説明

締結弛緩装置

【課題】締結弛緩装置において、被締結部材の大きさや形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とする。
【解決手段】上部が搬送装置73によりスタッドボルト65の配列方向に沿って移動自在に支持される装置本体101と、装置本体101と共にリフト装置74によりスタッドボルト65に対して昇降自在なボルトテンショナ102と、装置本体101にシリンダ121を介して相対移動自在に連結されて装置本体101の移動方向の左右両側からナット66の外周に接触可能な左右のガイド部材123,124を有するガイド装置103と、内ガイド部材123を装置本体101の移動方向に交差する水平方向に移動可能なガイド位置調整装置105とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、原子炉容器の上部に蓋を取付けるときにスタッドボルトにテンションを作用させながらナットを回転して締結したり、原子炉容器の上部に固定された蓋を取り外すときにスタッドボルトにテンションを作用させながらナットを回転して弛緩する締結弛緩装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電するものである。
【0003】
このような加圧水型原子炉に用いられる原子炉容器は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体とその上部に装着される原子炉容器蓋により構成されており、この原子炉容器本体に対して原子炉容器蓋が開閉可能となっている。そして、この原子炉容器本体に原子炉容器蓋を着脱自在に装着する場合、スタッドボルトを原子炉容器蓋の外周フランジを貫通し、原子炉容器本体の上部外周フランジに捩じ込んで植え込み、このスタッドボルトにテンションを作用させながら、ナットを螺合することで締結するようにしている。
【0004】
このような締結弛緩装置としては、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された装置では、ボルトテンショナを用いて作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−227888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した締結弛緩装置を用いてスタッドボルトに対してナットを回転し、原子炉容器本体に対して原子炉容器蓋を着脱する場合、このスタッドボルト及びナットは、原子炉容器本体及び原子炉容器蓋の各外周フランジに沿って複数設けられているため、装置をその方向に沿って移動しながら作業を行っている。この場合、締結弛緩作業を行う前に、スタッドボルト及びナットに対してボルトテンショナを適正な位置に位置決めする必要があり、例えば、締結弛緩装置をガイド装置によりスタッドボルト及びナットの配列方向に沿って移動自在としている。
【0007】
ところで、原子炉容器は、その原子炉の設置位置やプラントの発電能力などによりその大きさが相違しており、原子炉容器本体及び原子炉容器蓋における各外周フランジの外径、スタッドボルト及びナットの外径や本数などが異なってくる。そのため、締結弛緩装置を案内するガイド装置は、原子炉容器の大きさに応じてその形状や大きさが相違することから、原子炉容器ごとに締結弛緩装置を用意する必要があり、設備コストが上昇してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、被締結部材の大きさや形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とする締結弛緩装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の締結弛緩装置は、被締結物に対して複数のスタッドボルトが捩じ込まれて配列されると共に該複数のスタッドボルトにそれぞれナットが螺合し、前記スタッドボルトに前記被締結物から離間する軸心方向にテンションを作用させながら前記ナットを回転して締結または弛緩を行う締結弛緩装置であって、上部が前記スタッドボルトの配列方向に沿って移動自在に支持される装置本体と、該装置本体に支持されて前記スタッドボルトの軸心方向に沿って移動自在なボルトテンショナと、前記装置本体の下部に設けられて前記装置本体の移動方向の左右両側から前記ナットの外周に接触可能な左右のガイド部材を有するガイド装置と、前記左右のガイド部材における少なくとも一方のガイド部材を前記装置本体の移動方向に交差する水平方向に移動可能なガイド位置調整装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
従って、左右のガイド部材は、装置本体の左右両側からナットの外周に接触することでこの装置本体をガイドすることができ、ガイド位置調整装置によりこのガイド部材を装置本体の移動方向に交差する水平方向に移動することで、ナットに対するガイド部材のガイド位置が調整されるため、被締結部材の大きさや形状に拘わらずガイド部材が装置本体を適正にガイドすることができ、その結果、スタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を行うことができる。
【0011】
本発明の締結弛緩装置では、前記スタッドボルトの配列方向は、前記被締結物の外周に沿った円周方向であり、前記ガイド装置は、前記円周方向の内側に位置する前記ガイド部材が前記ガイド位置調整装置により移動可能であることを特徴としている。
【0012】
従って、ガイド位置調整装置により円周方向の内側に位置するガイド部材を移動することで、ナットに対するガイド部材のガイド位置が調整されることとなり、簡単な構成で容易にガイド部材の位置調整を行うことができる。
【0013】
本発明の締結弛緩装置では、隣接する前記ナット間に前記円周方向の外側から嵌入する位置決め部材を有する位置決め装置が設けられることを特徴としている。
【0014】
従って、ガイド部材の反対側から位置決め装置により位置決め部材をナット間に嵌入することで、装置本体の適正な位置決めを行うことができる。
【0015】
本発明の締結弛緩装置では、前記位置決め部材の嵌入位置を調整可能な嵌入位置調整装置が設けられることを特徴としている。
【0016】
従って、嵌入位置調整装置により位置決め部材の嵌入位置を調整することができるため、被締結部材の大きさや形状に拘わらず位置決め部材が装置本体を適正に位置決めすることができ、その結果、スタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を行うことができる。
【0017】
本発明の締結弛緩装置では、前記ガイド位置調整装置は、前記ガイド部材の一端部を回動自在に支持する支持軸と、前記ガイド部材の他端部を移動可能とする偏心機構とを有することを特徴としている。
【0018】
従って、偏心機構を作動するだけで、容易にガイド部材のガイド位置を変更することができ、装置の簡素化を可能とすることができる。
【0019】
本発明の締結弛緩装置では、前記ガイド装置は、箱体の下部に所定間隔をあけて前記左右のガイド部材が固定されて構成され、前記ガイド位置調整装置は、前記箱体を水平揺動可能であることを特徴としている。
【0020】
従って、ガイド位置調整装置により箱体を揺動してガイド部材の位置を調整することとなり、位置調整代を十分に確保することで、汎用性を向上することができる。
【0021】
本発明の締結弛緩装置では、前記ガイド装置は、前記ボルトテンショナに対して前記装置本体の移動方向の前後に設けられ、前記ガイド部材は、2つ以上の前記ナットの外周に接触可能であることを特徴としている。
【0022】
従って、ガイド装置によりボルトテンショナの前後で装置本体の移動をガイドすることとなり、装置を安定して移動すると共に、ガイドすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の締結弛緩装置によれば、装置本体の移動方向の左右両側からナットの外周に接触可能な左右のガイド部材を有するガイド装置と、少なくとも一方のガイド部材を装置本体の移動方向に交差する水平方向に移動可能なガイド位置調整装置とを設けるので、被締結部材の大きさや形状に拘わらずスタッドボルトに対して適正にナットの締結と弛緩を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る締結弛緩装置の全体構成を表す斜視図である。
【図2】図2は、実施例1の締結弛緩装置の全体構成を表す平面図である。
【図3】図3は、実施例1の締結弛緩装置を表す斜視図である。
【図4】図4は、実施例1の締結弛緩装置を表す正面図である。
【図5】図5は、実施例1の締結弛緩装置を表す側面図である。
【図6】図6は、ボルトテンショナを表す断面図である。
【図7−1】図7−1は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−2】図7−2は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−3】図7−3は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−4】図7−4は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図7−5】図7−5は、ボルトテンショナの作動を表す概略図である。
【図8】図8は、実施例1の締結弛緩装置におけるガイド装置を表す平面図である。
【図9】図9は、ガイド位置調整装置及び嵌入位置調整装置を表す平面図である。
【図10】図10は、ガイド位置調整装置及び嵌入位置調整装置の作動を表す平面図である。
【図11】図11は、原子力発電プラントの概略構成図である。
【図12】図12は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施例2に係る締結弛緩装置におけるガイド位置調整装置を表す概略図である。
【図14】図14は、実施例2のガイド位置調整装置を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る締結弛緩装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0026】
図1は、本発明の実施例1に係る締結弛緩装置の全体構成を表す斜視図、図2は、実施例1の締結弛緩装置の全体構成を表す平面図、図3は、実施例1の締結弛緩装置を表す斜視図、図4は、実施例1の締結弛緩装置を表す正面図、図5は、実施例1の締結弛緩装置を表す側面図、図6は、ボルトテンショナを表す断面図、図7−1から図7−5は、ボルトテンショナの作動を表す概略図、図8は、実施例1の締結弛緩装置におけるガイド装置を表す平面図、図9は、ガイド位置調整装置及び嵌入位置調整装置を表す平面図、図10は、ガイド位置調整装置及び嵌入位置調整装置の作動を表す平面図、図11は、原子力発電プラントの概略構成図、図12は、加圧水型原子炉を表す縦断面図である。
【0027】
実施例1の原子炉は、軽水を原子炉冷却材及び中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、この高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、この蒸気をタービン発電機へ送って発電する加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)である。
【0028】
実施例1の加圧水型原子炉を有する原子力発電プラントにおいて、図11に示すように、原子炉格納容器11内には、加圧水型原子炉12及び蒸気発生器13が格納されており、この加圧水型原子炉12と蒸気発生器13とは冷却水配管14,15を介して連結されており、冷却水配管14に加圧器16が設けられ、冷却水配管15に冷却水ポンプ15aが設けられている。この場合、減速材及び一次冷却水(冷却材)として軽水を用い、炉心部における一次冷却水の沸騰を抑制するために、一次冷却系統は加圧器16により150〜160気圧程度の高圧状態を維持するように制御している。従って、加圧水型原子炉12にて、燃料(原子燃料)として低濃縮ウランまたはMOXにより一次冷却水として軽水が加熱され、高温の一次冷却水が加圧器16により所定の高圧に維持した状態で冷却水配管14を通して蒸気発生器13に送られる。この蒸気発生器13では、高圧高温の一次冷却水と二次冷却水との間で熱交換が行われ、冷やされた一次冷却水は冷却水配管15を通して加圧水型原子炉12に戻される。
【0029】
蒸気発生器13は、蒸気タービン17と冷却水配管18を介して連結されており、この蒸気タービン17は高圧タービン19及び低圧タービン20を有すると共に、発電機21が接続されている。また、高圧タービン19と低圧タービン20との間には、湿分分離加熱器22が設けられており、冷却水配管18から分岐した冷却水分岐配管23が湿分分離加熱器22に連結される一方、高圧タービン19と湿分分離加熱器22は低温再熱管24により連結され、湿分分離加熱器22と低圧タービン20は高温再熱管25により連結されている。
【0030】
更に、蒸気タービン17の低圧タービン20は、復水器26を有しており、この復水器26には冷却水(例えば、海水)を給排する取水管27及び排水管28が連結されている。この取水管27は、循環水ポンプ29を有し、排水管28と共に他端部が海中に配置されている。そして、この復水器26は、冷却水配管30を介して脱気器31に連結されており、この冷却水配管30に復水ポンプ32及び低圧給水加熱器33が設けられている。また、脱気器31は、冷却水配管34を介して蒸気発生器13に連結されており、この冷却水配管34には給水ポンプ35及び高圧給水加熱器36が設けられている。
【0031】
従って、蒸気発生器13にて、高圧高温の一次冷却水と熱交換を行って生成された蒸気は、冷却水配管18を通して蒸気タービン17(高圧タービン19から低圧タービン20)に送られ、この蒸気により蒸気タービン17を駆動して発電機21により発電を行う。このとき、蒸気発生器13からの蒸気は、高圧タービン19を駆動した後、湿分分離加熱器22で蒸気に含まれる湿分が除去されると共に加熱されてから低圧タービン20を駆動する。そして、蒸気タービン17を駆動した蒸気は、復水器26で海水を用いて冷却されて復水となり、低圧給水加熱器33で、例えば、低圧タービン20から抽気した低圧蒸気により加熱され、脱気器31で溶存酸素や不凝結ガス(アンモニアガス)などの不純物が除去された後、高圧給水加熱器36で、例えば、高圧タービン19から抽気した高圧蒸気により加熱された後、蒸気発生器13に戻される。
【0032】
このように構成された原子力発電プラントに適用された加圧水型原子炉12において、図12に示すように、原子炉容器41は、その内部に炉内構造物が挿入できるように、原子炉容器本体42とその上部に装着される原子炉容器蓋43により構成されており、この原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43が開閉可能となっている。原子炉容器本体42は、上部が開口して下部が球面状に閉塞された円筒形状をなし、上部に一次冷却水としての軽水(冷却材)を給排する入口ノズル44及び出口ノズル45が形成されている。
【0033】
原子炉容器本体42内にて、入口ノズル44及び出口ノズル45より下方には、円筒形状をなす炉心槽46が原子炉容器本体42の内面と所定の隙間をもって配置されており、この炉心槽46の上部には、円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された上部炉心板47が連結され、下部には、同じく円板形状をなして図示しない多数の連通孔が形成された下部炉心板48が連結されている。そして、原子炉容器本体42内には、炉心槽46の上方に位置して円板形状をなす上部炉心支持板49が固定されており、この上部炉心支持板49から複数の炉心支持ロッド50を介して上部炉心板47、つまり、炉心槽46が吊下げ支持されている。一方、下部炉心板48、つまり、炉心槽46は、原子炉容器本体42の内面に対して複数のラジアルキー52により位置決め保持されている。
【0034】
炉心槽46と上部炉心板47と下部炉心板48により炉心53が形成されており、この炉心53には、多数の燃料集合体54が配置されている。この燃料集合体54は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて構成され、上端部に上部ノズルが固定される一方、下端部に下部ノズルが固定されている。そして、複数の制御棒55は、上端部がまとめられて制御棒クラスタ56となり、燃料集合体54内に挿入可能となっている。上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の制御棒クラスタ案内管57が支持されており、下端部が燃料集合体54の制御棒クラスタ56まで延出されている。
【0035】
原子炉容器41を構成する原子炉容器蓋43の上部には、磁気式ジャッキの制御棒駆動装置58が設けられており、原子炉容器蓋43と一体をなすハウジング59内に収容されている。多数の制御棒クラスタ案内管57の上端部は、制御棒駆動装置58まで延出され、この制御棒駆動装置58から延出されて制御棒クラスタ駆動軸60が、制御棒クラスタ案内管57内を通って燃料集合体54まで延出され、制御棒クラスタ56を把持可能となっている。また、図示しないが、上部炉心支持板49には、この上部炉心支持板49を貫通して多数の炉内計装案内管が支持されており、下端部が燃料集合体54まで延出されており、中性子束を計測できるセンサを挿入可能となっている。
【0036】
この制御棒駆動装置58は、上下方向に延設されて制御棒クラスタ56に連結されると共に、その表面に複数の周溝を長手方向に等ピッチで配設してなる制御棒クラスタ駆動軸60を磁気式ジャッキで上下動させることで、原子炉の出力を制御している。
【0037】
従って、制御棒駆動装置58により制御棒クラスタ駆動軸60を移動して燃料集合体54に制御棒55を挿入することで、炉心53内での核分裂を制御し、発生した熱エネルギにより原子炉容器41内に充填された軽水が加熱され、高温の軽水が出口ノズル45から排出され、上述したように、蒸気発生器13に送られる。即ち、燃料集合体54を構成する燃料としてのウランまたはプルトニウムが核分裂することで中性子を放出し、減速材及び一次冷却水としての軽水が、放出された高速中性子の運動エネルギを低下させて熱中性子とし、新たな核分裂を起こしやすくすると共に、発生した熱を奪って冷却する。また、制御棒55を燃料集合体54に挿入することで、炉心53内で生成される中性子数を調整し、また、原子炉を緊急に停止するときには炉心53に急速に挿入される。
【0038】
また、原子炉容器41内には、炉心53に対して、その上方に出口ノズル45に連通する上部プレナム61が形成されると共に、下方に下部プレナム62が形成されている。そして、原子炉容器41と炉心槽46との間に入口ノズル44及び下部プレナム62に連通するダウンカマー部63が形成されている。従って、軽水は、4つの入口ノズル44から原子炉容器本体42内に流入し、ダウンカマー部63を下向きに流れ落ちて下部プレナム62に至り、この下部プレナム62の球面状の内面により上向きに案内されて上昇し、下部炉心板48を通過した後、炉心53に流入する。この炉心53に流入した軽水は、炉心53を構成する燃料集合体54から発生する熱エネルギを吸収することで、この燃料集合体54を冷却する一方、高温となって上部炉心板47を通過して上部プレナム61まで上昇し、出口ノズル45を通って排出される。
【0039】
このように構成された原子炉容器41は、上述したように、原子炉容器本体42と原子炉容器蓋43により構成され、この原子炉容器蓋43は、複数のスタッドボルト65及び複数のナット66により原子炉容器本体42の上部に着脱自在に装着されている。この場合、スタッドボルト65は、図7−1に詳細に示すように、下部ねじ部65a、貫通部65b、上部ねじ部65c、平行溝部65dを有している。そして、上部ねじ部65cにナット66が螺合するスタッドボルト65は、貫通部65bが原子炉容器蓋43に形成された取付穴43aを貫通し、下部ねじ部65aが原子炉容器本体42に形成されたねじ穴42aに捩じ込まれた状態で、スタッドボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(ここでは、上方)にテンションを作用させながら、ナット66を螺合することで、締結または弛緩することができ、原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43を着脱することができる。
【0040】
ここで、本発明の被締結部材は、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43である。そして、実施例1の締結弛緩装置は、複数のスタッドボルト65及びナット66を用いて原子炉容器本体42に対して原子炉容器蓋43を取付けたり、取り外したりすることができるものである。以下、実施例1の締結弛緩装置について詳細に説明する。
【0041】
実施例1において、図1及び図2に示すように、原子炉格納容器11(図11参照)を構成する建屋11aに対してハウジング59の支持円盤59aが複数の支持ロッド71により支持されている。この支持円盤59aは、外周部にガイドレール72が固定され、4つの搬送装置(電動トロリーホイスト)73が移動自在に支持されている。そして、この4つの搬送装置73は、それぞれリフト装置74を有しており、吊りケーブル75を介して締結弛緩装置76が吊り下げ支持されると共に、昇降可能となっている。この場合、4つの搬送装置73及び締結弛緩装置76は、ほぼ同様の構成をなし、周方向に均等間隔(90度間隔)に配置されている。
【0042】
搬送操作装置77は、テンション制御装置78が連結されると共に、電源部79及び空気圧源80が連結されている。そして、搬送操作装置77は、電源ケーブル81により各搬送装置73及び各締結弛緩装置76に接続されると共に、空圧ホース82により各締結弛緩装置76に接続されている。
【0043】
締結弛緩装置76は、上述したように、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の外周部に対して複数のスタッドボルト65が捩じ込まれて配列されると共に、この複数のスタッドボルト65にそれぞれナット66が螺合し、スタッドボルト65に原子炉容器本体42から離間する軸心方向にテンションを作用させながらナット66を回転して締結または弛緩を行うものである。
【0044】
即ち、締結弛緩装置76は、図3乃至図5に示すように、装置本体101と、ボルトテンショナ102と、2つのガイド装置103と、2つの位置決め装置104と、ガイド位置調整装置105と、嵌入位置調整装置106とから構成されている。
【0045】
吊り金具111は、搬送装置73におけるリフト装置74の吊りケーブル75に吊り下げ支持可能であり、複数の吊りロッド112により支持プレート113が支持されている。装置本体101は、この吊り金具111、吊りロッド112、支持プレート113などにより構成されている。従って、装置本体101は、上部が搬送装置73に支持されることで、スタッドボルト65の配列方向(原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の円周方向)に沿って移動自在に支持されることとなる。
【0046】
ボルトテンショナ102は、上部が支持プレート113の中央部を貫通するように支持されており、上部に油タンク114、油圧ポンプユニット115、圧力計116が配置されている。従って、ボルトテンショナ102は、装置本体101に装着されることから、リフト装置74の作動によりスタッドボルト65の軸心方向に沿って移動自在となる。
【0047】
このボルトテンショナ102において、図6に示すように、円筒形状をなすハウジング201は、上部が支持プレート113に嵌入して固定されており、先端部が原子炉容器蓋43の上面に当接可能となっている。プラーバ202は、ハウジング201よりも小径の円筒形状をなし、このハウジング201内の中心部に収容されている。このプラーバ202は、ハウジング201の内周面に図示しないピストンを介して移動自在に嵌合しており、油圧ポンプユニット115により給排される油圧により軸心方向(上下方向)に沿って移動可能となっている。そして、プラーバ202は、下端部に平行溝部202aが形成されている。
【0048】
プラーバソケット203は、周方向に4分割された円筒形状をなし、ハウジング201とプラーバ202の下端部及びスタッドボルト65との間に配置されている。このプラーバソケット203は、上端部がカラー204を介してプラーバ202の下部に支持されており、4分割された各部材が径方向に移動自在で、且つ、外側に付勢支持されている。そして、このプラーバソケット203は、上部内周面にプラーバ202の平行溝部202aに係合する上係合溝部203aが形成されると共に、下部内周面にスタッドボルト65の平行溝部65dに係合する下係合溝部203bが形成されている。また、プラーバソケット203は、外周面に凹凸部203cが形成されている。
【0049】
また、ロッキングリング205は、円筒形状をなし、ハウジング201とプラーバソケット203との間に配置されている。このロッキングリング205は、内周面にプラーバソケット203の凹凸部203cに嵌合可能な凹凸部205aが形成されている。そして、ロッキングリング205は、ハウジング201の内周面に装着された複数のエアシリンダ206により昇降可能となっている。従って、ロッキングリング205が上昇位置にあるとき、図6にて左側に示すように、プラーバソケット203が径方向の外側に移動し、凹凸部205aがこのプラーバソケット203の凹凸部203cに嵌合しており、各係合溝部203a,203bは、プラーバ202の平行溝部202a及びスタッドボルト65の平行溝部65dに係合していない。一方、ロッキングリング205が下降位置にあるとき、図6にて右側に示すように、凹凸部205aがプラーバソケット203の凹凸部203cを押圧し、プラーバソケット203が径方向の内側に移動し、各係合溝部203a,203bは、プラーバ202の平行溝部202a及びスタッドボルト65の平行溝部65dに係合する。
【0050】
ハウジング201は、その下端内周部にナットソケット207が回転自在に支持されており、外周部に従動ギア208が固定されている。このナットソケット207は、ナット66に対して軸心方向には相対移動自在である一方、周方向には一体回転自在になっている。また、ハウジング201は、その下端外周部にナットソケット207を回転させるナット回転装置209が装着されている。このナット回転装置209は、ハウジング201に固定されるケース210、電動サーボモータ211、駆動ギア212、3つの中間ギア213から構成されている。従って、電動サーボモータ211により駆動ギア212を正回転させると、その回転駆動力が各中間ギア213を介して従動ギア208に伝達され、ナットソケット207を回転し、ナット66を回転して締結することができる。一方、電動サーボモータ211により駆動ギア212を逆回転させると、その回転駆動力が各中間ギア213を介して従動ギア208に伝達され、ナットソケット207を回転し、ナット66を回転して弛緩することができる。
【0051】
従って、まず、図7−1に示すように、搬送装置73により締結弛緩装置76を移動し、所定の位置、つまり、ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66の位置で停止する。次に、図7−2に示すように、リフト装置74により締結弛緩装置76を下降し、ボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66に係合させる。そして、図7−3に示すように、プラーバソケット203を径方向の内側に移動し、スタッドボルト65の平行溝部65dをチャッキングする。この状態で、図7−4に示すように、油圧ポンプユニット115を作動することでプラーバ202を上昇させ、スタッドボルト65に対して原子炉容器本体42から離間する軸心方向(上方)にテンションを作用させる。そして、図7−5に示すように、ナット回転装置209を作動することでナットソケット207を回転し、ナット66を回転して締結または弛緩することができる。
【0052】
また、締結弛緩装置76にて、図3乃至図5に示すように、ボルトテンショナ102に対して装置本体101の移動方向の前後にガイド装置103が設けられている。この前後のガイド装置103は、ボルトテンショナ102の中心線に対して対称をなす形状であり、ほぼ同様の構成となっている。
【0053】
即ち、前後のシリンダ121は、本体が支持プレート113に固定され、下方に延びるピストンロッド121aの先端部に断面が逆U字形状をなす箱体122が連結されている。なお、シリンダ121は、ピストンロッド121aの最長伸張位置が規制されている。この箱体122は、図8に詳細に示すように、装置本体101の移動方向の左右両側に内ガイド部材123と外ガイド部材124が装着されている。この各ガイド部材123,124は、それぞれが対向する側にガイド片125,126が固定され、このガイド片125,126は、スタッドボルト65の配列方向(円周方向)に沿った湾曲形状をなしている。この場合、各ガイド片125,126は、隣接する2つ(または、3つ以上)のナット66の外周に接触可能となっている。また、各ガイド部材123,124は、前方側の端部と後方側の端部にそれぞれ上下に沿う回転軸心を有するガイドローラ127,128が装着されている。
【0054】
この場合、箱体122、ガイド部材123,124、ガイド片125,126、ガイドローラ127,128などによりガイド装置103が構成されている。また、シリンダ121は、内部に油が充填されることでダンパとして機能し、装置本体101と共にボルトテンショナ102が昇降しても、ピストンロッド121aが伸縮することで、装置本体101とガイド装置103とが相対移動するようになっている。更に、2つのガイド装置103は、円周方向の外側で、各箱体122が上下2つの連結部材129により連結されており、所定の剛性が確保されている。
【0055】
従って、この各ガイド部材123,124におけるガイド片125,126やガイドローラ127,128は、装置本体101の移動方向の左右両側から各スタッドボルト65に螺合した各ナット66の外周に接触することで、この装置本体101の下部をガイドすることができる。
【0056】
また、締結弛緩装置76にて、図3乃至図5に示すように、ボルトテンショナ102に対して装置本体101の移動方向の前後にガイド装置103と共に位置決め装置104が設けられている。この前後の位置決め装置104は、ガイド装置103に装着され、ボルトテンショナ102の中心線に対して対称をなす形状であり、ほぼ同様の構成となっている。
【0057】
即ち、ガイド装置103の箱体122の側部(原子炉容器蓋43における円周方向の外側)に箱型のケース131が固定され、このケース131内にエアシリンダ132が装着されている。このエアシリンダ132は、原子炉容器蓋43における円周方向の内側に向けてピストンロッド132a(図8参照)が伸縮可能であり、先端部に隣接するナット66間に円周方向の外側から嵌入する位置決め部材133が装着されている。また、ケース131は、箱体122側に位置して下部に車輪134が装着されており、ガイド装置103及び位置決め装置104の荷重が車輪134により支持され、原子炉容器蓋43の上面を転動可能となっている。
【0058】
この場合、ケース131、エアシリンダ132、位置決め部材133などにより位置決め装置104が構成されている。
【0059】
従って、所定の位置で、エアシリンダ132を作動してピストンロッド132aを伸張すると、位置決め部材133が隣接するナット66間に嵌入することで、装置本体101をその移動方向に対して所定の位置に位置決めすることができる。
【0060】
なお、前方側のガイド装置103の箱体122に、締結弛緩装置による作業前後におけるスタッドボルト65の伸び量を検出する伸び量検出装置141が設けられ、この伸び量検出装置141の検出結果に基づいてボルトテンショナ102に適正にテンションが作用して締結されているかを検出している。また、前方側のガイド装置103の箱体122にナット66を検出するナット検出センサ(光センサ)142が設けられ、位置決め装置104のケース131に車輪134の回転数を検出するロータリエンコーダ143が設けられており、ナット検出センサ142及びロータリエンコーダ143の検出結果に基づいて装置本体101、つまり、ボルトテンショナ102の移動位置を検出している。
【0061】
そして、実施例1では、図9及び図10に示すように、ガイド装置103にて、内ガイド部材123を装置本体101の移動方向に交差する水平方向、つまり、円周方向にほぼ直交する内外方向に移動可能とするガイド位置調整装置105が設けられている。また、位置決め装置104にて、位置決め部材133(133a,133b)の嵌入位置を調整可能な嵌入位置調整装置106が設けられている。
【0062】
一般的に、原子炉容器は、その原子炉の設置位置やプラントの発電能力などによりその大きさが相違しており、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43における外径、スタッドボルト65及びナット66の外径や本数などが異なってくる。そのため、ガイド装置103や位置決め装置104をスタッドボルト65及びナット66の外径や配列状態に応じてその位置を調整する必要がある。
【0063】
ガイド位置調整装置105にて、内ガイド部材123は、一端部(ボルトテンショナ102側)が箱体122に固定された取付ブラケット151に支持軸152により水平回動自在に支持され、他端部が箱体122に設けられた偏心機構153により揺動可能に支持されている。この偏心機構153にて、箱体122に固定された取付ブラケット154に回動体155が設けられ、この回動体155は、取付ブラケット154に固定された回転軸156に回転自在に支持されている。そして、この回動体155は、回転軸156が貫通する偏心体157が形成され、この偏心体157の外周部に支持アーム158の基端部が係合し、支持アーム158の先端部が内ガイド部材123の他端部に連結軸159により連結されている。また、回動体155は、操作ハンドル160が装着され、箱体122にこの操作ハンドル160のストッパ161a,161bが設けられると共に、取付ブラケット154に操作ハンドル160のロックピン162a,162bが着脱自在に設けられている。
【0064】
従って、図9に示すスタッドボルト65及びナット66の配列状態と、図10に示すスタッドボルト65及びナット66の配列状態とが相違している場合、ガイド位置調整装置105により内ガイド部材123の位置をそれぞれの配列状態に応じて調整する必要がある。即ち、図9に示す状態から、操作ハンドル160を時計回り方向に180度だけ回動すると、一体の偏心体157が同様に回動し、図10に示すように、この偏心体157の偏心量だけ支持アーム158を介して内ガイド部材123を円周方向の外側に移動することができる。また、図10に示す状態から、操作ハンドル160を反時計回り方向に180度だけ回動すると、前述と同様に、偏心体157の偏心量だけ支持アーム158を介して内ガイド部材123を円周方向の内側に移動することができる。
【0065】
また、嵌入位置調整装置106にて、図9及び図10に示すように、エアシリンダ132は、ピストンロッド132aの先端部に位置決め部材133が装着されているが、スタッドボルト65及びナット66の配列状態に応じて交換可能となっている。2つの位置決め部材133a,133bは、支持板171a,171bがピストンロッド132aの先端部に対して連結ピン172a,172bにより着脱自在となっている。この支持板171a,171bは、先端部側に2つの位置決めローラ173a,173bが回転自在に支持されており、隣接するナット66の外周面に接触可能となっている。この場合、2つの位置決め部材133a,133bは、支持板171a,171bに対する位置決めローラ173a,173bの装着位置が相違している。この位置決めローラ173a,173bの装着位置は、スタッドボルト65及びナット66の配列状態に応じて設定されている。
【0066】
ここで、上述した実施例1の締結弛緩装置の作動について説明する。
【0067】
実施例1の締結弛緩装置において、図1及び図2に示すように、原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外す場合、まず、4つの搬送装置73にリフト装置74を介して締結弛緩装置76を吊り下げ支持し、リフト装置74により締結弛緩装置76を下降することで、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43に締結されたスタッドボルト65及びナット66に対してセットアップする。そして、装置本体101と共にボルトテンショナ102を上昇し、このボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66の上方に配置する。この場合、前後のガイド装置103は配列されたナット66に係合している。
【0068】
この状態で、搬送装置73を作動し、締結弛緩装置76をスタッドボルト65及びナット66の配列方向に沿って移動する。そして、ボルトテンショナ102がスタッドボルト65及びナット66と上下に対向する位置に移動すると、搬送装置73の作動を停止し、位置決め装置104を作動することで、ボルトテンショナ102の位置決めを行う。即ち、ボルトテンショナ102は、装置本体101と共に搬送装置73から吊り下げられているだけであり、また、ガイド装置103は、移動するためにナット66との間に若干の隙間が設けられており、ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66との正確な位置決めが困難となる。そのため、位置決め装置104を作動し、位置決め部材133を外側から隣接するナット66の間に嵌入すると、位置決め装置104(位置決め部材133)とガイド装置103(内ガイド部材123)とでナット66を挟持することとなり、ボルトテンショナ102の正確な位置決めが可能となる。
【0069】
ボルトテンショナ102とスタッドボルト65及びナット66との正確な位置決めが完了すると、この状態で、ボルトテンショナ102を作動することで、ナット66を弛緩する。即ち、スタッドボルト65に原子炉容器本体42から離間する軸心方向にテンションを作用させながらナット66を逆回転して弛緩する。
【0070】
一つのナット66の弛緩が完了すると、リフト装置74により装置本体101と共にボルトテンショナ102を上昇し、このボルトテンショナ102をスタッドボルト65及びナット66の上方に離間する。このとき、ガイド装置103及び位置決め装置104などの自重によりシリンダ121が伸張することで、前後のガイド装置103及び位置決め装置104は配列されたナット66に係合している。この状態で、前述したように、搬送装置73により締結弛緩装置76をスタッドボルト65及びナット66の配列方向に沿って移動すると、ガイド装置103及び位置決め装置104は、車輪134により原子炉容器蓋43の上面を転動する。そして、ボルトテンショナ102がスタッドボルト65及びナット66と上下に対向する位置に移動すると、搬送装置73の作動を停止し、以下、前述と同様の作業を繰り返し行うことで、複数のナット66を順に弛緩していく。
【0071】
なお、4つの締結弛緩装置76は、周方向に等間隔で配置されており、各締結弛緩装置76は、同期して作動することで、原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43に締結されたスタッドボルト65及びナット66に対して偏荷重が作用することなくナット66を弛緩することができる。そして、全てのナットの弛緩作業が完了したら、4つの搬送装置73を停止し、各リフト装置74を作動して全ての締結弛緩装置76を吊り上げ、図示しないクレーン装置を用いて全ての締結弛緩装置76を取り外す。そして、図示しない回転装置を用いてスタッドボルト65を回転して取り外した後、クレーン装置により原子炉容器本体42から原子炉容器蓋43を取り外す。
【0072】
一方、原子炉容器本体42に原子炉容器蓋43を取付ける場合は、前述の作動と同様であるが、ボルトテンショナ102にて、ナット66の回転方向が逆になる。
【0073】
また、実施例1の締結弛緩装置を別の原子炉容器41に適用する場合、スタッドボルト65及びナット66の配列が相違していることから、事前に、ガイド位置調整装置105により内ガイド部材123の位置を調整すると共に、嵌入位置調整装置106により位置決め部材133a,133bを交換する。従って、ガイド位置調整装置105や嵌入位置調整装置106を用いることで、スタッドボルト65及びナット66の配列が相違しても、一つのガイド装置103や位置決め装置104を使用することが可能となる。
【0074】
このように実施例1の締結弛緩装置にあっては、上部が搬送装置73によりスタッドボルト65の配列方向に沿って移動自在に支持される装置本体101と、装置本体101と共にリフト装置74によりスタッドボルト65に対して昇降自在なボルトテンショナ102と、装置本体101にシリンダ121を介して相対移動自在に連結されて装置本体101の移動方向の左右両側からナット66の外周に接触可能な左右のガイド部材123,124を有するガイド装置103と、内ガイド部材123を装置本体101の移動方向に交差する水平方向に移動可能なガイド位置調整装置105とを設けている。
【0075】
従って、左右のガイド部材123,124は、装置本体101の両側からナット66の外周に接触することでこの装置本体101をガイドすることができ、ガイド位置調整装置105によりこの内ガイド部材123を装置本体101の移動方向に交差する水平方向に移動することで、ナット66に対する内ガイド部材123のガイド位置が調整されるため、スタッドボルト65及びナット66の大きさや形状に拘わらず内ガイド部材123が装置本体101を適正にガイドすることができ、その結果、スタッドボルト65に対して適正にナット66の締結と弛緩を行うことができる。
【0076】
また、実施例1の締結弛緩装置では、スタッドボルト65の配列方向が原子炉容器本体42及び原子炉容器蓋43の外周部に沿った円周方向であることから、ガイド装置103における内ガイド部材123をガイド位置調整装置105により移動可能としている。従って、ガイド位置調整装置105により内ガイド部材123を移動することで、ナット66に対する内ガイド部材123のガイド位置が調整されることとなり、簡単な構成で容易に内ガイド部材123の位置調整を行うことができる。そして、ガイド位置調整装置105を内ガイド部材123側に配置することができ、外側への突出物をなくして装置の複雑化を防止することができる。
【0077】
また、実施例1の締結弛緩装置では、隣接するナット66間に円周方向の外側から嵌入する位置決め部材133を有する位置決め装置104を設けている。従って、内ガイド部材123の反対側から位置決め装置104により位置決め部材133をナット66間に嵌入することで、ナット66を内ガイド部材123と位置決め部材133により挟持することとなり、装置本体101の適正な位置決めを行うことができる。
【0078】
また、実施例1の締結弛緩装置では、位置決め部材133の嵌入位置を調整可能な嵌入位置調整装置106を設けている。従って、嵌入位置調整装置106により位置決め部材133a,133bを交換して嵌入位置を調整することができるため、スタッドボルト65及びナット66の大きさや形状に拘わらず位置決め部材133a,133bが装置本体101を適正に位置決めすることができ、その結果、スタッドボルト65に対して適正にナット66の締結と弛緩を行うことができる。
【0079】
また、実施例1の締結弛緩装置では、ガイド位置調整装置105として、内ガイド部材123の一端部を回動自在に支持する支持軸152と、内ガイド部材123の他端部を移動可能とする偏心機構153とを設けている。従って、偏心機構153を作動するだけで、容易に内ガイド部材123のガイド位置を変更することができ、装置の簡素化を可能とすることができる。
【0080】
また、実施例1の締結弛緩装置では、ガイド装置103は、ボルトテンショナ102に対して装置本体101の移動方向の前後に設けられ、内外のガイド部材123,124は、2つ以上のナット66の外周に接触可能としている。従って、ガイド装置103によりボルトテンショナ102の前後で装置本体101の移動をガイドすることとなり、装置を安定して移動すると共に、ガイドすることができる。
【0081】
なお、上述した実施例1では、ガイド装置103を、箱体122、ガイド部材123,124、ガイド片125,126、ガイドローラ127,128などにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、ガイド装置103をガイド部材123,124だけ、または、ガイド片125,126だけで構成してもよい。また、多数のガイドローラにより構成してもよい。
【0082】
また、実施例1では、ガイド位置調整装置105にて、内ガイド部材123の一端部だけを移動するようにしたが、内ガイド部材123の他端部にも偏心機構153を設けて全体を移動可能としてもよい。また、内ガイド部材123だけでなく、外ガイド部材124に対してガイド位置調整装置を設けて移動可能としてもよい。そして、ガイド位置調整装置105は、偏心機構153に限るものではなく、ガイド部材を長穴により移動可能とし、所定の位置でロックピンにより固定するようにしてもよい。更に、モータにラック&ピニオン機構やボールねじ機構などを適用してもよい。
【0083】
更に、上述した実施例1では、位置決め装置104を、ケース131、エアシリンダ132、位置決め部材133などにより構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、エアシリンダ132に代えて油圧シリンダや電動モータなどを使用してもよい。また、位置決め部材133(133a,133b)を、支持板171a,171b、位置決めローラ173a,173bなどにより構成したが、この構成に限るものではない。例えば、位置決めローラ173a,173bは2つに限らず、1つまたは3つ以上でもよく、この位置決めローラ173a,173bに代えて先端部が先細となる嵌入部材としてもよい。
【0084】
また、実施例1では、嵌入位置調整装置106を、交換可能な2つの位置決め部材133(133a,133b)を設けることで構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、交換可能な3つ以上の位置決め部材を設けたり、エアシリンダ132のピストンロッド132aの先端部に所定の角度範囲だけ水平揺動自在な位置決め部材を装着することで構成したり、また、エアシリンダ132の装着位置を装置本体101の移動方向に沿って移動可能または揺動可能としたりしてもよい。
【実施例2】
【0085】
図13は、本発明の実施例2に係る締結弛緩装置におけるガイド位置調整装置を表す概略図、図14は、実施例2のガイド位置調整装置を表す平面図である。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
実施例2の締結弛緩装置において、図13及び図14に示すように、ガイド位置調整装置181は、ガイド装置103の箱体122を水平揺動可能としている。
【0087】
即ち、ガイド位置調整装置181は、移動調整用ベースプレート182と、2つのガイドプレート183と、調整機構184と、偏心機構185とを有している。移動調整用ベースプレート182は、上面部に2つのガイドプレート183が載置され、このガイドプレート183上にガイド装置103をそれぞれ搭載可能となっている。調整機構184は、移動調整用ベースプレート182の内部に収容され、ハンドル184aを回転することで、ガイドプレート183が仮想軸心Oを中心として水平回動することができる。なお、この調整機構184の具体的な構成は、一般的なものでよく、例えば、ウォームに噛み合うウォームホイールを回転することで、ガイドプレート183を水平回動するものでよい。偏心機構185は、シリンダ121のピストンロッド121aの先端部が嵌合すると共に外周部が箱体122に嵌合する偏心体185aを有している。なお、この偏心機構185は、実施例1の偏心機構153とほぼ同様の構成となっている。
【0088】
従って、図示しないクレーン装置により装置本体101(図3参照)を介してガイド装置103を上昇し、移動調整用ベースプレート182各ガイドプレート183上にこのガイド装置103を搭載する。そして、ガイド装置103の箱体122に対して、シリンダ121のピストンロッド121aを取り外した後、ハンドル184aを回転することでガイドプレート183と共にガイド装置103を回動し、その位置を調整する。ガイド装置103の位置調整作業が終了したら、偏心機構185における偏心体185aを回動することで、シリンダ121と箱体122の連結位置を調整し、ガイド装置103の箱体122に対して、シリンダ121のピストンロッド121aを取付ける。
【0089】
なお、2つのガイド装置103は、連結部材129により連結されているが、ガイド装置103の位置調整作業前に取り外し、作業後に別の連結部材を装着すればよい。
【0090】
このように実施例2の締結弛緩装置にあっては、ガイド位置調整装置181によりガイド装置103の箱体122を水平揺動可能としている。従って、ガイド位置調整装置181により箱体122を介してガイド装置103全体を揺動してガイド部材の位置を調整することとなり、位置調整代を十分に確保することで、汎用性を向上することができる。
【0091】
なお、上述した実施例2では、ガイド装置103をその外側の仮想軸心Oを中心として水平回動するようにしたが、この構成に限定されるものではない。例えば、ガイド装置103の箱体122に対するシリンダ121のピストンロッド121aの取付位置を中心としてガイド装置103を水平回動するようにしてもよく、この場合、偏心機構185を不要として構造の簡素化が可能となる。また、偏心機構185だけによりガイド位置調整装置を構成してもよい。
【0092】
また、上述した各実施例では、本発明の締結弛緩装置を原子炉容器41に適用して説明したが、被締結部材としてはこれに限るものではなく、複数のスタッドボルト及びナットが所定の方向に沿って配列されたものであれば、いずれのものであっても適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
11 原子炉格納容器
12 加圧水型原子炉
13 蒸気発生器
17 蒸気タービン
21 発電機
41 原子炉容器
42 原子炉容器本体(被締結部材)
43 原子炉容器蓋(被締結部材)
46 炉心槽
53 炉心
54 燃料集合体
55 制御棒
58 制御棒駆動装置
59 ハウジング
65 スタッドボルト
66 ナット
73 搬送装置
74 リフト装置
76 締結弛緩装置
101 装置本体
102 ボルトテンショナ
103 ガイド装置
104 位置決め装置
105,181 ガイド位置調整装置
106 嵌入位置調整装置
123 内ガイド部材
124 外ガイド部材
125,126 ガイド片
127,128 ガイドローラ
132 エアシリンダ
133,133a,133b 位置決め部材
153 偏心機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被締結物に対して複数のスタッドボルトが捩じ込まれて配列されると共に該複数のスタッドボルトにそれぞれナットが螺合し、前記スタッドボルトに前記被締結物から離間する軸心方向にテンションを作用させながら前記ナットを回転して締結または弛緩を行う締結弛緩装置であって、
上部が前記スタッドボルトの配列方向に沿って移動自在に支持される装置本体と、
該装置本体に支持されて前記スタッドボルトの軸心方向に沿って移動自在なボルトテンショナと、
前記装置本体の下部に設けられて前記装置本体の移動方向の左右両側から前記ナットの外周に接触可能な左右のガイド部材を有するガイド装置と、
前記左右のガイド部材における少なくとも一方のガイド部材を前記装置本体の移動方向に交差する水平方向に移動可能なガイド位置調整装置と、
を備えることを特徴とする締結弛緩装置。
【請求項2】
前記スタッドボルトの配列方向は、前記被締結物の外周に沿った円周方向であり、前記ガイド装置は、前記円周方向の内側に位置する前記ガイド部材が前記ガイド位置調整装置により移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の締結弛緩装置。
【請求項3】
隣接する前記ナット間に前記円周方向の外側から嵌入する位置決め部材を有する位置決め装置が設けられることを特徴とする請求項2に記載の締結弛緩装置。
【請求項4】
前記位置決め部材の嵌入位置を調整可能な嵌入位置調整装置が設けられることを特徴とする請求項3に記載の締結弛緩装置。
【請求項5】
前記ガイド位置調整装置は、前記ガイド部材の一端部を回動自在に支持する支持軸と、前記ガイド部材の他端部を移動可能とする偏心機構とを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の締結弛緩装置。
【請求項6】
前記ガイド装置は、箱体の下部に所定間隔をあけて前記左右のガイド部材が固定されて構成され、前記ガイド位置調整装置は、前記箱体を水平揺動可能であることを特徴とする請求項1に記載の締結弛緩装置。
【請求項7】
前記ガイド装置は、前記ボルトテンショナに対して前記装置本体の移動方向の前後に設けられ、前記ガイド部材は、2つ以上の前記ナットの外周に接触可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の締結弛緩装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−157949(P2012−157949A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20155(P2011−20155)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)