説明

編機

【課題】編成領域と緯糸供給装置を有する編機において、緯糸交換による緯糸移動装置交換の必要をなくし、編機の利用可能性を改善する。
【解決手段】緯糸給糸装置は移送装置を有し、前記移送装置で緯糸が搬送方向(3)で編成領域(2)に供給可能な編機において、移送装置が相互に分離された複数の搬送要素(10)を有し、これらの搬送要素は糸ホルダ(20,21)を有し、機能領域(4)内では搬送方向(3)で1つの摺動結合体(11)へと組立可能にし、戻り領域(12)内では個々に移動可能となるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成領域と緯糸給糸装置とを有し、この緯糸給糸装置が移送装置を有し、この移送装置で緯糸が搬送方向で編成領域に供給可能となった編機に関する。
【背景技術】
【0002】
緯糸給糸装置は搬送方向を横切って、または搬送方向に対して90°とは異なる角度で移送装置に緯糸を給糸する。複数の緯糸群が異なる角度で給糸されるとき、それは「多軸編機」とも称され、厳密な意味で編機の作業領域となる編成領域において繊維技術上重要なあらゆる過程がある。ここで緯糸は編物に編み込まれ、もしくはまず移送装置上に並べて載置される緯糸は編成過程によって互いに結合されて1つの平面材とされる。
【0003】
移送装置はふつう、搬送方向と平行に延びる2つ以上の循環するベルトまたはチェーンからなる。ベルトは糸ホルダを担持している。糸ホルダは最も単純な場合、鉤状要素として形成されており、横コンベヤから緯糸が供給されると鉤状要素は緯糸を保持する。
【0004】
しかしながら移送装置の構造は、使用される緯糸の種類および構成によって変わることがある。緯糸を交換しなければならない場合、かなりの編機組換えが必要となるため、一般的に緯糸交換による移送装置の交換は一定の費用と結び付くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、編機の利用可能性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、冒頭に指摘した種類の編機において、移送装置が相互に分離された複数の搬送要素を有し、これらの搬送要素が糸ホルダを有し、機能領域内では搬送方向で1つの摺動結合体へと組立可能であり、また戻り領域内では個々に移動可能であることによって解決される。
【0007】
この構成によって、搬送課題は複数の不連続的要素に分散される。これらの不連続的要素は長さが比較的短く、特に戻り領域内で個々に取り扱うことができる。機能領域内ではこれら個々の搬送要素が前後に並べられ、1つの摺動結合体へと組み立てられる。搬送要素上にある糸ホルダは次に従来と同様に並べられ、緯糸は所定のピッチで挿入することができる。摺動結合体は次に編成領域に供給され、緯糸は編物に編み込むことができる。編成領域を通過後、摺動結合体は再びばらすことができ、個々の搬送要素は再び個々に取り扱うことができる。移送装置の構成変更が必要になると、これは搬送要素の交換によって簡単に達成できる。そのために大規模な組換え措置が必要なのではない。
【0008】
主に、搬送要素は完結した循環路内で案内され、戻り領域内では機能領域内よりも早い速度で移動可能である。これによりまず連続的プロセスを実現することが可能である。機能領域通過後に緯糸を機能領域内で搬送するのに、もはや必要でない搬送要素は再び戻され、次に機能領域の再通過用に利用可能となる。搬送要素が機能領域を通過するときよりも早く戻されることによって、搬送要素の数をかなり減らし、こうして搬送要素用の費用を低減することが可能である。
【0009】
主に、搬送要素は機能領域内と戻り領域内とで空間的に同じ向きを有する。そのことで取扱いが容易となる。糸ホルダが搬送領域内で上向きである場合、糸ホルダは戻り時にも上向きのままである。この場合、搬送要素は機能領域内でも戻り領域内でも同じ載置面で支えることができる。戻り領域内で糸ホルダが破損する危険は比較的小さい。糸ホルダは異なる形状を有することができる。糸ホルダは緯糸を保持することのできる鉤、締付要素、ハト目またはその他の要素とすることができる。
【0010】
好ましくは、機能領域が戻り領域の上方に配置されている。機能領域と戻り領域を垂直方向で上下に配置すると、スペースが節約される。編機用に必要な底面は小さく抑えることができる。
【0011】
主に、搬送要素は少なくとも機能領域では案内軌道内で案内されている。ここで付記しておくなら、少なくとも編機の両側で搬送方向と平行に、相応する搬送要素が設けられ、緯糸を両方の末端で保持するようになっている。緯糸の案内には精度を考慮して比較的厳しい条件が要求される。この精度は案内軌道によって高度に保証することができる。案内軌道内で搬送要素は例えば摩擦および形状係合式で固定される。搬送方向でのみ自由度が残される。つまり搬送要素は案内軌道内でいわば隙間なしに案内されている。隣接する搬送要素はそれらの正面を案内軌道内で突接させ、これにより摺動結合体を形成する。
【0012】
主に、搬送方向を実質的に横切って糸ホルダの位置を変更する少なくとも1つの調整装置が機能領域内に配置されている。これにより、緯糸の張力を強めまたは弱めることが可能である。場合によっては、糸ホルダの変位によって緯糸張力の均一化も達成できる。調整装置は緯糸の一方の末端にのみ、すなわち編機の一方の長辺面に配置することができる。相応する調整装置を緯糸の両方の末端に配置することも可能である。調整装置は主に編成領域の直前に配置されている。しかし、搬送方向で編成領域の前に1つの調整装置、そして編成領域の背後に1つの調整装置を設けることも可能であり、編成領域内に配置することも可能である。最適な位置は簡単な実験で突き止めることができる。
【0013】
好ましい1構成において、糸ホルダは移動可能に搬送要素に配置されている。つまり搬送要素が移動する必要はない。調整装置が糸ホルダに作用する。
【0014】
その際、搬送方向を横切って延びる少なくとも1つの糸ホルダ用ガイドを搬送要素が有すると好ましい。糸ホルダ用ガイド内で糸ホルダは搬送方向を横切って移動させることができる。移動路程は比較的僅かであるが、基本的に十分な張力調節を実現できるようにするには例えば±2.5mmの移動で十分である。直動ガイドの代わりに、糸ホルダが揺動可能に搬送要素に配置されているようにすることもできる。これも、糸ホルダ用ガイドに含めることができる。
【0015】
選択的にまたは付加的に、調整装置が搬送要素を、搬送方向と平行に延びる軸の周りで回転させるようにすることもできる。搬送要素は摺動結合体を形成するのに正面側でのみ互いに当接するので、このような回転運動は、摺動結合体が搬送方向で変化することを生じない。個々の搬送要素は依然として隙間なしに互いに当接することができる。
【0016】
また、調整装置が案内軌道に作用すると有利である。例えば、弾性変形可能な領域を案内軌道に備えることができる。その際、変形性は案内軌道全体に限定される。案内軌道自体は形状安定性のままである。案内軌道の変形で影響を受ける搬送要素、つまり、糸ホルダは、実際に調整装置の領域内にありもしくはその直前または直後にあるもののみである。残りの搬送要素は影響を受けず、緯糸は変わりなく給糸することができる。この場合緯糸の張力変化は、それが望ましい編成領域にのみ影響する。
【0017】
主に、機能領域の始端に入口駆動装置、また機能領域の終端に出口駆動装置が配置されており、入口駆動装置と出口駆動装置はそれぞれ摺動結合体の始端および終端で少なくとも1つの搬送要素に作用する。これは、摺動結合体を形成するための比較的単純な構成である。摺動結合体の始端の搬送要素と終端の搬送要素との間に配置される搬送要素は、駆動装置によって直接動かされるのでなく、それぞれ別の1つの搬送要素を介して間接的に動かされるだけである。摺動結合体の第1搬送要素と最終搬送要素との間にある搬送要素はこの場合、緯糸張力を変更するために例えば捩じることができる。
【0018】
主に、入口駆動装置と出口駆動装置が搬送方向において異なる力で摺動結合体に作用する。これは搬送要素をつなぎ合わせて摺動結合体とする簡単な構成であり、しかも搬送要素がわずかな長さの違いを有する場合でもそうである。このような違いは例えば一定の摩耗によって生じることがある。搬送方向で搬送要素が摺動結合体内でつなぎ合わされているとき、搬送要素は互いに隙間なしに当接する。その場合緯糸の向きは正確に一致している。入口駆動装置および出口駆動装置の力は、トルク設定可能な電気モータを駆動用に使用するとき、互いに容易に変更することができる。載置糸(Gelege)の位置に応じて、編機の左右の搬送システムに逆向きの同じ力が現れる。その結果、左右の搬送装置の入口駆動装置と出口駆動装置は働きが異なる。
【0019】
選択的または付加的1構成において、入口駆動装置と出口駆動装置は相互に変位可能としておくことができる。またそのことによって、一般に摺動結合体の1mm以下の長さ変化を導くような、搬送要素の比較的小さな長さの差を補償することができる。
【0020】
主に、入口駆動装置および/または出口駆動装置はランタン歯車を備えた係合幾何学体を有する。ランタン歯車はサイクロイド歯車の特殊態様であり、歯数比がきわめて大きいときに応用され、低速運動用にのみ適している。係合幾何学体は少なくとも2つの互いに緊張される係合歯車を有し、係合歯車は隙間なしに直接に搬送要素の係合手段内に係合する。
【0021】
その際、各搬送要素が少なくとも1つの突出するピンを有するのが好ましい。このピンは次に搬送要素の係合手段として働く。しかし主に各搬送要素が複数のピンを有し、係合幾何学体のランタン歯車は同時に複数の個所で搬送要素に作用する。ピンは例えば下方に突出することができる。
【0022】
主に、戻り領域内に設けられた戻し装置が摩擦係合で搬送要素に作用する。移送領域内で搬送要素は正確に限定された速度で動かされねばならない。その際重要なのは、上で触れたように、搬送要素が緊張されて摺動結合体とされていることである。それに対して戻りのとき搬送要素は個々に動かすことができる。正確な速度制御はここでは従属的意味を有する。つまり搬送要素は、運動するベルトまたは相応するチェーン上に単純に下ろすことができ、次に摩擦によって搬送される。当然滑りレールを設けることもでき、また搬送要素が別の仕方で駆動されるとき、この滑りレール上で搬送要素が戻される。
【0023】
主に、出口駆動装置の出口に下降移送装置が配置されており、この下降移送装置が移動方向の変更によって1つの搬送要素を摺動結合体から離す。例えば機能領域が戻り領域の上方に配置されていると、搬送要素は搬送方向において出口駆動装置の背後で降下される。このため例えば、搬送要素を戻し装置へと移送する循環式垂直コンベヤを設けておくことができる。
【0024】
その際、下降移送装置が分離装置と連結されていると好ましい。下降移送装置、例えば前記垂直コンベヤが搬送要素を戻し装置上に降下させると、不適切な状況においては、搬送要素が戻し装置との摩擦係合によって搬送されるまでに一定の時間がかかると、この時間内に次の搬送要素が降下されることになる。そこで、分離装置によって、事実上搬送要素が戻し装置に降下された直後に、搬送要素をその出発位置から移動させるようにすることができる。一定の同期化をさせるために、分離装置を例えば出口駆動装置と連結させておくことができる。入口駆動装置と分離装置とが共通の制御装置によって制御されるとき、この連結を制御信号で行うこともできる。
【0025】
主に、入口駆動装置の入口の前に接近移送装置が配置されており、この接近移送装置が1つの搬送要素を入口駆動装置と係合させ、接近移送装置は搬送要素の方向転換を引き起こす。例えば戻り領域が機能領域の下方に配置されている場合、接近移送装置がリフタを有し、このリフタは搬送要素を機能領域の高さに運ぶ。搬送要素が正しい高さに達した後、搬送要素は入口駆動装置と係合するために搬送方向に摺動される。
【0026】
その際、接近移送装置が入口駆動装置と同期化されていると好ましい。つまり入口駆動装置には同時に単一の搬送要素が供給されるだけである。これにより衝突が避けられる。戻り領域が機能領域の下方にではなく例えば横または上方に配置されている場合、機能領域から戻り領域またはその逆へと移行するときに搬送要素が行わねばならない運動は相応に適合されねばならない。
【0027】
以下、好ましい実施例に基づいて図面と合わせて本発明が説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は編成領域2を有する編機1を単に部分的に概略示す。詳しくは図示しない編成要素が編成領域内に配置されており、平行して供給される多数の糸から編物を形成するために編成要素が協動する。
【0029】
編機は(図3と図4に略示されただけの)緯糸給糸装置32も有する。緯糸給糸装置32は緯糸を、以下で詳しく説明される移送装置上に給糸する。これらの緯糸は次に搬送方向3で編成領域2に供給される。その際、緯糸は搬送方向3に垂直に配置することができる。また、搬送方向3に対して+45°または−45°の角度または任意の別の角度で緯糸を給糸することも可能である。そして、複数の緯糸群を搬送方向3に対して異なる角度で生成することも可能であり、すべての緯糸群の全緯糸が移送装置上に給糸されるようになっている。最後の事例は多軸編機と称される。
【0030】
編機1は機能領域4を有し、機能領域4は編機1の作業領域である。繊維技術上重要な過程はすべてそこで行われる。機能領域はその始端に入口駆動装置5、終端には出口駆動装置6を有し、始端と終端は案内軌道7によって互いに結合されている。案内軌道は2つの平行に通されたレール8、9によって形成されている。操業時、搬送要素10はレール上で案内され、しかも図2に示すように摺動結合体11の態様で案内される。図示されているのは編機1の一方の長辺面の案内軌道7である。他方の長辺面には相応する配置があり、場合によっては鏡像的に反転している。
【0031】
機能領域4の下方に戻り領域12が配置されており、この戻り領域内で搬送要素は搬送方向3とは逆に搬送することができ、矢印13で示されている。これは確かに好適であるが、必ずしも不可欠ではない。戻り領域12は機能領域4の横、または機能領域4の上方または横と上方または下方とに配置しておくこともできる。
【0032】
図示したように戻り領域12が機能領域4の下方に配置される場合、搬送要素10は機能領域4から戻り領域12に移行するとき上から下への運動を、また戻り領域12から機能領域4に移行するとき下から上への運動を行わねばならず、そのことが矢印14、15で示されている。戻り領域12が機能領域4に関して別の個所に配置されている場合、矢印14、15で表した運動は相応に変更されねばならない。その場合この運動は横方向でも行うことができる。
【0033】
搬送方向3において入口駆動装置5の前に接近移送装置16が配置されている。搬送方向3において出口駆動装置6の背後に下降移送装置17が配置されている。下降移送装置は後になお詳しく説明される。
【0034】
機能領域4には調整装置18が配置されており、調整装置はこの場合搬送要素10に作用するが、そのことは図5、図6に関連して詳しく説明される。
【0035】
図7〜図9が示す搬送要素10は本体19を有し、この本体は例えば押出形材によって形成されている。本体19の上面に2群の糸ホルダ20、21が、しかも一様なピッチで配置されている。糸ホルダ20、21がここでは鉤の態様で図示されている。しかし糸ホルダは別の態様も有し、例えば締付具とすることができる。本体19の下面で突出するピン22は搬送要素10の推進に利用することができる。
【0036】
本体19は横に多少突出する案内ローラ23を有し、これらの案内ローラによって搬送要素10はレール8、9内に案内されている。このため、案内ローラ23は例えば周設溝24を有することにより、搬送要素10を横方向(図8で左右)だけでなく、(図8の図示に関して)上下方向でも、レール8、9内で案内することができる。つまりレール8、9によって形成される案内軌道7内に搬送要素10が収容されれば、搬送要素は事実上1つの自由度、つまり搬送方向3のみの動きとなる。そして、搬送要素10は案内軌道7内で隙間なしに支承されている。
【0037】
同時に使用される搬送要素10はすべて搬送方向3において同じ長さを有する。また、主にこの長さは1インチの整数倍に一致し、それぞれのピン22のピッチは同じであり、ピン22と正面25との間の距離は2つの隣接するピン22の間のピッチの半分に一致する。それに応じて摺動結合体11内の全搬送要素10のピン22は、正面25で互いに当接する隣接搬送要素10に付属するとしても、同じ相互ピッチを有するようになっている。
【0038】
入口駆動装置5と出口駆動装置6は同様に構成されている。入口駆動装置5は2つの互いにかみ合う歯車26、27を有し、そのうち一方がモータ28によって駆動される。各歯車26、27は相対回転不能にランタン歯車29、30と結合されている。各ランタン歯車が有する凹部31は、ピン22のピッチに一致した相互ピッチを周方向で有する。ランタン歯車は横方向で相互にずらして配置され(図3と図4参照)、両方のレール8、9の間の中心に引いた直線上で搬送要素10のピン22と噛み合う。
【0039】
同様に出口駆動装置6もランタン歯車を有するが、その詳細な説明は省かれる。入口駆動装置5の諸要素に対応する出口駆動装置6の諸要素は同じ符号に「a」を加えて付けてある。
【0040】
両方の駆動装置5、6は互いに同期して制御される。入口駆動装置5のモータ28は出口駆動装置6のモータ28aよりも多少大きなトルクで作動する。そのことから、搬送要素10は入口駆動装置5と出口駆動装置6との間で相互に押付けられ、これにより摺動結合体11を形成する。個々の搬送要素10は隙間なしに前後に配置されている。搬送要素はレール8、9内でも隙間なしに保持されているので、比較的高い精度で編成領域2に供給される。緯糸も同じ精度で供給され、緯糸は略示しただけの緯糸給糸装置32(図3、図4)によって搬送要素上に給糸されている。
【0041】
緯糸給糸装置32によって搬送要素10上に給糸された緯糸(摺動結合体11内に相応する搬送要素10を有する案内軌道7は編成領域2の両側に搬送方向3と平行に設けられている)は、編成領域2に走り込んでそこで編物の一部となる前に、時々その張力を変更されねばならない。このため調整装置18が設けられており、調整装置は図5、図6に関連して詳しく説明される。
【0042】
調整装置18の領域でレール8、9が弾性変形可能な部材33を有する。この部材33でもレール8、9は、例えば詳しくは図示しない主桁を利用して、一定した距離で平行を保っている。この弾性変形可能な部材33に調整装置18が作用する。この目的のために調整装置18が2つのG形板34、35を有し、搬送方向3と平行に延びて部分的に開口したケース36によってG形板は互いに結合されている。一方の板35に作用するレバー37はその下端部38が矢印39の方向で搬送方向3を横切って、例えば詳しくは図示しないスピンドル伝動装置によって、調整可能である。
【0043】
板34が溝孔40を有し、これらの溝孔で板はピン41上で支承されている。つまりレバー37の下端部38が矢印39の方向に動かされると、板34は比較的限定された角度だけ矢印42の方向で揺動される。この角度はふつう5°未満である。この僅かな揺動によって、糸ホルダ20は搬送要素10の上面で区間aだけ変位可能となり、この区間は中立位置から最大±2.5mmである。また糸ホルダ20の高さのずれはきわめて小さく、この場合8/100mmにすぎない。レバー37の揺動時、摺動結合体11の摩擦係合も、搬送要素10と案内軌道7との形状係合も、解消されることはない。調整装置18による付加にもかかわらず摺動結合体11内に隙間ができないように保たれている。
【0044】
板34が(図6の図示に関して)時計回りに揺動されると、緯糸の糸張力が強まることになる。逆方向に揺動すると張力が低下する。
【0045】
詳しくは図示しない別の手段によって糸張力を変更することもできる。例えば糸ホルダ20、21は移動可能に搬送要素10上に配置することができる。例えば、搬送方向3を横切って糸ホルダ20、21を摺動可能とするガイドを搬送要素10上に設けることができる。糸ホルダ20、21は揺動可能に搬送要素10上で支承することもでき、こうして図5、図6の図示におけると同じ作用が得られる。しかしながらレール8、9に作用させる利点として、調整装置18を通過後に搬送要素10を戻す必要がなく、中立位置への復帰は、架枠に固定配置されたレール8、9の領域に搬送要素10が再び達することによって自動的に得られる。しかしながら、レール8、9の弾性変形可能な部材33はなお編成領域2の高さにあり、編成領域2において調整装置18の作用が現れる。
【0046】
搬送方向3において出口駆動装置6の背後に下降移送装置17が配置されており、出口駆動装置6を通過した搬送要素10はこの下降移送装置で矢印14の方向で下方に移送される。このため下降移送装置17は架枠に固定された2つの異形案内レール43、44を有し、引き出し可能な2つの突接ガイド59は異形案内レールに嵌着され、異形案内レールに搬送装置を摺着することができる。搬送プロセスと同期して突接ガイド59が制御カム45によって開閉することによって、押し込まれた搬送要素10は重力の作用によってコンベヤ領域内に運ばれる。その際、搬送要素は図示しない緩衝装置上に落下し、次にベルト46、47上に降下される。緩衝装置に載置された搬送要素の降下は、制御カム45と平行に配置される他の制御カムとを介して行うことができる。ベルト46、47は下降移送装置17から接近移送装置16へと走行する。両方のベルト46、47の間に空隙48が形成されており、この空隙内に搬送要素10のピン22は係合できる。ベルト46、47は一定した速度で循環する。この速度は、摺動結合体11内の搬送要素10が機能領域4内を移動する速度よりもかなり速い。ベルト46、47は搬送要素10を摩擦によって搬送される。
【0047】
1つの搬送要素10のピン22に作用することのできる駆動切片50を備えた分離装置49が設けられている。分離装置49は案内軌道7の高さに配置されており、常に1つの搬送要素10が下降移送装置17内に達し得るようにする。案内軌道の領域内で出口駆動装置6後に配置される分離装置49の役目は2つの搬送要素10を空間的に相互に分離することにあり、その目的は以下の点である:
・載置糸を糸ホルダから切り離し後の、糸ホルダ内に残存することがあって2つ以上の搬送要素を機械的に結合することのある残留糸の除去が不完全なための機械的連結の解消。
【0048】
・下降移送装置17内に押し込み後、単数または複数の搬送要素10の「時間枠」もしくは限定的停止時間の生成。
【0049】
・単純な「継続搬送」ができるように、搬送要素の間で摩擦によっても引き起こされることのある摩擦係合の解消。
【0050】
接近移送装置16は垂直コンベヤ51を有し、この垂直コンベヤで1つの搬送要素10をそれぞれベルト46、47から持ち去って、案内軌道7の高さに持ち上げることができる。垂直コンベヤ51は例えば合計4つの歯付ベルトによって形成され、歯付ベルトは搬送方向3において搬送要素10の前後と対で左右とにある。これらの歯付ベルトは好適な駆動装置によって、かみ合う歯車52、53を介して互いに同期で駆動され、持ち上げられると歯車52、53は矢印54の方向に回転する。
【0051】
搬送要素が案内軌道7の高さに達したなら、直動駆動装置55が操作されて1つの搬送要素10を搬送方向3で入口駆動装置5の方に動かし、この搬送要素10が入口駆動装置5のランタン歯車29、30と係合することになる。入口駆動装置5は次にこの搬送要素10を案内軌道7上で搬送方向3にさらに摺動させ、この搬送要素10は次に再び摺動結合体11の一部となる。
【0052】
つまり、搬送要素10は編機1内の完結した循環路内に案内される。搬送要素は、それらが緯糸を担持している限り、摩擦係合式にまとめられた摺動結合体11内で案内される。搬送要素は、それらが糸をもはや担持しないと、一層速い速度で個々に搬送することができる。しかし、搬送要素10の向きはそのまま維持され、すなわち糸ホルダ20、21は例えば常に上向きである。
【0053】
詳しくは図示しない仕方で下降移送装置17は、編成領域から進出後、糸ホルダ20、21に残存する残留緯糸を搬送要素10から取り外すための手段を備えておくこともできる。
【0054】
下降移送装置17内で搬送方向3において搬送要素10の前端にもはや力が作用しないので、出口駆動装置6から進出後に摺動結合体11内の摩擦係合が解消され、搬送要素10は単に重力の重さを受けて、強い外的力を加えることなく、下方に移送することができる。
【0055】
直動駆動装置55を有する接近移送装置16は望ましくは入口駆動装置5と連動することができる。すなわち、1つの搬送要素10を受容するための相応するスペースがそこにある場合にのみ、1つの搬送要素10が入口駆動装置5に供給され、他の場合は、ベルト46、47上の搬送要素10は接近移送装置の前で堰き止められる。
【0056】
戻り領域12では、個々の搬送要素10を、またはすべての搬送要素10も、取り出して、別の搬送要素10と取り替える可能性が十分にある。場合によっては、ここでも切換部または堰部、場合によっては収納装置を設けることができるが、しかしそれらはここでは見易くする理由から詳しくは図示されていない。
【0057】
図1〜図10に示す構成において摺動結合体11は、両方の駆動装置5、6が僅かに異なるトルクで搬送要素10に作用することによって実現される。
【0058】
図11に略示された変更実施形態において入口駆動装置5と出口駆動装置6は共通の引張手段56を介して駆動され、つまり同じトルクを有する。それにもかかわらず所要の力を搬送方向3で搬送要素10に加えることができるように入口駆動装置は可動支持体57上に配置されており、この支持体はばね58によって出口駆動装置6の方向に付勢されている。個々の搬送要素10が常に正面側で互いに当接するように、ばね58によって入口駆動装置5の支持体57は出口駆動装置6の方向に変位される。ばね58は、搬送要素10の間の小さな長さ差を吸収することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】緯糸を給糸する編機の略部分斜視図である。
【図2】機能領域を示す拡大部分斜視図である。
【図3】機能領域の下方から見たときの平面図である。
【図4】機能領域の側面図である。
【図5】調整装置の略斜視図である。
【図6】調整装置の正面図である。
【図7】搬送要素の側面図である。
【図8】搬送要素の正面図である。
【図9】搬送要素の平面図である。
【図10】戻り領域を示す部分斜視図である。
【図11】駆動装置の構成を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編成領域と緯糸給糸装置とを有し、この緯糸給糸装置が移送装置を有し、この移送装置で緯糸が搬送方向で編成領域に供給可能となっている編機において、移送装置が相互に分離された複数の搬送要素(10)を有し、これらの搬送要素が糸ホルダ(20、21)を有し、機能領域(4)内では搬送方向(3)で1つの摺動結合体(11)へと組立可能であり、戻り領域(12)内では個々に移動可能であることを特徴とする編機。
【請求項2】
搬送要素(10)が連結された循環路内で案内され、戻り領域(12)内では機能領域(4)内よりも早い速度で移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載の編機。
【請求項3】
搬送要素(10)が機能領域(4)内と戻り領域(12)内とで同じ向きに整列されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の編機。
【請求項4】
機能領域(4)が戻り領域(12)の上方に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の編機。
【請求項5】
搬送要素(10)が少なくとも機能領域(4)の案内軌道(7)内で案内されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の編機。
【請求項6】
搬送方向(3)を実質的に横切って糸ホルダ(20、21)の位置を変更する少なくとも1つの調整装置(18)が機能領域(4)内に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の編機。
【請求項7】
糸ホルダ(20、21)が移動可能に搬送要素(10)に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の編機。
【請求項8】
搬送要素(10)が、搬送方向を横切って延びる少なくとも1つの糸ホルダ用ガイドを有することを特徴とする、請求項7に記載の編機。
【請求項9】
調整装置(18)が搬送要素(10)を、搬送方向(3)と平行に延びる軸の周りで回転させることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の編機。
【請求項10】
調整装置(18)が案内軌道(7)上で作用することを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の編機。
【請求項11】
機能領域(4)の始端に入口駆動装置(5)、また機能領域(4)の終端に出口駆動装置(6)が配置されており、入口駆動装置(5)と出口駆動装置(6)がそれぞれ摺動結合体(11)の始端および終端で少なくとも1つの搬送要素(10)に作用することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の編機。
【請求項12】
入口駆動装置(5)と出口駆動装置(6)が搬送方向において異なる力で摺動結合体(11)に作用することを特徴とする、請求項11に記載の編機。
【請求項13】
入口駆動装置(5)と出口駆動装置(6)が相互に変位可能であることを特徴とする、請求項11または12に記載の編機。
【請求項14】
入口駆動装置(5)および/または出口駆動装置(6)が、ランタン歯車(29、30)を備えた係合幾何学体を有することを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の編機。
【請求項15】
各搬送要素(10)が少なくとも1つの突出するピン(22)を有することを特徴とする、請求項14に記載の編機。
【請求項16】
戻り領域(12)内に設けられた戻し装置のベルト(46、47)が摩擦係合で搬送要素に作用することを特徴とする、請求項11〜15のいずれか1項に記載の編機。
【請求項17】
出口駆動装置(6)の出口に下降移送装置(17)が配置されており、この下降移送装置が移動方向の変更によって1つの搬送要素(10)を摺動結合体(11)から離すことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか1項に記載の編機。
【請求項18】
下降移送装置(17)が分離装置(49)と連結されていることを特徴とする、請求項17に記載の編機。
【請求項19】
入口駆動装置(5)の入口の前に接近移送装置(16)が配置されており、この接近移送装置が1つの搬送要素(10)を入口駆動装置(5)と係合させることを特徴とする、請求項11〜18のいずれか1項に記載の編機。
【請求項20】
接近移送装置(16)が入口駆動装置(5)と同期化されていることを特徴とする、請求項19に記載の編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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