緩衝体及びレベルワウンドコイルの載置方法
【課題】本発明は、コイル状の管をETTS方式で引き出す際に、最下段の層遷移部が緩衝体との間に挟まれて破損することを防止できる緩衝体及び梱包されたレベルワウンドコイルの載置方法を提供することを目的とする。
【解決手段】連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイル10を梱包する梱包材20のうちコイル上下面11a,11bに当接させる緩衝プレート(22,30)であって、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接する側である当接面35における、層間を跨いで奇数層から外側の偶数層に遷移する銅管12の下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えた。
【解決手段】連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイル10を梱包する梱包材20のうちコイル上下面11a,11bに当接させる緩衝プレート(22,30)であって、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接する側である当接面35における、層間を跨いで奇数層から外側の偶数層に遷移する銅管12の下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば銅管などの長尺状の管を整列巻き且つトラバース巻きによって構成したレベルワウンドコイルの梱包材における緩衝体に関し、特に、ETTS方式で前記管を引き出す際にスムーズに引き出すことのできる緩衝体及び梱包したレベルワウンドコイルの載置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空調装置等に用いられる銅管等の長尺状の管はコイル状にして搬送する必要があり、従来はボビンに巻き付けていた。この場合、利用者は、ボビンに巻き取られた管を、例えば、アンコイラーのような引き出し装置にボビンごとセットして、所望の長さ分を引き出して使用していた。
【0003】
なお、管をコイル状にする巻取り方法は様々存在する。一般的に、上述のような銅管の場合、ボビンを用いて一方のフランジ側から他方のフランジに向かってボビン軸の外周に管を巻き付けていく。そして、他方のフランジ側に達すると、既に巻き付けた管の外側に乗り上げて、一方側のフランジに向かって2層目を巻き付ける。ここで、層間を跨いで前層から次層を遷移する部分を層遷移部という。これを複数層分繰り返してコイル状を構成する。
【0004】
なお、上記巻き付け方法には、ボビン軸の外周をフランジに平行に管を巻き付ける整列巻き、ボビン軸の軸方向に交差する方向で巻き付ける螺旋巻き、次層の管を前層における隣り合う管の間に巻き付けるトラバース巻き等がある。
【0005】
しかし、上述したように、管をボビンに巻き付けた場合、ボビンごとセットする引き出し装置が大きくなるといった問題があった。また、すべての管を使用した後にボビンが残るため、ボビンを処分する必要があった。
【0006】
そこで、コイル状にしてからボビンを取り外して梱包し、利用者はボビンが取り外されたコイル体を、コイル状の軸方向が上下方向となるように配置し、コイル状の内周側の管始端から引き出して使用するETTS(Eye to the sky)方式が多く用いられている。
【0007】
上記ETTS方式は、コイル体の内周側の管始端から平面視中心側に引き出して中央上部に引き出す方法である。このようなETTS方式では管を引き出す際に、コイル体の下面部分が損傷しないよう梱包材の緩衝体を介在させたまま、管を上方に引き出して使用する。
このETTS方式によって管の引き出しを行うと、大規模な引き出し装置を必要とせず、また、ボビンを処分する必要がなく利便性が高い。
【0008】
しかし、上述したような層遷移部が引き出し時に引っ掛かってキンクし破損する等の問題があった。
上記問題について詳しく説明すると、上述したような管の巻き付け方法により、層遷移部は層ごとにコイル体の上面及び下面に交互に生じる。
【0009】
例えば、コイル体の内周側の管始端が内周側1層目の上端部にあった場合、管は内周側1層目の下端部で内周側2層目に遷移する。反対に、内周側2層目の上端部で内周側3層目へ遷移する。このように、層遷移部は、奇数層から偶数層への層遷移部と、偶数層から奇数層への層遷移部とは、コイル体の上下面に交互に生じる。
【0010】
そして、上記ETTS方式において、上述したようなコイル体の下面側の層遷移部を引き出す際、まだ引き出されていない次層の管が層遷移部の上方に残っているため、上方の管と上記緩衝体との間に層遷移部が挟まれた状態で引っ張られ、その負荷によって層遷移部がキンクして破損するといった問題があった。
【0011】
そこで、特許文献1では、レベルワウンドコイルを構成する管の巻き方によって、下面側の層遷移部が上記緩衝体に当接しないレベルワウンドコイルを構成することを提案している。
【0012】
詳しくは、管を整列巻きするとともに、例えば奇数層の最下段とその隣の管との間に偶数層の最下段の管を巻き付けるトラバース巻きによってレベルワウンドコイルを構成する。これにより、奇数層から偶数層への下面側に生じる層遷移部と上記緩衝体との間に隙間が生じ、下面側の層遷移部が引き出される際にキンクなどによる破損を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−370869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、現実的には、連続する管が層間を跨いで遷移する層遷移部は、例えば、奇数層の最下段から偶数層である次層に遷移するため、最下段で次層に遷移する層遷移部の一部は、上方の管と上記緩衝体とによって挟まれた状態となり、層遷移部の破損を確実に防止できる方法ではなかった。
【0015】
そこで、本発明は、コイル状の管をETTS方式で引き出す際に、最下段の層遷移部が緩衝体との間に挟まれて破損することを防止できる緩衝体及び梱包されたレベルワウンドコイルの載置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明の態様として、前記摩擦低減手段を、前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成することができる。
また、この発明の態様として、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えることができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えることができる。
また、この発明は、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上述の緩衝体を当接させて梱包するレベルワウンドコイルの梱包方法であることを特徴とする。
【0019】
さらにまた、この発明は、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備え、前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねることを特徴とする。
【0020】
上記整列巻きは、連続する管を巻き付けてコイル状を形成する際のボビン軸の外周をフランジに平行に管を巻き付ける巻き方をいい、上記トラバース巻きは、径方向に複数層巻き回してコイル状に形成する管を前層の管と管との間に配置する巻き方をいう。
【0021】
上記梱包材は、整列巻きの方向が上下方向となるように配置するレベルワウンドコイルの上下面のうち少なくとも下面に当接させる上記緩衝体に加え、少なくともレベルワウンドコイルの外周面を被覆するカバーで構成する梱包材であるこという。
【0022】
上記緩衝体は、軽量で緩衝性を備えながら剛性もあり、耐熱性・耐水性・耐薬品性・その他各種の機械的特性に優れた無架橋低発泡ポリプロピレンシート製緩衝体、紙段ボール製緩衝体、プラスチック段ボール製緩衝体、樹脂板で形成した緩衝体、発泡樹脂板で形成した緩衝体、あるいは木板で形成した緩衝体で構成することができる。
【0023】
上記摩擦低減手段とは、摩擦低減手段を備えない場合に緩衝体と層遷移部との間で生じる摩擦より低下させる手段であり、当接させないことで摩擦の発生を防止して摩擦低減手段を備えない場合に生じる摩擦より低減させる低減手段、変形することで発生する摩擦を低減する低減手段、あるいは表面の滑り性能を向上することで摩擦を低減する低減手段等で構成することができる。
【0024】
摩擦低減手段の具体的な態様としては、板状の緩衝体における当接側の面に形成した凹部による摩擦低減手段や、スポンジ等の変形性の高い高変形性部材で構成した摩擦低減手段や、テフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理による摩擦低減手段とすることができる。
【0025】
上記凹部は、所定の厚みの緩衝体における層遷移部に対向する箇所を凹ませる形成した凹部や、所定の厚みの板体を重ねて構成した緩衝体における層遷移部に対向する箇所の重ね枚数を減らして構成した凹部とすることができる。
【0026】
上記位置明示手段は、色によって凹部の位置を明示する位置明示手段、マーク等の記号によって凹部の位置を明示する位置明示手段とすることができるとともに、位置明示手段を、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側の面及び反対側の面の少なくとも一方に備えることができる。
【0027】
上記当接方向明示手段は、例えば、レベルワウンドコイルを構成する管の始端位置や終端位置に対する緩衝体を当接させる回転位置を明示する手段とすることができる。
【0028】
具体的な態様として、マーク等の記号によって始端位置の位置を明示する位置明示手段とすることができ、さらに、当接方向明示手段を上記位置明示手段と兼ねることもできる。
【0029】
なお、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことにより、レベルワウンドコイルを梱包した状態で下面を保護しながら、管を破損させるとなく、ETTS方式によって管を確実に引き出すことができる。
【0030】
詳しくは、緩衝体における層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことにより、引き出されていない管が上方に残っている下面側の層遷移部を、緩衝体とレベルワウンドコイル下面とが当接する状態で引っ張っても、摩擦低減手段によって緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、引っ張り負荷によって層遷移部がキンクして破損することを防止できる。
【0031】
例えば、緩衝体におけるコイルに当接する側の面に形成した凹部による摩擦低減手段で構成した場合、層遷移部が上方の管と、緩衝体の面との間に挟まれないため、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0032】
また、スポンジ等の変形性の高い高変形性部材による摩擦低減手段で構成した場合、上方の管と、緩衝体の面とに挟まれた層遷移部を引き出す際に、摩擦低減手段が変形することで、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0033】
さらにまた、テフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理による摩擦低減手段で構成した場合、上方の管と、緩衝体の面とに挟まれた層遷移部を引き出す際に、摩擦低減手段によって、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0034】
このように、レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体における層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことによって、引き出されていない管が上方に残っている下面側の層遷移部を、緩衝体とレベルワウンドコイル下面とが当接する状態で引っ張っても、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる緩衝体を構成することができる。
【0035】
また、前記摩擦低減手段を、前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成することによって、容易に凹状の摩擦低減手段を構成して、ETTS方式において損傷することなく管を確実に引き出せる緩衝体を得ることができる。
【0036】
また、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えたことにより、緩衝体における摩擦低減手段である凹部の位置を容易に確認することができる。
詳しくは、位置明示手段を、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側の面に備えた場合、凹部の位置を容易に確認しながら緩衝体を用いてレベルワウンドコイルを梱包することができる。
【0037】
また、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側と反対側の面に位置明示手段を備えた場合、梱包後の外部から凹部の位置を容易に確認することができる。したがって、緩衝体に備えた凹部の位置を確認しながら梱包されたレベルワウンドコイルを搬送等において取り扱うことができ、利便性が向上する。
【0038】
また、前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えたことにより、摩擦低減手段を層遷移部に対向する位置に配置した状態で緩衝体をレベルワウンドコイルに当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式で破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0039】
また、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上述の緩衝体を当接させて梱包するレベルワウンドコイルの梱包方法としたことで、レベルワウンドコイルの下面側に緩衝体を介在させたまま、ETTS方式によって、破損することなく管を確実に引き出すことができるため、利便性が向上する。
【0040】
さらにまた、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備え、前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねたことにより、レベルワウンドコイルを載置したまま、ETTS方式によって、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0041】
具体的には、上下に積み重ねたレベルワウンドコイルのうち最上段のレベルワウンドコイルを、下面側を緩衝体で保護したまま、ETTS方式において、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0042】
また、緩衝体の凹部の配置が、上下方向の軸に対して軸対照となるよう前記レベルワウンドコイルを積み重ねているため、凹部が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0043】
また、凹部の位置を明示する位置明示手段を緩衝体に備えたことにより、容易に凹部の位置を確認して、緩衝体の凹部の配置が軸対照となるようレベルワウンドコイルを積み重ねることができる。
【発明の効果】
【0044】
この発明によれば、コイル状の管をETTS方式で引き出す際に、最下段の層遷移部が緩衝体との間に挟まれて破損することを防止できる緩衝体及び梱包されたレベルワウンドコイルの載置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】梱包済LWCを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図。
【図2】梱包済LWCにおける1コイル分の斜視図。
【図3】梱包済LWCにおける1コイル分の分解斜視図。
【図4】下面緩衝プレートの平面図。
【図5】下面緩衝プレートの分解斜視図。
【図6】LWCの底面図による説明図。
【図7】LWCの巻き付けについての説明図。
【図8】下面側層遷移部の引き出しについての説明図。
【図9】別の実施形態の下面緩衝プレートの平面図。
【図10】別の実施形態の梱包済LWCを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図。
【図11】別の実施形態の梱包済LWCの斜視図。
【図12】別の実施形態の梱包済LWCの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0047】
図1は本発明を採用した梱包済レベルワウンドコイル(以下において梱包済LWCという)1からETTS方式で管を引き出す状態の斜視図を示し、図2は梱包済LWC1における1コイル分の斜視図を示し、図3は梱包済LWC1における1コイル分の分解斜視図を示している。
【0048】
図4は下面緩衝プレート30の平面図を示し、図5は下面緩衝プレート30の分解斜視図を示し、図6はレベルワウンドコイル(以下においてLWCという)10の底面図による説明図を示し、図7はLWC10の巻き付け方についての説明図を示し、図8は下面側層遷移部14bの引き出しについての説明図を示している。
【0049】
本発明の下面緩衝プレート30は、レベルワウンドコイル10を梱包する梱包材20におけるコイル下面11bに当接させる緩衝プレートである。
そして、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接面35における、下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えている。
【0050】
なお、LWC10は、連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きにより、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成している。そして、整列巻きした銅管12による層を径方向に跨いで層を遷移する層遷移部14のうち、コイル下面11bに出現し、奇数層から外側の偶数層に遷移する部分を下面側層遷移部14bとしている。
【0051】
また、摩擦低減凹部40の位置を明示する位置明示手段として、扇状台座板32と凹部形成板33との色を変更するとともに、凹部位置マーク41(41a,41b)を備えている。
さらに、下面緩衝プレート30の当接面35に、コイル下面11bに当接させる向きを明示する管端位置マーク50を備えている。
【0052】
また、梱包済LWC1は、銅管12の整列方向(軸方向L)が上下方向となるよう配置したLWC10(10a〜10d)を複数上下方向に積み重ねて載置し、最下段のLWC10のコイル下面11bの下側と、各LWC10の間に、上述の下面緩衝プレート30(30a〜30d)を当接させて梱包している。
【0053】
そして、上述したように下面緩衝プレート30を用いて梱包した梱包済LWC1を、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねて載置している。
【0054】
上記構成について、詳述すると、梱包済LWC1は、図1に示すように、LWC10を上下方向に複数積み重ねて載置し、最上段のLWC10の内周側から銅管12を引き出して使用することができる。
なお、このように、最上段のLWC10の内周側から銅管12を上方に向かって引き出す方法をETTS方式という。
【0055】
梱包済LWC1は、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包材20で梱包し、上下方向に積み重ねて構成している(図1,2参照)。
【0056】
梱包材20は、帯状の透明ビニール製である帯状ビニールカバー21と、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30とで構成している。
帯状ビニールカバー21は、図3に示すように、LWC10の高さより一回り幅広の帯状であり、LWC10の外周面に巻きつけてカバーする帯状ビニールカバーである。
【0057】
下面緩衝プレート30は、軽量で緩衝性を備えながら剛性もあり、耐熱性・耐水性・耐薬品性・その他各種の機械的特性に優れた無架橋低発泡ポリプロピレンシート製の板状体を、LWC10の径より一回り大きな円形状に形成している。
【0058】
下面緩衝プレート30は、図5に示すように、最下層を構成する円形台座板31と、該円形台座板31と同外径の扇型に形成された扇状台座板32と、扇状台座板32に上面に貼り付ける凹部形成板33とを貼り付けた3層構造で構成している。
【0059】
扇型の扇状台座板32は、外周部をそろえて、4方向に等間隔で円形台座板31に貼り付けることによって、平面視+状のバンド溝34を形成している。
上記扇状台座板32の上面に貼り付ける凹部形成板33によって摩擦低減凹部40を形成している。
【0060】
詳しくは、図4に示すように、下面緩衝プレート30を平面視+状のバンド溝34で4方向に領域を分断し、右上から順に時計回りに、第1凹部領域、第2凹部領域、第3凹部領域、第4凹部領域に等間隔で設定している。
そして、右上の第1凹部領域において、円形台座板31と外周が一致する帯円弧状凹部形成板33aによって扇状凹部40aを構成している。
【0061】
右下の第2凹部領域では、扇状凹部40aより小さな径の扇状凹部形成板33baと、第1凹部領域における扇状凹部40aの半分程度の幅で形成され、円形台座板31と外周が一致する帯円弧状凹部形成板33bbによって小径帯円弧状凹部40bを構成している。
【0062】
左下の第3凹部領域では、扇状凹部40aと同径の扇状凹部形成板33caと、円形台座板31の外周に沿って形成された細い帯円弧状凹部形成板33cbによって中径帯円弧状凹部40cを構成している。
左上の第4凹部領域では、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bと同外径の扇状で形成された扇状凹部形成板33dによって大径帯円弧状凹部40dを構成している。
【0063】
このように、右上から順に時計回りに設定された第1乃至第4凹部領域には、それぞれ径方向の位置が順に外側に移動するように配置される摩擦低減凹部40が凹部形成板33によって形成され、各凹部領域の間に平面視+状のバンド溝34を形成している。
【0064】
なお、摩擦低減凹部40は扇状台座板32の上面に貼り付けた凹部形成板33の一枚分の厚みの凹部で形成され、バンド溝34は凹部形成板33と円形台座板31の上面に貼り付けられた扇状台座板32の2枚分の厚みの凹部で形成している。
【0065】
さらに、帯円弧状凹部形成板33bbの外周付近に、下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させる向きを明示する管端位置マーク50を備えている。また、摩擦低減凹部40の位置を明示する位置明示手段として機能する、「○」及び「×」で示した凹部位置マーク41をバンド溝34に備えるとともに、円形台座板31、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。
【0066】
詳しくは、管端位置マーク50に近い方の図4の右側のバンド溝34に○マーク41aを、管端位置マーク50と遠い方の左側のバンド溝34に×マーク41bを備えている。
また、円形台座板31を茶色、扇状台座板32を白色、凹部形成板33を緑色に着色している。
【0067】
LWC10は、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成している。(図2参照)
なお、銅管12は、空調装置の熱交換器等に用いられる内面溝付管や平滑管等の伝熱管に用いられる銅又は銅合金の管である。
【0068】
LWC10は、図6,7に示すように、ボビン100に対して平面視反時計回りに径内側から径外側に向かって巻き付けて形成している。さらに詳しくは、まず、ボビン軸101に沿って一方のフランジ102(102a,102b)から他方側のフランジ向かって巻き付けていく。
【0069】
なお、本実施例においては、管始端12aを上フランジ102a付近に配置し、1層目は下フランジ102bに向かって巻き付ける構成とする。したがって、内周側からの奇数層は上フランジ102aから下フランジ102bに向かって下方向に巻き付けていき、逆に内周側からの偶数層は下フランジ102bから上フランジ102aに向かって上方向に巻き付けていく構成となる。
【0070】
また、ボビン軸101に沿って巻き付ける銅管12は、ボビン100に巻き付けた1層目と2層目の銅管12についての展開図を示す図7(a)に示すように、管始端12aからフランジ102に沿って、軸方向Lに直角な方向でボビン軸101に巻き付ける整列部13aと、次の列に遷移する列遷移部13bとで構成し、これにより、銅管12を軸方向Lに沿って複数列巻き付けて整列巻き層を構成している。
【0071】
なお、図7(a)において点線で示す1層目(奇数層)では、ボビン軸101に沿って下方向に巻き付けていくため、列遷移部13bは図7(a)において右下がりとなり、図7(a)において実線で示す2層目(偶数層)では、ボビン軸101に沿って上方向に巻き付けていくため、列遷移部13bは図7(a)において右上がりとなる。
【0072】
また、列遷移部13bは、銅管12の管径や表面の滑り具合で長さ、すなわち整列部13aに対する角度が異なるが、図7に示す本実施例ではおよそ整列部13aの半分程度の長さで構成している。
【0073】
このような構成の整列巻き層を径外側方向に複数層分形成して構成したLWC10において、前層から次層へは、層遷移部14によって層間を跨いで遷移する。
詳しくは、図7(a)における各断面(a乃至d)の断面図を示す図7(b)において、整列部13aの始端位置であるd−d断面から整列部13aの終端位置であるa−a断面まで巻き付けた1層目の銅管12の最下段12bは、1層目の最下列遷移部13baと下フランジ102bとの隙間に入りきれず、最下列遷移部13baの径外側を巻き付け、1層目と2層目を跨いで遷移する下面側層遷移部14bを構成することとなる。
【0074】
そして、1層目から2層目へ整列巻き層を跨いで遷移した下面側層遷移部14bは、整列部13aの始端位置であるd−d断面に示すように、1層目の管と管との間に位置して2層目の整列部13aを構成する。このような前層の管と管との間に次層の管を配置する巻き方をトラバース巻きという。
【0075】
このように、最上下段の列遷移部13bにかぶさるようにして形成される層遷移部14による層遷移を繰り返して、径方向に整列巻きした銅管12による複数層構成のLWC10を構成している。そして、上記1層目(奇数層)から2層目(偶数層)へ遷移する下面側層遷移部14bは、図6に示すLWC10の底面図に示すように、LWC10の下側で遷移してコイル下面11bに出現する。
【0076】
これに対し、偶数層から奇数層へ遷移する上面側層遷移部14aは、LWC10の上側で遷移してコイル上面11aに出現する。なお、最上下段の列遷移部13bにかぶさるようにして形成される層遷移部14は、図6に示すように、銅管12の巻き付け方向にズレて出現する。
【0077】
このようにして、内周側の管始端12aから外周側の管終端12cまでをボビン100のボビン軸101に巻き付けて構成したLWC10は、この状態で銅管12の製造工程のうち焼鈍工程を経て、ボビン100を解体し、図6において点線で示す結束バンド60でLWC10の4方向を結束して、コイル形態を保持している。
【0078】
そして、結束バンド60で4方向を結束したLWC10を、図3に示すように、管終端12cと管端位置マーク50とを合わせて下面緩衝プレート30の上面にLWC10を載置する。そして、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外し、帯状ビニールカバー21でLWC10の外周面を巻き回してカバーする。これを上下方向に繰り返して載置して梱包済LWC1を構成する。
【0079】
これにより、図4に示すように、1層目から2層目の第1下面側層遷移部14baが第1凹部領域の扇状凹部40aに対向する態様でコイル下面11bと下面緩衝プレート30とを当接させた状態で梱包することができる。
【0080】
同様に、3層目から4層目の第2下面側層遷移部14bbが、第1凹部領域の扇状凹部40aとバンド溝34と第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bとを跨いで対向する態様となり、5層目から6層目の第3下面側層遷移部14bcが、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bに対向する態様となる。
【0081】
7層目から8層目の第4下面側層遷移部14bdは、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bとバンド溝34と第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cとを跨いで対向する態様となり、9層目から10層目の第5下面側層遷移部14beが、第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cに対向する態様となる。
【0082】
11層目から12層目の第6下面側層遷移部14bfは、第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cとバンド溝34と第4凹部領域における大径帯円弧状凹部40dとを跨いで対向する態様となり、13層目から14層目の第7下面側層遷移部14bgが、第4凹部領域における大径帯円弧状凹部40dに対向する態様となる。
【0083】
このような構成の梱包済LWC1から所望の長さの銅管12を引き出すETTS方式について詳述する。まず、図1に示すように、上下方向にLWC10を積み重ねて構成した梱包済LWC1のうち、最上段のLWC10の内周側から管始端12aを上方に引き出す。
【0084】
なお、このとき、銅管12は、LWC10の平面視中心から上方に引き出されるよう、載置した梱包済LWC1の平面視中央上方に配置したベント管(図示省略)を通して引き出される。そして、内周側の1層目の管始端12aから順に引き出される。
【0085】
このように、内周側1層目の管始端12aから順に引き出されるETTS方式では、偶数層から奇数層への上面側層遷移部14aでは問題とならない。しかし、図8に示すように、LWC10のコイル下面11bに出現する奇数層から偶数層への下面側層遷移部14bにおいては、まだ引き出されていない偶数層の銅管12(これを直上銅管12dという)が下面側層遷移部14bの上方に残っているため、直上銅管12dと下面緩衝プレート30の当接面35との間で挟まれることとなる。
【0086】
摩擦低減凹部40を備えない場合の図8a部拡大図に示すように、この直上銅管12dと下面緩衝プレート30の当接面35との間で挟まれた状態で、銅管12を引き出すために矢印c方向の引き出し力が銅管12にかかると中空銅管である銅管12はキンクし、破損する。
【0087】
しかし、図8a部拡大図において点線で示す摩擦低減凹部40を下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する箇所に形成したことによって、上方に直上銅管12dがある下面側層遷移部14bであっても、直上銅管12dと当接面35との間に挟まることを防止できる。したがって、スムーズに下面側層遷移部14bを矢印c方向に引き出すことができる。
【0088】
このように、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bの対向する箇所に摩擦低減凹部40を形成したことによって、梱包済LWC1からETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる。
【0089】
なお、このようにETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる梱包済LWC1は、上述したように、上下方向、すなわち梱包済LWC1の軸方向Lに積み重ねて載置し、最上段のLWC10の内周側から銅管12を引き出すこととなる(図1参照)。
【0090】
このとき、梱包済LWC1は、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の回転位置が積重ね軸Hに対して軸対照となるように各LWC10(10a〜10d)を積み重ねて構成している。
詳しくは、最下段の1段目LWC10dは、手前側に管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見えるように配置した下面緩衝プレート30dの上に載置する。そして、その1段目LWC10dのコイル上面11aに下面緩衝プレート30cを配置し、その上面に2段目LWC10cを配置する。
【0091】
これを繰り返し、2段目LWC10cと3段目LWC10bとの間に下面緩衝プレート30bを配置し、3段目LWC10bと最上段LWC10aとの間に下面緩衝プレート30aを配置している。
【0092】
そして、下面緩衝プレート30bは、上述の下面緩衝プレート30dと同様に、手前側に管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見える向きで配置している。
これに対し、下面緩衝プレート30cと下面緩衝プレート30aとは、手前側に管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが見える向きで配置している。
【0093】
これにより、上下に積み重ねた下面緩衝プレート30(30a〜30d)は、扇状凹部40aと中径帯円弧状凹部40cとが交互に同方向となり、同様に、小径帯円弧状凹部40bと大径帯円弧状凹部40dとが交互に同方向となる。
【0094】
よって、周方向の厚みが摩擦低減凹部40によって部分的に異なる下面緩衝プレート30を、摩擦低減凹部40の配置が軸対象となる方向でLWC10を積み重ねて梱包済LWC1を構成したことによって、摩擦低減凹部40が同方向に重なるように下面緩衝プレート30(30a〜30d)を同方向に配置し、LWC10を積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0095】
なお、上述の説明においては、銅管12の巻き付け方向にズレて出現する下面側層遷移部14bに対向する下面緩衝プレート30の当接面35に形成する摩擦低減凹部40を、形状の異なる凹部形成板33を組み合わせて構成したが、その他の方法で摩擦低減凹部40を構成してもよい。
【0096】
例えば、3層構成の下面緩衝プレート30を1層で構成し、図9に示すように、下面側層遷移部14bに対向する箇所を連続させて、平面視略渦巻き状の渦巻凹部42を形成してもよい。渦巻凹部42を備えた下面緩衝プレート30であっても摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30と同様に効果を得ることができる。
【0097】
次に、上述した本実施形態の下面緩衝プレート30、下面緩衝プレート30を用いた梱包済LWC1、並びに梱包済LWC1の載置方法による作用効果について説明する。連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包する梱包材20のうちコイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接面35における、LWC10の層間を跨いで奇数層から外側の偶数層に遷移する銅管12の下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えた。
【0098】
これにより、連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLEC10から、銅管12を破損させることなく、ETTS方式によって銅管12を確実に引き出すことができる。
【0099】
詳しくは、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、下面緩衝プレート30における、下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を形成したことにより、引き出されていない直上銅管12dが上方に残っている下面側層遷移部14bが当接面35と直上銅管12dとの間で挟まれることを防止できる。したがって、引っ張り負荷によって下面側層遷移部14bがキンクして破損することなく、銅管12を確実に引き出すことができる。
【0100】
また、下面緩衝プレート30のバンド溝34に、摩擦低減凹部40の位置を明示する凹部位置マーク41を備えるとともに、摩擦低減凹部40の位置を明示するために、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。これにより、下面緩衝プレート30における摩擦低減凹部40の位置を容易に確認してLWC10を梱包することができる。
【0101】
また、下面緩衝プレート30の当接面35に管端位置マーク50を備えたため、摩擦低減凹部40を下面側層遷移部14bに対向する位置で下面緩衝プレート30をLWC10に当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式によって破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0102】
また、梱包済LWC1は、摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させて構成しているため、LWC10のコイル下面11bに下面緩衝プレート30を介在させたまま、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0103】
さらにまた、梱包済LWC1を下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねて構成したため、摩擦低減凹部40が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる梱包済LWC1の傾きを防止することができる。
【0104】
なお、上述の説明においては下面緩衝プレート30を、無架橋低発泡ポリプロピレンシート製で構成したが、紙段ボール製、プラスチック段ボール製、樹脂板製、発泡樹脂板製、あるいは木板製の緩衝プレートであってもよい。
【0105】
また、上記摩擦低減手段として下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する部分に形成した凹状の摩擦低減凹部40で構成したが、下面側層遷移部14bに対向する部分に埋め込んだスポンジ等の変形性の高い高変形性部材で構成してもよい。
【0106】
これにより、上方の直上銅管12dと、下面緩衝プレート30の当接面35とに挟まれた下面側層遷移部14bを引き出す際に、変形性の高い摩擦低減手段が変形することで、当接面35と下面側層遷移部14bとの摩擦が低減され、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0107】
さらにまた、上記摩擦低減手段として機能する摩擦低減凹部40の代替として、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する箇所にテフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理を施してもよい。
【0108】
これにより、上方の直上銅管12dと、下面緩衝プレート30の当接面35とに挟まれた下面側層遷移部14bを引き出す際に、低摩擦剤による表面処理によって、当接面35と下面側層遷移部14bとの摩擦が低減され、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0109】
なお、このように、摩擦低減手段として、下面側層遷移部14bに対向する部分にのみ変形性の高い摩擦低減手段や、低摩擦剤による表面処理を行うことで、下面緩衝プレート30に載置した状態で、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができる。
【0110】
詳しくは、例えば、当接面35の全面を変形性の高い摩擦低減手段で構成した場合、下面緩衝プレート30全体が変形してしまい、下面側層遷移部14bとの接触面積が増大することで摩擦が向上し、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができない。
【0111】
逆に、当接面35の全面に低摩擦剤による表面処理を行うと、直上銅管12dと当接面35とで挟まれた下面側層遷移部14bの引き出しはスムーズにできる。しかし、下面緩衝プレート30に載置されたLWC10が、当接面35に施された表面処理によって安定せず、銅管12の引き出しによってLWC10が下面緩衝プレート30上を滑り、ETTS方式による銅管12の引き出しが逆に困難となるおそれがある。
【0112】
しかし、下面側層遷移部14bに対向する部分にのみ変形性の高い摩擦低減手段や、低摩擦剤による表面処理を行うことで、下面緩衝プレート30に載置した状態で、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができる。
【0113】
なお、下面緩衝プレート30の当接面35には、凹部形成板33と扇状台座板32とによって二枚分の厚みの凹部状のバンド溝34を備えているが、バンド溝34を形成せずに、二枚分の厚みの凹部形成板33で摩擦低減凹部を形成してもよい。
【0114】
また、下面緩衝プレート30の底面にもバンド溝34を備えてもよい。この場合、下面緩衝プレート30を間に挟んだ状態でLWC10を上下方向に積み重ねた後から、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外すことができる。
【実施例2】
【0115】
以下、図面に基づいて第2の実施形態について詳述する。
なお、上述の実施例1の構成と同じ構成については詳細な説明を省略する。
図10は本発明を採用した梱包済レベルワウンドコイル(以下において梱包済LWCという)1aを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図を示し、図11は梱包済LWC1aの斜視図を示し、図12は梱包済LWC1aの分解斜視図を示している。
【0116】
本発明の梱包済LWC1aは、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻きするとともに、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包材20aで梱包して構成している(図11参照)。
【0117】
このように構成した梱包済LWC1aを上下方向に複数積み重ねて載置し、最上段の梱包済LWC1aのビニールカバー21aとコイル上面11a側の上面緩衝プレート22を取り外し、内周側から銅管12を引き出して使用することができる。
【0118】
梱包材20aは、筒状の透明ビニール製であるビニールカバー21aと、LWC10のコイル上面11aに当接させる上面緩衝プレート22と、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30とで構成している。
【0119】
ビニールカバー21aは、図12に示すように、LWC10の外径より一回り大きな開口を上下両端に備えた筒状であり、熱によって収縮するビニールカバーである。
【0120】
下面緩衝プレート30の素材や構成については、実施例1の下面緩衝プレート30と同じであるため、詳細な説明は省略する。
上面緩衝プレート22は、上述の下面緩衝プレート30と同じ素材で構成している。
【0121】
コイル上面11aに当接する上面緩衝プレート22は、最上層を構成する円形台座板と、円形台座板の下面側に2枚重ねて貼り付けた扇状台座板とで3層構造で構成するとともに、下面緩衝プレート30のバンド溝34と同様に下面視+状のバンド溝を形成している。
【0122】
また、上面緩衝プレート22の上面側、すなわちコイル上面11aに当接しない側の反当接面22aにおける下面緩衝プレート30の凹部位置マーク41に対応する位置に凹部位置マーク41(41a,41b)を備えている。
【0123】
上述したような構成の梱包材20aを用いた梱包済LWC1aの梱包は、結束バンド60で4方向を結束したLWC10を、図12に示すように、管終端12cと管端位置マーク50とを合わせて下面緩衝プレート30の上面にLWC10を載置し、そのLWC10のコイル上面11aに上面緩衝プレート22を載置する。
【0124】
このようにして、上から上面緩衝プレート22、LWC10及び下面緩衝プレート30の順で重ね合わせた状態で、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外し、ビニールカバー21aで覆い、熱風をかけて、固定して梱包済LWC1aを構成する。
これにより、下面側層遷移部14bが摩擦低減凹部40に対向する態様でコイル下面11bと下面緩衝プレート30とを当接させた状態で梱包することができる(図4参照)。
【0125】
このような構成の梱包済LWC1aから所望の長さの銅管12を引き出すETTS方式について詳述する。まず、図10に示すように、上下方向に積み重ねた梱包済LWC1aのうち、最上段の梱包済LWC1aの上面緩衝プレート22とを取り外し、内周側から管始端12aを上方に引き出す。
【0126】
このとき、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bの対向する箇所に摩擦低減凹部40を形成したことによって、上面緩衝プレート22を取り外した梱包済LWC1aからETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる。
【0127】
なお、このようにETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる梱包済LWC1aは、上述したように、上下方向、すなわち梱包済LWC1aの軸方向Lに積み重ねて載置し、最上段の梱包済LWC1aの上面緩衝プレート22を取り外して、銅管12を引き出すこととなる(図10参照)。
【0128】
このとき、各梱包済LWC1a(1a〜1d)における下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の回転位置が積重ね軸Hに対して軸対照となるように各梱包済LWC1aを積み重ねている。
詳しくは、最下段の1段目梱包済LWC1adの手前側に、管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見えるように配置し、その上に、管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが見えるように2段目梱包済LWC1acを配置する。
【0129】
さらに、2段目梱包済LWC1acの上に、管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが手前側に見えるように配置した3段目梱包済LWC1abを載置するとともに、その上に、管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが手前側に見えるように配置した最上段梱包済LWC1aaを載置している。
【0130】
これにより、上下に積み重ねた梱包済LWC1aの下面緩衝プレート30は、扇状凹部40aと中径帯円弧状凹部40cとが交互に同方向となり、同様に、小径帯円弧状凹部40bと大径帯円弧状凹部40dとが交互に同方向となる。
【0131】
よって、周方向の厚みが摩擦低減凹部40によって部分的に異なる下面緩衝プレート30を、摩擦低減凹部40の配置が軸対象となる方向で梱包済LWC1aを積み重ねたことによって、同形状の摩擦低減凹部40が同方向に配置されるように梱包済LWC1aを積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0132】
また、下面緩衝プレート30のバンド溝34に、摩擦低減凹部40の位置を明示する凹部位置マーク41を備えるとともに、摩擦低減凹部40の位置を明示するために、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。これにより、下面緩衝プレート30における摩擦低減凹部40の位置を容易に確認してLWC10を梱包することができる。
【0133】
また、上面緩衝プレート22上面に凹部位置マーク41を備えたため、梱包済LWC1a外部から摩擦低減凹部40の位置を容易に確認することができる。したがって、下面緩衝プレート30に備えた摩擦低減凹部40の位置を確認しながら梱包済LWC1aを搬送等において取り扱うことができ、利便性が向上する。
【0134】
また、下面緩衝プレート30の当接面35に管端位置マーク50を備えたため、摩擦低減凹部40を下面側層遷移部14bに対向する位置で下面緩衝プレート30をLWC10に当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式によって破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0135】
また、梱包済LWC1aは、摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させて梱包しているため、上面緩衝プレート22を取り外すだけで、LWC10のコイル下面11bに下面緩衝プレート30を介在させたまま、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0136】
さらにまた、梱包済LWC1aを、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねたため、摩擦低減凹部40が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる梱包済LWC1aの傾きを防止することができる。
【0137】
なお、コイル上面11aに当接する上面緩衝プレート22及び下面緩衝プレート30の両方にバンド溝34を形成しているため、梱包済LWC1aを上下方向に積み重ねて載置してからでもバンド溝34を通過させて結束バンド60を取り外すことができる。また、バンド溝34を備えていない上面緩衝プレート22あるいは下面緩衝プレート30を用いてもよい。
【0138】
また、上述の実施例においては、LWC10のコイル下面11bにのみ摩擦低減凹部40を形成した下面緩衝プレート30を当接させて梱包したが、LWC10のコイル上面11aにも、上面側層遷移部14aに対応する箇所に摩擦低減凹部40を形成した上面緩衝プレートを当接させて梱包してもよい。
【0139】
これにより、梱包済LWC1aを上下逆さまで載置し、ETTS方式で銅管12を引き出す際であっても、上面側層遷移部14aに対向する部分に形成された摩擦低減凹部40によって、上下逆さまに配置された上面側層遷移部14aが上面緩衝プレートの当接面と直上銅管12dとの間で挟まれることを防止できる。したがって、引っ張り負荷によって上面側層遷移部14aがキンクして破損することなく、銅管12を確実に引き出すことができる。
また、下面緩衝プレート30の当接面35と、上面緩衝プレート22の反当接面22aに、○マーク41a及び×マーク41bの両方を備えたが一方のみ備えてももちろんよい。
【0140】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の管は、銅管12に対応し、
以下、同様に、
梱包したレベルワウンドコイルは、梱包済LWC1,1aに対応し、
コイル端面は、コイル下面11bに対応し、
緩衝体は、下面緩衝プレート30に対応し、
層遷移部は、下面側層遷移部14bに対応し、
摩擦低減手段は、摩擦低減凹部40,扇状凹部40a,小径帯円弧状凹部40b,中径帯円弧状凹部40c,大径帯円弧状凹部40d及び渦巻凹部42に対応し、
コイル端面に当接する面は、当接面35に対応し、
位置明示手段は、凹部位置マーク41、○マーク41a及び×マーク41b、並びに扇状台座板32及び凹部形成板33の色に対応し、
当接方向明示手段は、管端位置マーク50に対応し、
上下方向及び整列方向は、軸方向Lに対応し、
上下方向の軸は、積重ね軸Hに対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆるコイル状に巻き付けた銅管12のコイル体に適用する実施形態を含むものである。
【0141】
例えば、上述の実施例においては、銅管12を整列巻きするとともに、次層の銅管12を前層における隣り合う銅管12の間に巻き付けるトラバース巻きで構成したが、次層の銅管12を前層における銅管12とずらさずに巻き付けたコイル体であってもよい。さらに、銅管12を整列巻きせずとも螺旋巻きしたコイル体であってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1,1a…梱包済LWC
10…LWC
11b…コイル下面
11…銅管
13b…下面側層遷移部
20,20a…梱包材
30…下面緩衝プレート
32…扇状台座板
33…凹部形成板
33a,33bb,33cb…帯円弧状凹部形成板
33ba,33ca,33d…扇状凹部形成板
35…当接面
40…摩擦低減凹部
40a…扇状凹部
40b…小径帯円弧状凹部
40c…中径帯円弧状凹部
40d…大径帯円弧状凹部
41…凹部位置マーク
41a…○マーク
41b…×マーク
42…渦巻凹部
50…管端位置マーク
H…積重ね軸
L…軸方向
R…径方向
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば銅管などの長尺状の管を整列巻き且つトラバース巻きによって構成したレベルワウンドコイルの梱包材における緩衝体に関し、特に、ETTS方式で前記管を引き出す際にスムーズに引き出すことのできる緩衝体及び梱包したレベルワウンドコイルの載置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空調装置等に用いられる銅管等の長尺状の管はコイル状にして搬送する必要があり、従来はボビンに巻き付けていた。この場合、利用者は、ボビンに巻き取られた管を、例えば、アンコイラーのような引き出し装置にボビンごとセットして、所望の長さ分を引き出して使用していた。
【0003】
なお、管をコイル状にする巻取り方法は様々存在する。一般的に、上述のような銅管の場合、ボビンを用いて一方のフランジ側から他方のフランジに向かってボビン軸の外周に管を巻き付けていく。そして、他方のフランジ側に達すると、既に巻き付けた管の外側に乗り上げて、一方側のフランジに向かって2層目を巻き付ける。ここで、層間を跨いで前層から次層を遷移する部分を層遷移部という。これを複数層分繰り返してコイル状を構成する。
【0004】
なお、上記巻き付け方法には、ボビン軸の外周をフランジに平行に管を巻き付ける整列巻き、ボビン軸の軸方向に交差する方向で巻き付ける螺旋巻き、次層の管を前層における隣り合う管の間に巻き付けるトラバース巻き等がある。
【0005】
しかし、上述したように、管をボビンに巻き付けた場合、ボビンごとセットする引き出し装置が大きくなるといった問題があった。また、すべての管を使用した後にボビンが残るため、ボビンを処分する必要があった。
【0006】
そこで、コイル状にしてからボビンを取り外して梱包し、利用者はボビンが取り外されたコイル体を、コイル状の軸方向が上下方向となるように配置し、コイル状の内周側の管始端から引き出して使用するETTS(Eye to the sky)方式が多く用いられている。
【0007】
上記ETTS方式は、コイル体の内周側の管始端から平面視中心側に引き出して中央上部に引き出す方法である。このようなETTS方式では管を引き出す際に、コイル体の下面部分が損傷しないよう梱包材の緩衝体を介在させたまま、管を上方に引き出して使用する。
このETTS方式によって管の引き出しを行うと、大規模な引き出し装置を必要とせず、また、ボビンを処分する必要がなく利便性が高い。
【0008】
しかし、上述したような層遷移部が引き出し時に引っ掛かってキンクし破損する等の問題があった。
上記問題について詳しく説明すると、上述したような管の巻き付け方法により、層遷移部は層ごとにコイル体の上面及び下面に交互に生じる。
【0009】
例えば、コイル体の内周側の管始端が内周側1層目の上端部にあった場合、管は内周側1層目の下端部で内周側2層目に遷移する。反対に、内周側2層目の上端部で内周側3層目へ遷移する。このように、層遷移部は、奇数層から偶数層への層遷移部と、偶数層から奇数層への層遷移部とは、コイル体の上下面に交互に生じる。
【0010】
そして、上記ETTS方式において、上述したようなコイル体の下面側の層遷移部を引き出す際、まだ引き出されていない次層の管が層遷移部の上方に残っているため、上方の管と上記緩衝体との間に層遷移部が挟まれた状態で引っ張られ、その負荷によって層遷移部がキンクして破損するといった問題があった。
【0011】
そこで、特許文献1では、レベルワウンドコイルを構成する管の巻き方によって、下面側の層遷移部が上記緩衝体に当接しないレベルワウンドコイルを構成することを提案している。
【0012】
詳しくは、管を整列巻きするとともに、例えば奇数層の最下段とその隣の管との間に偶数層の最下段の管を巻き付けるトラバース巻きによってレベルワウンドコイルを構成する。これにより、奇数層から偶数層への下面側に生じる層遷移部と上記緩衝体との間に隙間が生じ、下面側の層遷移部が引き出される際にキンクなどによる破損を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−370869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、現実的には、連続する管が層間を跨いで遷移する層遷移部は、例えば、奇数層の最下段から偶数層である次層に遷移するため、最下段で次層に遷移する層遷移部の一部は、上方の管と上記緩衝体とによって挟まれた状態となり、層遷移部の破損を確実に防止できる方法ではなかった。
【0015】
そこで、本発明は、コイル状の管をETTS方式で引き出す際に、最下段の層遷移部が緩衝体との間に挟まれて破損することを防止できる緩衝体及び梱包されたレベルワウンドコイルの載置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明の態様として、前記摩擦低減手段を、前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成することができる。
また、この発明の態様として、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えることができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えることができる。
また、この発明は、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上述の緩衝体を当接させて梱包するレベルワウンドコイルの梱包方法であることを特徴とする。
【0019】
さらにまた、この発明は、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備え、前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねることを特徴とする。
【0020】
上記整列巻きは、連続する管を巻き付けてコイル状を形成する際のボビン軸の外周をフランジに平行に管を巻き付ける巻き方をいい、上記トラバース巻きは、径方向に複数層巻き回してコイル状に形成する管を前層の管と管との間に配置する巻き方をいう。
【0021】
上記梱包材は、整列巻きの方向が上下方向となるように配置するレベルワウンドコイルの上下面のうち少なくとも下面に当接させる上記緩衝体に加え、少なくともレベルワウンドコイルの外周面を被覆するカバーで構成する梱包材であるこという。
【0022】
上記緩衝体は、軽量で緩衝性を備えながら剛性もあり、耐熱性・耐水性・耐薬品性・その他各種の機械的特性に優れた無架橋低発泡ポリプロピレンシート製緩衝体、紙段ボール製緩衝体、プラスチック段ボール製緩衝体、樹脂板で形成した緩衝体、発泡樹脂板で形成した緩衝体、あるいは木板で形成した緩衝体で構成することができる。
【0023】
上記摩擦低減手段とは、摩擦低減手段を備えない場合に緩衝体と層遷移部との間で生じる摩擦より低下させる手段であり、当接させないことで摩擦の発生を防止して摩擦低減手段を備えない場合に生じる摩擦より低減させる低減手段、変形することで発生する摩擦を低減する低減手段、あるいは表面の滑り性能を向上することで摩擦を低減する低減手段等で構成することができる。
【0024】
摩擦低減手段の具体的な態様としては、板状の緩衝体における当接側の面に形成した凹部による摩擦低減手段や、スポンジ等の変形性の高い高変形性部材で構成した摩擦低減手段や、テフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理による摩擦低減手段とすることができる。
【0025】
上記凹部は、所定の厚みの緩衝体における層遷移部に対向する箇所を凹ませる形成した凹部や、所定の厚みの板体を重ねて構成した緩衝体における層遷移部に対向する箇所の重ね枚数を減らして構成した凹部とすることができる。
【0026】
上記位置明示手段は、色によって凹部の位置を明示する位置明示手段、マーク等の記号によって凹部の位置を明示する位置明示手段とすることができるとともに、位置明示手段を、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側の面及び反対側の面の少なくとも一方に備えることができる。
【0027】
上記当接方向明示手段は、例えば、レベルワウンドコイルを構成する管の始端位置や終端位置に対する緩衝体を当接させる回転位置を明示する手段とすることができる。
【0028】
具体的な態様として、マーク等の記号によって始端位置の位置を明示する位置明示手段とすることができ、さらに、当接方向明示手段を上記位置明示手段と兼ねることもできる。
【0029】
なお、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことにより、レベルワウンドコイルを梱包した状態で下面を保護しながら、管を破損させるとなく、ETTS方式によって管を確実に引き出すことができる。
【0030】
詳しくは、緩衝体における層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことにより、引き出されていない管が上方に残っている下面側の層遷移部を、緩衝体とレベルワウンドコイル下面とが当接する状態で引っ張っても、摩擦低減手段によって緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、引っ張り負荷によって層遷移部がキンクして破損することを防止できる。
【0031】
例えば、緩衝体におけるコイルに当接する側の面に形成した凹部による摩擦低減手段で構成した場合、層遷移部が上方の管と、緩衝体の面との間に挟まれないため、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0032】
また、スポンジ等の変形性の高い高変形性部材による摩擦低減手段で構成した場合、上方の管と、緩衝体の面とに挟まれた層遷移部を引き出す際に、摩擦低減手段が変形することで、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0033】
さらにまた、テフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理による摩擦低減手段で構成した場合、上方の管と、緩衝体の面とに挟まれた層遷移部を引き出す際に、摩擦低減手段によって、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0034】
このように、レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体における層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えたことによって、引き出されていない管が上方に残っている下面側の層遷移部を、緩衝体とレベルワウンドコイル下面とが当接する状態で引っ張っても、緩衝体と層遷移部との摩擦が低減され、破損することなく管を確実に引き出すことができる緩衝体を構成することができる。
【0035】
また、前記摩擦低減手段を、前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成することによって、容易に凹状の摩擦低減手段を構成して、ETTS方式において損傷することなく管を確実に引き出せる緩衝体を得ることができる。
【0036】
また、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えたことにより、緩衝体における摩擦低減手段である凹部の位置を容易に確認することができる。
詳しくは、位置明示手段を、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側の面に備えた場合、凹部の位置を容易に確認しながら緩衝体を用いてレベルワウンドコイルを梱包することができる。
【0037】
また、緩衝体のレベルワウンドコイルに当接する側と反対側の面に位置明示手段を備えた場合、梱包後の外部から凹部の位置を容易に確認することができる。したがって、緩衝体に備えた凹部の位置を確認しながら梱包されたレベルワウンドコイルを搬送等において取り扱うことができ、利便性が向上する。
【0038】
また、前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えたことにより、摩擦低減手段を層遷移部に対向する位置に配置した状態で緩衝体をレベルワウンドコイルに当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式で破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0039】
また、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上述の緩衝体を当接させて梱包するレベルワウンドコイルの梱包方法としたことで、レベルワウンドコイルの下面側に緩衝体を介在させたまま、ETTS方式によって、破損することなく管を確実に引き出すことができるため、利便性が向上する。
【0040】
さらにまた、連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備え、前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねたことにより、レベルワウンドコイルを載置したまま、ETTS方式によって、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0041】
具体的には、上下に積み重ねたレベルワウンドコイルのうち最上段のレベルワウンドコイルを、下面側を緩衝体で保護したまま、ETTS方式において、破損することなく管を確実に引き出すことができる。
【0042】
また、緩衝体の凹部の配置が、上下方向の軸に対して軸対照となるよう前記レベルワウンドコイルを積み重ねているため、凹部が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0043】
また、凹部の位置を明示する位置明示手段を緩衝体に備えたことにより、容易に凹部の位置を確認して、緩衝体の凹部の配置が軸対照となるようレベルワウンドコイルを積み重ねることができる。
【発明の効果】
【0044】
この発明によれば、コイル状の管をETTS方式で引き出す際に、最下段の層遷移部が緩衝体との間に挟まれて破損することを防止できる緩衝体及び梱包されたレベルワウンドコイルの載置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】梱包済LWCを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図。
【図2】梱包済LWCにおける1コイル分の斜視図。
【図3】梱包済LWCにおける1コイル分の分解斜視図。
【図4】下面緩衝プレートの平面図。
【図5】下面緩衝プレートの分解斜視図。
【図6】LWCの底面図による説明図。
【図7】LWCの巻き付けについての説明図。
【図8】下面側層遷移部の引き出しについての説明図。
【図9】別の実施形態の下面緩衝プレートの平面図。
【図10】別の実施形態の梱包済LWCを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図。
【図11】別の実施形態の梱包済LWCの斜視図。
【図12】別の実施形態の梱包済LWCの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0047】
図1は本発明を採用した梱包済レベルワウンドコイル(以下において梱包済LWCという)1からETTS方式で管を引き出す状態の斜視図を示し、図2は梱包済LWC1における1コイル分の斜視図を示し、図3は梱包済LWC1における1コイル分の分解斜視図を示している。
【0048】
図4は下面緩衝プレート30の平面図を示し、図5は下面緩衝プレート30の分解斜視図を示し、図6はレベルワウンドコイル(以下においてLWCという)10の底面図による説明図を示し、図7はLWC10の巻き付け方についての説明図を示し、図8は下面側層遷移部14bの引き出しについての説明図を示している。
【0049】
本発明の下面緩衝プレート30は、レベルワウンドコイル10を梱包する梱包材20におけるコイル下面11bに当接させる緩衝プレートである。
そして、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接面35における、下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えている。
【0050】
なお、LWC10は、連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きにより、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成している。そして、整列巻きした銅管12による層を径方向に跨いで層を遷移する層遷移部14のうち、コイル下面11bに出現し、奇数層から外側の偶数層に遷移する部分を下面側層遷移部14bとしている。
【0051】
また、摩擦低減凹部40の位置を明示する位置明示手段として、扇状台座板32と凹部形成板33との色を変更するとともに、凹部位置マーク41(41a,41b)を備えている。
さらに、下面緩衝プレート30の当接面35に、コイル下面11bに当接させる向きを明示する管端位置マーク50を備えている。
【0052】
また、梱包済LWC1は、銅管12の整列方向(軸方向L)が上下方向となるよう配置したLWC10(10a〜10d)を複数上下方向に積み重ねて載置し、最下段のLWC10のコイル下面11bの下側と、各LWC10の間に、上述の下面緩衝プレート30(30a〜30d)を当接させて梱包している。
【0053】
そして、上述したように下面緩衝プレート30を用いて梱包した梱包済LWC1を、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねて載置している。
【0054】
上記構成について、詳述すると、梱包済LWC1は、図1に示すように、LWC10を上下方向に複数積み重ねて載置し、最上段のLWC10の内周側から銅管12を引き出して使用することができる。
なお、このように、最上段のLWC10の内周側から銅管12を上方に向かって引き出す方法をETTS方式という。
【0055】
梱包済LWC1は、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包材20で梱包し、上下方向に積み重ねて構成している(図1,2参照)。
【0056】
梱包材20は、帯状の透明ビニール製である帯状ビニールカバー21と、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30とで構成している。
帯状ビニールカバー21は、図3に示すように、LWC10の高さより一回り幅広の帯状であり、LWC10の外周面に巻きつけてカバーする帯状ビニールカバーである。
【0057】
下面緩衝プレート30は、軽量で緩衝性を備えながら剛性もあり、耐熱性・耐水性・耐薬品性・その他各種の機械的特性に優れた無架橋低発泡ポリプロピレンシート製の板状体を、LWC10の径より一回り大きな円形状に形成している。
【0058】
下面緩衝プレート30は、図5に示すように、最下層を構成する円形台座板31と、該円形台座板31と同外径の扇型に形成された扇状台座板32と、扇状台座板32に上面に貼り付ける凹部形成板33とを貼り付けた3層構造で構成している。
【0059】
扇型の扇状台座板32は、外周部をそろえて、4方向に等間隔で円形台座板31に貼り付けることによって、平面視+状のバンド溝34を形成している。
上記扇状台座板32の上面に貼り付ける凹部形成板33によって摩擦低減凹部40を形成している。
【0060】
詳しくは、図4に示すように、下面緩衝プレート30を平面視+状のバンド溝34で4方向に領域を分断し、右上から順に時計回りに、第1凹部領域、第2凹部領域、第3凹部領域、第4凹部領域に等間隔で設定している。
そして、右上の第1凹部領域において、円形台座板31と外周が一致する帯円弧状凹部形成板33aによって扇状凹部40aを構成している。
【0061】
右下の第2凹部領域では、扇状凹部40aより小さな径の扇状凹部形成板33baと、第1凹部領域における扇状凹部40aの半分程度の幅で形成され、円形台座板31と外周が一致する帯円弧状凹部形成板33bbによって小径帯円弧状凹部40bを構成している。
【0062】
左下の第3凹部領域では、扇状凹部40aと同径の扇状凹部形成板33caと、円形台座板31の外周に沿って形成された細い帯円弧状凹部形成板33cbによって中径帯円弧状凹部40cを構成している。
左上の第4凹部領域では、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bと同外径の扇状で形成された扇状凹部形成板33dによって大径帯円弧状凹部40dを構成している。
【0063】
このように、右上から順に時計回りに設定された第1乃至第4凹部領域には、それぞれ径方向の位置が順に外側に移動するように配置される摩擦低減凹部40が凹部形成板33によって形成され、各凹部領域の間に平面視+状のバンド溝34を形成している。
【0064】
なお、摩擦低減凹部40は扇状台座板32の上面に貼り付けた凹部形成板33の一枚分の厚みの凹部で形成され、バンド溝34は凹部形成板33と円形台座板31の上面に貼り付けられた扇状台座板32の2枚分の厚みの凹部で形成している。
【0065】
さらに、帯円弧状凹部形成板33bbの外周付近に、下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させる向きを明示する管端位置マーク50を備えている。また、摩擦低減凹部40の位置を明示する位置明示手段として機能する、「○」及び「×」で示した凹部位置マーク41をバンド溝34に備えるとともに、円形台座板31、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。
【0066】
詳しくは、管端位置マーク50に近い方の図4の右側のバンド溝34に○マーク41aを、管端位置マーク50と遠い方の左側のバンド溝34に×マーク41bを備えている。
また、円形台座板31を茶色、扇状台座板32を白色、凹部形成板33を緑色に着色している。
【0067】
LWC10は、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成している。(図2参照)
なお、銅管12は、空調装置の熱交換器等に用いられる内面溝付管や平滑管等の伝熱管に用いられる銅又は銅合金の管である。
【0068】
LWC10は、図6,7に示すように、ボビン100に対して平面視反時計回りに径内側から径外側に向かって巻き付けて形成している。さらに詳しくは、まず、ボビン軸101に沿って一方のフランジ102(102a,102b)から他方側のフランジ向かって巻き付けていく。
【0069】
なお、本実施例においては、管始端12aを上フランジ102a付近に配置し、1層目は下フランジ102bに向かって巻き付ける構成とする。したがって、内周側からの奇数層は上フランジ102aから下フランジ102bに向かって下方向に巻き付けていき、逆に内周側からの偶数層は下フランジ102bから上フランジ102aに向かって上方向に巻き付けていく構成となる。
【0070】
また、ボビン軸101に沿って巻き付ける銅管12は、ボビン100に巻き付けた1層目と2層目の銅管12についての展開図を示す図7(a)に示すように、管始端12aからフランジ102に沿って、軸方向Lに直角な方向でボビン軸101に巻き付ける整列部13aと、次の列に遷移する列遷移部13bとで構成し、これにより、銅管12を軸方向Lに沿って複数列巻き付けて整列巻き層を構成している。
【0071】
なお、図7(a)において点線で示す1層目(奇数層)では、ボビン軸101に沿って下方向に巻き付けていくため、列遷移部13bは図7(a)において右下がりとなり、図7(a)において実線で示す2層目(偶数層)では、ボビン軸101に沿って上方向に巻き付けていくため、列遷移部13bは図7(a)において右上がりとなる。
【0072】
また、列遷移部13bは、銅管12の管径や表面の滑り具合で長さ、すなわち整列部13aに対する角度が異なるが、図7に示す本実施例ではおよそ整列部13aの半分程度の長さで構成している。
【0073】
このような構成の整列巻き層を径外側方向に複数層分形成して構成したLWC10において、前層から次層へは、層遷移部14によって層間を跨いで遷移する。
詳しくは、図7(a)における各断面(a乃至d)の断面図を示す図7(b)において、整列部13aの始端位置であるd−d断面から整列部13aの終端位置であるa−a断面まで巻き付けた1層目の銅管12の最下段12bは、1層目の最下列遷移部13baと下フランジ102bとの隙間に入りきれず、最下列遷移部13baの径外側を巻き付け、1層目と2層目を跨いで遷移する下面側層遷移部14bを構成することとなる。
【0074】
そして、1層目から2層目へ整列巻き層を跨いで遷移した下面側層遷移部14bは、整列部13aの始端位置であるd−d断面に示すように、1層目の管と管との間に位置して2層目の整列部13aを構成する。このような前層の管と管との間に次層の管を配置する巻き方をトラバース巻きという。
【0075】
このように、最上下段の列遷移部13bにかぶさるようにして形成される層遷移部14による層遷移を繰り返して、径方向に整列巻きした銅管12による複数層構成のLWC10を構成している。そして、上記1層目(奇数層)から2層目(偶数層)へ遷移する下面側層遷移部14bは、図6に示すLWC10の底面図に示すように、LWC10の下側で遷移してコイル下面11bに出現する。
【0076】
これに対し、偶数層から奇数層へ遷移する上面側層遷移部14aは、LWC10の上側で遷移してコイル上面11aに出現する。なお、最上下段の列遷移部13bにかぶさるようにして形成される層遷移部14は、図6に示すように、銅管12の巻き付け方向にズレて出現する。
【0077】
このようにして、内周側の管始端12aから外周側の管終端12cまでをボビン100のボビン軸101に巻き付けて構成したLWC10は、この状態で銅管12の製造工程のうち焼鈍工程を経て、ボビン100を解体し、図6において点線で示す結束バンド60でLWC10の4方向を結束して、コイル形態を保持している。
【0078】
そして、結束バンド60で4方向を結束したLWC10を、図3に示すように、管終端12cと管端位置マーク50とを合わせて下面緩衝プレート30の上面にLWC10を載置する。そして、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外し、帯状ビニールカバー21でLWC10の外周面を巻き回してカバーする。これを上下方向に繰り返して載置して梱包済LWC1を構成する。
【0079】
これにより、図4に示すように、1層目から2層目の第1下面側層遷移部14baが第1凹部領域の扇状凹部40aに対向する態様でコイル下面11bと下面緩衝プレート30とを当接させた状態で梱包することができる。
【0080】
同様に、3層目から4層目の第2下面側層遷移部14bbが、第1凹部領域の扇状凹部40aとバンド溝34と第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bとを跨いで対向する態様となり、5層目から6層目の第3下面側層遷移部14bcが、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bに対向する態様となる。
【0081】
7層目から8層目の第4下面側層遷移部14bdは、第2凹部領域における小径帯円弧状凹部40bとバンド溝34と第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cとを跨いで対向する態様となり、9層目から10層目の第5下面側層遷移部14beが、第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cに対向する態様となる。
【0082】
11層目から12層目の第6下面側層遷移部14bfは、第3凹部領域における中径帯円弧状凹部40cとバンド溝34と第4凹部領域における大径帯円弧状凹部40dとを跨いで対向する態様となり、13層目から14層目の第7下面側層遷移部14bgが、第4凹部領域における大径帯円弧状凹部40dに対向する態様となる。
【0083】
このような構成の梱包済LWC1から所望の長さの銅管12を引き出すETTS方式について詳述する。まず、図1に示すように、上下方向にLWC10を積み重ねて構成した梱包済LWC1のうち、最上段のLWC10の内周側から管始端12aを上方に引き出す。
【0084】
なお、このとき、銅管12は、LWC10の平面視中心から上方に引き出されるよう、載置した梱包済LWC1の平面視中央上方に配置したベント管(図示省略)を通して引き出される。そして、内周側の1層目の管始端12aから順に引き出される。
【0085】
このように、内周側1層目の管始端12aから順に引き出されるETTS方式では、偶数層から奇数層への上面側層遷移部14aでは問題とならない。しかし、図8に示すように、LWC10のコイル下面11bに出現する奇数層から偶数層への下面側層遷移部14bにおいては、まだ引き出されていない偶数層の銅管12(これを直上銅管12dという)が下面側層遷移部14bの上方に残っているため、直上銅管12dと下面緩衝プレート30の当接面35との間で挟まれることとなる。
【0086】
摩擦低減凹部40を備えない場合の図8a部拡大図に示すように、この直上銅管12dと下面緩衝プレート30の当接面35との間で挟まれた状態で、銅管12を引き出すために矢印c方向の引き出し力が銅管12にかかると中空銅管である銅管12はキンクし、破損する。
【0087】
しかし、図8a部拡大図において点線で示す摩擦低減凹部40を下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する箇所に形成したことによって、上方に直上銅管12dがある下面側層遷移部14bであっても、直上銅管12dと当接面35との間に挟まることを防止できる。したがって、スムーズに下面側層遷移部14bを矢印c方向に引き出すことができる。
【0088】
このように、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bの対向する箇所に摩擦低減凹部40を形成したことによって、梱包済LWC1からETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる。
【0089】
なお、このようにETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる梱包済LWC1は、上述したように、上下方向、すなわち梱包済LWC1の軸方向Lに積み重ねて載置し、最上段のLWC10の内周側から銅管12を引き出すこととなる(図1参照)。
【0090】
このとき、梱包済LWC1は、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の回転位置が積重ね軸Hに対して軸対照となるように各LWC10(10a〜10d)を積み重ねて構成している。
詳しくは、最下段の1段目LWC10dは、手前側に管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見えるように配置した下面緩衝プレート30dの上に載置する。そして、その1段目LWC10dのコイル上面11aに下面緩衝プレート30cを配置し、その上面に2段目LWC10cを配置する。
【0091】
これを繰り返し、2段目LWC10cと3段目LWC10bとの間に下面緩衝プレート30bを配置し、3段目LWC10bと最上段LWC10aとの間に下面緩衝プレート30aを配置している。
【0092】
そして、下面緩衝プレート30bは、上述の下面緩衝プレート30dと同様に、手前側に管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見える向きで配置している。
これに対し、下面緩衝プレート30cと下面緩衝プレート30aとは、手前側に管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが見える向きで配置している。
【0093】
これにより、上下に積み重ねた下面緩衝プレート30(30a〜30d)は、扇状凹部40aと中径帯円弧状凹部40cとが交互に同方向となり、同様に、小径帯円弧状凹部40bと大径帯円弧状凹部40dとが交互に同方向となる。
【0094】
よって、周方向の厚みが摩擦低減凹部40によって部分的に異なる下面緩衝プレート30を、摩擦低減凹部40の配置が軸対象となる方向でLWC10を積み重ねて梱包済LWC1を構成したことによって、摩擦低減凹部40が同方向に重なるように下面緩衝プレート30(30a〜30d)を同方向に配置し、LWC10を積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0095】
なお、上述の説明においては、銅管12の巻き付け方向にズレて出現する下面側層遷移部14bに対向する下面緩衝プレート30の当接面35に形成する摩擦低減凹部40を、形状の異なる凹部形成板33を組み合わせて構成したが、その他の方法で摩擦低減凹部40を構成してもよい。
【0096】
例えば、3層構成の下面緩衝プレート30を1層で構成し、図9に示すように、下面側層遷移部14bに対向する箇所を連続させて、平面視略渦巻き状の渦巻凹部42を形成してもよい。渦巻凹部42を備えた下面緩衝プレート30であっても摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30と同様に効果を得ることができる。
【0097】
次に、上述した本実施形態の下面緩衝プレート30、下面緩衝プレート30を用いた梱包済LWC1、並びに梱包済LWC1の載置方法による作用効果について説明する。連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包する梱包材20のうちコイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30の当接面35における、LWC10の層間を跨いで奇数層から外側の偶数層に遷移する銅管12の下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を備えた。
【0098】
これにより、連続する銅管12を整列巻き且つトラバース巻きによって、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLEC10から、銅管12を破損させることなく、ETTS方式によって銅管12を確実に引き出すことができる。
【0099】
詳しくは、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、下面緩衝プレート30における、下面側層遷移部14bに対向する箇所に、該下面側層遷移部14bとの摩擦を低減する摩擦低減凹部40を形成したことにより、引き出されていない直上銅管12dが上方に残っている下面側層遷移部14bが当接面35と直上銅管12dとの間で挟まれることを防止できる。したがって、引っ張り負荷によって下面側層遷移部14bがキンクして破損することなく、銅管12を確実に引き出すことができる。
【0100】
また、下面緩衝プレート30のバンド溝34に、摩擦低減凹部40の位置を明示する凹部位置マーク41を備えるとともに、摩擦低減凹部40の位置を明示するために、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。これにより、下面緩衝プレート30における摩擦低減凹部40の位置を容易に確認してLWC10を梱包することができる。
【0101】
また、下面緩衝プレート30の当接面35に管端位置マーク50を備えたため、摩擦低減凹部40を下面側層遷移部14bに対向する位置で下面緩衝プレート30をLWC10に当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式によって破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0102】
また、梱包済LWC1は、摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させて構成しているため、LWC10のコイル下面11bに下面緩衝プレート30を介在させたまま、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0103】
さらにまた、梱包済LWC1を下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねて構成したため、摩擦低減凹部40が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる梱包済LWC1の傾きを防止することができる。
【0104】
なお、上述の説明においては下面緩衝プレート30を、無架橋低発泡ポリプロピレンシート製で構成したが、紙段ボール製、プラスチック段ボール製、樹脂板製、発泡樹脂板製、あるいは木板製の緩衝プレートであってもよい。
【0105】
また、上記摩擦低減手段として下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する部分に形成した凹状の摩擦低減凹部40で構成したが、下面側層遷移部14bに対向する部分に埋め込んだスポンジ等の変形性の高い高変形性部材で構成してもよい。
【0106】
これにより、上方の直上銅管12dと、下面緩衝プレート30の当接面35とに挟まれた下面側層遷移部14bを引き出す際に、変形性の高い摩擦低減手段が変形することで、当接面35と下面側層遷移部14bとの摩擦が低減され、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0107】
さらにまた、上記摩擦低減手段として機能する摩擦低減凹部40の代替として、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bに対向する箇所にテフロン(登録商標)等の低摩擦剤による表面処理を施してもよい。
【0108】
これにより、上方の直上銅管12dと、下面緩衝プレート30の当接面35とに挟まれた下面側層遷移部14bを引き出す際に、低摩擦剤による表面処理によって、当接面35と下面側層遷移部14bとの摩擦が低減され、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0109】
なお、このように、摩擦低減手段として、下面側層遷移部14bに対向する部分にのみ変形性の高い摩擦低減手段や、低摩擦剤による表面処理を行うことで、下面緩衝プレート30に載置した状態で、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができる。
【0110】
詳しくは、例えば、当接面35の全面を変形性の高い摩擦低減手段で構成した場合、下面緩衝プレート30全体が変形してしまい、下面側層遷移部14bとの接触面積が増大することで摩擦が向上し、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができない。
【0111】
逆に、当接面35の全面に低摩擦剤による表面処理を行うと、直上銅管12dと当接面35とで挟まれた下面側層遷移部14bの引き出しはスムーズにできる。しかし、下面緩衝プレート30に載置されたLWC10が、当接面35に施された表面処理によって安定せず、銅管12の引き出しによってLWC10が下面緩衝プレート30上を滑り、ETTS方式による銅管12の引き出しが逆に困難となるおそれがある。
【0112】
しかし、下面側層遷移部14bに対向する部分にのみ変形性の高い摩擦低減手段や、低摩擦剤による表面処理を行うことで、下面緩衝プレート30に載置した状態で、ETTS方式によって銅管12をスムーズに引き出すことができる。
【0113】
なお、下面緩衝プレート30の当接面35には、凹部形成板33と扇状台座板32とによって二枚分の厚みの凹部状のバンド溝34を備えているが、バンド溝34を形成せずに、二枚分の厚みの凹部形成板33で摩擦低減凹部を形成してもよい。
【0114】
また、下面緩衝プレート30の底面にもバンド溝34を備えてもよい。この場合、下面緩衝プレート30を間に挟んだ状態でLWC10を上下方向に積み重ねた後から、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外すことができる。
【実施例2】
【0115】
以下、図面に基づいて第2の実施形態について詳述する。
なお、上述の実施例1の構成と同じ構成については詳細な説明を省略する。
図10は本発明を採用した梱包済レベルワウンドコイル(以下において梱包済LWCという)1aを積み上げてETTS方式で管を引き出す状態の斜視図を示し、図11は梱包済LWC1aの斜視図を示し、図12は梱包済LWC1aの分解斜視図を示している。
【0116】
本発明の梱包済LWC1aは、連続する銅管12を軸方向Lに整列巻きするとともに、径方向Rに複数層巻き回してコイル状に構成したLWC10を梱包材20aで梱包して構成している(図11参照)。
【0117】
このように構成した梱包済LWC1aを上下方向に複数積み重ねて載置し、最上段の梱包済LWC1aのビニールカバー21aとコイル上面11a側の上面緩衝プレート22を取り外し、内周側から銅管12を引き出して使用することができる。
【0118】
梱包材20aは、筒状の透明ビニール製であるビニールカバー21aと、LWC10のコイル上面11aに当接させる上面緩衝プレート22と、コイル下面11bに当接させる下面緩衝プレート30とで構成している。
【0119】
ビニールカバー21aは、図12に示すように、LWC10の外径より一回り大きな開口を上下両端に備えた筒状であり、熱によって収縮するビニールカバーである。
【0120】
下面緩衝プレート30の素材や構成については、実施例1の下面緩衝プレート30と同じであるため、詳細な説明は省略する。
上面緩衝プレート22は、上述の下面緩衝プレート30と同じ素材で構成している。
【0121】
コイル上面11aに当接する上面緩衝プレート22は、最上層を構成する円形台座板と、円形台座板の下面側に2枚重ねて貼り付けた扇状台座板とで3層構造で構成するとともに、下面緩衝プレート30のバンド溝34と同様に下面視+状のバンド溝を形成している。
【0122】
また、上面緩衝プレート22の上面側、すなわちコイル上面11aに当接しない側の反当接面22aにおける下面緩衝プレート30の凹部位置マーク41に対応する位置に凹部位置マーク41(41a,41b)を備えている。
【0123】
上述したような構成の梱包材20aを用いた梱包済LWC1aの梱包は、結束バンド60で4方向を結束したLWC10を、図12に示すように、管終端12cと管端位置マーク50とを合わせて下面緩衝プレート30の上面にLWC10を載置し、そのLWC10のコイル上面11aに上面緩衝プレート22を載置する。
【0124】
このようにして、上から上面緩衝プレート22、LWC10及び下面緩衝プレート30の順で重ね合わせた状態で、バンド溝34を通過させて結束バンド60を外し、ビニールカバー21aで覆い、熱風をかけて、固定して梱包済LWC1aを構成する。
これにより、下面側層遷移部14bが摩擦低減凹部40に対向する態様でコイル下面11bと下面緩衝プレート30とを当接させた状態で梱包することができる(図4参照)。
【0125】
このような構成の梱包済LWC1aから所望の長さの銅管12を引き出すETTS方式について詳述する。まず、図10に示すように、上下方向に積み重ねた梱包済LWC1aのうち、最上段の梱包済LWC1aの上面緩衝プレート22とを取り外し、内周側から管始端12aを上方に引き出す。
【0126】
このとき、下面緩衝プレート30の当接面35における下面側層遷移部14bの対向する箇所に摩擦低減凹部40を形成したことによって、上面緩衝プレート22を取り外した梱包済LWC1aからETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる。
【0127】
なお、このようにETTS方式によって、銅管12を破損させることなく、スムーズに引き出して使用することができる梱包済LWC1aは、上述したように、上下方向、すなわち梱包済LWC1aの軸方向Lに積み重ねて載置し、最上段の梱包済LWC1aの上面緩衝プレート22を取り外して、銅管12を引き出すこととなる(図10参照)。
【0128】
このとき、各梱包済LWC1a(1a〜1d)における下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の回転位置が積重ね軸Hに対して軸対照となるように各梱包済LWC1aを積み重ねている。
詳しくは、最下段の1段目梱包済LWC1adの手前側に、管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが見えるように配置し、その上に、管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが見えるように2段目梱包済LWC1acを配置する。
【0129】
さらに、2段目梱包済LWC1acの上に、管端位置マーク50と遠い方の×マーク41bが手前側に見えるように配置した3段目梱包済LWC1abを載置するとともに、その上に、管端位置マーク50と近い方の○マーク41aが手前側に見えるように配置した最上段梱包済LWC1aaを載置している。
【0130】
これにより、上下に積み重ねた梱包済LWC1aの下面緩衝プレート30は、扇状凹部40aと中径帯円弧状凹部40cとが交互に同方向となり、同様に、小径帯円弧状凹部40bと大径帯円弧状凹部40dとが交互に同方向となる。
【0131】
よって、周方向の厚みが摩擦低減凹部40によって部分的に異なる下面緩衝プレート30を、摩擦低減凹部40の配置が軸対象となる方向で梱包済LWC1aを積み重ねたことによって、同形状の摩擦低減凹部40が同方向に配置されるように梱包済LWC1aを積み重ねた場合に生じる傾きを防止することができる。
【0132】
また、下面緩衝プレート30のバンド溝34に、摩擦低減凹部40の位置を明示する凹部位置マーク41を備えるとともに、摩擦低減凹部40の位置を明示するために、扇状台座板32及び凹部形成板33の色を変更している。これにより、下面緩衝プレート30における摩擦低減凹部40の位置を容易に確認してLWC10を梱包することができる。
【0133】
また、上面緩衝プレート22上面に凹部位置マーク41を備えたため、梱包済LWC1a外部から摩擦低減凹部40の位置を容易に確認することができる。したがって、下面緩衝プレート30に備えた摩擦低減凹部40の位置を確認しながら梱包済LWC1aを搬送等において取り扱うことができ、利便性が向上する。
【0134】
また、下面緩衝プレート30の当接面35に管端位置マーク50を備えたため、摩擦低減凹部40を下面側層遷移部14bに対向する位置で下面緩衝プレート30をLWC10に当接させて梱包することができる。したがって、ETTS方式によって破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0135】
また、梱包済LWC1aは、摩擦低減凹部40を備えた下面緩衝プレート30をコイル下面11bに当接させて梱包しているため、上面緩衝プレート22を取り外すだけで、LWC10のコイル下面11bに下面緩衝プレート30を介在させたまま、銅管12を上方に引き出すETTS方式において、破損することなく銅管12を確実に引き出すことができる。
【0136】
さらにまた、梱包済LWC1aを、下面緩衝プレート30の摩擦低減凹部40の配置が積重ね軸Hに対して軸対照となるよう積み重ねたため、摩擦低減凹部40が同方向に配置された状態で積み重ねた場合に生じる梱包済LWC1aの傾きを防止することができる。
【0137】
なお、コイル上面11aに当接する上面緩衝プレート22及び下面緩衝プレート30の両方にバンド溝34を形成しているため、梱包済LWC1aを上下方向に積み重ねて載置してからでもバンド溝34を通過させて結束バンド60を取り外すことができる。また、バンド溝34を備えていない上面緩衝プレート22あるいは下面緩衝プレート30を用いてもよい。
【0138】
また、上述の実施例においては、LWC10のコイル下面11bにのみ摩擦低減凹部40を形成した下面緩衝プレート30を当接させて梱包したが、LWC10のコイル上面11aにも、上面側層遷移部14aに対応する箇所に摩擦低減凹部40を形成した上面緩衝プレートを当接させて梱包してもよい。
【0139】
これにより、梱包済LWC1aを上下逆さまで載置し、ETTS方式で銅管12を引き出す際であっても、上面側層遷移部14aに対向する部分に形成された摩擦低減凹部40によって、上下逆さまに配置された上面側層遷移部14aが上面緩衝プレートの当接面と直上銅管12dとの間で挟まれることを防止できる。したがって、引っ張り負荷によって上面側層遷移部14aがキンクして破損することなく、銅管12を確実に引き出すことができる。
また、下面緩衝プレート30の当接面35と、上面緩衝プレート22の反当接面22aに、○マーク41a及び×マーク41bの両方を備えたが一方のみ備えてももちろんよい。
【0140】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の管は、銅管12に対応し、
以下、同様に、
梱包したレベルワウンドコイルは、梱包済LWC1,1aに対応し、
コイル端面は、コイル下面11bに対応し、
緩衝体は、下面緩衝プレート30に対応し、
層遷移部は、下面側層遷移部14bに対応し、
摩擦低減手段は、摩擦低減凹部40,扇状凹部40a,小径帯円弧状凹部40b,中径帯円弧状凹部40c,大径帯円弧状凹部40d及び渦巻凹部42に対応し、
コイル端面に当接する面は、当接面35に対応し、
位置明示手段は、凹部位置マーク41、○マーク41a及び×マーク41b、並びに扇状台座板32及び凹部形成板33の色に対応し、
当接方向明示手段は、管端位置マーク50に対応し、
上下方向及び整列方向は、軸方向Lに対応し、
上下方向の軸は、積重ね軸Hに対応するも、
この発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、あらゆるコイル状に巻き付けた銅管12のコイル体に適用する実施形態を含むものである。
【0141】
例えば、上述の実施例においては、銅管12を整列巻きするとともに、次層の銅管12を前層における隣り合う銅管12の間に巻き付けるトラバース巻きで構成したが、次層の銅管12を前層における銅管12とずらさずに巻き付けたコイル体であってもよい。さらに、銅管12を整列巻きせずとも螺旋巻きしたコイル体であってもよい。
【符号の説明】
【0142】
1,1a…梱包済LWC
10…LWC
11b…コイル下面
11…銅管
13b…下面側層遷移部
20,20a…梱包材
30…下面緩衝プレート
32…扇状台座板
33…凹部形成板
33a,33bb,33cb…帯円弧状凹部形成板
33ba,33ca,33d…扇状凹部形成板
35…当接面
40…摩擦低減凹部
40a…扇状凹部
40b…小径帯円弧状凹部
40c…中径帯円弧状凹部
40d…大径帯円弧状凹部
41…凹部位置マーク
41a…○マーク
41b…×マーク
42…渦巻凹部
50…管端位置マーク
H…積重ね軸
L…軸方向
R…径方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、
前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えた
緩衝体。
【請求項2】
前記摩擦低減手段を、
前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成した
請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えた
請求項2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えた
請求項1乃至3に記載の緩衝体。
【請求項5】
前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、請求項1乃至4に記載の緩衝体を当接させて梱包する
レベルワウンドコイルの梱包方法。
【請求項6】
連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、
前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、
該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段とを備え、
前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、
上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねる
レベルワウンドコイルの載置方法。
【請求項1】
連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体であって、
前記レベルワウンドコイルの層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に、該層遷移部との摩擦を低減する摩擦低減手段を備えた
緩衝体。
【請求項2】
前記摩擦低減手段を、
前記コイル端面に当接する面に形成した凹部で構成した
請求項1に記載の緩衝体。
【請求項3】
前記凹部の位置を明示する位置明示手段を備えた
請求項2に記載の緩衝体。
【請求項4】
前記コイル端面に当接させる向きを明示する当接方向明示手段を備えた
請求項1乃至3に記載の緩衝体。
【請求項5】
前記管の整列方向が上下方向となるよう配置した前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、請求項1乃至4に記載の緩衝体を当接させて梱包する
レベルワウンドコイルの梱包方法。
【請求項6】
連続する管を整列巻き且つトラバース巻きによって径方向に複数層巻き回してコイル状に構成したレベルワウンドコイルを梱包し、前記管の整列方向が上下方向となるよう配置して上下方向に積み重ねるレベルワウンドコイルの載置方法であって、
前記レベルワウンドコイルを梱包する梱包材のうちコイル端面に当接させる緩衝体の当接面における、層間を跨いで次層に遷移する前記管の層遷移部に対向する箇所に凹部を形成し、
該緩衝体に、前記凹部の位置を明示する位置明示手段とを備え、
前記レベルワウンドコイルにおける少なくとも下側の前記コイル端面に、上記緩衝体を当接させて前記レベルワウンドコイルを梱包し、
上下方向に重ね合う梱包された前記レベルワウンドコイルの前記緩衝体の前記凹部の配置が、前記レベルワウンドコイルを積み重ねる上下方向の軸に対して軸対照となるよう積み重ねる
レベルワウンドコイルの載置方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−241453(P2010−241453A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90823(P2009−90823)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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