説明

緩衝層付き化粧シート

【課題】垂直面に要求される緩衝性を有しつつ、表面に意匠性を有し、かつ表面の耐性や製造工程上の問題点もない、裏面に緩衝層を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】衝層が、ポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂からなり、層厚が0.5〜30mm、発泡倍率が5〜20倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層であり、化粧シートの基材が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部と共重合ポリエステル樹脂5〜15重量部からなり、層厚が50〜200μmのポリエステル系樹脂層であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の緩衝層付き化粧シートは、主に高齢者向けあるいは幼児向け施設にて使用する垂直面を有する建材、例えば建具枠材、扉、パーティション、壁材などの金属製基材、硬質樹脂製基材、硬質木質材製基材等の表面に貼り合わせて緩衝建材とする、裏面に緩衝層を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、前記建具枠材、扉、パーティション、壁材などには、金属、硬質樹脂、硬質木質材、ガラス、石、プラスチック等の硬質な材質が使用されており、必要に応じて表面に木目等の印刷を施した化粧シートをラミネートしたり、吹き付け塗装等により意匠性を向上させている。
こうした硬質な建具枠材、扉、パーティション、壁材などは、とりわけ高齢者や幼児にとっては、その垂直面に不意に接触した際にその硬さにより怪我(骨折、打撲)を負う場合も考えられ、また車椅子や移送式ベッド等が接触し、互いに傷付け合い各々の美観を損ねることがあった。
【0003】
そこでウレタン成型品のエッジ材やゴム緩衝材を貼り付け、緩衝層とすることがある。ところが、意匠的には乏しく、また粘着剤により貼り付けることが多いため、後から剥れてきたり、ものが当たった際にネチャネチャと音がするなど不快に感じるものとなる。
裏面に緩衝層を設けた化粧シートを貼り合わるということも考えられるが、化粧シートが薄いと衝撃で化粧シートが破損してしまい、化粧シートが厚いと緩衝性が損なわれる。さらには化粧シートを構成する材料の物性によっても柔軟性や貼り合わせ強度など様々な問題があり、好適なものは得られていなかった。
【0004】
一方、化粧シートはその基材として、従来、柔軟で加工しやすく、しかも安価なポリ塩化ビニル系樹脂が多用されてきた。しかしながらポリ塩化ビニル樹脂は燃焼の際に塩化水素やダイオキシン等の毒性物質を発生するので、火災時の問題や使用後の償却処分による環境問題が指摘され、特に内装材としての使用が問題視されるようになってきており、ポリ塩化ビニル樹脂製のものと同等の性能を有する樹脂の使用が望まれていた。
そこでポリエステル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、非晶質のポリエチレンテレフタレートなどが好適に用いられるようになってきた。
【0005】
しかしながら、化粧シートが厚すぎたり硬い材料を使用したりすると、ウェーブ状(巻き状態)で巻き取りにくくなるという製造上の問題点があり、薄いと表面耐性が悪くなるといった問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、垂直面に要求される緩衝性を有しつつ、表面に意匠性を有し、かつ表面の耐性や製造工程上の問題点もない、裏面に緩衝層を有する化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、化粧シート裏面に緩衝層を貼り合わせてなる緩衝層付き化粧シートにおいて、前記緩衝層が、ポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂からなり、層厚が0.5mm〜30mm、発泡倍率が5倍〜20倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層であり、前記化粧シートの基材が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部と共重合ポリエステル樹脂5〜15重量部からなり、層厚が50μm〜200μmのポリエステル系樹脂層であることを特徴とする、緩衝層付き化粧シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明はその請求項1記載の発明により、緩衝層にポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂を用いることで十分な耐性製を有するものとなり、層厚が0.5mm〜30mm、発泡倍率を5〜20倍とすることで十分な柔軟性と復元性を有する緩衝性を持つものとなる。また、化粧シートの基材にポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部と共重合ポリエステル樹脂5〜15重量部を用いることで、層厚を50〜200μmとすることで化粧シートとしての印刷適性や巻き取りなどの加工適性を有するものとなり、表面耐性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の緩衝層付き化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の緩衝層付き化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。緩衝層1の上に、化粧シートの基材となる着色熱可塑性樹脂基材2、絵柄模様層3、透明熱可塑性樹脂層4、トップコート層5を有する化粧シートを貼り合わせてなる。
【0011】
本発明における緩衝層1としては、ポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂が用いられる。非塩化ビニル系樹脂としては寸法安定性に優れているものであり、具体的なポリプロピレン系樹脂としてはホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが好適に用いられる。その他エチレン−プロピレン共重合体も適宜混合して使用可能である。ポリエチレン系樹脂も使用可能であるが、その際は少なくともポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するものとする。ポリプロピレン系樹脂を30重量%未満であると耐熱性が著しく低下する。
【0012】
本発明における発泡ポリオレフィン系樹脂層3の発泡倍率は5〜20倍となるようにする。このため、発泡剤、充填剤の添加量や発泡方法、発泡条件を適宜調整する。発泡倍率が5倍より低いと硬すぎて痛みを和らげることが出来ず、20倍を越えるとゆっくり重圧がかかった後の表面の凹みの戻りが悪くなる
【0013】
本発明における発泡ポリオレフィン系樹脂層3の厚みは1mm〜30mmが好ましい。1mmより薄いとゆっくり重圧がかかった場合の痛みを和らげることが困難になり、30mmを越えるとゆっくり重圧がかかった後の表面の凹みの戻りが悪くなる。
【0014】
化粧シートの基材となる着色熱可塑性樹脂層2としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部と共重合ポリエステル樹脂5〜15重量部からなり、層厚が50μm〜200μmのポリエステル系樹脂層が用いられる。層厚が50μmより薄いと硬度に劣るものとなり、200μmより厚いと巻き取り適性が得られない。また共重合ポリエステル樹脂が適量添加されていないと、印刷適性や加工適性が得られない。
【0015】
着色熱可塑性樹脂層2は通常の化粧シートにおいて隠蔽を目的とするために着色されてなる熱可塑性樹脂製シートが好適に用いられる。しかし特に隠蔽を必要としない場合あるいはベタの隠蔽層を別途設けるなどによる場合は特に着色をする必要は無い。
【0016】
絵柄模様層3や透明熱可塑性樹脂層4、トップコート層5は、従来公知の化粧シートに適用されているものが使用可能である。それぞれの層構成材料についても特に限定するものではなく、化粧シートとしての作用効果を有するものであれば特に限定するものではない。
【実施例1】
【0017】
緩衝層として、ポリプロピレン100重量部に安定剤5重量部、発泡剤15重量部を配合し、ヘンシェルミキサーに投入し、300rpmで3分間回転させ、さらに1000rpmで3分間回転させ、発泡ポリプロピレン系樹脂層の元となる樹脂を得た。それを160℃のT台から押出し、電子線架橋させ2mmの厚みにスライスした。発泡倍率は10倍となった。
【0018】
化粧シートの基材として、ポリブチレンテレフタレート100重量部に共重合ポリエステル(イーストマンケミカル社製「PET−G」)10重量部を添加したものを用い、150μmの着色熱可塑性樹脂フィルムとしたものを用いた。この基材の片面に、絵柄模様層として市販のグラビアインキにて木目柄をグラビア印刷機により印刷した。
【0019】
その後、前記絵柄模様層上に接着剤として2液ウレタン樹脂系接着剤を乾燥後の厚みが2g/m2となるように塗工した。前記接着剤を塗工した面上に、透明ポリプロピレンが80とマレイン酸変成ポリプロピレンが20μmとなり、マレイン酸変成ポリプロピレン側が接着剤側となるように共押出ラミネートして透明熱可塑性樹脂層とした。
【0020】
最後に前記透明熱可塑性樹脂層上に、乾燥後の厚みが1g/m2となるように2液ウレタン樹脂からなるリコート層を設けてから、トップコート層として、ウレタンアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl 4858」)100部とペンタエリスリトールテトラアクリレート(ダイセル・ユーシービ(株)製「PETA−K」20部、ベンゾフェノン系光開始剤(ダイセル・ユーシービ(株)製「Ebecryl BZO」)0.5部、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤0.5部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5部、ガラスビーズ2部を添加した紫外線硬化型樹脂を用い、これを厚さ5μmとなるように塗布し、メタルハライドランプによる紫外線照射により硬化させ、化粧シートを得た。
【0021】
前記化粧シートの基材の裏面側に、アクリル系粘着剤を65g/m2となるように塗工し、前記緩衝層と貼り合せて、本発明の緩衝層付き化粧シートを得た。
【0022】
<比較例1>
緩衝層のポリプロピレン100重量部の代わりにポリプロピレン20重量部とポリエチレン80重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0023】
<比較例2>
緩衝層の発泡剤、充填剤の添加量や発泡方法、発泡条件を適宜選択して発泡倍率を4倍に調整したこと以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0024】
<比較例3>
緩衝層の発泡剤、充填剤の添加量や発泡方法、発泡条件を適宜選択して発泡倍率を21倍に調整したこと以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0025】
<比較例4>
緩衝層の厚みを0.4mmとした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0026】
<比較例5>
緩衝層の厚みを6mmとした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0027】
<比較例6>
化粧シートの基材の厚みを45μmとした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0028】
<比較例7>
化粧シートの基材の厚みを210μmとした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0029】
<比較例8>
化粧シートの基材をポリエチレン系樹脂として厚みを200μmとした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0030】
<比較例9>
化粧シートの基材の共重合ポリエステル樹脂の添加量を1重量部とした以外は実施例1と同様にして、緩衝層付き化粧シートを得た。
【0031】
<耐熱性試験>
100℃に沸騰した熱湯を湯のみ茶碗(底面φ45)に150ml注ぎ、それを緩衝層付化粧部材の表面に置き20分後の表面状態を観察した。凹みが発生したものを×発生しなかったものを○とした。
【0032】
<緩衝性試験>
5人の被験者に対して、座った状態から肘部を緩衝層付化粧部材に約20kgの荷重が掛かるようして立ち上がってもらい、そのときの肘部の痛みの有無を評価した。一人でも痛みを感じたとしたものを×、そうでないものを○とした。
【0033】
<鉛筆硬度試験>
JIS K5400 鉛筆硬度試験を実施し、2Bで穴があく、あるいは著しい凹みの発生したものを×、そうでないものを○とした。
【0034】
<圧縮復元性試験>
65φ鋼球を緩衝層付化粧部材の表面に置き、その上から20kgのおもりを10秒間載せ、その1分後の凹み量を測定した。それを10日間(10回)繰返し、最終的な凹み量および外観観察を行った。0.15mm以上で凹みの目立つものを×そうでないものを○とした。
【0035】
<加工性テスト>
化粧シートの裏面に粘着剤を65μm厚みで塗工し、離型紙(グラシン紙)を付着させる。その離型紙を剥がしながら緩衝層とラインスピード10m/minで貼り合せを行い、化粧シート、緩衝層のシワ、ヨレの入り等の不具合を確認した。シワが発生したり、巻取り性の悪かったものを×、そうでないものを○とした。
【0036】
<印刷適性テスト>
化粧シートの基材への印刷時に、インキの着肉状態を観察した。着肉不良となったものを×とした。以上の結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の緩衝層付き化粧シートは、主に高齢者向けあるいは幼児向け施設にて使用する垂直面を有する建材、例えば建具枠材、扉、パーティション、壁材などの金属製基材、硬質樹脂製基材、硬質木質材製基材等の表面に貼り合わせて使用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…緩衝層
2…化粧シートの基材
3…絵柄模様層
4…透明熱可塑性樹脂層
5…トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧シート裏面に緩衝層を貼り合わせてなる緩衝層付き化粧シートにおいて、
前記緩衝層が、ポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂にポリプロピレン系樹脂を30重量%以上含有するポリオレフィン系樹脂からなり、層厚が0.5mm〜30mm、発泡倍率が5倍〜20倍の発泡ポリオレフィン系樹脂層であり、
前記化粧シートの基材が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部と共重合ポリエステル樹脂5〜15重量部からなり、層厚が50μm〜200μmのポリエステル系樹脂層であることを特徴とする、緩衝層付き化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2011−207117(P2011−207117A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78186(P2010−78186)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】