説明

緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを組み合わせた便秘の組み合わせ療法

便秘を処置する方法を提供する。該方法は、便秘の処置に有効な量の緩下薬および/または便軟化剤および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。本発明によって処置される患者は、緩下薬療法および便軟化剤療法に対して難治性である患者を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、緩下薬治療および/または便柔軟剤療法に対して難治性である患者の便秘を処置するための組み合わせ療法に関する。
【0002】
発明の背景
緩下薬および便柔軟剤は便秘の処置のためによく知られている。しかし、これらの処置は、所望の医学的な結果をもたらし得ないことがしばしばある。それは初回に起きることもあれば、(最初は有効であっても)ある時間が経過した後に起きることもある。したがって、極めて多くの便秘患者は、緩下薬治療および/または便柔軟剤療法に対して難治性となっている。
【0003】
末梢オピオイドアンタゴニストは、慢性的なオピオイド使用者(例えばメタドン維持患者)におけるオピオイド投与の副作用の対処および例えば疼痛のための、他のオピオイド摂取患者に用いられている。オピオイドの外部使用による副作用の例は便秘であるところ、末梢オピオイドアンタゴニストはそのような副作用の緩解について試験されている。
末梢オピオイドアンタゴニストは、胃腸管不動として少なくとも部分的に内因性オピオイドに起因し、外科的処置の後に生じやすいもの、例えば腸閉塞、の対処にも薦められている。
【0004】
かかる状況における便秘の正確な原因については解明されていない。中枢神経系が、優占的ではないにせよ主要な役割を果たしているかの議論も続いている。胃を空にすることによって便秘を遅延せしめる程度も不確かである。したがって、複数の経路が便秘の解消に寄与し得るか、および単一の経路に影響を及ぼすアプローチが種々の状況下において好適に便秘を解消し得るかについても解明されていない。
今日まで、研究者がオピオイドアゴニストを用いて便秘を解消しようとしたのは、他の療法が不成功に終わった後のみであった。
【0005】
発明の要約
末梢オピオイドアンタゴニストと緩下薬または便柔軟剤療法との組み合わせ療法は、予測不能な、驚くべき相乗的な向上を便秘の処置においてもたらすと考えられる。とくに、緩下薬および/または便柔軟剤療法をオピオイドアンタゴニストとともに投与するべきであること、およびこのことによってとくに良好な結果が、緩下薬および便柔軟剤処置において難治性を示す患者にもたらされると考えられる。
【0006】
本発明は一側面において、便秘を処置するための方法を与える。該方法は、このような処置を必要としている患者に、便秘の処置に有効な量の緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。患者は緩下薬療法に対して難治性であってもよい。該方法は、さらにオピオイドを患者に投与することを含み得る。ある重要な態様において、オピオイドを常時投与する。もう一つの重要な態様においては、オピオイドはモルヒネである。他の態様においては、オピオイドは以下から選択される。アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾチン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチンおよびトラマドール。さらに他の重要な態様においては、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬の投与を同一または異なる(1種または2種以上の)製剤において行う。
【0007】
本発明は他の一側面においても、便秘を処置するための方法を与える。該方法は、このような処置を必要としている患者に、便秘の処置に有効な量の便柔軟剤および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。患者は便柔軟剤療法に対して難治性であってもよい。該方法は、さらにオピオイドを患者に投与することを含み得る。ある重要な態様において、オピオイドを常時投与する。もう一つの重要な態様においては、オピオイドはモルヒネである。他の態様においては、オピオイドは以下から選択される。アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾチン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチンおよびトラマドール。さらに他の重要な態様においては、末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤の投与を同一または異なる(1種または2種以上の)製剤において行う。
【0008】
本発明は他の一側面において、緩下薬または便柔軟剤療法を必要としている症状にある患者を処置するための方法を与える。かかる症状は胃腸管不動症(gastrointestinal immotility)を含むが、これに限定されない。該方法は、このような処置を必要とする患者に、前記症状の処置に有効な量の緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。このような症状については、本明細書の下記において詳述する。患者は緩下薬療法に対して難治性であってもよい。該方法は、さらにオピオイドを患者に投与することを含み得る。ある重要な態様において、オピオイドを常時投与する。もう一つの重要な態様においては、オピオイドはモルヒネである。他の態様においては、オピオイドは以下から選択される。アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾチン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジル、レボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチンおよびトラマドール。さらに他の重要な態様においては、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬の投与を同一または異なる(1種または2種以上の)製剤において行う。
【0009】
本発明は他の一側面において、緩下薬または便柔軟剤療法を必要としている症状にある患者を処置するための方法を与える。かかる症状は胃腸不動症を含むが、これに限定されない。該方法は、このような処置を必要とする患者に、前記症状の処置に有効な量の便柔軟剤および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む。患者は便柔軟剤療法に対して難治性であってもよい。該方法は、さらにオピオイドを患者に投与することを含み得る。ある重要な態様において、オピオイドを常時投与する。もう一つの重要な態様においては、オピオイドはモルヒネである。他の態様においては、オピオイドは以下から選択される。アルフェンタニル、アニレリジン、アシマドリン、ブレマゾチン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(ヘロイン)、ジヒドロコデイン、ジフェノキシレート、フェドトジン、フェンタニル、フナルトレキサミン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レバロルファン、酢酸レボメタジルレボルファノール、ロペラミド、メペリジン(ペチジン)、メタドン、モルヒネ−6−グルコロニド、ナルブフィン、ナロルフィン、アヘン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、レミフェンタニル、スフェンタニル、チリジン、トリメブチンおよびトラマドール。さらに他の重要な態様においては、末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤の投与を同一または異なる(1種または2種以上の)製剤において行う。
【0010】
本発明の前記側面においては、あらゆる場合において、末梢オピオイドアンタゴニストをピペリジン−N−アルキルカルボキシラート、アヘンアルカロイド誘導体、第四級ベンゾモルファン化合物および第四級ベンゾモルファンからなる群から選択することができる。好ましいオピオイドアンタゴニストは、ノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、メチルナルトレキソンが最も好ましい。
本発明の前記側面においては、あらゆる場合において、処置に対して敏感に反応する患者は便秘症および/またはオピオイド胃腸不動症を有し、緩下薬または便柔軟剤を単独または一緒に用いてもそれらの症状が改善されなかった患者である。
【0011】
本発明の前記側面においては、あらゆる場合において、末梢オピオイドアンタゴニストはノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、患者に末梢オピオイドアンタゴニストを非経口的に0.001〜1.0mg/kgの範囲の量で投与する。
本発明の前記側面においては、あらゆる場合において、末梢オピオイドアンタゴニストはメチルナルトレキソンであり、患者にメチルナルトレキソンを非経口的に0.1〜0.45mg/kgの範囲の量で投与する。この量は0.1〜0.3mg/kgであってもよい。
本発明の前記側面においては、あらゆる場合において、末梢オピオイドアンタゴニストをあらゆる許容可能な方法で、非経口的であるか否かに拘わらず投与することができる。特定の方法には、非限定的に、経静脈、皮下、無針注射、経直腸、または経口を含む。経口投与の場合、末梢オピオイドアンタゴニストはノルオキシモルホンの第四級誘導体であってもよく、末梢オピオイドアンタゴニストは10〜500mg/kgの範囲の量、50〜250mg/kg、または75〜225mg/kgで投与することができる。投与経路が経口である場合、末梢オピオイドアンタゴニストの投与は腸溶性被覆製剤によって行い得る。
【0012】
他の側面において本発明は、製剤として、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬を含むもの、末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤を含むもの、または末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬および便柔軟剤の両方を含むものを与える。ある一つの態様において末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬および/または便柔軟剤は座剤として製剤される。ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは座剤の核を形成する。ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは座剤の全体に分散している。
【0013】
ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは薬学的に許容し得る担体によって被覆されている。ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは粒子を含んでいる。ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは粒子を含み、該粒子は薬学的に許容し得る担体によって被覆されている。
ある一つの態様において、製剤は経口製剤である。ある一つの態様において、製剤は経口製剤であり、末梢オピオイドアンタゴニストは該経口製剤の核を形成している。ある一つの態様において、製剤は経口製剤であり、末梢オピオイドアンタゴニストは該経口製剤の全体に分散している。
【0014】
ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストの少なくとも一部が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている。ある一つの態様において、薬学的に許容し得る担体は腸溶性の被覆である。ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストは腸溶性の被覆を受けていない。
ある一つの態様において、緩下薬および/または便柔軟剤の少なくとも一部が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている。ある一つの態様において、薬学的に許容し得る担体は腸溶性の被覆である。ある一つの態様において、緩下薬および/または便柔軟剤は腸溶性の被覆を受けていない。
【0015】
前記いずれの製剤の構成および設計も、末梢オピオイドアンタゴニストを選択的に胃腸管にわたり、胃、小腸および大腸の全てに放出するように行い得る。同様に、いずれの構成および設計も、末梢オピオイドアンタゴニストを小腸および大腸のみ、小腸のみまたは大腸のみにおいて放出するように行い得る。同様に、いずれの構成および設計も、末梢オピオイドアンタゴニストを胃において放出するように行い得る。
ある一つの態様において、末梢オピオイドアンタゴニストならびに緩下薬および/または便柔軟剤の一方または両方を持続放出型性物質に存在せしめることができる。他の態様において、末梢オピオイドアンタゴニストならびに緩下薬および/または便柔軟剤の一方または両方を持続放出型性物質に存在せしめないものとし得る。
【0016】
本発明のあらゆる前記側面において、末梢オピオイドアンタゴニストの選択をピペリジン−N−アルキルカルボキシラート、アヘンアルカロイド誘導体、第四級ベンゾモルファン化合物および第四級ベンゾモルファンからなる群から行うことができる。好ましいオピオイドアンタゴニストは、ノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、メチルナルトレキソンが最も好ましい。
本発明のある前記側面においては、末梢オピオイドアンタゴニストはノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、製剤に末梢オピオイドアンタゴニストを0.001〜1.0mg/kgの範囲の量、0.1〜0.45mg/kgの量または0.1〜0.3mg/kgの量で含有する。本発明の他の前記側面においては、末梢オピオイドアンタゴニストはノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、製剤は末梢オピオイドアンタゴニストを10〜500mg/kgの範囲の量、50〜250mg/kgの量、または75〜225mg/kgの量で含有する。
本発明のあらゆる前記側面において、製剤は任意にオピオイドを含み得る。
【0017】
他の側面において本発明は、キットを与える。該キットは、末梢オピオイドアンタゴニストとともに患者にアンタゴニストの調製物(preparation)ならびに緩下薬および/または便柔軟剤を投与するに際しての指針を含むパッケージである。キットには、緩下薬および/または便柔軟剤の調製物も含み得る。末梢オピオイドアンタゴニストならびに緩下薬および/または便柔軟剤は、同一または異なる製剤にあることができる。キットには、上記または本明細書全体に記載されている製剤のあらゆるものを含み得る。キットは、1種または2種以上の調製物を投与するための投与デバイスを含み得る。投与デバイスは、キット中の一つの調製物を投与するために有用なあらゆる手段であり得るところ、シリンジ、浣腸セット、注入セット、吸入器具、スプレーデバイス、チューブその他のようなものである。
【0018】
他の側面において本発明は、製造方法を与える。該方法は、末梢オピオイドアンタゴニストと緩下薬および/または便柔軟剤とを一緒にし、本発明の製剤を与えることを含む。該方法は、薬学的に許容し得る担体および/またはオピオイドを前記製剤と一緒にすることをさらに含むことができる。アンタゴニスト、緩下薬、便柔軟剤、オピオイドおよび担体は、本明細書に記載のあらゆるものであることができる。
本発明のこれらの側面および他の側面を以下の詳細な説明によって明らかなものにする。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明によって処置され得る対象は、ヒトの対象であって、便秘、胃腸管不動症、または緩下薬治療および/または便柔軟剤療法を必要とする他の症状に罹患している対象である。便秘とは、慢性的な便秘および一時的な便秘のいずれであってもよい。便秘の特徴は、直前の3日間に腸の動きが1回もないことまたは直前の1週間に腸の動きが2回以下であることである(O’Keefe et al., J Gerontol., 50:184-189 (1995); Parup et al., Scand. J. Gastroenterol, 33:28-31 (1998))。胃腸管不動症には便秘を包含し得るほか、口−盲腸通過時間時間の遅延、不規則な便通、および宿便を含む他の関連する胃腸管の動きの異状も包含し得る。
【0020】
宿便とは、乾燥した固い便が、大量に塊となって直腸に蓄積された状態である。多くの場合慢性的な便秘に起因する。この塊はその硬さのために排泄できないこともある。便秘または胃腸管不動症に罹患した対象は、緩下薬治療および/または便柔軟剤療法に対して難治性であり得る。このような患者を、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬、末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤、または末梢オピオイドアンタゴニスト、緩下薬および便柔軟剤の組み合わせ療法によって処置するのである。
【0021】
対象が便秘または胃腸管不動症になる原因がわかっている場合もあれば未知である場合もある。患者が便秘になる場合、それは過剰な量の内因性オピオイドの存在または外部的なオピオイド処置によるものであり得る。対象は外科的処置の後の対象、疼痛のためにオピオイドを摂取した対象、先進医療病(advanced medical illness)の対象、末期患者、癌患者その他であってよい。対象は腸閉塞であってもよい。
【0022】
他の多くの症状も緩下薬治療および/または便柔軟剤療法を必要とする。非生理食塩水緩下薬は以下において用いられる:妊娠中の緩和、出産数日後における緩和、手術後にいきみを避ける場合、貧食習慣の期間または肉体的な運動の不足の後に、腸の機能が劣化した場合(膨脹性緩下薬のみ)、排便中のいきみによって悪化し得る、診療を要する状態(例えばアンギナ、心筋梗塞の病歴、痔、およびヘルニア(破裂型)を包含する心疾患、高血圧、または脳卒中の病歴)。含塩緩下薬は以下において用いられる:検査または手術に備えたGI管の浄化(例えばリン酸二水素および一水素ナトリウムの調製物、クエン酸マグネシウムを含有する調製物であって他の塩を含むか含まないもの、硫酸ナトリウムおよび他の塩の調製物、硫酸ナトリウムおよびポリエチレングリコール3350の調製物)、中毒または過剰摂取における食物または薬物の除去、および診断のために新鮮な便を提供する場合。
【0023】
膨脹性緩下薬は以下において用いられる:高コレステロール症および血漿中脂質レベルの低下(例えばイスファグラハスク(isphagula husk))。緩下薬の中には、虫の駆除に用いられるものもある。緩下薬の中には、アンモニア過剰症において、血中のアンモニアの量を減じるために用いることができるものもある(この目的にはラクツロースが用いられる)。末梢オピオイドアンタゴニストは、本技術分野においてよく知られている。本明細書において、末梢オピオイドアンタゴニストとは、血液−脳関門を中枢神経系中に有効に横断しないオピオイドアンタゴニストを意味する。現在知られているオピオイドアンタゴニストの大部分は、中枢的および末梢的の両方で作用し、中枢において媒介された望ましくない副作用についての可能性を有する。ナロキソンおよびナルトレキソンが、例である。本発明は、末梢オピオイドアンタゴニストとして知られている、業界において認識されている群の化合物を含む。
【0024】
好ましい形態において、本発明の方法は、患者に、末梢ミューオピオイドアンタゴニスト化合物である化合物を投与することを含む。末梢の用語は、化合物が主に生理学的系および中枢神経系の外にある成分に対して作用する、すなわち、化合物が血液−脳関門を容易に横断しないことを示す。本発明の方法において用いられる末梢ミューオピオイドアンタゴニスト化合物は、典型的に、胃腸組織に関して高いレベルの活性を示す一方中枢神経系(CNS)に対しては活性が低減しているか、好ましくはこれを実質的に示さない。本明細書中で用いる用語「実質的にないCNS活性」は、本方法において用いられる末梢ミューオピオイドアンタゴニスト化合物の薬理学的活性の約20%未満が、CNSにおいて示されることを意味する。好ましい態様において、本方法において用いられる末梢ミューオピオイドアンタゴニスト化合物は、CNSにおいてこれらの薬理学的活性の約5%未満を示し、約1%またはこれ以下(すなわちCNS活性を示さない)がさらにより好ましい。
【0025】
末梢オピオイドアンタゴニストは、例えば、米国特許第5,250,542号;5,434,171号;5,159,081号;5,270,328号;および6,469,030号に記載されているようなピペリジン−N−アルキルカルボキシレートであってもよい。これはまた、米国特許第4,730,048号;4,806,556号;および6,469,030号に記載されているようなアヘンアルカロイド誘導体であってもよい。他の末梢オピオイドアンタゴニストには、米国特許第3,723,440号および6,469,030号に記載されているような第四級ベンゾモルファン化合物が含まれる。好ましいアンタゴニストは、米国特許第4,176,186号および5,972,954号に記載されているノルオキシモルホンの第四級誘導体、例えばメチルナルトレキソンである。ノルオキシモルホンの第四級誘導体の他の例には、メチルナロキソンおよびメチルナロルフィンが含まれる。
【0026】
ノルオキシモルホンのとくに好ましい第四級誘導体は、最初にGoldberg, et al.により記載されたメチルナルトレキソンおよびその塩である。メチルナルトレキソンはまた、米国特許第4,719,215号;4,861,781号;5,102,887号;6,274,591号;米国特許出願第2002/0028825号および2003/0022909号;ならびにPCT公開WO 99/22737およびWO 98/25613に記載されている。これらのそれぞれを参照により本明細書中に組み入れる。本明細書において用いる「メチルナルトレキソン」には、N−メチルナルトレキソンおよびこの塩が含まれる。塩には、限定されないが、臭素塩、塩素塩、ヨウ素塩、炭酸塩、および硫酸塩が包含される。
【0027】
メチルナルトレキソンは、水に自由に溶解性の白色結晶粉末として提供される。この融点は、254〜256℃である。メチルナルトレキソンは、Mallinckrodt Pharmaceuticals, St. Louis, MOから粉末形態で入手できる。提供される化合物は、逆相HPLCにより99.4%の純度とされ、同一の方法により0.011%より低い第四級化されていないナルトレキソンを含む。メチルナルトレキソンはまた、臭化N−メチルナルトレキソン、メト臭化ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、MNTX、SC−37359、MRZ−2663−BR、およびメト臭化N−シクロプロピルメチルノルオキシ−モルヒネとして特定される。
【0028】
末梢オピオイドアンタゴニストを緩下薬とともに投与する。緩下薬は、本技術分野の当業者によく知られていて、種々の異なる剤が包含される。緩下薬のカテゴリーとして、限定されないが、瀉下緩下薬、膨脹性緩下薬、ジフェニルメタン緩下薬、浸透圧緩下薬、鉱油、および「生理食塩水」緩下薬が包含される。具体的な例は以下のとおりである。
【0029】
瀉下緩下薬には、アロエならびにAloe属の種からの関連する調製物および抽出物、カスカラサグラダならびにRhamnus purshiana種の関連する調製物および抽出物、例えばカサントラノール(casanthranol)、フランギュラ(frangula)ならびにRhamnus frangula種の関連する調製物および抽出物、センナならびにCassia属の種からの関連する調製物および抽出物、センノシドAおよびBならびにこれらの組み合わせ、上記のものの濃縮液体、上記のものの組み合わせが包含される。
【0030】
膨脹性緩下薬には、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラヤおよびSterculiaまたはCochlospermum属の種由来の関連する調製物、麦芽スープ抽出物、オオバコおよび関連する調製物ならびに車前子親水性粘漿薬を包含するPlantago属の種の抽出物、上記のものの組み合わせが包含される。
ジフェニルメタン緩下薬には、ビサコジル(bisacodyl)、ビサコジルタンネックス(bisacodyl tannex)、フェノールフタレイン、ジフェニルメタン誘導体、上記のものの組み合わせとして、任意にマグネシウム塩、例えばクエン酸マグネシウムまたはリン酸ナトリウム緩衝液を包含するものが包含される。
浸透圧緩下薬には、グリセリン(グリセロール)、ソルビトール(d−グルシトール)が包含される。
鉱油には、重質液体ペトロラタム、重質鉱油、流動パラフィンおよび白色鉱油が包含される。
【0031】
生理食塩水緩下薬には、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸ナトリウム、一および二塩基性リン酸ナトリウム、重酒石酸カリウムおよび重炭酸ナトリウムが包含される。
末梢オピオイドアンタゴニストは、便柔軟剤とともに投与される。便柔軟剤は、本技術分野の当業者によく知られていて、種々の異なる剤を包含する。便柔軟剤には、ドキュセートカルシウム(スルホコハク酸ジオクチルカルシウム)、ドキュセートカリウム(スルホコハク酸ジオクチルカリウム)およびドキュセートナトリウムが包含される。
【0032】
他の緩下薬または便柔軟剤には、ヒマシ油、デヒドロコール酸、ラクツロース、ポリエチレングリコール類、ポリエチレングリコール3350、ギアフェンシン(guiafensin)、ポロキサマー(poloxamer)188(約4:2:4の重量比でのポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)からなるコポリマー)、薬草湯、1,8−ジヒドロキシアントラキノン、ポリカルボフィル、豆乳、カフェイン、およびベントナイト粘土が包含される
【0033】
本発明の医薬調製物は、単独で用いられる場合またはカクテルとして用いられる場合において、治療上有効な量を投与する。治療上有効な量の決定は、下記において説明するパラメータによって行われるが、如何なる場合も、対象の処置のために薬物を有効とする量である。対象は、例えばヒトの対象であって、本明細書に記載された一つの症状を有する対象である。有効な量の意味は、その量単独または複数の投薬によって、処置される症状またはそれに関連する徴候の発現を遅延せしめるか、程度を軽減するか、完全に阻害するか、進行を低減するか、発現もしくは進行を完全に防ぐ量である。
【0034】
便秘の場合、有効な量は例えば便秘の症状を緩和する量である。緩和には腸の運動として、例えば腸の動きの頻度を増加せしめるか、そうでない場合には口−通過時間を短縮する緩下薬を包含するものによるものを包含する。対象に投与された場合、有効な量は、勿論処置される状態に個々の依存する。症状の程度、患者個人のパラメータとして年齢、物理的状態、身長および体重を包含するもの、同時に行われる処置、処置の頻度、および投与の様式がその例である。これらの因子は本技術分野における当業者によく知られており、ルーチンの実験のみによって対処することができる。
【0035】
一般的に、ノルオキシモルホンの第四級誘導体の経口用量は、1日あたり約0.25〜約5.0mg/体重1kgである。0.5〜5.0mg/体重1kgの範囲内の経口用量により、所望の結果が得られると予測される。一般的に、静脈内および皮下投与を含む非経口投与は、約0.001〜1.0mg/体重1kgである。0.001〜0.45mg/体重1kgの範囲内の用量により、所望の結果が得られると予測され、0.1〜0.3の用量が好ましい。0.001〜1mg/体重1kgの範囲内の注入用量により、所望の結果が得られると予測される。
【0036】
投与量を、適切に調整して、局所的または全身的な所望の薬剤レベルを達成することができるところ、これは投与の様式に依存する。例えば、腸溶性被覆製剤におけるオピオイドアンタゴニストの経口投与のための投与量は、被覆されていない経口製剤の用量より小さいものと予測される。患者における応答がかかる用量において不十分である場合には、さらに高い用量(または有効となるより高い投与量として、別異のより局所的な送達経路によるもの)を、患者の耐容が可能である程度において用いることができる。日あたり複数の投薬を行うことも化合物の適切な全身的レベルを達成するために考慮される。適切な全身的レベルの決定は、例えば患者におけるピークまたは持続する薬剤の血漿レベルの測定値により行うことができる。「用量」および「投与量」を、本明細書中では同義的に用いる。
緩下薬、便柔軟剤およびオピオイドの用量は、本技術分野の当業者にはその特性が理解され、知られている。
【0037】
種々の投与経路を用いることができる。選択される個々の様式は、当然のことながら、選択される薬剤の個々の組み合わせ、処置されるかまたは予防される便秘または胃腸管不動症の重篤度、患者の状態および治療効能に必要な投与量に依存する。本発明の方法は、全般に、臨床的に許容し得ない悪影響を生じずに活性化合物の有効なレベルを生じるすべての様式を意味する、医学的に許容し得る投与のすべての様式を用いて行うことができる。投与のこのような様式には、経口、直腸内、舌下、静脈内注入、肺、筋肉内、腔内、エアゾール、耳(例えば点耳剤により)、鼻腔内、吸入、無針注射、皮下送達または皮膚内(例えば経皮)が含まれる。直接的な注射はまた、局所的な送達に好ましい場合がある。連続的な注入には、患者制御性無痛覚(patient controlled analgesia、PCA)デバイスを用いることができる。経口、直腸内または皮下投与が、予防または長期的な処置のために重要であることがある。送達の好ましい直腸内様式には、座剤または浣腸洗浄としての投与が含まれる。
【0038】
医薬製剤は、単位投薬形態で好都合に提供され得、薬学の業界においてよく知られているすべての方法により製造することができる。すべての方法は、本発明の化合物を、1種または2種以上の付属成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般的に、組成物を、本発明の化合物を液体担体、微細な固体担体または両方と、均一に、かつ密に混合し、次に所要に応じて製品を成形することにより、製造する。
投与された際に、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容し得る組成物において用いられる。このような製剤は、常習的に、塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、潤滑剤および任意に他の治療成分を含むことができる。医薬において用いる際には、塩は、薬学的に許容し得なければならないが、薬学的に許容し得ない塩を、好都合に用いて、この薬学的に許容し得る塩を調製することができ、これは、本発明の範囲から排除されない。このような薬理学的に、および薬学的に許容し得る塩には、以下の酸から調製されるものが含まれるが、これらには限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、パモン酸、3−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸およびベンゼンスルホン酸。
【0039】
本発明の医薬製剤は、薬学的に許容し得る担体を含むかまたはこの中に希釈され得る。本明細書中で用いる用語「薬学的に許容し得る担体」は、ヒトまたは他の哺乳類、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジもしくはヤギに投与するのに適する1種または2種以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル封入物質を意味する。用語「担体」は、天然または合成の、有機または無機成分を示し、これと、活性成分が混ぜ合わされて、適用が容易になる。担体を、本発明の製剤と、および互いに、所望の薬学的効能または安定性を顕著に損なう相互作用がないように、混合することができる。経口投与、座剤および非経口投与などに適する担体製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa中に見出すことができる。
【0040】
水性製剤は、キレート剤、緩衝剤、酸化防止剤および任意に等張化剤を含むことができ、好ましくはpHを、3.0〜3.5の間に調整する。好ましいこのような製剤は、同時係属中の出願番号第60/461,611号の、本出願と同一日に出願された、「医薬製剤」を名称とする出願中に記載されている。この開示内容を、参照により本明細書中に導入する。
キレート剤には、以下のものが含まれる:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびこの誘導体、クエン酸およびこの誘導体、ナイアシンアミドおよびこの誘導体、デソキシコール酸ナトリウムおよびこの誘導体。
緩衝剤には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸、リン酸ナトリウムおよびリン酸、アスコルビン酸ナトリウム、酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム、乳酸、アスコルビン酸、イミダゾール、重炭酸ナトリウムおよび炭酸、コハク酸ナトリウムおよびコハク酸、ヒスチジン、ならびに安息香酸ナトリウムおよび安息香酸、ならびにこれらのあらゆる組み合わせからなる群から選択されるものが含まれる。
【0041】
酸化防止剤には、アスコルビン酸誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸アルキル、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、トコフェロールおよびこの誘導体、モノチオグリセロール、ならびに亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されたものが含まれる。好ましい酸化防止剤は、モノチオグリセロールである。
等張化剤には、塩化ナトリウム、マンニトール、ラクトース、デキストロース、グリセロールおよびソルビトールからなる群から選択されるものが含まれる。
【0042】
本発明の組成物と共に用いることができる保存剤には、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノールおよび好ましくは塩化ベンザルコニウムが含まれる。典型的には、保存剤は、組成物中に、約2重量%までの濃度で存在する。しかし、保存剤の正確な濃度は、意図される使用に依存して変化し、当業者により容易に確認することができる。
【0043】
処置に対して特に敏感に反応する患者は、便秘および/または胃腸管不動症の症状を有し、緩解を得ることができず、または緩解もしくは一定の緩解をかかる症状に対して得ることが、緩下薬および/または便柔軟剤を単独または組み合わせて用いてもできなくなった患者であるか、または緩下薬または便柔軟剤に抵抗性を有する患者である。これらの患者を緩下薬および/または便柔軟剤に対して難治性であるという。便秘および/または胃腸管不動症の誘導または結果は、1種または2種以上の多岐にわたる状態によるものであり、これには限定されないが、病気の状態、物理的な状態、薬物が誘発した状態、生理学的バランスの喪失、ストレス、不安などが包含される。便秘および/または胃腸管不動症を誘発するする症状は、急性のものである場合もあれば慢性的なものである場合もある。ある場合には、便秘および/または胃腸管不動症は疼痛緩和のためのオピオイド療法によってもたらされる。かかる態様の一例は、ヒト対象が便秘および/または胃腸管不動症をオピオイドの常時使用によって罹患するものである。
【0044】
処置に対して敏感に反応する患者には、限定されないが、末期患者、先進医療病の患者、癌患者、エイズ患者、手術後の患者、慢性痛の患者、神経障害の患者、関節リウマチ患者、骨関節症患者、慢性腰痛患者、脊髄損傷患者、慢性的な腸痛患者、慢性的な膵臓痛患者、骨盤/会陰痛の患者、線維筋痛の患者、慢性疲労症候群の患者、過敏性腸症候群の患者、偏頭痛または緊張性頭痛の患者、血液透析患者その他が包含される。
【0045】
対象を、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬および/または便柔軟剤(および任意でオピオイド)の組み合わせで処置することができる。これらの状況において、オピオイドアンタゴニストおよび1種または2種以上の他の治療剤を、時間的に十分近時に投与して、両方の剤の所望の利点を享受し得るようにする。典型的には同時に投与する。いくつかの態様において、オピオイドアンタゴニストを、時間的に最初に、いくつかの態様においては時間的に2番目に、およびさらにいくつかの態様においては、同時に送達する。下記により詳細に記載するように、本発明においては、オピオイドアンタゴニストおよび1種または2種以上の便秘または胃腸管不動症治療剤の一方または両方(および任意でオピオイド)を含有する製剤によって投与する医薬製剤を企図している。これらの製剤は、経腸、経口のものであってよく、米国特許第6,277,384号、6,261,599号、5,958,452号およびPCT公開公報WO 98/25613に記載されているような製剤である。固体、液体、放出制御および他のそのような製剤が包含される。
【0046】
オピオイドアンタゴニストおよび他の1種または2種以上の他の活性剤を含有する製品は、経口製剤として構成することができる。経口製剤は、液体、半固体または固体であってもよい。経口製剤は、オピオイドアンタゴニストを、緩下薬または便柔軟剤と共に含むことができる。オピオイドは、任意に、経口製剤中に含まれていてもよい。経口製剤を、緩下薬または便柔軟剤の前に、後に、または同時にオピオイドアンタゴニストを放出するように構成することができる。経口製剤を、オピオイドアンタゴニストおよび他の剤が、胃中で完全に放出され、胃中で部分的におよび腸中で部分的に放出され、腸中で、大腸で、部分的に胃中で、または全体が大腸において放出されるように構成することができる。経口製剤を、末梢オピオイドアンタゴニストの放出が胃または腸に限定され、一方他の活性剤の放出がこのように限定されず、または末梢オピオイドアンタゴニストとは異なって限定されるように構成することもできる。
【0047】
例えば、末梢オピオイドアンタゴニストは、1種または2種以上の他の薬剤を最初に放出し、末梢オピオイドアンタゴニストを、末梢オピオイドアンタゴニストが胃を通って腸中に通過した後にのみ放出するピルまたはカプセル内に含まれる腸溶核またはペレットであってもよい。末梢オピオイドアンタゴニストはまた、持続放出型物質であって、これにより末梢オピオイドアンタゴニストが、消化管全体に放出され、1種または2種以上の他の剤が、同一の、または異なるスケジュールにおいて放出されてもよい。末梢オピオイドアンタゴニストについての同一の目的を、腸溶オピオイドアンタゴニストと組み合わされた末梢オピオイドアンタゴニストの即座の放出で達成することができる。これらの例において、1種または2種以上の他の剤を、胃中に、消化管全体に、または腸中にのみ直ちに放出することができる。
【0048】
これらの異なる放出プロフィルを達成するのに有用な物質は、通常の当業者によく知られている。即座の放出は、胃中で溶解するバインダーを有する慣用の錠剤により得られる。胃のpHにおいて溶解するか、または上昇した温度において溶解する被覆は、同一の目的を達成する。腸中のみでの放出は、慣用の腸溶性被覆、例えば腸(しかし胃ではない)のpH環境において溶解するpH感受性被覆または長期にわたり溶解する被覆を用いて、達成される。消化管全体への放出は、持続性放出物質および/または即座の放出系および持続および/または遅延された意図的な放出系(例えば異なるpHにおいて溶解するペレット)の組み合わせを用いることにより、達成される。
【0049】
ピオイドアンタゴニストおよび緩下薬および/または便軟化剤をともに含む製品は、座剤として構成することもできる。オピオイドアンタゴニストを、座剤内または座剤上のあらゆる箇所に配置して好ましい影響をオピオイドアンタゴニストの相対的な放出に与えることができる。放出の特性は0次、1次またはシグモイド状であってよく、所望による。
オピオイドアンタゴニストを最初に放出するのが望ましい場合、オピオイドアンタゴニストを座剤の表面において被覆することができる。この場合の被覆は、そのような被覆に適した薬学的に許容可能な担体であって、オピオイドアンタゴニストの放出を可能にするものの中において行われる。例えば座剤において通常用いられる感温性の薬学的に許容し得る担体中において行うことができる。体腔中に置かれると溶解する他の被覆剤は、本技術分野の当業者によく知られている。
【0050】
オピオイドアンタゴニストを座剤全体に混合させて、緩下薬または便軟化剤の前に、後に、または同時に放出されるようにすることもできる。オピオイドアンタゴニストは遊離していてもよく、すなわち座剤の材料内で可溶化されてもよい。オピオイドアンタゴニストはまた、小胞、例えば座剤の材料全体に分散したワックスで被覆されたマイクロペレット(micropellet)の形態であってもよい。被覆されたペレットは、オピオイドアンタゴニストを温度、pHなどに基づいて直ちに放出するように構築することができる。また、ペレットはオピオイドアンタゴニストの放出を遅延させ、緩下薬または便軟化剤がオピオイドアンタゴニストがその効果を発揮する前に、ある時間の間作用することを可能とするように構成することができる。また、オピオイドアンタゴニストのペレットが実質的にあらゆる持続放出型パターンで放出されるように構成することもできる。このパターンには、一次放出動力学またはシグモイド状の次元の放出動力学を示すパターンが包含され、従来技術のおよび通常の当業者によく知られている材料を用いる。
【0051】
オピオイドアンタゴニストを、座剤内の核内に含有させることもできる。この核は、ペレットに関して上記した特性のいかなるものの1つまたはすべての組み合わせを有することができる。オピオイドアンタゴニストは、例えば材料で被覆された核中にあるか、材料全体に分散されているか、材料上に被覆されているか、または材料中にもしくはこの全体に吸着されていてもよい。
ペレットまたは核は、実質的にあらゆるタイプであってもよいことを理解されたい。これらは、放出材料で被覆された薬剤、材料全体に分散された薬剤、材料中に吸着された薬剤などであってもよい。材料は、浸食性であるかまたは非浸食性であってもよい。
【0052】
座剤は、任意にオピオイドを含むことができる。オピオイドは、末梢オピオイドアンタゴニストに関連して上記した形態のあらゆるものであることができるが、末梢オピオイドアンタゴニストとは分離されている。オピオイドはオピオイドアンタゴニストと一緒に混合され、末梢オピオイドアンタゴニストに関連して上記した形態のあらゆるものにおいて提供されてもよい。
緩下薬および便柔軟剤の経口および座剤製剤はよく知られていて、かつ市販されている。末梢オピオイドアンタゴニストを、よく知られたこのような製剤に混合することができる。末梢オピオイドアンタゴニストは、液体または半固体溶液の前記製剤に一緒に混合することができるほか、前記製剤に懸濁させることも前記製剤内の粒子内に含有せしめることもできる。
【0053】
1種または2種以上の活性剤としてとくに末梢オピオイドアンタゴニストを含みこれに限定されないものは、粒子中において与えることができる。本明細書中で用いる粒子とは、ナノもしくはマイクロ粒子(またはある例においてはこれらより大きい)ものを意味し、全体または部分が、本明細書に記載した末梢オピオイドアンタゴニストまたは1種または2種以上の他の治療成分からなるものである。粒子は、治療剤として被覆によって囲まれた核に含有してもよく、被覆には腸溶性被覆を含むがこれには限定されない。1種または2種以上の活性成分は、粒子全体に分散されていてもよい。1種または2種以上の治療剤は、粒子中に吸着されていてもよい。粒子はあらゆる次元の放出動力学であってもよく、これには0次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、持続放出型、即時放出、およびこれらのすべての組み合わせなどが包含される。粒子は1種または2種以上の治療剤に加えて、薬学および医学の技術分野において通常用いられる材料のすべてを包含し得るものであって、これらには限定されないが、浸食性、非浸食性、生分解性もしくは非生分解性材料またはこれらの組み合わせを包含する。粒子は、溶液中または半固体状態にあるアンタゴニストを含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は、実質的にいかなる形状であってもよい。
【0054】
非生分解性および生分解性ポリマー材料の両方を、1種または2種以上の治療剤を送達するための粒子の製造において用いることができる。このようなポリマーは、天然または合成ポリマーであってもよい。ポリマーは、放出が望まれる期間の長さに基づいて選択される。とくに興味深い生体接着性(bioadhesive)ポリマーには、H.S. Sawhney, C.P. PathakおよびJ.A. HubellのMacromolecules, (1993) 26:581-587中に記載されている生体内分解性ヒドロゲルが含まれ、その教示を本明細書中に導入する。これらには、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)類、ポリ(エチルメタクリレート)類、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)が含まれる。
【0055】
1種または2種以上の治療剤を、制御された放出系中に含有させることができる。用語「制御された放出」は、製剤からの薬剤放出の様式およびプロフィルが制御されている、あらゆる薬剤含有製剤を意味することを意図する。これは、即座の、および即座ではない放出製剤を意味し、即座ではない放出製剤には、持続放出型および遅延放出製剤が含まれるが、これらには限定されない。用語「持続放出型」(また「延長された放出」とも呼ぶ)は、その慣用の意味において、長期間にわたる薬剤の次第の放出を提供し、好ましくは、常にである必要はないが、長期間にわたる薬剤の実質的に一定の血液レベルをもたらす薬剤製剤の意味に用いられる。用語「遅延放出」は、その慣用の意味において、製剤の投与とこれからの薬剤の放出との間に時間的な遅延がある薬剤製剤の意味に用いる。「遅延放出」は、長期間にわたる薬剤の次第の放出を含むかまたは含まなくてもよく、したがって「持続放出型」であってもなくてもよい。
【0056】
消化管に特異的な送達系は、大まかに3つのタイプに分けられる:第1のものは、遅延放出系であり、例えばpHまたは温度の変化に応じて薬剤を放出するように設計されたもの;第2のものは徐放性系であり、所定の時間の後に薬剤を放出するように設計されたもの;第3のものはミクロフローラ酵素系であり、消化管下部において豊富な腸内細菌を用いるもの(例えば大腸指向放出製剤)である。
遅延放出系の例は、例えばアクリル系またはセルロース系被覆材料を用い、pH変化の際に溶解するものである。製造を容易にするために、このような「腸溶性被覆」に関する多くの報告がなされている。一般に腸溶性被覆は、胃中で顕著な量の薬剤を放出せずに(すなわち胃中において、放出が10%未満、放出が5%未満および放出がわずか1%未満)胃を通過し、腸管中で十分に崩壊して(ほぼ中性の、またはアルカリ性の腸液と接触することにより)、活性剤が腸管の壁を通って輸送(能動的または受動的)されるのを可能にするものである。
【0057】
被覆が腸溶性被覆として分類されるか否かを決定するための種々のインビトロ試験が、種々の国の薬局方において発表されている。人工的な胃液、例えば36〜38℃でpH1のHClと接触させて少なくとも2時間不変のままであり、その後人工的な腸液、例えばpH6.8のKHPO緩衝溶液中で30分以内に崩壊する被覆が1つの例である。このようなよく知られている系の1つは、Behringer, Manchester University, Saale Co.によって市販され報告されている材料であるEUDRAGITなどである。腸溶性被覆については、以下でさらに記載する。
【0058】
徐放性系は、藤沢薬品社による時間浸食系(TES)およびR. P. SchererによるPulsincapにより代表される。これらの系において、薬剤放出の部位は、消化管中の製剤の通過の時間により決定される。消化管中の製剤の通過が、胃排出時間により大きく影響されるため、ある徐放性系は腸溶性被覆されてもいる。
腸内細菌を用いる系の分類は、オハイオ大学のグループ(M. Saffran et al., Science, Vol. 233: 1081 (1986))およびユタ大学のグループ(J. Kopecek et al., Pharmaceutical Research, 9(12), 1540-1545 (1992))が報告した腸内細菌から生じたアゾ還元酵素によるアゾ芳香族ポリマーの分解を用いるもの;ならびにヘブライ大学のグループ(PCT出願に基づく審査されていない公開された日本国特許出願5-50863号)およびフライベルク大学のグループ(K. H. Bauer et al., Pharmaceutical Research, 10(10), S218 (1993))により報告された腸内細菌のベータ−ガラクトシダーゼによる多糖類の分解を用いるものに行い得る。さらに、帝国製薬株式会社(審査されていない特開平4-217924号公報および審査されていない特開平4-225922号公報)によるキトサナーゼ(chitosanase)により分解可能なキトサンを用いた系も含まれる。
【0059】
腸溶性被覆は、典型的に、常にではないが、ポリマー材料である。好ましい腸溶性被覆材料は、生体内分解性の緩やかに加水分解可能な、および/または緩やかに水溶性となるポリマーを含む。「被覆重量」またはカプセルあたりの被覆材料の相対的な量は、一般的に、摂取と薬剤放出との間の時間間隔に大きく影響する。すべての被覆は、被覆全体が、約5よりも低いpHにおいて胃腸液に溶解しないが、約5またはこれより高いpHにおいて溶解するように十分厚く設けなければならない。pH依存性溶解性プロフィルを示すすべての陰イオン性ポリマーは本発明の実際の腸溶性被覆として用いることができることが予測される。特定の腸溶性被覆材料の選択は、以下の特性に依存する:胃中での溶解および崩壊に対する耐性;胃中にある間の胃液および薬剤/担体/酵素に対する不透過性;標的である腸の部位における迅速な溶解性または崩壊性;貯蔵の間の物理的および化学的安定性;無毒性;被覆としての適用の容易さ(基質親和性);ならびに経済的実用性。
【0060】
好適な腸溶性被覆材料には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない:セルロースポリマー類、例えば酢酸フタル酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびナトリウムカルボキシメチルセルロース;アクリル酸ポリマー類およびコポリマー類、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メチルアクリル酸アンモニウム、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチル(例えば商品名EUDRAGITとして販売されているコポリマー類)から形成したもの;ビニルポリマー類およびコポリマー類、例えばポリ酢酸ビニル、フタル酸ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルクロトン酸コポリマーおよびエチレン−酢酸ビニルコポリマー類;ならびにシェラック(精製されたラック)。
【0061】
種々の被覆材料の組み合わせをまた、用いることができる。本明細書中で用いるためによく知られている腸溶性被覆材料は、Rohm Pharma (Germany)からEUDRAGITの商品名の下で入手可能なアクリル酸ポリマー類およびコポリマー類である。EUDRAGITシリーズE、L、S、RL、RSおよびNEコポリマー類は、有機溶媒中で可溶化されているものとして、水性分散体として、または乾燥粉末として入手できる。EUDRAGITシリーズRL、NEおよびRSコポリマー類は、消化管中で不溶性であるが透過性を有し、主に長期間の放出のために用いられる。EUDRAGITシリーズEコポリマー類は胃中で溶解する。EUDRAGITシリーズL、L−30DおよびSコポリマー類は、胃中で不溶性であり、腸中で溶解するため本発明において最も好ましい。
【0062】
特定のメタクリル系コポリマーは、EUDRAGIT L、とくにL-30DおよびEUDRAGIT L100-55である。EUDRAGIT L-30Dにおいて、遊離カルボキシル基対エステル基の比率は、約1:1である。さらに、該コポリマー類は、5.5よりも低い、一般的に1.5〜5.5のpH、すなわち上部消化管の液体中に一般的に存在するpHを有する胃腸液に不溶性であるが、5.5よりも高いpH、すなわち下部消化管の液体中に一般的に存在するpHにおいて容易に可溶性であるか、または部分的に可溶性であることが知られている。他の特定のメタクリル酸ポリマー類は、EUDRAGIT L-30Dと、遊離カルボキシル基対エステル基の比率が約1:2である点で異なるEUDRAGIT Sである。EUDRAGIT Sは、5.5よりも低いpHにおいて不溶性であるが、EUDRAGIT L-30Dとは異なり、例えば小腸中の5.5〜7.0の範囲内のpHを有する胃腸液においては溶解性が乏しい。
【0063】
このコポリマーは、pH7.0およびこれ以上、すなわち結腸において一般的に見出されているpHにおいて可溶性である。EUDRAGIT Sは、単独で、大腸における薬剤送達を提供するための被覆として用いることができる。あるいはまた、pH7よりも低い腸液への溶解性が乏しいEUDRAGIT Sを、pH5.5よりも高い腸液に可溶であるEUDRAGIT L-30Dと組み合わせて用いて、活性剤を、腸管の種々の区域に送達するために処方することができる遅延放出組成物を提供することができる。EUDRAGIT L-30Dをより多量に用いるに従って、より近位の放出および送達が開始され、EUDRAGIT Sをより多量に用いるに従って、より遠位の放出および送達が開始される。当業者には、EUDRAGIT L-30DおよびEUDRAGIT Sの両方を、同様のpH溶解特性を有する他の薬学的に許容し得るポリマー類で交換することができることが理解される。
【0064】
本発明のある態様において好ましい腸溶性被覆は、ACRYL-EZE(登録商標)(メタクリル酸コポリマー、タイプC;Coloron, West Point, PA)である。
腸溶性被覆は、薬剤放出をある一般的に予測可能な位置において達成することができるように、活性剤の制御された放出を提供する。腸溶性被覆はまた、治療剤および担体の、頬側腔、咽頭、食道および胃の上皮および粘膜組織への、ならびにこれらの組織に関連する酵素への曝露を防止する。したがって、腸溶性被覆は、活性剤、担体および患者の内部組織を、送達の所望の部位における薬剤放出の前に、すべての望ましくない事象から保護するのを補助する。さらに、本発明の被覆された材料により、薬剤吸収、活性剤保護および安全性の最適化が可能になる。消化管中の種々の領域において活性剤を放出することを目的とする多重の腸溶性被覆により、消化管全体にわたるさらにより有効であり、持続された改善された送達が可能になる。
【0065】
被覆には胃液の浸透を可能にする孔および亀裂の形成を防止するための可塑剤を含むことができ、また、通常これを含む。好適な可塑剤には、クエン酸トリエチル(Citroflex 2)、トリアセチン(三酢酸グリセリル)、クエン酸アセチルトリエチル(Citroflex A2)、Carbowax 400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化モノグリセリド類、グリセロール、脂肪酸エステル類、プロピレングリコールおよびフタル酸ジブチルが含まれるが、これらには限定されない。とくに、陰イオン性カルボン酸アクリル系ポリマーから構成されている被覆は、通常約10重量%〜25重量%の可塑剤、特にフタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチルおよびトリアセチンを含む。被覆は、被覆材料を可溶化または分散させるための、ならびに被覆性能および被覆された製品を改善するための、他の被覆添加剤として、例えば粘着防止剤、消泡剤、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)および安定剤(例えばヒドロキシプロピルセルロース、酸および塩基)を含むこともできる。
【0066】
被覆を1種または2種以上の治療剤の粒子、1種または2種以上の治療剤の錠剤、1種または2種以上の治療剤を含むカプセルなどに、慣用の被覆方法および装置を用いて設けることができる。例えば、腸溶性被覆をカプセルに、被覆パン、エアレススプレー手法、流動床被覆装置などを用いて設けることができる。被覆された投薬形態を製造するための材料、装置および方法に関する詳細な情報は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Lieberman, et al.編(New York: Marcel Dekker, Inc., 1989)およびAnsel, et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,第6版(Media, PA: Williams & Wilkins, 1995)中に見出すことができる。上記した被覆の厚さは、経口投薬形態が下部腸管中での局所的な送達の所望の部位に達するまで不変のままであることを確実にするのに十分なものでなければならない。
【0067】
他の態様において、本発明の製剤を収容する腸溶性の、浸透的に活性化されたデバイスを含む薬剤投薬形態を提供する。この態様においては、薬剤含有製剤を小さいオリフィスを含む半透膜または関門中にカプセル封入する。いわゆる「浸透ポンプ」薬剤送達系に関して業界において知られているように、半透膜は水のいずれの方向への通過せしめるが、薬剤は通過させない。したがって、デバイスを水性流体に曝露した際には、水は、デバイスの内部と外部との間の浸透圧差異のために、デバイス中に流入する。水がデバイス中に流入するに従って、内部における薬剤含有製剤は、オリフィスを通って「ポンプ輸送」される。薬剤放出の速度は、水の流入速度と薬剤濃度との積に等しい。
【0068】
半透膜に適する材料には、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、半透性ポリエチレングリコール類、半透性ポリウレタン類、半透性ポリアミド類、半透性スルホン化ポリスチレン類およびポリスチレン誘導体;半透性ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、半透性ポリ(塩化ビニルベンジルトリメチルアンモニウム)ならびにセルロース系ポリマー類、例えば酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、三吉草酸セルロース、セルローストリアシレート、三パルミチン酸セルロース、三プロピオン酸セルロース、二コハク酸セルロース、二パルミチン酸セルロース、二カプリル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、酢酸オクタン酸セルロース、吉草酸パルミチン酸セルロース、酢酸ヘプタン酸セルロース、アセトアルデヒドジメチル酢酸セルロース、酢酸エチルカルバミン酸セルロース、酢酸メチルカルバミン酸セルロース、ジメチルアミノ酢酸セルロースおよびエチルセルロースが含まれるが、これらには限定されない。
【0069】
他の態様において、本発明の製剤を収容する持続放出型被覆デバイスを含む薬剤投薬形態を提供する。この態様において、薬剤含有製剤を、持続放出型膜中にカプセル封入する。膜は、上記したように半透性であってもよい。半透膜により、水が被覆されたデバイスの内側に進入し、次に薬剤を溶解することが可能になる。次に、溶解した薬剤溶液は、半透膜全体に拡散する。したがって、薬剤放出の速度は、被覆されたフィルムの厚さに依存し、薬剤の放出は、GI管のすべての部分において開始し得る。好適な膜材料には、エチルセルロースが含まれる。
【0070】
他の態様において、本発明の製剤を収容する持続放出型デバイスを含む薬剤投薬形態を提供する。この態様においては、薬剤含有製剤を持続放出型ポリマーと均一に混合する。これらの持続放出型ポリマーは、水と接触した際に膨潤し、水が内側に拡散し、薬剤を溶解するためのチャネルを形成することができる高分子量水溶性ポリマーである。ポリマーが膨潤し水に溶解する際に、より多量の薬剤が溶解するために水に曝露される。このような系は、一般的に持続放出型マトリックスと呼ばれる。このようなデバイスに適する材料には、ヒドロプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびメチルセルロースが含まれる。
【0071】
他の態様において、本発明の持続放出型製剤を収容する腸溶デバイスを含む薬剤投薬形態を提供する。この態様においては、上記した薬剤含有製品を腸溶性ポリマーで被覆する。このようなデバイスは、胃中でいかなる薬剤をも放出せず、デバイスが腸に達した際に腸溶性ポリマーはまず溶解し、薬剤の放出が開始される。薬剤放出は持続された放出の様式で起こり得る。
【0072】
腸溶性被覆され、浸透的に活性化されたデバイスは、慣用の材料、方法および装置を用いて製造することができる。例えば、浸透的に活性化されたデバイスを、先ず薬学的に許容し得る柔軟なカプセル中に、前に記載した液体または半固体製剤をカプセル封入することにより、製造することができる。次に、この内部カプセルを、半透膜組成物(例えば好適な溶媒、例えば塩化メチレン−メタノール混合物中の酢酸セルロースおよびポリエチレングリコール4000を含む)で、例えばエアサスペンションマシンを用いて、例えば0.05mmの周囲の十分厚い積層体が形成するまで被覆する。次に、半透性積層カプセルを、慣用の手法を用いて乾燥する。
【0073】
次に、所望の直径(例えば約0.99mm)を有するオリフィスを、半透性積層カプセル壁を貫通して、例えば機械的孔あけ、レーザー孔あけ、機械的破断または浸食性要素の浸食、例えばゼラチンプラグを用いて設ける。次に、浸透的に活性化されたデバイスを、前記したように腸溶性被覆することができる。液体または半固体担体よりむしろ固体担体を含む浸透的に活性化されたデバイスについて、内部カプセルは任意のものである;すなわち、半透膜を、担体−薬剤組成物の周囲に直接形成することができる。しかし、浸透的に活性化されたデバイスの薬剤含有製剤において用いるのに好ましい担体は、溶液、懸濁液、液体、不混和性液体、エマルジョン、ゾル、コロイドおよび油である。とくに好ましい担体には液体または半固体薬剤製剤を含む腸溶カプセルに用いられるものが含まれるが、これには限定されない。
【0074】
セルロース被覆には、酢酸フタル酸およびトリメリット酸セルロースのもの;メタクリル酸コポリマー類、例えば少なくとも40%のメチルアクリル酸を含む、メチルアクリル酸およびこのエステルから誘導されたコポリマー類;ならびにとくにフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。メチルアクリレート類には、例えば、約1:1の比率でのメチルアクリレートおよびメチルアクリル酸メチルまたはエチルに基づく、100,000ダルトンよりも大きい分子量を有するものが含まれる。典型的な製品には、Rohm GmbH, Darmstadt, Germanyにより市販されているEUDRAGIT L、例えばL 100-55が含まれる。典型的な酢酸フタル酸セルロース類は、17〜26%のアセチル含量および30〜40%のフタレート含量を有し、粘度は約45〜90cPである。典型的な酢酸トリメリット酸セルロース類は、17〜26%のアセチル含量、25〜35%のトリメリチル含量を有し、粘度は約15〜20cSである。酢酸トリメリット酸セルロース類の例は、市販されている製品CAT(Eastman Kodak Company, USA)である。
【0075】
フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース類は、典型的に、20,000〜130,000ダルトンの分子量、5〜10%のヒドロキシプロピル含量、18〜24%のメトキシ含量および21〜35%のフタリル含量を有する。酢酸フタル酸セルロースの例は、市販されている製品CAP(Eastman Kodak, Rochester N.Y., USA)である。フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースの例は、6〜10%のヒドロキシプロピル含量、20〜24%のメトキシ含量、21〜27%のフタリル含量、約84,000ダルトンの分子量を有し、登録商標HP50の下で知られており、信越化学社、日本国東京から入手できる市販されている製品、ならびにそれぞれ5〜9%、18〜22%および27〜35%のヒドロキシプロピル含量、メトキシ含量およびフタリル含量ならびに78,000ダルトンの分子量を有し、同一の供給者から入手できる登録商標HP55の下で知られている市販されている製品である。
【0076】
治療剤は、被覆したかまたは被覆していないカプセル中のものとして提供することができる。カプセル材料は、硬質または軟質のいずれであってもよく、当業者に理解されているように、典型的には無味の、容易に投与される水溶性の化合物、例えばゼラチン、デンプンまたはセルロース系材料を含む。カプセルは、好ましくは、例えばゼラチンバンドなどで密封される。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版(Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 1995)を参照。これには、カプセル封入された医薬を製造するための材料および方法が記載されている。
【0077】
治療剤は、座剤において提供することができる。座剤は、直腸による投与を企図した医薬の固体投薬形態である。座剤は、体腔において(約98.6°F)溶融、軟化または溶解し、このことによって中に含まれる医薬を放出するように配合される。座剤のベースは、安定かつ非刺激性であり、化学的に不活性であり、生理学的に不活性でなければならない。多くの商業的に入手できる座剤は、油状または脂肪状のベース材料、例えばココアバター、ココナッツ油、パーム核油およびパーム油を含むところ、これらは多くの場合室温で溶融または変形するため、冷却貯蔵または貯蔵にかかる他の制限が必要となる。Tanaka, et al.の米国特許第4,837,214号には、20またはこれより小さいヒドロキシル価を有し、8〜18個の炭素原子を有する脂肪酸のグリセリド類を含む、80〜99重量%のラウリンタイプの脂肪、これと組み合わせて1〜20重量%の脂肪酸(エルカ酸がこの例である)のジグリセリド類から構成された座剤ベースが記載されている。これらのタイプの座剤の保存寿命は、崩壊のために制限される。他の座剤ベースは、融点を上昇させるが、また薬剤の乏しい吸収および局所的な粘膜の刺激による副作用をもたらし得るアルコール類、界面活性剤などを含む(例えばHartelendy et al.による米国特許第6,099,853号、Ahmad, et al.による米国特許第4,999,342号およびAbidi, et al.による米国特許第4,765,978号を参照)。
【0078】
本発明の薬学的な座剤組成物において用いるベースには、一般的に、主成分としてトリグリセリド類を含む油脂、例えばカカオバター、パーム脂肪、パーム核油、ココナッツ油、分別されたココナッツ油、ラードおよびWITEPSOL(登録商標)、ろう、例えばラノリンおよび還元ラノリン;炭化水素類、例えばワセリン(Vaseline)、スクアレン、スクアランおよび液体パラフィン;長鎖ないし中鎖脂肪酸類、例えばカプリル酸、ラウリン酸、ステアリン酸およびオレイン酸;高級アルコール類、例えばラウリルアルコール、セタノールおよびステアリルアルコール;脂肪酸エステル類、例えばステアリン酸ブチルおよびマロン酸ジラウリル;グリセリンの中鎖ないし長鎖カルボン酸エステル類、例えばトリオレインおよびトリステアリン;グリセリン置換カルボン酸エステル類、例えばアセト酢酸グリセリン;ならびにポリエチレングリコール類およびこの誘導体、例えばマクロゴールおよびセトマクロゴールが含まれる。これらを、単独で、または2種もしくは3種以上の組み合わせで用いることができる。本発明の組成物は、所望により、座剤において普通に用いられる界面活性剤、着色剤などをさらに含むことができる。
【0079】
本発明の医薬組成物は、所定の量の活性成分、吸収助剤および任意にベースなどを、スターラーまたは粉砕ミル中で、必要な場合には高温で均一に混合することにより、製造することができる。得られた組成物の座剤の単位投薬形態への形成は、例えば混合物を型中に流し込むことにより、またはこれをゼラチンカプセルに、カプセル充填機を用いて形成することにより行うことができる。
本発明の組成物は、鼻腔用スプレー、鼻腔用ドロップ、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは散剤として投与することもできる。組成物の投与は、本発明の組成物を含む鼻腔用タンポンまたは鼻腔用スポンジを用いることを含むこともできる。
【0080】
本発明において用いることができる鼻腔内送達系は、水性製剤、非水性製剤およびこれらの組み合わせを含む種々の形態を採ることができる。水性製剤には、例えば、水性ゲル、水性懸濁液、水性リポソーム分散体、水性エマルジョン、水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが含まれる。非水性製剤には、例えば非水性ゲル、非水性懸濁液、非水性リポソーム分散体、非水性エマルジョン、非水性マイクロエマルジョンおよびこれらの組み合わせが含まれる。鼻腔内送達系の種々の形態は、pHを維持するための緩衝液、薬学的に許容し得る増粘剤および保湿剤を含むことができる。緩衝液のpHは、1種または2種以上の治療剤の鼻粘膜を貫通しての吸収を最適にするように選択することができる。
【0081】
非水性鼻腔用製剤における緩衝剤の好適な形態は、製剤が哺乳類の鼻腔中に送達される際に、選択されたpH範囲が例えば鼻粘膜との接触によりこの中で達成されるように選択することができる。本発明において、組成物のpHは約2.0〜約6.0に維持しなければならない。組成物のpHが投与の際の許容者の鼻粘膜への顕著な刺激を生じないpHであるのことが望ましい。
本発明の組成物の粘度の所望のレベルへの維持は、薬学的に許容し得る増粘剤を用いて行うことができる。本発明において用いることができる増粘剤には、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩類、アカシア、キトサン類およびこれらの組み合わせが含まれる。増粘剤の濃度は、選択された剤および所望の粘度に依存する。このような剤は、上記したように散剤製剤において用いることもできる。
【0082】
本発明の組成物は、粘膜の乾燥を低減させるかまたは防止し、この刺激を防止するための保湿剤を含むこともできる。本発明において用いることができる好適な保湿剤には、ソルビトール、鉱油、植物油およびグリセロール;緩和剤;膜コンディショナー;甘味剤;およびこれらの組み合わせが含まれる。本発明の組成物中の保湿剤の濃度は、選択された剤に依存して変化する。
1種または2種以上の治療剤を、鼻腔内送達系または本明細書中に記載したすべての他の送達系中に導入することができる。
【0083】
製剤を、定常状態の血漿レベルを生じるように構成し、設計することができる。定常状態の血漿濃度は、当業者に知られているように、HPLC手法を用いて測定することができる。定常状態は、薬剤送達の速度が、循環系からの薬剤除去の速度と等しい際に達成される。典型的な治療設定において、ノルオキシモルホンの第四級誘導体を、患者に、周期的な投与計画において、または定常的な注入計画を用いて投与する。血漿中の薬剤の濃度は、投与の開始の直後に上昇する傾向があり、薬剤が、循環から、細胞および組織中への分布により、代謝により、または排泄により除去されるに従って、時間経過と共に低下する傾向がある。定常状態は、平均薬剤濃度がある時間にわたり時間一定に維持される際に得られる。
【0084】
間欠的な投薬の場合における薬剤濃度サイクルのパターンは、投与間の各々の間隔において同一に繰り返され、その際平均濃度は一定に維持される。定常的な注入の場合において、平均の薬剤濃度は、周期的変動をほとんど伴わずに一定に維持される。定常状態が達成されていることの確認は、血漿中の薬剤の濃度を投薬の少なくとも1つのサイクルにわたり測定し、同一のサイクルが投薬のたびに繰り返されることを検証することにより行う。典型的に、間欠的な投薬計画においては定常状態の維持を、他の用量の投与の直前の、サイクルの連続的なトラフ値における薬剤濃度を決定することにより立証することができる。濃度における周期的変動が低い定常的な注入による投薬計画において、定常状態を薬剤濃度のすべての2つの連続的な測定により立証することができる。
【0085】
図1は本発明のキットを示す。キット10は、緩下薬を含有する緩下薬カプセル12を包含する。キット10は、メチルナルトレキソンペレットを含有するメチルナルトレキソンカプセル14も含むところ、前記ペレットのいくつかはpH感受性材料によって腸溶性に被覆され、いくつかの構成および設計はメチルナルトレキソンを胃において即時に放出するものとなっている。キットは、指示書も含み、該指示書はカプセルを患者に投与する際に用いられるものである。患者は便秘であるか便秘または胃腸管不動症の症状を有する患者である。
【0086】
本発明のある側面において、キット10は医薬製剤バイアル、医薬製剤希釈剤バイアル、および緩下薬および/または便軟化剤を包含することができる。医薬製剤の希釈剤を含有するバイアルは任意のものである。希釈剤バイアルには希釈剤として生理食塩水のようなものを、濃縮溶液とし得るものを希釈するために用いるものまたはメチルナルトレキソンの凍結乾燥粉のためのものとして含む。指示書は個々の量の希釈剤を個々の量の濃縮された医薬製剤と混合し、最終的な注射または注入のための製剤を調製するための指示書を含み得る。指示書はPCAデバイスにおいて用いるための指示書を含んでもよい。
【0087】
指示書20は患者を有効量のメチルナルトレキソンで処置するための指示書を含むことができる。重ねて理解されたいことは、調製物を含有する容器として、瓶、隔壁を有するバイアル、隔壁を有するアンプル、注入袋などであるか否かにかかわらず、証印として例えば調製物をオートクレーブ処理するかまたは他の方法で滅菌した際に色が変化する慣用のマーキングを含むことができることである。
【0088】
本明細書中において言及した特許、特許出願および参考文献は、これらの全体を参照により導入する。
以下の例は、本発明の説明であって、本発明に対する限定として理解するべきではない。
【0089】

1.例1:メチルナルトレキソン75mg錠剤(非腸溶性)の製造方法の詳細
用いた成分(商品名) 錠剤あたりmg
メチルナルトレキソン 75
微晶質セルロース(Avicel PH 101) 13.30
ポリビニルピロリドン(Povidone K30) 3.5
クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol SD-711) 8
二塩基性リン酸カルシウム(Emcompress) 199
微晶質セルロース(Avicel PH 200) 49.7
ステアリン酸マグネシウム(Hyqual) 1.7
Opadry II Clear 7.00
水 必要量
【0090】
用いた装置
Key KG-5グラニュレーター 顆粒の製造・・・ドウメーカーの一種
Glatt WSG-1, Uniglatt 顆粒の乾燥
Quadro Comill 顆粒粒子の所望の大きさへの破壊
直交流ブレンダー 物の混合
Manesty beta-press 粉末の錠剤への圧縮
O'Hara Labcoat II-X 錠剤のあらゆるフィルムによる被覆
その他の装置として例えば天秤、蠕動ポンプ、プロペラミキサーおよびスパチュラなど
【0091】
製造工程:
2.メチルナルトレキソン、Avicel 101およびAc-Di-Sol(この一部)を、20メッシュスクリーンを通過させ、グラニュレーターに加える。
3.前述の混合物を、Povidoneを水に溶解した溶液を用いて顆粒化する。
4.顆粒が形成した後に、材料をUniglattに移送し、混合物を乾燥する。
5.段階1〜3を、さらに2回繰り返し、混合物を混ぜ合わせる。これは合計重量の1/3である装置容量により行った。
6.工程4における混合物をComillを通過させる。
7.Avicel 200、Emcompressおよび残りのAc-Di-Solを20メッシュスクリーンによりスクリーニングし、これをブレンダーに加える。
8.段階#5からの材料を工程6における材料に加え10分間混合する。
9.ステアリン酸マグネシウムをブレンダーに加え3分間混合する。
10.材料をManesty Beta-pressに移送し、錠剤を圧縮する。
11.錠剤をOpadry II Clearを水に溶解した溶液で、O'Hara Labcoatを用いて被覆する。
【0092】
例2:腸溶性被覆のための製造の詳細(75および225mgの両方)
前の例における工程9の後に:
1.錠剤を、Eudragit Lを水に懸濁させた懸濁液で被覆する。
2.工程11における材料を、Opadry whiteで被覆する。
【0093】
本発明者らが腸溶性部分のために用いるポリマーは、以下の1つである:
Eudragit L DegussaまたはRohm Pharma製
Eudragit L 50D DegussaまたはRohm Pharma製
Acryl-eze (メタクリル酸コポリマータイプC) Colorcon製
Sureteric (ポリ酢酸フタル酸ビニル) Colorcon製
【0094】
例3:経口腸溶持続放出型錠剤のための製造の詳細
用いた成分:
メチルナルトレキソン 250g
ドキュセートナトリウム 100g
ラクトース 20g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(1000cps) 120g
ポリビニルピロリドン 10g
二塩基性リン酸カルシウム 50g
ステアリン酸マグネシウム 3g
酢酸フタル酸セルロース 50g
水 必要量
【0095】
製造工程:
1.250gのメチルナルトレキソンを100gのドキュセートナトリウムと高剪断ブレンダー中で混合する。
2.20gのラクトースおよび120gのヒドロキシプロピルメチルセルロースを、ブレンダーに加え十分に混合する。
3.前述の混合物をポリビニルピロリドンを、水に溶解した溶液(10gを100mlに)を用いて顆粒化する。
4.顆粒が形成した後に、材料を流動床乾燥機に移送し混合物を乾燥する。
5.段階4からの混合物を、ミルを通過させ顆粒の粒子の大きさを減少させて、これをより均一にする。
6.段階5からの材料をタンブルブレンダーに加え、50gの二塩基性リン酸カルシウムを加え、10分間十分に混合する。
7.3gのステアリン酸マグネシウムをブレンダーに加え、3〜5分間混合する。
8.材料を錠剤プレスに移送し、錠剤あたり553mgの目的の重量を有する錠剤に圧縮する。
9.段階8からの錠剤を穴あきパン中で、酢酸フタル酸セルロースによって603mgの錠剤の重量に被覆する。
【0096】
例4:座剤のための製造の詳細:
用いた成分:
メチルナルトレキソン 250g
グリセリン 500g
ポリエチレングリコール1000 100g
ポリエチレングリコール4000 800g
【0097】
製造工程:
1.ジャケット付きポット中に250gのメチルナルトレキソンおよび500gのグリセリンを加え、混合を開始する。
2.100gのポリエチレングリコール1000および800gのポリエチレングリコール4000を、工程1における材料に加え、混合を継続する。
3.段階2からの材料をジャケットにより加熱して、流動可能かつ注入可能である混合物とする。
4.混合物を座剤を製造するための容器中に注入し、室温まで放冷せしめる。
5.次に、固化した座剤を容器から回収する。各々の座剤は、1650mgの重量である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明のキットを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便秘を処置するための方法であって、このような処置を必要としている患者に、便秘の処置に有効な量の緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
患者が緩下薬治療に対して難治性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらにオピオイドを投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者がオピオイドを常時摂取している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オピオイドがモルヒネである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬を1つの製剤において投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
便秘を処置するための方法であって、このような処置を必要としている患者に、便柔軟剤および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
患者が便柔軟剤治療に対して難治性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらにオピオイドを投与することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
患者がオピオイドを常時摂取している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オピオイドがモルヒネである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤を1つの製剤において投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
緩下薬を必要とする症状を処置するための方法であって、このような処置を必要としている患者に、前記症状の処置に有効な量の緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
患者が緩下薬治療に対して難治性である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
さらにオピオイドを投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
患者がオピオイドを常時摂取している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
オピオイドがモルヒネである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬を1つの製剤において投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
便柔軟剤を必要とする症状を処置するための方法であって、このような処置を必要としている患者に、前記症状の処置に有効な量の緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
患者が便柔軟剤治療に対して難治性である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらにオピオイドを投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
患者がオピオイドを常時摂取している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
オピオイドがモルヒネである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
末梢オピオイドアンタゴニストおよび便柔軟剤を1つの製剤において投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
末梢オピオイドアンタゴニストが、ノルオキシモルホンの第四級誘導体である、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者が、末期患者である、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
患者が、先進医療病を罹患している、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
患者が、癌患者である、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
患者が、手術後の患者である、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
患者が慢性の疼痛を有している、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
末梢オピオイドアンタゴニストが、ノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、患者に前記末梢オピオイドアンタゴニストを非経口的に0.001〜1.0mg/kgの範囲の量で投与する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンであり、患者にメチルナルトレクソンを非経口的に0.1〜0.45mg/kgの範囲の量で投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
メチルナルトレクソンの量が0.1〜0.3mg/kgの範囲である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
末梢オピオイドアンタゴニストを非経口的に投与する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
末梢オピオイドアンタゴニストを、経静脈、皮下的および無針注射からなる群から選択される経路によって投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
患者に末梢オピオイドアンタゴニストを、経口投与または経腸投与する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
末梢オピオイドアンタゴニストが、ノルオキシモルホンの第四級誘導体であり、前記末梢オピオイドアンタゴニストを10〜500mg/kgの範囲の量で投与する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
末梢オピオイドアンタゴニストを、腸溶性製剤によって投与する、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンであり、患者にメチルナルトレクソンを経口的に50〜250mg/kgの範囲の量で投与する、請求項37に記載の方法。請求項43に記載の方法。
【請求項46】
メチルナルトレクソンの量が75〜225mg/kgの範囲である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
患者に末梢オピオイドアンタゴニストを経腸投与する、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストを含む製剤。
【請求項49】
緩下薬および末梢オピオイドアンタゴニストが座剤として製剤された、請求項48に記載の製剤。
【請求項50】
末梢オピオイドアンタゴニストが座剤の核を形成している、請求項49に記載の製剤。
【請求項51】
緩下薬が座剤の全体に分散している、請求項49に記載の製剤。
【請求項52】
末梢オピオイドアンタゴニストが薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項49に記載の製剤。
【請求項53】
末梢オピオイドアンタゴニストが粒子を含む、請求項49に記載の製剤。
【請求項54】
粒子が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項53に記載の製剤。
【請求項55】
経口製剤である、請求項48に記載の製剤。
【請求項56】
末梢オピオイドアンタゴニストが経口製剤の核を形成している、請求項55に記載の製剤。
【請求項57】
緩下薬が経口製剤の全体に分散している、請求項55に記載の製剤。
【請求項58】
末梢オピオイドアンタゴニストが薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項59】
薬学的に許容し得る担体が腸溶性の被覆である、請求項58に記載の製剤。
【請求項60】
緩下薬が腸溶性の被覆を受けていない、請求項59に記載の製剤。
【請求項61】
緩下薬の少なくとも一部が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項62】
薬学的に許容し得る担体が腸溶性の被覆である、請求項61に記載の製剤。
【請求項63】
末梢オピオイドアンタゴニストが腸溶性の被覆を受けていない、請求項62に記載の製剤。
【請求項64】
末梢オピオイドアンタゴニストを胃、小腸および大腸に放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項65】
末梢オピオイドアンタゴニストを小腸および大腸のみに放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項66】
末梢オピオイドアンタゴニストを小腸のみに放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項67】
末梢オピオイドアンタゴニスト大腸のみに放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項68】
末梢オピオイドアンタゴニストの全量を、即時に、実質的に胃に放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項69】
末梢オピオイドアンタゴニストが、持続放出型物質の中にあるかまたは該物質によって被覆されている、請求項48に記載の製剤。
【請求項70】
末梢オピオイドアンタゴニストが、腸溶性に被覆された持続放出型物質の中にある、請求項48に記載の製剤。
【請求項71】
緩下薬が持続放出型物質の中にない、請求項69に記載の製剤。
【請求項72】
緩下薬が、持続放出型物質の中にあるかまたは該物質によって被覆されている、請求項48に記載の製剤。
【請求項73】
緩下薬が、持続放出型物質がマトリクスまたは膜である、請求項72に記載の製剤。
【請求項74】
緩下薬が、腸溶性に被覆された持続放出型物質の中にある、請求項48に記載の製剤。
【請求項75】
末梢オピオイドアンタゴニストが持続放出型物質の中にない、請求項72に記載の製剤。
【請求項76】
末梢オピオイドアンタゴニストがノルオキシモルホンの第四級誘導体である、請求項48〜75のいずれかに記載の製剤。
【請求項77】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項76に記載の製剤。
【請求項78】
メチルナルトレクソンが50〜250mg/kgの範囲で存在する、請求項77に記載の製剤。
【請求項79】
さらにオピオイドを含む、請求項77に記載の製剤。
【請求項80】
便柔軟剤および末梢オピオイドアンタゴニストを含む製剤。
【請求項81】
便柔軟剤および末梢オピオイドアンタゴニストが座剤として製剤された、請求項80に記載の製剤。
【請求項82】
末梢オピオイドアンタゴニストが座剤の核を形成している、請求項80に記載の製剤。
【請求項83】
便柔軟剤が座剤の全体に分散している、請求項80に記載の製剤。
【請求項84】
末梢オピオイドアンタゴニストが薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項80に記載の製剤。
【請求項85】
末梢オピオイドアンタゴニストが粒子を含む、請求項80に記載の製剤。
【請求項86】
粒子が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項85に記載の製剤。
【請求項87】
経口製剤である、請求項80に記載の製剤。
【請求項88】
液体、半固体または固体である、請求項87に記載の製剤。
【請求項89】
末梢オピオイドアンタゴニストが経口製剤の核を形成している、請求項87に記載の製剤。
【請求項90】
末梢オピオイドアンタゴニストが経口製剤の全体に分散している、請求項87に記載の製剤。
【請求項91】
末梢オピオイドアンタゴニストの少なくとも一部が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項92】
薬学的に許容し得る担体が腸溶性の被覆である、請求項91に記載の製剤。
【請求項93】
薬学的に許容し得る担体が持続放出型性被覆である、請求項91に記載の製剤。
【請求項94】
便柔軟剤が腸溶性の被覆を受けていない、請求項93に記載の製剤。
【請求項95】
便柔軟剤の少なくとも一部が薬学的に許容し得る担体によって被覆されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項96】
薬学的に許容し得る担体が腸溶性の被覆である、請求項95に記載の製剤。
【請求項97】
薬学的に許容し得る担体が持続放出型性の被覆である、請求項95に記載の製剤。
【請求項98】
末梢オピオイドアンタゴニストが腸溶性の被覆を受けていない、請求項96に記載の製剤。
【請求項99】
末梢オピオイドアンタゴニストを胃、小腸および大腸に放出するように構成され設計されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項100】
末梢オピオイドアンタゴニストを小腸および大腸に放出するように構成され設計されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項101】
末梢オピオイドアンタゴニストを小腸に放出するように構成され設計されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項102】
末梢オピオイドアンタゴニスト大腸のみに放出するように構成され設計されている、請求項87に記載の製剤。
【請求項103】
末梢オピオイドアンタゴニストの全量を、即時に、実質的に胃に放出するように構成され設計されている、請求項55に記載の製剤。
【請求項104】
末梢オピオイドアンタゴニストが、持続放出型性物質の中にあるかまたは該物質によって被覆されている、請求項80に記載の製剤。
【請求項105】
便柔軟剤が持続放出型性物質の中にない、請求項104に記載の製剤。
【請求項106】
便柔軟剤が持続放出型性物質の中にある、請求項80に記載の製剤。
【請求項107】
末梢オピオイドアンタゴニストが、持続放出型性物質の中にない、請求項106に記載の製剤。
【請求項108】
末梢オピオイドアンタゴニストがノルオキシモルホンの第四級誘導体である、請求項80〜107のいずれかに記載の製剤。
【請求項109】
末梢オピオイドアンタゴニストが、メチルナルトレクソンである、請求項108に記載の製剤。
【請求項110】
メチルナルトレクソンが50〜250mgの範囲で存在する、請求項109に記載の製剤。
【請求項111】
さらにオピオイドを含む、請求項110に記載の製剤。
【請求項112】
キットであって、末梢オピオイドアンタゴニストおよび緩下薬および/または便柔軟剤の製剤を含む包装体を含む、前記キット。
【請求項113】
製剤が請求項48〜111のいずれかに記載の製剤である、請求項112に記載のキット。
【請求項114】
末梢オピオイドアンタゴニストが第1の容器にあり、緩下薬および/または便柔軟剤は前記第1の容器とは異なる容器にある、請求項112に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2006−522819(P2006−522819A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509866(P2006−509866)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/010998
【国際公開番号】WO2004/091665
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(505377108)プロジェニックス ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】