説明

緩衝器用潤滑油組成物

【課題】緩衝器におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、良好な耐摩耗性を維持すると共に、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立してなる緩衝器用潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】鉱油及び/又は合成油からなる基油と、(A)アルキル基の炭素数が7〜12のジアルキルジチオリン酸亜鉛0.3〜2質量%、(B)脂肪酸アミド類0.05〜2質量%及び(C)単環フェノール系酸化防止剤0.1〜1質量%とを含み、かつ基油中の−COO−結合を有するエステルの含有量が、−COO−として0.6質量%以下の緩衝器用潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器用潤滑油組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、緩衝器(ショックアブソーバー)におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、良好な耐摩耗性を維持すると共に、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立してなる、主に四輪用に使用される緩衝器用潤滑油組成物(以下、ショックアブソーバー油と称することがある。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車緩衝器用潤滑油は、主として、車に最適な減衰力を発揮し、操縦安定性を保持するために、振動抑制を目的として用いられる。特に最近、高速道路網が完備し、従来に増して高速走行の割合が増加している。したがって、高速走行安定性や、危険回避能力に優れた性能を発揮する車に対する需要が増加してきている。しかしながら、わが国における現行車においては、速度100〜200km/hにおいて車線変更のためにハンドルを切った際に、不安定なローリングが発生し、車体の安定性が悪くなったり、危険を回避するための必要回避距離が長い、などの問題が生じる。
【0003】
この原因は、緩衝器における微少振幅時のオイルシールとピストンロッドやピストンバンドとシリンダ等摺動部における摩擦力の大小に関係することが、研究の結果明らかとなった。高速走行では、タイヤ、スプリング、緩衝器、車体へと振動が移行し、微少振動状態になる。この振動は、通常ストローク長さが0.4〜2.0mm程度であり、繰り返し速度が1.5〜15.0Hz程度である。このような条件は、緩衝器の減衰力が発生しにくい条件であるために制振作用が充分に発揮されない。その結果、オイルシールとピストンロッドやピストンバンドとシリンダ等摺動部の滑り始めの摩擦力が小さいと容易に車体の姿勢が傾き安定性を悪化させることになる。
したがって、このような問題を解決するには、緩衝器用潤滑油のオイルシールとピストンロッドやピストンバンドとシリンダ等摺動部の摩擦力を大きくすればよいことが考えられる。
【0004】
特許文献1には、自動車緩衝器用潤滑油組成物として、潤滑油基油に対し、組成物全重量に基づき、(A)酸性リン酸モノエステルのアミン塩0.05〜0.3重量%、(B)ポリアルケニルコハク酸イミド0.1〜0.6重量%及び(C)酸性亜リン酸ジエステル0.3〜0.8重量%を配合したものが開示されている。
しかしながら、このようなリン系添加剤を用いた潤滑油組成物においては、耐腐食特性(特に水分混入時)がジアルキルジチオリン酸亜鉛(以下、ZnDTPと略記することがある。)などのZn系添加剤を用いた高摩擦油と比較して劣るという問題があった。一方、Zn系添加剤を用いた高摩擦油は、耐スラッジ特性が、前記のようなリン系添加剤を用いた高摩擦油よりも劣ることが知られている。
【0005】
緩衝器内にスラッジが発生するとバルブ部の詰まりやシール部への固着などから滑らかな往復動運動を阻害してしまう。また、緩衝器には鉄(チューブやバルブ)や銅(ガイドブッシュ)などの金属部品が多く使用され、雪融け時の道路を走行すると多量の水が緩衝器内に混入する恐れがあるため、ショックアブソーバー油には耐スラッジ特性と耐腐食特性とが求められる。
他方、%CA5以下の基油に対し、組成物全量に基づき、(A)アミン系酸化防止剤0.01〜5重量%、(B)フェノール系酸化防止剤0.01〜5重量%、(C)リン酸エステル0.01〜5重量%、及び及び(D)脂肪酸アミド及び/又は多価アルコールエステル0.001〜5重量%を配合してなる油圧作動油組成物(特許文献2参照)、基油と、(A)フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の中から選ばれる少なくとも一種と、(B)ジスルフィド構造を有するエステル化合物を含む潤滑組成物(特許文献3参照)、基油に、特定の窒素含有化合物と、特定のリン酸エステル類を含有してなる緩衝器用油圧作動油組成物(特許文献4参照)が開示されているが、これらは、いずれもZnDTPを含有していない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−147379号公報
【特許文献2】特開平9−111277号公報
【特許文献3】特開2007−63431号公報
【特許文献4】特開2002−194376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、緩衝器におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、良好な耐摩耗性を維持すると共に、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立してなる、主に四輪用に使用される緩衝器用潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の好ましい性質を有する緩衝器用潤滑油組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、基油として、―COO―結合を有するエステル化合物の含有量がある値以下の鉱油及び/又は合成油を用い、アルキル基の炭素数が特定範囲のZnDTPと、脂肪酸アミド類と、単環フェノール系酸化防止剤とを、それぞれ所定の割合で含有する潤滑油組成物が、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)鉱油及び/又は合成油からなる基油と、(A)アルキル基の炭素数が7〜12のジアルキルジチオリン酸亜鉛0.3〜2質量%、(B)脂肪酸アミド類0.05〜2質量%及び(C)単環フェノール系酸化防止剤0.1〜1質量%とを含み、かつ基油中の―COO―結合を有するエステルの含有量が、―COO―として0.6質量%以下であることを特徴とする緩衝器用潤滑油組成物、
(2)基油が鉱油である上記(1)に記載の緩衝器用潤滑油組成物、
(3)基油が炭化水素系合成油及び/又はエーテル系合成油である上記(1)
は(2)に記載の緩衝器用潤滑油組成物、
(4)基油が、炭化水素系合成油である上記(3)に記載の緩衝器用潤滑油組成物、
(5)(A)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、0.5〜1.5質量%である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物、
(6)(B)成分の脂肪酸アミド類の含有量が、0.08〜1質量%である(1)〜(5)のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物、
(7)(C)成分の単環フェノール系酸化防止剤の含有量が、0.1〜0.8質量%
である上記(1)〜(6)のいずれかに記載の緩衝器用潤滑組成物、及び
(8)四輪用に使用される上記(1)〜(7)のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、緩衝器におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、良好な耐摩耗性を維持すると共に、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立してなる、主に四輪用に使用される緩衝器用潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のショックアブソーバー油は、鉱油及び/又は合成油からなる基油と、(A)ZnDTP、(B)脂肪酸アミド類及び(C)単環フェノール系酸化防止剤とを含む潤滑油組成物である。
[基油]
本発明のショックアブソーバー油における基油としては、鉱油及び/又は合成油であって、−COO−結合を有するエステルの含有量が、−COO−として0.6質量%以下の基油が用いられる。上記エステルの含有量が、−COO−として0.6質量%を超えると緩衝器内に水が混入した際、金属に対する耐腐食特性が低下する場合がある。好ましいエステルの含有量は、−COO−として0.4質量%以下であり、実質上含まないことがより好ましい。
当該基油の鉱油としては、例えば、溶剤精製、水添精製などの通常の精製法により得られたパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油又はナフテン基系鉱油などが挙げられる。
また、合成油としては、炭化水素系合成油やエーテル系合成油が好ましく、上記炭化水素系合成油としては、例えばポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレン共重合体などのα−オレフィンオリゴマー又はその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどを挙げることができる。エーテル系合成油としては、例えばポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどを挙げることができる。
本発明においては、これらの中で鉱油及び炭化水素系合成油が好適である。
本発明においては、基油として、上記鉱油を一種用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよく、また、上記合成油を一種用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。さらには、鉱油一種以上と合成油一種以上とを組み合わせて用いてもよい。
また、基油の粘度としては、乗用を目的とする四輪用のショックアブソーバー油の場合、40℃の粘度で2.0〜15.0mm2/sの範囲が好ましく、4.0〜9.0mm2/sがより好ましい。
【0011】
[(A)ZnDTP]
本発明のショックアブソーバー油においては、(A)成分として、シールの摩擦係数を向上させ、かつ耐摩耗特性を良好なものにするために、アルキル基の炭素数7〜12のZnDTPが用いられる。当該ZnDTPとしては、下記一般式(I)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数7〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。)
で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(I)において、R1及びR2で表されるアルキル基の具体例としては、ヘプチル基、イソヘプチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、イソノニル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、シクロオクチルメチル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−プロピルヘプチル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、2−ブチルオクチル基、イソドデシル基などが挙げられる。これらの中で、炭素数7〜10のものがより好ましい。
1及びR2は、たがいに同じであってもよいし、異なっていてもよいが、製造上の容易さの観点から、同一であるものが好ましい。
本発明のショックアブソーバー油においては、当該(A)成分であるZnDTPの含有量は、シールの摩擦係数の向上効果及び耐摩耗性の観点から、0.3〜2質量%であることを要し、好ましくは0.5〜1.5質量%である。
【0014】
[(B)脂肪酸アミド類]
本発明のショックアブソーバー油においては、(B)成分として、脂肪酸アミド類が用いられる。この脂肪酸アミド類は、腐食防止効果と耐スラッジ特性向上効果を有している。
当該脂肪酸アミド類としては、例えば炭素数7〜31の直鎖状若しくは分岐状の飽和又は不飽和のモノカルボン酸と、下記一般式(II)
2N−(R3−NH)m−H ・・・(II)
(式中、R3は炭素数2〜4のアルキレン基、mは2〜6の整数を示す。)
で表されるポリアルキレンポリアミンとを反応させることにより、得られたものを用いることができる。
【0015】
(モノカルボン酸)
上記炭素数7〜31のモノカルボン酸としては、例えばヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコンタン酸等の飽和脂肪酸(これら飽和脂肪酸は直鎖状でも分岐状でもよい);ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸を含む)、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸、ペンタコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘプタコセン酸、オクタコセン酸、ノナコセン酸、トリアコンテン酸等の不飽和脂肪酸(これら不飽和脂肪酸は直鎖状でも分岐状でもよく、また二重結合の位置も任意である);等が挙げられるが、これらの中で、炭素数10〜24のものが好ましく、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
(ポリアルキレンポリアミン)
上記モノカルボン酸と反応させる前記一般式(II)で表されるポリアルキレンポリアミンとしては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、テトラプロピレンペンタミン、ヘキサブチレンヘプタミンなどを挙げることができる。
【0016】
このポリアルキレンポリアミンと前述したモノカルボン酸とを、200〜220℃程度の温度で、2〜3時間程度反応させることにより、所要の脂肪酸アミド類を得ることができる。この際のモノカルボン酸の使用量は、ポリアルキレンポリアミン1モルに対して、(m+1)モル以下が好ましい。
本発明のショックアブソーバー油においては、(B)成分として、上記のようにして得られた脂肪酸アミド類を一種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてよい。また、その含有量は、腐食防止効果及び耐スラッジ特性向上効果の観点から、0.05〜2質量%であることを要し、0.08〜1質量%であることが好ましい。
【0017】
[(C)単環フェノール系酸化防止剤]
本発明のショックアブソーバー油においては、(C)成分として、単環フェノール系酸化防止剤が用いられる。この単環フェノール系酸化防止剤は、耐スラッジ特性向上効果を発揮する。
当該単環フェノール系酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸イソドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソヘプチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−オクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソオクチル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸2−エチルヘキシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソノニル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−デシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソウンデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸n−ドデシル、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸イソドデシルなどを挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記単環フェノール系酸化防止剤は、多環フェノール系酸化防止剤に比べて、耐スラッジ特性効果に優れており、好ましい単環フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールを挙げることができ、特に効果及び入手の容易さの観点から、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールが好適である。
本発明のショックアブソーバー油においては、当該(C)成分の単環フェノール系酸化防止剤の含有量は、耐スラッジ特性効果の観点から、0.1〜1質量%の範囲であることを要し、好ましくは0.1〜0.8質量%の範囲である。
【0019】
[任意添加成分]
本発明のショックアブソーバー油においては、任意添加成分として、他の無灰清浄分散剤、金属系清浄剤、他の潤滑性向上剤、他の酸化防止剤、錆止め剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を、本発明の目的が損なわれない範囲で適宜含有することができる。
ここで、無灰清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸で代表される二価カルボン酸アミド類などが挙げられ、金属系清浄剤としては、例えば中性金属スルホネート、中性金属フェネート、中性金属サリシレート、中性金属ホスホネート、塩基性スルホネート、塩基性フェネート、塩基性サリシレート、過塩基性スルホネート、過塩基性サリシレート、過塩基性ホスホネートなどが挙げられる。
【0020】
他の潤滑性向上剤としては、極圧剤、耐摩耗剤、油性剤が挙げられ、例えばリン酸エステル類、酸性リン酸モノエステルのアミン塩、酸性亜リン酸ジエステルなどのリン系エステル化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート(MoDTP)、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)などの有機金属系化合物が挙げられる。
また、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などの硫黄系極圧剤が挙げられる。
さらに、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミドなどの油性剤が挙げられる。
【0021】
他の酸化防止剤の例としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などの多環フェノール系酸化防止剤;モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物等のアミン系酸化防止剤;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどの硫黄系酸化防止剤;等が挙げられる。
【0022】
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができ、金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。
流動点降下剤としては、重量平均分子量が5万〜15万程度のポリメタクリレートなどを用いることができる。
消泡剤としては、高分子シリコーン系消泡剤が好ましく、この高分子シリコーン系消泡剤を含有させることにより、消泡性が効果的に発揮され、乗り心地性が向上する。
前記高分子シリコーン系消泡剤としては、例えばオルガノポリシロキサンを挙げることができ、特にトリフルオロプロピルメチルシリコーン油などの含フッ素オルガノポリシロキサンが好適である。
【0023】
本発明のショックアブソーバー油は、基油として、−COO−結合を有するエステルの含有量を規定した鉱油及び/又は合成油を用い、かつアルキル基の炭素数が特定範囲のZnDTPと、脂肪酸アミド類と、単環フェノール系酸化防止剤とを、それぞれ所定の割合で含有することにより、緩衝器におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、かつ良好な耐摩耗性を維持し、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立することができる。
本発明のショックアブソーバー油は、複筒型ショックアブソーバー、単筒型ショックアブソーバーのいずれにも使用可能であり、また、四輪、二輪のいずれのショックアブソーバーにも使用可能であるが、特に四輪用として好適に用いられる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、摩擦係数の測定、鉄及び銅の浸漬試験及び酸化安定性試験は、以下に示す方法により実施した。
(1)ゴム摩擦係数の測定
試験機:バウンデン式往復動摩擦試験機
試験条件
荷重:9.8N
ストローク:10mm
速度:3.3mm/s
温度:60℃
摩擦回数:30
摩擦材:上部ゴム(A727)、
下部クロームメッキ板(50×1000×5mm)
なお、ゴムは、ゴムプレートを径15mmの円形に切り出し、径12.7mm球で押し出して、プレートにサンプル油を数滴落として試験を行った。
(2)水混入時の鉄及び銅の浸漬試験
500mLのガラスびんに、試料油100mLと蒸留水2mLを入れ、ホモジナイザーにより、2000rpmにて1分間攪拌した。次いで、これに銅片(銅板腐食試験用の純銅板)及び鉄片(ベアリングレース:WS1730)を投入し、アルミホイルにて蓋をし、100℃の恒温槽中で48時間静置した。
試験後の銅片と鉄片を観察し、銅片の質量減を測定した。銅片の変色については、JIS 2513に基づいて判定を行った。なお判定基準は、(変色なし)1a>1b・・・・>4c(変色大)である。
その後、室温で20時間静置し、スラッジの有無をヘキサン洗浄前後で確認した。なお、ヘキサン洗浄は、500mLのガラス瓶に、ヘキサンを50mL入れ、軽く攪拌後、ヘキサンを除去する方法で行った。
(3)酸化安定性試験
酸化安定性試験は、CEC L−48−A−00/B法に基づいて行った。
試験油量100mL中に、160℃にて空気を5.0L/hで96時間吹き込み、ガラス容器壁面付着物の有無を観察すると共に、n−ペンタン不溶解分(A法)を測定した。
【0025】
実施例1〜3及び比較例1〜11
第1表に示す各成分を含有する潤滑油組成物(ショックアブソーバー油)を調製し、摩擦係数の測定、鉄及び銅の浸漬試験及び酸化安定性試験を行った。その結果を第1表に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
[注]
1)基油A:鉱油35N
2)基油B:鉱油40N
3)基油C:鉱油60N
4)基油D:ペンタエリスリトールのジオレイルエステル、分子内の−COO−含有量=13質量%
5)ZnDTP‐A:シェブロンジャパン社製「OLOA5660」、アルキル基=2−エチルヘキシル基、S=12.6質量%、P=6.15質量%、Zn=7.62質量%
6)ZnDTP‐B:シェブロンジャパン社製「OLOA267」、アルキル基=炭素数3〜6の混合アルキル基、S=15.03質量%、P=7.50質量%、Zn=8.50質量%
7)酸化防止剤A:住友化学社製「スミライザーBHT」、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
8)酸化防止剤B:アルベマール浅野社製「ANTIOXIDANT 702ND」、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)
9)脂肪酸アミドA:シェブロンジャパン社製「OLOA 340D」、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタミン反応物、N=6.20質量%、全塩基価=81.0mgKOH/g
10)脂肪酸アミドB:イソステアリン酸とトリエチレンテトラミン反応物
11)ポリブテニルコハク酸イミドA:シェブロンジャパン社製「OLOA 1200N」、モノ体、N=1.85質量%、全塩基価=33.0mgKOH/g
12)ポリブテニルコハク酸イミドB:エチルジャパン社製「Hitec 646」、モノ体、N=1.75質量%、全塩基価=40.0mgKOH/g
13)Caスルホネート:Crompton Corporation社製「Bryton C−500」、(RC64SO32Ca
14)リン系極圧剤A:Vanderbilt社製「VANLUBE672」、酸性リン酸エステルアミン塩(モノエチルアミン塩とモノメチルアミン塩が主体)、P=9.5質量%、N=4.95質量%
15)リン系極圧剤B:城北化学工業社製「JP−218−OR」、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、P=5.34質量%
16)粘度指数向上剤A:三洋化成工業社製「アクルーブ806T」、重量平均分子量6.1万のポリメチルメタクリレート
17)粘度指数向上剤B:三洋化成工業社製「アクルーブ504」、重量平均分子量14万のポリメチルメタクリレート
18)金属不活性化剤:エチルジャパン社製「HiTEC4313」、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾール
19)消泡剤;信越化学社製「FL100」、フッ素含有オルガノポリシロキサン
また、比較例1における基油中のエステルの含有量は、−COO−として0.79質量%である。
【0029】
比較例1と実施例1〜3とを比べた場合、比較例1は、基油中のエステルの含有量が、−COO−として0.6質量%よりも多い0.79質量%であって、鉄/銅浸漬試験において、銅減量率が、実施例1〜3に比べて大きい。
比較例3と実施例1〜3とを比較した場合、比較例3は、ZnDTPとして、アルキル基の炭素数が7未満である3〜6の混合アルキル基を有するものを用いており、鉄/銅浸漬試験において、銅片の変色や減量率が、実施例1〜3に比べて大きい。
比較例2、4〜11は、本発明に係るZnDTP、単環フェノール系酸化防止剤及び脂肪酸アミドのいずれか一つ以上が含有されていないため、鉄/銅浸漬試験において、鉄片に錆が生じたり、銅片が変色したり、スラッジが発生したりするし、あるいは酸化安定性試験において、スラッジが発生したりする。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のショックアブソーバー油は、緩衝器におけるピストンロッドとオイルシールやピストンバンドとシリンダ等の摺動する部分の摩擦力を、耐腐食特性及び耐スラッジ特性を損なうことなく高め、かつ良好な耐摩耗性を維持し、操縦安定性と乗り心地性を高いレベルで両立することができる。
本発明のショックアブソーバー油は、特に四輪用として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/又は合成油からなる基油と、(A)アルキル基の炭素数が7〜12のジアルキルジチオリン酸亜鉛0.3〜2質量%、(B)脂肪酸アミド類0.05〜2質量%及び(C)単環フェノール系酸化防止剤0.1〜1質量%とを含み、かつ基油中の―COO―結合を有するエステルの含有量が、―COO―として0.6質量%以下であることを特徴とする緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項2】
基油が、鉱油である請求項1に記載の緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項3】
基油が炭化水素系合成油及び/又はエーテル系合成油である請求項1又は2に記載の緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項4】
基油が、炭化水素系合成油である請求項3に記載の緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項5】
(A)成分のジアルキルジチオリン酸亜鉛の含有量が、0.5〜1質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項6】
(B)成分の脂肪酸アミド類の含有量が0.08〜1質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物。
【請求項7】
(C)成分の単環フェノール系酸化防止剤の含有量が、0.1〜0.8質量%
である請求項1〜6いずれかに記載の緩衝器用潤滑組成物。
【請求項8】
四輪用に使用される請求項1〜7のいずれかに記載の緩衝器用潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−13380(P2009−13380A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180178(P2007−180178)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】