説明

緩衝具

【課題】物品を保護する緩衝具を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝具5は外ケース11と内ケース31と緩衝部材20を有している。内ケース31は外ケース11に収容され、緩衝部材20は、外ケース11と内ケース31の間に収容される。本発明の緩衝具5を利用する際には、搬送対象の物品9を、直接又は支持部材51を介して内ケース31上に配置する。外部からの衝撃は、外ケース11から緩衝部材20へ伝達され、緩衝部材20で減衰されるので、内ケース31上の物品9は衝撃から保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品の保護に用いられる緩衝具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶テレビ等の家電製品、精密機器、ガラス等の割れ物等の搬送には、それらの物品を保護する目的で緩衝材が用いられている。緩衝材としては発泡スチロール製の物が広く使用されており、物品の形状に合わせて凹部が形成され、物品をその凹部に嵌合させて用いられる。しかし、発泡スチロール製の緩衝材は、衝撃吸収力が十分ではない上、物品の形状や大きさが変わると使用できないという問題がある。
【0003】
発泡スチロール製の緩衝材に替え、ゴム等の振動吸収材や(下記特許文献1を参照)、エアクッション(下記特許文献2を参照)も提案されている。ゴム等の振動吸収材やエアクッションは変形可能なため、形状、大きさが異なる物品に使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−264786号公報
【特許文献2】特開2006−321511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した振動吸収材やエアクッションでも振動や衝撃等の吸収力が充分で無い。しかも、振動吸収材やエアクッションが変形すると物品の位置ずれが起こり、その結果、物品が外箱や他の物品等に接触して破損するという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、物品を破損無く搬送可能な緩衝具を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外ケースと、少なくとも一部が前記外ケースに収容される内ケースと、前記外ケースと、前記内ケースの間の隙間に配置される緩衝部材とを有する緩衝具である。
本発明の緩衝具では、緩衝部材に、流体を保持可能な保持袋と、前記保持袋の前記流体の保持量を調節する調節機構とを設けることができる。
その保持袋に柔軟性を持たせ、前記調節機構により、前記保持袋内部の前記流体の保持量を変化させれば、前記外ケースに収容された状態の前記内ケースが、前記保持袋の変形により移動する。
本発明の緩衝具では、前記外ケースと前記内ケースのいずれか一方のケースにガイド部を、他方のケースに凸部を設けることができる。前記内ケースが移動する時には、前記凸部が、前記ガイド部によって、可動方向を規制されながらスライドする。
前記ガイド部を、前記外ケースの側壁に、前記内ケースの移動方向に沿って形成した貫通孔で構成し、前記凸部を前記内ケースの側壁に設置し、前記内ケースを前記外ケースに収容した時に、当該凸部を前記貫通孔方向に凸設させることもできる。
前記凸部を、前記貫通孔内部で移動させ、当該貫通孔の内壁面に当接させることにより、前記内ケースの移動を停止させるストッパーとして用いることができる。
本発明の緩衝具には、更に、前記内ケース内に収容可能に形成され、かつ、保護対象である物品の所定箇所を支持可能な形状部位を備える支持部材を設けることができる。
前記支持部材に前記物品の一部又は全部と嵌合する凹部を設け、前記支持部材を、前記凹部が露出した状態で、前記内ケースに収容する。その状態で、凹部に物品を嵌合させれば、物品を容易に支持することができる。
支持部材を設ける場合には、前記内ケースに空気穴を形成することもできる。
【発明の効果】
【0008】
緩衝部材で衝撃が吸収されるから、内ケース上に配置した物品が破損しにくい。物品は緩衝部材ではなく、内ケース上で支持されるから、姿勢が傾斜しにくい。緩衝部材は内ケースと外ケースの間に配置され、直接物品に接触しないから破損しにくい。本発明の緩衝具は再利用可能であり、環境への配慮が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の緩衝具を用いた搬送用資材の一例を示す斜視図
【図2】本発明の第一実施形態の緩衝具を説明する斜視図
【図3】外ケースに緩衝部材と内ケースを収容した状態の斜視図
【図4】支持部材を示す斜視図
【図5】支持部材を内ケースに収容した状態の斜視図
【図6】本発明第一例の緩衝具の断面図
【図7】支持部材及び内ケースが持ち上がった状態を示す断面図
【図8】支持部材及び内ケースが持ち上がった状態の斜視図
【図9】搬送用資材を組み立てた状態の斜視図
【図10】搬送用資材を組み立てた状態の断面図
【図11】搬送用資材の他の例を示す断面図
【図12】本発明の第二実施形態の緩衝具を示す模式的な断面図
【図13】本発明の第三実施形態の緩衝具を示す模式的な断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1の符号1は搬送用資材の一例を示しており、搬送用資材1は、外箱2と、本発明の緩衝具5と、を有している。図2は本発明の第一実施形態である緩衝具5を示す斜視図であり、緩衝具5は、外ケース11と、内ケース31と、緩衝部材20とを有している。
【0011】
外ケース11と内ケース31は、上方(天井)に開口15、35を有する箱であり、底壁12、32と、底壁12、32上の空間を取り囲む側壁13、33と、を有する。
【0012】
内ケース31の外形状は、内ケース31の少なくとも底壁33部分が開口15を通過して外ケース11の内部に収容可能になっている。ここでは、内ケース31の外形状は外ケース11よりも小さい相似形であり、図2では外形状が直方体であるが、その形は特に限定されず、円筒等多様な外形状のものを用いることができる。
【0013】
緩衝部材20は保持袋21を有している。保持袋21の厚みは、外ケース11の開口15から底壁12までの深さよりも薄く、保持袋21を外ケース11の底壁12上に配置した場合であっても、内ケース31を外ケース11の内部に収容可能になっている。
【0014】
保持袋21は気体や液体等の流体を内部に保持可能であり、保持袋21には流体の保持量を調節する調節機構25が設けられている。調節機構25は、例えば保持袋21に設けられた注入口を有している。図2では、注入口はキャップ28で覆われている。
【0015】
緩衝部材20及び内ケース31を外ケース11に収容する時の配置場所や向きは予め決められている。外ケース11の側壁12には複数の貫通孔16、17が形成されている。決められた向きと場所に緩衝部材20を収容してから、決められた向きと場所に内ケース31を収容すると、一以上の貫通孔16内に注入口(又はキャップ28)が露出し、他の貫通孔17内に内ケース31の側壁33が露出する。
【0016】
図3は外ケース11に緩衝部材20と内ケース31を収容した組み立て状態を示しており、内ケース31は開口35を上方に向けて少なくとも底壁32部分が外ケース11内に収容され、緩衝部材20は内ケース31の底壁32と外ケース11の底壁12との間の隙間に配置される。組み立て状態では、貫通孔16内に調節機構25が露出するから、緩衝部材20を外ケース11と内ケース31の間に配置した状態で、後述するように流体の量を変えることができる。
【0017】
組み立て状態では、内ケース31の側壁33に、貫通孔17内に突き出る凸部38を設置する。凸部38は、側壁33の貫通孔17内に露出する部分に予め切り込みを入れておくか、内ケース31を外ケース11に収容してから切り込みを入れ、組み立て状態でその切り込みを外側に押し出して形成される。
【0018】
この場合、凸部38が形成されると同時に、切り込みを入れた場所に、側壁33を貫通する空気孔39が形成される。空気孔39は貫通孔17内に露出する部分に形成されるから、貫通孔17と連通し、空気孔39を介して内ケース31の内部空間が外部空間に接続される。
【0019】
第一例の緩衝具5は、外ケース11、内ケース31、緩衝部材20の他に、図4に示すような支持部材51を有する。支持部材51は、物品9を支持可能な形状部位を備える。例えば、その形状部位は、物品9と嵌合する凹部52であり、支持部材51は凹部52を上方に向けた状態で、内ケース31に収容されるように成形されている。従って、支持部材51を内ケース31に収容した状態では、凹部52が露出し、物品9を支持可能になっている。
【0020】
支持部材51を内ケース31に収容した時に隙間が生じる場合には、隙間を埋める保持部材55を内ケース31に収容する。空気孔39は内ケース31の底壁32近傍に位置し、外ケース11の貫通孔17と連通するから、支持部材51と保持部材55を内ケース31に収容する時には、内ケース31内部の空気は空気孔39から外部へ押し出される。
【0021】
従って、支持部材51と保持部材55を内ケース31に収容する時の抵抗は小さく、支持部材51と保持部材55は内ケース31に隙間無く密接し、支持部材51が内ケース31に対して固定される。図5は支持部材51を内ケース31に固定した状態を示している。
【0022】
次に、緩衝具5の使用例について説明する。図6は図5の断面図である。調節機構25は、保持袋21に気密(又は液密)に挿入された管26を有しており、その管26で、保持袋21の内部空間を外部空間に接続する注入口が構成されている。管26の一端は保持袋21の外部に突き出され、キャップ28はその突き出された端部を塞ぐように取り付けられている。
【0023】
使用の際には、先ずキャップ28を取り除き、エアーポンプ、エアガン、エアーコンプレッサ等の気体注入機を管26に接続し、空気等の気体を注入する。この時、気体を注入しない管26はキャップ28等で封じておく。保持袋21は樹脂等の気密性が高く、かつ、柔軟性が高い材料で構成されている。従って、注入された気体は保持袋21から漏れ出さず、保持袋21の内部圧力が上昇して、保持袋21が膨張する(図7)。
【0024】
保持袋21は、外ケース11の底壁12と、内ケース31の底壁32との間にあるから、保持袋21が膨張すると内ケース31が押し上げられ、内ケース31が底壁12側から開口15側へ移動する。図8は内ケース31が開口15側へ移動した時の斜視図である。外ケース11に形成された貫通孔16、17は、底壁12から開口15に向かって上下方向に伸びる長孔である。即ち、貫通孔16、17は内ケース31の移動方向に沿って形成されている。
【0025】
貫通孔16、17の上端は、保持袋21が膨張する前の凸部38及び調節機構25よりも高い位置まで伸ばされている。保持袋21が膨張すると、調節機構25と凸部38は貫通孔16、17内を上昇するから、保持袋21の変形と内ケース31の移動が、調節機構25や凸部38で妨げられない。
【0026】
貫通孔17は内ケース31の移動方向に沿って形成されているから、その移動方向と平行な2つの内壁面を有し、凸部38はその内壁面の間を移動する。内ケース31を傾斜させる力が働くと、凸部38は2つの内壁面のいずれかに接触する。凸部38、外ケース11、及び内ケース31は、硬質プラスチック、金属、木、ダンボール等変形しにくい材料で構成されており、凸部38が内壁面に接触すると、内ケース31の傾斜が止まる。このように、貫通孔17は凸部38を導くガイド部となり、凸部38はこのガイド部によって可動方向を規制されながら、内ケース31と一緒にスライドする。
【0027】
保持袋21が過剰に膨張した場合には、凸部38が貫通孔17の上端内壁面と接触し、内ケース31の移動が停止する。貫通孔17の上端は、外ケース11の開口15よりも底壁12側にあるから、内ケース31は開口15よりも上方に飛び出さず、外ケース11に収容された状態が維持される。このように、凸部38は内ケース31の移動を停止させるストッパーとなり、貫通孔17の上端の位置が、内ケース31の移動範囲を決める。
【0028】
保持袋21が膨張した状態でも、調節機構25は貫通孔16内に露出しているから、気体の出し入れを行い、内ケース31の高さを自由に変えることができる。気体の注入に用いた管26から気体を排気してもよいが、注入用とは別に排出用の管26を設けてもよい。膨張状態の保持袋21は内部圧力が外部圧力よりも高いから、排出用の管26からキャップ28を取り外すと、内部の気体は排出用の管26を通って外部に排気される。
【0029】
排気により保持袋21が収縮し、その厚みが薄くなると、内ケース31が底壁15側へ向かって移動する。この時も、凸部38がガイド部(貫通孔17)に沿って移動するから、内ケース31は傾斜しない。従って、内ケース31に収容された支持部材51は傾斜、転倒しない。
【0030】
内ケース31が所定の高さになったら、注入用の管26から気体注入機を取り外し、排出用の管26をキャップ28等で塞ぎ、気体の注入及び/又は排気を停止する。気体注入機の取り外し後、気体が排気されないよう注入用の管26には逆支弁のような排気停止部材を設けることが望ましい。
【0031】
図6、7の符号27は逆支弁を示している。逆支弁27は、保持袋21の外部から内部へ向かう流体により注入口26から押し退けられて開状態になり、保持袋21の内部から外部へ向かう流体により注入口26に押し付けられて閉状態となる。
【0032】
保持袋21が膨張した状態では、内圧が外圧よりも高く、逆支弁27が閉状態になるから、保持袋21から気体は流出せず、内ケース31及び支持部材51の高さが維持される。逆心弁27が設けられた場合、キャップ28は不要であるが、実際の使用の際には念のためキャップ28を装着してもよい。
【0033】
物品9の緩衝具5を装着する場所は予め決められており、支持部材51の凹部52はその場所に嵌合可能な形状になっている。内ケース31が所定高さになったら、緩衝具5の凹部52に物品9の所定場所に嵌合させるか、物品9の所定場所に凹部52に嵌合させた状態で内ケース31を所定高さに持ち上げ、物品9を外箱3内部に配置する。可能であれば、物品9及び緩衝具5を外箱3内部に設置してから、内ケース31を所定高さまで持ち上げてもよい。
【0034】
物品9を外箱3内部に設置した後、必要であれば、図9に示すように、ベルト4のような拘束部材を外箱3に巻き回し、外箱3を物品9に向かって押し付ける。物品9は、例えば平面形状が四角形の薄膜テレビであり、図10は、物品9の各辺に一又は二以上の緩衝具5をそれぞれ配置した状態を示す。
【0035】
各緩衝具5は、外ケース11の底壁12が外箱3に向けて配置され、外箱3は外ケース11に押し付けられ、緩衝具5が外箱3に固定されている。
物品9は、緩衝具5が嵌合される場所よりも外側へ突き出した部材(例えば脚92等)を有する場合がある。そのような部材が外箱3と接触しないように、調節部材35で内ケース31を高く持ち上げておけば、物品9は外箱3に接触しない。即ち、物品9は緩衝具5だけで支持されることになり、外部からの衝撃が直接伝達されない。
【0036】
外箱3は外ケース11に接触しているから、外部からの衝撃は、外箱3から外ケース11に伝達され、次いで、緩衝部材20へ伝達される。緩衝部材20は内部に気体や液体等の流体が収容されているため、衝撃は緩衝部材20で減衰されてから内ケース31へ伝達され、内ケース31から支持部材51へ伝達される。
【0037】
支持部材51は、発泡スチロール、ゴム、樹脂等、衝撃吸収性の高い材料で構成されており、支持部材51へ伝達された衝撃は更に減衰されてから、物品9へ伝達される。しかも、支持部材51は内ケース31に固定され、内ケース31の姿勢はガイド部と凸部38により維持されるから、物品9の傾斜や転倒も起こらず、物品9が破損しない。
【0038】
緩衝具5の数や設置方法は特に限定されないが、図10に示すように、少なくとも物品9の下方に複数の緩衝具5を設置し、物品9が傾斜しないようにする。又は、図11に示すように、細長の緩衝具5を用い、物品9の下側の面を広い範囲で支えれば、緩衝具5の数が一つであっても物品9が傾斜しない。
【0039】
物品9の搬送終了後は、物品9から緩衝具5を取り外す。保持袋21から流体を排出すれば、内ケース21が下降し、緩衝具5の嵩が低くなるので、緩衝具5の保管に便利である。物品9から取り外した緩衝具5は、他の物品9の搬送、保持に再利用できる。
【0040】
以上は、緩衝部材20が外ケース11の底壁と内ケース31の底壁の間に配置される場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。緩衝部材20は、外ケース11と内ケース31の間の空間であれば、側壁13、33間に配置してもよい。
【0041】
図12の符号6は本発明の第二実施形態である緩衝具を示しており、この緩衝具6の保持袋21は折り曲げられ、底壁12、32間の空間と、側壁13、33間の空間に亘って配置されている。保持袋21が折り曲げられている場合、保持袋21の変形により、内ケース31には二方向以上の力が加わり、その力の合力で内ケース31が移動する。
【0042】
図12では、保持袋21が、上下方向に変形する部分と横方向に変形する部分を有するから、上下方向と水平方向の力が発生し、内ケース31は斜めに移動する。この緩衝具6では、凸部38が露出する貫通孔17が斜めに形成されている。即ち、貫通孔17は内ケース31の移動方向に沿って形成され、凸部38はその貫通孔17内部を内ケース31と同じ方向へ移動する。
【0043】
ガイド部を構成する貫通孔17は、外ケース11ではなく、内ケース31に設けてもよい。例えば、凸部を外ケース11の側壁13内側に設け、該凸部を内ケース31の貫通孔内に突き出させる。この場合、凸部が支持部材51や保持部材55に接触しないように、その先端を内ケース31の内壁面より低くする。
【0044】
ガイド部は貫通孔17に限定されない。図13の符号7は本発明の第三実施形態である緩衝具を示している。この緩衝具7は、貫通孔17の代わりに、移動方向に沿って延設された細長の凸状部材を有し、その凸状部材でガイド部71が構成されている。ガイド部71は、内ケース31の側壁33外側と外ケース11の側壁33内側のいずれか一方又は両方に設ける。
【0045】
内ケース31の側壁33外側に設けられたガイド部71に対しては、外ケース11の側壁13内側に凸部78を設け、外ケース11の側壁13内側に設けられたガイド部71に対しては、内ケース31の側壁33外側に凸部78を設ける。一つの凸部78に対し、ガイド部71を二本設置することが望ましく、内ケース31を外ケース11に収容した時に、凸部78がガイド部71とガイド部71の間に配置されるようにする。
【0046】
凸部78はガイド部71の間を、その延設方向に沿って移動する。凸部78及びガイド部71を変形しにくい硬質材料で形成しておけば、内ケース31に傾斜する力が加わった時に、凸部78がガイド部71に接触することで、傾斜が阻止される。
【0047】
ガイド部71とガイド部71の間であって、凸部78の移動先に、凸状のストッパーを設け、保持袋21が過剰に膨張した時に、凸部78がそのストッパーと衝突するようにすれば、内ケース31が外ケース11から外れない。
【0048】
更に、ガイド部は内ケース31の移動方向に沿って延設した溝であってもよく、この場合は、凸部38は溝の内部を移動する。要するに、ガイド部は内ケース31の移動方向に沿って2つの内壁面を有し、その内壁面の間で凸部38が移動するものであればよい。
【0049】
ガイド部の数や配置場所は特に限定されないが、内ケース31及び支持部材15の姿勢を安定して保つためには、間隔を空けて二ヶ所以上配置することが望ましい。例えば、外ケース11と内ケース31の外形状が直方体の場合、貫通孔17(ガイド部71)は、対抗する二側面にそれぞれ設ける。
【0050】
保持袋21は流体が漏れ出さず、かつ、変形可能な柔軟性のあるものを用いる。具体的には、ゴム製、樹脂製、布製、紙製等である。流体の漏れ出し防止のために、保持袋21の表面又は/及び裏面を、樹脂膜や金属薄膜等でコーティングしてもよい。
【0051】
保持袋21に注入する気体は特に限定されないが、利便性、安全性、コストを考慮すると、空気、窒素等が望ましい。保持袋21に注入する流体は気体に限定されず、水、オイル等の液体、ゲル等の半流動体等も用いることができるが、液体や半流動体が漏れ出すと物品9が損傷する恐れのある場合は、気体を用いる。
【0052】
外ケース11と内ケース31の材質は特に限定されないが、緩衝部材20の膨張時に変形しない程度に硬質な物が望ましい。具体的には、樹脂、ダンボール、木製、金属等を用いることができるが、軽量性やコストの点から樹脂が特に適している。
【0053】
凸部38の形成方法は特に限定されず、緩衝具5を組み立ててから、突起物を側壁33に接着し、凸部38としてもよい。この場合、空気孔39は凸部38から離間して形成してもよい。空気の押し出し効果を考えると、空気孔39は内ケース31の底壁32側に形成することが好ましい。凸部38と空気孔39を別々に形成する場合には、空気孔39を側壁33ではなく、底壁32に形成してもよい。この場合、空気孔39と連通する貫通孔を外ケース11の底壁13に形成する。
【0054】
保持部材55は支持部材51を内ケース31に固定するものであれば特に限定されない。例えば、保持部材55としてバネを用い、バネの復元力で支持部材51を内ケース31に押し付けて固定してもよい。支持部材51が内ケース31と嵌合して固定される場合には、保持部材55を用いる必要は無い。
【0055】
内ケース31の開口35の形状が物品9と嵌合し、物品9が内ケース31で固定されるのであれば、支持部材51を用いる必要も無い。しかし、支持部材51を用いれば、物品9の形状や大きさが変わった場合、支持部材51を変えるだけで緩衝具5を再利用できるので、汎用性が高くなる。
【0056】
更に、内ケース31の内部に、エアクッション、ゴム製クッション、樹脂製クッション、粒状の発泡スチロール等の変形可能な緩衝部材を配置し、その緩衝部材に物品9を接触させることで、物品9を支持してもよい。しかし、物品9を支持部材51又は内ケース31に接触させて固定する方が、物品9が傾斜しにくい。
【0057】
緩衝部材20は、一部が外ケース11と内ケース31との間の空間からはみ出してもよいが、破損の恐れがある場合には、保持袋21を外ケース11と内ケース31の間に収容し、物品9等と接触しないようにする。
【0058】
緩衝部材20に調節機構25を設けず、予め所定量の気体が保持されたエアクッションや、発泡スチロール、ゴムや樹脂製のクッションを用いてもよい。しかし、調節機構25により流体の保持量を変化可能な緩衝部材20は、物品9の形状や大きさが変わった場合でも使用可能であり、汎用性が高い。
【0059】
また、保持袋21を設けず、外ケース11と内ケース31のいずれか一方又は両方に注入口を形成し、その注入口を介して、外ケース11と内ケース31との間の空間に、直接流体を注入して、内ケース31を移動させてもよい。
【0060】
注入する材料は流体に限定されない。例えば、ウレタンフォームのように、液状の樹脂材料をガスと一緒に外ケース11と内ケース31の間の空間に注入し、その空間に泡状の樹脂材料を配置する。泡状の樹脂材料は、硬化剤と一緒に噴出されることで硬化するか(二液型)、空気中の水分等、水と反応して硬化する(湿気型)。硬化した樹脂材料により、内ケース31が持ち上げられ、移動する。
【0061】
物品9の搬送終了後、その物品9から緩衝具5を取り外し、外ケース11と内ケース31の間の空間から、硬化した樹脂材料を除去すれば、緩衝具5を、他の物品9に再利用することができる。この場合、外ケース11の内側の面と、内ケース31の外側の面の少なくとも一方に、離型剤を塗布しておけば、硬化した樹脂材料を除去しやすくなる。
【0062】
このように、内ケース31の移動方法は特に限定されるものではないが、樹脂材料の噴出に用いるガスは、環境破壊の恐れがある上、樹脂材料から蒸発する有機材料は環境に悪影響を与える恐れがある。しかも、これらの樹脂材料は空気や水等の流体に比べて高価であり、流体を注入する場合に比べて充填用の装置も大掛かりになる。再利用の簡易さも、保持袋21の方が優れている。
【0063】
本発明の緩衝具5に支持される物品9は特に限定されず、薄型テレビ等の家電製品の他、ドアやガラス板のような建材にも用いることができる。また、物品9の一部を緩衝具5で支持する場合に限定されず、物品9全体を緩衝具5で支持することもできる。
【0064】
例えば、内ケース31の内部空間よりも小さい物品9(食器等)を、内ケース31の内部に直接、又は支持部材51を介して配置してもよい。内ケース31内には物品9を一個だけ配置してもよいし、内ケース31の内部を複数の空間に区分けし、各空間に物品9を配置してもよい。更に、物品9が配置された緩衝具5に、内ケース31の開口35同士が重なり合うように、他の緩衝具5を重ね合わせ、蓋をしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の緩衝具は、家電製品、精密機器、ガラス、建材等の物品を、運搬や設置する際に、衝撃からの保護の目的で使用することができる。
【符号の説明】
【0066】
5〜7 緩衝具
11 外ケース
16、17 貫通孔
20 緩衝部材
21 保持袋
25 調節機構
31 内ケース
38 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外ケースと、
少なくとも一部が前記外ケースに収容される内ケースと、
前記外ケースと、前記内ケースの間の隙間に配置される緩衝部材と、を有する緩衝具。
【請求項2】
前記緩衝部材は、流体を保持可能な保持袋と、前記保持袋の前記流体の保持量を調節する調節機構と、を有する請求項1記載の緩衝具。
【請求項3】
前記保持袋は柔軟性を有し、前記調節機構により前記保持袋内部の前記流体の保持量が変化すると変形し、
前記外ケースに収容された状態の前記内ケースは、前記保持袋の変形により移動する請求項2記載の緩衝具。
【請求項4】
前記外ケースと前記内ケースのいずれか一方のケースに設けられたガイド部と、他方のケースに設けられた凸部とを有し、
前記内ケースが移動する時には、前記凸部が前記ガイド部によって、可動方向を規制されながらスライドする請求項3記載の緩衝具。
【請求項5】
前記ガイド部は、前記外ケースの側壁に、前記内ケースの移動方向に沿って形成された貫通孔であり、
前記凸部は前記内ケースの側壁に設置され、前記内ケースを前記外ケースに収容した時に、当該凸部が前記貫通孔方向に凸設される請求項4記載の緩衝具。
【請求項6】
前記凸部は、前記貫通孔内部を移動して、当該貫通孔の内壁面に当接することにより、前記内ケースの移動を停止させるストッパーとなる請求項5記載の緩衝具。
【請求項7】
前記内ケース内に収容可能に形成され、かつ、保護対象である物品の所定箇所を支持可能な形状部位を備える支持部材を有する請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の緩衝具。
【請求項8】
前記支持部材は、前記物品の一部又は全部と嵌合する凹部を有し、前記支持部材は、前記凹部が露出した状態で、前記内ケースに収容可能にされた請求項7記載の緩衝具。
【請求項9】
前記内ケースには空気穴が形成された請求項7又は請求項8のいずれか1項記載の緩衝具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−269817(P2010−269817A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122701(P2009−122701)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000110882)ニチモウ株式会社 (52)
【出願人】(502047257)中山産業株式会社 (2)
【出願人】(509143723)有限会社アライ (1)
【Fターム(参考)】