説明

緩衝器

【課題】アクチュエータと油圧ダンパとを連結した緩衝器のコストを低減させることである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構2と該運動変換機構2における回転運動を呈する回転部材3に連結されるモータMとを備えたアクチュエータAと、運動変換機構2における直線運動を呈する直動部材4に連結される液圧ダンパDとを備えた緩衝器1において、液圧ダンパDのシリンダCとロッドRとの間に介装されるバネ5と、シリンダCに対する中立位置からのロッドRの変位により上記バネ5を圧縮させるバネ圧縮機構6とを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに生じる電磁力で上記車体と車軸との相対移動を抑制する緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種緩衝器としては、車軸側に筒を介して固定されるボール螺子ナットと、ボール螺子ナットに回転自在に螺合した螺子軸と、螺子軸の一端に連結されるとともに一対のバネ間に介装されて車体に弾性支持されるモータとを備えたアクチュエータと、アクチュエータの上下方向の振動を減衰する油圧ダンパとで構成され、モータが発生する回転トルクで車体と車軸との相対移動をアクティブ制御するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来の緩衝器では、振動の入力によって油圧ダンパがモータとともに加振されても、加振後には上記したモータを弾性支持する一対のバネによって油圧ダンパのロッド位置がシリンダに対し中立位置に復元されるようになっている。なお、中立位置とは、上記各バネによって支持された状態でシリンダに対してロッドが位置決められた位置であり、ロッドの端部に連結されるピストンがシリンダの中央に位置する状態となるロッド位置のみを指すものではない。
【0004】
したがって、従来の緩衝器では、油圧ダンパが中立位置に復元されるので、油圧ダンパが最伸長あるいは最終収縮して、シリンダの端部に設置されるベースバルブやロッドを軸支するロッドガイドに衝突してしまうことが防止され、車両における乗り心地を損なってしまうことが阻止されている。
【特許文献1】特開平08−197931号公報(段落番号0023,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の緩衝器は、以下の点で問題がある。
【0006】
上述のように、従来の緩衝器では、油圧ダンパの底付きや最伸長してしまうことを上記一対のバネによって回避することができるのであるが、懸架バネ以外に油圧ダンパに連結されるモータを支持するバネが二つ必要となり、部品点数が多くなり、緩衝器がコスト高となってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、上記の不具合を勘案して創案されたものであって、その目的とするところは、アクチュエータと油圧ダンパとを連結した緩衝器のコストを低減させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と該運動変換機構における回転運動を呈する回転部材に連結されるモータとを備えたアクチュエータと、運動変換機構における直線運動を呈する直動部材に連結される液圧ダンパとを備えた緩衝器において、液圧ダンパのシリンダとロッドとの間に介装されるバネと、シリンダに対する中立位置からのロッドの変位により上記バネを圧縮させるバネ圧縮機構とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の緩衝器によれば、一つのバネで液圧ダンパにおけるロッドのシリンダに対する中立位置への復帰が可能となるので、従来緩衝器に比較して必要となるバネの本数を少なくすることができ、その分、緩衝器の部品点数を削減できて、コストを低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明の緩衝器を概念的に示した図である。図2は、本発明の緩衝器の一部拡大図である。
【0011】
図1に示すように、緩衝器1は、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構2と該運動変換機構2における回転運動を呈する回転部材3に連結されるモータMとを備えたアクチュエータAと、該運動変換機構2における直線運動を呈する直動部材4に連結される液圧ダンパDと、液圧ダンパDのシリンダCとロッドRとの間に介装されるバネ5と、シリンダCに対する中立位置からのロッドRの変位により上記バネ5を圧縮させるバネ圧縮機構6とを備えて構成されている。
【0012】
また、この緩衝器1は、アクチュエータAに連結されて液圧ダンパDの側部を軸方向の摺動を許容して支持する支持部材たる外筒7を備えている。
【0013】
そして、このように構成された緩衝器1は、たとえば、図1に示すように、車両のバネ上部材Bとバネ下部材Wとの間に懸架バネSに並列して介装されて、主としてバネ上部材Bの振動を抑制するために使用される。
【0014】
以下、各部について詳細に説明すると、アクチュエータAは、直線運動を回転運動に変換する運動変換機構2と該運動変換機構2により変換された回転運動が伝達されるモータMとを備えて構成されて構成されている。
【0015】
運動変換機構2は、回転運動を呈する回転部材3と直線運動を呈する直動部材4とを備えて構成され、回転部材3が回転運動すると直動部材4が直線運動をし、反対に、直動部材4が直線運動すると回転部材3が回転運動するようになっている。具体的には、この運動変換機構2は、螺子軸と螺子ナットで構成される送り螺子機構や、ラックアンドピニオン、ウォームギア等の機構で構成されており、たとえば、回転部材3を螺子軸とする場合には直動部材4が螺子ナットとされ、逆に、回転部材3を螺子ナットとする場合には直動部材4が螺子軸とされることになる。
【0016】
なお、この実施の形態では、運動変換機構2は、螺子軸とボール螺子ナットとで構成される送り螺子機構とされ、直動部材4は螺子軸とされ、回転部材3はモータMのシャフト8に連結されるボール螺子ナットとされている。そして、この緩衝器1の場合、ストローク長を確保するため、スプライン等によって回り止めされる直動部材4となる螺子軸の挿通が可能なようにモータMのシャフト8は中空とされている。
【0017】
そして、このアクチュエータAの場合、駆動源をモータMとしているので、運動変換機構2における回転部材3、すなわち、送り螺子機構を採用する場合には、螺子軸もしくは螺子ナットのいずれか回転側の部材の回転運動がモータMに伝達されるようになっており、モータMに電気エネルギを与えて駆動する場合には、螺子軸もしくは螺子ナットのいずれか直動側の直動部材4を直線運動させることができ、すなわちアクチュエータとしての機能を発揮できる。
【0018】
また、モータMは、回転部材3側から強制的に回転運動が入力されると、誘導起電力に基づいて、回転部材3の回転運動を抑制するトルクを発生するので、直動部材4の直線運動を抑制するように機能する。すなわち、この場合には、モータMが外部入力される運動エネルギを回生して電気エネルギに変換することによって発生する回生トルクで上記直動部材4の直線運動を抑制するのである。
【0019】
したがって、このアクチュエータAは、モータMに積極的にトルクを発生させることによって直動部材4に推力を与えることができ、また、直動部材4が外力によって強制的に運動させられる場合には、モータMが発生する回生トルクで上記運動を抑制することができる。
【0020】
つまり、この緩衝器1にあっては、上記アクチュエータAが発生する推力でバネ上部材Bとバネ下部材Wとの相対移動を抑制することができると同時に、アクチュエータとしての機能を生かしてバネ上部材B、具体的には、車両の車体の姿勢制御も同時に行うことができ、これにより、アクティブサスペンションとしての機能をも発揮することができる。
【0021】
なお、モータMと運動変換機構2の回転部材3とを連結するとは、上述のように回転部材3の回転運動をモータMに伝達することが可能に連結するとの趣旨であり、したがって、上記連結には、モータMと上記回転部材との間に減速機や、回転運動の伝達が可能なリンク、継手等を介装して連結することをも含む概念である。
【0022】
また、モータMとしては、上記したアクチュエータ機能およびダンパ機能を実現するものであればよいので、種々の形式のものを使用可能であり、具体的にたとえば、直流、交流モータ、誘導モータ、同期モータ等を用いることができる。
【0023】
転じて、液圧ダンパDは、構成としては周知であるので詳細には説明しないが、シリンダCと、シリンダC内に摺動自在に挿入されシリンダC内に二つの圧力室を隔成する図示しないピストンと、ピストンに一端が連結されるロッドRとを備えて構成され、伸縮時にシリンダC内に充填される液体に図示しない減衰弁を介して二つの圧力室を行き来させて、所定の減衰力を発生するようになっている。なお、この実施の形態においては、液圧ダンパDが所謂片ロッド型のダンパとして構成されているので、シリンダCに進退するロッド体積分の容積を補償するリザーバあるいはガス室を備えている。また、液圧ダンパDは、両ロッド型のダンパとされてもよいが、ストローク長の確保の点からは、上述の片ロッド型のダンパを採用する方が好ましい。
【0024】
そして、この緩衝器1において液圧ダンパDは、主として高周波振動を吸収する目的で、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間に介装され、具体的には、一端がアクチュエータAの直線運動側の部材に、他端がバネ下部材Wに連結されている。
【0025】
なお、液圧ダンパDとアクチュエータAとの連結に際しては、液圧ダンパDのシリンダCもしくはロッドRの一方をアクチュエータAの直動部材4に連結すればよく、他方、バネ下部材Wには、液圧ダンパDのシリンダCもしくはロッドRの他方を連結する。したがって、液圧ダンパDは、アクチュエータAとバネ下部材Wとの間にいわゆる正立に介装されても倒立に介装されてもよい。
【0026】
つづいて、バネ圧縮機構6は、具体的にはたとえば、図2に示すように、ロッドRおよびシリンダCの両方に対して軸方向の移動が許容される第一移動バネ受10と第二移動バネ受11と、ロッドRに連結されて第一移動バネ受10のロッドR側となる図2中上方への移動を規制する第一規制部材12と、同じくロッドRに連結されて第二移動バネ受11のシリンダC側となる図2中下方への移動を規制する第二規制部材13と、シリンダCに連結されて第一移動バネ受10よりロッドR側となる図2中上方に配置されて第一移動バネ受け10の移動を規制する第一ストッパ14と、シリンダCに連結されて第二移動バネ受11よりシリンダC側となる図2中下方に配置されて第二移動バネ受11の移動を規制する第二ストッパ15とを備えて構成され、バネ5は、バネ圧縮機構6における第一移動バネ受10と第二移動バネ受11との間に介装されている。
【0027】
なお、本書に言う連結とは、部材同士が直接的に結合される以外にも何らかの部材を介して間接的に結合される場合も含み、さらに、部材同士が相対移動不能な状態で結合される場合のほか、ゴム等の弾性体を介して部材同士を結合してもバネ圧縮機構6や緩衝器1が機能不能とならないのであれば、部材同士の相対移動を許容する結合を採用しても良い。
【0028】
さらに、詳しくバネ圧縮機構6について説明すると、第一移動バネ受10は、筒体10aと、筒体10aの図2中上端外周に設けた環状の鍔10bと、筒体10aの図2中下端内周に連なる環状のフランジ10cとを備え、フランジ10cの内周側にロッドRが挿通されている。すなわち、第一移動バネ受10は、ロッドRに対して軸方向に移動可能とされ、また、シリンダCに対しても同様に軸方向に移動可能とされている。
【0029】
また、第二移動バネ受11は、環状とされて内周にはロッドRが挿通される環状体11aと、環状体11aの外周に設けた鍔11bとを備えて構成され、ロッドRに対して軸方向となる図2中上下方向に移動可能とされ、上記第一移動バネ受10と同様にシリンダCに対しても移動可能とされている。
【0030】
さらに、ロッドRの外周には、上記第一移動バネ受10のロッドR側となる図2中上方への移動を規制する環状の第一規制部材12が固定されており、この第一規制部材12は、第一移動バネ受10のフランジ10cの図2中上端に衝合することで第一移動バネ受10の上記上方への移動を規制する。なお、当該第一規制部材12の図2中下端にはロッドRの外周に嵌合されて固定される環状のクッション16が装着され、第一規制部材12と第一移動バネ受10の衝突時の衝撃をクッション16で緩和するようになっている。なお、クッション16は、第一移動バネ受10のフランジ10cの図2中下端に固定されても良い。
【0031】
また、ロッドRの外周には、上記第二移動バネ受11のシリンダC側となる図2中下方への移動を規制する環状の第二規制部材13が固定されており、この第二規制部材13は、第二移動バネ受11の図2中下端に衝合することで第二移動バネ受11の上記下方への移動を規制する。なお、当該第二規制部材13の図2中上端にもロッドRの外周に嵌合されて固定される環状のクッション17が装着され、第二規制部材13と第二移動バネ受11の衝突時の衝撃をクッション17で緩和するようになっている。なお、クッション17は、第二移動バネ受11の図2中下端に固定されても良い。
【0032】
このように、第一移動バネ受10は、ロッドRの外周に固定された第一規制部材12への衝合により、第二移動バネ受11は、ロッドRの外周に固定された第二規制部材13への衝合によって、互いに離間する方向への移動が規制されるようになっている。
【0033】
転じて、第一ストッパ14および第二ストッパ15は、シリンダCの外周に固定される筒状のケース18の内周に固定されており、このケース18を介してシリンダCに連結され、この場合、シリンダCに対して上下方向となる軸方向に不動とされて、さらに、上記した第一移動バネ受10および第二移動バネ受11もケース18内に収容されている。
【0034】
ケース18の内径は、第一移動バネ受10および第二移動バネ受11の外径より大径とされ、第一ストッパ14は環状とされてケース18の上端に一体的に設けられており、他方の第二ストッパ15は、環状とされてケース18の中間部に固定されている。このように、第一ストッパ14は、ケース18に一体的に設けられてシリンダCに連結されてもよく、第二ストッパ15についても同様にケース18に一体とされてもよい。
【0035】
また、第一ストッパ14の内径は、第一移動バネ受10の鍔10bと衝合可能な径とされて、当該第一ストッパ14の図2中下端にはケース18の内周に嵌合されて固定される環状のクッション19が装着され、第一ストッパ14と第一移動バネ受10の衝突時の衝撃をクッション19で緩和するようになっている。なお、クッション19は、第一移動バネ受10の鍔10bの図2中上端に固定されても良い。
【0036】
さらに、第二ストッパ15の内径は、第二移動バネ受11の鍔11bと衝合可能な径とされて、当該第二ストッパ15の図2中上端にはケース18の内周に嵌合されて固定される環状のクッション20が装着され、第二ストッパ15と第二移動バネ受11の衝突時の衝撃をクッション20で緩和するようになっている。なお、クッション20もまた、第二移動バネ受11の図2中下端に固定されても良い。
【0037】
そして、第一移動バネ受10および第二移動バネ受11は、それぞれ、ケース18内であって、第一ストッパ14と第二ストッパ15との間に配置され、第一移動バネ受10および第二移動バネ受11はケース18内の第一ストッパ14と第二ストッパ15との間で図2中上下方向に移動することが許容されている。なお、ケース18は、筒状とされているので、内部に収容されるバネ圧縮機構6およびバネ5を保護の点で有利となるが、第一ストッパ14と第二ストッパ15とをシリンダCに連結するために設けられる部材であるので、筒状以外の形状とされてもよい。
【0038】
さらに、第一規制部材12の外径は、第一ストッパ14の内径より小径とされて、第一移動バネ受10のフランジ10cには衝合することが可能であるが、第一ストッパ14には干渉しないようになっている。同様に、第二規制部材13の外径は、第二ストッパ15の内径より小径とされて、第二移動バネ受11の下端には衝合することが可能であるが、第二ストッパ15には干渉しないようになっている。
【0039】
そして、このように構成されたバネ圧縮機構6の第一移動バネ受10の鍔10bと第二移動バネ受11の鍔11bとの間にバネ5が介装されており、この場合、第一移動バネ受10が第一ストッパ14の図2中下端に当接するとともに第二移動バネ受11が第二ストッパ15の図2中上端に当接する状態でバネ5は圧縮状態に保たれている。つまり、バネ5は、上記した状態で初期荷重が与えられて圧縮された状態となっており、この初期荷重に相当する附勢力で、第一移動バネ受10を第一ストッパ14に、第二移動バネ受11を第二ストッパ15に、それぞれ押し付けている。また、この状態で、ロッドRはシリンダCに対して所定の中立位置に位置決められる。なお、上記したところでは理解を容易とするため、ロッドRをシリンダCに対して所定の中立位置に位置決めがバネ5の圧縮による附勢力によって成される旨の説明をしているが、厳密には、クッション16,17,19,20も圧縮されることになるので、これらクッション16,17,19,20の附勢力も作用してロッドRがシリンダCに対して所定の中立位置に位置決めされることになる。
【0040】
ちなみに、ロッドRの第二規制部材13の図2中下方には、液圧ダンパDの最収縮時にシリンダCの上端に衝合して衝撃を緩和するクッション21が装着されるとともに、図示はしないが、液圧ダンパDのシリンダC内にはロッドRの外周に装着されて液圧ダンパDの最伸長時にシリンダCの上端に衝合して衝撃を緩和する図示しないクッションが設けられている。また、アクチュエータAの最収縮時に直動部材4たる螺子軸の図2中最下端の外周には回転部材3たる螺子ナットに衝合して衝撃を緩和するクッション22が装着されている。
【0041】
なお、第一移動バネ受10の図2中下端、つまりフランジ10cの下端から第二移動バネ受11の図2中上端、つまり環状体11aの上端との間の距離は、液圧ダンパDの中立位置からのストローク長と同等以上の距離に設定されており、液圧ダンパDの最伸長および最収縮時には、上記した液圧ダンパDの最伸長と最収縮の衝撃を緩和するクッションをシリンダCへ衝合させて第一移動バネ受10と第二移動バネ受11とが衝突しないように設定されているが、第一移動バネ受10と第二移動バネ受11との間にクッションを設けて、積極的に第一移動バネ受10と第二移動バネ受11を衝合させるように設定する場合には、上記したクッション21と液圧ダンパD内の図示しないクッションを省略することも可能である。
【0042】
戻って、バネ圧縮機構6の作動について説明すると、液圧ダンパDに外力が作用して、ロッドRがシリンダCに対して図2に示す状態から図2中上方へ相対移動して液圧ダンパDが伸長する際には、シリンダCにケース18を介して不動とされる第一ストッパ14および第二ストッパ15に対して、ロッドRが上方へ移動することになり、第一移動バネ受10が第一ストッパ14によって移動が規制されるものの、第二移動バネ受11は、ロッドRの外周に設けた第二規制部材13に衝合してロッドRの移動に追随して、バネ5の下端を上方へ向けて圧縮することになる。つまり、ロッドRの中立位置から図2中上方への変位に対して、バネ5が圧縮せしめられることになるので、バネ5は上記ロッドRのシリンダCに対する変位を抑制する方向へ附勢力を発揮することになる。
【0043】
そして、液圧ダンパDに作用していた外力が解消されると、バネ5が伸びて、第一移動バネ受10を第一ストッパ14の図2中下端に当接させるとともに第二移動バネ受11を第二ストッパ15の図2中上端に当接させる図2に示した状態に復帰して、ロッドRをシリンダCに対して中立位置に復帰させる。
【0044】
反対に、液圧ダンパDに外力が作用して、ロッドRがシリンダCに対して図2に示す状態から図2中下方へ相対移動して液圧ダンパDが収縮する際には、シリンダCにケース18を介して不動とされる第一ストッパ14および第二ストッパ15に対して、ロッドRが下方へ移動することになり、第二移動バネ受11が第二ストッパ15によって移動が規制されるものの、第一移動バネ受10は、ロッドRの外周に設けた第一規制部材12に衝合してロッドRの移動に追随して、バネ5の上端を下方へ向けて圧縮することになる。つまり、ロッドRの中立位置から図2中下方への変位に対しても、バネ5が圧縮せしめられることになるので、バネ5は上記ロッドRのシリンダCに対する変位を抑制する方向へ附勢力を発揮することになる。
【0045】
そして、液圧ダンパDに作用していた外力が解消されると、バネ5が伸びて、第二移動バネ受10を第一ストッパ14の図2中下端に当接させるとともに第二移動バネ受11を第二ストッパ15の図2中上端に当接させる図2に示した状態に復帰して、ロッドRをシリンダCに対して中立位置に復帰させる。
【0046】
したがって、ロッドRがシリンダCに対して中立位置から上下のいずれに変位しても、バネ圧縮機構6によって、必ずバネ5がその変位量に応じて圧縮せしめられることになり、一つのバネ5でロッドRの上下両側の変位に対してロッドRを中立位置に復帰させることが可能となる。
【0047】
転じて、この緩衝器1は、アクチュエータAに連結されて液圧ダンパDの側部を軸方向の摺動を許容して支持する支持部材たる外筒7を備えており、液圧ダンパDに作用する横方向の外力を外筒7で受けることができるようになっている。
【0048】
この外筒7は、具体的には、図1中最下端に筒状のブッシュ7aを備えており、当該ブッシュ7aはケース18の外周に摺接している。したがって、液圧ダンパDの伸縮に際してアクチュエータAに対して図中上下動するシリンダCは、ケース18を介して摺動自在に外筒7によって支持されることになる。このように、液圧ダンパDの側部を軸方向の摺動を許容して支持することには、液圧ダンパDそのものを直接支持することに加えてこの液圧ダンパDに固定される他部材を介して間接的に支持することも含まれる。なお、支持部材は、液圧ダンパDの軸方向の摺動を許容して液圧ダンパDを支持することができればよいので、外筒7以外の部材を採用して液圧ダンパDを支持させてもよいが、外筒7を用いることで、運動変換機構2を雨や泥、埃から保護することができる利点がある。また、この場合、ケース18も筒状とされているため、外筒7と協働して緩衝器1の内部に設けられる各部材を保護できることになる。
【0049】
引き続いて、緩衝器1の基本動作について説明すると、緩衝器1は、アクチュエータAの推力によって振動を抑制するが、液圧ダンパDがアクチュエータAに対して直列に連結されているので、車両が悪路を走行したり、路面の突起に乗り上げたりしてモータMや運動変換機構2で備える回転系の慣性モーメントの影響によってアクチュエータAの伸縮が追随しづらい比較的加速度が大きい振動等の高周波振動が入力されても振動エネルギを液圧ダンパDで吸収することができるので、振動抑制効果に非常に優れる。
【0050】
また、バネ5によって液圧ダンパDを附勢しているので、高周波振動の伝達をより一層抑制でき、さらに、液圧ダンパDを振動入力側となるバネ下部材Wに配置することによって、振動被伝達側となるバネ上部材Bに連結される電気機器であるアクチュエータA側に振動を伝達し難くするようにすることが可能となり、アクチュエータAの使用環境を向上でき、アクチュエータAのコストを低減することも可能となる。
【0051】
ここで、アクチュエータAは、バネ下部材W側から入力される直線運動となる振動を回転運動に変換することになるが、回転する多くの部材を備えており、その慣性質量も大きく高周波振動に対しては慣性モーメントが大きくなること、および、ブッシュ7aとケース18のフリクションの影響もあって、バネ下部材W側の振動をバネ上部材Bに伝達しやすくなるという特性があるが、上述のように、液圧ダンパDが該振動を吸収し、さらに、バネ5が振動伝達抑制効果を発揮することで、アクチュエータAへの振動の伝達を抑制するので、このような場合にあっても、車両における乗り心地を悪化させることがなく、この緩衝器1は、車両用の緩衝器として最適となる。
【0052】
そして、この緩衝器1にあっては、一つのバネ5で液圧ダンパDにおけるロッドRのシリンダCに対する中立位置への復帰が可能となるので、従来緩衝器に比較して必要となるバネの本数を少なくすることができ、その分、緩衝器1の部品点数を削減できて、コストを低減することが可能となる。
【0053】
また、バネ圧縮機構6によってバネ5が圧縮された状態でロッドRとシリンダCとの間に介装される場合、上記したところでは、第一移動バネ受10が第一ストッパ14の図2中下端に当接するとともに第二移動バネ受11が第二ストッパ15の図2中上端に当接する状態でバネ5が圧縮状態に保たれてバネ5に初期荷重が与えられる場合には、液圧ダンパDに作用する外力がバネ5に作用する初期荷重を超えるまでは液圧ダンパDを伸縮不能な状態に維持することができる。
【0054】
つまり、バネ5に与える初期荷重の調整によって、外力に対して液圧ダンパDが伸縮しない不感帯を設定することができ、この不感帯の範囲内では、アクチュエータAの推力をダイレクトにバネ受部材Bおよびバネ下部材Wに伝達することが可能となって、低周波数振動を効果的に制振することが可能となる。
【0055】
なお、上記したところでは、ロッドR側に、第一移動バネ受10、第二移動バネ受11、第一規制部材12および第二移動バネ受13を取付け、シリンダC側に、第一ストッパ14および第二ストッパ15を取付けるようにしているが、反対に、ロッドR側に、第一ストッパおよび第二ストッパを取付け、シリンダC側に第一移動バネ受、第二移動バネ受、第一規制部材および第二移動バネ受を取付けるようにしてもよい。ちなみに、本実施の形態のように、ロッドR側に、第一移動バネ受10、第二移動バネ受11、第一規制部材12および第二移動バネ受13を取付け、シリンダC側に、第一ストッパ14および第二ストッパ15を取付けるようにしておくことで、バネ5をロッドR周りに配置することが可能となって、バネ圧縮機構6を含めた液圧ダンパDの外径を小さくすることができ、緩衝器1の外径の大型化を招かない点で有利となる。
【0056】
また、本実施の形態においては、第一移動バネ受10、第二移動バネ受11、第一規制部材12、第二規制部材13、第一ストッパ14および第二ストッパ15は、全て環状とされているが、それぞれ、上記した機能を実現することができれば、その形状は環状に限定されるものではない。
【0057】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の緩衝器を概念的に示した図である。
【図2】本発明の緩衝器の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0059】
1 緩衝器
2 運動変換機構
3 運動変換機構における回転部材
4 運動変換機構における直動部材
5 バネ
6 バネ圧縮機構
7 外筒
7a ブッシュ
8 モータにおけるシャフト
10 第一移動バネ受
10a 第一移動バネ受における筒体
10b 第一移動バネ受における鍔
10c 第一移動バネ受におけるフランジ
11 第二移動バネ受
11a 第二移動バネ受における環状体
11b 第二移動バネ受における鍔
12 第一規制部材
13 第二規制部材
14 第一ストッパ
15 第二ストッパ
16,17,19,20,21,22 クッション
18 ケース
A アクチュエータ
B バネ上部材
C 液圧ダンパにおけるシリンダ
D 液圧ダンパ
M モータ
R 液圧ダンパにおけるロッド
S 懸架バネ
W バネ下部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と該運動変換機構における回転運動を呈する回転部材に連結されるモータとを備えたアクチュエータと、運動変換機構における直線運動を呈する直動部材に連結される液圧ダンパとを備えた緩衝器において、液圧ダンパのシリンダとロッドとの間に介装されるバネと、シリンダに対する中立位置からのロッドの変位により上記バネを圧縮させるバネ圧縮機構とを設けたことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
バネ圧縮機構は、ロッドとシリンダの両方に軸方向の移動が許容される第一移動バネ受および第二移動バネ受と、ロッドとシリンダの一方に連結されて第一移動バネ受の一方側への移動を規制する第一規制部材と、上記一方に連結されて第二移動バネ受の他方側への移動を規制する第二規制部材と、ロッドとシリンダの他方に連結されて第一移動バネ受より一方側に配置されて第一移動バネ受けの移動を規制する第一ストッパと、ロッドとシリンダの他方に連結されて第二移動バネ受より他方側に配置されて第二移動バネ受の移動を規制する第二ストッパとを備え、第一移動バネ受と第二移動バネ受との間にバネが介装されることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
バネは、第一ストッパに第一移動バネ受が当接し、第二ストッパに第二移動バネ受が当接する状態で圧縮状態とされることを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−185962(P2009−185962A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28510(P2008−28510)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】