説明

縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法

【課題】少なくとも縦向き方向の硬質部分を有する縦向き遮水部材と敷設遮水部材との遮水機能を適切に連続させることが可能な縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法を提供する。
【解決手段】少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁1中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材2及び地下壁周辺に配設される敷設遮水部材3,4の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間に形成される遮水構造であって、縦向き遮水部材を地下壁上端1aから露出させた頭頂端部2aと、頭頂端部から距離を隔てて配設した敷設遮水部材の縁辺端部3a,4aの周囲に、これら端部を一括して被覆して遮水材5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有する縦向き遮水部材と敷設遮水部材との遮水機能を適切に連続させることが可能な縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚染土壌の封じ込めや屋外の廃棄物処分場建設にあたり、汚染土壌部分や廃棄物処分場よりも地下の比較的浅い部分に不透水性地層がある場合には、汚染土壌部分等を取り囲むように、地上から不透水性地層にいたる地下壁を設けて、汚染水等の流出を防ぐようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1では、内部の汚染水の流出を防止するために、接合構造は、遮水壁の頭部と、止水シートの内端側とを接合するものであって、シート接合金具と、係止金具と、コンクリート部とを備えている。止水シートは、本体シートと、その裏面に添設された緩衝シートとから構成されている。シート接合金具は、対面配置される一対の平板プレートと、対面配置された平板プレート間を連結する複数の連結プレートとを有している。連結プレートの上面側には、隣接する連結プレート間に渡設するようにして、凹型断面の形鋼が固設され、形鋼に係止金具が固定される。コンクリート部は、シート接合金具の平板プレート間に水中打設され、遮水壁の頭部と、シート接合金具および係止金具とを一体化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−309426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、汚染水等の流出をさらに確実に防ぐことが必要な場合、地下壁である遮水壁の内部に、縦向き遮水部材を埋設するようにした工法が知られている。この種工法としては、トリナー工法(登録商標:株式会社不動テトラ)や、鉛直シート工法(鉛直シート工法連絡会)、ラテナビウォール工法(登録商標:太陽工業株式会社)が周知となっている。
【0006】
これら工法では、地下壁に埋設される縦向き遮水部材aは例えば、図6および図7に示すように、高密度ポリエチレンシートなどの遮水要素bを複数枚、横並びに連結して構成される。各遮水要素bの横方向両端縁には、縦向き方向(上下方向)に硬質な雄型ジョイントc及び雌型ジョイントdが接合され、隣り合う遮水要素bの雄型ジョイントcと雌型ジョイントdを嵌め合わせることで、地下壁の長さ方向に一連の縦向き遮水部材aが構成される。
【0007】
このように連結して使用される縦向き遮水部材aと、地下壁の上方に敷設される敷設遮水部材とは、これら遮水部材同士の間で漏水が生じないように、遮水機能を連続させる必要がある。一般に、敷設遮水部材は、柔軟な素材で形成される。
【0008】
縦向き遮水部材aは上述したように、少なくとも縦向き方向に硬質なジョイントc,dが取り付けられていて、たとえ敷設遮水部材が柔軟性を有するといえども、敷設遮水部材の縁辺端部を硬いジョイント部分に馴染ませて配設することは難しく、従って、これら縦向き遮水部材aと敷設遮水部材とを溶着などで液密に接合することは困難であった。また、接合できたとしても、硬質な部分との接合であるために、応力集中により接合部分が破断するなどの可能性が高く、漏水が生じるおそれが高いという課題があった。
【0009】
このような事態は、硬質な鋼矢板で廃棄物処分場を取り囲むようにした場合も同様であって、この鋼矢板と敷設遮水部材を適切に接合することは困難であり、漏水発生を確実に防止することは難しかった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有する縦向き遮水部材と敷設遮水部材との遮水機能を適切に連続させることが可能な縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造は、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材及び該地下壁周辺に配設される敷設遮水部材の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間に形成される遮水構造であって、上記縦向き遮水部材を上記地下壁上端から露出させた頭頂端部と、該頭頂端部から距離を隔てて配設した上記敷設遮水部材の縁辺端部の周囲に、これら端部を一括して被覆して遮水材を設けたことを特徴とする。
【0012】
前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部の両側には当該頭頂端部を挟んで、一対の前記敷設遮水部材の前記縁辺端部がそれぞれ配設されることを特徴とする。
【0013】
一対の前記敷設遮水部材は、いずれか一方が他方の上に重ね合わされて、二重構造とされることを特徴とする。
【0014】
前記地下壁上端には、前記遮水材を流し込むための溝状窪み部が形成され、前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部が上記溝状窪み部内に露出されるとともに、前記敷設遮水部材の前記縁辺端部が上記溝状窪み部内に挿入されることを特徴とする。
【0015】
前記溝状窪み部がV字溝であることを特徴とする。
【0016】
前記遮水材による前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部先端の被覆深さは、設定された該遮水材の遮水性能発現深さ以上であることを特徴とする。
【0017】
前記遮水材による前記敷設遮水部材の前記縁辺端部先端の被覆深さは、設定された該遮水材の遮水性能発現深さ以上であることを特徴とする。
【0018】
前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部の前記地下壁上端からの露出高さは、設定された前記遮水材の遮水性能発現深さの1/2以上であることを特徴とする。
【0019】
前記敷設遮水部材には、前記遮水材の設置位置よりも外方に位置させて、前記縁辺端部に引張力が生じるのを阻止するウエイトが設けられることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造の施工法は、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材及び該地下壁周辺に配設される敷設遮水部材の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間に形成される遮水構造の施工法であって、上記縦向き遮水部材の頭頂端部を、上記地下壁上端から露出させる頭頂露出工程と、上記敷設遮水部材の縁辺端部を、上記頭頂端部から距離を隔てて配設する縁辺配設工程と、これら頭頂端部と縁辺端部を遮水材で一括して被覆する被覆工程とを備えたことを特徴とする。
【0021】
前記頭頂部露出工程では、前記地下壁上端に、前記遮水材を流し込むための溝状窪み部を形成することで前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部を露出させるようにし、前記縁辺配設工程では、上記溝状窪み部内に前記敷設遮水部材の前記縁辺端部を挿入するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法にあっては、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有する縦向き遮水部材と敷設遮水部材との遮水機能を適切に連続させることができ、確実に汚染水の漏出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法の好適な一実施形態が適用される、汚染土壌を封じ込める施設の側断面図である。
【図2】図1に示した縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法を説明するための要部拡大側断面図である。
【図3】図1に示した縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法における遮水材周辺の要部拡大側断面図である。
【図4】本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法の変形例を示す、不適正廃棄物処分場を適正化する場合の側断面図である。
【図5】本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及びその施工法の他の変形例を示す、新設廃棄物処分場の側断面図である。
【図6】従来の縦向き遮水部材をジョイントする様子を示す正面図である。
【図7】図6中、A−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には、汚染土壌を封じ込める場合の施設が示されている。地中には、汚染土壌の分布域Xがあるとともに、分布域Xの直下に不透水性地層Yが存在している。また、不透水性地層Y上の地中には、相当の地下水位Zがある。
【0025】
本実施形態にあっては、地下水が汚染土壌に浸潤して汚染水が拡散するのを防止するために、汚染土壌の分布域Xを取り囲んで、地表面G側から不透水性地層Yに達する深さで、環状の地下壁1が構築される。地下壁1はもちろん、必ずしも環状に構築する必要はない。図示にあっては、地下壁1が地中に埋め込まれている様子が示されているが、実際には、地表面Gから適宜深さで掘削を行い、掘削表面Tから不透水性地層Yに向かって地下壁1を構築する。従って、掘削表面Tには、地下壁1の上端1aが露出する状態となる。そして、施工の最終段階で、掘削区域Sを封鎖するように、地下壁上端1a位置から上方部分に保護土Wが盛られるようになっている。
【0026】
法面Kで周囲が取り囲まれる掘削区域Sでは、上述したトリナー工法など、従来周知の工法によって、縦向き遮水部材2を埋設した地下壁1が構築される。略述すると、掘削表面Tから不透水性地層Yまで溝掘削し、溝内にソイルセメント地中連続壁(地下壁1)を構築し、当該地中連続壁中に、その上端から下端に達するように、図6及び図7に示したような合成樹脂製等の縦向き遮水部材2を打設する。これにより、汚染土壌の分布域X側と法面K側との間にこれらを隔てて、サンドイッチ構造でなる、地下壁1と縦向き遮水部材2とで二重構造とした遮水構造が得られる。
【0027】
縦向き遮水部材2は上述したように、隣り合う遮水要素を連結するための硬質の雄型ジョイント及び雌型ジョイントが縦向き方向(上下方向)に設けられていて、従って少なくとも縦向き方向に硬質部分を有していて、地下壁1中に縦向きに埋設される。他方、地下壁1周辺の法面Kには、合成樹脂製シート等の柔軟性を有する周知の敷設遮水部材3,4が敷設される。
【0028】
本実施形態に係る縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4との間の遮水構造は、図2及び図3に示すように、主に、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aと、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aと、これら端部2a,3a,4aを一括して被覆する遮水材5とを基本構成要素とする。
【0029】
図示するように、地下壁上端1aには、当該地下壁1の長さ方向に沿って、縦向き遮水部材2の上端である頭頂端部2aが露出される。地下壁1が環状であれば、頭頂端部2aは、地下壁1の周方向に沿って環状に露出される。本実施形態にあっては、地下壁上端1aには、汚染土壌の分布域X側と法面K側とを隔てるようにして、遮水材5を流し込むための溝状窪み部6が上方に開口して形成され、この溝状窪み部6内に頭頂端部2aが露出される。従って、溝状窪み部6は、縦向き遮水部材2と同様に、地下壁1の周方向に沿って形成される。溝状窪み部6は、地下壁上端1aを削り込んで形成するようにしても良いし、頭頂端部2aが地下壁上端1aから露出している状態で、当該地下壁上端1aにソイルセメント等を凹状に盛って形成するようにしてもよい。
【0030】
溝状窪み部6は、後述するように流動性のあるゲル状態から固化状態となる遮水材5を、流動状態で円滑にかつ溝状窪み部6内面と隙間が生じないように密に流し込むことができるように、頭頂端部2aの表裏面(汚染土壌の分布域X側表面と法面K側裏面)に向かって下向き傾斜となるV字溝や、底部を湾曲させたU字溝で形成することが好ましい。
【0031】
地下壁1周辺の法面Kに敷設される敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aは、露出された縦向き遮水部材2の頭頂端部2aから距離を隔てて配設される。本実施形態では、地下壁1が環状に構築され、頭頂端部2aは環状に露出されているため、敷設遮水部材3,4も地下壁1を取り囲んで敷設され、縁辺端部3a,4aは頭頂端部2a近くにその全周に亘って配設される。縁辺端部3a,4aは、溝状窪み部6内に挿入される。図示例にあっては、V字溝が示されていて、縁辺端部3a,4aは、傾斜面上に、頭頂端部2aから離して配置される。
【0032】
本実施形態にあってはさらに、敷設遮水部材3,4は、一対2枚のいずれか一方が他方の上に重ね合わされて敷設される。これにより、二重構造の遮水構造が得られる。一方の下側敷設遮水部材3は、法面Kから溝状窪み部6に向かって敷設され、他方の上側敷設遮水部材4は、法面Kから溝状窪み部6を越えて、汚染土壌の分布域X側へ延出され、延出端部で折り返されて汚染土壌の分布域X側から溝状窪み部6に向かって敷設される。そしてこれら上・下敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aはそれぞれ、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aの表裏両側に当該頭頂端部2aを挟んで配設される。溝状窪み部6内に挿入された各縁辺端部3a,4aは必要に応じて、ライナー7等で地下壁1に定着される。
【0033】
敷設遮水部材3,4は、複数の遮水シート3x,3y,4x,4yを接合して繋ぎ合わせることで所要の大きさに形成されるようになっていて、上側敷設遮水部材4では、図示例にあっては、折り返される延出端部が第1上側遮水シート4xと第2上側遮水シート4yの接合部4zとなっている。また、下側敷設遮水部材3では、図示例にあっては、溝状窪み部6外方位置に、第1下側遮水シート3xと第2下側遮水シート3yの接合部3zが形成されている。
【0034】
溝状窪み部6内には、縦向き遮水部材2の頭頂端部2a及び敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aの周囲に流し込んで、これら端部2a,3a,4aを一括して被覆し、縦向き遮水部材2から敷設遮水部材3,4に亘り遮水機能を連続させるための遮水材5が設けられる。遮水材5としては、流動性のあるゲル状態から固化して遮水性能を発揮するものであれば、どのようなものでもよい。例えば、所定温度以上で流動性のあるゲル状態となり、常温で固化するものがある。一例を挙げれば、流し込み型アスファルト混合物である周知の「アスファルトマスチック」などを使用することができる。
【0035】
遮水材5による縦向き遮水部材2の頭頂端部2aの被覆深さD1、すなわち頭頂端部2a上縁から遮水材5表面までの深さは、遮水材5に設定された遮水性能発現深さ以上とする。
【0036】
遮水材5による敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4a先端の被覆深さD2、すなわち縁辺端部3a,4a先端から遮水材5表面までの深さは、遮水材5に設定された遮水性能発現深さ以上とする。
【0037】
さらに、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aの地下壁上端1aからの露出高さH、本実施形態にあっては、溝状窪み部6の底部から頭頂端部上縁までの高さは、遮水材5に設定された遮水性能発現深さの1/2以上とする。汚染土壌の分布域Xからの汚染水は、図2及び図3中、矢印Bで示すように、上側敷設遮水部材4と地下壁上端1aとの間から溝状窪み部6内へ流れ込むおそれがある。この汚染水の外部拡散を防止するには、汚染水が、遮水材5中で、頭頂端部2aを乗り越えて浸潤する経路距離Fを、遮水材5に設定された遮水性能発現深さ相当以上の距離とすればよく、これにより汚染水が外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0038】
上記遮水性能発現深さとは、遮水材5が固化した状態で、要求に応じた遮水性能を発揮させるために必要な厚さをいう。
【0039】
従って、図3中、溝状窪み部6の両側が、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aによる遮水領域Qとなり、溝状窪み部6の中央が、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aを含めて、遮水材5による遮水領域Rとなる。
【0040】
他方、法面K側からの流水については、図2に示すように、法面Kと下側敷設遮水部材3との間への流水(図中、矢印C)は、頭頂端部2aを越えて汚染土壌の分布域X側に達することはなく、上・下側遮水部材3,4間への流水(図中、矢印D)は、遮水材5表面から縁辺端部3a,4aに達することはなく、さらに、上側敷設遮水部材4と保護土Wとの間への流水(図中、矢印E)は、地下壁1内方の汚染土壌の分布域Xへと流れ込むに過ぎない。
【0041】
遮水材5が設置される溝状窪み部6外方の地下壁1と法面Kとの間には、凹状溝8が形成されるとともに、凹状溝8内に下側敷設遮水部材3が敷き込まれる。敷き込まれた下側敷設遮水部材3上には、遮水材5で被覆された縁辺端部3aに引張力が生じるのを阻止するためのウエイト9が設けられる。
【0042】
次に、本発明に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造の施工法について説明する。まず、上記トリナー工法等により、掘削表面Tから不透水性地層Yに達するように、縦向き遮水部材2を埋設した地下壁1を構築する。
【0043】
次いで、地下壁上端1aから、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aを露出させる頭頂露出工程を施工する。頭頂露出工程については、基本的には、地下壁上端1aを削り込むなどして、頭頂端部2aを露出させる。しかしながら、頭頂端部2aが露出する位置で、縦向き遮水部材2の地下壁1への打設作業を完了することでもよい。あるいは、地下壁上端1aを削り込むなどして、上方に向かって開口する溝状窪み部6を形成しつつ、頭頂端部2aを露出させるようにしてもよい。
【0044】
次いで、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを、頭頂端部2aから距離を隔てて配設する縁辺配設工程を施工する。縁辺配設工程については、基本的には、頭頂端部2a近くから法面K側へ向かって敷設遮水部材3を敷設すればよい。本実施形態にあっては、一対の敷設遮水部材3,4を敷設するようにしている。この場合には、各敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを構成する第1上側遮水シート4x及び第1下側遮水シート3xを、頭頂端部2aの表裏両側から溝状窪み部6内に挿入し、ライナー7等で固定すればよい。
【0045】
次いで、これら頭頂端部2aと縁辺端部3a,4aを遮水材5で一括して被覆する被覆工程を施工する。遮水材5は、ゲル化した流動状態でこれら端部2a,3a,4a周囲に流し込まれ、その後、固化して遮水性能を発現する。本実施形態にあっては遮水材5は、溝状窪み部6に充填される。溝状窪み部6は、上方に向かって開口されているので、遮水材5にひび割れや気泡等がないことを目視で確認することができる。
【0046】
次いで、凹状溝8を形成するとともに、第1下側遮水シート3xと第2下側遮水シート3yを接合して下側敷設遮水部材3を形成し、この下側敷設遮水部材3を、凹状溝8へ敷き込みつつ法面Kへ向かって敷設する。そして、凹状溝8内の下側敷設遮水部材3上にウエイト9を設置する。これにより、法面K側から作用し得る引張力が、遮水材5で被覆された縁辺端部3aに作用することを防止できる。
【0047】
他方、第1上側遮水シート4xと第2上側遮水シート4yを接合して上側敷設遮水部材4を形成し、この上側敷設遮水部材4を折り返し位置から折り返して地下壁上端1a上方を経過させ、地下壁1外方で下側敷設遮水部材3上に重ね合わせつつ、法面Kへ向かって敷設する。その後、掘削区域Sを封鎖するように、地下壁上端1a位置から上方部分に保護土Wが盛られる。
【0048】
以上説明した本実施形態に係る縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造及び施工法にあっては、少なくとも縦向き方向にジョイントなどの硬質部分を有して地下壁1中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材2及び地下壁1周辺に配設される敷設遮水部材3,4の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4との間に形成される遮水構造であって、縦向き遮水部材2を地下壁上端1aから露出させた頭頂端部2aと、頭頂端部2aから距離を隔てて配設した敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aの周囲に、これら端部2a,3a,4aを一括して被覆して遮水材5を設けたので、接合が困難であったり、接合部分の応力集中による破壊が懸念される、硬質部分を有する縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3との遮水機能を、これらを直接接合することなく、遮水材5の被覆による遮水作用によって適切に連続させることができ、汚染水の漏出を適切に防止することができる。すなわち、接合が困難なために、機械的構造上の連続性が途切れる頭頂端部2aと縁辺端部3a,4aとを、遮水材5で被覆することによって、機能的に連続させることができ、これにより汚染水の漏出経路を遮断することができる。
【0049】
縦向き遮水部材2の頭頂端部2aの両側に当該頭頂端部2aを挟んで、一対の敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aをそれぞれ配設するようにしたので、地下壁1の両側に拡張する配置で、あるいは地下壁1の一方側に重ね合わせる配置で、一対の敷設遮水部材3,4を配設することができる。
【0050】
一対の敷設遮水部材3,4のうち、いずれか一方を他方の上に重ね合わせて二重構造としたので、遮水性能を向上することができる。
【0051】
地下壁上端1aに、遮水材5を流し込むための溝状窪み部6を形成し、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aを溝状窪み部6内に露出させるとともに、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを溝状窪み部6内に挿入するようにしたので、良好な施工性で、縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4との間の遮水構造を施工することができる。
【0052】
溝状窪み部6をV字溝に形成したので、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを施工性良く溝状窪み部6内に配設できるとともに、遮水材5を密に充填することができる。
【0053】
遮水材5による縦向き遮水部材2の頭頂端部2a先端の被覆深さD1、並びに敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4a先端の被覆深さD2を、設定された遮水材5の遮水性能発現深さ以上としたので、適切に必要遮水性能を確保することができる。
【0054】
縦向き遮水部材2の頭頂端部2aの地下壁上端1aからの露出高さHを、設定された遮水材5の遮水性能発現深さの1/2以上としたので、地下壁1の一方から他方への汚染水の漏出を適切に防止できる。
【0055】
敷設遮水部材3に、遮水材5の設置位置よりも外方に位置させて、縁辺端部3aに引張力が生じるのを阻止するウエイト9を設けたので、縁辺端部3aが溝状窪み部6から抜け出すなどの不具合を防止できる。
【0056】
また、少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁1中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材2及び地下壁1周辺に配設される敷設遮水部材3,4の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4との間に形成される遮水構造の施工法であって、縦向き遮水部材2の頭頂端部2aを、地下壁上端1aから露出させる頭頂露出工程と、敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを、頭頂端部2aから距離を隔てて配設する縁辺配設工程と、これら頭頂端部2aと縁辺端部3a,4aを遮水材5で一括して被覆する被覆工程とを備えたので、簡単な施工工程で当該遮水構造を形成することができる。
【0057】
頭頂露出工程では、地下壁上端1aに、遮水材5を流し込むための溝状窪み部6を形成することで縦向き遮水部材2の頭頂端部2aを露出させるようにし、縁辺配設工程では、溝状窪み部6内に敷設遮水部材3,4の縁辺端部3a,4aを挿入するようにしたので、溝状窪み部6を利用して合理的かつ円滑に施工することができる。
【0058】
本実施形態にあっては、上向きに開口する溝状窪み部6を備えたので、遮水材5にひび割れや気泡等がないことを目視で簡単に確認することができる。
【0059】
上記実施形態にあっては、連続する地下壁1全域に亘って本遮水構造を適用する場合について説明したが、縦向き遮水部材2の硬質部分以外では、縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4とを直接接合するようにし、接合が困難な硬質部分及びその周辺に対してのみ、本遮水構造を適用するようにしてもよいことはもちろんである。
【0060】
また、上記実施形態では、縦向きに硬質なジョイント部分を有する縦向き遮水部材2を例示して説明したが、横方向にも硬質な部分を有する縦向き遮水部材2であっても適用できることはもちろんである。
【0061】
図4及び図5には、上記実施形態の変形例が示されている。図4は、不適正廃棄物処分場を適正化する際に本遮水構造を適用した例である。上記実施形態では、敷設遮水部材3,4を地下壁1外方の法面Kに向かって敷設する場合であったが、この変形例では、敷設遮水部材3,4は廃棄物Jを覆うために、地下壁1内方へ敷設されている。敷設遮水部材3,4上には、覆土Lが施されている。
【0062】
図5の変形例は、新設の廃棄物処分場に本遮水構造を適用した例である。この変形例では、廃棄物Jを投下する掘削区域Sの上面を覆うように、地下壁1内方へ敷設遮水部材3,4が敷設されている。
【0063】
また図示しないが、廃棄物処分場を閉鎖する場合、廃棄物を遮水シートで覆い、その上に保護土を載せることがよく行われるが、このような施工にあっても、本遮水構造を適用することができる。
【0064】
これら変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0065】
上記実施形態にあっては、硬質な縦向きジョイント部分を有する縦向き遮水部材2と敷設遮水部材3,4との間の遮水構造について説明したが、本遮水構造は、縦向き遮水部材2が鋼矢板である場合にも適切に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 地下壁
1a 地下壁上端
2 縦向き遮水部材
2a 頭頂端部
3,4 敷設遮水部材
3a,4a 縁辺端部
5 遮水材
6 溝状窪み部
9 ウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材及び該地下壁周辺に配設される敷設遮水部材の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間に形成される遮水構造であって、
上記縦向き遮水部材を上記地下壁上端から露出させた頭頂端部と、該頭頂端部から距離を隔てて配設した上記敷設遮水部材の縁辺端部の周囲に、これら端部を一括して被覆して遮水材を設けたことを特徴とする縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項2】
前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部の両側には当該頭頂端部を挟んで、一対の前記敷設遮水部材の前記縁辺端部がそれぞれ配設されることを特徴とする請求項1に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項3】
一対の前記敷設遮水部材は、いずれか一方が他方の上に重ね合わされて、二重構造とされることを特徴とする請求項2に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項4】
前記地下壁上端には、前記遮水材を流し込むための溝状窪み部が形成され、前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部が上記溝状窪み部内に露出されるとともに、前記敷設遮水部材の前記縁辺端部が上記溝状窪み部内に挿入されることを特徴とする請求項1から3いずれかの項に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項5】
前記溝状窪み部がV字溝であることを特徴とする請求項4に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項6】
前記遮水材による前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部先端の被覆深さは、設定された該遮水材の遮水性能発現深さ以上であることを特徴とする請求項1から5いずれかの項に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項7】
前記遮水材による前記敷設遮水部材の前記縁辺端部先端の被覆深さは、設定された該遮水材の遮水性能発現深さ以上であることを特徴とする請求項1から6いずれかの項に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項8】
前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部の前記地下壁上端からの露出高さは、設定された前記遮水材の遮水性能発現深さの1/2以上であることを特徴とする請求項1から7いずれかの項に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項9】
前記敷設遮水部材には、前記遮水材の設置位置よりも外方に位置させて、前記縁辺端部に引張力が生じるのを阻止するウエイトが設けられることを特徴とする請求項1から8いずれかの項に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造。
【請求項10】
少なくとも縦向き方向の硬質部分を有して地下壁中に縦向きに埋設される縦向き遮水部材及び該地下壁周辺に配設される敷設遮水部材の遮水機能を連続させるために、これら縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間に形成される遮水構造の施工法であって、
上記縦向き遮水部材の頭頂端部を、上記地下壁上端から露出させる頭頂露出工程と、上記敷設遮水部材の縁辺端部を、上記頭頂端部から距離を隔てて配設する縁辺配設工程と、これら頭頂端部と縁辺端部を遮水材で一括して被覆する被覆工程とを備えたことを特徴とする縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造の施工法。
【請求項11】
前記頭頂部露出工程では、前記地下壁上端に、前記遮水材を流し込むための溝状窪み部を形成することで前記縦向き遮水部材の前記頭頂端部を露出させるようにし、前記縁辺配設工程では、上記溝状窪み部内に前記敷設遮水部材の前記縁辺端部を挿入するようにしたことを特徴とする請求項10に記載の縦向き遮水部材と敷設遮水部材との間の遮水構造の施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−279920(P2010−279920A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136866(P2009−136866)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【出願人】(509161509)株式会社牧田組 (1)
【出願人】(506017470)
【Fターム(参考)】