説明

編地巻下げ装置

【課題】 摩擦抵抗を減らして、駆動トルクを小さくし、適切な巻下げ力で安定した編成を可能にする編地巻下げ装置を提供する。
【解決手段】 下の駆動軸15は、横編機の基体に対して回転可能に支持され、(a)に示す方向11a,12aの回転駆動力が伝達される。上の駆動軸14に対し、転がりで回転を支持する支持ローラ27を備えるので、上の駆動軸14を回転させて巻下げベルト13を周回させる際の摩擦抵抗を減らして、下の駆動軸15への駆動トルクを小さくすることができ、適切な巻下げ力で安定した編成が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機の歯口下方に設けられ、編成された編地を巻下げるための編地巻下げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来から、横編機に備えられる編地巻下げ装置の一例の構成を、簡略化して示す(たとえば、特許文献1参照)。(a)に示すように、横編機1の前後の針床2,3には、編針4が並設され、針床2,3間の歯口5の上方からフック4aに供給される編糸を引込んで編目を形成することを繰り返して、編地6が編成される。編針4は、たとえば複合針であり、フック4aはスライダーのタング4bによって開閉される。編針4としては、フック4aをラッチで開閉するべら針も使用される。編地6は、一方または両方の針床2,3の編針4から歯口5に垂下する。編地巻下げ装置10は、歯口5の下方に設けられ、垂下する編地6を両側から巻下げユニット11,12で挟んで巻下げる。
【0003】
各巻下げユニット11,12は、巻下げベルト13、上の駆動軸14、下の駆動軸15および支持フレーム16を含む。巻下げベルト13は、たとえばゴム製であり、上下の駆動軸14,15間に掛け渡され、内部に支持フレーム16を収容する。上下の駆動軸14,15は、たとえば、金属製または合成樹脂製である。支持フレーム16は、たとえば合成樹脂材料で軽量化されており、上下の駆動軸14,15の外周にそれぞれ摺接する。上の駆動軸14および支持フレーム16は、巻下げベルト13を掛け渡している状態で、軸心15aまわりの揺動変位が可能なように、下の駆動軸15によって支持される。下の駆動軸15は、横編機1の基台によって、回転可能な状態で支持され、巻下げユニット11,12で異なる方向11a,12aの回転駆動力を受ける。この回転駆動力で、巻下げユニット11,12の上部が接近して、周回する巻下げベルト13で編地6を両側から挟んで巻下げる。
【0004】
図6(b)は、図示を省略しているばねによる付勢で、巻下げユニット11,12の上部が開いている状態を示す。下の駆動軸15に、図6(a)に示す方向11a,12aの回転駆動力を与えれば、ばね付勢に抗して、巻下げユニット11,12の上部を閉じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63−17941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示すような編地巻下げ装置10では、支持フレーム16と上下の駆動軸14,15の外周とに巻下げベルト13が掛け渡されて、支持フレーム16と上下の駆動軸14,15の外周とが密着する。巻下げベルト13を静止状態から周回駆動する際には、密着部分が動き出して摺接状態になるまで、支持フレーム16と上下の駆動軸14,15との間に、大きな摩擦抵抗が発生する。このため、巻下げベルト13を周回させるために、大きな駆動トルクを必要とし、適切な巻下げ力で編地6を引下げることが難しく、安定した編成が困難となる。また編地6には、負荷がかかる場合もある。
【0007】
本発明の目的は、摩擦抵抗を減らして、駆動トルクを小さくし、適切な巻下げ力で安定した編成を可能にする編地巻下げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、横編機の歯口下方で、編成されて歯口から垂下する編地の両側に、巻下げユニットがそれぞれ配置され、
各巻下げユニットは、
巻下げベルトと、巻下げベルトが掛け渡される上下の駆動軸と、巻下げベルトの内側に収容される支持機構とを含み、
下の駆動軸は横編機の基体に対して回転可能に支持されるとともに、巻下げベルトを周回させる駆動力が伝達され、
支持機構は、上の駆動軸を下の駆動軸に対して揺動可能に支持し、
両側の巻下げユニットの上部で、編地を挟んで巻下げる編地巻下げ装置において、
支持機構は、上下の駆動軸の少なくとも一方に対し、転がりで回転を支持する部材を備える、
ことを特徴とする編地巻下げ装置である。
【0009】
また本発明で、前記転がりで回転を支持する部材は、前記上の駆動軸または前記下の駆動軸の外周に接触して回転を支持する支持ローラである、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記支持ローラは、前記上の駆動軸の外周、および前記下の駆動軸の外周に接触する、
ことを特徴とする。
【0011】
また本発明で、前記転がりで回転を支持する部材は、前記上の駆動軸または前記下の駆動軸の軸端に設ける回転軸受である、
ことを特徴とする。
【0012】
また本発明で、前記支持機構は、前記上の駆動軸から下方に向う前記巻下げベルトで前記編地を挟む部分を平面に近づけるように、巻下げベルトを案内する案内部材をさらに備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各支持ユニットでは、上下の駆動軸間に巻下げベルトが掛け渡され、巻下げベルトの内側に収容される支持機構で、上の駆動軸を下の駆動軸に対して揺動可能に支持する。支持機構は、上下の駆動軸の少なくとも一方に対し、転がりで回転を支持する部材を備えるので、巻下げベルトを周回させる際の摩擦抵抗を減らして、駆動トルクを小さくすることができ、適切な巻下げ力で安定した編成が可能になる。
【0014】
また本発明によれば、上の駆動軸または下の駆動軸の外周を支持ローラで支持して、支持機構との間の摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0015】
また本発明によれば、上の駆動軸の外周と下の駆動軸の外周との間に共通の支持ローラを介在させて、摩擦抵抗が小さい状態で、上下の駆動軸間を支持することができる。
【0016】
また本発明によれば、上の駆動軸または下の駆動軸を、軸線方向の端部に設ける回転軸受で、支持機構に摩擦抵抗が小さい状態で支持させることができる。
【0017】
また、本発明によれば、巻下げベルトが編地を挟む部分の面積が大きくなり、編地を確実に引下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例1としての編地巻下げ装置20の概略的な構成を示す簡略化した側面断面図、および巻下げユニット21,22の部分的な正面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2としての編地巻下げ装置30の概略的な構成を示す簡略化した側面断面図、および巻下げユニット31,32の部分的な正面図である。
【図3】図3は、本発明の実施例3としての編地巻下げ装置に使用する巻下げユニット41の部分的な正面図および簡略化した側面断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例4としての編地巻下げ装置に使用する巻下げユニット51の部分的な正面図および簡略化した側面断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例5としての編地巻下げ装置60の概略的な構成を示す簡略化した側面断面図である。
【図6】図6は、従来から横編機1に使用される編地巻下げ装置10の概略的な構成と動作とを示す簡略化した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図5で本発明を五つの実施例として説明する。各図の説明では、当該図面には存在せずに、図6も含めて先に説明する図には存在する符号を用いて説明したり、先に説明する図に示す部分と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する場合がある。なお、図1および図2の(a)に示す側面断面図は、(b)に示す部分的な正面図の切断面線A−Aから見た構成をそれぞれ示す。また、図3および図4の(b)に示す側面断面図は、(a)に示す部分的な正面図の切断面線B−Bから見た構成をそれぞれ示す。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1としての編地巻下げ装置20の概略的な構成を示す。(a)に示すように、編地巻下げ装置20は、巻下げユニット21,22を有する。巻下げユニット21,22は、図6の巻下げユニット11,12と同様に上部が開閉し、上部が閉じている状態で、歯口から垂下する編地を両側から巻下げベルト13で挟んで引下げる。上下の駆動軸14,15は、軸心14a,15aが平行であり、上下の駆動軸14,15間には、巻下げベルト13が掛け渡される。二点鎖線で示す巻下げベルト13の内側には、支持機構として、支持フレーム26および支持ローラ27が収容される。回転を支持する部材としての支持ローラ27は、たとえば二つ設けられ、外周が上の駆動軸14の外周に接触しながら、支持フレーム26に対して上の駆動軸14を回転可能な状態で支持する。上の駆動軸14と支持フレーム27とは接触しない。支持ローラ27の周囲の支持フレーム26には空間が設けられ、支持ローラ27の外周が支持フレーム26に接触しない状態で、軸心27aまわりに回転するように、ローラ軸28が支持フレーム26で支持される。
【0021】
(b)では一つの支持ローラ27を示すけれども、支持ローラ27は、上の駆動軸14の外周を、軸方向に間隔をあけた複数箇所で支持する。巻下げベルト13の内周側には、波状の凹凸が幅方向に繰返して設けられ、下の駆動軸15の外周面にも対応する凹凸が設けられて、巻下げベルト13が幅方向にずれないようにしている。
【0022】
下の駆動軸15は、図示を省略している機構で、横編機の基体に対して回転可能に支持され、また、図6(a)に示す方向11a,12aの回転駆動力が伝達される。支持機構は、上の駆動軸14に対し、転がりで回転を支持する支持ローラ27を備えるので、上の駆動軸14を回転させて巻下げベルト13を周回させる際の摩擦抵抗を減らして、下の駆動軸15への駆動トルクを小さくすることができ、適切な巻下げ力で安定した編成が可能になる。
【実施例2】
【0023】
図2は、本発明の実施例2としての編地巻下げ装置30の概略的な構成を示す。(a)に示すように、編地巻下げ装置30は、巻下げユニット31,32を有する。巻下げユニット31,32は、図1の巻下げユニット21,22と同様に動作する。二点鎖線で示す巻下げベルト13の内側には、支持機構として、支持フレーム36および回転軸受37が収容される。(b)に示すように、回転を支持する部材としての回転軸受37は、支持フレーム36の軸受支持部36aで外径側を支持され、内径側で上の駆動軸14の端部を回転可能な状態で支持する。上の駆動軸14の他端でも、同様な支持が行われ、(a)の軸受支持部36aは他端側を示す。
【0024】
本実施例2では、上の駆動軸14の外周を支持フレーム36には接触させずに、回転軸受37を介して支持フレーム36で支持するので、実施例1と同様な摩擦抵抗減の効果を奏する。回転軸受37による支持に加えて、実施例1の支持ローラ27による回転支持を行えば、さらに摩擦抵抗を小さくすることもできる。
【実施例3】
【0025】
図3は、本発明の実施例3としての編地巻下げ装置に使用する巻下げユニット41の概略的な構成を示す。本実施例3でも、巻下げユニット41は二つ用いて、編地を両側から挟んで引下げる。本実施例3の支持機構は、支持フレーム46a,46bと支持ローラ47とを含む。支持フレーム46a,46bは、二つの部分が組合されている。支持フレーム46aは、図6の支持フレーム16と同様に、上の駆動軸14の外周に摺接して、回転を支持する。支持フレーム46bは、回転を支持する部材としての支持ローラ47のローラ軸48を、軸心47aまわりの回転が可能な状態で支持する。
【0026】
(a)に示すように、支持ローラ47は、軸方向に間隔をあけて、複数が設けられ、それぞれ下の駆動軸15の外周に接触して回転可能な状態で支持する。支持ローラ47の周囲には空間が設けられ、支持ローラ47の外周と支持フレーム46bとは接触しない。(b)に示すように、支持ローラ47は、下の駆動軸15の周方向にも間隔をあけて、複数、たとえば二つ設けられ、下の駆動軸15の外周は支持フレーム47bには接触しない。なお、回転を支持する部材として、下の駆動軸15の外周に接触する支持ローラ47ではなく、図2で上の駆動軸14の軸端を支持するような回転軸受を用いることもできる。また、回転軸受と支持ローラ47とを併用することもできる。
【実施例4】
【0027】
図4は、本発明の実施例4としての編地巻下げ装置に使用する巻下げユニット51の概略的な構成を示す。本実施例4でも、実施例3と同様に、二つの巻下げユニット51の一方のみを示す。本実施例4の支持機構は、支持フレーム56と支持ローラ57とを含む。
【0028】
(a)に示すように、支持ローラ57は、上下の駆動軸14,15の軸方向の端部付近に設けられ、軸心57aまわりに回転可能なように、軸58が支持フレーム56で支持される。支持ローラ57の外周は、上下の駆動軸14,15の外周に接触して回転可能な状態で支持する。軸方向の他方でも、同様な支持が行われる。(b)に示すように、支持ローラ57は、回転を支持する部材として、上下の駆動軸14,15の両方の外周に接触し、上の駆動軸14の外周が支持フレーム56には接触しないように支持し、下の駆動軸15および支持ローラ57の外周と支持フレーム56とは接触しないので、巻下げベルト13を駆動する際の摩擦抵抗を大幅に減少させることができる。
【0029】
なお、実施例4のように上下の駆動軸14,15を回転可能に支持して摩擦抵抗を大幅に減少させることは、実施例1,2のような上の駆動軸14の支持と実施例3のような下の駆動軸15との支持を組合せることでも可能となる。
【実施例5】
【0030】
図5は、本発明の実施例5としての編地巻下げ装置60の概略的な構成を示す。本実施例5の巻下げユニット61,62は、図1の巻下げユニット21,22に、案内部材としての案内軸63を備える構成を有する。案内軸63は、上の駆動軸14から下方に向う巻下げベルト13で編地を挟む部分を平面に近づけるように、巻下げベルト13を案内する。支持機構を構成する支持フレーム66に対して、案内軸63はローラ67を介して回転可能な状態で支持される。ローラ67は、上の駆動軸14の回転を支持する部材である支持ローラ27と同様の構成を有し、軸68が支持フレーム66に支持される。案内軸63は、軸端に回転軸受を設けて回転可能に支持することもできる。
【0031】
案内軸63を設けることによって、編地を挟む部分の巻下げベルト13は、平面状となる面当り状態で、編地に沿うように両側から接触する。他の実施例では上の駆動軸14付近のみで接触する点当りの状態となり、巻下げベルト13を駆動する際の摩擦抵抗を低減させると、巻下げユニットの上部で編地を挟む保持力が小さくなってしまう場合がある。本実施例5のように、巻下げベルト13が面当りで編地を挟むようにすれば、編地への接触面積が増加し、保持力を大きくすることができる。
【0032】
なお、巻下げベルト13の周回経路が編地に面当りするように案内する部材としては、案内軸63のように回転する部材ばかりではなく、接触面積が小さく、摩擦抵抗をあまり増大させなければ、巻下げベルト13の内側に摺接して案内する部材を支持フレーム66に付加して用いるような機構にすることもできる。
【符号の説明】
【0033】
13 巻下げベルト
14 上の駆動軸
15 下の駆動軸
20,30,50 編地巻下げ装置
21,22,31,32,41,51,61,62 巻下げユニット
26,36,46あ、46b、56,66 支持フレーム
27,47,57 支持ローラ
37 回転軸受
63 案内軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機の歯口下方で、編成されて歯口から垂下する編地の両側に、巻下げユニットがそれぞれ配置され、
各巻下げユニットは、
巻下げベルトと、巻下げベルトが掛け渡される上下の駆動軸と、巻下げベルトの内側に収容される支持機構とを含み、
下の駆動軸は横編機の基体に対して回転可能に支持されるとともに、巻下げベルトを周回させる駆動力が伝達され、
支持機構は、上の駆動軸を下の駆動軸に対して揺動可能に支持し、
両側の巻下げユニットの上部で、編地を挟んで巻下げる編地巻下げ装置において、
支持機構は、上下の駆動軸の少なくとも一方に対し、転がりで回転を支持する部材を備える、
ことを特徴とする編地巻下げ装置。
【請求項2】
前記転がりで回転を支持する部材は、前記上の駆動軸または前記下の駆動軸の外周に接触して回転を支持する支持ローラである、
ことを特徴とする請求項1記載の編地巻下げ装置。
【請求項3】
前記支持ローラは、前記上の駆動軸の外周、および前記下の駆動軸の外周に接触する、
ことを特徴とする請求項2記載の編地巻下げ装置。
【請求項4】
前記転がりで回転を支持する部材は、前記上の駆動軸または前記下の駆動軸の軸端に設ける回転軸受である、
ことを特徴とする請求項1記載の編地巻下げ装置。
【請求項5】
前記転がりで回転を支持する部材は、前記上の駆動軸または前記下の駆動軸の軸端に設ける回転軸受である、
ことを特徴とする請求項2記載の編地巻下げ装置。
【請求項6】
前記支持機構は、前記上の駆動軸から下方に向う前記巻下げベルトで前記編地を挟む部分を平面に近づけるように、巻下げベルトを案内する案内部材をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の編地巻下げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112922(P2013−112922A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263357(P2011−263357)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】