説明

緩衝器

【課題】作動時の静粛性を向上可能な緩衝器の提供。
【解決手段】ハウジング85と、ハウジング85内に移動可能に設けられハウジング85内を通路42を介して一側室6と連通する第1ハウジング室124とハウジング85の側部に設けられる通路99を介して他側室7と連通する第2ハウジング室125とに画成するフリーピストン87とを有し、ハウジング85およびフリーピストン87に、ハウジング85内でフリーピストン87が一側または他側に移動したときに、フリーピストン87の移動を抑制する流体ロック機構130を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、振動状態に応じて減衰力特性が可変となる緩衝器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−336816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝器においても作動時の静粛性が求められている。
【0005】
したがって、本発明は、作動時の静粛性を向上可能な緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ピストンの移動によりシリンダ内の一側室および他側室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられ減衰力を発生する減衰力発生機構と、内部に前記第2通路の少なくとも一部の通路が形成されるハウジングと、前記ハウジング内に移動可能に設けられ前記ハウジング内を前記第2通路を介して一側室と連通する第1ハウジング室と前記ハウジングの側部に設けられる第3通路を介して他側室と連通する第2ハウジング室とに画成するフリーピストンと、からなり、前記ハウジングおよび前記フリーピストンには、前記ハウジング内で前記フリーピストンが一側または他側に移動したときに、前記フリーピストンの移動を抑制する流体ロック機構を設け、前記流体ロック機構は、前記第3通路と、前記フリーピストンの側部に設けられ、前記第2ハウジング室と連通する第4通路と、前記第3通路および前記第4通路と連通し、前記ハウジングの内周と前記フリーピストンの外周との間に形成される隙間と、から構成され、前記第3通路および前記第4通路は、前記他側室と前記第2ハウジング室とを連通する唯一の通路であり、前記隙間は、前記フリーピストンのストローク範囲において、前記ハウジングの前記第3通路の開口と前記フリーピストンの外周との間の距離を異ならせ、前記ハウジング内を前記フリーピストンが移動したとき、前記第3通路の前記開口と対向する前記隙間の距離は、前記開口の直径の1/4より小さくなるように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作動時の静粛性を向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る一実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態の緩衝器の要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態の緩衝器の要部を示す拡大断面図であって、(a)はフリーピストンがストローク範囲の一端にある状態を示すものであり、(b)はフリーピストンがストローク範囲の他端にある状態を示すものである。
【図4】本発明に係る一実施形態の緩衝器の流体ロック機構を示す拡大断面図である。
【図5】緩衝器のストロークに対する減衰力の関係を示す特性線図であって、(a)は本発明に係る一実施形態の緩衝器の特性を示すものであり、(b)は従来の緩衝器の特性を示すものである。
【図6】本発明に係る一実施形態の緩衝器の変形例の要部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側および下側とし、逆に図の上側を他方側および上側として定義する。
【0010】
本実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器で、円筒状のシリンダ1と、このシリンダ1よりも大径でシリンダ1を覆うように同心状に設けられる外筒2とを有している。これらシリンダ1と外筒2との間はリザーバ室3となっている。
【0011】
シリンダ1内には、ピストン5が摺動可能に嵌装されている。このピストン5は、シリンダ1内を上室(一側室)6と下室(他側室)7とに区画している。シリンダ1内の上室6および下室7内には、作動流体としての油液が封入され、シリンダ1と外筒2との間のリザーバ室3内には、作動流体としての油液と、高圧(20〜30気圧程度)のガスとが封入される。
【0012】
シリンダ1内には、一端がシリンダ1の外部へと延出されるピストンロッド10の他端が挿入されており、ピストン5は、このピストンロッド10のシリンダ1内の他端に連結されている。ピストンロッド10は、シリンダ1の一端開口部に装着されたロッドガイド11、オイルシール12,13に挿通されてシリンダ1の外部へ延出されている。ロッドガイド11は、外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、下部においてシリンダ1の上端の内周部に嵌合し上部において外筒2の上端の内周部に嵌合する。これにより、シリンダ1の上部が外筒2に対して位置決めされる。外筒2の上端部は、内側に加締められており、オイルシール13およびロッドガイド11をシリンダ1とで挟持する。
【0013】
ピストンロッド10は、シリンダ1内への挿入先端側に、ピストン5を取り付けるための取付軸部15が形成されており、他の部分が取付軸部15よりも大径の主軸部16となっている。この主軸部16には、径方向外側に広がるリテーナ23が固定されている。
【0014】
リテーナ23のピストン5とは反対には円環状のバネ受25が配置されており、バネ受25のリテーナ23とは反対にコイルスプリングからなるリバウンドスプリング26が配置されている。また、リバウンドスプリング26のバネ受25とは反対には円環状のバネ受27が配置されており、このバネ受27のリバウンドスプリング26とは反対に円環状の弾性材料からなる緩衝体28が設けられている。
【0015】
ここで、ピストンロッド10がシリンダ1から突出する方向に移動する伸び行程では、ピストンロッド10に固定されたリテーナ23とともにバネ受25、リバウンドスプリング26、バネ受27および緩衝体28がロッドガイド11側に移動することになり、所定の位置で緩衝体28がロッドガイド11に当接する。さらにピストンロッド10が突出方向に移動すると、緩衝体28およびバネ受27が、ロッドガイド11およびシリンダ1に対して停止状態となり、その結果、移動するリテーナ23およびバネ受25と、バネ受27とが近接する。これにより、バネ受25とバネ受27とが、これらの間のリバウンドスプリング26を縮長させることになる。このようにして、シリンダ1内に設けられたリバウンドスプリング26が、ピストンロッド10に弾性的に作用することになり、ピストンロッド10の伸び切りを抑制することになる。なお、このようにリバウンドスプリング26がピストンロッド10の伸び切りの抵抗となることで、車両旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑えることになる。
【0016】
ピストン5には、上室6と下室7とを連通させ、ピストン5の上室6側への移動、つまりピストンロッド10がシリンダ1から伸び出る伸び行程において、上室6および下室7の一方である上室6から他方である下室7に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30aと、ピストン5の下室7側への移動、つまりピストンロッド10がシリンダ1内に進入する縮み行程において、上室6および下室7の他方である下室7から一方である上室6に向けて油液が流れ出す複数(図1では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30bとが設けられている。
【0017】
これらのうち半数を構成する通路30aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向一側(図1の上側)が径方向外側に、軸方向他側(図1の下側)が径方向内側に開口している。そして、これら半数の通路30aに、減衰力を発生する減衰力発生機構31aが設けられている。減衰力発生機構31aは、ピストン5の軸線方向の下室7側に配置されている。通路30aは、ピストンロッド10がシリンダ1外に伸び出る伸び側にピストン5が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構31aは、伸び側の通路30aの油液の流動を抑制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
【0018】
また、残りの半数を構成する通路30bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン5の軸方向他側(図1の下側)が径方向外側に、軸方向一側(図1の上側)が径方向内側に開口している。そして、これら残り半数の通路30bに、減衰力を発生する減衰力発生機構31bが設けられている。減衰力発生機構31bは、ピストン5の軸線方向の上室6側に配置されている。通路30bは、ピストンロッド10がシリンダ1内に入る縮み側にピストン5が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構31bは、縮み側の通路30bの油液の流動を抑制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構となっている。
【0019】
ピストンロッド10には、主軸部16のピストン5の近傍位置に、径方向に沿う通路穴40が形成されており、この通路穴40に連通し取付軸部15側の先端部に開口する、通路穴40より大径の通路穴41が軸方向に沿って形成されている。これら通路穴40,41が、ピストンロッド10に設けられるロッド内通路(第2通路)42を構成しており、このロッド内通路42は上室6に常時連通している。
【0020】
ピストンロッド10には、そのシリンダ1内にある一端側の取付軸部15のピストン5よりもさらに端側に、ロッド内通路42に連通するように減衰力可変機構45が取り付けられている。
【0021】
外筒2は、円筒状の円筒部材47と、円筒部材47の下端に嵌合してその下端の開口部を閉塞する底蓋部材48とからなっている。底蓋部材48は、外周部で円筒部材47の内周部に嵌合されることになり、この状態で中央側ほど下側に位置するように段差状をなしている。底蓋部材48は円筒部材47に溶接により密閉状態となるように固定されている。底蓋部材48の外側には、緩衝器を車両に取り付けるための取付部材49が溶接により固定されている。
【0022】
シリンダ1の下端部には、シリンダ1内の下室7と、上記したリザーバ室3とを画成するボトムバルブ50が設けられている。ボトムバルブ50は、上記した伸び行程においてリザーバ室3から下室7内に実質的に減衰力を発生させずに油液を流すサクションバルブ51aと、縮み行程において下室7からリザーバ室3側に、減衰力を発生させながら油液を流す減衰バルブ51bとを有している。
【0023】
ボトムバルブ50は、シリンダ1内に嵌装されてシリンダ1内を下室7およびリザーバ室3の2室に仕切る略円板状のボトムバルブ部材55を有している。ボトムバルブ部材55は、上部が下部よりも小径となる段差状をなしており、上部においてシリンダ1の下端の内周部に嵌合し下部において外筒2の底蓋部材48に当接して、シリンダ1の下部を外筒2に対して位置決めする。
【0024】
ボトムバルブ部材55には、径方向の外側において軸方向に貫通する通路57aが周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。また、径方向の内側において軸方向に貫通する通路57bが、周方向に間隔をあけて複数カ所形成されている。これら通路57a,57bによって下室7とリザーバ室3との間で油液が流通可能となっている。
【0025】
ボトムバルブ50には、ボトムバルブ部材55の軸方向の下室7側に、外側の通路57aを開閉可能となるように上記したサクションバルブ51aが設けられており、ボトムバルブ部材55の軸方向の下室7とは反対側に、内側の通路57bを開閉可能となるように上記した減衰バルブ51bが設けられている。
【0026】
下室7側のサクションバルブ51aは、ピストンロッド10が伸び側に移動しピストン5が上室6側に移動して下室7の圧力が下降するとボトムバルブ部材55から離座して通路57aを開く。つまり、通路57aには、ピストンロッド10が伸び側に移動したときに油液がリザーバ室3から下室7に向け流通することになる。なお、サクションバルブ51aは、ピストン5に設けられた伸び側の減衰力発生機構31aとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1からの突出に伴う油液の不足分を補うようにリザーバ室3から下室7に油液を実質的に抵抗なく(減衰力が出ない程度に)流す機能を果たす。
【0027】
下室7とは反対側の減衰バルブ51bは、ピストンロッド10が縮み側に移動しピストン5が下室7側に移動して下室7の圧力が上昇すると、ボトムバルブ部材55から離座して内側の通路57bを開く。つまり、通路57bには、ピストンロッド10が縮み側に移動したときに油液が下室7からリザーバ室3に向け流通することになり、減衰バルブ51bは、この通路57bを開閉し減衰力を発生する縮み側の減衰バルブとなっている。なお、減衰バルブ51bは、ピストン5に設けられた縮み側の減衰力発生機構31bとの関係から、主としてピストンロッド10のシリンダ1への進入により生じる液の余剰分を排出するように下室7からリザーバ室3に液を流す機能を果たす。
【0028】
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド10にて車体側に連結され、シリンダ1のピストンロッド10の突出側とは反対側に取り付けられた取付部材49にて車輪側に連結される。なお、上記とは逆に、緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
【0029】
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ1とピストンロッド10との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン5に形成された通路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン5に形成された通路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ1とピストンロッド10との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ1とピストンロッド10との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
【0030】
図2に示すように、ピストン5は、略円板状のピストン本体61と、ピストン本体61の外周面に装着されて、シリンダ1内に摺接する摺接部材62とを有している。ピストン本体61には、径方向の中央に、ピストンロッド10の取付軸部15を挿通させる挿通穴63が軸方向に貫通するように形成されている。また、このピストン本体61に、上記した通路30a,30bが形成されている。
【0031】
ピストン本体61の軸方向の下室7側の端部には、伸び側の通路30aの一端開口位置の外側に、減衰力発生機構31aを構成するシート部71aが、円環状に形成されている。ピストン本体61の軸方向の上室6側の端部には、縮み側の通路30bの一端の開口位置の外側に、減衰力発生機構31bを構成するシート部71bが、円環状に形成されている。
【0032】
ピストン本体61において、シート部71aの挿通穴63とは反対側は、シート部71aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72bとなっており、この段差部72bの位置に縮み側の通路30bの他端が開口している。また、同様に、ピストン本体61において、シート部71bの挿通穴63とは反対側は、シート部71bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部72aとなっており、この段差部72aの位置に伸び側の通路30aの他端が開口している。
【0033】
減衰力発生機構31aは、上記したシート部71aと、シート部71aの全体に同時に着座可能な環状のディスク75aとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75aは複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75aのピストン本体61とは反対側には、ディスク75aよりも小径の環状のバルブ規制部材77aが配置されている。
【0034】
減衰力発生機構31aには、シート部71aとディスク75aとの間に、これらが当接状態にあっても通路30aを下室7に連通させる固定オリフィス78aが、シート部71aに形成された溝あるいはディスク75aに形成された開口によって形成されている。ディスク75aは、シート部71aから離座することで通路30aを開放し、その際に、バルブ規制部材77aはディスク75aの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰力発生機構31aは、通路30aに設けられ、ピストン5の上室6側への摺動によって通路30aに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0035】
同様に、減衰力発生機構31bは、上記したシート部71bと、シート部71bの全体に同時に着座可能な環状のディスク75bとからなっており、ディスクバルブとなっている。ディスク75bも複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。ディスク75bのピストン本体61とは反対側には、ディスク75bよりも小径の環状のバルブ規制部材77bが配置されている。バルブ規制部材77bは、ピストンロッド10の主軸部16の取付軸部15側の端面に当接している。
【0036】
減衰力発生機構31bには、シート部71bとディスク75bとの間に、これらが当接状態にあっても通路30bを上室6に連通させる固定オリフィス78bが、シート部71bに形成された溝あるいはディスク75bに形成された開口によって形成されている。ディスク75bは、シート部71bから離座することで通路30bを開放し、その際に、バルブ規制部材77bはディスク75bの開方向への規定以上の変形を規制する。減衰力発生機構31bは、通路30bに設けられ、ピストン5の下室7側への摺動によって通路30bに生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
【0037】
本実施形態では、減衰力発生機構31a,31bが内周クランプのディスクバルブである例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
【0038】
ピストンロッド10の取付軸部15の先端には、オネジ80が形成されており、このオネジ80に、周波数(振動状態)により外部から制御されることなく減衰力を可変とする周波数感応部である上記した減衰力可変機構45が螺合されている。減衰力可変機構45は、オネジ80に螺合された状態で、上記したバルブ規制部材77a、ディスク75a、ピストン5、ディスク75bおよびバルブ規制部材77bをピストンロッド10の主軸部16の端面との間に挟持することになり、ナットを兼用している。
【0039】
減衰力可変機構45は、ピストンロッド10のオネジ80に螺合されるメネジ81が形成された蓋部材82と、この蓋部材82にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略有底円筒状のハウジング本体83とからなるハウジング85と、このハウジング85内に摺動自在に挿入されるフリーピストン87と、フリーピストン87とハウジング85の蓋部材82との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し蓋部材82側へ移動したときに圧縮変形するコイル状のスプリング88と、フリーピストン87とハウジング85のハウジング本体83との間に介装されてフリーピストン87がハウジング85に対し蓋部材82とは反対側へ移動したときに圧縮変形するコイル状のスプリング89とで構成されている。
【0040】
スプリング88は、フリーピストン87が一方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっており、スプリング89は、フリーピストン87が他方向へ移動したときに圧縮変形してフリーピストン87の変位に対し抵抗力を発生する抵抗要素となっている。これらスプリング88,89は、フリーピストン87をハウジング85内の中立位置に保持するように付勢する。
【0041】
蓋部材82は、略円筒状の蓋筒部91と、この蓋筒部91の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋基板部92とからなっている。
【0042】
ハウジング本体83は、略円筒状の本体筒部95と、本体筒部95の軸方向の一端部を閉塞する本体底部96とからなっている。本体筒部95は、本体底部96とは反対側の端部が薄肉部97とされ、薄肉部97を除く部分が薄肉部97に対し外径が同等で内径が小径の厚肉部98となっている。本体筒部95には、厚肉部98の軸方向の中間所定位置に径方向に貫通するオリフィスとしての一定径の側面通路(第3通路)99が円周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、ハウジング本体83の本体筒部95を円筒状と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
【0043】
このようなハウジング本体83は、蓋部材82の組み付け前、薄肉部97が厚肉部98の延長上に形成されている。そして、蓋部材82の組み付け時に、蓋筒部91を先方にして蓋部材82が、薄肉部97の内側に、蓋基板部92が厚肉部98の薄肉部97側の端面に当接するまで嵌合させられ、その後、薄肉部97が径方向内方に加締められる。これにより、ハウジング本体83と蓋部材82とが一体化されてハウジング85となる。
【0044】
フリーピストン87は、略円筒状のピストン筒部105と、このピストン筒部105の軸方向の中央位置を閉塞するピストン閉板部106とを有するフリーピストン本体102と、このフリーピストン本体102に保持されてフリーピストン本体102とハウジング85との隙間をシールする円環状のシール部材103とからなっている。
【0045】
フリーピストン本体102は、ピストン筒部105の軸方向の一端側の外周部に、径方向内方に凹む円環状のシール保持溝107が形成されており、このシール保持溝107に上記したシール部材103が嵌合されている。シール部材103は中心軸を含む面での断面が四角形状の角リングとなっている。
【0046】
ピストン筒部105の軸方向の中央の外周部には、径方向内方に凹む円環状の通路形成溝108が形成されている。通路形成溝108は、軸方向の中央位置にある一定径の小径面部111と、小径面部111の軸方向の両側に繋がって小径面部111から離れるほど大径となる対称形状の一対の中間テーパ面部112,113と、一対の中間テーパ面部112,113のそれぞれの小径面部111とは反対側に一定径で繋がる同形状の一対の中径面部114,115と、一対の中径面部114,115のそれぞれの中間テーパ面部112,113とは反対側に繋がって中径面部114,115から離れるほど大径となる一対の対称形状の端部テーパ面部116,117とからなっている。一対の端部テーパ面部116,117のそれぞれの中径面部114,115とは反対側は、ピストン筒部105の同じ一定径の最大外径面部118,119に繋がっている。上記したシール保持溝107は、ピストン筒部105の軸方向の一方の最大外径面部118の位置に形成されている。
【0047】
ピストン筒部105には、軸方向のピストン閉板部106よりもシール保持溝107とは反対側の内周部に一端が開口し、他端が、通路形成溝108に開口するフリーピストン通路(第4通路)121が形成されている。フリーピストン通路121の他端は、ピストン筒部105の軸方向において、小径面部111のシール保持溝107とは反対側の一部と、中間テーパ面部113の全部とに開口している。フリーピストン通路121は、ピストン筒部105の軸方向に対し傾斜して形成されている。
【0048】
シール部材103をフリーピストン本体102のシール保持溝107に保持して構成されるフリーピストン87が、軸方向のシール保持溝107側を蓋部材82側に配置してハウジング85内に挿入される。その際に、ピストン閉板部106と蓋部材82の蓋基板部92との間にスプリング88が、ピストン閉板部106とハウジング本体83の本体底部96との間にスプリング89が介装される。
【0049】
フリーピストン87は、ハウジング85の本体筒部95の案内で軸方向に移動可能となっており、ハウジング85内を、フリーピストン87と蓋部材82との間の第1ハウジング室(第2通路)124と、フリーピストン87とハウジング本体83の本体底部96との間の第2ハウジング室125とに画成している。第1ハウジング室124は、ピストンロッド10内のロッド内通路42を介して常時上室6に連通している。よって、上記した伸び行程でのピストン5の移動により、シリンダ1内の上室6および下室7の一方である上室6から油液がロッド内通路42および第1ハウジング室124に流れ出す。
【0050】
また、第2ハウジング室125は、フリーピストン87の側部に設けられたフリーピストン通路121と、フリーピストン87の外周の通路形成溝108とハウジング本体83の本体筒部95の内周との間に形成された通路隙間(隙間)126と、ハウジング85の側部であるハウジング本体83の本体筒部95に設けられた側面通路99とを介して下室7に連通可能となっている。上記した縮み行程でのピストン5の移動により、シリンダ1内の上室6および下室7の他方である下室7から油液が側面通路99、通路隙間126、フリーピストン通路121および第2ハウジング室125に流れ出す。
【0051】
フリーピストン87のフリーピストン通路121と、ハウジング85の側面通路99と、これらフリーピストン通路121および側面通路99と連通しハウジング85の内周とフリーピストン87の外周との間に形成される通路隙間126とが、下室7と第2ハウジング室125とを連通する唯一の通路129となっている。
【0052】
そして、この通路129、つまりフリーピストン87のフリーピストン通路121と、ハウジング85の側面通路99と、通路隙間126とが、ハウジング85内でフリーピストン87が、図3(a)に示すように一側の移動端に移動したとき、または図3(b)に示すように他側の移動端に移動したときに、通路129の通路面積を狭めて、フリーピストン87の移動を抑制する、つまりフリーピストン87にブレーキをかける可変オリフィスである流体ロック機構130を構成している。言い換えれば、この流体ロック機構130は、通路129に設けられ、ハウジング85に対するフリーピストン87の移動位置に応じて通路129の通路面積を狭めてフリーピストン87の移動を抑制する。
【0053】
流体ロック機構130の上記した通路隙間126は、フリーピストン87のストローク範囲において、ハウジング85の側面通路99の通路隙間126側の開口99Aと、フリーピストン87の外周との間の距離を、フリーピストン87のストローク位置により異ならせるようになっている。具体的には、図2に示すようにフリーピストン87がスプリング88,89の付勢力によって中立位置に位置するとき、側面通路99の開口99Aは、ハウジング85の軸方向における位置をフリーピストン87の小径面部111に合わせて、この小径面部111に対向する。
【0054】
図2に示す中立位置から、図3(a)に示すようにフリーピストン87がハウジング85内で本体底部96側に移動すると、側面通路99の開口99Aは、ハウジング85の軸方向における位置をフリーピストン87の中径面部114に合わせて、この中径面部114に対向する。すると、この通路隙間126の通路面積が中立位置にあるときよりも減少する。このとき、側面通路99の開口99Aとハウジング85の軸方向における位置が合って対向する通路隙間126の距離は、図4に示すように、ハウジング85の本体筒部95の内側の半径から中径面部114の外側の半径を減算した値sとなり、この値つまり距離sが、側面通路99の開口99Aの直径dの1/4より小さくなるように構成されている。
【0055】
これは、流体ロック機構130に流体ロック機能を持たせるためには、側面通路99の通路面積よりも通路隙間126の通路面積を小さくする必要があり、面積の関係として、次式を満足させるのが良いためである。
πds<π(d/2)(d/2)
そして、この式を整理すると、s<d/4の寸法関係が得られる。
【0056】
なお、通路隙間126において開口99Aの直径dの1/4より小さい部分を構成する中径面部114と端部テーパ面部116とを合わせた部分は、その軸方向長が開口99Aの直径dよりも大きくなっており、開口99Aの全体に対して対向可能となっている。さらに言えば、中径面部114は、軸方向長が開口99Aの直径dよりも大きくなっており、開口99Aの全体に対して対向可能となっている。
【0057】
また、図2に示す中立位置から、図3(b)に示すようにフリーピストン87がハウジング85内で蓋基板部92側に移動すると、側面通路99の開口99Aは、ハウジング85の軸方向における位置をフリーピストン87の中径面部115に合わせて、この中径面部115に対向する。すると、通路隙間126の通路面積が中立位置にあるときよりも減少する。このとき、上記と同様、側面通路99の開口99Aとハウジング85の軸方向における位置が合って対向する通路隙間126の距離は、ハウジング本体83の本体筒部95の内側の半径から中径面部115の外側の半径を減算した値となり、この値が、側面通路99の開口99Aの直径dの1/4より小さくなるように構成されている。
【0058】
なお、この場合も、上記と同様、中径面部115と端部テーパ面部117とを合わせた部分は、その軸方向長が開口99Aの直径dよりも大きくなっており、開口99Aの全体に対して対向可能となっている。さらに言えば、中径面部115は、軸方向長が開口99Aの直径dよりも大きくなっており、開口99Aの全体に対して対向可能となっている。
【0059】
ピストンロッド10が伸び側に移動する伸び行程では、上室6から通路30aを介して下室7に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室6から通路30aに導入された油液が、基本的に、図2に示すシート部71aとシート部71aに当接するディスク75aとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78aを介して下室7に流れ、その際にオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室6から通路30aに導入された油液が、基本的にディスク75aを開きながらディスク75aとシート部71aとの間を通って下室7に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0060】
ピストンロッド10が縮み側に移動する縮み行程では、下室7から通路30bを介して上室6に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室7から通路30bに導入された油液が、基本的に、シート部71bとシート部71bに当接するディスク75bとの間に形成された常時開口の固定オリフィス78bを介して上室6に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室7から通路30bに導入された油液が、基本的にディスク75bを開きながらディスク75bとシート部71bとの間を通って上室6に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0061】
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
【0062】
これに対応して、上記した減衰力可変機構45が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン5の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室6の圧力が高くなって、ピストンロッド10のロッド内通路42を介して減衰力可変機構45の第1ハウジング室124に上室6から油液を導入させるとともに、下室7の圧力が低くなって、第2ハウジング室125の油液を通路129を介して下室7に排出させながら、フリーピストン87がハウジング85の本体底部96との間にあるスプリング89の付勢力に抗してハウジング85の本体底部96側に移動する。このようにフリーピストン87が本体底部96側に移動することにより、ロッド内通路42を介して第1ハウジング室124に上室6から油液を導入することになり、上室6から通路30aに導入され減衰力発生機構31aを通過して下室7に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
【0063】
その際に、フリーピストン87が本体底部96に近接すると、流体ロック機構130が通路129の通路面積を絞り、フリーピストン87の移動を抑制する。つまり、まず、側面通路99の開口99Aが、フリーピストン87の中径面部114に対向することになり、側面通路99に連通する通路隙間126の通路面積が、開口99Aが小径面部111に対向していた中立位置よりも狭くなり、第2ハウジング室125から下室7への油液の流れが抑制され、その結果、フリーピストン87の移動が抑制されることになる。さらにフリーピストン87が本体底部96に近接すると、側面通路99の開口99Aが、図3(a)に示すように中径面部114と端部テーパ面部116と最大外径面部118とに対向することになり、側面通路99に連通する通路隙間126の通路面積が、さらに狭くなり、第2ハウジング室125から下室7への油液の流れがさらに抑制され、その結果、フリーピストン87の移動がさらに抑制されることになる。よって、フリーピストン87の本体底部96への当接を防止し、あるいは例えフリーピストン87が本体底部96に当接しても衝撃を小さくでき、発生する衝突音を小さく抑えることができる。
【0064】
続く縮み行程では、上室6の圧力が低くなって、ロッド内通路42を介して第1ハウジング室124から上室6に油液を排出させるとともに、下室7の圧力が高くなって、下室7の油液を通路129を介して第2ハウジング室125に導入させながら、それまで軸方向の本体底部96側に移動していたフリーピストン87がスプリング88の付勢力に抗してハウジング85内を軸方向の蓋基板部92側に移動する。このようにフリーピストン87が軸方向の蓋基板部92側に移動することにより、通路129を介して第2ハウジング室125に下室7から油液を導入することになり、下室7から通路30bに導入され減衰力発生機構31bを通過して上室6に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、減衰力が下がる。
【0065】
その際に、フリーピストン87が蓋基板部92に近接すると、流体ロック機構130が通路129の通路面積を絞り、フリーピストン87の移動を抑制する。つまり、まず、側面通路99の開口99Aが、フリーピストン87の中径面部115に対向し、側面通路99に連通する通路隙間126の通路面積が、中立位置よりも狭くなり、第2ハウジング室125への下室7からの油液の流れが抑制され、その結果、フリーピストン87の移動が抑制されることになる。さらにフリーピストン87が蓋基板部92に近接すると、図3(b)に示すように側面通路99の開口99Aが、中径面部115と端部テーパ面部117と最大外径面部119とに対向することになり、側面通路99に連通する通路隙間126の通路面積が、さらに狭くなり、第2ハウジング室125への下室7からの油液の流れがさらに抑制され、その結果、フリーピストン87の移動がさらに抑制されることになる。よって、フリーピストン87の蓋基板部92への当接を防止し、あるいは例えフリーピストン87が蓋基板部92に当接しても衝撃を小さくでき、発生する衝突音を小さく抑えることができる。
【0066】
ピストン5の周波数が高い領域では、フリーピストン87の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、上室6から第1ハウジング室124に油液が流れるとともに第2ハウジング室125から下室7に油液が流れ、縮み行程の都度、下室7から第2ハウジング室125に油液が流れるとともに第1ハウジング室124から上室6に油液が流れることになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。その際に、フリーピストン87は、中立位置の近傍で往復動することになり、上記のように本体底部96に近接したり蓋基板部92に近接したりすることはなく、流体ロック機構130がフリーピストン87にブレーキをかけることも実質的になくなる。
【0067】
ピストン速度が遅い時、ピストン5の周波数が低くなると、フリーピストン87の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、上室6から第1ハウジング室124に油液が流れるとともに、第2ハウジング室125から下室7に油液は流れるものの、その後はフリーピストン87が本体底部96側の移動端で停止し、上室6から第1ハウジング室124に油液が流れなくなるため、上室6から通路30aに導入され減衰力発生機構31aを通過して下室7に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。このときも、上記と同様に、フリーピストン87の移動端近傍において流体ロック機構130が通路129の通路面積を絞り、フリーピストン87の移動を抑制するため、フリーピストン87の本体底部96への当接を防止し、あるいは例えフリーピストン87が本体底部96に当接しても衝撃を小さくでき、発生する衝突音を小さく抑えることができる。
【0068】
続く縮み行程でも、その初期に、下室7から第2ハウジング室125に油液が流れるとともに、第1ハウジング室124から上室6に油液が流れるものの、その後はフリーピストン87が蓋基板部92側の移動端で停止し、下室7の容積に影響しなくなるため、下室7から通路30bに導入され減衰力発生機構31bを通過して上室6に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。このときも、上記と同様に、フリーピストン87の移動端近傍において流体ロック機構130が通路129の通路面積を絞り、フリーピストン87の移動を抑制するため、フリーピストン87の蓋基板部92への当接を防止し、あるいは例えフリーピストン87が蓋基板部92に当接しても衝撃を小さくでき、発生する衝突音を小さく抑えることができる。
【0069】
以上に述べた本実施形態によれば、ハウジング85およびフリーピストン87には、ハウジング85内でフリーピストン87が一側または他側に移動したときに、フリーピストン87の移動を抑制する流体ロック機構130が設けられているため、フリーピストン87のハウジング85へのメタルタッチでの当接を防止あるいは当接時の衝撃を抑制することができる。よって、作動時の静粛性を向上可能となるとともに、作動が滑らかになる。つまり、図5に示すように、ストロークに対する減衰力の関係を示す減衰力リサージュ波形が、図5(b)に示す従来構造のものに対し、図5(a)に示すように過渡的な波形が滑らかになって連続し、作動が滑らかになる。このように作動が滑らかになることにより異音の要因となるピストンロッド10の加速度も低減でき、この点からも作動時の静粛性を向上可能となる。
【0070】
また、流体ロック機構130は、下室7と第2ハウジング室125とを連通する唯一の通路129を構成する側面通路99と通路隙間126とから構成され、通路隙間126が、フリーピストン87のストローク範囲において、側面通路99の開口99Aとフリーピストン87の外周との間の距離を異ならせるようになっているため、フリーピストン87のストローク位置に応じて正確にフリーピストン87の移動を抑制することができる。
【0071】
また、ハウジング85内をフリーピストン87が移動したとき、側面通路99の開口99Aと対向する通路隙間126の距離sが、開口99Aの直径dの1/4より小さくなるように構成されているため、フリーピストン87の移動を確実に抑制することができる。
【0072】
また、いずれも通路隙間126が開口99Aの直径dの1/4より小さい部分となる、中径面部114と端部テーパ面部116とを合わせた軸方向長と、中径面部115と端部テーパ面部117とを合わせた軸方向長とが、それぞれ、開口99Aの直径dよりも大きくなっているため、フリーピストン87の移動を確実に抑制することができる。
【0073】
なお、フリーピストン87を中立位置に保持するように付勢するスプリング88,89を、図6に示すようになくしても良い。これは、フリーピストン87に作用する総力は、油圧が支配的であり、スプリング88,89の反力による減衰力への影響は十分に小さいためである。このように構成すれば、部品点数を低減でき、コストおよび重量を低減することができる。
【0074】
上記実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設けないモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。また、上記実施形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
【符号の説明】
【0075】
1 シリンダ
5 ピストン
6 上室(一側室)
7 下室(他側室)
10 ピストンロッド
30a,30b 通路(第1通路)
31a,31b 減衰力発生機構
42 ロッド内通路(第2通路)
85 ハウジング
87 フリーピストン
99 側面通路(第3通路)
99A 開口
121 フリーピストン通路(第4通路)
124 第1ハウジング室(第2通路)
125 第2ハウジング室
126 通路隙間(隙間)
130 流体ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されるシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を一側室と他側室とに区画するピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、
前記ピストンの移動により前記シリンダ内の前記一側室および前記他側室の一方から作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、
前記第1通路に設けられ減衰力を発生する減衰力発生機構と、
内部に前記第2通路の少なくとも一部の通路が形成されるハウジングと、
前記ハウジング内に移動可能に設けられ前記ハウジング内を前記第2通路を介して前記一側室と連通する第1ハウジング室と前記ハウジングの側部に設けられる第3通路を介して前記他側室と連通する第2ハウジング室とに画成するフリーピストンと、からなり、
前記ハウジングおよび前記フリーピストンには、前記ハウジング内で前記フリーピストンが一側または他側に移動したときに、前記フリーピストンの移動を抑制する流体ロック機構を設け、
前記流体ロック機構は、
前記第3通路と、
前記フリーピストンの側部に設けられ、前記第2ハウジング室と連通する第4通路と、
前記第3通路および前記第4通路と連通し、前記ハウジングの内周と前記フリーピストンの外周との間に形成される隙間と、から構成され、
前記第3通路および前記第4通路は、前記他側室と前記第2ハウジング室とを連通する唯一の通路であり、
前記隙間は、前記フリーピストンのストローク範囲において、前記ハウジングの前記第3通路の開口と前記フリーピストンの外周との間の距離を異ならせ、
前記ハウジング内を前記フリーピストンが移動したとき、前記第3通路の前記開口と対向する前記隙間の距離は、前記開口の直径の1/4より小さくなるように構成されていることを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記隙間が前記開口の直径の1/4より小さい部分の軸方向長は、前記開口の直径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113415(P2013−113415A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262610(P2011−262610)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】