締結具
【課題】準備かつ締結作業が容易な締結具を提供する。
【解決手段】第1パネルに結合すると共に、貫通孔18が形成された第1部材2と、第2パネルに結合すると共に、結合片46が突設された第2部材3と、貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材4とを有する締結具1であって、互いに対向する貫通孔の孔壁及び連結部材の外面の一方には、ガイド凸部56が形成され、貫通孔の孔壁及び連結部材の外面の他方には、連結部材を貫通孔に挿入する際にガイド凸部に係合し、連結部材を第1位置に導くガイド溝21が形成され、ガイド溝の貫通孔の一端側における端部には、ガイド凸部に係合し、連結部材を貫通孔に挿入された状態かつ第1位置に保持する係止面が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】第1パネルに結合すると共に、貫通孔18が形成された第1部材2と、第2パネルに結合すると共に、結合片46が突設された第2部材3と、貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材4とを有する締結具1であって、互いに対向する貫通孔の孔壁及び連結部材の外面の一方には、ガイド凸部56が形成され、貫通孔の孔壁及び連結部材の外面の他方には、連結部材を貫通孔に挿入する際にガイド凸部に係合し、連結部材を第1位置に導くガイド溝21が形成され、ガイド溝の貫通孔の一端側における端部には、ガイド凸部に係合し、連結部材を貫通孔に挿入された状態かつ第1位置に保持する係止面が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を連結するために使用される締結具に関し、例えば壁パネルや、棚等の部材を連結するために使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、組立家具(ノックダウン製品)において、締結具(連結具)を使用して2枚の板部材を互いに直交した状態で結合したものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る締結具は、互いに直交する垂直片部と水平片部とを有してL字状をなし、垂直片部及び水平片部のそれぞれにビス挿入孔と仮止め用突軸を有している。仮止め用突軸が棚の側板及び水平板(天板、仕切板、底板等)に形成されたピン穴に嵌合することによって、側板及び水平板が締結具を介して直角に仮止めされる。そして、ビス挿入孔を通過して側板及び水平板に螺着するビスによって締結具と側板及び水平板とが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−39308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る締結具は、ビスによる螺着作業が必要であるため、作業性が悪いという問題がある。また、締結具と締結すべき各部材との仮止め及び締結は、各部材が所定の位置に配置された状態で行わなければならないため、作業が困難であるという問題がある。また、このような締結具は、取り扱い性や準備が容易なことが要求されている。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、準備かつ締結作業が容易な締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、締結対象となる第1被締結部材(100)に結合すると共に、貫通孔(18)が形成された第1部材(2)と、締結対象となる第2被締結部材(101)に結合すると共に、前記貫通孔の一端側と対向する部分に結合片(46)が突設された第2部材(3)と、前記貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材(4)とを有し、前記連結部材が前記第1位置にあるときに、前記連結部材と前記結合片とは係合せず、前記第1部材と前記第2部材とは分離可能である一方、前記連結部材が前記第2位置にあるときに、前記連結部材が前記結合片に係合し、前記第1部材と前記第2部材とが係合した状態に維持される締結具(1)であって、互いに対向する前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の一方には、ガイド凸部(56)が形成され、前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の他方には、前記連結部材を前記貫通孔に挿入する際に前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記第1位置に導くガイド溝(21)が形成され、前記ガイド溝の前記貫通孔の前記一端側における端部には、前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記貫通孔に挿入された状態かつ前記第1位置に保持する係止部(30)が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1部材を第1被締結部材に結合し、第2部材を第2被締結部材に結合した上で、第1部材と第2部材とを連結部材を解して連結することができる締結具を提供することができる。また、ガイド凸部をガイド溝に挿入し、連結部材を貫通孔に押し込むだけで、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置することができ、連結部材の第1部材への組み付けが容易である。
【0008】
本発明の他の側面は、前記係止部は、前記ガイド溝の幅を狭める方向に突設されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ガイド凸部と係止部とが確実に係合し、連結部材の第1部材からの脱離を防止することができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記ガイド溝は、底部(22)と、前記底部の両側に配置された第1側壁部(23)及び第2側壁部(24)を有し、前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側に前記係止部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ガイド凸部と係止部とが確実に係合し、連結部材の第1部材からの脱離を防止することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置へと変位する際には、前記ガイド凸部が前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側における端部を前記第2側壁部から離間する方向に乗り越えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、連結部材を第1位置に保持することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記第2側壁部は、前記第1側壁部よりも前記貫通孔の前記一端側に延出していることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、連結部材の第1位置から第2位置への回転方向を一方に規制することができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記第1部材は、前記貫通孔の前記一端に連続する受容凹部(12)を有し、前記第2部材は、少なくとも一部が前記受容凹部に嵌合し、前記結合片は前記第2部材の前記受容凹部に嵌合した部分に突設されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1部材と第2部材との相対位置を定め易くなる。
【0018】
本発明の他の側面は、前記連結部材及び前記結合片の互いに係合する部分の少なくとも一方には、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置に回転する際に、前記第2部材が前記貫通孔に近接する方向に変位させるカム(58)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、連結部材の回転に応じて、第1部材と第2部材との係合をより確実にすることができる。
【0020】
本発明の他の側面は、前記第1部材及び前記連結部材の一方には、小孔(65)が形成され、前記第1部材及び前記連結部材の他方には、前記連結部材が第2位置に位置するときに前記小孔に嵌合する突起(66)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、連結部材が第2位置に到達したときに、クリック感及びクリック音を発生させることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、前記第1部材又は前記連結部材は、前記連結部材の前記第1位置から前記第2位置への回転方向を示す表示(71)を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、使用者は連結部材の回転方向を認識することができる。
【0024】
本発明の他の側面は、前記第1部材は、第1の表示(72)を有し、前記連結部材は、前記連結部材が前記第2位置に位置するときに前記第1の表示に対応する第2の表示(73)を有することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、使用者は連結部材の回転位置を認識することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、準備かつ締結作業が容易な締結具を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る締結具の分解斜視図
【図2】実施形態に係る締結具の斜視図
【図3】実施形態に係る連結部材の斜視図
【図4】第1部材を底面側から見た斜視図であって、連結部材を第1部材に連結する際の途中の形態を示す図
【図5】第1部材を底面側から見た斜視図であって、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置した形態を示す図
【図6】図5のVI−VI断面図であって、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置した形態を示す断面図
【図7】実施形態に係る締結具を使用した第1パネル及び第2パネルの締結構造を示す分解斜視図
【図8】第2部材を第1部材に挿入した形態であって、連結部材が第1位置にある形態を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】第1部材と第2部材とが連結した形態であって、連結部材が第2位置にある形態を示す断面図
【図11】図10のXI−XI断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を壁パネルの締結具に適用した実施形態を詳細に説明する。壁パネルは、例えばシステムキッチンや、ユニットバス、洗面台、パーティション、棚等の公知の様々な壁面を構成するパネルであってよい。
【0029】
図1に示すように、締結具1は、第1部材2と、第2部材3と、連結部材4とから構成されている。第1部材2、第2部材3及び連結部材4は、それぞれ樹脂を射出成形品である。樹脂は、例えばポリアセタール(POM)等の公知の樹脂であってよい。
【0030】
第1部材2は、略長方形の天板10と、天板10の縁部から下方へと垂直に立設された4つの側板11とを有し、底部が下方に向けて開口した略直方体状の箱形を呈する。天板10の長手方向を第1部材2の長手方向、天板10の短手方向を第1部材2の短手方向とする。天板10及び4つの側板11によって画成された下方に開口する凹部を受容凹部12とする(図4及び6参照)。側板11の1つは、外面が平面に形成され、1つ以上(本実施形態では2つ)の結合脚13が突設されている。結合脚13は、円筒状をなし、その外周面には周方向に延在する環状の爪14が複数形成されている。爪14は、結合脚13の先端側から基端側に進むにつれて結合脚13の径方向外方に突出するとともに、その基端側に逆止面を備えている。爪14は、結合脚13の長手方向に列設されている。複数の爪14は、結合脚13の長手方向に沿って延在するスリット15によって切り欠かれている。スリット15が逃げ溝として機能することによって、爪14は結合脚13の周方向に若干撓むことができる。
【0031】
天板10には、外面と受容凹部12側を向く内面とを連通する断面円形の貫通孔18が形成されている。貫通孔18の外面側の開口端(外端)は、段部19を介して段違いに拡径された拡径部20を形成している。
【0032】
図1及び4に示すように、貫通孔18の孔壁(内壁)であって、第1部材2の短手方向に対応する位置には、貫通孔18の軸線A方向に延びるガイド溝21が形成されている。ガイド溝21は、貫通孔18の孔壁に対して、径方向外方側に位置する底部22と、底部22の側部から略垂直に立設され、貫通孔18の孔壁に連続する第1側壁部23及び第2側壁部24とを有し、断面が略四角形に形成されている。貫通孔18の受容凹部12側の端部(内端)では、ガイド溝21の第1側壁部23及び第2側壁部24のそれぞれが底部22よりも受容凹部12側に延出し、第1側壁内端部25及び第2側壁内端部26を形成している。また、第2側壁内端部26は、第1側壁内端部25よりも受容凹部12側に突出している。
【0033】
第2側壁部24の第1側壁部23側を向く面は、軸線Aと平行に延在している。一方、第1側壁部23の第2側壁部24側を向く面は、貫通孔18の外端から内端へと進むにつれて第2側壁部24に近接するように軸線Aに対して傾斜した傾斜面27を形成している。傾斜面27により、ガイド溝21は、貫通孔18の外端から内端へと進むにつれて幅(貫通孔18の周方向における幅)が狭くなっている。
【0034】
第1側壁部23のガイド溝21側と相反する側には、貫通孔18の内端から軸線A方向に沿って延びる肉抜き部28が凹設されている。肉抜き部28が設けられることによって、第1側壁部23は肉抜き部28側に撓み易く(傾倒し易く)なっている。
【0035】
第1側壁内端部25は、軸線Aに対して垂直となる端面29を有している。端面29と傾斜面27との境界は、端面29及び傾斜面27に対して傾斜した面取り面である係止面(係止部)30が形成されている。第1側壁部23の内で、傾斜面27と係止面30との境界線(稜線)部分が、第1側壁部23の内で最も第2側壁部24側に突出している。
【0036】
貫通孔18の内端において、肉抜き部28の第1側壁部23側と相反する側の部分は、軸線Aと垂直な平面をなし、貫通孔18の周方向に延在する孔縁33を形成している。孔縁33の貫通孔18の径方向外方に位置する部分には、孔縁33に沿って延在する周壁34が立設されている。孔縁33と周壁34とは、貫通孔18の周方向に延在する通路を形成している。孔縁33は、肉抜き部28から、軸線A回りにガイド溝21から第1側壁部23側に90°回転した位置まで延び、その端部には規制壁35が立設されている。
【0037】
以上に説明した、ガイド溝21、第1側壁部23、第2側壁部24、肉抜き部28、孔縁33及び規制壁35等の貫通孔18の周囲に形成された構造は、軸線Aを対称軸とした180°回転位置にも回転対称形となる構造が形成されている。
【0038】
図1に示すように、第2部材3は略直方体の基板41を有している。基板41は、第1部材2の受容凹部12内に挿入可能な大きさに形成されている。基板41は、受容凹部12内に、がた付きなく嵌合する大きさに形成されていることが好ましい。基板41の上面の長手方向における両端部には、円柱状のスペーサ42が突設されている。スペーサ42は、基板41が受容凹部12に挿入された際に、天板10の内面又は天板10の内面に形成されたリブ等に当接し、第1部材2と第2部材3との相対位置を規制する。
【0039】
基板41の下面の長手方向における両端部には、第1部材2の結合脚13と同様の爪14及びスリット15を有する2つの結合脚43が突設されている。
【0040】
基板41の上面の中央部には、結合片46が突設されている。結合片46は、基板41の上面から垂直に突出する円柱状の基部47と、基部47の先端に設けられた拡頭部48とを有している。拡頭部48は、基板41と平行な板状に形成され、基板41の長手方向に延在し、基部47よりも基板41の両端側へと突出している。これにより、結合片46は、基板41の短手方向から見て略T字を呈している。一方、拡頭部48は、基板41の短手方向においては短く、基部47の直径と同じ幅となっている。拡頭部48を軸線Aに沿って先端側から見た場合において、拡頭部48の長手方向における両端部は、軸線Aを中心とした反時計回り側の角部に切り欠き49を有している。
【0041】
図1及び3に示すように、連結部材4は、円板状のフランジ51と、フランジ51の下面に突設された一対のフック52とを有している。フランジ51の上面には、工具が嵌合可能な工具孔53が形成されている。工具孔53は、有底孔でも貫通孔でもよい。本実施形態では、工具孔53は、マイナスドライバーが嵌合可能な形状に形成されている。
【0042】
一対のフック52は、フランジ51の軸線Bを対称軸とした180°回転対称形をなす。フック52は、フランジ51の下面から垂直に下方へと延びる側部54と、側部54の先端から軸線B側に突出する顎部55とを有している。側部54は、軸線Bを中心とした円弧状に形成されており、その外面及び内面は円周面となっている。側部54の外面の下端部には、軸線Bの径方向外方に突出するガイド凸部56が形成されている。ガイド凸部56は、フランジ51側の部分にフランジ51と平行な逆止面を有すると共に、突出端面が軸線Bを中心とした円周面となっている。
【0043】
顎部55は、フランジ51側を向く上面57を有している。顎部55を軸線Bに沿ってフランジ51側から見た場合において、顎部55の上面57の、軸線Bを中心とした時計回り側の端部は、端部側に進むほど顎部55が薄くなるようにカム面58を形成している。一方、顎部55の上面57の、軸線Bを中心とした反時計回り側の端部には、側部54の側縁に沿ってフランジ51側へと延在する規制壁59が立設されている。一対の顎部55の先端どうしは、空隙を介して離間している。
【0044】
次に、連結部材4の第1部材2への組み付け方法について説明する。図1及び4に示すように、連結部材4のフランジ51の軸線Bと第1部材2の貫通孔18の軸線Aとを一致させ、連結部材4のガイド凸部56を第1部材2のガイド溝21に対応させた状態で、フック52の先端側を貫通孔18の外端側から挿入する。このとき、ガイド凸部56はガイド溝21内を進み、フック52の側部54の外面は貫通孔18の孔壁に摺接する。
【0045】
ガイド溝21は外端側から内端側へと進むにつれて幅が狭くなっているため、ガイド凸部56はガイド溝21内を内端側に進むにつれて第1側壁部23と第2側壁部24との間で挟まれ、挿入に対して抵抗力を受ける。抵抗力に抗しつつ連結部材4を貫通孔18に押し込むと、第1側壁部23が若干肉抜き部28側に撓み、ガイド凸部56は内端側へと進み、傾斜面27と係止面30と境界部を内端側に越える。また、フランジ51の周縁部は貫通孔18の拡径部20に受容される。図5及び6に示すように、ガイド凸部56が傾斜面27と係止面30との境界部を越えた状態では、ガイド凸部56の逆止面が係止面30に係止され、連結部材4の貫通孔18からの抜去が阻止される。また、フランジ51が貫通孔18の段部19に当接して、連結部材4の貫通孔18に対する挿入深さが規制された状態では、ガイド凸部56は第1側壁内端部25(端面29と係止面30の境界)を越えることが出来ない位置に保持されているため、ガイド凸部56が係止面30に当接し、連結部材4の第1部材2に対する軸線A回りの回転位置が規制される。このときの連結部材4の第1部材2(貫通孔18)に対する回転位置を第1位置とする。
【0046】
以上のように、連結部材4の第1部材2への組み付けは、連結部材4を貫通孔18に押し込むという簡単な作業のみで行うことができる。また、第1部材2に組み付けられた連結部材4は、第1部材2からの抜去及び第1部材2に対する回転が阻止されて第1位置に維持される。
【0047】
次に、図7〜11を参照して上述した締結具1を使用して2枚のパネル100,101を締結する方法について説明する。図7に示すように、第1パネル100及び第2パネル101は、所定の厚みを有する板部材である。第1及び第2パネル100,101は、それぞれ縁部近傍に厚み方向に延在する結合孔102,103を2つずつ有している。結合孔102,103は有底孔であっても貫通孔であってもよい。
【0048】
締結具1は、連結部材4が組み付けられた第1部材2と、第2部材3とが分離した状態で各パネル100,101に結合される。第1部材2の2つの結合脚13が第1パネル100の2つの結合孔102に挿入され、爪14が結合孔102の孔壁に噛み込むことによって、第1部材2は第1パネル100に結合される。同様に、第2部材3の2つの結合脚43が第2パネル101の2つの結合孔103に挿入され、爪14が結合孔103の孔壁に噛み込むことによって、第2部材3は第2パネル101に結合される。
【0049】
次に、第2パネル101の外面から突出した第2部材3の基板41、スペーサ42及び結合片46を第1部材2の受容凹部12に挿入する。スペーサ42の先端が第1部材2の天板10の内面または内面に設けられたリブに当接し、基板41が第1部材2の側板11に当接することによって、第1部材2及び第2部材3は所定の相対位置に導かれる。このとき、連結部材4は第1位置にあり、図8及び9に示すように、結合片46は一対のフック52の間に進入する。以上の第2部材3の第1部材2への挿入によって、第1パネル100は、第2パネル101に対して垂直となり、かつ側縁が接触した位置に配置される。
【0050】
次に、フランジ51の上面側から見て、連結部材4を第1部材2に対して軸線Bを中心とした時計回りに回転させる。連結部材4の回転は、工具孔53に嵌合するマイナスドライバーを使用して行う。なお、反対方向への回転は、ガイド凸部56が第2側壁部24に当接することによって規制されている。連結部材4が回転することによって、ガイド凸部56が係止面30を押圧し、第1側壁内端部25を肉抜き部28側に撓ませる。同時に、ガイド凸部56が係止面30及び端面29上を摺動して第1側壁内端部25を肉抜き部28側に越える。このとき、第1側壁部23に加えて、ガイド凸部56を含む連結部材4も撓んでもよい。
【0051】
第1側壁内端部25を越えたガイド凸部56は、連結部材4の回転に応じて孔縁33上を摺動する。連結部材4の回転は、ガイド凸部56が規制壁35に当接することによって規制される。このときの連結部材4の回転位置を第2位置とする。連結部材4が第1位置から第2位置まで回転する過程において、フック52の顎部55は、結合片46の拡頭部48の下方、拡頭部48と基板41との間の空間に入り込み、拡頭部48と係合する。これにより、第2部材3は連結部材4を介して第1部材2と結合し、受容凹部12から脱離不能となる。図10及び11に、連結部材4が第2位置に位置するときの、締結具1の各部材の位置を示す。顎部55は、カム面58で拡頭部48と当接することによって、連結部材4の回転に応じて、拡頭部48をフランジ51側、換言すると第1部材2の天板10側に変位させる。すなわち、連結部材4の回転に応じて、第2部材3が天板10側に引き込まれる。フック52は、側部54の外面において貫通孔18の孔壁に摺接し、ガイド凸部56の突出端において周壁34に摺接しているため、顎部55が拡頭部48を天板10側に引き込む際に両フック52の倒れ(撓み)が抑制されている。図11に示すように、連結部材4が第2位置にあるときには、顎部55の規制壁59は拡頭部48の切り欠き49内に配置され、規制壁59は拡頭部48に当接する。
【0052】
また、連結部材4が第2位置に配置される際には、段部19の所定の位置に凹設された小孔65に、フランジ51の下面には突設された突起66が嵌り込むことによって、クリック感及びクリック音(衝突音)が発生するようになっている。
【0053】
以上のように構成した締結具1は、第1部材2を第1パネル100に結合させるとき、及び第2部材3を第2パネル101に結合させるときに、第1パネル100と第2パネル101との相対位置を考慮しなくてよいため、取り付け作業が簡単である。そして、第1部材2に第2部材3を挿入し、連結部材4を第1部材2に対して回転させるだけで第1部材2と第2部材3とを連結することができる。特に、締結具1は、連結部材4を貫通孔18に押し込むだけで、連結部材4が第1位置に位置するように第1部材2に組み付けることができ、組み付け作業性がよい。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1部材2、第2部材3及び連結部材4の形状は例示であって、様々な形状とすることができる。本実施形態では、連結部材4にガイド凸部56を設け、第1部材2にガイド溝21を設けたが、他の実施形態では連結部材4にガイド溝21を設け、第1部材2にガイド凸部56を設けてもよい。また、本実施形態では、顎部55にカム面58を設けたが、カム面は拡頭部48の顎部55に接触する部分に設けてよい。また、図1に示すように、天板10やフランジ51の外面に連結部材4の回転方向を指し示す矢印マーク71や、連結部材4の回転後位置(第2位置)を示すための位置表示マーク72,73を刻印や描画により表示してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…締結具、2…第1部材、3…第2部材、4…連結部材、12…受容凹部、13…結合脚、18…貫通孔、21…ガイド溝、22…底部、23…第1側壁部、24…第2側壁部、25…第1側壁内端部、26…第2側壁内端部、27…傾斜面、28…肉抜き部、30…係止面、41…基板、42…スペーサ、43…結合脚、46…結合片、48…拡頭部、51…フランジ、52…フック、53…工具孔、54…側部、55…顎部、56…ガイド凸部、58…カム面、65…小孔、66…突起、71…矢印マーク、72,73…位置表示マーク(第1の表示及び第2の表示)、100…第1パネル(第1被締結部材)、101…第2パネル(第2被締結部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を連結するために使用される締結具に関し、例えば壁パネルや、棚等の部材を連結するために使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、組立家具(ノックダウン製品)において、締結具(連結具)を使用して2枚の板部材を互いに直交した状態で結合したものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に係る締結具は、互いに直交する垂直片部と水平片部とを有してL字状をなし、垂直片部及び水平片部のそれぞれにビス挿入孔と仮止め用突軸を有している。仮止め用突軸が棚の側板及び水平板(天板、仕切板、底板等)に形成されたピン穴に嵌合することによって、側板及び水平板が締結具を介して直角に仮止めされる。そして、ビス挿入孔を通過して側板及び水平板に螺着するビスによって締結具と側板及び水平板とが締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−39308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る締結具は、ビスによる螺着作業が必要であるため、作業性が悪いという問題がある。また、締結具と締結すべき各部材との仮止め及び締結は、各部材が所定の位置に配置された状態で行わなければならないため、作業が困難であるという問題がある。また、このような締結具は、取り扱い性や準備が容易なことが要求されている。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、準備かつ締結作業が容易な締結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、締結対象となる第1被締結部材(100)に結合すると共に、貫通孔(18)が形成された第1部材(2)と、締結対象となる第2被締結部材(101)に結合すると共に、前記貫通孔の一端側と対向する部分に結合片(46)が突設された第2部材(3)と、前記貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材(4)とを有し、前記連結部材が前記第1位置にあるときに、前記連結部材と前記結合片とは係合せず、前記第1部材と前記第2部材とは分離可能である一方、前記連結部材が前記第2位置にあるときに、前記連結部材が前記結合片に係合し、前記第1部材と前記第2部材とが係合した状態に維持される締結具(1)であって、互いに対向する前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の一方には、ガイド凸部(56)が形成され、前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の他方には、前記連結部材を前記貫通孔に挿入する際に前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記第1位置に導くガイド溝(21)が形成され、前記ガイド溝の前記貫通孔の前記一端側における端部には、前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記貫通孔に挿入された状態かつ前記第1位置に保持する係止部(30)が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1部材を第1被締結部材に結合し、第2部材を第2被締結部材に結合した上で、第1部材と第2部材とを連結部材を解して連結することができる締結具を提供することができる。また、ガイド凸部をガイド溝に挿入し、連結部材を貫通孔に押し込むだけで、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置することができ、連結部材の第1部材への組み付けが容易である。
【0008】
本発明の他の側面は、前記係止部は、前記ガイド溝の幅を狭める方向に突設されていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ガイド凸部と係止部とが確実に係合し、連結部材の第1部材からの脱離を防止することができる。
【0010】
本発明の他の側面は、前記ガイド溝は、底部(22)と、前記底部の両側に配置された第1側壁部(23)及び第2側壁部(24)を有し、前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側に前記係止部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ガイド凸部と係止部とが確実に係合し、連結部材の第1部材からの脱離を防止することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置へと変位する際には、前記ガイド凸部が前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側における端部を前記第2側壁部から離間する方向に乗り越えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、連結部材を第1位置に保持することができる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記第2側壁部は、前記第1側壁部よりも前記貫通孔の前記一端側に延出していることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、連結部材の第1位置から第2位置への回転方向を一方に規制することができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記第1部材は、前記貫通孔の前記一端に連続する受容凹部(12)を有し、前記第2部材は、少なくとも一部が前記受容凹部に嵌合し、前記結合片は前記第2部材の前記受容凹部に嵌合した部分に突設されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1部材と第2部材との相対位置を定め易くなる。
【0018】
本発明の他の側面は、前記連結部材及び前記結合片の互いに係合する部分の少なくとも一方には、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置に回転する際に、前記第2部材が前記貫通孔に近接する方向に変位させるカム(58)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、連結部材の回転に応じて、第1部材と第2部材との係合をより確実にすることができる。
【0020】
本発明の他の側面は、前記第1部材及び前記連結部材の一方には、小孔(65)が形成され、前記第1部材及び前記連結部材の他方には、前記連結部材が第2位置に位置するときに前記小孔に嵌合する突起(66)が形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、連結部材が第2位置に到達したときに、クリック感及びクリック音を発生させることができる。
【0022】
本発明の他の側面は、前記第1部材又は前記連結部材は、前記連結部材の前記第1位置から前記第2位置への回転方向を示す表示(71)を有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、使用者は連結部材の回転方向を認識することができる。
【0024】
本発明の他の側面は、前記第1部材は、第1の表示(72)を有し、前記連結部材は、前記連結部材が前記第2位置に位置するときに前記第1の表示に対応する第2の表示(73)を有することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、使用者は連結部材の回転位置を認識することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上の構成によれば、準備かつ締結作業が容易な締結具を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係る締結具の分解斜視図
【図2】実施形態に係る締結具の斜視図
【図3】実施形態に係る連結部材の斜視図
【図4】第1部材を底面側から見た斜視図であって、連結部材を第1部材に連結する際の途中の形態を示す図
【図5】第1部材を底面側から見た斜視図であって、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置した形態を示す図
【図6】図5のVI−VI断面図であって、連結部材を第1部材に対して第1位置に配置した形態を示す断面図
【図7】実施形態に係る締結具を使用した第1パネル及び第2パネルの締結構造を示す分解斜視図
【図8】第2部材を第1部材に挿入した形態であって、連結部材が第1位置にある形態を示す断面図
【図9】図8のIX−IX断面図
【図10】第1部材と第2部材とが連結した形態であって、連結部材が第2位置にある形態を示す断面図
【図11】図10のXI−XI断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を壁パネルの締結具に適用した実施形態を詳細に説明する。壁パネルは、例えばシステムキッチンや、ユニットバス、洗面台、パーティション、棚等の公知の様々な壁面を構成するパネルであってよい。
【0029】
図1に示すように、締結具1は、第1部材2と、第2部材3と、連結部材4とから構成されている。第1部材2、第2部材3及び連結部材4は、それぞれ樹脂を射出成形品である。樹脂は、例えばポリアセタール(POM)等の公知の樹脂であってよい。
【0030】
第1部材2は、略長方形の天板10と、天板10の縁部から下方へと垂直に立設された4つの側板11とを有し、底部が下方に向けて開口した略直方体状の箱形を呈する。天板10の長手方向を第1部材2の長手方向、天板10の短手方向を第1部材2の短手方向とする。天板10及び4つの側板11によって画成された下方に開口する凹部を受容凹部12とする(図4及び6参照)。側板11の1つは、外面が平面に形成され、1つ以上(本実施形態では2つ)の結合脚13が突設されている。結合脚13は、円筒状をなし、その外周面には周方向に延在する環状の爪14が複数形成されている。爪14は、結合脚13の先端側から基端側に進むにつれて結合脚13の径方向外方に突出するとともに、その基端側に逆止面を備えている。爪14は、結合脚13の長手方向に列設されている。複数の爪14は、結合脚13の長手方向に沿って延在するスリット15によって切り欠かれている。スリット15が逃げ溝として機能することによって、爪14は結合脚13の周方向に若干撓むことができる。
【0031】
天板10には、外面と受容凹部12側を向く内面とを連通する断面円形の貫通孔18が形成されている。貫通孔18の外面側の開口端(外端)は、段部19を介して段違いに拡径された拡径部20を形成している。
【0032】
図1及び4に示すように、貫通孔18の孔壁(内壁)であって、第1部材2の短手方向に対応する位置には、貫通孔18の軸線A方向に延びるガイド溝21が形成されている。ガイド溝21は、貫通孔18の孔壁に対して、径方向外方側に位置する底部22と、底部22の側部から略垂直に立設され、貫通孔18の孔壁に連続する第1側壁部23及び第2側壁部24とを有し、断面が略四角形に形成されている。貫通孔18の受容凹部12側の端部(内端)では、ガイド溝21の第1側壁部23及び第2側壁部24のそれぞれが底部22よりも受容凹部12側に延出し、第1側壁内端部25及び第2側壁内端部26を形成している。また、第2側壁内端部26は、第1側壁内端部25よりも受容凹部12側に突出している。
【0033】
第2側壁部24の第1側壁部23側を向く面は、軸線Aと平行に延在している。一方、第1側壁部23の第2側壁部24側を向く面は、貫通孔18の外端から内端へと進むにつれて第2側壁部24に近接するように軸線Aに対して傾斜した傾斜面27を形成している。傾斜面27により、ガイド溝21は、貫通孔18の外端から内端へと進むにつれて幅(貫通孔18の周方向における幅)が狭くなっている。
【0034】
第1側壁部23のガイド溝21側と相反する側には、貫通孔18の内端から軸線A方向に沿って延びる肉抜き部28が凹設されている。肉抜き部28が設けられることによって、第1側壁部23は肉抜き部28側に撓み易く(傾倒し易く)なっている。
【0035】
第1側壁内端部25は、軸線Aに対して垂直となる端面29を有している。端面29と傾斜面27との境界は、端面29及び傾斜面27に対して傾斜した面取り面である係止面(係止部)30が形成されている。第1側壁部23の内で、傾斜面27と係止面30との境界線(稜線)部分が、第1側壁部23の内で最も第2側壁部24側に突出している。
【0036】
貫通孔18の内端において、肉抜き部28の第1側壁部23側と相反する側の部分は、軸線Aと垂直な平面をなし、貫通孔18の周方向に延在する孔縁33を形成している。孔縁33の貫通孔18の径方向外方に位置する部分には、孔縁33に沿って延在する周壁34が立設されている。孔縁33と周壁34とは、貫通孔18の周方向に延在する通路を形成している。孔縁33は、肉抜き部28から、軸線A回りにガイド溝21から第1側壁部23側に90°回転した位置まで延び、その端部には規制壁35が立設されている。
【0037】
以上に説明した、ガイド溝21、第1側壁部23、第2側壁部24、肉抜き部28、孔縁33及び規制壁35等の貫通孔18の周囲に形成された構造は、軸線Aを対称軸とした180°回転位置にも回転対称形となる構造が形成されている。
【0038】
図1に示すように、第2部材3は略直方体の基板41を有している。基板41は、第1部材2の受容凹部12内に挿入可能な大きさに形成されている。基板41は、受容凹部12内に、がた付きなく嵌合する大きさに形成されていることが好ましい。基板41の上面の長手方向における両端部には、円柱状のスペーサ42が突設されている。スペーサ42は、基板41が受容凹部12に挿入された際に、天板10の内面又は天板10の内面に形成されたリブ等に当接し、第1部材2と第2部材3との相対位置を規制する。
【0039】
基板41の下面の長手方向における両端部には、第1部材2の結合脚13と同様の爪14及びスリット15を有する2つの結合脚43が突設されている。
【0040】
基板41の上面の中央部には、結合片46が突設されている。結合片46は、基板41の上面から垂直に突出する円柱状の基部47と、基部47の先端に設けられた拡頭部48とを有している。拡頭部48は、基板41と平行な板状に形成され、基板41の長手方向に延在し、基部47よりも基板41の両端側へと突出している。これにより、結合片46は、基板41の短手方向から見て略T字を呈している。一方、拡頭部48は、基板41の短手方向においては短く、基部47の直径と同じ幅となっている。拡頭部48を軸線Aに沿って先端側から見た場合において、拡頭部48の長手方向における両端部は、軸線Aを中心とした反時計回り側の角部に切り欠き49を有している。
【0041】
図1及び3に示すように、連結部材4は、円板状のフランジ51と、フランジ51の下面に突設された一対のフック52とを有している。フランジ51の上面には、工具が嵌合可能な工具孔53が形成されている。工具孔53は、有底孔でも貫通孔でもよい。本実施形態では、工具孔53は、マイナスドライバーが嵌合可能な形状に形成されている。
【0042】
一対のフック52は、フランジ51の軸線Bを対称軸とした180°回転対称形をなす。フック52は、フランジ51の下面から垂直に下方へと延びる側部54と、側部54の先端から軸線B側に突出する顎部55とを有している。側部54は、軸線Bを中心とした円弧状に形成されており、その外面及び内面は円周面となっている。側部54の外面の下端部には、軸線Bの径方向外方に突出するガイド凸部56が形成されている。ガイド凸部56は、フランジ51側の部分にフランジ51と平行な逆止面を有すると共に、突出端面が軸線Bを中心とした円周面となっている。
【0043】
顎部55は、フランジ51側を向く上面57を有している。顎部55を軸線Bに沿ってフランジ51側から見た場合において、顎部55の上面57の、軸線Bを中心とした時計回り側の端部は、端部側に進むほど顎部55が薄くなるようにカム面58を形成している。一方、顎部55の上面57の、軸線Bを中心とした反時計回り側の端部には、側部54の側縁に沿ってフランジ51側へと延在する規制壁59が立設されている。一対の顎部55の先端どうしは、空隙を介して離間している。
【0044】
次に、連結部材4の第1部材2への組み付け方法について説明する。図1及び4に示すように、連結部材4のフランジ51の軸線Bと第1部材2の貫通孔18の軸線Aとを一致させ、連結部材4のガイド凸部56を第1部材2のガイド溝21に対応させた状態で、フック52の先端側を貫通孔18の外端側から挿入する。このとき、ガイド凸部56はガイド溝21内を進み、フック52の側部54の外面は貫通孔18の孔壁に摺接する。
【0045】
ガイド溝21は外端側から内端側へと進むにつれて幅が狭くなっているため、ガイド凸部56はガイド溝21内を内端側に進むにつれて第1側壁部23と第2側壁部24との間で挟まれ、挿入に対して抵抗力を受ける。抵抗力に抗しつつ連結部材4を貫通孔18に押し込むと、第1側壁部23が若干肉抜き部28側に撓み、ガイド凸部56は内端側へと進み、傾斜面27と係止面30と境界部を内端側に越える。また、フランジ51の周縁部は貫通孔18の拡径部20に受容される。図5及び6に示すように、ガイド凸部56が傾斜面27と係止面30との境界部を越えた状態では、ガイド凸部56の逆止面が係止面30に係止され、連結部材4の貫通孔18からの抜去が阻止される。また、フランジ51が貫通孔18の段部19に当接して、連結部材4の貫通孔18に対する挿入深さが規制された状態では、ガイド凸部56は第1側壁内端部25(端面29と係止面30の境界)を越えることが出来ない位置に保持されているため、ガイド凸部56が係止面30に当接し、連結部材4の第1部材2に対する軸線A回りの回転位置が規制される。このときの連結部材4の第1部材2(貫通孔18)に対する回転位置を第1位置とする。
【0046】
以上のように、連結部材4の第1部材2への組み付けは、連結部材4を貫通孔18に押し込むという簡単な作業のみで行うことができる。また、第1部材2に組み付けられた連結部材4は、第1部材2からの抜去及び第1部材2に対する回転が阻止されて第1位置に維持される。
【0047】
次に、図7〜11を参照して上述した締結具1を使用して2枚のパネル100,101を締結する方法について説明する。図7に示すように、第1パネル100及び第2パネル101は、所定の厚みを有する板部材である。第1及び第2パネル100,101は、それぞれ縁部近傍に厚み方向に延在する結合孔102,103を2つずつ有している。結合孔102,103は有底孔であっても貫通孔であってもよい。
【0048】
締結具1は、連結部材4が組み付けられた第1部材2と、第2部材3とが分離した状態で各パネル100,101に結合される。第1部材2の2つの結合脚13が第1パネル100の2つの結合孔102に挿入され、爪14が結合孔102の孔壁に噛み込むことによって、第1部材2は第1パネル100に結合される。同様に、第2部材3の2つの結合脚43が第2パネル101の2つの結合孔103に挿入され、爪14が結合孔103の孔壁に噛み込むことによって、第2部材3は第2パネル101に結合される。
【0049】
次に、第2パネル101の外面から突出した第2部材3の基板41、スペーサ42及び結合片46を第1部材2の受容凹部12に挿入する。スペーサ42の先端が第1部材2の天板10の内面または内面に設けられたリブに当接し、基板41が第1部材2の側板11に当接することによって、第1部材2及び第2部材3は所定の相対位置に導かれる。このとき、連結部材4は第1位置にあり、図8及び9に示すように、結合片46は一対のフック52の間に進入する。以上の第2部材3の第1部材2への挿入によって、第1パネル100は、第2パネル101に対して垂直となり、かつ側縁が接触した位置に配置される。
【0050】
次に、フランジ51の上面側から見て、連結部材4を第1部材2に対して軸線Bを中心とした時計回りに回転させる。連結部材4の回転は、工具孔53に嵌合するマイナスドライバーを使用して行う。なお、反対方向への回転は、ガイド凸部56が第2側壁部24に当接することによって規制されている。連結部材4が回転することによって、ガイド凸部56が係止面30を押圧し、第1側壁内端部25を肉抜き部28側に撓ませる。同時に、ガイド凸部56が係止面30及び端面29上を摺動して第1側壁内端部25を肉抜き部28側に越える。このとき、第1側壁部23に加えて、ガイド凸部56を含む連結部材4も撓んでもよい。
【0051】
第1側壁内端部25を越えたガイド凸部56は、連結部材4の回転に応じて孔縁33上を摺動する。連結部材4の回転は、ガイド凸部56が規制壁35に当接することによって規制される。このときの連結部材4の回転位置を第2位置とする。連結部材4が第1位置から第2位置まで回転する過程において、フック52の顎部55は、結合片46の拡頭部48の下方、拡頭部48と基板41との間の空間に入り込み、拡頭部48と係合する。これにより、第2部材3は連結部材4を介して第1部材2と結合し、受容凹部12から脱離不能となる。図10及び11に、連結部材4が第2位置に位置するときの、締結具1の各部材の位置を示す。顎部55は、カム面58で拡頭部48と当接することによって、連結部材4の回転に応じて、拡頭部48をフランジ51側、換言すると第1部材2の天板10側に変位させる。すなわち、連結部材4の回転に応じて、第2部材3が天板10側に引き込まれる。フック52は、側部54の外面において貫通孔18の孔壁に摺接し、ガイド凸部56の突出端において周壁34に摺接しているため、顎部55が拡頭部48を天板10側に引き込む際に両フック52の倒れ(撓み)が抑制されている。図11に示すように、連結部材4が第2位置にあるときには、顎部55の規制壁59は拡頭部48の切り欠き49内に配置され、規制壁59は拡頭部48に当接する。
【0052】
また、連結部材4が第2位置に配置される際には、段部19の所定の位置に凹設された小孔65に、フランジ51の下面には突設された突起66が嵌り込むことによって、クリック感及びクリック音(衝突音)が発生するようになっている。
【0053】
以上のように構成した締結具1は、第1部材2を第1パネル100に結合させるとき、及び第2部材3を第2パネル101に結合させるときに、第1パネル100と第2パネル101との相対位置を考慮しなくてよいため、取り付け作業が簡単である。そして、第1部材2に第2部材3を挿入し、連結部材4を第1部材2に対して回転させるだけで第1部材2と第2部材3とを連結することができる。特に、締結具1は、連結部材4を貫通孔18に押し込むだけで、連結部材4が第1位置に位置するように第1部材2に組み付けることができ、組み付け作業性がよい。
【0054】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、第1部材2、第2部材3及び連結部材4の形状は例示であって、様々な形状とすることができる。本実施形態では、連結部材4にガイド凸部56を設け、第1部材2にガイド溝21を設けたが、他の実施形態では連結部材4にガイド溝21を設け、第1部材2にガイド凸部56を設けてもよい。また、本実施形態では、顎部55にカム面58を設けたが、カム面は拡頭部48の顎部55に接触する部分に設けてよい。また、図1に示すように、天板10やフランジ51の外面に連結部材4の回転方向を指し示す矢印マーク71や、連結部材4の回転後位置(第2位置)を示すための位置表示マーク72,73を刻印や描画により表示してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…締結具、2…第1部材、3…第2部材、4…連結部材、12…受容凹部、13…結合脚、18…貫通孔、21…ガイド溝、22…底部、23…第1側壁部、24…第2側壁部、25…第1側壁内端部、26…第2側壁内端部、27…傾斜面、28…肉抜き部、30…係止面、41…基板、42…スペーサ、43…結合脚、46…結合片、48…拡頭部、51…フランジ、52…フック、53…工具孔、54…側部、55…顎部、56…ガイド凸部、58…カム面、65…小孔、66…突起、71…矢印マーク、72,73…位置表示マーク(第1の表示及び第2の表示)、100…第1パネル(第1被締結部材)、101…第2パネル(第2被締結部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結対象となる第1被締結部材に結合すると共に、貫通孔が形成された第1部材と、
締結対象となる第2被締結部材に結合すると共に、前記貫通孔の一端側と対向する部分に結合片が突設された第2部材と、
前記貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材と
を有し、
前記連結部材が前記第1位置にあるときに、前記連結部材と前記結合片とは係合せず、前記第1部材と前記第2部材とは分離可能である一方、前記連結部材が前記第2位置にあるときに、前記連結部材が前記結合片に係合し、前記第1部材と前記第2部材とが係合した状態に維持される締結具であって、
互いに対向する前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の一方には、ガイド凸部が形成され、
前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の他方には、前記連結部材を前記貫通孔に挿入する際に前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記第1位置に導くガイド溝が形成され、
前記ガイド溝の前記貫通孔の前記一端側における端部には、前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記貫通孔に挿入された状態かつ前記第1位置に保持する係止部が形成されていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
前記係止部は、前記ガイド溝の幅を狭める方向に突設されていることを特徴とする請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記ガイド溝は、底部と、前記底部の両側に配置された第1側壁部及び第2側壁部を有し、前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側に前記係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の締結具。
【請求項4】
前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置へと変位する際には、前記ガイド凸部が前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側における端部を前記第2側壁部から離間する方向に乗り越えることを特徴とする請求項3に記載の締結具。
【請求項5】
前記第2側壁部は、前記第1側壁部よりも前記貫通孔の前記一端側に延出していることを特徴とする請求項4に記載の締結具。
【請求項6】
前記第1部材は、前記貫通孔の前記一端に連続する受容凹部を有し、
前記第2部材は、少なくとも一部が前記受容凹部に嵌合し、前記結合片は前記第2部材の前記受容凹部に嵌合した部分に突設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項7】
前記連結部材及び前記結合片の互いに係合する部分の少なくとも一方には、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置に回転する際に、前記第2部材が前記貫通孔に近接する方向に変位させるカムが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項8】
前記第1部材及び前記連結部材の一方には、小孔が形成され、
前記第1部材及び前記連結部材の他方には、前記連結部材が第2位置に位置するときに前記小孔に嵌合する突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項9】
前記第1部材又は前記連結部材は、前記連結部材の前記第1位置から前記第2位置への回転方向を示す表示を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項10】
前記第1部材は、第1の表示を有し、
前記連結部材は、前記連結部材が前記第2位置に位置するときに前記第1の表示に対応する第2の表示を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項1】
締結対象となる第1被締結部材に結合すると共に、貫通孔が形成された第1部材と、
締結対象となる第2被締結部材に結合すると共に、前記貫通孔の一端側と対向する部分に結合片が突設された第2部材と、
前記貫通孔に第1位置と第2位置との間で回転可能に保持された連結部材と
を有し、
前記連結部材が前記第1位置にあるときに、前記連結部材と前記結合片とは係合せず、前記第1部材と前記第2部材とは分離可能である一方、前記連結部材が前記第2位置にあるときに、前記連結部材が前記結合片に係合し、前記第1部材と前記第2部材とが係合した状態に維持される締結具であって、
互いに対向する前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の一方には、ガイド凸部が形成され、
前記貫通孔の孔壁及び前記連結部材の外面の他方には、前記連結部材を前記貫通孔に挿入する際に前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記第1位置に導くガイド溝が形成され、
前記ガイド溝の前記貫通孔の前記一端側における端部には、前記ガイド凸部に係合し、前記連結部材を前記貫通孔に挿入された状態かつ前記第1位置に保持する係止部が形成されていることを特徴とする締結具。
【請求項2】
前記係止部は、前記ガイド溝の幅を狭める方向に突設されていることを特徴とする請求項1に記載の締結具。
【請求項3】
前記ガイド溝は、底部と、前記底部の両側に配置された第1側壁部及び第2側壁部を有し、前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側に前記係止部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の締結具。
【請求項4】
前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置へと変位する際には、前記ガイド凸部が前記第1側壁部の前記貫通孔の前記一端側における端部を前記第2側壁部から離間する方向に乗り越えることを特徴とする請求項3に記載の締結具。
【請求項5】
前記第2側壁部は、前記第1側壁部よりも前記貫通孔の前記一端側に延出していることを特徴とする請求項4に記載の締結具。
【請求項6】
前記第1部材は、前記貫通孔の前記一端に連続する受容凹部を有し、
前記第2部材は、少なくとも一部が前記受容凹部に嵌合し、前記結合片は前記第2部材の前記受容凹部に嵌合した部分に突設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項7】
前記連結部材及び前記結合片の互いに係合する部分の少なくとも一方には、前記連結部材が前記第1位置から前記第2位置に回転する際に、前記第2部材が前記貫通孔に近接する方向に変位させるカムが形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項8】
前記第1部材及び前記連結部材の一方には、小孔が形成され、
前記第1部材及び前記連結部材の他方には、前記連結部材が第2位置に位置するときに前記小孔に嵌合する突起が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項9】
前記第1部材又は前記連結部材は、前記連結部材の前記第1位置から前記第2位置への回転方向を示す表示を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の締結具。
【請求項10】
前記第1部材は、第1の表示を有し、
前記連結部材は、前記連結部材が前記第2位置に位置するときに前記第1の表示に対応する第2の表示を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載の締結具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−44405(P2013−44405A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183328(P2011−183328)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
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