂パネル40を金属パネル42に締結するためのものであり、金属パネル42にはナットとしてのかしめナット44が取り付けられている。
【0020】
かしめナット44は、例えばスチール製とされており、その軸部が金属パネル42の所定位置に一側から挿通された後に基端部がかしめられることで(座屈して)、軸状に立設して取付け固定されている。このかしめナット44に、締結ボルト10が螺合する。
【0021】
締結ボルト10は、かしめナット44に螺合するネジ部12を有しており、さらに、このネジ部12に連続して段付部14が一体に設けられている。段付部14は、樹脂パネル40の取付孔46よりも僅かに小径に形成されると共に、樹脂パネル40の板厚寸法よりも僅かに厚く(軸方向寸法が大きく)形成されており、ネジ部12がかしめナット44に螺合した締結状態においてこのかしめナット44の一端面に直接に圧接するようになっている。
【0022】
また、締結ボルト10は、段付部14に連続してフランジ部16が一体に設けられている。フランジ部16は、段付部14の頭頂部分に段付部14よりも大径でしかも樹脂パネル40の取付孔46よりも大径に形成されており、ネジ部12がかしめナット44に螺合した締結状態において樹脂パネル40をかしめナット44との間で挟持することができる。
【0023】
さらに、フランジ部16の外周には、離型剤18を介して樹脂部20が一体的に設けられている。離型剤18はフランジ部16の表面に塗布されており、この離型剤18が樹脂部20とフランジ部16との間に介在した構成となっている。
【0024】
樹脂部20は弾性を有しており、離型剤18を介してフランジ部16の外周に一体的に設けられており、ネジ部12がかしめナット44に螺合した締結状態においてフランジ部16からの締結力によって樹脂パネル40に圧着するようになっている。すなわち、締結ボルト10の締結状態においては、フランジ部16は直接には樹脂パネル40に接することなく、フランジ部16と樹脂パネル40との間に樹脂部20が介在してこの樹脂部20がフランジ部16からの締結力によって樹脂パネル40に圧着し、この状態で樹脂パネル40が挟持される構成となっている。
【0025】
以下に、本第1実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0026】
上記構成の締結ボルト10では、フランジ部16の外周(ボルト頭部)に離型剤18を介して樹脂部20が設けられている。
【0027】
図2に示す如く、締結ボルト10のネジ部12がかしめナット44に螺合して樹脂パネル40を締結した締結状態においては、締結ボルト10のフランジ部16とかしめナット44との間で樹脂パネル40が挟持され、しかも、フランジ部16と樹脂パネル40との間に樹脂部20が介在してこの樹脂部20が樹脂パネル40に圧着し、この状態で樹脂パネル40が挟持される。すなわち、フランジ部16は直接には樹脂パネル40に接することなく、フランジ部16からの締結力によってフランジ部16外周の樹脂部20が樹脂パネル40に圧着する。
【0028】
したがって、樹脂部20の弾性力をボルト軸方向に沿って樹脂パネル40へ十分に付与することができ、樹脂パネル40の圧縮強度がたとえ低い場合であっても、「割れ」の発生を抑えた締結状態とすることができる。またしかも、弾性を有した樹脂部20が樹脂パネル40に圧着して締結するため、過大な締め付けを回避することができ、「クリープ」を規制しながら締結することができる。このため、例えば薄肉の樹脂パネル材のような強度の低い被締結部材であっても適用することが可能となり、荷重の制限が解消されて適用の範囲を拡大することができる。
【0029】
さらに、樹脂部20が樹脂パネル40に圧着して締結するため、樹脂パネル40との間のシール性を確保すると共に電食をも防止することができる。
【0030】
またここで、この締結ボルト10の樹脂部20は、フランジ部16の表面に塗布された離型剤18を介してフランジ部16の外周に設けられているため、締結時における樹脂パネル40との間の摩擦力によって発生する樹脂部20の捻り変形を大幅に低減することができる。
【0031】
さらに、弾性を有した樹脂部20が樹脂パネル40に圧着して締結するため、樹脂部20の弾性変形範囲内において樹脂パネル40の板厚許容レンジを有することになり、樹脂パネル40の板厚のバラツキの影響を受け難くなり、ガタツキを低減することができる。
【0032】
またしかも、この締結状態においては、段付部14がかしめナット44の一端面に直接に圧接して所謂「メタルタッチ」締結状態となる。したがって、ボルト軸力を十分に確保することができ、緩みが防止される。
【0033】
このように、本第1実施形態に係る締結ボルト10では、シール性を確保すると共に緩みを防止できるに留まらず、樹脂パネル40の圧縮強度が低い場合であっても過大な締め付けを回避できると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結状態とすることができ、適用の範囲が拡大する。またしかも、樹脂部20はフランジ部16の表面に塗布された離型剤18を介してフランジ部16の外周に設けられているため、締結時における樹脂パネル40との間の摩擦力によって発生する樹脂部20の捻り変形を大幅に低減することができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0035】
なお、前記第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0036】
図3には本発明の第2実施形態に係る締結ボルト30の構成が、締結後の状態で断面図にて示されている。また、図4には、この締結ボルト30による締結状態が側面図にて示されている
【0037】
締結ボルト30は、図5に示す如く、被締結部材としての樹脂製のフロントフェンダーパネル50を金属製のエプロンアッパメンバ52に締結するためのものであり、エプロンアッパメンバ52にはナットとしてのウェルドナット54が一体に固着されている。このウェルドナット54に、締結ボルト30が螺合する。
【0038】
さらにこの場合、締結ボルト30のネジ部12がウェルドナット54に螺合した締結状態においては、締結ボルト30の段付部14が、エプロンアッパメンバ52のウェルドナット54固着部における挿通孔56の周縁部分(すなわち、実質的なウェルドナット54の一端面に相当)に直接に圧接するようになっている。
【0039】
他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0040】
以下に、本第2実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0041】
この締結ボルト30においても、図3に示す如く、締結ボルト30のネジ部12がウェルドナット54に螺合してフロントフェンダーパネル50を締結した締結状態においては、締結ボルト30のフランジ部16とウェルドナット54との間でフロントフェンダーパネル50が挟持され、しかも、フランジ部16とフロントフェンダーパネル50との間に樹脂部20が介在してこの樹脂部20がフロントフェンダーパネル50に圧着し、この状態でフロントフェンダーパネル50が挟持される。すなわち、フランジ部16は直接にはフロントフェンダーパネル50に接することなく、フランジ部16からの締結力によってフランジ部16外周の樹脂部20がフロントフェンダーパネル50に圧着する。
【0042】
したがって、樹脂部20の弾性力をボルト軸方向に沿ってフロントフェンダーパネル50へ十分に付与することができ、フロントフェンダーパネル50の圧縮強度がたとえ低い場合であっても、「割れ」の発生を抑えた締結状態とすることができる。またしかも、弾性を有した樹脂部20がフロントフェンダーパネル50に圧着して締結するため、過大な締め付けを回避することができ、「クリープ」を規制しながら締結することができる。
【0043】
さらに、樹脂部20がフロントフェンダーパネル50に圧着して締結するため、フロントフェンダーパネル50との間のシール性を確保すると共に電食をも防止することができる。
【0044】
またここで、この締結ボルト30の樹脂部20は、フランジ部16の表面に塗布された離型剤18を介してフランジ部16の外周に設けられているため、締結時におけるフロントフェンダーパネル50との間の摩擦力によって発生する樹脂部20の捻り変形を大幅に低減することができる。
【0045】
さらに、弾性を有した樹脂部20がフロントフェンダーパネル50に圧着して締結するため、樹脂部20の弾性変形範囲内においてフロントフェンダーパネル50の板厚許容レンジを有することになり、フロントフェンダーパネル50の板厚のバラツキの影響を受け難くなり、ガタツキを低減することができる。
【0046】
またしかも、この締結状態においては、段付部14が、エプロンアッパメンバ52のウェルドナット54固着部における挿通孔56の周縁部分(すなわち、実質的なウェルドナット54の一端面に相当)に直接に圧接して所謂「メタルタッチ」締結状態となる。したがって、ボルト軸力を十分に確保することができ、緩みが防止される。
【0047】
このように、本第2実施形態に係る締結ボルト30においても、シール性を確保すると共に緩みを防止できるに留まらず、フロントフェンダーパネル50の圧縮強度が低い場合であっても過大な締め付けを回避できると共に「割れ」の発生を抑えた確実な締結状態とすることができ、適用の範囲が拡大する。またしかも、樹脂部20はフランジ部16の表面に塗布された離型剤18を介してフランジ部16の外周に設けられているため、締結時におけるフロントフェンダーパネル50との間の摩擦力によって発生する樹脂部20の捻り変形を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係る締結ボルトの構成を示す締結前の状態における断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る締結ボルトの構成を示す締結後の状態における断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る締結ボルトの構成を示す締結後の状態における断面である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る締結ボルトの構成を示す締結状態における側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る締結ボルトが適用された車両のボルト締結部分周辺の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 締結ボルト
12 ネジ部
14 段付部
16 フランジ部
18 離型剤
20 樹脂部
30 締結ボルト
40 樹脂パネル(被締結部材)
42 金属パネル
44 かしめナット(ナット)
50 フロントフェンダーパネル(被締結部材)
52 エプロンアッパメンバ
54 ウェルドナット(ナット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットに螺合するネジ部と、
前記ネジ部と一体に設けられ、前記ネジ部がナットに螺合した締結状態において前記ナットに直接に圧接する段付部と、
前記段付部の頭頂部分に前記段付部よりも大径に一体に設けられ、前記締結状態において被締結部材を前記ナットとの間で挟持するフランジ部と、
前記フランジ部の表面に塗布された離型剤と、
弾性を有し、前記離型剤を介して前記フランジ部の外周に一体的に設けられ、前記締結状態において前記フランジ部からの締結力によって被締結部材に圧着する樹脂部と、
を備えたことを特徴とする締結ボルト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−71322(P2010−71322A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236538(P2008−236538)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】