説明

編まれた開口を有する保護スリーブおよび構築方法

編まれた筒状の保護スリーブおよびその構築方法は、スリーブの開放された両端同士の間に延在する1本以上の糸から編まれた、連続的でシームレスな筒状の壁を提供する。少なくとも1つの開口が、端同士の間に筒状の壁に一体的に編込まれる。開口は、円周方向に連続する、編まれた外周を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2007年8月23日に出願された米国仮出願連続番号第60/957,494号の利益を主張し、この米国仮出願連続番号第60/957,494号は、全文が引用によって本明細書に援用される。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は一般に、細長い部材を保護するためのスリーブに関し、より特定的には、編まれた筒状の保護スリーブに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術
外部要素から保護し、スリーブ内に含まれる排気パイプ、ワイヤおよび管類などの細長い部材からの放熱に対する障壁を提供する、編まれた筒状のスリーブが知られている。スリーブは一般に、耐摩耗性および/または耐熱性および/または難燃性の糸から編まれており、比較的高温に耐え、スリーブの部分が径方向に膨張可能である。筒状のスリーブは一般に、連続的な、閉じた壁を有するように構築され、その結果、スリーブはソックスのような態様で保護対象物上を摺動するに違いない。閉じた壁の構成であると仮定して、時として多数のスリーブが互いに組合せて用いられて、たとえばセンサなどの突出部または保護対象物から分岐する部材を収容し、隣接するスリーブは、それぞれの障害物の両側で互いに固定される。これは、組立プロセスを複雑にし、人件費/部品コストを上乗せする。そうでなければ、多数のスリーブを用いることを回避するために、いくつかのスリーブは、それぞれの突出部および/または保護対象物から分岐する部材を収容するために、または保護対象物からの突出部に対して静止位置にスリーブを置くことを容易にするために、閉じた壁に開口が形成されている。開口、または場合によっては多数の開口を形成するために、壁に切込みを入れなければならず、それによって、壁を形成する糸の端部がほつれ、緩くなる。この結果、一般に、スリーブを形成する糸が解け、それによって、意図されたとおりに機能する能力が低下し、その有用寿命が低下する。
【0004】
したがって、スリーブの有用性の劣化の危険性を減らすために、2次切断および縫製作業において開口を形成することが知られている。2次作業では、開口を形成する切断端縁は、解ける可能性を低くするために縫製される。残念ながら、これらの2次作業は、製造プロセスに費用を上乗せする。さらに、使用中にステッチが緩くなった場合、縫製された端縁は、将来的に解けることの潜在的な原因になる。
【0005】
本発明に従って製造された編みスリーブは、とりわけ、上述の公知のスリーブのいかなる制約も克服または大幅に最小化する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明の一局面に従って構築された筒状の保護スリーブは、スリーブの開放された両端同士の間に延在する少なくとも1本の糸から編まれた、連続的でシームレスな筒状の壁を有する。少なくとも1つの開口が、端同士の間に筒状の壁に一体的に編込まれる。開口は、円周方向に連続する、編まれた外周を有する。
【0007】
本発明の別の局面によると、開口は、壁を形成する少なくとも1本の糸の切断されていない、連続的な部分によって境界される。
【0008】
本発明の別の局面によると、開口は、任意の好適なサイズおよび形状を有するように編まれ得る。
【0009】
本発明のさらに別の局面によると、スリーブの壁および開口は、任意の所望の編みパターンおよびステッチタイプを用いて編まれ得る。
【0010】
本発明のさらに別の局面によると、筒状の壁を形成する少なくとも1本の糸は、任意の所望のサイズで、かつ不燃性および耐燃性材料を含む任意の好適な材料で与えられ得る。
【0011】
本発明のさらに別の局面によると、任意の数の編まれた開口が、スリーブの両端同士の間に構築され得る。
【0012】
本発明のさらに別の局面によると、スリーブの筒状の壁は、折返された自身の上に互いに一列に並ぶように配置された、編まれた開口を有し得る。
【0013】
本発明のさらに別の局面によると、筒状の壁の両端は、仕上げ編みされた端であり得る。
【0014】
本発明のさらに別の局面によると、筒状のスリーブを構築する方法が提供される。この方法は、編み機を提供するステップと、編み機で筒状のスリーブを編むステップとを含む。さらにこの方法は、筒状のスリーブを編みつつ、スリーブの両端同士の間に少なくとも1つの開口を編むステップを含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面によると、この構築方法は、平型ベッド横編み機としての編み機を提供するステップを含む。
【0016】
本発明のさらに別の局面によると、この方法は、筒状のスリーブを折返してスリーブに複数の筒状の壁を与えるステップを含む。
【0017】
本発明のさらに別の局面によると、この方法は、筒状の壁の両端同士の間に複数の開口を編むステップと、筒状の壁を折返して、少なくとも1対の開口を互いに一列に並べるステップとを含む。
【0018】
本発明に従って構築された、編まれた筒状のスリーブのこれらのおよび他の局面、特徴および利点は、現在のところ好ましい実施例および最良の形態の以下の詳細な説明、添付の特許請求の範囲、ならびに添付の図面に関連して考慮すると、より容易に理解されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一局面に従って構築された筒状のスリーブの概略平面図である。
【図2】折重ねられていない状態で示される、本発明の別の局面に従って構築された筒状のスリーブの概略側面図である。
【図3】折返された状態で示される、図2の筒状のスリーブの概略斜視図である。
【図4】自身から延在する突起部を有する細長い部材の周りに配置されて示される、本発明に従って構築されたスリーブの概略側面図である。
【図5】本発明の一局面に従って筒状のスリーブに一体型の開口を編むための表編みパターンの一部を示す図である。
【図6】本発明の一局面に従って筒状のスリーブに別の一体型の開口を編むための表編みパターンの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
現在のところ好ましい実施例の詳細な説明
より詳細に図面を参照して、図1は、たとえば排気パイプ、流体搬送導管またはワイヤハーネスなどの細長い部材を保護するための、本発明の一局面に従って構築された、編まれた筒状のスリーブ10を概略的に示す。スリーブ10は、両端14と16との間に延在するシームレスな筒状の壁12を有し、端14は好ましくは仕上げ編みされた端であり、少なくとも1つの開口18が、仕上げ編みされた両端14と16との間に単一の連続的な編み作業において編まれる。開口18は、突起部または保護されている細長い部材から分岐する物を収容するために、所望のごとく、予め定められた一連の針およびステッチの移動を用いて、任意のサイズおよび形状を有するように編まれ得る。したがって、開口18は筒状のスリーブ10が編みプロセスにおいて構築される際に形成されるので、開口18を形成するための2次作業を行う必要がなくなる。また、開口18は単一の編み作業において一体的に編まれるため、開口18は、スリーブを構築するために用いられる少なくとも1本の連続的な切断されていない糸で形成される。したがって、開口18の周縁20を形成する1本以上の糸は壁12に直接的に編み込まれ、開口18の周縁の周りに切断されずに残り、したがって解けることがなく、それによって、スリーブ10に長く有用な寿命を提供する。
【0021】
筒状の壁12は、単一の壁を有するように編まれ得る(図1)。そうでなければ、別の実施例において示されるように、複数の重なり層21、23を有する筒状の壁112を提供するためのプロセスにおいて、スリーブ110が編まれ得る(図3)。スリーブ110が2つ以上の壁または層を有する場合、筒状のスリーブの一端を折返して、所望の数の重なり壁を提供することができる。折返しプロセスを用いてスリーブを構築する場合、一端114は、互いに隣接して配置された1対の仕上げ編みされた開放端を有するように設けられ得るのに対して、他端116は、折重ねられていない壁112の中央部28(図2)の近くに一般に位置する重なり材料の閉鎖端として設けられ得る。折返されたスリーブ110は、予め定められた軸方向に互いに間隔があいた位置に筒状の壁112の長さに沿って一体的に編まれた複数の開口118を有するように構築されるので、筒状の壁112の一端114(図2)が折返されると、開口118の少なくともいくつかが一列に並ぶか、または互いに位置合わせされて(図3)、スリーブ110の内部空洞22から重なり層を貫通してスリーブ110の外面24に延在する単一の貫通孔を提供する。
【0022】
筒状のスリーブ10、110の製造において、用いられる1本以上の糸は、耐火性および/または難燃性(fire retardant)(FR)の糸を含む任意の好適なTexおよび材料のモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントとして提供され得る。FR性能とともに高温定格が所望である場合、現在のところ好ましいいくつかの糸材料は、たとえばm−アラミド(Nomex(ノーメックス)、コーネックス(Conex)、ケルメル(Kermel))、p−アラミド(ケブラー(Kevlar)、トワロン(Twaron)、テクノーラ(Technora))、PEI(ウルテム(Ultem))、PPS、およびPEEKを含む。スリーブ10、110から延在する突起部26の数に依存して、任意の数の開口18、118がスリーブ10、110の長さに沿って編まれ得る。図4に示されるように、突起部26は、たとえば排気パイプ28を車両のフレーム31に取付けるためのブラケット29であり得るか、またはたとえば排気パイプ28に連通して配置された酸素センサなどのセンサであり得る。そうでなければ、突起部26は、保護されている細長い部材の長さに沿って意図される軸方向の位置にスリーブ10、110を置いて維持するのを容易にするために組込まれ得る。
【0023】
スリーブ10、110を構築する際、たとえばコンピュータ化された平型ベッド横編み機(たとえば、島精機SSG機械)などの編み機が提供される。したがって、スリーブ10、110は、平編み材料として構築され、連続的に編まれてシームレスな筒状の壁12になる。編み作業中、開口18、118は壁の長さに沿って予め定められた位置に編込まれ、その結果、開口18、118を形成する1本以上の糸は、連続的で、途切れのない、切断されていない糸として編まれる。したがって、開口18、118を形成するための2次作業は不要である。開口を作り出すため、1本または複数の糸は、「バインドオフ(bind-off)」ステッチを用いて解けないようにされる。したがって、開口18、118を形成する糸は、解けやすいであろう緩い自由端を持たない。したがって、仕上がったスリーブ10、110は、長く有用な寿命を示す。さらに、糸は任意の好適なステッチおよびパターンで編まれ得る。たとえば、図1および図2に概略的に示されるように、パターンは2×2パターンでもよいが、たとえば所望のごとく1×1、2×1、3×1、または3×3などの任意の好適なパターンで編まれてもよい。図1から図3に示されるような任意の好適な長さの一体的に編まれた切込み型開口を、限定されず一例として図5に示されるような編みパターンで提供するように、編みが行なわれ得る。図4に概略的に示されるような概して円形または正方形などの任意の好適な形状の開口を、限定されず一例として図6に示されるような編みパターンを用いて提供するように、編みが行なわれ得る。採用される一連の針およびステッチの移動に依存して、直線または別の形状などの、正方形以外の概して正方形の開口を形成できることを認識すべきである。
【0024】
明らかに、上述の教示に鑑みて、本発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、添付の特許請求の範囲内において、この発明は具体的に記載されたものとは別の態様で実施されてもよいと理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い部材を保護するためのスリーブであって、
前記スリーブの両端同士の間に延在する囲まれた空隙を提供する筒状の壁を備え、前記筒状の壁は、複数の表編みによって互いに連結された複数の糸から構築され、前記スリーブはさらに、
前記両端同士の間に前記筒状の壁に一体的に編まれた少なくとも1つの開口を備え、前記開口は、円周方向に連続する、編まれた外周を有する、スリーブ。
【請求項2】
前記筒状の壁は円周方向に連続する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項3】
円周方向に連続する、編まれた前記外周は、前記複数の糸の少なくともいくつかから前記筒状の壁と同時に編まれる、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項4】
円周方向に連続する、編まれた前記外周は、前記複数の糸の切断されていないものから形成される、請求項3に記載のスリーブ。
【請求項5】
前記複数の糸の各々は、前記端同士の間に連続して延在する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項6】
前記端は仕上げ編みされている、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項7】
前記筒状の壁は前記表編みのパターンを有し、前記少なくとも1つの開口は前記パターンにおける変化によって構成される、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項8】
前記筒状の壁は1対の前記開口を有し、前記端の一方は折返されて前記筒状の壁に内壁および外壁を与え、前記内壁は前記1対の開口の一方を有し、前記外壁は前記1対の開口の他方を有し、前記1対の開口は互いに位置合わせされて、前記内壁および前記外壁を貫通して延在する単一の開口を提供する、請求項1に記載のスリーブ。
【請求項9】
細長い部材を保護するための筒状のスリーブを構築する方法であって、
編み機を提供するステップと、
編み機で、両端同士の間に延在する編みパターンを有する筒状のスリーブを編むステップと、
筒状のスリーブを編みつつ、前記両端同士の間に少なくとも1つの開口を編むステップとを備える、方法。
【請求項10】
筒状のスリーブを横編みするステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
平型ベッド編み機で筒状のスリーブを編むステップをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
円周方向にシームレスな壁を有する筒状のスリーブを編むステップをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
両端同士の間に1対の開口を編み、端の一方を折返し、1対の開口を互いに位置合わせして、スリーブの重なった内側層および外側層を貫通する単一の開口を形成するステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
両端を仕上げ編みするステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
編み機で編みパターンを変更することによって開口を編むステップをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
バインドオフ編みパターンを形成することによって開口を作り出すステップをさらに備える、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−537079(P2010−537079A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522097(P2010−522097)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/074144
【国際公開番号】WO2009/026577
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(503170721)フェデラル−モーグル パワートレイン インコーポレイテッド (32)
【氏名又は名称原語表記】Federal−Mogul Powertrain, Inc.
【住所又は居所原語表記】26555 Northwestern Highway, Southfield, Michigan 48034, U.S.A.
【Fターム(参考)】