説明

編目を表示する方法及び装置

【課題】編物編目の三次元表示方法を提供する。
【解決手段】複数の二次元の幾何学的基本形状から構成される面により、シミュレーション装置を使用して編目(10)が表示され、基本形状(11)の数が、設計装置の表示装置における編目(10)の所望の表示寸法及び/又は個々の編目部分(12,13,14,15)の湾曲に関係して選ばれ、表示装置における編目表示が大きいほど、かつ/又は個々の編目部分(12,13,14,15)の湾曲が強いほど、面を形成する基本形状(11)の数が大きく選ばれ、平らな多角形特に三角形又は四角形及び/又は線である基本形状により面が形成され、編目の立体構造が陰影やテクスチャマッピングにより表示され、テクスチャマッピングの際、編目を形成する糸(20)の立体構造が、基本形状(11)の頂点のテクスチャベクトル表示により形成され、テクスチャデータが糸(20)の透明度についての情報を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編機上で製造すべき編物を設計する装置上に、編み目を三次元表示する方法、及び設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
編機上で製造すべき編物の設計を容易にするため、最近の編機は、編物を異なるやり方で表示できる設計装置を持っている。特に編成技術的にあまりよく訓練されてないデザイナにとっては、編物の実物にできるだけ忠実な表示が有利である。実物に忠実なこの表示は異なるやり方で実現可能である。
【0003】
設計装置において編目又は編糸を表示する際、一般に糸が円又は楕円の断面を持っていることを前提としている。糸の表面は通常いわゆるテクスチャマッピングにより表示される。従って例えば走査される糸の画像を使用し、この画像を糸表面に近似する円筒状表面に接着する。その際テクスチャは糸の透明度についての情報を含んでいる。こうして異なる糸形成が画像(テクスチャ)により表示される。更に任意に曲げられる円筒を示す可能性も与えられねばならない。なぜならば、編物にある編糸は繰返し方向変化を受けるからである。
【0004】
現在普通のグラフィックカードハードウエアは、平らな面の表示しか可能にしない。従って円筒は多数の平らな面によって近似せねばならない。このような編目表示方法は例えば欧州特許出願公開第2226735号明細書から公知である。この方法では、糸の中心線を表す円筒を規定する案内曲線が使用される。この案内曲線に沿って多角形が移動される。多角形の中心は案内曲線上にあり、多角形の標準ベクトルは適当な個所における案内曲線の接線に等しい。
【0005】
多角形としてしばしば正六角形が使用される。異なる数の頂点を持つ多角形も使用することができる。多角形は通常等間隔に案内曲線上に位置せしめられる。順次に続く多角形の頂点は、それから三角形により結合される。それにより、円筒に近似する六角形断面を持つ形状管が生じる。公知の方法では、編目当たり10個の六角形が使用される。これは、編目当たり120個の三角形が形成されることを意味する。
【0006】
この公知の方法の欠点は、多すぎる面が形成されることである。なぜならば、この方法は、糸の見えない裏側のための面も形成するからである。表示装置上における表示の解像力が非常に高い場合、表示は更に誤差を持つ。なぜならば、表示は常に一定数の基本面から成っているからである。これに反し小さいズーム段階では、表示は非常に遅い。編目当たり120個の三角形が使用されるので、100万個の編目の典型的なパターン列では、1億2000万個の三角形を表示せねばならない。これは、現在のグラフィックカードを使用しても、速い演算時間によってのみ可能である。1600x1200画素の典型的な面解像力において、各編目は平均して2個の画素を覆う。従って120個の三角形の充填によりこれら両方の画素の色を決定するのは有意義でない。
【0007】
公知の方法の別の欠点は、糸の表側が3個の四角形又は6個の三角形により表示されることである。これも必要でない。なぜならば、糸の見える側は1個の四角形又は2個の三角形だけでも表示可能だからである。更に画面に表示されない編目に対しても三角形が計算され、それより不必要に高いメモリ需要が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の基礎になっている課題は、編物の三次元表示方法及び編目の三次元表示を可能にする編物の設計装置を提案し、それにより著しく減少される計算時間及び公知の方法におけるより少ないメモリ需要で、編目の実物に忠実な三次元表示を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、編機上で製造される編物を設計する装置上に、少なくとも1つの表示装置により編み目を三次元表示する方法において、複数の二次元の幾何学的基本形状から構成される面により、シミュレーション装置を使用して編目が表示され、基本形状の数が、設計装置の表示装置における編目の所望の表示寸法及び/又は個々の編目部分の湾曲に関係して選ばれることによって解決される。
【0010】
編目画像を実物に忠実に形成するために、編目表示の解像力に応じて異なる数の基本形状が必要である。小さい解像力で、少数の基本形状によっても良好な光学的印象が得られ、編目表示の高い解像力はもっと多数の基本形状を必要とする。更にまっすぐな編目部分も、強く湾曲する範囲より少ない基本形状によって近似される。従って表示装置における編目表示が大きいほど、かつ/又は個々の編目部分の湾曲が強いほど、面を形成する基本形状の数が大きく選ばれる。
【0011】
全く同じ又は異なる基本形状により面が形成され、これらの面により編目輪郭が近似される。基本形状が平らな多角形例えば三角形又は四角形及び/又は線であるのがよい。
【0012】
編目の立体構造が公知のように陰影及びテクスチャマッピングにより表示されるようにすることができる。そのため各画素の輝度を、適当な位置における糸の法線ベクトルに関係して決定することができる。そのため基本形状の各頂点に法線ベクトルが対応せしめられる。その場合基本形状内の糸の法線ベクトルは、基本形状の頂点へ法線ベクトルを補間することによって近似される。基本形状の頂点にある法線ベクトルは、この点にある真の糸の法線ベクトルに関係し、糸の観察者に対して見える側が、糸直径に相当する幅を持つ半円筒又は条片状面によって近似される。こうして糸の見えない側のための計算は行われず、それにより計算時間が半分になり、更にメモリ場所が節約される。半円筒の断面は半六角形であってもよい。しかし糸の直径に相当する幅を持つ条片状面により糸を近似することも可能である。
【0013】
テクスチャデータが糸の透明度についての情報を含んでいることによって、実物近似の一層の向上が行われる。
【0014】
本発明は更に編機上で製造される編物を設計する装置であって、編物を表示する少なくとも1つの表示装置、及び編物の編目の三次元表示を形成するシミュレーション装置を有するものに関し、シミュレーション装置が、複数の二次元の幾何学的基本形状により各編目の形状を近似する装置を持ち、これらの基本形状の数が、編目の所望の表示寸法に関係して選択可能であり、編目の強く湾曲した範囲において、僅かしか湾曲しない範囲におけるより大きく選択可能であることを特徴としている。
【0015】
シミュレーション装置が更にテクスチャマッピングを含み、幾何学的基本形状により近似される編目の立体印象がテクスチャマッピングにより得られる。
【0016】
テクスチャマッピング装置を使用して、編目を形成する糸の立体構造が、基本形状の頂点のテクスチャベクトル表示により見えるようにされるのがよい。その際各頂点に、複数のテクスチャ座標及び1つの標準ベクトルが対応せしめられる。テクスチャ座標はテクスチャ画像内の頂点の位置を規定する。法線ベクトルは、適当な頂点にある真の糸の法線ベクトルに関係して決定される。それにより糸の湾曲も実物に非常に近く表示される。
【0017】
テクスチャマッピング装置を使用して、糸の見える側のみが、半円筒又は糸の直径に相当する幅を持つ条片状面により表示可能であるのがよい。それにより編目表示の質を低下することなく、画像形成の全体速度が著しく高められる。
【0018】
添付図面は、最も重要な方法段階の原理図により、本発明による方法の実施例を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】 第1の解像度における基本形状の近似としての編目の図を示す。
【図2】 第2の解像度における基本形状の近似としての編目の図を示す。
【図3】 第3の解像度における基本形状の近似としての編目の図を示す。
【図4】 糸表示の近似を断面で示す。
【図5】 法線ベクトルを補間される、図4に相当する図を示す。
【図6】 条片状面により近似される糸の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は高い解像力を持つ編目10の図を示す。編目10の実物に近い表示のために、編目形状に近似するための多数の三角形11が必要とされる。湾曲範囲12,13,14,15では、三角形11の数が他の範囲におけるより多い。
【0021】
図2には、中間の解像力により編目10′が示されている。編目10′の実物に近い表示のために、ここでは編目輪郭を実物に忠実に写像できるようにするため、図1による解像力におけるより著しく少ない三角形11′が必要とされる。
【0022】
図3には、極めて小さい解像力で編目10″が示されている。このズーム段階における編目表示は、編目の近似のために5個の三角形で足りる。
【0023】
図4は、図4の断面図において円により示される糸20の表示の近似を明らかにしている。糸20の見える側、ここでは上側は、この例では六角断面を持つ筒の半分に相当する半円筒21により近似される。糸20の立体構造に近似するため、図1〜3から三角形11,11′,11″の頂点に対するテクスチャベクトル表示が使用され、このテクスチャベクトル表示は、図5に示すように補間される法線ベクトル22に関係している。
【0024】
図6は、糸20の直径に相当する幅を持つ条片状面23によっても、糸20を近似できることを示している。糸の法線ベクトル24の方向は、ここでは矢印27によって示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編機上で製造される編物を設計する装置上に、少なくとも1つの表示装置により編み目を三次元表示する方法において、複数の二次元の幾何学的基本形状から構成される面により、シミュレーション装置を使用して編目(10,10′,10″)が表示され、基本形状(11,11′,11″)の数が、設計装置の表示装置における編目(10,10′,10″)の所望の表示寸法及び/又は個々の編目部分(12,13,14,15)の湾曲に関係して選ばれることを特徴とする方法。
【請求項2】
表示装置における編目表示が大きいほど、かつ/又は個々の編目部分(12,13,14,15)の湾曲が強いほど、面を形成する基本形状(11,11′,11″)の数が大きく選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
全く同じ又は異なる基本形状により面が形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基本形状が平らな多角形特に三角形又は四角形及び/又は線であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載の方法。
【請求項5】
編目の立体構造が陰影及びテクスチャマッピングにより表示されることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載の方法。
【請求項6】
テクスチャマッピングの際、編目を形成する糸(20)の立体構造が、基本形状(11,11′,11″)の頂点のテクスチャベクトル表示により形成され、各頂点のベクトル表示がこの点における糸(20)の法線ベクトルに関係し、観察者にとって見える糸(20)の側が、糸の直径に相当する幅を持つ条片状面により近似されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
テクスチャデータが糸(20)の透明度についての情報を含んでいることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
編機上で製造すべき編物を設計する装置であって、編物を表示する少なくとも1つの表示装置、及び編物の編目の三次元表示を形成するシミュレーション装置を有するものにおいて、シミュレーション装置が、複数の二次元の幾何学的基本形状により各編目の形状を近似する装置を持ち、これらの基本形状の数が、編目の所望の表示寸法に関係して選択可能であり、編目の強く湾曲した範囲において、僅かしか湾曲しない範囲におけるより大きく選択可能である、装置。
【請求項9】
シミュレーション装置がテクスチャマッピング装置を含んでいることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
テクスチャマッピング装置を使用して、編目を形成する糸の立体構造が、基本形状の頂点のテクスチャベクトル表示として形成可能であり、頂点のベクトル表示が、この点における糸の法線ベクトルに関係して形成可能であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
テクスチャマッピング装置を使用して、糸の見える側が、糸の直径に相当する幅を持つ条片状面により表示可能であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14874(P2013−14874A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−156946(P2012−156946)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(591114995)ハー・シユトル・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト (16)
【Fターム(参考)】