説明

練製品及びその製造法

【課題】
本発明は、製造加熱時及び冷蔵保存時のドリップの流出が少なく、且つ喫食時にジューシーで柔らかな食感を有する練製品を提供することを目的としたものである。
【解決手段】
結着性材料と、ゼラチンもしくはその代替物、及び多孔質状粒状物を含み、ゼラチンもしくはその代替物が多孔質状粒状物の内部に含浸されていることを特徴とする練製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産練製品や畜肉練製品をはじめとする練製品及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
練製品として蒲鉾などに代表される水産練製品は、昔から食されてきた伝統的な加工食品であるが、近年ご飯のおかずや弁当向けの惣菜的な水産練製品が増加している。これらの製品は従来の弾力のある蒲鉾的な食感よりも、むしろ柔らかくジューシー感を持った食感が好まれる傾向にある。また食べ方も手間のかかる調理は敬遠される傾向にあり、そのままで食すか電子レンジなどの加熱で美味しく食べられることが求められており、簡単な調理で軟らかくジューシーな食感の付与が望まれている。
【0003】
一般的にジューシー感を付与する方法として、水産練製品の加水量または脂肪の量を増やす方法がある。ただ加水量を増やすと水っぽくなると共に冷蔵保存時に離水し保存性の問題が生じる場合がある。一方、脂肪の量を増やすとジューシー感は増すものの、摂取カロリーが増加するため、消費者の健康指向が強い中で、脂肪はなるべく増やしたくないのが現状である。
【0004】
一方で、低脂肪化を志向する流れはハンバーグ、餃子、ソーセージなどのような畜肉練製品も同様であり、特許文献1のような脂肪添加以外でのジューシー感の付与が課題となっている。
【0005】
これらの課題の解決のため、煮こごり様カード(特許文献2)または融点50〜85℃のゲル状物(特許文献3)を粒状で分散させ、ジューシー感を出す方法が提案されている。一方、煮こごりまたは粉ゼラチンを含有する魚肉練製品(特許文献4)も提案されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−303948号公報
【特許文献2】特開2001−218569号公報
【特許文献3】特開2009−28003号公報
【特許文献4】特開平7−16080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2,3などの方法では、煮こごり様カードまたはゲル状物が製造加熱時にドリップとして流出し、歩留りが低下する問題が生じる。また50℃〜85℃のゲル状物は温めて食さないとゲル状物が溶け出さないため、ジューシー感は得られない。また特許文献4の方法では魚肉とゼラチン質が均一に混合されているため、ジューシー感は付与されない。
以上のような技術背景に鑑みて、本発明は製造加熱時及び冷蔵保存時のドリップの流出が少なく、且つ喫食時にジューシーで柔らかな食感を有する練製品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題に対して鋭意検討した結果、ゼラチン若しくはゼラチン代替物の溶液を予め組織内部に含浸させた多孔質状粒状物を練製品の構成要素とし、練製品の生地中にゼラチン若しくはゼラチン代替物を局在化させることによって、製造加熱時及び冷蔵保存時にドリップの流出が少なく、且つ喫食時にジューシーで軟らかな食感を付与することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(1)結着性材料と、ゼラチンもしくはその代替物、及び多孔質状粒状物を含み、ゼラチンもしくはその代替物が多孔質状粒状物の内部に含浸されていることを特徴とする練製品,
(2)多孔質状粒状物が組織状植物性たん白である前記(1)記載の練製品,
(3)多孔質状粒状物の吸水倍率がその乾物重量に対して3重量倍以上である、前記(1)記載の練製品,
(4)ゼラチンもしくはその代替物の溶液を予め多孔質状粒状物に含浸させた後、ゼラチンもしくはその代替物が含浸した多孔質状粒状物を結着性材料と混合して生地を調製する工程、及び、該生地を成型した後に加熱処理し、生地を凝固させる工程を含むことを特徴とする、練製品の製造法,
などを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造加熱時及び冷蔵保存時に歩留りが低下することなく、喫食時にジューシーで軟らかな食感が付与された練製品を提供することが可能となる。特に、電子レンジなどの簡便な調理でもジューシーで柔らかな食感を有する練製品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、以下具体的に説明する。
【0012】
(練製品、結着性材料)
練製品としては、水産練製品、畜肉練製品やこれらの擬似製品が挙げられ、いずれも動植物性蛋白質が結着性材料として用いられている。
水産練製品は、一般に揚げ蒲鉾や板蒲鉾等の蒲鉾類、竹輪、つみれなどの、魚肉のすりみを主原料とするもので、魚肉すりみは結着性材料として機能する。すりみの一部または全部は落とし身であってもよい。また豚肉、牛肉、鶏肉などの畜肉原料を一部使用してもよい。
副原料としては植物性蛋白(分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白、脱脂大豆、小麦蛋白等)、澱粉類(馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉などの澱粉類)、調味料(食塩,砂糖,グルタミン酸ソーダー等)、各種具材(葱、ごま、ニンジン、ゴボウ、キャベツ等の野菜や、海老等の各種具材も使用される。このうち植物蛋白もすりみと同様に結着性材料として機能する。
また畜肉練製品は、一般的に牛肉、豚肉、鶏肉等の畜肉を主原料とするものであり、ハンバーグ、ミートボール、餃子、ソーセージなどが当てはまる。畜肉は結着性材料として機能する。当該練製品には上記水産練製品と同様の副原料が添加されうる。
結着性材料は加熱凝固性を有する動植物性蛋白質を主成分とする材料であり、上記の通り魚肉、畜肉、卵白等の動物性蛋白や植物性蛋白が挙げられる。
【0013】
上記練製品の一般的な製造例を示すと、まず結着性材料を含む原料を配合して練製品生地を調製し、該生地を成型して成型生地とする。これらの工程は常法により行なうことができる。また生地の調製工程で使用する混練機はカッター、擂潰機、ブレンダー、ミキサー、ニーダー等の混練機を使用できる。本発明においてより好ましい混練機としては、カッターが挙げられる。カッターの回転数は通常行われる条件でよいが、例えば500〜3000rpmで行うことができる。
次いで成型生地は、油中加熱、焼き加熱、湯中加熱又は蒸し加熱等による加熱処理を行ない、殺菌と共に結着性材料を含む生地を凝固させ、成型した生地の形状を固定させる。本発明においてより好ましい加熱手段としては油中加熱が挙げられる。油中加熱によると製品表面に硬い表皮が形成されることによって、ゼラチンやゼラチン代替物が溶融した際に、溶融物が表面に染み出すのを防止できるためである。加熱条件は加熱手段により異なるが、油中加熱の場合は120〜200℃で2〜5分程度行えば十分である。
その後冷却して練製品が得られる。得られた練製品は冷蔵製品や冷凍製品として流通され、各家庭や飲食店などで常温に戻され、そのままあるいは再加熱されて喫食される。
本発明の練製品は上記製造例には限定されず、同様の本練製品が得られる製法を適宜適用することができる。
【0014】
(ゼラチン、ゼラチン代替物)
本発明で使用するゼラチンは一般に魚皮、豚皮や牛骨から抽出され粉末化された市販のゼラチンを使用することができる。
ゼラチン代替物は、ゼラチンと類似する溶融特性を有し、ゼラチン代替の用途として使用できることが公知であるものは何れも使用できる。すなわち、ゼラチンと同様の熱可逆性を有し、ゲルの溶解温度が20〜35℃である性質を有する組成物である。例えば、プルラン、ガラクトマンナン分解物(例えば特開2006−25682号公報)、キサンタンガムとガラクトマンナンの混合製剤(例えば特表2000−500512号公報、特表2002−532108号公報)、テンサイペクチン(例えば特開平3−197502号公報)、ゲル化性を有する修飾澱粉(例えば特表2002−534991号公報、特表2003−534398号公報)、イオタカラギーナン、寒天製剤(例えば特開平3−191759号公報、特開2005−176742号公報)などの多糖類やその混合製剤である。これらの代替物は必要により併用することができ、またゼラチンとも併用することができる。特に好ましいゼラチン代替物としては、イオタカラギーナン、プルラン、ガラクトマンナン分解物が挙げられる。ただし、ゼラチンを使用できる場合には体温における溶融特性からゼラチンを使用するのが最も好ましい。
【0015】
ゼラチン、その代替物は水に溶解して溶液として用いる。ゼラチン溶液の場合は、粉末状ゼラチンと水を混合し、加熱することにより得られる。ゼラチン溶液を調製する際は溶液中の粉末状ゼラチンの濃度は適宜調整すればよいが5〜40重量%程度が好ましい。濃度が低すぎるとゼラチンが冷却時にゲル化しにくく冷蔵保存時にドリップとして流出しやすくなる傾向にある。またあまりに濃度が高すぎるとゲルが硬すぎて喫食事に十分なジューシー感が得にくくなる傾向にある。ゼラチン代替物の場合はゼラチン溶液と同様の性状となるよう適宜溶液の濃度を調整すればよい。
【0016】
上記ゼラチン、その代替物の溶液には予め調味料を加えて調味しておいてもよい。調味料としては、食塩、砂糖、グルタミン酸Na、カツオエキス、ポークエキス、ビーフエキスなどを用いることができるが、特にこれに限定されるものでは無い。また添加量も好みにより適宜決められる。
ゼラチン、その代替物の溶液の添加量は、練製品の生地中に10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%添加するのが好ましい。10%以下ではジューシー感が物足りず、30%以上では喫食時の製品の食感が軟らかすぎ、水っぽくなってしまう。
【0017】
(多孔質状粒状物)
本発明の練製品は、上記ゼラチンもしくはその代替物が多孔質状粒状物の内部に含浸された状態で含まれていることが重要である。これによって多孔質状粒状物が練製品の製造加熱時に溶融するゼラチンを保持し、流出(ドリップ)による歩留まりの低下を防止することができると共に、喫食時にはゼラチンが体温により溶融してジューシーな食感を喫食者に感じさせることができる。
【0018】
本発明に使用する多孔質状粒状物は、粒状物であって粒状物の表面ないし内面が多孔質状のものであれば特に限定されないが、野菜のような天然物は含まれず、食品工業的に食品原料を多孔質状に加工した加工素材が包含される。例えば原料をエクストルーダー等の押出機を用いて加熱膨化させたようなものを使用できる。特に押出機で製造される場合は組織状植物性蛋白が好適に使用できる。その理由は植物性蛋白で製造されたものはその組織が強固であり、練り製品生地に混合した際に潰れ難く、潰れることによるゼラチン溶液の流出を防止することができるためである。
本発明に使用する多孔質状粒状物の粒度は、例えば乾燥状態で1〜10mm程度のものを使用することができる。
【0019】
組織状植物性蛋白を使用する場合は市販のものを用いることができ、蛋白原料としては通常、丸大豆、脱脂大豆, 濃縮大豆蛋白, 分離大豆蛋白等の大豆蛋白素材が用いられ、その他にも落花生, 菜種, 綿実など油糧種子由来の蛋白、小麦, トウモロコシ等穀物由来の蛋白、大豆以外のエンドウ豆やヒヨコ豆等の豆類由来の蛋白等も用いられる。加熱ゲル形成性のある他の蛋白を併用したものでもよい。組織状蛋白の原料中の蛋白質含量は乾物換算で40〜85%が一般的である。
【0020】
多孔質状粒状物は、その製法や種類によって吸水能力が様々であるが、吸水能力が大きいほど多くのゼラチン溶液を保持することができ、製品にジューシー感を付与することが出来るので好ましい。特に多孔質状粒状物の乾物重量に対して3重量倍以上、好ましくは4重量倍以上の吸水倍率を有するものがより好ましい。吸水能力が低すぎると、必要な添加量のゼラチン溶液をすべて吸水させるために多孔質状粒状物の添加量を増やす必要があり、その添加量が多くなりすぎると穀物臭などの多孔質状粒状物由来の臭いが増加する傾向となり、嗜好性が低下する場合がある。
そのため多孔質状粒状物の練製品中の含量は、通常は8重量%以下、好ましくは3〜7重量%が適当である。
【0021】
なお多孔質状粒状物の吸水能力については以下の方法で測定することができる。
(吸水能力の測定法)
多孔質状粒状物30gを500mlビーカーにとり、450gの25℃の水を加え、10分放置後、30メッシュ(目開き500μm)の篩いを用い、1分間ざるで水切りした後の多孔質状粒状物の重量(W)を測定し、吸水倍率(X)を下記数式により算出した。
(式)X=(W−30)/30
【0022】
多孔質状粒状物にゼラチンもしくはその代替物の溶液を含浸させる方法は特に限定されない。例えば加熱溶解させたゼラチン溶液を多孔質状粒状物に吸水させ、冷蔵庫などで10℃以下に冷却し、ゼラチンを多孔質状粒状物に固定することで得られる。ゼラチンもしくはその代替物は低温でゲル化するため、冷却により多孔質状粒状物に取り込まれた状態でゲル化状態となる。
練製品中に分散している多孔質状粒状物の内部にゼラチンもしくはその代替物が含浸されているかどうかは、製品から多孔質状粒状物を収集し、ゼラチンもしくはその代替物を検出できるかどうかで確認することができるが、多孔質状粒状物の乾物あたりのゼラチンもしくはその代替物の含有量は66重量%以上が好ましい。
【0023】
ゼラチンもしくはその代替物が含浸した多孔質状粒状物は、その多孔質状の組織を残した状態で生地中に分散させることが重要であるため、生地の製造工程の後期に添加することが好ましい。具体的には、魚肉すり身や粉末状大豆蛋白等の結着性材料と水、その他の副原料を混合して中間生地を調製した後に、該多孔質状粒状物を混合し、最終的な練製品生地に仕上げることがより好ましい。
またゼラチンもしくはその代替物が含浸した多孔質状粒状物を生地に混合する際には、せん断力の少ない混練機の使用もしくは混練機の回転数を低くして混合(例えばカッターの場合刃の回転数が700rpm以下で混合)することが好ましい。
【0024】
得られた練製品生地は常法により成型、加熱、冷却して練製品を得る。このようにして得られた製品は製造時及び冷蔵保存時のドリップの流出が少なく、それでいて喫食時にはゼラチンが再加熱や体温により溶融しジューシーで軟らかな食感を呈し、ご飯のおかずやお弁当用惣菜として適したものとなる。本発明の練製品は電子レンジ等による再加熱をしてから喫食する場合だけでなく、弁当用惣菜のように常温のまま喫食される場合にも上記食感を維持する点で特に優れている。
【0025】
練製品は低脂肪であるほどジューシー感に欠ける傾向にあるため、本発明は低脂肪の練製品においてより効果を発揮しやすい。具体的には脂質含量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下である練製品に特に有効である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例等により本発明の実施形態をより具体的に記載する。
【0027】
<実施例1> 水産練製品(蒲鉾)
粉末ゼラチン10部と水40部を混合し60℃で加熱溶解したゼラチン溶液を多孔質状粒状物である組織状大豆蛋白「アペックス650」(不二製油(株) 吸水能力5〜6重量倍)10部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゼラチン含浸組織状大豆たん白を60部得た。このときの組織状大豆蛋白中のゼラチン含量は100重量%である。
このゼラチン含浸組織状大豆たん白を下記処方、製法で調製した魚肉すりみ生地(中間生地)200部に混合して得た蒲鉾生地(最終生地)を1個50gの小判状に成型し、成型生地を160℃の油中で2.5分加熱し、水産練製品である蒲鉾を得た(蒲鉾の脂質含量:約3%)。
【0028】
(魚肉すり身生地)
スケソウ二級すり身100部に、分離大豆蛋白「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製):水:植物油脂が重量比で1:5:0.5の乳化組成物70部を加えてカッターで約4分間練り、これに食塩3部を加えて4〜5分塩摺りし、さらに砂糖5部、MSG0.7部、タピオカ澱粉12部、延ばし水50部を加えて魚肉すり身生地を調製した。
【0029】
上記により得られた蒲鉾の加熱前及び加熱冷却後の重量、また冷蔵保存5日後の重量を測定し、歩留りを算出した。また、得られた蒲鉾を室温及び電子レンジで温め(75℃)、官能評価に供した。官能評価に関しては、嗜好パネラー10名により、テクスチャー(軟らかさ)、ジューシー感(室温、レンジ加熱後)、及び風味を評価対象として、10点満点の評点法で絶対評価をしてもらい、その平均点を算出して考察した。
なお、軟らかさについては個々のパネラーが自身の経験に基づいて最も軟らかいと考えるものを10点とし、最も硬いと考えるものを1点とした。ジューシー感については最もジューシーと考えるものを10点とし、ジューシーさが感じられないと考えるものを1点とした。風味については最も大豆臭が少ないと考えるものを10点とし、最も大豆臭が感じられると考えるものを1点とした。
【0030】
<参考例1> ゼラチン及び組織状大豆蛋白なし(コントロール品)
ゼラチン及び組織状大豆蛋白を添加せずに蒲鉾生地を調製した。生地作成後は、実施例1と同様に行った。
【0031】
<比較例1> ゼラチン粒状物の添加
粉末ゼラチン10部と水40部を混合し60℃で加熱溶解したゼラチン液を、5℃の冷蔵庫で冷却しゼラチンカードを調製した。そのゼラチンカードを3mm目でチョッパー挽きして得たゼラチン粒状物50部を実施例1の魚肉すりみ生地200部に粒が潰れないように混合し、蒲鉾生地を得た。その後は実施例1と同様に成型、加熱し、蒲鉾様食品を得た。
【0032】
<比較例2> ゼラチン粒状物及び組織状大豆蛋白の添加
比較例1で得たゼラチン粒状物50部と組織状大豆蛋白「アペックス650」10部を実施例1の魚肉すり身生地200部に粒が潰れないように混合し、蒲鉾生地を得た。その後は実施例1と同様に成型、加熱し、蒲鉾様食品を得た。
【0033】
<比較例3> ゼラチンカードの均一混合
比較例1で得たゼラチンカード50部を実施例1の魚肉すりみ生地200部にカッターで均一混合し、蒲鉾生地を得た。その後は実施例1と同様に成型、加熱し、蒲鉾様食品を得た。
【0034】
(表1)

【0035】
表1から明らかなように、本発明の方法によるゼラチン溶液含浸組織状大豆たん白を利用した蒲鉾(実施例1)は、歩留りが加熱冷却後、冷蔵5日後とも高く維持されており、かつ官能評価において軟らかさ、ジューシー感に優れた結果を示した。
一方、ゼラチン粒状物添加区(比較例1及び2)は加熱時と、特に冷蔵保存時に離水によってゼラチンが流出して歩留りが低下した。またゼラチンの流出によりジューシー感もやや低下した。
またゼラチンカードの均一混合区(比較例3)は歩留まりの低下はなかったものの、ゼラチンが生地に均一に分散してしまうためか、ジューシー感が得られなかった。
【0036】
<実施例2> イオタカラギーナン溶液含浸組織状蛋白の添加
ゼラチン代替物であるイオタカラギーナン1部と水49部を混合し、80℃で加熱溶解した溶液を組織状大豆蛋白「アペックス650」10部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、イオタカラギーナン溶液含浸組織状大豆蛋白50部を得た。
その後、このカラギーナン含浸組織状大豆たん白を実施例1と同様に魚肉すり身生地200部に混合して蒲鉾生地を得、これを成型、加熱して蒲鉾様食品を得た。
【0037】
<比較例4> 寒天溶液含浸組織状蛋白の添加
粉末寒天0.5部と水49.5部を混合し98℃で加熱溶解した溶液を組織状大豆蛋白「アペックス650」10部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、寒天溶液含浸組織状大豆蛋白を得た。その後、この寒天含浸組織状大豆たん白を実施例1と同様に魚肉すり身生地に混合して蒲鉾生地を得、これを成型、加熱して蒲鉾様食品を得た。
【0038】
(表2)

【0039】
表2から、イオタカラギーナン溶液含浸組織状大豆たん白添加区(実施例2)はレンジ加熱時においてイオタカラギーナンが練製品内に溶け出して実施例1のゼラチンと同等のジューシー感が得られた。なお、室温で直接食した場合は実施例1のゼラチンほどのジューシー感は得られなかった。
一方、寒天溶液含浸組織状大豆たん白添加区(比較例4)は寒天の融点が高いためか、室温及びレンジ加熱時の何れにおいてもジューシー感が得られなかった。
それに対して、ゼラチン溶液含浸組織状大豆たん白添加区(実施例1)は、室温時及びレンジ加熱後の両条件においてジューシー感を呈しかつ軟らかい食感であり、好ましい品質であった。
【0040】
<実施例3> 吸水倍率の異なる組織状蛋白の使用(1)
粉末ゼラチン12.5部と水62.5部を混合し60℃で加熱溶解したゼラチン溶液75部を実施例1と同じ組織状大豆蛋白「アペックス650」(吸水倍率5重量倍)17部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゼラチン溶液含浸組織状大豆蛋白92部を得た。このときの組織状大豆蛋白中のゼラチン含量は約73.5重量%である。その後、このゼラチン含浸組織状大豆たん白75部を実施例1と同様に魚肉すり身生地に混合して蒲鉾生地を得、これを成型、加熱して蒲鉾様食品を得た。
【0041】
<実施例4> 吸水倍率の異なる組織状蛋白の使用(2)
実施例3で得たゼラチン溶液75部を組織状大豆蛋白「ニューフジニック51」(不二製油(株)、吸水倍率4重量倍)18.8部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゼラチン溶液含浸組織状大豆蛋白93.8部を得た。このときの組織状大豆蛋白中のゼラチン含量は約66.5重量%である。その後、このゼラチン含浸組織状大豆たん白を実施例1と同様に魚肉すり身生地に混合して蒲鉾生地を得、これを成型、加熱して蒲鉾様食品を得た。
【0042】
<実施例5> 吸水倍率の異なる組織状蛋白の使用(3)
実施例3で得たゼラチン溶液75部を組織状大豆蛋白「ベジテックス2000」(不二製油(株)、吸水倍率3重量倍)21.4部に吸水させ、5℃の冷蔵庫で2時間冷却し、ゼラチン溶液含浸組織状大豆蛋白96.4部を得た。このときの組織状大豆蛋白中のゼラチン含量は約58.4重量%である。その後、このゼラチン含浸組織状大豆たん白を実施例1と同様に魚肉すり身生地に混合して蒲鉾生地を得、これを成型、加熱して蒲鉾様食品を得た。
【0043】
(表3)

【0044】
表3から製品中に同量(約30%)のゼラチン溶液を添加する際、吸水倍率が3倍の吸水能力しかない組織状大豆蛋白を使用すると(実施例5)、組織状大豆蛋白の添加量が製品中8%を越え、大豆臭が強くなり風味が低下する傾向にあった。それに対し吸水倍率が4倍(実施例3)及び5倍(実施例2)の吸水能力を有する組織状大豆蛋白を使用したものは、風味面での問題が無く、好ましい品質であった。
【0045】
<実施例6> 畜肉練製品(ハンバーグ)
魚肉練製品の代わりに畜肉練製品でもゼラチンを含浸させた組織状大豆蛋白の添加が同様の効果を示すかどうかを調べた。
実施例1と同様にしてゼラチン含浸組織状大豆蛋白60部を得た。このゼラチン含浸組織状大豆たん白を下記処方、製法で調製した畜肉ハンバーグ生地200部に混合して得た生地を1個100gの小判状に成型し、200℃で蒸し加熱し、畜肉練製品であるハンバーグを得た。
【0046】
(畜肉ハンバーグ生地)
牛肉ミンチ(脂肪10%含有)60部と豚肉ミンチ(脂肪20%含有)60部に、分離大豆蛋白「ニューフジプロSE」(不二製油(株)製)4部、水16部を加えてミキサーで約2分間混合し、これに調味料、香辛料を併せて6部加え、さらに玉ねぎ40部、パン粉10部、馬鈴薯澱粉4部を混合して畜肉ハンバーグ生地を調製した。
【0047】
<参考例2> ゼラチン及び組織状大豆蛋白なし(コントロール品)
ゼラチン及び組織状大豆蛋白を添加せずに畜肉ハンバーグ生地を調製した。上記ハンバーグ生地に豚脂を上乗せ5部添加し、実施例6と同様に成型、加熱を行った。
【0048】
(表4)

【0049】
表4から、実施例6は参考例2に比べ脂質含量が低いにもかかわらず、室温及びレンジ加熱において同等以上のジューシー感を有していた。また、食感も軟らかく、好ましい品質であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着性材料と、ゼラチンもしくはその代替物、及び多孔質状粒状物を含み、ゼラチンもしくはその代替物が多孔質状粒状物の内部に含浸されていることを特徴とする練製品。
【請求項2】
多孔質状粒状物が組織状植物性たん白である請求項1記載の練製品。
【請求項3】
多孔質状粒状物の吸水倍率がその乾物重量に対して3重量倍以上である、請求項1記載の練製品。
【請求項4】
ゼラチンもしくはその代替物の溶液を予め多孔質状粒状物に含浸させた後、ゼラチンもしくはその代替物が含浸した多孔質状粒状物を結着性材料と混合して生地を調製する工程、及び、該生地を成型した後に加熱処理し、生地を凝固させる工程を含むことを特徴とする、練製品の製造法。

【公開番号】特開2012−205518(P2012−205518A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72342(P2011−72342)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】