説明

編物及び洗浄具

【課題】天然繊維の肌触りの良さと、化学繊維の泡立ちや泡持ちの良さと、化学繊維の乾きやすさと、化学繊維の耐久性とを兼ね備え、浴用ボディタオルなどの洗浄具として好適に採用できるだけでなく、容易に製造を行うことも可能で製造コストを削減することもできる編物を提供する。
【解決手段】編物を、天然繊維をメッシュ状に編成した表面地10と、天然繊維又は化学繊維を編成した裏面地20とを備え、少なくとも表面地10及び裏面地20の縁部における所定箇所が連結糸30によって互いに連結されることにより、表面地10と裏面地20とが一体化された複層構造を有するものとし、化学繊維からなるパイル糸40を裏面地20のみに編み込むことにより、裏面地20の側から表面地10の側に起立する複数のパイルP1が表面地10と裏面地20との隙間に形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体を洗う際に使用する浴用ボディタオルなど、洗浄具として好適に使用することのできる編物に関する。また、この編物で形成した洗浄具に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂場で身体を洗う際に使用する浴用ボディタオルには、綿や麻などの天然繊維を編成した天然繊維製のものと、ナイロンなどの化学繊維を編成した化学繊維製のものとがある。
【0003】
天然繊維製の浴用ボディタオルは、肌触りが優しく、肌を傷つけにくいため、女性や肌の弱い人を中心に人気がある。しかし、天然繊維製の浴用ボディタオルは、泡立ちや泡持ちが悪く、必ずしも優れた洗浄効果を奏することができるものとは言えなかった。また、天然繊維製の浴用ボディタオルは、水を吸いやすく乾きにくいため、カビなどの雑菌が繁殖しやすく、衛生的に保ちにくいという欠点を有していた。さらに、天然繊維製の浴用ボディタオルには、使用を重ねるうちに破れるなど、耐久性に難があるものも多かった。
【0004】
これに対し、化学繊維製の浴用ボディタオルは、泡立ちや泡持ちが良好であり、優れた洗浄効果を奏することができる。また、化学繊維製の浴用ボディタオルは、水を吸いにくく乾きやすいため、衛生的に保ちやすいという利点を有している。さらに、化学繊維製の浴用ボディタオルは、使用を重ねても容易に破れないなど、耐久性にも優れている。このため、化学繊維製の浴用ボディタオルを好んで使用する者も多い。しかし、化学繊維製の浴用ボディタオルは、肌触りが硬く、肌を傷つけるおそれがあったため、女性や肌の弱い人の中には敬遠する者も多かった。
【0005】
このように、天然繊維製の浴用ボディタオルと化学繊維製の浴用ボディタオルは、一長一短であるが、これまでには、天然繊維と化学繊維の両方を使用することにより、天然繊維の肌触りの良さと、化学繊維の泡立ちや泡持ちの良さと、化学繊維の乾きやすさと、化学繊維の耐久性とを兼ね備えた浴用ボディタオルの開発も試みられている。
【0006】
例えば、特許文献1には、天然繊維からなる経糸と化学繊維からなる柄糸とを編成した浴用ボディタオルが記載されている。また、特許文献2には、片面を天然繊維で形成し、他面を化学繊維で形成した浴用ボディタオルが記載されている。さらに、特許文献3には、外面を天然繊維で形成し、内面を化学繊維で形成した袋状の浴用ボディタオルが記載されている。さらにまた、特許文献4には、外側に配される一対の生地を天然繊維で形成し、その間に配される内側の生地を化学繊維で形成した浴用ボディタオルが記載されている。
【0007】
しかし、特許文献1の浴用ボディタオルは、天然繊維と化学繊維とが同一の生地(層)を形成する単層構造のものとなっており、その表面には、天然繊維だけでなく化学繊維もかなりの割合で露出するものとなっている。このため、特許文献1の浴用ボディタオルの肌触りは、化学繊維のみを編成した浴用ボディタオルよりは改善されるものの、天然繊維のみを編成した浴用ボディタオルには及ばないと予想される。
【0008】
また、特許文献1の浴用ボディタオルは、泡立ちや泡持ち、耐久性などについても、天然繊維のみを編成した浴用ボディタオルよりは改善されるものの、化学繊維のみを編成した浴用ボディタオルには及ばないと予想される。すなわち、特許文献1の浴用ボディタオルは、天然繊維製の浴用ボディタオルと化学繊維製の浴用ボディタオルのいいとこ取りをしたものではなく、それらの利点と欠点とが平均化されたに過ぎないと言える。
【0009】
これに対し、特許文献2〜4の浴用ボディタオルは、天然繊維と化学繊維とが異なる生地(層)を形成する複層構造のものとなっており、実質的に天然繊維のみからなる面で身体を洗うことができるものとなっている。このため、特許文献2〜4の浴用ボディタオルでは、天然繊維のみを編成した浴用ボディタオルに近い肌触りが得られると予想される。しかし、特許文献2,3の浴用ボディタオルでは、泡立ちや泡持ちに関しては、それ程際立った効果は奏されないと考えられる。
【0010】
例えば、特許文献2の浴用ボディタオルは、肌触りを重視する場合には天然繊維で形成された側で身体を洗い、泡立ちを重視する場合には化学繊維で形成された側で身体を洗うなど、使用者の好みに応じて洗浄面を選択して使用するものとなっている。このため、肌触りを重視して天然繊維で形成された側で身体を洗うと、化学繊維で形成された側でいくらか泡立ちはするものの、その泡が天然繊維で形成された側まで到達せず、洗浄面はそれほど泡立たないと考えられる。
【0011】
また、特許文献3の浴用ボディタオルでも、その内側でいくらか泡立ちはするものの、その泡が外側まで到達せず、洗浄面はそれほど泡立たないと考えられる。
【0012】
これに対し、特許文献4の浴用ボディタオルは、天然繊維で形成された外側の生地をメッシュ状としているため、内側の生地で発生した泡が洗浄面まで到達しやすくなっている。このため、特許文献4の浴用ボディタオルは、特許文献1〜3の浴用ボディタオルと比較して、洗浄面が泡立ちやすいと考えられるが、内側の生地もネット状となっていることを鑑みると、その絶対量は多くないと推測される。
【0013】
さらに、特許文献3,4の浴用ボディタオルは、天然繊維で形成された生地と、化学繊維で形成された生地とが別個に編成され、その後、これらの生地を重ねて互いに固定するものとなっている。したがって、特許文献3,4の浴用ボディタオルは、製造工程が多く複雑であり、製造コストが増大するという欠点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−075235号公報
【特許文献2】特開2000−271036号公報
【特許文献3】特開2005−279189号公報
【特許文献4】特開2002−153396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、天然繊維の肌触りの良さと、化学繊維の泡立ちや泡持ちの良さと、化学繊維の乾きやすさと、化学繊維の耐久性とを兼ね備え、浴用ボディタオルなどの洗浄具として好適に採用できるだけでなく、容易に製造を行うことも可能で製造コストを削減することもできる編物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、天然繊維をメッシュ状に編成した表面地と、天然繊維又は化学繊維を編成した裏面地とを備え、少なくとも表面地及び裏面地の縁部における所定箇所が連結糸によって互いに連結されることにより、表面地と裏面地とが一体化された複層構造を有する編物であって、化学繊維からなるパイル糸を裏面地のみに編み込むことにより、裏面地側から表面地側に起立する複数のパイルが表面地と裏面地との隙間に形成されたことを特徴とする編物を提供することによって解決される。
【0017】
このように、表面地と裏面地との隙間に化学繊維からなる複数のパイルを形成することにより、編物の泡立ちや泡持ちを向上させることが可能になる。また、パイル糸を表面地に対して編み込まず、パイルと表面地とが相対的に擦り動くことができるようにすることにより、きめの細かな良質な泡を効率的に発生させることも可能になる。さらに、表面地をメッシュ状とすることにより、表面地と裏面地との隙間のパイルで発生した泡の大部分を表面地の外面(洗浄面)に到達させて、編物の洗浄効果を高めることも可能になる。そして、表面地の水切れを良くし、編物を乾きやすくすることも可能になる。
【0018】
さらにまた、表面地(本発明の編物を浴用ボディタオルなどの洗浄具として使用する際には、表面地の外面が洗浄面として使用される。)を天然繊維で形成することにより、編物の肌触りを柔らかくすることも可能になる。加えて、パイル糸及び/又は裏面地に化学繊維を使用することにより、編物の耐久性を高めることも可能になる。このような特徴を有する本発明の編物は、浴用ボディタオルなどの洗浄具を形成する素材として好適に採用することができる。
【0019】
ところで、本明細書において、「天然繊維」という語は、特に断りが無い限り、一般的な概念の天然繊維(植物や動物などの天然素材を原料とする繊維)だけでなく、天然繊維に近い肌触りを有する一部の化学繊維をもその概念に含むものとする。本明細書における「天然繊維」としては、綿や麻などのセルロース系天然繊維や、絹や羊毛などのタンパク質系天然繊維や、セルロースなどの天然素材を融かして作ったレーヨンやキュプラやテンセルなどの再生繊維(一般的な概念では、再生繊維は化学繊維に分類される。)などが例示される。
【0020】
一方、本明細書において「化学繊維」という語は、一般的な概念の化学繊維(化学的な合成や加工によって作られる繊維)から、本明細書において「天然繊維」の概念に含まれるとした一部の化学繊維(再生繊維など)を除いたものを意味するものとする。本明細書における「化学繊維」としては、ポリアミド系合成繊維やポリエステル系合成繊維やポリオレフィン系合成繊維などの合成繊維や、セルロース系半合成繊維やタンパク質系半合成繊維などの半合成繊維などが例示される。
【0021】
具体的には、ポリアミド系合成繊維としては、ナイロン6やナイロン66などが例示され、ポリエステル系合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどが例示され、ポリオレフィン系合成繊維としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどが例示される。また、セルロース系半合成繊維としては、ジアセテートやトリアセテートなどが例示され、タンパク質系半合成繊維としては、プロミックスなどが例示される。レーヨンやキュプラなどの再生繊維は、本明細書における化学繊維の概念には含まれない。
【0022】
本発明の編物において、パイル糸は、化学繊維からなるものであれば特に限定されないが、捲縮加工(クリンプ加工)を施されたマルチフィラメント糸(複数本のモノフィラメント糸を束ねた糸)であると好ましい。これにより、表面地と裏面地との隙間に形成されるパイルを散り散りにばらけさせて複雑に絡めさせ、微細な空間を多数形成することができるので、さらにきめの細かな泡をより効率的に発生させることが可能になる。また、パイルでの泡持ちをさらに良くすることも可能になる。
【0023】
また、本発明の編物において、連結糸は、少なくとも表面地及び裏面地の縁部における所定箇所を互いに連結するのであれば、それを設ける場所は特に限定されない。しかし、表面地と裏面地との連結の強度を高めて、編物の耐久性をより高めるという観点からは、連結糸で、表面地及び裏面地の縁部における所定箇所を互いに連結するとともに、表面地及び裏面地の非縁部における所定箇所も互いに連結することが好ましい。表面地と裏面地とを連結する連結部は、点状や破線状に設けてもよいが、連続線状に設けると好ましい。これにより、表面地と裏面地との連結の強度をさらに高めることが可能になる。
【0024】
さらに、本発明の編物において、表面地の編目長は、特に限定されないが、編目長が短すぎると、その肌触りはよくなるものの、パイルで発生した泡が表面地の外面に到達しにくくなり、所望の洗浄効果が奏されにくくなるおそれがある。このため、表面地の編目長は、通常、0.5mm以上とされる。表面地の編目長は、0.8mm以上であると好ましく、1mm以上であるとより好ましい。
【0025】
しかし、表面地の編目長を長くしすぎると、表面地の下側のパイルが表面地の編目から突出しやすくなり、編物の肌触りが悪くなるおそれがある。また、表面地の強度を保ちにくくなるおそれもある。さらに、表面地で身体を洗う際などに、裏面地に対して表面地がずり動きやすくなるおそれもある。このため、表面地の編目長は、通常、10mm以下とされる。表面地の編目長は、9mm以下であると好ましく、8mm以下であるとより好ましく、7mm以下であるとさらに好ましい。本明細書において、「編目長」とは、「JIS L 1018 8.10」に準拠した方法で求めた編目長を意味している。
【0026】
さらにまた、本発明の編物において、パイル糸によって形成されるパイルの形態や、連結糸による表面地と裏面地との連結の形態は、特に限定されないが、パイル糸及び連結糸でループパイルを形成し、パイル糸によるループパイルを表面地に編み込まずに裏面地のみに編み込み、連結糸によるループパイルを表面地と裏面地との両方に編み込むようにすると好ましい。
【0027】
これにより、編み機としてダブルラッシェル機(ダブルラッセル機とも呼ばれる。)などを用いることにより、表面地の編成と、裏面地の編成と、パイルの形成(パイル糸によるループパイルの編み込み)と、表面地と裏面地との連結(連結糸によるループパイルの編み込み)とを、一つの工程(ワンショット)で行うことができるようになる。したがって、表面地と裏面地とを別個に編成して、その後、表面地と裏面地とを連結糸で連結するといった複数の工程を経なくても、本発明の編物を製造することが可能になる。したがって、編物の製造コストを抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によって、天然繊維の肌触りの良さと、化学繊維の泡立ちや泡持ちの良さと、化学繊維の乾きやすさと、化学繊維の耐久性とを兼ね備え、浴用ボディタオルなどの洗浄具として好適に採用できるだけでなく、容易に製造を行うことも可能で製造コストを削減することもできる編物を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルの断面を模式的に表した断面図である。
【図2】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルの編成図である。
【図3】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルの端面を撮影した拡大写真である。
【図4】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルにおける表面地を表側から撮影した拡大写真である。
【図5】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルにおける裏面地を表側から撮影した拡大写真である。
【図6】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルを表側から撮影した拡大写真である。
【図7】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルを裏側から撮影した拡大写真である。
【図8】本発明の洗浄具の好適な実施態様である浴用ボディタオルを側方から撮影した拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の編物の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。本発明の編物は、浴用ボディタオル、化粧落とし、食器洗い具又は清掃用タオルなどの洗浄具を始めとする各種用途に用いることができ、その用途を特に限定されるものではないが、以下においては、本発明の編物の特性を最も活かすことのできる浴用ボディタオルを例に挙げて説明する。図1は、本発明の浴用ボディタオルの断面を模式的に表した断面図である。図2は、本発明の浴用ボディタオルの編成図である。図3は、本発明の浴用ボディタオルの端面を撮影した拡大写真である。図4は、本発明の浴用ボディタオルにおける表面地を表側から撮影した拡大写真である。図5は、本発明の浴用ボディタオルにおける裏面地を表側から撮影した拡大写真である。図6は、本発明の浴用ボディタオルを表側から撮影した拡大写真である。図7は、本発明の浴用ボディタオルを裏側から撮影した拡大写真である。図8は、本発明の浴用ボディタオルを側方から撮影した拡大写真である。図3における下側及び図4〜図8の背面側に配した黒色の生地は、各写真において、浴用ボディタオルの各部を浮き立たせるために配したものであり、浴用ボディタオルを構成するものではない。
【0031】
1.浴用ボディタオルの概要
本実施態様の浴用ボディタオルは、図1に示すように、天然繊維をメッシュ状に編成した表面地10と、化学繊維を編成した裏面地20とを備え、表面地10及び裏面地20の縁部における所定箇所が連結糸30によって互いに連結されることにより、表面地10と裏面地20とが一体化された複層構造を有するものとなっている。表面地10と裏面地20のうち、裏面地20には、化学繊維からなるパイル糸40が編み込まれており、表面地10と裏面地20との隙間には、裏面地20の側から表面地10の側に起立する複数のパイルP1が形成されている。
【0032】
2.表面地
表面地10は、図4に示すように、天然繊維製の経糸11(ウエール糸)と、天然繊維製の緯糸12(コース糸、挿入糸)とをメッシュ状に編成したものとなっている。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、表面地10は、経編みによるマーキゼット構造となっている。このような構造を有する表面地10の編成は、後述する編み機を用いることにより、裏面地20の編成や、パイルP1の形成や、表面地10と裏面地20との連結と、同時に行うことができる。
【0033】
表面地10の経糸11や緯糸12には、上述した天然繊維の範疇に属する各種の素材で形成された糸を使用することができる。経糸11や緯糸12は、それを形成した天然繊維の種類などによってはフィラメント糸を採用することもできるが、通常、短繊維を梳いて撚りをかけた紡績糸が用いられる。経糸11や緯糸12は、異なる種類の短い天然繊維を混紡した混紡糸であってもよい。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、経糸11と緯糸12は、いずれもウイグル綿(綿)からなる紡績糸としている。
【0034】
表面地10の経糸11や緯糸12の太さは、表面地10に所望の肌触りや強伸度を付与できるのであれば特に限定されないが、通常、10〜100テックスとされる。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、経糸11の太さは綿番手で20(約30テックス)となっており、緯糸12の太さは綿番手で10(約60テックス)となっている。表面地10の編目長も、特に限定されない。本実施態様の浴用ボディタオルは、表面地10における縦(ウェール)方向の編目長と緯(コース)方向の編目長とがいずれも約4mmの荒目タイプとなっている。この他、例えば、編目長が2mmの中目タイプ、編目長が1.5mmの細目タイプなどといったように、複数種類の浴用ボディタオルを販売し、消費者が好みに応じて選択できるようにしておくとよい。
【0035】
3.裏面地
裏面地20は、図5と図7に示すように、互いにメッシュ状に編成された経糸21(ウエール糸。図7を参照。縦方向に鎖状に編み込まれたパイル糸40の内側に見える部分。)及び緯糸22(コース糸、挿入糸)とで構成されたものとなっている。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、裏面地20を形成する経糸21と緯糸22は、経編みによるつづれ編み構造をなしている。このような構造を有する裏面地20の編成は、後述する編み機を用いることにより、表面地10の編成や、パイルP1の形成や、表面地20と裏面地30との連結と、同時に行うことができる。
【0036】
裏面地20の経糸21や緯糸22には、上述した天然繊維又は化学繊維の範疇に属する各種の素材で形成された糸を使用することができ、その形態は、複数本のフィラメントを束ねたマルチフィラメント糸や、短繊維を梳いて撚りをかけた混紡糸などが好適である。経糸21と緯糸22は、必ずしも同じ種類の糸を用いる必要はない。例えば、泡立ちと肌触りとを両立させるために、経糸21と緯糸22のうちいずれか一方を化学繊維とし、他方を天然繊維とすることも好ましい。本実施態様の浴用ボディタオルにおいては、経糸21にポリエステルからなる糸を用いており、緯糸22にウイグル綿(綿)からなる糸を用いている。このように、裏面地20をポリエステル(化学繊維)とウイグル綿(天然繊維)との交編によって形成することにより、浴用ボディタオルの泡立ちをさらに良くするだけでなく、裏面地20の肌触りもある程度良くすることが可能になる。また、ポリエステルは、漂白剤などにも強く、色落ちしにくいため、裏面地20に色をつけて浴用ボディタオルの表裏(どちらが洗浄面なのか)を目視によって識別しやすくすることも可能になる。
【0037】
裏面地20の経糸21や緯糸22の太さは、裏面地20に所望の強伸度を付与できるのであれば特に限定されないが、通常、10〜100テックスとされる。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、経糸21の太さは綿番手で30(約20テックス)となっており、緯糸22の太さは綿番手で10(約60テックス)となっている。裏面地20の編目長も、特に限定されないが、通常、表面地10の編目長よりも短く設定される。本実施態様の浴用ボディタオルにおいては、裏面地20における縦(ウェール)方向の編目長は約1.7mmとなっており、緯(コース)方向の編目長は約4mmとなっている。
【0038】
4.パイル糸
パイル糸40は、図1と図3と図5に示すように、表面地10と裏面地20との隙間に裏面地20の側から表面地10の側へ起立する複数のパイルP1を形成するものとなっている。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、パイル糸40は、後述する編み機のコンパウンドニードルによってパイル編みされたものとなっており、裏面地20の経糸21に沿って鎖状に編み込まれている。裏面地20における表面地10の側に露出するパイル糸40は、ループパイルを形成している。このようなパイルP1の形成は、後述する編み機を用いることにより、表面地10の編成や、裏面地20の編成や、表面地20と裏面地30との連結と、同時に行うことができる。
【0039】
パイル糸40には、上述した化学繊維の範疇に属する各種の素材で形成された糸を使用することができる。パイル糸40は、モノフィラメント糸であってもよいが、泡立ちや泡持ちなどを考慮すると、通常、マルチフィラメント糸や紡績糸が採用される。泡立ちや泡持ちをより良好にするためには、パイル糸40として、捲縮加工が施されたマルチフィラメント糸を採用すると好ましい。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、パイル糸40は、ナイロンからなる68本のモノフィラメント糸を束ねたマルチフラメント糸に捲縮加工を施したものを用いている。
【0040】
パイル糸40の太さは、特に限定されないが、通常、30〜200テックス、好ましくは、50〜150テックスとされる。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、パイル糸40の太さは、94テックスとなっている。パイル糸40によって形成されるパイルP1のパイル長も特に限定されないが、本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、パイルP1のパイル長は、約6mmとなっている。一般的に、パイル糸40を太くしたり、パイルP1のパイル長を長くすると、浴用ボディタオルにボリューム感を出して、浴用ボディタオルの使用感を向上させることができる。また、その見た目も高級感が漂うものとすることが可能になる。
【0041】
ところで、裏面地20を構成する経糸21や緯糸22やパイル糸40の色は、特に限定されないが、これらの糸のうち、少なくとも1種類の糸は、表面地10を構成する経糸21や緯糸22と異なる色にすると好ましい。これにより、浴用ボディタオルのどちらの面が天然繊維で形成されたものなのか、目視により容易に識別することが可能になる。本実施態様の浴用ボディタオルにおいては、経糸21と緯糸22を青色とし、パイル糸40と経糸11と緯糸12を白色としている。このため、浴用ボディタオルを表面地10の側から見ると全体的に白っぽく見え(図6を参照)、裏面地10の側から見ると全体的に青っぽく見えるようになっている(図7を参照)。
【0042】
5.連結糸
連結糸30は、図1と図8に示すように、表面地10及び裏面地20の縁部を互いに連結するものとなっている。このため、浴用ボディタオルは、表面地10の両側縁と裏面地20の両側縁とが互いに連結され、長手方向両端部が開口された略筒状となっている。浴用ボディタオルの形状を保ちやすくするためには、表面地10及び裏面地20の側縁以外の部分も連結糸30で連結するとよい。例えば、表面地10及び裏面地20の中央部をその側縁(長手方向)に沿って連結してもよい。
【0043】
本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、連結糸30は、ダブルループ編みされたものとなっており、表面地10及び裏面地20の縁部を形成する経糸11,21に沿って鎖状に編み込まれている。連結糸30は、表面地10と裏面地20との間でループパイル(パイルP2)を形成している。このようなパイルP2の形成は、後述する編み機を用いることにより、表面地10の編成や、裏面地20の編成や、パイルP1の形成と、同時に行うことができる。本実施態様の浴用ボディタオルにおいて、連結糸30の素材や太さは、上述したパイル糸40と同様であるために、詳しい説明は割愛する。
【0044】
6.編み機
本発明の浴用ボディタオルは、別個に編成した表面地10や裏面地20を重ね合わせてその側縁を連結糸30によって連結することにより一体化したものであってもよい。しかし、この場合には、複数の工程を経るようになり、浴用ボディタオルの製造コストを抑えることが困難になる。このため、本実施態様の浴用ボディタオルは、編み機として、コンパウンドニードル型のダブルラッシェル機を用いることにより、表面地10の編成と、裏面地20の編成と、パイルP1の形成と、表面地10と裏面地20との連結とを、一つの工程で同時に行うことにより編成している。このため、本実施態様の浴用ボディタオルは、製造コストを抑えることが可能なものとなっている。
【0045】
図2に、本実施態様の浴用ボディタオルの編成図を示す。本実施態様の浴用ボディタオルは、図2に示すように、裏面地20(図2におけるL1及びL2)を編成する連鎖編みのフロントニードルFにパイル糸40(図2におけるL3)をオーバーラップさせることにより、パイル糸40を裏面地20に編み込むようになっている。表面地10(図2におけるL4及びL5)を編成するバックニードルBには、パイル糸40を隔回オーバーラップさせて、パイル糸40が表面地10には編み込まれないようにする。これにより、図1に示すように、裏面地20の側から表面地10の側に起立する複数のループパイル(パイルP1)を表面地10と裏面地20との隙間に形成することができる。連結糸30による表面地10と裏面地20との連結(パイルP2の形成)は、図2におけるL3を連結糸30とし、ループパイルが形成される際のニードルに表面地10の連鎖編みを組み入れるようにすればよい。
【符号の説明】
【0046】
10 表面地
11 経糸
12 緯糸
20 裏面地
21 経糸
22 緯糸
30 連結糸
40 パイル糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維をメッシュ状に編成した表面地と、天然繊維又は化学繊維を編成した裏面地とを備え、少なくとも表面地及び裏面地の縁部における所定箇所が連結糸によって互いに連結されることにより、表面地と裏面地とが一体化された複層構造を有する編物であって、化学繊維からなるパイル糸を裏面地のみに編み込むことにより、裏面地側から表面地側に起立する複数のパイルが表面地と裏面地との隙間に形成されたことを特徴とする編物。
【請求項2】
パイル糸及び連結糸がループパイルを形成し、パイル糸によるループパイルは表面地に編み込まれずに裏面地のみに編み込まれ、連結糸によるループパイルは表面地と裏面地との両方に編み込まれた請求項1記載の編物。
【請求項3】
パイル糸が、捲縮加工を施されたマルチフィラメント糸である請求項1又は2記載の編物。
【請求項4】
表面地の編目長が0.5〜10mmである請求項1〜3いずれか記載の編物。
【請求項5】
連結糸が、表面地及び裏面地の縁部における所定箇所を互いに連結するとともに、表面地及び裏面地の非縁部における所定箇所も互いに連結した請求項1〜4いずれか記載の編物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された編物で形成された洗浄具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−196198(P2010−196198A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42413(P2009−42413)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000201881)倉敷繊維加工株式会社 (41)
【Fターム(参考)】